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2018ホークスのチーム崩壊の話、崩壊はヴィジョン・育成・組織論理の欠如故の当然の帰結

書き溜まっていたホークスネタをやりたいと思います。去年のCS・日本シリーズいつになるかわかりませんが、それを放置して今シーズンのチーム崩壊の話をしたいと思います。
 
 全国1億3千万のホークスファンから絶大なアクセスと支持を頂いた(大嘘)前回の粛清の話*1の続編を書くべきなのでしょうが、前回くらいの時間がかかる話になるので、手っ取り早く消化できる今シーズンのリリーフ崩壊とチーム崩壊の話をしたいと思います。※半分くらいで終わるはずでしたが、また長くなったのでいずれ分割しようかと思います。

目次

投手陣の崩壊と繋がらない打線 

 リリーフ陣の崩壊、セットアッパー岩嵜とクローザーサファテの離脱に先発陣も軒並みダメ。先発ローテ陣は故障や不調の雨嵐。去年の出来から唯一安定してローテを守ってくれそうな東浜も不調&肩を痛めて(右肩関節機能不全)離脱、千賀も右肘の次は右前腕部の不調から離脱、バンデン・武田の不安定さは言わずもがな。今の所安定しているのは、昨年定着した石川くらいと言って良い状況。先発&リリーフ=投手陣の壊滅という事態を招きました。
 これで打撃陣が絶好調で、打撃陣が得点力でチームを支えている間に故障離脱組が復帰するまで耐える。そんな展開になっていればまだなんとかなったのでしょうけど、ホークスは交流戦までここ4~5年くらいは毎年不調・低調とはいえ、今の状態は明らかに例年とは違った状態であると言えます。
 クリーンナップを任される軸である打者松田・デスパイネが去年の打率.260台であることからHRで決めることが役割であり、率をあまり残さないタイプと考えるべきだとしても、両方共.250台にも届かない(執筆時点でデスパイネは.233で松田は.212)。4番であり、チームの中心・柱である内川は故障で離脱(もう復帰しましたが)。今宮は肘を痛めてスタメンを外れ、守備の人であまり打たないとは言えここまで打率が松田と同じ.212。今年の最初の方で中村晃が右太ももを痛めて離脱していることからもわかるように、野手の方も不調・故障だらけの野戦病院状態。今絶好調でトリプルスリーを再び達成しようという柳田がいなくなれば、完全にチームは崩壊するでしょうね。
 

優勝争いはチームを消耗させ翌年状態を落とす

 投打でどうしてここまで故障者・不調者が続出するのか?以前書いたように、基本的に優勝した翌年はチームが弱くなるからですね*2。一年間優勝争いをすると試合に出続けた野手は疲労しコンディションを落とすが故に不調になりやすくなる。そして何より怪我のリスクが上がり、ベテランレギュラーを中心に故障離脱ということが起こる。技術的な要因もさることながら体力的な問題があるために、何年も連続して3割など一定水準の数字をクリアし続けることは難しい。2013年優勝した楽天が翌年ボロボロになった例を見ればわかるように、2014年最後の最後まで優勝争いをしたオリックスが翌年ぼろぼろになった例を見てもわかるように、優勝争いをすると選手層がよほど厚くない限り、その翌年チームが崩壊するもの。
 参照リンク先で説いたように、楽天はレギュラー野手が軒並み前年よりも数字を落とし、打ってくれたのは銀次のみになりました。オリックスもまた、首位打者を取った糸井ががくっと数字を落として.331から.262となったのを筆頭に前年並みの数字となり、それ以上の数字を残したのは.260から.280へと打率をあげたT岡田くらいでした。しかしそのT岡田もHRは24本から11本へと去年よりガクッと落ちました。連続して3割以上・HR30本前後打つのは本当に一流と呼ばれる一握りの選手だけ。その年だけシーズン単年で.360以上の数字を残しても以後はぱっとしない一発屋首位打者もいるくらいですからね。それくらい野手陣が安定して数字を残すことは本来難しいわけです。
 また昔リンク先で書いたように、前年度優勝チームは相手チームが研究して対策してくる。攻め方が変わるので去年のようなバッティングが自ずとできなくなるという傾向もあります。野手陣が優勝した翌年、パッタリ打てなくなるというのは珍しい話ではない。奇しくも去年優勝争いをして前半絶好調だった楽天が打撃低迷で苦しんでいますが、他チームから徹底的にマークされて分析・対策されたという要素は間違いなくあるでしょう。そういう事もあって長年数字を残すバッターというのは本当に高い技術を持っており、コンディションを維持できる強い身体があるということですから、高い年俸を貰える・球団が評価して対価を払うということになるわけですね。
 

野手の高齢化&若手の積極的な起用・抜擢の欠如

 しかしホークスは毎年優勝及び、優勝争いをしているではないか?どうして今年に限って絶不調・異常事態なのだ?なんだかんだ言って、今年も夏以降から打線が例年通りに爆発してシーズンが終われば、やっぱりホークス打線は打ちまくったということになるのでは?と思われる方も多いでしょう。もちろんその可能性はあることはあります。しかしそこはポイント・問題の本質ではない。問題は野手の高齢化というより若手台頭の欠如。そしてそれと共に主力の定期的な休養&コンディションの維持の欠如にあります。本来それをチームの基本としてやってこなければいけなかったのに、その権限を持つ監督がそれを怠ってきたことが問題の本質なのです。
 松田(83年生まれ、35歳)・内川(82年生まれ、35歳の今年36歳)・デスパイネ(86年生まれ、32歳)。35歳は一つの指標となる年齢ですが、そのラインを超えた主力二人がいる。前々から松田・内川の後釜が必要というチーム構成・事情だった。松田は数字が落ちてきているし、内川はフルシーズンスタメン出場が厳しくなってきた(去年の出場試合数は半分の73試合)。そういうチーム事情だから今年のドラフト1位は、清宮についで履正社の安田を指名したわけですね。ファーストは外国人大砲でなんとか賄えるとして、大きいのが打てるサードがホークスの大事な補強ポイントとしてあったわけですね。ついでにセカンドも固定できないので、セカンドも守れる西田をトレードで取ってきたのも同じ動機からですね。内野手の次期レギュラー・レギュラー候補が欲しいという事情が今のホークスのチーム事情です。西田を取ることで、とりあえず一番将来的に困る可能性の高いセカンド・サード要因、そこを守れる選手層を手厚くしたい動機によるものですね。

最近の松田の状態についての感想・一考察

 ※余談ですが、松田は豪快なフォームとその明るい豪放磊落な性格からHRか三振かの大雑把なバッターと思われがちですが、ゴールデングラブの常連であることからもわかるように守備がうまい。また、2012年と2014年に怪我の影響で全試合出場はならなかったものの3割超えの数字を残していることからもわかるように、率を残せる器用なバッターだったんですね。いわゆる何を待ってるかわからない、一球で状態が代わってさっき打てなかったのが打てる(逆も真なりですが)バッター。どんなコース・球種でも対応してくる非常に器用な(変な?)バッターだったんですね。追い込まれてからバットを短く持って食らいついていこうとするのも対応能力を上げる工夫ですね。スコアラーと相談してどういう球を狙うかしっかり決めたり、準備を怠らない用意周到な一面も備えています。一時期ディレードスチールを多用していたように、非常にクレバーな性質を備えているのが松田という選手なんですね。
 2015年にテラスが導入されてバッティングが変化して一発狙いのバッティングが目立つようになりました。確か翌年からだったと思うのですが、苦手な外の出し入れ・外のスライダー攻めが基本となって、その対応に苦しむようになり、外のボールの対処により注意を払うようになりました。その外への意識のあまりか本来松田が仕留めるべきインコースの球や高めの抜け球・失投を捉えそこねる。空振りするようになったんですよね。門田博光氏が、オープンスタンスはボールが見えすぎるからダメだ。見えすぎると外のコースを追っかけすぎて手を出してしまう。まず、外を捨てて甘い球を確実に絞ってHRを打てるようにすべきという話をしていましたが、そのとおりだと思うんですよね。
 目の劣化・衰えなども考慮して外は捨てて甘い球・失投を確実に打てるようにすべきだと思うんですよね。一昨年くらいからエラーが目立ちだしましたが、確実に目の衰えがあると思います。目が衰えているから失投を打ち損じる・空振りする。失投して「あ、HR打たれる!」というコースのボールを仕留め損なえば、投手も高めの失投でもしっかり腕を振って球威があれば空振りをとれると考える。となれば、松田に対してピッチャーは恐怖を感じないでしょうからね。
 場面・状況に応じて外に張って打っていくことをしてもいいですが、それ以外基本的にアウトローは捨てて甘い球・高めの抜け球を待って確実に仕留めるスタイルにしないと今後厳しいと思うんですよね。彼に期待されるのは率よりもHR、そして出塁率でしょうからね。率を残せるバッターはまだいますので、松田はHRを増やすことを考えるべき。そしてその中でいかに意味のある凡退をするか。今の打率ならHRをもっと打ってもらわないと困る。リーグトップの山川穂高は18本で.276、柳田は16本で.343なのですからね。松田の出塁率.286はHRバッターとしては寂しすぎる数字なので、なんとかしてもらわないと困りますからね。
 <余談終わり>

中心柳田以外の驚異的な打者がいない現状

 サード松田の不調に加え、内川の離脱。そしてデスパイネの不調。彼まだ32歳で衰えについて深刻に考える必要はない年齢です。デスパイネ出塁率をまだ残してくれているので、シーズン終わればやっぱり例年通りの数字を残してくれる期待することが可能です。ですが、キューバ派遣選手であり、一年中野球をしているという事情からシーズン丸々出続けることが難しい選手です。ロッテ時代からちょいちょい休みをとったように休養が必要な選手。基本的に守備ができないDH専としては少し物足りない感を覚える選手です。外国人大砲としては十分に基準以上の働きをしてくれているので、それ以上求めるのは贅沢な話になりますから、デスパイネ以上の選手を要求するのは酷でしょう。まあそれはそれとして今、率が落ちてるのがクリーンナップの迫力の欠如・打線の不調となっていることを頭の片隅においといてください。
 柳田の他に晃と上林が打っていて、チーム打率は.250台をクリアしているので打線事情はそこまで問題であるとは言えません。柳田と上林以外走っていない。西武の源田・金子・外崎を見ると相変わらずの拙い走塁事情で頭が痛いところですけどね。2014年の打率トップ10を独占していた頃と比べると繋がらないのは言うまでもないですね。誰も彼も打てという贅沢な要求はしないまでも、打てないなら打てないで送る・粘る・走ってかき回す・采配でエンドランで崩すなどという引き出しもなくなっていますから、今のホークスの打線の迫力の欠如は言うまでもないですね。それはそれとして打線はまだまだなんとかなっているといえる現状。問題は投手。
 

リリーフ崩壊は必然

 これまで何万回も言ってきましたが、リリーフを使いまくれば壊れるのは当然。だから決して特定個人の投手に過度に依存してはならない・必要以上に投げさせてはならない。必ず間を開けて連投させずに起用しなくてはならないと言い続けてきました。
 サファテ・岩嵜が故障離脱するのは十分予測範囲内の話。去年あんだけ投げさせれば壊れるに決まってます。岩嵜はようやく使えるようになった一昨年から「隙きあらば岩嵜」で先発・ロングリリーフ・セットアッパーと無茶苦茶な使い方をされていたので、個人的にはもう去年壊れると思ってみていました。むしろ今年までよく持ったなというのが正直な感想。
 あまりにも投手起用がイカれていて見るに堪えない。酷使破壊継投・起用で頭にくるので殆どペナントを見なくなっていましたが、見るのをやめるきっかけが去年の開幕戦でした。確かロッテだったと思いますが、2試合目に点差がついた9回、サファテの連投を避けるために岩嵜をクローザーとして起用したのですが、岩嵜がピリッとせずにランナーを貯めたところでサファテにスイッチ。この起用で「ああ、もう今年もだめだろうな」と見る気をなくしました。去年の反省からリリーフの負担を軽減するために岩嵜を9回に起用して明日のためにサファテを取っておく。そのための岩嵜のはずなのにまだ点差があって、せめてもう一人我慢しても良い状況でサファテにスイッチ。その挙げ句、翌日もサファテを使って開幕カードからいきなりサファテ3連投という継投を見てだめだこりゃと思いました。岩嵜を信用して仮に負けても将来の成長の糧にすればいい。序盤の一敗くらい大したことないと岩嵜に任せてやることも出来ない。序盤の目先の勝ち星よりも終盤のリリーフの安定を重視しなければ去年と同じ目に遭うというのに、何の学習もしていないことがわかって心底興ざめ・ドン引きしました。
 その後の試合をちらほら見ても、やはり岩嵜のボールは良くなかった。具体的に言うと球威はあってスピードは出るものの、アウトローのボールが要求されたコースに殆ど行かない。10球中1回・2回行くだけで全部高めに浮いてしまうという状況でした。前々からそういう投手であれば別ですが、去年の岩嵜はもっとアウトローにきっちり行くことが多かった。少なくとも毎回毎回高めに浮いて抜けてしまうという投手ではなかった。今年で壊れる・工藤と佐藤義に壊されるんだろうなぁと見ていました。去年の岩嵜の登板数は72でした。年間72試合ということは半分以上投げているわけですから、そこでCSと日本シリーズが加わればそら壊れるに決まってますよ。一昨年の「なんでもかんでも岩嵜」「とにかく岩嵜」継投・起用の蓄積を考えれば当たり前ですね。
 サファテも66試合に投げて54セーブ。明らかに登板過多です。他のリリーフ・クローザーを見れば65試合くらいは普通。特におかしくないのでは?と思われるかもしれませんが、彼はカミさんが病気で一時チームを離脱しています。その間確か15試合くらいチームにいなかったことを考えると、彼もまた年間半分以上のペースで投げたことがわかります。吉井がいた頃のように、決して3連投はさせない。ブルペンで肩を作らせず投げない日を設けて適宜休ませる。リリーフの事を通年・複数年単位で考えて起用をして、疲労を残さないようにしていたならまだわかります。キングオブクローザーと言われるサファテなら、ペースさえ適切にして疲労がたまらないようにしていればそれくらいこなしてもおかしくないクラスの選手ですから。が、無論言うまでもなくそんな配慮は微塵もなく、3連投・4連投をためらわない現代ペナントレースのセオリーを知らない無知・無能監督&コーチでしたから、サファテも登板過多・酷使継投の被害者であったことは言うまでもありません。というか万一に備えてブルペンで肩を作りまくっていたでしょうね。
 肩すら作らせず、ノースローで疲労をためない。大事な終盤及び来年・再来年という先を見据えた投手継投管理がまるで出来ない。そんな投手コーチと監督でしたから、今年リリーフ陣が崩壊するのは予定調和ですね。流石に序盤で勝ちパターン二枚の同時離脱は予想できませんでしたが、まあ最悪の事態、こういうことになってしまったのも何の違和感もないことです。こんだけ投げさせればそりゃそうなるのがむしろ自然といえますね。

本当の地獄は来年・再来年

 というか、今の継投の方がよっぽど恐ろしい。トチ狂った継投をやっていますので、シーズン終盤や来年・再来年のことをファンはもっと憂えるべきでしょうね。一人一殺継投という馬鹿なことをやって、右左右などで1イニングにリリーフ3人つぎ込むというような狂ったことを平気でやらかしていますから、リリーフがどうなってしまうのかもう気が気じゃないですね。今年になって、ようやく13年ドラ1の加治屋がモノになってきましたが「隙きあらば加治屋」で負けでも同点でも勝ちでもとにかく投げさせていますからね。勝ちパ・負けパ・同点というケースによってリリーフの役割を分けて起用するという当たり前のことも理解できない狂人なのでしょうね。既に3連投四回(ウチ一つは移動日を挟んだ四連投)ですからね。今年は加治屋が岩嵜に変わって使い潰されるのでしょうね。ドラフトで即戦力大卒・社会人リリーフが補強できなければ、来年はもっと深刻な中継ぎ崩壊に苦しむことになるでしょうね。
 

投手を育てられるが、酷使して壊すというのが工藤という指導者

 予想外の出来事と言えば先発陣の崩壊ですね。リリーフは想定内でしたがまさか先発陣がここまで軒並み絶不調とは予想外でした。武田・バンデンは個人的に予想内ですが、千賀と東浜に限って言えば想定外でしたね。去年無理したツケが今の千賀の故障離脱に繋がってるのでしょうね…。WBC・不慣れなあっちの球でいつもと違う状態になっているところで休養を挟まないで投げさせるとかありえませんからね。
 武田・バンデン・千賀は去年を考えてこうなることもさほどおかしくはないですが、一年初めてローテ投手の役割を全うしてチームで一番多い160イニングを投げた東浜が故障というのは想定外でしたね。彼と石川は、まあまだ故障はしないと思っていましたから(去年の石川の使い方も隙きあらばで危ない感がありますが、彼は大卒5年目で下で体作り十分してきたはずなのでね)。東浜は工藤塾のハードトレーニングあっての成長ですが、登板日以外はトレーニング漬けというのがこういう結果をもたらしたのではないでしょうか?結局、投手育成に一家言あれど、投手の状態を把握して適切に休ませることが出来ないというのでは、育成手腕があってもどうしようもない気がしますね。育てるけど壊すという悪癖・評価が定着した以上、彼を監督として招聘するチームはなさそうですね。
 

フロントは将来を見据えた選手起用を現場に的確に指示しなければならない

 同じく以前エース摂津と先発投手事情 で書いたように、将来を見据えて、必要なポジションの選手を起用して育てておかなくてはいけない。秋山監督が先発投手陣を育てるために下で将来的に頼りになりそうな若手を試してこなかった、抜擢をして試合を捨てて負け覚悟で若手を起用して育てることをしてこなかった。高卒ドラ1の斐紹なんか、3年間下で鍛えて3年目には一軍定着をさせるという明確なビジョンを持って起用しなくてはいけなかったのに、明らかに先発起用・出場試合数が少なかった。これは秋山監督自身の問題もあれど、何よりチーム組織としての問題・フロントの戦略・ビジョンがないということを意味します。フロントに長期的視野がないという事実の方が監督よりもよっぽど問題です。フロントが今年は○試合必ず出場させろという課題を監督に与えなくてはならない。フロントが将来を見据えた選手起用を要求しない・現場に明確な指示・指令を出さない。フロントが機能していないという組織上の大問題があります。*3
 しかもこれはホークスに限った話ではなく、球界に共通する問題に思えます。楽天梨田監督が辞任をしましたが、ここ数年の楽天の野手陣の成績をNPBサイトでチェックしてみると、明らかに若手の起用が少ない。①選手層が厚くて②選手が若く育成が急務でない、③不動のレギュラーが固定されていて④優勝争いを毎年している―というような条件が揃っているのならばわかりますが、そのどれでもないのに今年はこの選手を起用して将来的なレギュラーとして使うというビジョンが見えない。経験を積ませている、強化指定選手がオコエくらいしかいないのでは?というくらい若手の出場が少なく、起用が偏っているように見えました。
 落合中日も黄金時代レギュラーが固定されていました。それに伴い優勝争いを毎年しているから選手育成が二の次になったのは仕方ないという意見を見ましたが、はっきり言ってナンセンスですね。どう考えても高齢化したレギュラーを休養をかねて将来のレギュラー候補を起用するくらいは出来る。それすらしてこなかったのはどう考えても問題がある。
 誰だか忘れましたが、谷繁の後釜として取った大卒ドラ1をすぐクビにしていましたからね。そんな使えそうにない捕手をドラ1指名したのもさることながら、上で実戦機会を与えて育てるという明確な意志を見せなかったことも大問題でしょうね。一軍での実戦機会、最低限の出場機会を与えなければ育つはずがない。特に捕手というポジションにおいては言わずもがな。下で鍛えてものになる選手もいることはいますが、育てる・育成というものの王道は実戦で確実にキャリアを積ませること(そしてダメそうだとわかったらスパッと見切ること)。そのノウハウがなければ長期的に安定した強いチームなど作れるはずがない。
 日本ハムファイターズが育成の王道を行っていると言えますが、まあ、ハムさんは一定の年齢を超えた選手を殆ど「追放」していますからね。「育成」しているというよりも「追放」した穴埋めをしているというべきでしょう。育った選手をどんどん切っているいびつな姿勢はチーム作りに歪みをもたらすわけですが(だからこそあれほど素晴らしいチームでありながら毎年優勝争いが出来ずにチームが崩壊するシーズンが多いわけで)、それでもきっちり育て上げている姿勢はお見事。必ず使った選手が育つということはありえませんが、しっかりビジョンを持ってさえすれば、ある程度の質と量の選手は必ず育てることが出来る。日ハムほど「追放」すればポジションが空く、その分育てられるのは当たり前だと考えてやろうとしない球団が殆なのでしょうけど、育成システムを整備してベテランの休養と調整を考慮して若手を起用すれば必ず今以上に選手は育てられる。
 戦力があれば勝つことは当たり前。他のチームが戦力を整備できずに自チームだけが他より整備されていれば優勝するのは当たり前。大事なのは育てながら勝つこと&選手消耗労・故障させずに勝つこと。フロントの役目はそのやりくりのためのビジョンを描くこと。また監督もビジョンを描いて、育てることと休ませることと勝つことの3つのバランスを上手く満たして采配を取らなければならない
 

3つのバランスを無視した無意味な勝利至上主義

 監督采配にとって重要なのは育成・休養(調整)・勝利(優勝)の3つのバランスと論じましたが、では去年の工藤采配はどうだったか?言うまでもありませんよね。選手を壊すような無茶苦茶な投手起用・継投で若手を試して育成に当てることもしませんでしたから、はっきり言って采配としては最低のレベルです。現存の豊富な戦力を後ろ盾にただ勝ち星を積み上げるだけ。そこに何の戦略・ビジョンもないという采配で、見るに堪えませんでしたね。でしたので去年はもう殆ど試合自体観ませんでした。
 勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなしとは言いますが、現在のチーム崩壊は何の不思議もありませんね。馬鹿みたいに休ませずに選手を使いまくってるんですから当たり前です。無駄に94勝もしてどうするんですか。去年のCSの話を「2017CS風物詩再び、悪夢の秋の風物詩発動。ホークスは短期決戦に弱い愚かなチームに戻った」的なタイトルで書こうと思っていたのですが、先にその話に踏み込んで語りますが、そりゃ負けるに決まってますよ。一番大事なポストシーズンに備えて選手を温存しておかないのですから、アホとしか言いようがない、アホもアホ・大アホでしょう。
 100勝しようが80勝だろうが優勝は優勝。1-0で勝とうが100-0で勝とうが、1勝は1勝の価値しかない。それが2勝・3勝としてカウントされることはありえない。優勝も同じ。ぶっちぎりだろうが僅差だろうがペナントレースを制したという事実に何ら違いはない。0.5ゲーム差でも上回ればそれで十分、ゲーム差なしでも勝率がわずかでも上回ればそれでいい*4
 優勝する最低ラインをクリアできそうとわかったのならば、あとは勝利よりも、休養や育成という他の2要素を重視して采配を切り替えていくもの。丁度3つの要素を頂点とした三角形があったとき、勝利が頂点の正三角形or二等辺三角形から、勝利の頂点が著しく下がるぺちゃんこな二等辺三角形に推移するようなものですね(図がないと分かりづらいかな、このたとえ(^ ^;) )。CSという制度が導入された以上、終盤の戦力維持というの最優先課題になっているのにそれを無視したような戦い方を繰り広げて選手を休ませなかった。その挙げ句柳田・モイネロなどの故障を招いてCS突破大丈夫か!?という事態を作りましたから、風物詩を自ら招く利敵行為と言われてもしょうがないでしょうね。
 短期決戦のこともわかっていなければ、長期決戦(と言っていいのか?)ペナントレースのこともわかっていない。一年をどういう風に戦えばいいのかという基本もわかっていない。一体今まで何を学んできたのか?監督をやろうというつもりがあったのならば、そういう準備・勉強をしてくるはず。ここ10年~20年のペナントレースを自分なりにまとめて監督とは~采配とは~という研究すらしてないでしょう。
 

2011・2015・2017それぞれぶっちぎり優勝の意味合いが違う

 ホークスはここ最近でぶっちぎりで優勝したシーズンが3シーズンほどあります。それぞれ88勝・90勝・94勝、17.5ゲーム差・12ゲーム差・13.5ゲーム差をつけての優勝でした。パに興味がない人、ホークスに興味がない人にとってはホークスって強いなぁ(小並感)くらいの感想しかないのでしょうけど、これらの年のぶっちぎり優勝は実は似て非なるものなのですね。正確には2011年と2017年は優勝の仕方が似ているが、2015年だけはぶっちぎり優勝の意味合いがまるで異なっていたんです。
 過去に何度も書いて力説したように、この年は吉井コーチがいたので投手起用・リリーフ陣の休養・状態の維持を念頭において継投が完璧にこなされていました。なのでシーズン終盤になればなるほど、他のチームとは違い789回に投げる投手の状態がいい・回を終えるごとにいい投手が出てきて点のとりようがないというプレッシャーを相手にかけていました。1点もやれないというプレッシャーからそれまでの疲労も相まって、相手チームのリリーフはホークス打線にボッコボコに打たれて、面白いほど逆転勝ちをしました。終盤の勝率は異常なくらい高く、一体いつ負けるんだこのチームは?という快進撃を続けていました。オリックス相手に9回4点差をひっくり返してサヨナラという試合もありましたね。
  序盤になるべく投げさせずにリリーフ陣の足を最後までとっておく、そうすることで生まれるシーズン終盤の驚異的な強さはこの年を見ても明らか。その翌年2016年、吉井コーチが日ハムでリリーフ管理をしきった上で、最終的に10ゲーム以上の大差を逆転したのもそうですね。何より、シーズン終盤にリリーフが計算できないと大逆転を食らうことがある。故に序盤~中盤は勝てそうだからといってリリーフを惜しみなく使ったりせずに戦う。終盤のために余力を残しておくのがセオリー。そういう昨今のペナントレース事情を知らない、昔の野となれ山となれ野球しか知らない古い時代の監督が我慢しきれずに馬鹿みたいにリリーフを注ぎ込むというのが他所の球団でも珍しくない。2016のペナントレースを見て総括をきちんとしてさえいれば、そんな当たり前の教訓・結論が導き出されるはずですが、殆どの球団はそういうことをやっていない。野となれ山となれとしか考えていない。行き当たりばったりで球団経営をやっているということでしょうね。
 で、話を戻して、2015はリリーフ管理を完璧にしてコンディションを最後まで落とさなかった。3つのバランスの育成については疑問符がつくものの、そういうシーズンのこなし方だったわけです。今年優勝するために来年・再来年のことは知らない、どうでもいいという典型的な目先のことしか考えない采配とは一線を画していたわけですね。最低でも来年もリリーフ陣が働いてくれる。どんなに予測外の最悪の出来事が起こっても崩壊することはないと期待できるわけですね。しかし2011と2017ではそういうリリーフ陣の管理という概念・配慮すらなかった。2011はリリーフよりも先発の問題・来季以降の先発陣の整備が課題だったのですが、来年を見据えていた継投・投手起用とはいい難いものでした。なんとなく一年を戦い、今日は負けてもいいから来年のために先発候補の育成のためにテストをするという要素は乏しかった。で案の定見事に翌年、先発ローテに苦しんでにっちもさっちもいかないという状況に陥いりました。そして2017はとにかく岩嵜・サファテで勝ちを拾うだけというパターン。とにかく特定の優れた選手の活躍に依存し、その選手が期待通り・それ以上の働きをしてくれるという前提の下・希望的観測で戦略を立てている。その前提が崩壊したらどうするのか?そういう万が一の際の配慮・危機管理の思想がない采配だった。
 今年優勝出来さえすればあとのことはどうでもいいという非常に拙い思想の上でペナントレースを戦っている。采配が行われている。こんなことで一体どうやって長期的に強いチーム足りえるのか?3年・5年・10年ずっと強い黄金時代を築けるというのか?ましてやホークスはV10を目標に掲げている球団。そんな球団が一体何をやっているのか?
 

NPBに蔓延する監督候補層の欠如と役割の履き違え

 そして、これは工藤公康一人の問題ではない。今現役の監督に将来の監督候補を含めても、そういう事がわかっている選手がどれくらいいるのかと言われればまずいないでしょう。いてもかなり少ない。つまり監督に向いている人材が球界には殆いないという恐るべき現実がそこにはある。ノムさんが著書でそんなことを書いていましたけど、はっきり言ってノムさんも同じ。違和感という報告をバカにして、出場できないという選手にダメ出しをする。コンディション管理を軽視する。そういう勝利・育成・休養の大事な3バランスの理解はない。若手が出場するために怪我を隠して無理やり試合に出るという行為を称賛するくらいですからね。同じく過去に書いたとおり落合氏にもそれがない。GMとして黄金期の選手たちがいなくなったあとの状況・育成に大失敗した過去を見れば言わずもがな。
 昔、秋山辞任で新監督は古田・工藤・桑田の誰かがいいと書きました。ベストは古田氏でしたが、工藤監督就任でも肯定的に捉えていました。三人を次期監督に望んだ理由は頭がいいから、頭がいい監督なら理に則った適切な采配をしてくれるだろうと思っていましたが、頭がいいだけではダメだということが彼でよくわかりました。工藤監督が大外れだったことを考えれば一体何考えてたんだこの大馬鹿野郎といわれてもしょうがないですね、どこに目をつけているんでしょうかね?銀魂なら花野アナ・結野アナに続いて不死野アナとして登場するくらい、目が節穴ですね。頭がいい人間なら研究して、学習してきっちり結果を残してくれる、まともな采配をしてくれると考えていましたが、頭がいいだけでは無理だということがわかりました。というかもう元プロ野球選手・名選手はダメだということですね。
 投手出身で高卒、社会人経験がない。またキャリアの半分を遊び呆けていたなど人間性の問題という点もあるのでしょうけど、何より元名選手は基本的に適性がない。偉大な実績を残してきた元選手はそれを前提に考えてしまう。出来ない・弱いという拙い状況から、ではどうすれば出来るようになるか?強くすることが出来るかという試行錯誤ができない。名監督を望むなら、周囲の人間の話をちゃんと聞く謙虚な調整型の人間でないとまず無理。自分のやりたいことをゴリ押しする・自己主張を第一に押し付けるような人間にはまず無理。監督を選ぶ際にはそういうタイプの人間を絶対に選んではいけないということを工藤監督ということで学びました。ずいぶん高い授業料になりましたね。
 松中が引退会見で指導者で打者を育てたいということを言っていたように、元名選手は技術指導をしたがる。監督を目指すなら采配の勉強をしなければいけないのに、打撃や守備やら投球やら技術指導をしたがる。コーチとしてならそれでいいですが、監督はそれでは困る(というか名選手でなければなかなか高いレベルの技術指導は難しいでしょうから、コーチとしてはどんどん採用していただきたいところですね)。監督の仕事・役割を履き違えた選手(選手に限った話じゃないでしょうけど)があまりにも多い。
 

監督の仕事は選手の技術指導ではない。まっとうな監督育成制度を整えるべき

 監督の仕事は「勝利」「育成」「休養」そのためのフロントから二軍から、そしてもちろん一軍コーチも含めての、意志調整・意見交換。チームの全体を見据える大枠の作業が殆どで選手への技術指導など細かいを事を本来やってる暇はないはず。技術指導がやりたいならコーチになればいいだけの話。そして監督というチームにとって重要な仕事をしたいのなら、監督としての資質を備える修行・トレーニングをきちんと積んでこないといけない。
 サッカーなんかでは資格テストがあるといいますが、同じように監督資格制度を整備しなくてはならない。海外では記者など非選手出身の監督が珍しくないといいますし、そういう監督を採用するのも一つの手でしょうね。ホークスフロントは、OBでも外様でも監督にしたい人間に声をかけて授業を行う。ホークスはこういう人材を欲しい。こういう人間を監督にしたいと自分たちが望む監督像を明確にするべき。そして指導をして、テストやレポート・面談などでAランクからCランクまでのような格付けで資質を判定する。監督としての基準をより満たした人間から二軍監督や一軍監督補佐など現場に送り込んで、実戦テストを経て監督を選抜するようなシステムにしなくてはならない。そういう合理的な制度に変更しない限り、今回のような無能監督問題はいつまで経ってもつきまとうでしょう。
 一刻も早く監督資格制度を導入しなくてはならないですね、ホークスは(もちろん他球団もですが)。
 

名選手名監督ならず、名監督は無名に近い選手が好ましい。始めから監督という人材を育てるという意志が球団には必要

 名選手名監督ならずということで、名監督を作るためには初めから監督の教育・人材育成ルートを設定して、指導・育成を図らなくてはならない。これが今の所暫定的な結論なのですが、もう一つポイントとしてダメ選手というか二流・三流の選手でなければ名監督たりえないのではないかという気がします。かの名将阪急の上田利治監督*5や、広島の古葉竹識監督など初めから監督としての期待をされて育てられた人材。結果、見事に黄金時代を築いた名将となったわけですが、両者とも誰もが知る名選手ではないということ。特に上田監督は現役をたった3年で終えていますからね。古葉さんは簡単に二流・三流と見なすことが出来ない数字を残した選手です。盗塁王のタイトルも取ってますし、当時で15年近くプレーしてますしね。しかし誰もが名前を知っているクラスの名選手ではない。そういう選手としては名前がパッと出てこないくらいの人のほうが監督に向いている。また内野手・捕手は状況に応じてプレーが変わるので監督向きだと言われていますしね。
 もう一つ地味に面白いのが、二人共広島東洋カープから輩出された人材だということ。つまり、初めから監督を育てる重要性を理解していた人間が当時の広島のフロントにいたということですね。上田・古葉という見事な成功体験がありながら、何故にこの文化・伝統が滅んでしまったのか、他球団がそれを真似して導入しなかったのか非常に興味深いところです。「上田も古葉も育てたのは我が広島東洋カープじゃい!」とカープファンなら誇りそうなものですが、あまりそういう話を聞かない気がしますね。
 

選手としてダメでも監督として名前を残したいという心理

 名選手でない方が何故名監督になりやすいのか?というのは、名選手は選手としての名誉を極めたので、それ以上強烈な成功したい!という欲求がない。しかし、現役時代成功しなかった、中途半端なキャリアで終わってしまった人物は、強烈なプロ意識を持ってコーチや監督業に取り組もうとする。失敗や屈辱というコンプレックスを武器に努力をするからですね。それこそ鳴り物入りでプロに入ったものの、現役選手としてはパッとせずにバカにされ続けた斎藤佑樹投手のようなタイプが監督・コーチとして実績を残そうという動機を抱きやすいわけですね。絶対に成功してやる!見返してやるという強い動機を持った頭のいい人間、そういう人間を監督候補生・幹部候補生として教育して監督にするのがいいように思えます。そしてそのコースにあって現在監督として成功しているのが、現北海道日本ハムファイターズ栗山英樹監督でしょうね(球団による監督指導過程はありませんが)。個人的には名監督だと思っていませんが、世間的には十分評価される監督でしょうね。フロント主導で個人の裁量権がかなり限られた監督でしょうけども、監督の役割をきちんと果たしていると言えるでしょう。
 そういうロジックがあるので、今の楽天の平石監督代行なんかもキャリア的に期待できるものがあるので面白そうな気がします。楽天はフロント主導を履き違えて、全権監督ならぬ全権フロントのようなことをやっているので前途多難感が否めませんが今後どうなるか地味に気になっています。
 また、以前ロッテの京大君というのが話題になったことがありますが、最初彼を採った時に幹部候補生・監督候補として採ったのでは?上田監督のようにすぐ辞めて監督コースが有るのでは?と期待して見ていたのですが、結局三井物産に就職したようですね。ロッテも監督を育てるという新しい路線に転換していたら面白かったのですが…。
 そんな中、ファイターズが去年のドラフトで7位で東大の宮台を指名したのが栗山監督の後釜というのがありそうでワクワクしています。かつて糸井指名の際にお前の指名は半分は打者としてだからというのがありましたが、半分は監督としてだからという要素があれば面白い。フロントと現場の分業が唯一出来ている球団だけに監督育成に着手している可能性は十分あるので今後どうなるか面白そうです。
 

全権監督は組織を腐らせる。フロント(中枢)と現場(最前線)の明確な権限分化を図るべし

 全権監督という選択・方針、全権監督という思想のもとで組織を構成することはやってはいけない。―という話をしたのでついでに話をしますが、そもそもホークスは監督にすべてを任せすぎている。何でもかんでも監督に任せてそれでうまくいってしまう。監督が完璧で、何でもかんでも監督に任せておけさえすれば上手くいくというのならばまだそれでいいが、ここまでのホークスの過去を見てわかるようにそんなことはありえない。現場の采配を任せるのはいいが、「すべからず」の最低限のルールは決めておくべき。今の継投・リリーフ使いまくりでは数年後チームがにっちもさっちもいかなくなるリスクがある。そんなリスクを放置しておくなんて正気の沙汰ではない。「この選手を育てるから、この選手を今年は○試合使う&○打席立たせて場数を踏ませる」―などというような指示を出さないといけない。フロントがチームを中長期的にどうしていくかという方針を明確にしておかないといけない。
 毎年のように「フロントは監督の手腕を高く評価」という報道しか出てこない。優勝しても4位でも同じ。一体どんな評価基準・査定基準を以ってその年の監督の採点をしているのかと疑いたくなる愚かさ。フロントが始めからチーム作りや勝利の責任を放棄しているとしか思えない。フロントがしっかり責任を持ってチームを運営するべき。そして自分たちの理念・ビジョンに合う監督を育成して、その監督に任せるというやり方にしなければいけない。
 毎年毎年適当な選手を採ってくる・既に成功している選手を他球団から採ってくるだけで、フロントがろくな仕事をしていない。これでは3連覇・5連覇なんて出来るはずがない。10連覇や世界一の球団という目標を掲げているのに、こんなことでどうやって世界一の球団を作るつもりなのか理解に苦しみますね。
 

今のホークスの弱い理由は補強の欠如&「育成」の軽視

 最後に今年のホークスの低調の原因を書いておきますと、そら当たり前ですよ。戦力の酷使と経年劣化による衰えがありながら、補強を怠っているんですから。補強しなければ弱くなるに決まってるじゃないですか。
 何故かここ最近は積極的に補強をしなくなりました。個人的に育成は最大限に、補強は最小限にというのが王道だと思っているので、補強をすることに肯定的ではないのですが、今のようなフロント・組織構造で補強をしなければ勝ち続けられるはずがない。ピッチャーで言えば野上・増井・平野・牧田、誰かを取らなくてはいけなかった。平野・牧田はメジャー志向なので無理だったでしょうが、増井は国内移籍を望んでいた。リリーフの補強は必要だった内野手と並んで重要な補強ポイントなはず。そこをどうして無視したのか?何より去年横浜から巨人に移籍した山口に声をかけなかったこと。これが本当に疑問。クローザー経験もあり、先発で150キロを出せる投手を何故採ろうとしなかったのか?巨人志向がそれほど強い投手だったから、初めからノーチャンスだったということなのか…?
 ホークスのリリーフの安定、7年間連続防御率1位(09~15)を達成した絶対的なリリーフ陣というのがホークスの強みだったわけですが、そのリリーフ陣を支えるためにドラフトからの新戦力や補強での獲得という要素が非常に大事だった。ドラフトで即戦力リリーフを取ってリリーフ陣の強化を図るのは当たり前として、メジャー帰りの岡島・五十嵐を採ってきたこと。当時はそこまでパッとしなかったサファテを西武から採ってきたこと。絶え間ない指名と補強によってリリーフ陣を安定させてきたわけですね。バリオススアレス・モイネロなんかもそうですね。リリーフ陣を安定させるために、余裕を持ってやりくりをして酷使を防ぐためにどうしても使える駒が必要。その駒を増やす補強をしてこなかった、特に去年・一昨年と社会人の即戦力リリーフを指名してこなかったことが最大の原因でしょうね、何考えてドラフトに望んだのか?アホですね。
 監督からしてリリーフを軽視して「投手は全員先発を目指してダメならリリーフ。ローテを6人固定してしまうと先発を目指す上でやる気が無くなってしまうから、5人で固めて残る1枠をリリーフをやりながら争わせる」というわけのわからないことを言っているくらいですからね。先発ができる力のある投手ならリリーフなんていつでも出来るだろというヨシコーチのようなリリーフ軽視の考えを持っている監督なので、先発育てといたらリリーフなんて、どうにでもなるやろという考えでドラフトに臨んだのでしょうね。そしてそのようなトンチンカンな思想を誰も止めなかった。フロントがその方針にストップを掛けて「この投手がリリーフで必要だからこの投手を即戦力リリーフで採るべきだ」―と主張して的確に即戦力リリーフを指名しなかった。それが今のホークス低迷の根幹ですね。フロントが狂気の監督に大きな権限を与え、なおかつその暴走を止めない。最低限の歯止めをかけずに放置する。仕事の放棄・責任の放棄ですね。まさに監督に対する最低限のストッパーが必要なわけですから、それがないからこそストッパーが居なくなってチームが大混乱するわけです(激ウマ)。
 ノムさんが捕手は自分が育てるからキャッチャーじゃなくてピッチャーを採ってくれと古田の獲得よりもピッチャーを優先しようとしたという話がありますが、ピッチャーは自分が育てるから野手採ってとでも言ったのでしょうか?あるいは即戦力よりも潜在能力の高い投手ですかね。将来的に楽しみな投手はたくさんいても、現在頼りになる投手がいなくて火の車になってるんですが、それは一体どうするんですかね…?前述通りピッチャー育てても結局壊すんだから意味ないでしょうに。育てては壊し、育てては壊すの「賽の河原監督」ですからね。
 補強よりも育成にシフトする。その心意気や良し。育成こそが王道ですから、その方針変更自体は大歓迎。しかし補強を封印したのならばそれ以上に明確なビジョンを持って選手を育てる、若手を積極的に起用して経験を積ませなければいけない。そういう状況にあるのにもかかわらず、去年から全然若手を抜擢していない。補強の封印をしたからには若手を積極的に起用して育成しなければチームの戦力は低下するなんて当たり前。どうしてこんな簡単なことがわからないのでしょうか?ホークスフロントはアホ・無能というのはここにあります。補強の封印をして、肝心要の育成までもついでに封印していくんですからね。その上首脳陣の人事育成、コーチ陣・監督の指導育成という幹部候補生の育成すら封印しているのが現状なので一刻も早くその封印を解き放ってほしいものです。最早呪いレベルですので、誰かホークスにかけられた呪いを解き放ってくれない限りは永遠にこのままでしょうね。今年・来年と一気に連続Bクラスという低迷を招いてもなんら不思議ではないでしょうね。
 
 ※おまけとして、では、工藤の次は誰がいいのか?という話を残しておきたいと思います。それは森脇さんでしょうね。いくらなんでもそうすぐには次期監督を育成できない。では誰でつなぐか?と言われたら、ホークス内で顔が効いて求心力もあるがゆえに監督に就任してもゴタツクことがまずない。他球団を渡り歩いて視野が広い・優秀なコーチを知っていて声をかけていろんな人材を招集できそうな森脇さんがベスト。内部昇格した元二軍監督の水上内野守備走塁コーチが現実的なんでしょうが、前述の条件を満たしている苦労人森脇さんが一番的確なのではないかと思います。まあ、ホークスは監督に名選手縛りをかけているのでハードルは高いでしょうけどね。ホークスフロントがまともな方向に向かうかどうか、一番始めに変化する方針と言えばこの名選手縛りでしょうからね。この縛りが解禁されるかどうかを、強く・賢く・隙のない野球をするホークスを望むファンは注目してみるといいかと思います。

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*2:※参照―優勝候補オリックスという虚妄 

*3:無論、この歳は杉内・ホールトンが巨人に移籍し、和田がメジャーに移籍して先発三枚40勝以上の勝ち、そしてそれぞれ184・171・172イニング、500イニング以上が計算できなくなるという事態でしたので、先発新人を上手く育てようとしても補うことはまず無理だったでしょうけどね。言うまでもなく、これはそうしていれば優勝できていた!というたぐいの話ではなく、出来る出来ないの領域の話ではなく、そういう喫緊の課題がありながら、そこに手を付けようとしない・対策を適格に打たなかったことそれ自体が問題なわけです。

*4:実際はギリギリで逃げ切ることを前提に計算するのは不安要素がいくつかあって怖くてしょうがないので5ゲーム差位を基準に計算するでしょうけどね

*5:巨人・西武以外に唯一三連覇した阪急ブレーブスの黄金時代を築いた名将です。一応西鉄も三連覇していますが近代野球以前の草創期のことなので除外してます