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身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

2016年パ・リーグCSファイナルステージ 北海道ファイターズVS福岡ホークス② CSファイナル三戦目・四戦目

2016年パ・リーグCSファイナルステージ 北海道ファイターズVS福岡ホークス①の続きです。第三戦目からの話になります。


【三戦目】 有原VS千賀 4-1 負
 初回、パスボールで振り逃げ&レアード3ランで試合が決まった感がある試合でしたが、問題は初回の4失点ではなく、その後に追いつくような攻撃ができなかったこ。最後の五試合目、ウチが4点先制しながら7点取られて逆転負けしたように、初回の4・5点くらいなんでもない。強いチームなら、そこから少しでも巻き返していくもの。この三戦目と五戦目の展開の違いは、両者の実力の差異を如実に象徴するものだったといえますね。

■クリーンナップ、中軸3・4・5番の前に類を埋める・繋ぐという打線の基本が出来なかった今年のホークス打線
 中島・賢介がバントをしっかり決めたり、西川がセーフティを決めたり、中島が勝負どころで盗塁決めたり、ハムはテーブルセッター・小技使いがしっかり自分たちの役割を全うした印象がありますが、こちらはそういうことができなかった。役割を全うした選手が何人居たでしょうか?晃以外嫌らしいことを実行しようとした選手が何人いたか?今宮が右打ちではなく引っ張りによって本来の持ち味を活かすようになったのはいいですが、それによって本来の1・2番としての役割だったり、下位打者としての役割をこなせなくなった。川島・明石が離脱して苦しかった今シーズンはデホの穴よりも、クリーンナップ周囲の上位・下位の役割をこなせなくなったことのほうが問題だったでしょうね。

 そもそもクリーンナップというように、クリーンナップの前にランナーを貯めないといけない。塁上を賑やかにしないといけない。その貯まったランナーをキレイに塁から一掃して本塁に送り返してくれるから、「クリーンナップ」(clean up)という名前がついているのに、クリーンにしようがない。野球のセオリー・常道、走者を出して塁を埋める。埋まったランナーを中心打者が返すという基本を無視した結果でしょうね。

 嫌らしい野球をするための嫌らしい選手がいない。粘って・つなぐことを心がけて、クリーンナップの前にランナーを貯める。彼らの前に仕事をする人が居なかったことが、こういう短期決戦で試合運びのヘタクソさとして出てしまう。スモールベースボールによって、短期決戦に強いチームを作ることこそ脱風物詩チーム・脱風物詩野球にとっての重大なテーマだったはずなのに、いったい過去の負の遺産・痛い目を見て得た苦い教訓はどこへ行ってしまったのか。またエースを見殺しにしてマウンドで悔し涙を流させるのつもりなのか?監督が変われば野球が変わるとは言え、変えてはいけない大事な軸と言うものがあるはずなのに…(まあ秋山野球も風物詩野球でしたけどね)。

 まあ、新人監督・経験の浅い監督ということで仕方のない面がありますけど、このあと教訓として学習して成長してくれるでしょうか…。最近そういう自己の采配のまずい面を反省して、学習・成長した監督というのは巨人の原監督くらいしかいない気がしますね。滅多に出ないということは工藤監督が学習して成長する可能性がもうかなり乏しいということで、今からかなり嫌な気分になってしまいますね…。

■選手をかばわない&ピント外れの監督コメント
 で、試合に戻って、初回のパスボールは止めてほしいし、千賀も最少失点に抑えてほしかった。しかし、それは結果論。経験の浅い千賀、若手投手故にこういうことが起こるのはしょうがない。それを覚悟でこちらはマウンドに送り出しているのだから。内川が1stでマウンドに「大丈夫か?」と声をかけに言ったら「やべーっす」を連発していたというように、初めてのCSの先発から日が浅い2回目の短期決戦での先発マウンドで結果を出せない、打ち込まれたとしても文句を言えるはずがない。

 このマズイゲームの立ち上がりからどう挽回するかが、チームの本質、チーム力・本当の強さが問われるもの。「細川のパスボールが一番痛かった」*1とか、そういうコメントを出す監督の神経を疑いますね。何故バッテリーをかばわないのか?ミスが起こり、それをチーム全員でカバーし合うのが野球でしょうに。「初回4点取られたあと、全員でカバーしあえなかった。4点取って千賀の過失・負けを消して、助けてあげられなかったことこそ問題だ」と指摘すべき試合展開。そういう当たり前の指摘がないのは疑問ですし、残念ですね。

■4点取られた直後のチャンスでホークスは沈黙、ファイターズはきっちり差を詰めた
 2回、内川・松田がヒットでノーヒットで2・3塁。こういうチャンスで2点きっちり返して2点差に詰め寄ること。それが出来ないことがこの試合で一番まずかったことですね。前述通り、相手はそれをきっちりやったからこそ五戦目で逆転勝利・CS突破できたわけです。ここで最低でも1点入れとかないといけなかった。それが出来ないチームが日本一になれるわけないですね。三連覇など何をか言わんや。

 3回に晃のソロHRがありましたが、本来そういう得点の仕方をするチームではないですよね。4点差あってランナーためなくてはいけない場面でそういうスイングをするのもどうなのか?クリーンナップ以外がしていいバッティングなのか?気になるところですね。ピッチャーがよかったら打てない。どうしようもないとはいえ、この試合でファーボールは8回の晃のそれが初めて。出塁が出来なければそりゃ点差はつまらないですよ。まず出塁しないといけないのに、それが全然できなかったことはチームの課題でしょうね。ヒット7本で1点のみという効率の悪さを考えれば相手投手の計算通り、思うどおりにしてやられたという他ないですね。

●余談、福田の使い方
 昨日の福田の活躍を見ればスタメンで使いたくなるのもわかりますが、福田はそもそも大谷キラーだから使われてきたわけでしょう?それならば初戦のスタメンで使うべきだった。昨日の活躍は走塁からだったので、代打特にここぞというときの代走でプレッシャーを掛けたほうが良いと思いましたね。福田は個人的に「カウント福田」と呼んでいますが、彼は追い込まれるまでは打ちますけど、追い込まれるともうガクッと打率が下がるんですね。追い込まれてから短く持っておっつけていく松田のようなことも出来ない。非常に確実性に乏しいタイプ。序盤の一時期のみ活躍したように、好調期以外はあまり機能しない選手。嫌らしいこと、粘り打法やセーフティなどを徹底させるのでなければ、昨日のような大事な終盤での代走の方が良いのではないかと感じました。福田の起用法も一貫性のなさという点で少し気になった所でしたね。
 普段から選手の起用は柔軟にすべき、固定的に起用すべきではない―と言ってきましたけど、シーズン終盤や大事な短期決戦、CSなどでは役割を固定してやるべきだと考えています。大事な一戦・大舞台になったら、ただいつもどおりの作業をやる。目先の単純な仕事・役割だけに集中・専念させたほうが良い。対大谷で使わなかったのなら、スタメンではなく代打・特に代走で役割に専念させたほうが良かったと思いましたね。

■6回100球で千賀降板、東浜にスイッチ
 6回、近藤にヒットを打たれて東浜にスイッチ。このタイミングでの継投は一体どういうことなのか?100球を目処に交代ということなのか?(千賀の投球数は104球)。東浜に絶対感があるのならばまだしも、というか絶対感があるのなら負け試合に使わないし、ちょっとどうなのか?HR打たれているレアードで交代ということなのか?結果、東浜は連続ヒットでピンチを広げるも大野・賢介を討ち取って凌ぐ。ワンナウト満塁で犠牲フライを許さなかった。追加点を許さなかったことが次の攻撃に繋がるかも?と思わせつつもそんなことはありませんでした。

■CS先発経験のない有原に7回一失点
 大谷は7回までパーフェクトな内容でしたが、今度は有原に晃のHR以外被安打7の1失点。大谷はCSを経験して三年目、三度目の正直だとして、有原はまだ二年目のCS登板は三回目。去年のCSは中継ぎ登板が二回×二イニングのみで、しかも去年負けがついている。先発したのは千賀と同じで今年が初めて、そして言うまでもなくこの試合が初先発なのに。彼我の差が歴然に出てしまった。どうしてそういう投手を打ち崩せなかったのか。ちょっとピンチになったらいっぱいいっぱいになるのが若手投手。そういう心理・立て直しが難しい相手の状況を想定した攻め方・戦術を構築できなかったのは何故なのか?打撃コーチの戦略・指示のミスと言われ、責任を問われるのはやむを得ないでしょう。

 二戦目はこちらが勝利したとは言え、同じく不安要素があった増井を打ち崩せはしなかった。大谷・増井・有原と三試合続けて一人の先発も攻略することができなかった。対照的にこちらは武田も中田も千賀も誰ひとりとしてゲームを作ることができなかった。中田・千賀は試合を壊してはいないものの、先発としてリードを保ったまま5回以上投げてマウンドを降りるということができなかった。勝ち試合を作れなかった。

 後続の森福が三者三振という内容、前回役割を果たせなかったがゆえにこれは良い兆候。スアレスもファイナルで初登板。感覚が空いたからスアレスを調整含めて登板。それ自体はいいとして、第六戦までもつれたらスアレスを4連投させるのか?残り試合の継投をどうするのだろう?継投でやりくりをする計算たてられるのだろうか?

 9回、ランナー二人出して簡単に終わらなかったのは良いものの、これで後がなくなる2敗目。残り3戦全勝しないといけなくなった。ここまでの三試合、先発が試合を作れた試合が一つもない。6失点、4失点、4失点全て先発の失点。ここだけ見ると相当苦しい状況。しかし逆に言うと、先発がなんとか6回・7回をリードして投げきる。ダメでもなんとか5回までリードを作って投げる。こちらのリリーフが計算できそうな分。なんとか5回まででもリードを保ってくれれば勝ち目がある。同点でもおそらくこちらが有利。

 対照的に相手はリリーフの計算が立たない。CSの残りは3試合、こちらが苦手とする高梨という投手がいるとはいえども、ファイターズサイドの先発の良い投手は大谷・増井・有原と三枚全て使い切った。四戦目のここからは先発勝負ではなく、お互いの打線とリリーフ勝負になる。短期決戦では捕手のリードという要素が大きい。細川と大野ならばこちらに目がある。ここまでリードしてきた捕手のリードが残りの三試合で活きてくる*2。そういう要素を考えるとまだまだわからない。特にこちらの先発がゲームを作ってくれればまだ3連勝の可能性は残されている。とにかく先発がなんとか頑張ってくれ!という見通しで第四戦に突入します。

【四戦目】 高梨VSバンデンハーク 2-5 勝
 四戦目は特に書くことがありませんね。先発がゲームを作れればイケる!という予想通りだったので、特に注記しておくことも起こらなかったので、あっさり終わります。先発バンデンが試合を作り、相手の先発を打ち込む。若手の高梨が先発ということでこういうことがあるとこれまで何回も書いている通り、やはり高梨も崩れました。いつもならカーブに翻弄されるのですが、この大舞台でいつものように投げることはできなかったようです。対照的に最近安定していなかったバンデンハークは6回まで見事に試合を作ってくれました。

 しかし、大谷はこのシリーズあまり打っていないものの(この4試合で.167)、印象的な一打を打っていますね。振り逃げの時もそうですが、スーパースター大谷という虚像・幻影にとらわれすぎた感がありますね。同じく中田も.200ですがここぞという時に打ったので、低い打率でもヒットを打ってないという印象がない。嫌なイメージが残ってしまいましたね。ここぞという時に打たれたのはやはり、吉井コーチに投手の癖・心理的傾向を把握されたが故なのでしょうか?

 明石・松田の好守備が飛び出し、長谷川・今宮のHR、そして松田がまたリリーフからHRと計12安打とここにきてようやく打線に火がついた。松田が打つとチームがノる。松田が攻守でノッているのは、明日にも繋がりそうで「良し」と思う所。松田にさえ繋げれば確実に点が入る予感。それくらい松田の調子が良い。打線も松田の前にランナーためる、塁に出るという仕事に専念すれば良いというのは大きい 。

■HRのあとの打席で繋ぐ意識がなかった今宮
 ただ、今宮がHRの次の打席、あっさり凡退していることはやはり問題でしょうね。長谷川はHRを打った次の打席で、相手バッテリーが警戒してくる。無理せず際どい所を攻めてくるのを選んで四球を取って、次の松田にしっかりつなぎました。HRを打った次の打席は高い確率で四球が取れる。一本で一出塁をおまけにもぎ取るのがセオリー。そうやって繋いでいくことが大事。松田はHRを打っても空振り三振していましたが、まあそういう役割の打者なのでフルスイングでプレッシャーを与えるのも許容範囲内。しかし、今宮は違う。そんなに大きいのがポンポン出るバッターではない。そこで四球を選べずにショートゴロであっさりアウトカウントを献上してしまったことは先述通り非常に問題でしょうね。その次に高谷がツーベースを打っているのは結果論ですが、高谷・晃・本多に繋いで行けばどうなっていたか?あまり良くない白村から2点どころか4点くらい取れた可能性もある。8回に森福・スアレスと左右で分担してしのぎましたが、3点差が5点差になっていたらスアレスを休ませて万全な形で明日に繋げられた。また他の右投手寺原や森の状態を試すということもありえた。そういうことを考えると今宮の凡退、及びそれを許容しているベンチに非常に問題があったとみなすべきでしょうね。あくまで結果論なので今宮が四球を選んでいたらという話にすぎません。問題はそのやるべきことをやっていないからこそ、ショートゴロになったということ。繋ぐ意識があれば逆方向の打球になっているはずですからね。ショートに打球が飛んで、それでアウトになったということが大問題ですね。やるべきことをきっちりやっていなければ結果がついてくることはないのは当然でしょうね。

 前述通りただの勝利と、大勝という違いがある。大勝・バカ勝ちというほどではないものの、HR三本で明日につながる快勝。こちらのリリーフの完璧リレーとは対照的に、ファイターズサイドは負けパターンとは言え、リリーフが失点。この勝ち方で明日・明後日と希望が見えた。明日勝てばシリーズ突破のリーチを掛けられながら逆王手となってファイターズは精神的に不利。プレッシャーの掛からない楽な展開で突破を決めたかったのが、今日絶対勝たないといけないという展開に追い詰められれば相当苦しい。逆王手によって不利な状況から追いついた分、ホークスに勢いがつく。こちらが有利で最終戦に望める。そして最終六戦目で大谷がコンディションの問題から登板できないor強行先発でも本来の実力が発揮できないとなれば、これは面白くなるぞ!とワクワクする展開で五戦目に突入しました。

全然終わらないので続きます→2016年パ・リーグCSファイナルステージ 北海道ファイターズVS福岡ホークス③ CSファイナル五戦目 先発攝津3回で降板というありえない継投


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*1:細川に限らず、高谷も鶴岡も千賀のフォークを取れずにそらしてしまう、パスボールしてしまう場面は何度か見ました。それくらい彼のフォークを取るのは難しく、大谷相手に叩きつけるくらいの意識で取れないような鋭いフォークを投げるというのは、当然起こりうること。それでも細川なら止めてほしいとは思いますが、そうなっても彼及びバッテリーを責めることは絶対にすべきではないでしょう。そういえば、WBCの予選で小林がフォークを取れないからフォークのサインを出さなかったなんて言う話もありましたね。

*2:まあ、言うまでもなく、高谷に代えて捕手を固定しなかったわけなんですけどね。高谷に色々アドバイスして、高谷のリードの成長に細川が役立った・一躍買ったと言われているように、配球の情報共有を拒んだ鶴岡と違って高谷とは意思疎通が出来る。高谷ならそれまでのリードのデータを引き継げるし、その後細川にも今日の試合でどうだったと伝えられる。しかし、自分で実際にリードするとしないではやはり違う。やはり捕手のリードを重視しないわけですね、工藤監督は。そういうところを見るとある特定のスパンで戦略・戦術などをあまりうまく考えられないでしょうね。

2016年パ・リーグCSファイナルステージ 北海道ファイターズVS福岡ホークス① 初戦・二戦目

2016年パ・リーグCS1stステージ 福岡ホークスVS千葉マリーンズの続きです。

■ファイナルステージ
 ファイナルステージについて書いておきたいがために1stステージのメモを書きましたが、誰か読む人はいるのかな?検索で迷い込んだ人が引っかかるのを願うのみですな(笑)。さて特筆しておきたかった、対日本ハムファイターズとのファイナルステージ、事実上の日本シリーズです。去年はロッテが勝ち上がってきたので二年ぶりの日本一の球団を決めるチームの直接対決ですね。どちらが日本一の球団なのか争い続けるこのカードは本当に面白いですね。毎年このカードでCSのファイナルやっているイメージがありますからね。パ・リーグのファイナルが事実上の日本シリーズと化して久しいですが、一体この構図は何時になったら終わるんでしょうか?

 そんなことはさておき、前述通りこのCSはウチに勝ち目がある珍しいケース。というか、まあペナントレースでコケるほうがおかしかったからこうなるんですけどね。いずれにせよウチに突破の目がある非常にワクワクして観戦したCSでした。ロッテのエースワクワクさんくらい、わくわくしていましたね。ゴロリがいたら一緒に何か工作作るくらいの勢いでした。

■疑問を覚えた二つの采配
 しかしまあ、言うまでもなく結果は惨敗という非常に残念な展開に。勝敗は兵家の常なので負けたこと事態についてがっかりすることはないのですが、負け方がひどかった。あまりにも負ける内容が悪すぎた。実力負けではなく、非常に疑問を覚える采配による負けだったので、それがとてもひっかかった、残念な出来事でしたね。というよりも「一体何をやっているんだ…」と呆れや怒りを覚えるレベルでした。

 先にその理由をネタバレして触れておくと、武田のバント処理ミス。武田がミスしたことについてどうこう言うのではなく、あそこで確実にアウトを取りに行くという指示を出さなかったベンチの判断。これがまず一つ。そしてもう一つは五戦目の攝津を3回で早々と降ろしたこと。この二つですね。①の方はまだ理解できなくもないですし、メリットもあることなのでまだわかる。個人的にそうすべきではないと考えているだけなので、許容範囲内なのですが、②の方は完全にありえない判断でぜひとも書いておきたいと思いました。

ソフトバンクホークス日本ハムファイターズの天敵
 以前書いたように、そもそもホークスはファイターズに無類の強さを誇っている。今年負け越すまで7年連続カードで勝ち越して、10年間のスパンで見てもホークスはファイターズに二回しか負け越したことがない。中田が「逆転優勝するとは口に出して言っていたけど、内心絶対無理だと思っていた。ホークスのメンツを見てウチと年俸が全然違う。勝てるはずない」と言っていたように、ファイターズの選手達には骨絡みのレベルでホークスコンプレックスが染み付いているわけですね。ひょっとしたらベンチ・首脳陣・フロントレベルでそうなのかもしれませんが、まあそれは知る由もないので置いておきます。

 統一球(という名の違反球)導入のシーズンが印象に残っていますが、ホークスは札幌ドームで異常に強かった。そういう相性の点でもこのCSで過去のトラウマが蘇る可能性がある。今年も8回4点差で負けていながらも、そこから追いついて逆転勝ちした試合もありましたしね。そこまで有力なデータではありませんが、今年も札幌で勝ち越しているという地の利があるのは無視できない要素(地の利があるというか相手ホームの地でやる優位がファイターズにはない、不利ではないというべきか)。

■ファイターズのリリーフはホークス打線が苦手
 またファイターズのリリーフ陣は武田久を除いて異常にホークスに弱い。789回の必勝リレーで一点も取られないということが珍しかったり、出て来る投手が毎回三人で完璧にシャットアウトするということができなかった。リリーフ陣がホークス打線を完ぺきに抑えたという試合がまずない。対照的にホークスはリリーフ陣の質が高い、実にこのシーズンまで7年連続リリーフ陣の防御率が1位という数字があるように、7回までにリードしていたらほぼ間違いなく勝てるという安心感があった。本拠地のヤフオクドームで絶対的なリリーフ陣がゲーム後半で点を与えず、延長に入ればかなりの確率でサヨナラに持ち込めるというところにこそ、ホークスの強さの秘密がありました。

 今年(2016)は継投を崩壊させたため、その絶対的な勝ちパターンが崩れて優勝を逃しましたが、休養を挟んで調子を取り戻しているのなら、こちらがかなり有利。ロッテ戦で789回とサファテはちょっとまずかったものの、ホークスの継投・リリーフがしっかり機能していることを見せることが出来たのは大きい。ファイターズサイドに、「ちょっと怖いなぁ…」という思い、やられるかもという恐怖感を抱せたでしょう。ホークスのリリーフ陣は万全、ファイターズは不安がある。同点でゲームが進めばホークスがゲームの勝ちを拾いやすいということが予想される。同点のまま試合が進んでファイターズにプレッシャーがかかって空回り。対照的にCS勝ち上がりでノープレッシャーのホークスはいつものように大はしゃぎで戦いに挑む。そういう状況・展開なら、ホークスのCS突破の目は十分にある。

■試合勘と守護神マーティンに不安要素がある
 CSは試合勘というものが怖い、相手側は打撃勘が狂ってないのに対し、こちらはその調整を一から行わないといけない。また、ファイターズはリリーフがホークスに弱いことに加えて、守護神マーティンが終盤居なかった。階段を踏み外して怪我をしたとの岩本情報があり、継投事情でかなり不安があった。

 また優勝に貢献した増井という先発の柱は、今年ホークス相手には先発登板していない。散々ウチ相手に苦い思いを味あわされた増井はホークスに嫌な印象を持っているはず。今シーズン見せてきたパーフェクトピッチングをウチ相手にも、いつも通りにちゃんと出来るかどうかはわからない。しかもCSでの先発が初めてとなれば尚更そこに不安要素がある。

■絶対的な投手大谷にも経験値という不安要素がある
 とはいえ、大谷という絶対的な投手がファイターズには存在する。その大谷が初戦と5戦目か6戦目に登板する、二試合投げるとするとそれだけでもう2敗。残りの大谷以外の先発で全勝しないとなると厳しいことには限りない。

 そういう計算をした人は多いかもしれない。が、大谷はシーズン終盤調整のために何度も休んだように、コンディションが絶対ではない。もしそういう登板をするなら、まず先発に専念で打者としての起用がなくなる。それはそれで打線のつながりがなくなるのでホークスとしてはプラスになる。

 また、実際の試合での起用、先発のみであとは打者専念だったように(最後にクローザー登板しましたが)、大谷はまず投打でフル出場してくることはない。もし、最初の試合・初戦で大谷から勝てれば、グッと有利になる。

 打撃勘も戻らず、絶対的な大谷でも負けて、しかももう大谷は先発できない―となれば俄然こちらが有利で一気に相手を飲み込める。とはいえ大谷相手に勝つという計算はあまりにも甘い考え方。普通はそういう都合のいい計算はまずしないもの。

 大谷は過去のCSで結果を残していない。去年はロッテ相手にKOされている。一昨年はオリックス相手に先制を許し、勝ちはついたものの、マウンドを降りる時は勝ちは確定したものではなかった。リードを保って後ろに繋いだわけではなかった。新人に短期決戦は難しいというセオリー通り、大谷も結果を残せていない。今年もCSでシーズン通りの素晴らしい投球を見せられるかどうかわからないという不安要素がある。

まとめますと―
 ①ホークスへの苦手意識、特に札幌で
 ②リリーフ陣に不安があり、相手は万全というリリーフでの優劣
 ③大谷のコンディション問題、投打でフル出場は難しい
 ④若い選手が多い分経験値の乏しさ故の萎縮やミス
 ⑤先発増井が機能するかわからない
 ⑥CS日程上、試合勘・打撃勘の問題
―といった不安要素がファイターズにも多々ある。アドバンテージの一勝があるとはいえども、展開次第では勝負はどうなるか全然わからない。

【初戦】 大谷VS武田 6-0で負
 そういう諸々のこちら有利の要素があったので、非常に期待して試合を見ていました。ところが実際は惨敗。ここで前述①の武田のバント処理の話に。この試合の武田のバント処理、マウンドさばきは実は素晴らしいものがありました。何度も素晴らしいプレーでアウトを取っただけに武田は今度もいける!と欲張って三塁フォースアウトを狙って結果失敗。そして大量失点にということになりました。

 武田の今日の素晴らしいフィールディングを見れば、また大谷の出来を見れば一点勝負。守備で攻めていく、強気の姿勢で楽にバントをさせないという判断は間違いではないでしょう。しかし、どんな投手であれ1点は1点。1点差なら試合はわからない。大谷が100%9回まで完封するという可能性もそこまで高くはない。つい最近まで何度もマウンドで足をつらせていた大谷が9回完璧に投げきるというのは想定しにくい。故障でしばらく投げない時期もありましたしね。

■最高の結果・ベストの大勝を狙うよりも、最悪の結果・ワーストの大敗を避けることを考えるべきだった
 この試合に負けたら残り5試合で4勝するしかない。それが厳しいとは言え、それは出来ない話ではない。ホークスのベストは大勝すること。大谷を打ち込み大量点をとり、その一方でこちらは相手打線を完全に封じ込めること。その大勝で明日の試合につなげて、明日も楽勝出来るような勝利がベスト。

 その次は内容は良くないが勝つこと。辛勝でもなんでも1勝するという結果は何よりも大きい。次が辛敗(なんて言葉はありませんが、というか惜敗ということばがちゃんとありましたね(^ ^;) )、惜しい負け方をすること。負けてはダメとは言え、一番やってはいけないことは惨敗・大敗。何にもならない糞試合が一番やってはいけないこと。その惨敗を避けるためには、あの場面で120%アウトに出来るという確信がない限りは三塁に投げるべきではない。

 武田本人は今日の自分のフィールディングの調子ならアウトに出来る。そう判断してもおかしくはありませんが、あそこできっちりアウトカウントを増やしておかないと大量点に繋がる。あそこは最悪でも2点まで。それ以上の失点は絶対にやってはいけない場面。そういう最悪を想定して采配を振るうということが工藤監督にはない。前々から思っていたことですが、工藤監督は非常に都合の良い考え方をする監督であると思います。ピッチャーはプラス思考・ポジティブ人間とは言いますが、自分にとって根拠の乏しい都合のいいこと、都合のいいことを考える。そういう起こってほしい、ラッキーな出来事ことが起こると考えて、判断・決断をする傾向がある。前秋山監督にもそういう要素はあったのですが、工藤監督は特にそういう傾向があるなと思った場面でした。

 個人的にもどうしても勝ちたい初戦なので、途中までは絶対勝てる!とポジティブシンキングで行くべきだと思います。しかし大谷が5回まで完璧だったら、これはちょっと難しいと普通は考えを切り替える。なんとか離されないようにできるだけ食らいついて、相手につけいる隙を探る。球数を投げさせてリリーフから点を取って追いついて、延長で勝つなどとそういうプランに修正、普通は切り替えていくものでしょう。足を使ったり粘ったり、セーフティで揺さぶったりなるべく楽に大谷に投げさせないための策をとって嫌らしい野球を徹底するものでしょう。可能性が低いとは言え最終戦で大谷が先発する可能性がありますし、実際クローザーとして投げたようにそういう後ろに回る展開も考えられる。そうなったときのためにもできるだけ嫌なイメージを与えておきたい。そのためには大量失点は絶対に避けるべきはずなのですが…。

 大谷相手から楽に点を取れないのならば、それこそ四死球で出たランナーが内川であろうと松田であろうと、代走を出して盗塁からワンチャンス狙いにかける。他にも色んな策が考えられるでしょうが、そういう勝負手が今シーズンは本当に少なかった。足が速い選手を好み、そういう選手を優遇しながらも、盗塁を積極的に仕掛けなかったり、エンドランを積極的に仕掛けて行かなかったり、今シーズンの工藤監督の姿勢は本当に疑問ですね。

 話を戻して、あそこでアウトカウントを増やす判断をしていれば、取られても3点。2点以内に失点を押さえていれば大谷はもっと苦しんだでしょう。大量点となって楽に投げられて、打線の方も大きいの狙いとなってどうしようもなくなってしまった(―とプロ野球ニュースで解説されていましたが、6点差あってもやるべきことは変わらない。塁を埋めて少しでも点差を縮めていくこと。この大きいの狙いというのも打線の問題が潜んでいると言えるでしょうね。基本的にヒットを打って打ち崩すという方針・策しかないのですからね)。

 大谷はプロ4年目で初の犠打を見せていましたが、CSという理由だけでなく、もう投球に専念するためさっさとアウトになりたかったわけですね。達川曰く、大谷はバントで一塁に全力疾走していない。なめられている。これは絶対やり返さないといけない。そう力説していました。大谷の問題というよりも、そうさせてしまったこちらの問題であると個人的には思えました。

 不安要素のあるマーティンも6点差というラクな場面で登板出来て、ホークスにはなんのプラス要素もない最悪な負け方をしてしまった。相手主砲中田にHRを許し、レアードも2安打。相手打線を殺しておくという大事な要素も抑えられず、何の収穫もない最悪の負け方だと思えました。

 最悪の負け方をしないためにも、相手打線を殺しておくことを優先すべき。そのために、あそこでベンチはアウトカウントを増やす決断をすべきだった。あそこがCSの重要な一つのポイントだったと思いました。

●余談、次代のエース武田について
 そういえば武田はCSで勝ったことがあったっけか?と思ってチェックしてみました。2012年は高卒ルーキーで登板したのをよく覚えています。今宮の本塁送球のFCかエラーかで大量点に繋がった試合でKOされていたので。ノムさんが「欲張ったらダメだよ、アウトカウントキッチリ消化しないと。下手したら大量点に繋がっちゃうよ」と言っていたのをよく覚えています。奇しくも今年のCSもそのアウトカウントを増やさなかったために、武田はKOという結果になったわけですね。

 2013年は4位でCSなし(怒)、2014年はファイナル2戦目でファイターズに投げています。5回まで無失点と好投するものの、陽の打球を今宮が悪送球してから崩れて、中田に2ランを打たれて4失点。ちなみにこのシリーズは、三戦目は摂津が2回KOで東浜が7回投げてるんですね。東浜も5失点。五戦目は例の継投リレー(余力あるスタンを6回で早々と降ろした継投です)で、4-0から7回に森が捕まって逆転負けという試合がありました。このように短期決戦で謎継投というか、投手陣を整備できないのはホークスのお家芸といえるかもしれません。

 2015年はCS初戦に武田登板。しかし5回途中で限界と判断され、千賀にスイッチ。試合自体は勝ったものの武田が勝たせたといえない、エースと呼ばれるのにふさわしくない内容。このように武田はCSで未だにダメ、結果を残せていないんですね。去年のCSは先発は皆6回までしか投げていない。チーム方針で、短期決戦・CSでの先発は6回までという思い込みがひょっとしたらあるのかもしれないですね。

 次代のエースとして長年期待されていた武田の心配なところはここぞという所で打たれたり、ここぞという試合で負けること・チームを鼓舞する快投が出来ないこと(一年目のプロ初登板くらいですね、そういう快投を見たのは)。これでは到底エースとはいえない。武田はKスタに異常に強い*1のでそのピッチングを見ると大投手・エース投手と錯覚してしまいますが、毎年優勝争いをするロッテ・ハム相手に完全にねじ伏せる投球ができていない。武田とあたりたくないなぁと思わせることが出来ていない。楽天・西武・オリックス辺りに快投してもしょうがない。チームを優勝させてこそエース。武田にそういう自覚、チームを自分が支える・導くという意識があるのか気になるところです。武田・和田共にその自覚が足りないように思えます。千賀の方がエースの座は近いのかもしれませんね。まあ今シーズンの成績次第でしょうが。

【二戦目】 増井VS中田 4-6で勝
 こちらがやりたかった相手打線を封じる・殺しておくということを逆にやられてしまい最悪の展開で臨んだ二試合目。それでもリリーフ陣事情を考えて、札幌での強さを考えて、まだまだチャンスは有る!と思って試合を見ていました。そして最後の最後でやってくれて「ヨシッ!」と唸った試合でした。

 やはり、増井はウチ相手に相性が良くないのか2回に早々に2失点。元々ウチの打線はまっすぐ速い投手に強くてカーブやチェンジアップ系に弱いチームなので、そういう要素が大きいのかもしれません。昨日の悪い流れがありながらも先制できたのは大きい。CS初の先制だけに尚更ですね。下位の今宮・細川で打点を挙げられたことも大きい。特に1stでラッキーボーイ的な働きをしている今宮がこのあとも活躍しそうで面白いところ。

 このシーズンで一つのポイントになった走塁で、後の伏線になりそうな話が。晃が続いてヒットを打ったのに今宮が本塁で走塁死をした。これ自体は問題ないとしてももったいない場面だったことには違いない。

 中田のタイムリー・レアードのソロHRで同点。とうとう6回に陽のタイムリーでゲームをひっくり返されて2点差となり諦めムード。今日ダメなら残り4試合で4勝しなくてはいけないわけですからね。

 8回に宮西から松田がHRを打って、やはりリリーフ陣は盤石ではない。これで流れが変わる。まだワンチャンスあると見ていました。
 
 9回、福田が死球からの盗塁。そして大野がマウンド行ってランナー無視の指示を出した所、3盗・ダブルスチール。マーティンが足をあげてバッター集中したところをつく大博打。ハズれれば敗北&シリーズ終了を意味するのですから、よくこの大博打を仕掛けたと言うべきでしょうね。これで完全に流れが変わった。1stでタイムリーの本多がここでもいい仕事をして、柳田のタイムリーで不安な柳田の穴・不調という目もなくなった。まだアドバンテージ分不利とはいえ、相手の守護神を打ち崩して、俄然勝利の道が見えてきた。劇的な勝利はシリーズ突破を想像させるに十分でしたからね。ここまで工藤采配を否定することを書いてきましたが、この決断はお見事と言うしかないでしょう。工藤監督はすべきことをやってくれるが、同時にすべきではない余計なことをする監督という話を以前書いた覚えがありますが、その監督としてすべき事・妙手と言えるでしょう。

 初戦の継投は東浜・寺原・森のリレー。後続が無失点で抑えたことは地味に大きいポイントだったと思います。やはり相手にリリーフ陣は盤石か―と思わせることが出来ますからね。そしてこの2戦目も森福がワンポイントリリーフで大谷を歩かせるという結果で終わったもの以外は東浜・岩嵜・サファテと無失点で仕事をした。このことを考えると、フルに6戦して、勝ち抜けるのではないかと思わせる十分な内容。そういう期待が高まってから三戦目を迎えました。

 いつものように長いので、続きます。しかしまだまだ長いので三分割にしてここから、後ろを②に移すかもしれません。CSファイナルにどんだけ時間かけてんだという話ですね。一週間近くずっとこれ書いてるし。続き→2016年パ・リーグCSファイナルステージ 北海道ファイターズVS福岡ホークス② CSファイナル三戦目・四戦目


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*1:三試合25イニング投げて3勝、防御率は0.00=無失点です。武田は何処かで制球を乱す・苦しむ投手ですが一年目からKスタで制球・カウントに苦しんだという場面を見たことないと記憶しています。それくらい異常に強い。マウンド・気候などが合うんでしょうね。まあ対楽天は1.02なので楽天打線自体にも強いということもあるでしょうけどね

2016年パ・リーグCS1stステージ 福岡ホークスVS千葉マリーンズ

 2016年のしていなかったCSの話を今頃。まあ過去のデータを振り返る時に必要なのでいまさらでも書いておかないといけませんからね。特に今年の日本シリーズは不思議な、奇妙奇天烈なものだったのでその前フリとして書かないといけませんからね。まあ所詮はたかが一ファンの不平不満に過ぎませぬが。

 今年もCS勝ち上がりを狙うロッテとホークスの1stステージ。ロッテは1stでの負けがないというデータもあり、いかに去年こてんぱんにホークスにやられたとは言え、3戦2勝方式ならば十分勝ち目があるという1stステージでした。対して我がホークスは優勝こそ逃したものの、その大きな要因は下手くそな継投にあったため、CSで十分休養を挟んだ中継ぎ陣が本来の調子を取り戻しているのならば、万全に機能するならば、アドバンテージがファイターズにあっても十分勝ち上がれる見込みがある。三連覇を狙える面白いCSになるという事前予想をしていました。

 本来はファイナルステージ、日ハムとの戦いだけ書けば十分なのですが、というか特筆しておきたいのはファイターズとのファイナルステージでの起用法の疑問なので、そこだけ書きたいのですが、CSというのは1stステージから、ファイナル・日本シリーズ(セ・パ親善試合)まで全部含んでみないといけないものなので一応記しておきます。

 ロッテマリーンズは確かに強いチーム、個人的に好きなチームですが、今年ファイターズに苦しめられたようないやだなという思いはない。初戦さえ落とさなければそんなに怖いという感じはしませんでしたね。

 先に結果から言うと4-3、4-1と危なげなく勝って終わったのですが、先制されたことHRを簡単に打たれたことは少し気がかりですね。田中対策に「ランナー貯めるとギアを上げてくるから、最初から大きいのを狙って振り切っていくべきだ」という話を江川さんがしていたと思いますが、ロッテは田中に対してHRをよく打っていたイメージがあります。そのように序盤・立ち上がりに思い切って振り切っていけという指示があったのでしょうか。短期決戦は好球必打・思い切りが重要ですしね。

 短期決戦は新人は難しい、経験ない若い投手は崩れたら立て直しが効かない。そういう要素があるので千賀もちょっと怖かったんですよね。だからこそ石川ではなく涌井が出てきたわけで。まあ、ホークスとしてはどちらもいい投手ということで変わりないですが、涌井とは多く対戦している中で多少打ち崩せずに嫌なイメージもあるPですし、そういう事を考えて涌井。信頼できる投手の柱をぶつけるのは当然ですかね。

 和田がいれば和田。しかしファイターズ相手に無類の強さを誇る和田を、もし使えていたとしても使ったかな?という気もしますね。今年の先発陣は若い。他に武田・東浜はいますが、同じく若手で経験がないなのでダメ。ヤフオクで安定するバンデンか、それともロッテに強い中田か。コンディションが戻っているか怪しいバンデンも、突発性乱調症候群持ちの中田も怖い。で、千賀というのはまあしょうがないことですかね。ロッテと7戦して4勝負け無し。防御率2.36と相性もいいですし。

■VSロッテマリーンズ1stステージ
 以下、プロ野球ニュースを見てのメモが入ります。見ながらああそういやこんな試合展開だったなと思い出しながら書きました。
【初戦】―千賀VS涌井、4-3で勝利
 経験の浅い千賀はいきなり肩口のスライダーを先頭打者清田にHR。デスパイネはまっすぐをHR。やはり新人には短期決戦は難しいなと感じた瞬間でした。

 先制されてもすぐ内川のタイムリーで1点返したことでチームが落ち着いた。内川の打点がチームにいけるという自信を与えたと思いました。そして次の打席ではHR流石の短期決戦男、優勝請負人ですね。

 6回、ファースト細谷のエラーで出た福田を刺した田村は大したもの。しかし今宮のバント構えから少し外して構えていたのを見るとホークスが何か仕掛けてくるというのも読まれていたんでしょうね。作戦を伊東監督に読まれることが多いのかな。見事にバスターやエンドランを読まれたのをよく覚えているので印象に過ぎないかもしれませんが。まあこういうところはさすが田村、伊東ということでしょうね。

 立ち上がりこそHRを打たれたものの、千賀はあとはよく抑えた。良かったのは田村と角中に与えたファーボール2つのみというところでしょうね。涌井は良くなかった。ベテラン涌井でさえボークをしてしまう。プレッシャーにやられましたね。被安打6の四死球3つですから。これで2点に抑えたのがむしろ流石と言えるでしょうね。

 両先発投手ともまだ行かせられる球数でも降ろした。短期決戦で次のゲームを考えるとやむなしの判断ですね。しかしスアレスが良かったのと対照的にマリーンズは内が悪かった。確か去年のCSもマリーンズはこうだった気がします。短期決戦で勝つにはリリーフの安定、1点リードしていれば絶対勝てるという信頼が必要。こういった後ろが安定していない状態ではロッテがCSを勝ち上がっていくのは厳しかったでしょうね。基本、この時期にこちらのチームは万全の状態で、あちらはシーズン終盤の優勝争いでボロボロという状態ではないと2・3位が勝つことはありえませんからね。直近だと、阪神が巨人を破った年ですね。ああいう状態でないと難しい。

 初戦は8回の今宮の2点タイムリーで勝負あり。サファテがデスパイネにHRを打たれたのが、サファテは未だにコンディションが戻っていないのかも…。と不安要素が一つ見えて嫌な所でしたね。内川の活躍は当然のことながら、長谷川の3四死球という繋ぎも地味に大きいですね。本多・細川の犠打で計3犠打。きっちり送っていくという戦い方をするつもりですね。バントがきっちり決まるのはこういう試合では非常に大事ですからね。

 気になるといえば、福田の内容が悪すぎること。セーフティ狙いは良いのですが、バントフライになってしまったこと。エラー出塁で盗塁失敗したこと。最後の8回のチャンスでファールフライ。良いとこまるでなしですね。これは使いづらい。

 解説では、マリーンズにまっすぐを待たれていたのか?途中から変化球を多くすることで細川がロッテ打線を翻弄したとのこと。

 これまでチームに居なかった復帰組の今宮・柳田の活躍でいつもの強いホークスが戻ってきている!というイメージが大事。今宮は大活躍だが、柳田は4-0。明日は札幌に繋げるために柳田が打って欲しいというゲームでしたね。

【二戦目】―バンデンハークVS石川。4-1で勝利
 清田の先頭打者ホームラン。追い込まれるまでは思いっきり振り切ってくる清田と、初回さらにツーベース打たれて一番怖いデスパイネに回る。デスパイネに外を見せてからのインハイまっすぐでつまらせてのゲッツー。本来のバッティングをさせない打席でこれでもうデスパイネの危険物処理は出来たかなと思う所。この日は4-0で完全にデスパイネを封じることが出来ましたしね。
 
 バンデンハークが右打者にインハイ行くシーンが何回かあって、そこにコントロールできるならもう安定するだろうという感じ。デスパイネが外スラを遠いと思っての見逃し三振なんか見るとキレッキレなんだろうなと感じる所。インハイが効いてるからこそ外が遠く見えて手が出ないというやつですね。これは初回の立ち上がりの乱れた所以外は完璧というワンチャンスだけパターンか。

 明石のスリーベース・タイムリーはゴルフくらい腕を畳んでレフトに運ぶ見事な打ち方。タイムリーに3四球。これは明石を使いたくなる内容。本多のタイムリーもインコースの低めの変化球をタイムリー。石川対策としてインコースか変化球に絞れの指示がでていたのかな?しかしやはり高谷は石川に合うんですね。逆転のきっかけになる2ベースを見ると。

 この試合も、晃・福田とバントを決めたのとは対照的にロッテは決めきれなかった。鈴木のバント失敗、速いバンデンとは言えガッチガチになってしまった。短期決戦らしい展開ですね。

 岩嵜・スアレス・サファテの完璧リレーに対しロッテはそうではなかった。リリーフ陣の差が明暗を分けた1stステージという感じでしたね。前日の内に続いてこの日は南の大乱調。大事な先制点を与えながらも、逆転勝ちするという実力の差をまざまざと見せつけた試合でした。これでは伊東監督も補強してくれないならやらないよ、続投はしないよというのも納得ですね。パーフェクトリレーでファイターズにプレッシャーもかけられたのでいい勝ち方だったと思います。唯、この日も柳田は沈黙。柳田の打席内容7-0というのが気になるところではありますし、ファイナルで命運を分けるポイントになりそうですね。

 デーブ大久保いわく、チームの士気を下げる細川のバント。3点差で細川がバント失敗。初球のバスターは細川のアイディア。二球目はベンチの指示で。スリーバント強行。今こういう場面ならもう打たせればいいとベンチは思ったはず。3点差に広がってイケイケになった場面で信頼ない細川とは言え、窮屈なことをやらせるとベンチが白ける。優勝を逃したのはこういう所だと。

 個人的には短期決戦なので慣れておくためにスリーバントでも良いとは思いますが、ベンチのムード・選手の掌握がどれくらい出来ていたかというのは確かにポイントなので、選手をノセるためにも思いっきりやらせるべきだったかもしれません。ベンチ内がバラバラで一体感が必要なのであれば尚更ですね。細かい作戦は選手を固くするといいますし、理に逆らったノリ・勢いを重視するというのも、ありといえばありなんでしょうね。

  まあ、こんな感じで1stの感想はおしまい。CSで一本で終わるだろうと思っていたら、全然無理でした。ファイナルステージ、VSファイターズの話はもっと長いので一本でまとめるなんてまず無理ですね。というわけで次回に続く。

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落合博満は何故GMとして結果を残せなかったのか?(後編)

落合博満は何故GMとして結果を残せなかったのか?(前編) の続きになります。前回、名GM根本さんの話をした続きです。そもそも名GMとはどういう人なのか?そしてNPB・日本球界では名GMが出る余地があまりないという話ですね。(※追記、結構需要がある記事なので追記をしておきます。前回は実力未知数というオチで話を終えましたが、今回は結局GMとして拙かった点が多々あるという指摘をして終わることになりましたね、この話。GMと監督、編成と現場の明確な権限分化という基本がなされていないのでスッキリしないオチになってしまうのがいかんともしがたいところ…。そもそもNPBの球団でフロントと現場がきっちり機能していないという前提がある以上、落合GMをはっきり無能・失格と断言出来ないという話なんですが、読んでいる人にちゃんとわかってもらえたかしら、この話?中日という球団の体質、白井オーナー、そして落合GM三者三様に問題ありということで中日が進む道は茨の道ということがわかっていただければいいですかね。新GM・新監督が有能ならば解決する話ではありません。中日がまともな球団になるとするのならばオーナーが新しい人に変わって、球団改革・近代的な組織づくりに着手したときでしょうかね。)


■名GM星野仙一はFA補強・トレードを積極的に行った
 名GMと言えば、他にもう一人好例として星野仙一氏があげられると思います。彼は監督として結果を残しているがゆえに名将(闘将)と言われますが、その手腕に疑問符がつくこともあります。かの野村克也は「彼はGMのようなことをやって編成に口を出すでしょう。それは本来の監督のやるべきことではない。彼のやっていることは越権行為でしょう」というようなことを言っていたと記憶してますが、彼の監督としての手腕は名参謀島野に支えられていたことなどもありますが、GMとしての手腕、選手獲得・補強面が強いんですね。かの1:4の大トレード、落合を中日に連れてきたのも彼の手腕ですからね。他にも愛甲・前田・関川・久慈・武田などといった選手も外からとってきていますね。

 阪神でも楽天でも数々の選手を獲得してきましたが、阪神では片岡・金本・伊良部・久慈・下柳。そして楽天ではメジャーリーガーの岩村・松井、最近ではロッテの今江で今年は細川に岸を獲得しました。選手を放出してチーム内の選手の入れ替えをすることを厭わないし、積極的に他所から選手を獲得するというのが星野仙一のスタイルですね。

■改革、組織の作り変えには子飼いで周りを固める必要がある
 優秀な選手を集めてチームの実力を高める。数を増やして少数に当たる、有利な状況を築いて不利な状況に相手を追い込むという戦いの基本戦略ですが、自分のやり方を進める上で子飼いを集めるというのは改革の基本ということもあるでしょう。GMとしてチームを作り変えることを期待された場合、かのように他所から選手を大量に取ってくるのは一つのセオリーといえますね。

 わかりやすい具体例としては、野村克也阪神タイガースの監督としてダメ組織改革を任された時に、全く自己の子飼いを連れてこなかったことですね。結果、ダメ組織改革に失敗しました。当時阪神の球団本部長だった野崎勝義いわく、野村が連れてきたコーチはヘッドコーチに松井優典、投手コーチに八木沢荘六、打撃コーチに柏原純一の3人*1だけで、他にも多くの注文が来ると思っていたがこれだけだったとか。

 一から腐朽組織を作り変えるためには大量の子飼い・トップの命令の意図を理解して手足のごとく働いてくれる子分を連れてこないと不可能。その常識を野村氏は知らなかった。後年、阪神はキャンプが終わればその後街で酒が飲みたいから、ミーティングで上の空だったみたいなダメ組織の空気、意識の低さのせいに論点をすり替えていますが、そもそもそういう組織・組織改革に対する理解が氏には欠けていたんですね。そりゃ阪神で失敗するに決まってますね。

 対照的に星野仙一島野育夫田淵幸一佐藤義則*2西本聖達川光男前田健(トレーニングコーチ)を連れてきています。二軍コーチに山口高志水谷実雄がいることもポイントですね。組織を変えるにはなるべく多くの子飼いを連れてくる、外様・外部招聘をするというセオリーをきっちり守っていたのですね*3野村克也が矢野・赤星などを育てていたことも大きいですが、星野仙一の優勝はこのような星野の組織改革の実績の上にあるもの。素直に彼の実力・手腕を褒めるべきでしょうね。

■子飼いで固めはしたものの落合GMは補強面で失敗した
 落合GMはコーチ人事で自らの好ましい人物子飼いで固めましたが、GMとして必要な選手補強という面ではまるで駄目だった。資金の制約上FAはもちろん、トレードも積極的にしてこなかった。自由契約からFAとなった小笠原に、著書に出たこともあるロッテ工藤という子飼いの獲得はありました。育成選手だった亀澤をとってきたのは見事で一定の効果ももちろんありました。しかし小笠原にせよ、亀澤にせよ、主力としてレギュラーとしてきっちり仕事ができたというレベルではありませんでした。

 楽天から金銭で復帰した岩崎をオリックス三ツ俣とトレードしたくらいで、あとは金銭で西武から捕手武山とソフトバンクから大場を取ったくらい。いずれも戦力として期待できるような選手ではありませんでした。それでも取れる選手を取っていると言われるかもしれませんが、チームを作り変えるときには星野仙一のように、あるいは根本陸夫のように大胆に主力を放出して大型トレードを実現させないといけない。落合GMにはそれが出来なかった。

 そもそも「オレ竜」と言われるように、独立独歩で行動していた落合には星野や根本のようなコネ・パイプがそれ程ない*4。ジジころがしの名人と星野が言われるように、個人的なスポンサーがいくらでもいるという政治力がなければGMとして成功するのは難しい。

 あるとすれば、一時期巨人の監督にと言われたように渡辺恒雄が彼を高く評価していたので、その繋がりで巨人と大型トレードを実現するといったところでしょうか。それが出来なかった以上、彼がGMで成功するのは難しいというべきでしょう。

■トレード否定派=GMとして不向き
 そして著書で本人が選手のためにはトレードを封印すると書いていたように、トレードというものに積極的どころか消極的。とするとそもそも前提としてGMの資質に欠けているわけですね。隙きあらばトレードを仕掛けるという人でないと、トレード情報は入ってこないしルートも築けない・機能しないでしょうしね。

■名GMの条件はトレード、クビにしてもアフターケア出来る政治力を持つ人間
 GMという仕事の本質は首切りにあるというところがある。名GMの二人がトレードなどで放出をためらわずに出来たのは、トレード=事実上の解雇・首切りをしても後々きちんとケアが出来る人物たからですね。引退後に「今までお疲れさん、一緒にやれて色々助けられたよ。ありがとう」とひと声かけて、就職の世話をきっちりしてやれば、首を切られた選手のほうも多少のわだかまりは残っていても、最終的には遺恨を残しませんからね。

 何より個人的な遺恨云々よりも、トレード≒組織からの追放を行うと、悪評が立つわけですね。気に食わないからクビにしたとか、さんざん酷使しといて投げられなくなったらポイ捨てだとか。そういう悪評がついてしまえば、あの人のいる球団に行けば簡単にクビを切られるぞとなって色んな交渉がやりにくくなるわけです。が、政治力があって、しっかり引退後などに面倒を見るコネがある人物なら、あの人についていけば安心だということになる。星野仙一の求心力が高いというのはつまるところそこにあるわけですね*5

 GMとしての資質は財力・政治力の有無にある。そういう能力に長けている人というのは二人しか今まで論じていないように、球界にそもそも滅多に出てこないというわけですね。ですからある人物・あるGMが、優秀なのか無能なのかと論じる以前に、そもそも日本球界は優秀なGMが輩出されづらい環境にあるわけですね。

■既存のトップだった落合全権監督は改革に向いた人材ではない
 あと、もう一つそもそも論になるのですが(「そもそも」を三回連続して言ってますね(^ ^;) )、中日は縁もゆかりもないどころか、つい先日まで8年間監督として巨大な権力を持っていたわけですね。腐った組織を一から作り変えなくてはいけないという状況ではなかったわけです。もともと自分がある程度築きあげた組織であるわけですね。ということは組織改革・構造改革をするのに向いた存在であるとはいえないんですよね。

 落合が散々上に文句をつけてきた、しかしこれまでバカなフロントはそれをやらなかった。GMになってようやくその改革ができる権限を手に入れた。落合の改革はこれからだ!―という状況でない限り、あまり落合GMというのは機能しない&するはずがないわけですね。

■中日の問題は経営と選手育成システムにあり
 ちらっと書きましたけど、中日の問題というのはホークスやファイターズのように若手が伸びてこないこと、育ってこないこと。きっちりファームで一軍でやれる下地を築いて、上でテストして使えるように育てるというプロセスが機能していないことにあるわけですね。

 構造的な問題が中日球団に存在する。選手を育てるには明確な前提・思想で意志が統一されていることが必要になる。例えばホークスなんかは身体能力を重視して、技術はなくとも可能性があるタイプの選手を下で三年間練習付けにして、それで芽が出なかったら諦めるという方針で育成選手を取っていますね。また基本的に強肩・強打・俊足をクリアしているタイプを取ってくる。その上で別基準で、ショートなど守備が大事な選手を獲得したり(例:今宮)、俊足強打ではなくとも卓越したバットコントロール・センスがあるタイプを取ってくる(例:中村晃・長谷川、取った時点では晃はちょっと違ったかもしれませんが)。まあ要するにドラフトで獲得する基準が明確になっている必要性があるわけですね。

■育成方針はチーム内で明確に共有されていなければならない
 ドラフトでウチならこういう選手を採用するということを、チームの一・二軍(三軍)で共有されている。育成方針が一貫しているから、所属チーム内のコーチ・スタッフが目指す方向・ヴィジョンが共有されている。例えば藤田太陽さんだったか、「阪神がスカウトとコーチの意図がズレている。スカウトの評価を無視して選手の持ち味を理解せずに、コーチの意向を押し付ける」というような話をしていたと思いますが、スカウトがどういう選手になると評価してドラフトで取るべきと推薦したのか。そしてコーチはその評価を受けてどういう指導をすべきなのかズレがあってはいけないわけですね。

 中日の実情がどうだったか知りませんが、若手が育っていないというのは一軍で落合監督が若手を積極的に起用してこなかったという事実もさることながら、スカウトとコーチの問題も大きかったと見るべきでしょう。落合GMが手を付けなくてはいけなかったのはそこですね。補強がGMの仕事であると言っても、強いチームの基本は育成にありますから、育成に問題がある組織の育成システムを一から作り直すことをしなかったというのは後々落合GMの評価を大きく下げることになるでしょう。

 逆に言うと今後中日で一軍で活躍する選手が出てきて、落合GMの育成システム見直しがあってその結果育った選手だ―という話になれば、落合GMはちゃんとやるべきことをやっていた。やはり名GMだったという話になるわけですね。今はダメGMという評価が定着していますが、数年後にひっくり返る可能性も一応あるわけです。そういう話を今のところ聞かないので多分無理だと思いますが*6

■選手がやりやすい環境を整えるのが「落合竜」、しかしGMとなって監督のやりやすい環境を整えるという発想はなかった
 コーチを子飼いで固めることを肯定的に書きましたけど、そもそも谷繁監督・谷繁政権になった以上は彼がやりやすいように彼と同年代かもしくは若いコーチにしなければいけないと以前書きました(※過去記事参照―【中日落合GM誕生】 落合博満は静かに、そして動じないで書いたと思っていましたが、こっちではありませんでしたね。タイトル的にこちらだと思いましたが、内容を見返したらこっちじゃなくて落合GMはコミッショナーの布石?で書いていました。まあ関連記事ということで一度貼っちゃったので残しておきます。)。そのつもりで落合GMもいる。兼任監督のサポート上、森ヘッドをおいているのだろうと書きましたが、専任監督になっても森ヘッドを置き続けていましたね。はっきり言ってやってはいけない悪手でしたね、森ヘッド続投は。彼が優秀であっても、彼がコーチで居座ればパワーバランスがおかしくなる。スマホゲームや居眠りをして叩かれていた加藤秀司コーチがいましたが、谷繁監督よりも年上でコミュニケーションを取りづらいことこの上ないだけでなく、選手育成の実績も上げられなかったとなれば落合GMの眼は節穴だと言われるのもやむなしでしょうね。落合自身が監督であればそんなことはなかったでしょうけど、年下の谷繁ならばそういうことが起こりうると想像できなかったのは問題ですね。

 かのように縁もゆかりもない年上コーチがいれば、規律が保ちづらくなるもの。その上森ヘッドという絶対的な存在がいれば尚更。谷繁監督は落合GMの傀儡だと叩かれたように、谷繁監督が現場組のトップとして適切な権限と責任を持つことができなくなる。GMとして戦力を揃えて、選手起用の方針など決めたら現場に介入せずに監督に任せるのが基本。その基本を逸脱していたのは言うまでもないでしょう。

GMとして指名した監督を守れなかったのは問題。説明責任を果たさないのも問題。
 個人的に一番問題だと思ったのは、選手の現役生活を全うさせること&契約重視が信条のはずの落合が兼任監督ということを打診しといて、引退後専任監督になって途中解任ということになってしまったこと。契約期間を守らせることができなかったことですね。兼任監督なんてGM兼監督のようなもので時代遅れなわけです。それで結果を出すことはまず出来ない。そういう選択をしたのにも関わらず谷繁を守りきることができなかった。4年契約を全うさせることができなかった。お家騒動で監督を選ぶことが出来ない事情がある中で谷繁を兼任監督にするという苦しい選択をした。そういう負担を押し付けといて谷繁を守らないのは無責任極まりない態度であると思います。せめて休養発表の時点で自分自身も辞任を示唆すべきだった&谷繁監督を守れなくて申し訳ないと謝罪すべきだったでしょう。それがないのはおかしい。責任を取るという点でも疑問ですね。

 谷繁が想像以上に馬鹿だった。監督として使えなかったという理由があったかもしれません。しかし、それならそれで落合はGMである以上、きっちりどうして谷繁が監督としてダメなのかということを説明をすべきだった、説明責任が果たされていないのは問題でしょう。

 また監督との意思疎通・コミュニケーションが上手くなされていなかったのも、組織として問題ですね。谷繁がまだ戦力として使えると思っていた選手がクビになって、それをGMから説明されていなくて選手本人から直接引退の挨拶を受けてどういうことだ?と怒っていたという話がありましたが、GMとして監督に相談する・意思疎通を常にしておくということができなかった。編成のトップと現場のトップのホットラインを築くことをしなかった。ホウ・レン・ソウが落合GMには出来なかったわけですね。

■全権を持つものは成功すれば絶賛されるが失敗すれば拙い手腕を非難される
 全権監督の時にドラフトで自分の好きなように選手を指名していたのに、谷繁監督はそうさせてもらえなかった。その上、ベイスターズの山崎のように谷繁が欲しがった選手は活躍して落合指名選手鳴かず飛ばず。こういうことが続けば、そりゃ不満が高まって責任を取るべきだとなるのは当たり前ですね。スカウトの意見があって、その上で意思決定をするのがトップとしてあるべきことなのに、そういう手順をすっ飛ばして独裁的な権限を発揮してしまえば、必ず下からの不満は高まる。説明・コミュニケーションを怠るところがあるというのは落合がGMというよりも組織を動かす資質に欠けていると見るべきでしょう。

 組織というのは同じ方向を向いた上で、上と下が意志を共有していないといけない。そのためには綿密なコミュニケーションが大事。そういうことを軽視する落合はGMに向いていない、成果を挙げるのは難しい。まあそんな結論で今回は終わりたいと思います。この話書くの3日・4日前に終わるはずだったが、めっちゃかかった…。まあいつものことですがね。更にまだいくつか書いておきたいことがあるので、うーん、付け足して3つにする。前中後編にしようかな。

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*1:誰だこれ?と思ったのでググってみたら、投手コーチの八木沢氏はともかく他二人は実績が見当たりませんね。本人は著書で「人事はコネではなく実力で行わなければならない」と書いていましたが、柏原氏が野村の南海クビの一連の事件に抗議して一時任意引退という事態にまで発展した経緯を見ると、まあ実力ではなくコネですよね。実力あるコーチをヤクルトで育ててそれを阪神に連れてきて、コーチを固めるというセオリーを守らなかった。優れた部下を育てることで組織を動かすというセオリーを踏んでいない。優れた部下に任せることをしない。まあそういう独裁者気質がある人なんですよね、ノムさんは。まあそれに見合う実力がちゃんと備わっているので、これは長所と短所は表裏一体という話になるのですが。あともう一つ、そもそも組織というのは実力主義だけでは絶対に機能しないんですね。コネであまり優秀でないコーチを連れてきたのだとしても、それはそれで実は重要な要素なんですね。組織を動かす上で、絶対裏切らない手足のような忠誠心100%の忠実な部下というのは絶対必要不可欠なので。まあ本筋と関係ないので詳しくは論じませんが

*2:はのちの腹心であって、星野が連れてきたわけではないですが、一応参考までに。後に彼を星野派に取り込んでいるのでまあ列挙して良いだろうという判断です。別に必ずしも外から連れてこなくても、乗り込んで説得して内にシンパを形成してもいいわけです。というか改革の手段としてはこれも常套手段・セオリーの一つですね

*3:この頃の阪神オリックス在籍者が目立ちますね、なんででしょうね?イチロー時代でオリックスが強かったからでしょうか?野村監督の辞任で仰木さんが有力後任候補だったからなのかな?

*4:もちろん、個人的な感想で実は企業のトップとか、某球団の代表とか色々あるかもしれませんけどね。知る限りではそういう話を聞いたことがないので

*5:与田を使い潰したと言われますが、その後彼の面倒をしっかり見ている。長嶋茂雄が條辺・三浦を使い潰した後知らん顔というのと対蹠的ですね

*6:聞いたのは社会人野球の選手を自分の目でチェックしていたという話です。でもそれはGMの仕事ではなくてスカウトがやることですよね。GM自身の目で確かめるのも仕事の一つだとは思いますが、それは最終確認くらいなもの。本来スカウトの仕事を自分でやるというのは少し違いますからね。逆に言うと優秀なスカウトを連れてこれなかった証左ということでしょう

2016パ・リーグMVP大谷選出への疑問

 日本ハムファイターズ大谷翔平選手が投手・DH両方でベストナインを受賞し、更に2016年度の最高選手に送られるMVPにも輝きました。この選出には強い違和感を抱いたので一本書いておこうと思いました(何故今頃?というのは単純に書こうと思って書いてなかったからです)。

 今回の選考は非常におかしい、はっきり言って選考基準を考え直すべきだと思いました。大谷翔平が素晴らしい選手であることは論をまたないでしょう。が、しかしMVPに選出するのは適当ではないと思います。

■今年の大谷の成績はMVPにふさわしいものではない
 大谷翔平の2016年度の成績は次の通り―
【投手】
 登板21(先発20) 10勝4敗完投4(内完封1)投球回140 勝率.714防御率1.86
【打者】
 104試合382打席(323打数)104安打22本塁打67打点 打率.322長打率.588出塁率.416

 この数字を見てどう思うかは各個人の主観や評価基準によって様々だと思います。個人的には投手としても打者としても一流から少し劣る数字だと考えます。1.5流の選手だと見るのが普通の数字だと考えます。

 が、しかし言うまでもなく大谷というのは二刀流という前人未到の挑戦をしている選手。1.5+1.5で超一流の数字を残しているとみなすことも出来なくはありません。そういう考えから彼をMVPに選出するという考えをする人も一定数いることでしょう。そういう考え方は十分理解できます。

 シーズンを終えた成績がこれくらいだとしても、投手としてローテを守りきった&打者として500打席以上立ったのならば、二刀流としてどちらでも一年間やりきったのでMVPに選ばれても全く違和感はありません。むしろ否定的な声に投打両方できっちり一年シーズンを通して働いたことは賞賛に値すると、擁護する側に回ったでしょう。しかし、今シーズンの大谷はどちらも一年間フルにやっていない、規定に達していない。それでMVPというのは筋違いではないかと思います。

■大谷はまだ体作りの段階の選手
 ノムさんはスーパースターが休むなというブラック企業の論理のようなことを言っていましたが、そういう主張とは別の論理で一年間きちんと出場していない選手は一流とはいえないと考えます。

 ただその一流云々とは別の論理・背景が大谷にはあります。彼はまだまだ高卒四年目(当時)であり、体作りの段階の選手。二刀流という前人未到の挑戦をしているだけに、怪我のリスクも倍(下手したらいつもの2倍のジャンプをして、3倍の回転をすることで回転エネルギーが加わって怪我のリスクも10倍に跳ね上がるところです)。そういう段階にある選手だけに、栗山監督も吉井投手コーチも彼のコンディションを守ることを念頭に、出場やスケジューリングに配慮したという背景があります。

 そういう選手、つまりまだ一年間まともに働くことが出来ない選手をMVPに選ぶというのはおかしいと考えます。上記の数字を以て、それでも十分な数字を残したと考える人もいると思いますが、あくまで一年間フルに働いてこそ数字というのは評価されるもの。一年間ずっとやるというのは非常に大変なことであり、その条件をクリアした選手たちの中でもっと数字を残した人間=タイトルを取った選手というのは素晴らしいと評価され、歴史に名が残り賞賛されるわけです。

■大谷MVP選出はフェアなものではない
 大谷は一年間通してパ・リーグの一流打者との数字競争をクリアしていない。打率・HR・打点などの数字で大谷が一番だという結果を残していない。タイトルを獲得していない。投手としても同じで、並み居る一流投手と三振や勝利や投球回といった数字で互角に戦っていない。これでMVPに選ばれるのは他の投手・打者に対してフェアではない。

 一年間通して安定して数字を残す、結果を出すというのは難しい。仮に大谷が一年間やった場合、投手としてはもっと数字が落ちたと考えられます。長いシーズン必ず何処かで調子の悪い日が来る。特に投手は疲労がたまり、コンディションを落とす。そこで炎上したりすることはエースでもあること。故に先発でローテを守りきっていない大谷にはケチがつくわけですね(打者起用を優先するという背景はあれど、本質的には彼の体を守るためにローテを飛ばすという決断を監督・コーチがして、大谷を大事に使ってきた。そういう選手がMVPにふさわしいとは思えません)。

 当然打者としても同じで、一時は史上初の規定打席到達せず首位打者という可能性もあったわけですが、それくらい打席に立っていないということ。首位打者というのはファーボールを選んで極力打席に立つ数を減らすことがコツだと落合氏が説くように、そもそも打席に立たなければ高い打率を維持しやすいのは当たり前なわけです。これはフェアとはいえない(それでも、規定打席到達せずに首位打者を取るのならばそれはそれですごいことには違いないのですけどね)。

 もちろん逆の可能性もあるわけです。一年やっても数字は落ちない。それどころか打者として三冠王に近い数字を叩き出していた。投手としては沢村賞を取るくらいにNPBに敵なし状態で無双したということも考えられる。大事なことはいずれにせよ、彼は一年間やっていないということ。そういう人間をMVPに選ぶべきではない。MVP選出基準をクリアしているとはいえない。基準を満たしていない彼をMVPに選んだ人間の考えを問いただしたい気持ちでいっぱいです。*1

■一番素晴らしい選手とそのシーズン最も活躍した選手というのは意味が違う
 大谷が日本で一番素晴らしい選手、スーパースターであることは誰も異論を挟まないでしょう。しかし彼はまだ一年を通してプレーすることが出来ない選手。まだ未完成の選手なわけです(吉井投手コーチいわく、完成度はまだ10%とのこと。身びいきで差し引くとしてもせいぜい30%くらいの選手でしょう)。大谷はNPB最も魅力的である選手・客を呼べる選手でしょう。また最も素晴らしい選手かもしれません。それでも、2016年のシーズンを振り返った時、最も一年間活躍した選手=MVPとして表彰しようという基準から見た時、それは当てはまらない。MVPの基準とは本来別物であるはずです。

 何回も繰り返して言いますがMVPというのは一年間、最も活躍した選手に与えられるべきもの。投手の中で一年素晴らしい数字を残した選手、そして打者の中で一年素晴らしい数字を残した選手をチェックして、結果優勝に最も貢献した選手が選ばれるもの*2

 余談として、この基準だと優勝チームの中に三冠王沢村賞という超一流の打者と投手がいた場合非常に難しい。投手と打者が別物であるという競技の性質を考えた場合、例外規定として投手・打者同時受賞がありうる制度に変えるべきでしょう。新人王でもそういう話があるくらいですし、NPBは例外規定を考えておくべきだと思います。

 そして大谷というケースは競技の性質上ありえない投手・打者の二つをこなしてしまう稀有な例。であるからこそ、基準がない。一流の打者・一流の投手と数字を比べて劣っている場合、もう一方の成績がこれくらいだから+アルファとして打者・投手の数字を足してMVPの基準を満たす。競合する選手よりもMVPにふさわしいということが言えない。非常に難しいケースなわけですね。

■大谷MVPは悪しき前例になりかねない
 大谷をMVPを選ぶべきではないと考えるのは、例えば今ファイターズが二刀流の挑戦を続けているように、今後二刀流の投打両方こなす選手が出てくる可能性があること。その選手が今年の大谷のように投手として半分、打者として半分という数字を残した場合、MVPを与えなくてはならなくなる。超ユーティリティプレイヤーで内外野捕も投手も代打もこなす。そして頑丈がとりえで毎試合投げて、打って守るという働きをする。が、数字はそこそこで使い勝手が良い枠を抜けない選手。そういう選手が10勝20本という今回の大谷のノルマをクリアしたらどうするのか?MVPを与えなくてはいけなくなるではないか。

 超器用な頑丈選手、仮に趙貴陽という名前にしましょうか。趙貴陽はただ異常に投げて打席に立って守備についただけ、たまにいいプレーをするくらいでMVPにはふさわしくない。その選手が今年の大谷くらいの数字を残した場合MVPを与えなくてはいけなくなる。

 大谷は凄い選手だからMVPを与えたが、趙貴陽はそうではないからという理由は通らない。そういう選手が出てきた場合、MVPを受賞出来なかったら大問題になるでしょう。*3

 いずれにせよ、将来二刀流選手のために投打のカウント基準を明確化する必要がある。投手メインの場合、打撃数字をいかにカウントして投手成績に上乗せするか?また打者メインの場合はその逆という換算式が必要になる。その時々の流れ、投高打低などの潮流があり数字の価値基準も上下動する。その変化に応じてMVPにふさわしい数字をきっちり評価する、カウントできるようにならないといけない。

 無論、人によって評価基準は異なるので、Aが選ばれたけど、AよりもB選手がMVPにふさわしい!と意見が割れるのは構わない。大事なのはその人がどういう評価基準・尺度からMVPに選出したかということをきっちり説明出来るかどうか。その過程が大事。

■タイトルを獲得せずMVP?
 また問題だと考えるのは、今回大谷が一つもタイトルを獲得していないこと。せめて一つでもタイトルを獲得していれば、タイトルホルダーという条件付けが可能だった。それがないのにMVPにしてしまったから、ハードルがわけのわからないことになってしまった。次、そういうケースが起こったらどうするんだという話になってしまう。本当に厄介な前例を作ってしまったなと憤るところです。

 大谷という選手は超一流。来年・再来年はますます成長して、出場試合数も増えるでしょうし数字も伸ばすでしょう。来年こそタイトルを投打でいくつも獲得して、今回のような微妙な話にならずに、文句のつけようがなくMVPを取ることは考えられるわけです。なのに、何故今年大谷にMVPを受賞させてしまったのか?非常に悩ましい事例だと思います。

 これは稀勢の里横綱昇進の話に通じるものがあると思います。目先の派手な事実に飛びついてしまって、祭り上げてしまう。微妙な事例であれば、さらなる精進を望んで次の結果を待つ。そういうことが出来なくなった。『うしおととら』のキリオ、天才的な素質を持つ子供が出てきたら矢も盾もたまらず、ホイホイ獣の槍の後継者に選んでしまったという話を思い出しましたね(適切な話かな、これ?)。

■大谷のDHとしてのベストナイン受賞は妥当
 また、DHとしての受賞について違和感を覚えましたので調べた所、基準を満たしそうな選手はいくらでもいるかと思ったら、実はほとんどいない。各球団でDHを担ったウィーラー、メヒア、レアード、長谷川、デスパイネが該当しそうですが、当てはまるのは実はロッテマリーンズデスパイネしかいない。

 楽天の外国人打者は打っていたイメージがあるので、条件を満たした選手がいるかと思いきや、殆どフル出場した選手がいない。唯一フルシーズン働いたのはウィーラーで140試合出場して、27本塁打88打点.265。打率で大きく数字を落としているがDH=大砲という役割を考えるとベストナインにふさわしいのでは?と思う所。が、しかしDH専ではなく、ファーストで48試合・外野で47試合出場している。

 西武メヒアは35本塁打を打っているものの、DH出場は41試合でDHで打った本塁打は6本のみ。DHで選出するにはDHでの活躍がメインでないことがネックとなる。守備位置なんか関係なく、打ってるのならDHにしてしまえばいいという考えもあるでしょうが、落合・松井がいうように、DHというの意外と難しい。守備について試合のリズムを整えながらでないと打席に入って力を発揮することは出来ないと言われるポジションです。バレンティンなんかも去年の日本シリーズでDHで使うよりも、下手でも守備に就かせて体を動かして温めたほうが打撃が良くなると言われたりしましたからね。その逆で去年の李大浩なんか守備に就かせるよりもDHの方が調子が良かった。そういうケースが有るように、DHで打撃が良くなる・悪くなるという要素があり、それを無視してはならない。DHで数字を残していない場合、ベストナインから除外されるわけですね。フルシーズンDHで固定起用されるケースが少ない上に、DHで実力を発揮する選手が限られるとなるとベストナイン資格を持つものは自ずと限られるのですね。

■現在のプロ野球でDH専門は希少
 DHというポジションは外野やファーストを守らせながら就かせるポジションであり、専門にするポジションではない。長いシーズンを戦うために、コンディションを落とした選手や怪我をした選手をDHにおいて様子を見るというのが今の野球では一般的。守れない・走れない選手をDH専で使うという偏った起用をするケースは今や殆ど無くなっている。そういうことを考えると、そもそもDH大谷の競争相手はいないわけですね。オリックスは持ち回りで使い、ホークスは長谷川が90試合ほどDHで出場していますが、十分な数字を残せなかったのは言うまでもありません。

 チームメイトのレアードも140試合をサードで出場しています。DHでの出場はたった3試合。39本塁打を打った彼の成績は紹介するまでもないでしょう。もし本塁打王の彼がDHメインで出場していたなら、まず彼がDHでベストナインに選ばれていたでしょう。またレアードの競争相手の松田がゴールデングラブを取って、前年度並みの35本くらいHRを打っていたら、松田がサードベストナインを受賞して、レアードはDHで選出されるという可能性もあったでしょうが、今年の松田はエラー連発でHRも30本台に行かず、打率も.259と振るわなかった。

 とまあそういうことを考えると、唯一の競争相手となりうるのはロッテのデスパイネしかいない。彼はキューバの国内リーグに参加しNPBでもプレーする。一年中野球をするという過酷な環境にあるために、DH専で試合に出る稀有な例のため大谷の唯一の競争相手になるわけですね(それでも7試合ほどレフトを守っています)。123試合535打席24本塁打87打点打率.268(全出場は130試合です)、この数字で大谷とデスパイネを比較するならば、特に大谷で文句はないでしょう。

 DHで見た場合、主にDHで出場した大谷*4デスパイネを差し置いてベストナインに選ばれるのもさほど違和感はありません。出場試合数で少しデスパイネに劣るところがひっかかりますが、DHというポジションの役割は何よりもHR。そして勝負どころでの大事な一撃ですから、今年印象的な一打の多かった大谷でもさほど問題はないでしょう。

 唯、DHでベストナインに選出されるというのは一応名誉ではあるものの、若い大谷には不名誉な要素がある。来年*5は外野で選出されることを目指してほしいと思うところです。DHで選出されているのに30本以上HRを打っていないというのも人によっては違和感を覚えるでしょうしね。

■MVPは数字上レアードがふさわしい
 最後に付け足しとして、ファイターズを優勝に導いたのに大谷の存在が大きかったのは確かですが、他にも一年間通して働いた選手はいる。投手としては宮西谷元は一年間素晴らしい働きをした。有原・増井・高梨・マーティンなどはいい働きをしましたが、一年間与えられた役割を全うしなかった所があるので除きましょう(高梨の場合は途中から先発に格上げされたので、負の面はないのですが。役割的にMVPというのは難しい。数字的にもね)。NPBは中継ぎ・セットアッパーが評価されづらいので、この二人のMVPが無理だとしても、打者に打点王中田にHR王のレアードがいる。この貢献度はMVPとして文句ないレベル。打率・打点・本塁打をトータルで見るとレアードの方が上。MVPはレアードで文句ない。

 大谷はホークスを逆転する1番で先頭打者HRという印象的な活躍がありましたが、MVPというタイトルをこれまでの基準で考えた場合、やはりMVPに選ぶのは適切ではない。ましてチームメイトにレアードというふさわしい数字を残した選手がいるのならば、タイトルホルダーという基準をクリアした選手がいるのならば、レアードにすべきだった。

■通常なら投手のベストナインは和田
 またホークス和田が最多勝最多勝率のタイトルを取りながら、同じく大谷のためにベストナインを逃しています。打者ならともかく、投手というのは一年間与えられた役割をきっちりこなすこと。ローテを守るかセットアッパーとして60試合前後をきっちり投げることが何よりも大事*6

 個人的に今年優勝できなかった要素として、というか勝負どころで勝つことこそエースの役割なので、それができずチームを優勝に導けなかった和田にベストナインと言うものを与えるのには違和感がありますが、それは個人的な感情でしかなく、NPBのこれまでのタイトル基準から考えれば間違いなく和田になるはず。そういう基準を恣意的に捻じ曲げるようなことはすべきではない。

 終盤肘を痛めて2試合ローテを飛ばして24試合というのはちょっと引っかかるところですが、それでも規定に到達していない大谷と比べるのならば間違いなく和田でしょう。また二年連続セーブ王に輝き、パ・リーグ新記録の43セーブをあげたサファテだって選ばれてもおかしくないと言える。今シーズンは無茶苦茶な使われ方で失敗が多かったというマイナス要素がありますけどね。まあ分業制が進んだ今、代打や代走、セットアッパーにクローザーというのをプラスしてベストナイン~イレブンとして選出するほうが適切でしょう。こちらの場合は該当者なしを基準にして素晴らしい選手がいたら選ぶということにすればいいでしょう。

■糸井のゴールデングラブ賞も適切ではない
 この話に絡んで糸井のゴールデングラブ賞受賞についても一言。糸井は足の影響で今年は守備範囲が狭まって、守備では貢献度が低かった。西川や中村晃の方が守備で貢献度が高かったと言われているように、糸井が選ばれる根拠がない。普段の守備では守備範囲が狭かったが、ファインプレーを連発していた。勝負どころできわどい打球をアウトにして流れを引き込んだなどの根拠が本当にあるのでしょうか?例えばファイターズ・ホークスの直接対決で陽がサヨナラになる場面でファインプレーでファイターズを勝利に導き、優勝に大きく貢献したワンプレーがありました。そのような素晴らしいプレーがいくつかあったのでしょうか?それならば数字以上の勝利の貢献があったということで納得できるのですが…。

■公明公正なタイトル競争のためにタイトル選出者の資格を審査する新制度を導入すべし
 いずれにせよ、タイトル選定が記者投票制という不確かなものである以上、そこにチェックが必要であると思われます。今回のように大谷の選出はおかしい!となったら、その投票をした記者らは実名と投票理由を明確にする。そのおかしい投票・選出理由を繰り返した場合は、基準を喪失するといったようなチェック制度の導入が必要であると個人的に考える次第です。今回の事例を見ると、無記名投票は好ましくないと言わざるをえないでしょう。無論、記名制にした場合それはそれでまた癒着など別の問題も起こってくるのでしょうけどね…。

 公明公正なタイトル選定のために記名・審査制度に変えるべきだと思いますが、まあNPBが率先して「やるじゃないか!」という改革をすることはないので、言うだけ無駄でしょうけどね。簡単に書き終わるからこのネタを先に書こうと書いたはずなのに、何故こんなに長くなった…。

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*1:今回のように投打両方で規定に到達していないのにMVPとなるのなら、せめて一試合も休まずに投打どちらかで出場した場合でしょう。その場合ならまだ説得力を持ったと思います。が、言うまでもなく何度か怪我防止や、コンディションのために休んでいますからね。それでMVPに選ぶというのはおかしいと言わざるを得ませんね

*2:時に優勝チームの中で際立った数字を残した選手がいない場合には優勝チーム以外から選出されるケースもありますが

*3:現実的には考えにくいので、考えやすい例として、30本くらいHRを打つ強打者で基本中継ぎ・守護神タイプにしましょうか。そういうタイプで投手としては便利屋で先発・ロングリリーフ・セットアッパーとして大車輪の働きをして、10勝20Hくらいの40試合登板するタイプにしましょう。それはそれでもちろんすごいですが、投打でタイトルは取れない、そういう選手が出てきたらどうするんでしょうかね?個人的には大谷が受賞できて、その選手、また趙貴陽という名前にしておきますか。趙貴陽が受賞できないとなれば大問題になると思いますが…

*4:DHで80試合、投手で7試合で、途中出場が17試合です

*5:もしくは再来年、でも再来年にはMLB行ってるんでしょうけど

*6:まあベストナインは殆ど先発なので後者は参考程度に

落合博満は何故GMとして結果を残せなかったのか?(前編)

落合GMの辞任について書きたいと思います。

 就任一年目の2004年にいきなり優勝し、07年にはCS勝ち抜けの日本一。福留のメジャー移籍やWBCで主力選手が抜けた08年の3位を除けば全て1位か2位という驚異的な手腕を発揮しました。監督最終年には球団初のリーグ連覇を達成と文句のつけようのない結果を出し続けてきた落合は名監督・超一流の監督であることは言うまでもないでしょう。

 現役時代も3度の三冠王という記録を残すなど超一流の打者・選手であったことは揺るぎない事実であり、「名選手かつ名監督」という稀有な存在でありました。かくいう己も落合氏の見事な手腕と独特の分析・着眼点から彼のファン・信者となって、彼の発言を逐一チェックするようになりました。

 彼が14年にGMに就任することが決まったときには、どうやって中日を立て直していくのか、ワクワクしながら見ていたものでした。しかし結果は谷繁監督の途中解任と3年連続Bクラスという結果に終わりました。

■名監督、名GMとは限らず
 名選手、名監督ならず―の逆を行く「名選手かつ名監督」だった落合。その落合ならば「名選手かつ名監督かつ名GM」になるだろう。ところが実際はダメGM・愚GMという結果に終わりました。超一流選手・超一流監督、しかしGMとしては二流・三流。

 中日的・落合的に言うとオレ竜ならぬ二竜・三竜でしょうか?まあそんなくだらない話はさておいて、なぜ落合はGMとして成功しなかったのか?という話をしたいと思います。監督としてダメならば、いつもの「名選手、名監督ならず」だったで話は終わりますからね。

 「名監督、名GMならず」ということがありうるということは今後の日本球界にとって非常に重要な視点かもしれませんので、語っておくことも大事だと思いますので今回はそんな話をしたいと思います。

GMとは?
 そもそもGMとは何なのか?メジャーではGMという制度が根付いています。球団のフロント・編成の最高責任者ですね。General Manager=組織のマネジメントを担う最高位職と言った感じでしょうか。近代化・官僚化以降の組織というものは、部門毎に権限を分ける。担当・部門毎に分けてそれぞれの職務を担当する。そして最高・中央司令部がそれを統括する。一番上のトップの組織が意志決定を行い、指令を出す。与えられた指令を各部門は実行する。それが基本ですね。明確な戦略・ビジョンがない場合は最高位の機関が明確な指示を出さずに、「よきにはからえ」で現場に丸投げをするということもママありますが。

 まあ、要するに組織を動かす最高責任者がGMです。軍隊なんかでは現場の実行部隊と違い、組織の意思決定などの指示を出す人たちを制服組と呼びますが、まあその制服組のトップとしてもいいでしょうね。デスクワークと現場の両者を明確に分けて更にその上にトップがいるなんていう形態も珍しくないですから。球団社長の下にGMがいる。GMは組織の序列上の2位・3位ということもまあありえるので。大統領と首相の関係のように、球団代表がNo1でGMを選んで経営を任せる。No2であるGMの人事権を持つだけで経営にはノータッチというのが一つの基本的な形でもありますしね。

 アメリカ・メジャーリーグGMという制度が一般化しているのは、職務の権限を明確化してその責任を担う事が経営上の基本、大事なことだからですね。成功すれば高報酬、失敗すれば責任を取らされて首を切られるというわかりやすい公式が成立しています*1。強いチームを作るには良いトップ=良いGMを連れてくればいいということになるわけですね。

 現場の監督ならば、目標は優勝ですから勝利を念頭において采配をふるえば良いわけですが、GMの場合はまたちょっと異なる要素があるわけです。当然、勝つために強いチームを作るということを目指しますが、球団経営のいちばん大事な要素は黒字を出すということですから、勝てなくても、人気がなくても、収益さえ上がれば成立するわけです。なので時に成果を挙げられない評判の悪いGMがいるわけですね。優れた選手をホイホイ放出することを厭わず、目先の金を確保するタイプが。

 まあ当たり前の話ですが、30近く球団があるメジャーにおいて、すべての球団に金があって、ファンが熱心に支持してくれて、優勝を目指して強いチームづくりだけを目指していればいいという環境にあるわけではないのですね。

 日本の球団でも強いチームづくりを目指しているのではない球団が幾つかありますから、まあいわずもがなでしょうか。勝つ気がなく惰性で球団経営をしているというのは枚挙に暇がありませんからね。勝つ気がないのではなく、単純に球団経営、強いチームづくりというものを理解していない可能性もありますが、まあそんな話は置いときましょう。

GMの目標は必ずしも強いチームを作ることではない。オーナー・球団トップの意向に沿うことがGMの役目
 GMというのは経営の要素、ビジネスの要素がある。とすると結果=勝利ではなく、結果=黒字もしくは球団の値段の維持になる。現在マイアミ・マーリンズに球団売却の話があるように、親会社・オーナーが変わる時、球団の価値が下がっていたら球団自体の存続が危うくなるわけですから、GMの最優先課題というのは球団の価値の維持及び向上になるわけですね。当然雇い主であるオーナーや企業の意向である収益を上げろという意向も無視できない。となると、ドケチ経営で選手やスタッフに給料を払わずに、絞り上げたお金をオーナーにーということもありうるわけです。

 選手・球団(職員)・ファンよりもお金ということはまあ何時でもどこでもブラック企業のような利益至上主義の会社で聞く話なので、特に違和感を抱く話でもないかと思います。で、長々こういう話を何故したかというと、GMには①チームを強くすることを求められて就任するケースと、②利益・黒字を出すことを求められて就任するという二つのケースが有るわけですね。

 てっきり、落合GM就任というのは①の方のチームを強くするためだと思いこんでいましたが、実は落合GMというのは②のお金の要素が強かったわけですね。就任直後に8億円のコストカットをしたということで話題になりましたが、結局白井オーナーの判断というのは、常勝軍団を作ることよりも球団の維持に重きが置かれていたということでしょう。

■年俸抑制・コストカットはチームを弱くする
 年俸抑制という手段は球団を保有する上で手っ取り早い手段ですが、当然それを行えばチームの士気が下がる・弱くなるのは当たり前の話ですよね。この会社で働いていたら、最近までは景気が良くて同業他社に比べて給与が高い会社だったけど、業績悪化に伴って優秀な(?)同僚・先輩たちの給料が軒並み20~30%以上カットされた。今後も給料が上る見込みはない―そんな状況になったら選手のやる気は削がれるに決まってますからね。

 そんな状況でその会社の雰囲気・空気は良くなるわけがない。そのイライラは当然伝播してファンと喧嘩したり、コーチと選手が衝突したりという最近の組織としての歪な事態につながるわけですね。

 そもそも中日という球団は、セリーグの中で阪神・巨人と並んでFAでの補強を厭わない球団だった。ウッズ・和田・谷繁・川崎などなど他球団から主力選手を取ってくることが絶対ではないにせよ、重要な要素を占める球団だった。FA補強ができるということは、要するに資金力があるということ。資金力がなくてFA選手が取れないだけならまだしも、既存の選手をつなぎとめるのに必要な資金がなくなった。そのため総年俸抑制・コストカットをしなくてはならなくなったという重要な経営の転換点があったわけですね。

 その中日ドラゴンズという球団の転換期にあって、その変革を落合GMに任せようということになり、コストカットを行った。これが決定的な失敗だった。金満球団ではないにせよ、資金力のある球団から資金力のないケチケチ球団になった。旧態依然の親会社頼みの球団経営をしてはいけないというのは今年日本シリーズに出た2チームのファイターズ・カープを見てもわかること。親会社に頼らず球団がきちんと努力をすれば収益をあげられるというのは、最近新規参入してきたDeNAベイスターズで自明のこと(DeNAになってから売上が大体倍になっていますからね)。ホークスも球団単独で黒字を上げていることからもわかるように、戦略を持って適切な経営を行えば、年俸抑制というコストカット、つまり従業員の懐に手を突っ込むという負の手段に頼る必要性はないわけです。

 利益を上げるために球団にも時間が必要でしょうから、一時的な年俸抑制というのはやむを得ない手段であり、それは致し方ないと思います。選手にも「今こういう努力をしている最中で、成果が出たらまた元の給料基準に戻すから、頑張って数字を残したらちゃんと前みたいに年俸を上げるからしばらく我慢してくれないか」と説明をしたら、選手も反発をすることはなかったと思います。

 平田・大島が落合GMを嫌って反発した。このままでは中日を去るだろうと言われたのもこれによるわけですね。「確かにチームは低迷しているし、優勝もできていないが、自分たちはきちんと結果を出している。数字を残している。なのに給与に反映されないのはおかしい。適切な経営努力をして黒字を増やして、選手の給与に当てる割合を増やそうともせずに、何だその態度は!」と反発するのは当然ですね*2

■年俸抑制は間違いではない。が次の一手経営の改善が必要だった。その次の改革に手を付けなかったのが失敗の本質
 落合GMが適切な対策を打たなかった、黒字を増やすために中日ドラコンズをより魅力的な球団にすることをやらなかった。問題はこれに尽きるわけですね。しかし、これは落合GM一人の責任ではなくて、むしろ球団やオーナー白井氏サイドの責任と言えるでしょう。どうみても落合GMは野球バカ(否定的な意味合いではなくね)で野球畑の人間。そんな人間が収益を上げる云々経営畑の話がわかると思えない。今後いかにして球団を生まれ変わらせるか、抜本的な改革をする人物を連れてきて、一から球団経営を見直すことを行わなかったことのほうが問題でしょう*3

 また、親会社の予算がなくなったというのなら、日本ハムファイターズが行っているように、最初から総年俸の予算を決めて、BOS(ベイスボール・オペレーション・システム)という基準を作る。その基準に従って選手の年俸を決定するというような公平な査定基準を導入するなどやり方はいくらでもあったはずです。

 そういう基準づくりをせずに、落合GMという一個人に委任してしまった、任せきってしまったところに問題があったわけですね。どうみても誰かトップ一人でなんとかなるような性質の問題ではない、構造的問題であり、組織として体制を一から改造しなくてはいけない問題。そうせずに問題の本質を見誤って、優秀な一個人に全面委任するという決断を下した。これは白井オーナーの根本的な認識ミスであると言うべきでしょう。

■白井オーナーや球団トップの責任は落合GM以上に大きい
 彼は落合監督招聘のときにも、色んな監督候補が上がっても、次々NGを出して最後に出た落合の名前にようやくGoサインを出したという経緯があります。優秀なトップ・人材を選んで全面委任すればそれでうまくいくという過去の成功体験を未だに引きずっている可能性は高いでしょうね。それで今回一度落合GMという体制で痛い目を見たわけですが、果たして次こそは問題の本質はGMや監督ではなく、経営判断をする球団トップだと理解して対策を打つことが出来るでしょうか?これまでの経緯を見るとなかなか厳しそうな気がしますね。

■落合GMは無能か?
 ここまで書いてきたことを読むと、では落合GMはやはり無能ということでおしまいになりそうですが、正確に言うと落合のGMとしての実力は未知数と言うべきだと思います。個人的に落合を高く評価しているから、こういうのではなく、そもそもGMが実力を発揮する前提として、球団が強くなろうというビジョンを持っているかどうかというのがあると思うからです。ファイターズにしろ、ベイスターズにしろ球団がちゃんとチームを強くしようという意図があるわけですね。

 ところが落合GMの中日のケースでは、球団がそもそも経営を根本的に見直して強いチームを作ろうという意志・戦略がなかった。資金力があって資金面でのバックアップがある。その予算から選手補強を行えるという前提がなければ、日本・NPBにおいてはGMの役割は殆ど無い。GMとして出来ること、選択肢がほとんど与えられていなかった。そういうことを考えると、落合GMの手腕は未知数というのが適切かと思います。

 ただ、NPBの閉鎖的な環境*4では、ファイヤーセールのような選手がホイホイ放出されることもない。大型トレードが当たり前でもなく、FAで選手を放出してその代わりにドラフトの指名権利をもらうなどといった選択肢もない。NPBでは優秀なGMというものがそもそも出ることが殆ど無いといえます。

 日本だと監督が全権を持って、GMのようなことまでやるのが一般的だった。あまり知らないのですが日本ハム大沢親分がそんな感じだったとか。GMよりも全権監督のほうが結果を出しやすいという要素はあるでしょうね。明確に球団経営・ビジョンがしっかりしていないなら尚更。

■過去の名GM根本陸夫星野仙一
 GMといえば、やはり西武ライオンズダイエーホークスの黄金時代を築いた根本陸夫氏だと思います。彼がどうやって強い球団を築いたかというと、それは球界に張り巡らせた人脈にあるといえると思います。アマ球界の情報を正確につかむことは、将来のスター候補がプロの世界で当たるかどうかということを知る上で不可欠ですし、何より不人気だったパ・リーグに来てくれるかどうかわからない環境では選手を家族や高校・大学・社会人野球の会社を含めて囲い込む必要がある。物量作戦で、ありとあらゆる関係者の世話をすることで優秀な選手を入団させる必要があった。

 またスカウトというのが全国のいたるところでアマチュア選手を見ているように、優秀なスカウトをどれだけ確保しているかということがドラフトの成否を分ける。ドラフトで優秀な選手を取れるかどうかが、チームを強くするか弱くするかを決めるもっとも重要な要素と言えるといっても過言ではありません。根本氏が二つの弱小球団を常勝球団、球界を代表するチームに変えることが出来たのは、いろいろな要素があるでしょうが、彼の人脈網に加えて、優秀なスカウトを知っていた・チームに迎えることが出来たという点が大きいといえるでしょう。

 根本・星野の話でそもそも優秀なGMとはどういう能力を持った人間か?GMに必要な資質とは何か?という話をこれからする予定でしたが、長くなりすぎたので分割しました。中途半端な感がなくもないですが、一本にするとあまりにも長いので。続きはこちら→落合博満は何故GMとして結果を残せなかったのか?(後編)

 

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一応、楽天リンクも。(采配落合博満バッティングの理屈強竜列伝 栄光の軌跡編)

*1:無論、アホオーナーがアホGMを連れてくるという事例もあるのでこの組織のセオリーも絶対的な話ではありません

*2:契約更改の席で大島に一番として得点圏打率がどうたら、守備がどうたらケチを付けていましたからね。払える金がないのでそうやって少しでも評価を下げようとそういう事を言ったのでしょうけど、まあそんなこと言えば当然嫌われるに決まってますよね

*3:というか、落合政権時代から客が入らないという話がされていて、集客のために何ら具体的な改善をしてこなかったことにもっと注目すべきだったでしょうね。それを玄人好みの野球だからと落合野球に責任を押し付ける声がありましたが、DeNAが無茶苦茶弱くても集客に成功した事実を見てわかるように、要するに球団の営業力次第ですからね。弱いならともかく強ければ地味でも集客はやり方次第で絶対にできたはずですね。問題の本質は球団のビジョンのなさ・旧態依然の経営にこそあるわけですね

*4:悪口ではなく、メジャーと比較して選手の移動がオープンではないことを指します

身体の話(2016/11?)


 ようやく首も治ってきて、締切迫っていた本も返して、未消化の野球ネタを消化したいと思います。今シーズンのおかしかった継投のチェックやら、CS・日本シリーズ、来季へのホークス人事・選手の移動で4本は書きたい。落合さんが中日を去ったこととか、巨人ネタとかカウントすると6本は描くことが溜まっているわけですが、1月中に3本くらいは消化して終わってるはずですが、どうしてこうなった…。まあ、そんな愚痴はさておいて、とりあえず簡単に更新できる身体論から更新したいと思います。先月の穴埋めとして回すかな?これ。

 ○ヘッドバンギングでゆるめる―シャワーで頭を洗っているときに気づいた身体のゆるめ方。低い位置にシャワーを固定して手を膝について頭・背中・腰をゆらす。当然やり過ぎたら危険な行為だが、シャワーを浴びながらの姿勢でゆすることで背骨を効果的にゆるめられる。もちろん、よく映像で見かける危険な十代・切れる若者みたいに激しく振るのはダメ。頭を振ると言うよりも、身体・背骨を振る。腰を揺らすことができればそれでも良いと思うが、それを全身にうまく波及させたい。腰より上をほぐすことが効果的にできるやり方はあまりないので良いと思った。軸タンブリングなんか、背骨が上手くゆすれないけれども、この姿勢だと上手くゆれる。まあ、当然軸にはならないけれども、軸を作る前のほぐしとして良いのではないかと思う。

 四つん這いで、四足で地面に手をついた姿勢でゆらして上手くゆるむのならそれでいいと思う。まあ、個人的にはそれではあまりうまく揺れないので、こちらのほうが効果があると思う。直立から自然に腰を曲げて、膝に手をおいて頭・腰・足と横から見た時に三角形に見える形ですね。まあ、そんなに姿勢にこだわらずに、揺らして自分で一番いいポジションを探すのが良いでしょう。膝も腰も自然に任せてOK。

 頭から背中を軽く揺らすことでゆるめていく。逆に足からゆるめて波動を上半身にゆるめるのもいいかと。うまく背骨全体がうねるとポーンと気持ちよく抜けるところがある。地面にスターンと抜ける感じがポイントかな?まあこの場合、地面から天への垂直軸と体軸は切り離されて直角で交わる形になるので、背骨が頭から尻へ地面から見て垂直に抜けるということだけど。そういえば、武田鉄矢さんが尻尾があるようにという意識の話していたっけ。今度は尻尾を意識してやってみるかな。そんなことを思ってやってみましたけど、あんまり感じは変化しませんでしたね。


 ○壁たて伏せ、机などに倒れ込みながら落下感覚を鍛える。そんなことを多分前にも書いたと思いますけど、階段で登る時に、一段ごとに倒れ込みながら練習するというのもいいのかも。人目に触れると恥ずかしいので人がいないことを要確認で。


 ○肩甲骨、骨ほぐし*1と肩甲骨を突き出す腕立で可動域が広がった話。ふと、骨ほぐし・骨ストレッチをやったところ、背中・肩まわりがラクになって気になって本をチラ見してやっていました。手首と鎖骨と頭上でバタフライの腕の使い方で手首を掴んでほぐすやつくらいですけどね。

 で、はてなブログだったかな?肩こり対策云々で肩甲骨の可動域を広げようみたいなのを読んで、久々に肩甲骨を突き出す身体操作をやって、固まっていることを実感。肩甲骨を突き出して、背中あたりの肉が肩甲骨同士で挟めるようにする。椅子かなんかに手をついて、腕立て伏せをする姿勢で、腕力・上腕二頭筋や三頭筋・大胸筋に力を入れるのではなく、肩甲骨を動かす。肩甲骨が突き出るように背中側に力をかける、圧力をかける用にする。肩甲骨はローリング・回転することや左右・上下に動くことも大事なので、いろいろな方向に動かす。お風呂上がりに体が柔らかい時にやると効果的。

 いきなりやると痛めるので、徐々に可動域を広げること。決して無理せずに、ちょっとでも痛いと感じたら間を開けて次の日とかにまたやったほうが良いと思いますね、痛めたという話をよく聞くので。肩こり・背中の疲れ・痛みというのは肩甲骨のそば・周辺の筋肉から固まっていくので、そういう痛みを持っている人にはオススメですね。肩甲骨剥がしが最近ではアスリートの常識になっていると思いますが、必ずパートナーがいるので、一人でもできるやり方なのでいいかと。

 ラジオ体操などにある身体をねじる運動が、年取ってから若い頃より回らなくなった感があったが、これをやって肩甲骨・背中の可動域が広がった結果、スムーズに回るようになった。ちょっと腰をかがめると腰が辛くなるようになったが、背中とかすぐ疲れるようになってきたので、その対策・ケアに有効だと思いました。

 ゆる体操で肩をぐるぐる回すやつで肋骨が動くような感じがまるで無かったんですが、可動域が狭かった。固まってたからなんでしょうね。ちょっとやってみたらちょっと動く感はありましたね。まあ全然肋骨動かないんですけど。

 ○肋骨をアコーディオンのように使う―んで、肋骨を動かすという話になって、そのアプローチとしてアコーディオンのように動かすという話。脇の下に手を入れて、肋骨を抑えて(もちろん力を入れずに軽く触るだけ)アコーディオンのように肋骨を伸ばしたり縮める。左右それぞれやる。肋骨を動かすことで肩甲骨と肋骨の癒着が弱まるのか、添えた手によって支えが増えた結果かわからないが、肩甲骨が背中の中央により易くなる。可動域が広がる。添えた手の上に脇を乗っけるイメージでズルっとやると、より肋骨と肩甲骨が別れる・肩甲骨が浮く感覚があった。

 とまあ、そんな身体で感じたこと・気づきをメモ。

*1:ゆるめる力 骨ストレッチ/文藝春秋

読んだのこれだったのか、どうか忘れましたが。