読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい

落合博満は何故GMとして結果を残せなかったのか?(後編)

落合博満は何故GMとして結果を残せなかったのか?(前編) の続きになります。前回、名GM根本さんの話をした続きです。そもそも名GMとはどういう人なのか?そしてNPB・日本球界では名GMが出る余地があまりないという話ですね。


■名GM星野仙一はFA補強・トレードを積極的に行った
 もう一つ好例として星野仙一氏があげられると思います。彼は監督として結果を残しているがゆえに名将(闘将)と言われますが、その手腕に疑問符がつくこともあります。かの野村克也は「彼はGMのようなことをやって編成に口を出すでしょう。それは本来の監督のやるべきことではない。彼のやっていることは越権行為でしょう」というようなことを言っていたと記憶してますが、彼の監督としての手腕は名参謀島野に支えられていたことなどもありますが、GMとしての手腕、選手獲得・補強面が強いんですね。かの1:4の大トレード、落合を中日に連れてきたのも彼の手腕ですからね。他にも愛甲・前田・関川・久慈・武田などといった選手も外からとってきていますね。

 阪神でも楽天でも数々の選手を獲得してきましたが、阪神では片岡・金本・伊良部・久慈・下柳。そして楽天ではメジャーリーガーの岩村・松井、最近ではロッテの今江で今年は細川に岸を獲得しました。選手を放出してチーム内の選手の入れ替えをすることを厭わないし、積極的に他所から選手を獲得するというのが星野仙一のスタイルですね。

■改革、組織の作り変えには子飼いで周りを固める必要がある
 優秀な選手を集めてチームの実力を高める。数を増やして少数に当たる、有利な状況を築いて不利な状況に相手を追い込むという戦いの基本戦略ですが、自分のやり方を進める上で子飼いを集めるというのは改革の基本ということもあるでしょう。GMとしてチームを作り変えることを期待された場合、かのように他所から選手を大量に取ってくるのは一つのセオリーといえますね。

 わかりやすい具体例としては、野村克也阪神タイガースの監督としてダメ組織改革を任された時に、全く自己の子飼いを連れてこなかったことですね。当時阪神の球団本部長だった野崎勝義いわく、野村が連れてきたコーチはヘッドコーチに松井優典、投手コーチに八木沢荘六、打撃コーチに柏原純一の3人*1だけで、他にも多くの注文が来ると思っていたがこれだけだったとか。

 一から腐朽組織を作り変えるためには大量の子飼い・トップの命令の意図を理解して手足のごとく働いてくれる子分を連れてこないと不可能。その常識を野村氏は知らなかった。後年、阪神はキャンプが終わればその後街で酒が飲みたいから、ミーティングで上の空だったみたいなダメ組織の空気、意識の低さのせいに論点をすり替えていますが、そもそもそういう組織に対する常識が欠けていたんですね。そりゃ阪神で失敗するに決まってますね。

 対照的に星野仙一島野育夫田淵幸一佐藤義則*2西本聖達川光男前田健(トレーニングコーチ)を連れてきています。二軍コーチに山口高志水谷実雄がいることもポイントですね。組織を変えるにはなるべく多くの子飼いを連れてくる、外様・外部招聘をするというセオリーをきっちり守っていたのですね*3野村克也が矢野・赤星などを育てていたことも大きいですが、星野仙一の優勝はこのような星野の組織改革の実績の上にあるもの。素直に彼の実力・手腕を褒めるべきでしょうね。

■子飼いで固めはしたものの落合GMは補強面で失敗した
 落合GMはコーチ人事で自らの好ましい人物子飼いで固めましたが、GMとして必要な選手補強という面ではまるで駄目だった。資金の制約上FAはもちろん、トレードも積極的にしてこなかった。自由契約からFAとなった小笠原に、著書に出たこともあるロッテ工藤という子飼いの獲得はありました。育成選手だった亀澤をとってきたのは見事で一定の効果ももちろんありました。しかし小笠原にせよ、亀沢にせよ、主力としてレギュラーとしてきっちり仕事ができたというレベルではありませんでした。

 楽天から金銭で復帰した岩崎をオリックス三ツ俣とトレードしたくらいで、あとは金銭で西武から捕手武山とソフトバンクから大場を取ったくらい。いずれも戦力として期待できるような選手ではありませんでした。それでも取れる選手を取っていると言われるかもしれませんが、チームを作り変えるときには星野仙一のように、あるいは根本陸夫のように大胆に主力を放出して大型トレードを実現させないといけない。落合GMにはそれが出来なかった。

 そもそも「オレ竜」と言われるように、独立独歩で行動していた落合には星野や根本のようなコネ・パイプがそれ程ない*4。ジジころがしの名人と星野が言われるように、個人的なスポンサーがいくらでもいるという政治力がなければGMとして成功するのは難しい。

 あるとすれば、一時期巨人の監督にと言われたように渡辺恒雄が彼を高く評価していたので、その繋がりで巨人と大型トレードを実現するといったところでしょうか。それが出来なかった以上、彼がGMで成功するのは難しいというべきでしょう。

■トレード否定派=GMとして不向き
 そして著書で本人が選手のためにはトレードを封印すると書いていたように、トレードというものに積極的どころか消極的。とするとそもそも前提としてGMの資質に欠けているわけですね。好きあらばトレードを仕掛けるという人でないと、トレード情報は入ってこないしルートも築けない・機能しないでしょうしね。

■名GMの条件はトレード、クビにしてもアフターケア出来る政治力を持つ人間
 GMという仕事の本質は首切りにあるというところがある。名GMの二人がトレードなどで放出をためらわずに出来たのは、トレード=事実上の解雇・首切りをしても後々きちんとケアが出来る人物たからですね。引退後に「今までお疲れさん、一緒にやれて色々助けられたよ。ありがとう」とひと声かけて、就職の世話をきっちりしてやれば、首を切られた選手のほうも多少のわだかまりは残っていても、最終的には遺恨を残しませんからね。

 何より個人的な遺恨云々よりも、トレード≒組織からの追放を行うと、悪評が断つわけですね。気に食わないからクビにしたとか、さんざん酷使しといて投げられなくなったらポイ捨てだとか。そういう悪評がついてしまえば、あの人のいる球団に行けば簡単にクビを切られるぞとなって色んな交渉がやりにくくなるわけです。が、政治力があって、しっかり引退後などに面倒を見るコネがあル人物なら、あの人についていけば安心だということになる。星野仙一の求心力が高いというのはつまるところそこにあるわけですね*5

 GMとしての資質は財力・政治力の有無にある。そういう能力に長けている人というのは二人しか今まで論じていないように、球界にそもそも滅多に出てこないというわけですね。ですからある人物・あるGMが、優秀なのか無能なのかと論じる以前に、そもそも日本球界は優秀なGMが輩出されづらい環境にあるわけですね。

■既存のトップだった落合全権監督は改革に向いた人材ではない
 あと、もう一つそもそも論になるのですが(「そもそも」を三回連続して言ってますね(^ ^;) )、中日は縁もゆかりもないどころか、つい先日まで8年間監督として巨大な権力を持っていたわけですね。腐った組織を一から作り変えなくてはいけないという状況ではなかったわけです。もともと自分がある程度築きあげた組織であるわけですね。ということは組織改革・構造改革をするのに向いた存在であるとはいえないんですよね。

 落合が散々上に文句をつけてきた、しかしこれまでバカなフロントはそれをやらなかった。GMになってようやくその改革ができる権限を手に入れた。落合の改革はこれからだ!―という状況でない限り、あまり落合GMというのは機能しない&するはずがないわけですね。

■中日の問題は経営と選手育成システムにあり
 ちらっと書きましたけど、中日の問題というのはホークスやファイターズのように若手が伸びてこないこと、育ってこないこと。きっちりファームで一軍でやれる下地を築いて、上でテストして使えるように育てるというプロセスが機能していないことにあるわけですね。

 構造的な問題が中日球団に存在する。選手を育てるには明確な前提・思想で意志が統一されていることが必要になる。例えばホークスなんかは身体能力を重視して、技術はなくとも可能性があるタイプの選手を下で三年間練習付けにして、それで芽が出なかったら諦めるという方針で育成選手を取っていますね。また基本的に強肩・強打・俊足をクリアしているタイプを取ってくる。その上で別基準で、ショートなど守備が大事な選手を獲得したり(例:今宮)、俊足強打ではなくとも卓越したバットコントロール・センスがあるタイプを取ってくる(例:中村晃・長谷川、取った時点では晃はちょっと違ったかもしれませんが)。まあ要するにドラフトで獲得する基準が明確になっている必要性があるわけですね。

■育成方針はチーム内で明確に共有されていなければならない
 ドラフトでウチならこういう選手を採用するということを、チームの一・二軍(三軍)で共有されている。育成方針が一貫しているから、所属チーム内のコーチ・スタッフが目指す方向・ヴィジョンが共有されている。例えば藤田太陽さんだったか、「阪神がスカウトとコーチの意図がズレている。スカウトの評価を無視して選手の持ち味を理解せずに、コーチの意向を押し付ける」というような話をしていたと思いますが、スカウトがどういう選手になると評価してドラフトで取るべきと推薦したのか。そしてコーチはその評価を受けてどういう指導をすべきなのかズレがあってはいけないわけですね。

 中日の実情がどうだったか知りませんが、若手が育っていないというのは一軍で落合監督が若手を積極的に起用してこなかったという事実もさることながら、スカウトとコーチの問題も大きかったと見るべきでしょう。落合GMが手を付けなくてはいけなかったのはそこですね。補強がGMの仕事であると言っても、強いチームの基本は育成にありますから、育成に問題がある組織の育成システムを一から作り直すことをしなかったというのは後々落合GMの評価を大きく下げることになるでしょう。

 逆に言うと今後中日で一軍で活躍する選手が出てきて、落合GMの育成システム見直しがあってその結果育ったで選手だ―という話になれば、落合GMはちゃんとやるべきことをやっていた。やはり名GMだったという話になるわけですね。今はダメGMという評価が定着していますが、数年後にひっくり返る可能性も一応あるわけです。そういう話を今のところ聞かないので多分無理だと思いますが*6

■選手がやりやすい環境を整えるのが「落合竜」、しかしGMとなって監督のやりやすい環境を整えるという発想はなかった
 コーチを子飼いで固めることを肯定的に書きましたけど、そもそも谷繁監督・谷繁政権になった以上は彼がやりやすいように彼と同年代かもしくは若いコーチにしなければいけないと以前書きました(※過去記事参照―【中日落合GM誕生】 落合博満は静かに、そして動じないで書いたと思っていましたが、こっちではありませんでしたね。タイトル的にこちらだと思いましたが、内容を見返したらこっちじゃなくて落合GMはコミッショナーの布石?で書いていました。まあ関連記事ということで一度貼っちゃったので残しておきます。)。そのつもりで落合GMもいる。兼任監督のサポート上、森ヘッドをおいているのだろうと書きましたが、専任監督になっても森ヘッドを置き続けていましたね。はっきり言ってやってはいけない悪手でしたね、森ヘッド続投は。彼が優秀であっても、彼がコーチで居座ればパワーバランスがおかしくなる。スマホゲームや居眠りをして叩かれていた加藤秀司コーチがいましたが、谷繁監督よりも年上でコミュニケーションを取りづらいことこの上ないだけでなく、選手育成の実績も上げられなかったとなれば落合GMの眼は節穴だと言われるのもやむなしでしょうね。落合自身がが監督であればそんなことはなかったでしょうけど、年下の谷繁ならばそういうことが起こりうると想像できなかったのは問題ですね。

 かのように縁もゆかりもない年上コーチがいれば、規律が保ちづらくなるもの。その上森ヘッドという絶対的な存在がいれば尚更。谷繁監督は落合GMの傀儡だと叩かれたように、谷繁監督が現場組のトップとして適切な権限と責任を持つことができなくなる。GMとして戦力を揃えて、選手起用の方針など決めたら現場に介入せずに監督に任せるのが基本。その基本を逸脱していたのは言うまでもないでしょう。

GMとして指名した監督を守れなかったのは問題。説明責任を果たさないのも問題。
 個人的に一番問題だと思ったのは、選手の現役生活を全うさせること&契約重視が信条のはずの落合が兼任監督ということを打診しといて、専任監督としての契約期間を守らせることができなかったことですね。兼任監督なんてGM兼監督のようなもので時代遅れなわけです。それで結果を出すことはまず出来ない。そういう選択をしたのにも関わらず谷繁を守りきることができなかった。4年契約を全うさせることができなかった。お家騒動で監督を選ぶことが出来ない事情がある中で谷繁を兼任監督にするという苦しい選択をした。そういう負担を押し付けといて谷繁を守らないのは無責任極まりない態度であると思います。せめて休養発表の時点で辞任を示唆すべきだった&谷繁監督を守れなくて申し訳ないと謝罪すべきだったでしょう。それがないのはおかしい。責任を取るという点でも疑問ですね。

 谷繁が想像以上に馬鹿だった。監督として使えなかったという理由があったかもしれません。しかし、それならそれで落合はGMである以上、きっちりどうして谷繁が監督としてダメなのかということを説明をすべきだった、説明責任が果たされていないのは問題でしょう。

  また監督との意思疎通・コミュニケーションが上手くなされていなかったのも、組織として問題ですね。谷繁がまだ戦力として使えると思っていた選手がクビになって、それをGMから説明されていなくて選手本人から直接引退の挨拶を受けてどういうことだ?と怒っていたという話がありましたが、GMとして監督に相談する・意思疎通を常にしておくということができなかった。編成のトップと現場のトップのホットラインを築くことをしなかった。ホウ・レン・ソウが落合GMには出来なかったわけですね。

■全権を持つものは成功すれば絶賛されるが失敗すれば拙い手腕を非難される
 全権監督の時にドラフトで自分の好きなように選手を指名していたのに、谷繁監督はそうさせてもらえなかった。その上、ベイスターズの山崎のように谷繁が欲しがった選手は活躍して落合指名選手鳴かず飛ばず。こういうことが続けば、そりゃ不満が高まって責任を取るべきだとなるのは当たり前ですね。スカウトの意見があって、その上で意思決定をするのがトップとしてあるべきことなのに、そういう手順をすっ飛ばして独裁的な権限を発揮してしまえば、必ず下からの不満は高まる。説明・コミュニケーションを怠るところがあるというのは落合がGMというよりも組織を動かす資質に欠けていると見るべきでしょう。

 組織というのは同じ方向を向いた上で、上と下が意志を共有していないといけない。そのためには綿密なコミュニケーションが大事。そういうことを軽視する落合はGMに向いていない、成果を挙げるのは難しい。まあそんな結論で今回は終わりたいと思います。この話書くの3日・4日前に終わるはずだったが、めっちゃかかった…。まあいつものことですがね。更にまだいくつか書いておきたいことがあるので、うーん、付け足して3つにする。前中後編にしようかな。

中日ドラゴンズ80年史 シリーズ1(1974ー1999)/ベースボールマガジン

(楽天リンク)

中日ドラゴンズ80年史 シリーズ2(2000ー2016)/ベースボールマガジン

(楽天リンク)

中日ドラゴンズ80年史 シリーズ3(1936ー1973)/ベースボールマガジン

(楽天リンク)

かっ飛ばせ!ひとこと英会話 中日ドラゴンズ/Jリサーチ出版

(楽天リンク)

*1:誰だこれ?と思ったのでググってみたら、投手コーチの八木沢氏はともかく他二人は実績が見当たりませんね。本人は著書で「人事はコネではなく実力で行わなければならない」と書いていましたが、柏原氏が野村の南海クビの一連の事件に抗議して一時任意引退という事態にまで発展した経緯を見ると、まあ実力ではなくコネですよね。実力あるコーチをヤクルトで育ててそれを阪神に連れてきて、コーチを固めるというセオリーを守らなかった。優れた部下を育てることで組織を動かすというセオリーを踏んでいない。優れた部下に任せることをしない。まあそういう独裁者気質がある人なんですよね、ノムさんは。まあそれに見合う実力がちゃんと備わっているので、これは長所と短所は表裏一体という話になるのですが。

*2:はのちの腹心であって、星野が連れてきたわけではないですが、一応参考までに。後に彼を星野派に取り込んでいるのでまあ列挙して良いだろうという判断です。別に必ずしも外から連れてこなくても、乗り込んで説得して内にシンパを形成してもいいわけです。というか改革の手段としてはこれも常套手段・セオリーの一つですね

*3:この頃の阪神オリックス在籍者が目立ちますね、なんででしょうね?イチロー時代でオリックスが強かったからでしょうか?野村監督の辞任で仰木さんが有力後任候補だったからなのかな?

*4:もちろん、個人的な感想で実は企業のトップとか、某球団の代表とか色々あるかもしれませんけどね。知る限りではそういう話を聞いたことがないので

*5:与田を使い潰したと言われますが、その後彼の面倒をしっかり見ている。長嶋茂雄が條辺・三浦を使い潰した後知らん顔というのと対蹠的ですね

*6:聞いたのは社会人野球の選手を自分の目でチェックしていたという話です。でもそれはGMの仕事ではなくてスカウトがやることですよね。GM自身の目で確かめるのも仕事の一つだとは思いますが、それは最終確認くらいなもの。本来スカウトの仕事を自分でやるというのは少し違いますからね。逆に言うと優秀なスカウトを連れてこれなかった証左ということでしょう