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身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

続、反工藤公康名将論 工藤監督・采配のトリセツ

続、工藤公康「愚将」論―工藤公康名将論という珍説の検証の続きです。トリセツのオチまで長いので、迷い込んだ初見の方は一番最後のトリセツを読んで、興味を持って面白いなと思ったら、本文を読まれることをおすすめします。そこで面白いと感じなければ読んでも無駄だと思いますので。

目次

■最高勝率を誇る監督だから名将?勝率は優れた監督を示す指標にあらず。重要なのは優勝回数と優勝率

 また、次のような主張もありました。見当違いの名将論だったのでぜひ取り上げたいと思いました。ちょっと繋がりが悪くなってしまいますが、こちら→【名将】工藤公康監督 通算259勝 143敗 勝率.644: みじかめっ!なんJの話をしたいと思います。史上最高勝率監督である工藤公康は名将である云々という話です。リンク中の話の中身はどうでもよくて、 ポイントは最高勝率を誇る鶴岡一人監督の.609を大きく上回る突出した勝率を誇っているという点ですね。確かに名将と言われる監督たちに比べてまだまだ日が浅い。5年程度しかチームを率いていない。監督経験・キャリアが浅いと言えども、今の時点でこの数字は素晴らしい。名将と言ってよいのではないか―とまあ、こういう主張です。
 一見、筋の通った理屈。説得力のある話に思えます。この数字を見て、なるほど、確かに工藤監督ってすごいな。そう思う人は多いでしょう。が、これは根本的に物事のポイントを捉え違えた主張です。昔、落合博満はなぜ日本シリーズに弱いのか?という話をしたときに、「通算勝率は13勝17敗1分の.433。5割を少し下回った数字に過ぎない。そこまで言うほど弱いといえるだろうか?」というコメントが有りました。そのときに確か次のようなコメントを返した記憶があります。
 「勝率というのは何ら意味をなさない。日本シリーズにおいて重要なのは日本シリーズで勝つこと=先に4勝することであり、そこがポイント。それまでに3敗することは認められているわけで、そこで0敗であろうが3敗であろうが関係ない。4勝出来たのであれば、3敗しても何の問題もない。靖国参拝もなんの問題もないわけです。逆に4勝されてしまえばどれだけ勝っていても意味はない。3勝だろうが0勝だろうが、どれだけ惜しかろうが惨敗だろうが、負けは負け。そこに大した違い、意味はない。互角の勝負を繰り広げてどちらが勝ってもおかしくない名勝負だった!という日本シリーズだろうが、33-4で圧倒的に敗北しようが負けは負けなんです。そこに意味はない(名勝負を繰り広げることでファンに語り継がれるという点では興行・文学・ドラマ的な意味合いは発生しますけどね)。あくまで戦略目標・目的は日本シリーズを制する4勝の達成。そこにおいては勝率という指標は意味をなさない*1
 ―正確かどうかはわかりませんが、まあ確かそういったたぐいのコメント返しをしたことを覚えています。ここまで語れば勘の言い方はもうお気づきだと思いますが。ポイントはリーグ優勝を達成できたか?そしてその上で日本シリーズを制することが出来たか?その2点ですね。CS制度、ポストシーズン制度が確立された今はCSで勝ち上がることもそうですが、名将に問われるべきもっとも大切なポイントは①リーグ優勝CS突破日本シリーズ制覇。この3つがポイントになります。
 このシリーズに通底するまとめ・ポイントの話ですが、表面上だけみれば、③5年間で4回日本一という輝かしい実績・数字で優秀な監督に見える。そう見えてしまうのですが、ポイントは①のリーグ優勝。5年間でたった2回しか優勝していないということ。③の点について評価しない人はいないでしょうが、ここで言いたいのは①及び②の内容をよく見ておく必要があるということ。①リーグの優勝の仕方と②CSでの戦い方、勝ち方・負け方に大きな疑問符がつく。問題のある戦い方があるということ。それを知れば、短期決戦にも弱いし、工藤公康=名将などとは到底言えないという結論になるということですね。

■勝ち方に問題があるー勝率の急落が意味するもの。将来の負け・長期的戦力低下になる勝ち方をしている

 本題・要約の話をしたところで、元の勝率の話を続けます。今頃気づきましたが、上のリンクは2017年のもの、つまり通算3年目までの数字だったんですね。で、去年と今年の数字を合わせると.608(※参照―工藤公康 監督成績 - プロ野球記録)。これでも鶴岡一人監督の勝率に並ぶ素晴らしい数字です。リンク中を見て分かるように、去年と今年、工藤監督はグッと勝率を下げたわけです。コレが一体何を意味するか?
 もうおわかりですね。強い時、ぶっちぎりで優勝したシーズンで無駄に勝利重視で育成をサボるからこういうことになる。若手を抜擢して経験を積ませる。リリーフを故障しないように休ませて、来年以降のために大事に使う。そういうことをしっかりやってこなかったツケが去年・今年と一気に来て、ガクッと数字を落とした・戦力を低下させたわけです。3年先を見据えて常に優勝できるようにチーム状態を整えておく。戦力が衰えないように来シーズン・再来シーズンのことを考えておくのが、名将というものでしょう。それに失敗して戦力をガクッと落としてしまった。それが、この勝率の低下.657(17年)→.557(18年)→.551(19年)という数字に現れています。これを見て、戦略目標であるペナント制覇に失敗し続けた監督を果たして名将と言うことが出来るでしょうか?
 繰り返しになりますが、言うまでもなく、高い勝率の維持が戦略的目標ではなく、優勝すること=パ・リーグを制覇することが戦略目標なのですから、勝率が悪化しても優勝さえできれば特に問題はないわけです。物理上、論理上不可能ですが、勝率が1割だろうが0割だろうが優勝できればそれで何ら問題はないわけです。勝ち続けることというのは6割、7割という高い勝率をキープし続けることではありません。まあ、勿論そうすることが出来ることに越したことはありませんが、もっとも大事なのは優勝し続けることです。それが出来なかった、戦略目標達成に失敗した監督を名将と評価することは難しいと今一度改めて主張しておきたいと思います。
 むしろ低勝率で優勝し続けることのほうが遥かに難しいわけで、勝率の高さよりもいかに低い勝率で多くの優勝を重ねることが出来たかという方が名将・優秀な指揮官と評価する上で適切でないかと思いますけどね。まあ、当然、高かったらダメということがあるわけではないので勝率の高さを無理に否定する必要はありませんが。ただ一つ断言できるのは、歴代まれに見る勝率を誇りながら、5年のうちたった2回しか優勝できなかったという事実は非常に重いということです。
 .608という歴代1位の監督と殆ど変わらない2位の勝率を誇る監督と言われれば、「じゃあものすごく優勝したんだろうねぇ~。一体在任中何回優勝したの?え?5年やってて2回しか優勝できなかったの?そんなに勝ってたのに?それだけ勝率が高いのなら、少なくとも3回は優勝できるでしょ?そんだけ強いチームを率いていたっていうのなら、なんで残りの3回は勝てなかったの?」―とまあ、そんな感想を抱く人がほとんどのハズ。
 歴代の中でも高い勝率を誇るにも関わらず優勝できたのは僅か2回。監督にとって重要なのは勝率ではなく優勝確率なわけです。優勝確率わずか2/5。バッターなら立派な4割バッターですけどね…。無論、先発投手なら10勝くらいのローテ守ってくれる有り難い先発のコマの一人となりますが…エース級の先発には到底なりえない数字…。
 西武の黄金時代の監督だった森さんは8/9であったことと比較してみるとどうでしょうか?果たして本当に名将と言えるでしょうか*2?むしろペナントレースの本来の目的、優勝という項目をクリアするのがいかに下手くそかという裏付けになっている数字のように思えます。2位に0.5ゲーム差つける、勝率で.001でも上回ればそれでいい(勝ち星が優先されるシーズンなら勝ち星1つでも上回ればですね)。にもかかわらず、優勝した年はブッちぎりで異常な強さを見せつけ、負けるときは僅差で競り負けている。勝星がほしい時に勝てない。もう勝つ必要のない時に無駄に勝っているということですからね。2回しか優勝していないのに異常に勝率が高いというのは、ペナントレースの戦い方が拙いという事実の裏付けであると捉えるべきでしょう。*3
 では、どうしてこういう拙いペナント戦略になるのか?バカな戦い方で勝てるシーズンで優勝できないということになってしまうのか?これには「全力野球の履き違え」というものが根底にあるように思えます。これについては後述でひとまずおいといて、目についた工藤公康名将論への反論を続けます。

■王・秋山はポストシーズンで負けたが、工藤は負けなし&2位からファイナルを突破したから名将!?

 話を二本目のリンク記事*4の話に戻します。ここまでだけだと、特にとりあえげて批判・反論しておく必要性のある記事に思えないのですが、捨て置けない決定的に「!?」と、かつての少年マガジンばりの顔芸をしてしまう記述がありました。いわく、王も秋山もリーグで優勝・1位勝ち上がりチームからのポストシーズンで敗退を経験している。が、工藤はむしろ逆に優勝を逃してからのCS突破をしている。故に工藤は短期決戦に強い優秀な指揮官であると。
 これはもう、完全に無視することの出来ない、捨てておくことの出来ない暴論ですね。そもそもポストシーズンを導入した初期においてはセオリーが確立されていないという難しさがあるし、初期にはアドバンテージの一勝もなかった。日程上、2位3位が中4日でエースの3連投が可能だったというものでもなかった。優勝チームが日程上不利という今でも続く事情以外にも、2位VS3位の勝ち上がりチームに有利だった要素がまだまだあった時代だったんですね。2010年にロッテに下剋上を食らった年がそうでした。優勝チームを得意とする先発・~~キラーという先発がいれば、かなり有利になるという日程だったんですね。そういう事情で成瀬というホークスキラーがいたという事情もまた大きかったわけで。一人絶対的な投手が居たらそれだけで勝ち上がることが可能な制度だったという事情を無視してホークスの風物詩は理解できないわけですね。
 そういう背景を理解していれば、普通はそう簡単にポストシーズン・CSで負けたからダメ、CSで勝ったから名将なんて話はできないはずなんですが…。既に述べたとおり去年&今年のCSファイナル突破というのは、西武ライオンズが風物詩野球をやっており、それ故に初めて2位からCSを突破できたという要素が大きいわけです。そもそもリーグ優勝を逃すほうがおかしいのです。それに加えて、前回・前々回と書いたとおり、工藤はCSを見据えた采配をしていたわけではない=短期決戦に強い監督ではありませんので、何をか言わんや。
 工藤がコレはもうペナントで勝つのは無理だ、CSを見据えて戦うと見事に判断して、すっぱりリーグ優勝を諦めて、作戦・戦略目標を切り替えた。あっさりリーグ優勝という果実に見切りをつけて、CSを見据えて戦った。結果、その判断は見事に的中し、CSを勝ち上がった!ーというのでもあれば、そういう分析も許容できますが、実際は逆ですからね。優勝に固執してバカみたいに中継ぎ酷使、ベテラン依存起用で若手野手の育成軽視。で、挙句の果てにまたも大逆転負けですから(故障の疑いがある武田登板による右肘故障というおまけ付きで)。
 過去リーグ優勝を逃した中で大逆転負けを2回もしているのに、それについては触れずにノータッチで評価だけ。そこのところはどうなの?それは評価基準に反映されないの?あなたの評価基準は一体どうなってるの?と言いたくなりますね。

■風物詩野球を採用して、ロッテに間違いなくCSで負ける工藤野球が短期決戦に強い「短期決戦の鬼」?

 んで、短期決戦の鬼だ!なんていうわけのわからないキャッチフレーズでアイドルのように売り出していますけど、正直バカなんじゃないかな?と思いますよ。だって、今年はロッテと楽天がペナント終盤まで3位争いを繰り広げましたが、もしロッテが3位に入ってきていたら、短期決戦に強いロッテが必ず勝ち上がっていましたからね(まあ、強いというかホークス・ライオンズが弱いというか。あとロッテの戦力がちゃんと終盤に整備されていたらという条件付きになりますけど)*5。そして仮にホークスがバカみたいに大逆転負けをくらわずに優勝していたとしたら、ほぼ間違いなく100%とは言わずとも、90%くらいの高確率でロッテに下剋上食らっていましたよ。普通にペナント見ていればわかるでしょうよ。8勝17敗という圧倒的なスコアでボコボコにやられてしまったんですからね。1勝するのに2敗以上する計算になる相性ですからね、間違いなく下剋上食らってましたよ。
 マリンでは圧倒的に負けた、ボコボコにされたが、ホームだと6勝7敗でほとんど五分だからヘーキヘーキなんていう意見を見かけましたが、短期決戦というプレッシャーが掛かる戦いで苦手意識のある相手に試合感が鈍っている状況で上手く戦えると考えるほうがおかしい。
 参考として2010年の風物詩のときには15勝9敗、相性が良くてもCSで負けた経験を持っているのにホームだとほぼ5分だからなんとかなるなんて絶対言えないでしょう。大事な初戦を落としたら、やっぱりウチは今年はもうロッテマリーンズに勝てないんだと、今年のライオンズのようにてんやわんやであたふたして、アップアップになって負けた可能性が大です。
 1勝2敗ペースで負ければ危ないというのがファイナルステージです。1勝2敗×2、三連戦のカードを連続で負け越しすれば敗退してしまうというのがファイナル。実際最初のヤフオクドームでの4月・5月のカードは1勝2敗の連続負け越しだったので絶対ありえないとは言えないわけです。というか今年の対ロッテとのゲーム運びを見れば、かなりの確率でそういうゲーム展開になるのが予想されてしまうわけですね。
 万に一つもあってはいけないという短期決戦で、2017年で風物詩野球を炸裂させたのを見て、その後の日本シリーズと対翌年の広島での稚拙な戦い方を見て&これまでの雑な工藤野球=筋肉信仰・崇拝、力こそ全てという野球を見て、そういう細心の注意を払った戦い方が出来ると考えるほうがおかしい。2017年は楽天だったから、まだあの絶対的不利な状況からひっくり返すことが出来ましたが、今年は岩嵜もサファテもいないし、CS大活躍男内川が超常的な力を発揮することを期待できない。これで初戦をなくしたら、まずロッテに負けるとみなせる戦力・チーム事情ですからね。17年も18年も横浜・広島が相手だから、格下・短期決戦下手相手だったからなんとかなったという感じでしたが、そうでなかったらというIfを考えると、ゾッとする危ない場面がありましたからね。要するに相手の戦力が足りない格下相手か、相手がヘタを打つ愚かな相手でないと勝てない。幸運に恵まれないと勝てないわけですからね*6
 少なくとも風物詩を危惧する鷹ファンは優勝争いをしている終盤は気が気じゃなかったはずです。チームを指揮する人間やフロント首脳陣はそういう危機感をもっていたはずです。あれだけCSで悔しい思いをしてきたのに、ロッテに2回もやられたのに、再び同じ過ちを繰り返そうとしているなんて、一体フロントは何を考えているのか!?と言いたくなる体たらく。特定の1チームに、圧倒的な戦力差があるわけでもないのに、ワンサイドでボコボコにやられてしまう。このような危機・非常事態に直面して、「さすが工藤、名将」とか「日本一になった、三連覇したから良かったじゃないか」なんていう意見を見かけると本当にバカだと思いますね。危機管理や組織運営というものをまるで理解していない、およそ人の上に立てない人間だと思いますね。

■特定の苦手チームを作る監督、偏った戦術の弱点を突かれて大差のカード負け越しをするような監督が名将のはずがない

 言うまでもないことですが、そもそも特定のチームに、明確な戦力差があるわけでもないのにバカみたいに一方的に・ワンサイドで負け越してしまうなんていう事態を招く監督を名将なんていう方がおかしいという事実を提示しておきましょうか。
 バランスとしておかしくなるものの、特定のチーム・ロッテにだけ弱くなるにしても、他のチームには圧倒的に勝てるというチームバランス・戦力バランスを整えたというのならばまだわかります。優勝するだけの勝ち星としての帳尻が最後に合えばいいのですからね。が、他の4チームに大きく勝ち越すことが出来たか?無論言うまでもなく、オリックス以外に大きく勝ち越すことは出来なかった。楽天にも西武にも1つ勝ち越しただけ。というか戦力的にロッテに勝ち越しできないのはおかしい。少なくとも今年のロッテとは、楽天くらいの対戦成績でなければおかしい。
 3つ・4つ負け越したら常勝チーム、優勝を目指すチームとしては問題。5つ負け越したら、どうしてうちはこのチームに対してこんなに弱いのか?相性が悪いのか?とちょっと問題となるレベル。それが9つの負け越しですからね。なんで?どうしてこんなに勝てないの?歴史的大敗レベルの負け越しですからね(もちろん、もっとワンサイドでボロ負けしたチーム、二桁負け越したチーム・カードはいくらでもありますが、あくまでホークスの近年の歴史という意味です。実際、ホークスが2017年に、オリックスとロッテに18勝7敗と大差をつけて勝っていますしね)。*7
 過去10年のパの5チームとの相性をみても、ここまでワンサイドでボロ負けしたカードはありませんでした。どんなに相性が悪くても4つ負け越すカードがあるくらいなのが、ここ近年のホークスでした。で、何度も語ってきたとおり、2016年吉井放逐で吉井が再加入した後のファイターズに、9勝15敗で6つ負け越したという数字が目立つくらいですね。過去十年振り返っても、特定チームへの最大の負け越しは6だという事実にもっと目を向けるべきでしょう。
 それが今年はワーストの9という事実。この対ロッテへの相性の悪さ戦いの拙さが優勝を逃したと言っても過言ではないわけです。ロッテに2つ勝っていれば、ゲーム差なしの勝率で.002上回って優勝できたという数字は非常に意味が重い。ロッテ相手にせめて10勝15敗のスコアでいけただろうと要求することは、ペナントレースを見た上で、果たして暴論と言えるでしょうか?今年のロッテを見て、マリーンズさん相手には手も足も出ないよと言ってしまうようなチームだったと果たして本当に言えるでしょうか?
 こういうていたらくだったために、日本シリーズで4連敗をした巨人について、過去の日本シリーズの名言というか迷言が呼び起こされて、「巨人はロッテより弱い」という言葉がチラホラ見受けられました。この言葉を見て思ったのは、巨人はロッテより弱いのではなく、ホークスがマリーンズにただただ勝てない、ひたすら弱い。「ソフトバンクはロッテより弱い」という重い現実でしたね。風評被害を受けた巨人さんに申し訳ない気持ちになりましたね。まあ、対ロッテ戦を分析していれば、もっと戦い方があったとは思うのですけどね…。

■優勝を逃すのは?「油断」ー野村克也の分析から

 ※目についてしまったのでこの話書いてしまいましたが、ちょっと前後のつながりが悪い余計な話ですね。一回書いたので消しませんが、飛ばしていただいて構いません。おまけ程度の話と思ってください。
 2018ホークスが優勝を逃したのは「油断」が原因であるという説を未だに聞きます。2016の時もそうですが、リリーフ防御率の悪化・継投の拙さ。若手選手の起用欠如&ベテラン依存。結果、主力の怪我を招き、その穴を埋める若手が出てこないなど、要因を指摘していれば別ですが、謎の精神論を持ち出す風潮にはついていけませんね。そういう非理性的な態度に今の野球界の現状がよく現れているというべきでしょう。たるんどる!とか、根性だ!という精神論で乗り越えられる要素は小さいし、偶然の要素が強い。また因縁つけで、あとからどうとでも言えてしまう。そんな話を評論として聞きたいと思う人はいないでしょうから、こういう主張をする場合大抵バカか老害なのでスルー&アナライザー失格の烙印を押しています。
 野村克也氏も謎の精神論を持ち出していますね…。→野村克也氏、ソフトバンク・工藤監督の采配に疑問「監督は試合中に喜怒哀楽を出すものではない」 | ベースボールチャンネル(BaseBall Channel)
 ○ケガ人が多すぎた。「優勝候補の大本命」と解説者からお墨付きをもらったこと、17年シーズンに大勝ちしたことによる油断があったとしか思えない。
 ーと、ありますが、「油断」は関係ないでしょう。選手管理で上が下手こかない限り、現場は破綻しないのですから。2016と同じ失敗を繰り返しただけですから、フロントも監督も学習能力がないバカだと言えば済むこと。本当にペナントをちゃんと見ているのかと言いたくなる主張ですよね…。本当は最初、野村氏も老害評論家であり、精神論で語る愚かな性質がある。投手のコンディションを守るという現代野球のセオリーを未だに学習していない。成長を止めてしまった旧世代の人。老害評論家たちとまではいかないが、古い常識と過去の栄光に囚われたタイプであり、老害評論家連に半分片足を突っ込んでいる。ーとまあそんな風に書く予定でしたが、後半を読むと微妙にわかっているような、わかっていないようないかんとも判断しづらいんですよね。文を締める結論で次のように書いていますからね。
 ○せっかく育成しても、選手の起用法にムチャが生じるようなことがあれば、選手のコンディションにジワジワと影響してくる。それがこれだけのケガ人の多さにつながっているのだろう。12球団一の戦力を誇っているはずのソフトバンクだけに、工藤監督の手綱の引き方には問題があったと私は見ている。
 ○工藤の采配は「とにかく動く」。それで墓穴を掘ることが多い。とくに彼は投手出身であるにもかかわらず、投手を信用していないのか、コロコロ、コロコロよく代える。そのことによって投手陣が疲弊してしまったことは大いに考えられる。
 ーとまあ、工藤采配に問題があったとちゃんと指摘しているのですが、じゃあ具体的にどうまずいのかということを投手交代の早さ以外明言していないので、うーん…となってしまうところ。間違っていないし、当たっていると思うのですが、具体的にどこがどうという細かい点になるとふわっと、モヤッとしている。ダメ出しをしづらいところですね。100%間違っていると言いづらい。まあここがポイント!と明確化出来ていない以上、問題があったと見ているというぼやかし方をしている以上、わかっていないとみなしていいのでしょうけどね。具体的に語ってみよ!と詰められないので失格の烙印を押すのだけは止めておきます。
 ○工藤は名将ではない。優れているのはソフトバンク球団のマネジメント能力。毎年、宮崎市内での春季キャンプは一軍、二軍、三軍の全選手が、同じ所でキャンプを行う。二軍の選手の活躍がすぐに一軍のグラウンドに届く。そこで一軍選手たちの間で緊張感が生まれ、激しい生存競争が行われる。
 ー間違いではありませんが、緊張が生じても、レギュラー固定化宣言など、若手を試さない・チャンスを与えないという悪癖があるわけですから、この性質はあまり機能しない。特に2018年は若手の突上げという競争原理は働いていなかったはずなんですけどね…。
 ○ベンチ内での工藤の表情。監督は感情を表に出さないほうがいい。選手がベンチ内を見て気を取られ、プレッシャーになることもある。不安な場面でうまく行って、ホッとするとその感情がベンチ・選手に伝染してしまう。次のイニングはどんな投手起用をすべきか頭を悩ませる。喜んでいる暇などない。
 ○大型契約選手、最終年しか活躍していない法則。サファテも?
 ー落合氏も、監督が表情を出すと選手はそれを見ているから動揺すると今年の日本シリーズでも話題にしていましたね。原監督が表情出したことで若い選手は動揺したと。この話に全肯定するわけではないのですけど、監督のあり方として一つの参考になる話だと思うのでメモしておきました。また監督が継投で頭を悩ませるという記述がありますけど、未だに監督が継投を決めるという古いスタイルですね。投手コーチが決めることで、監督が口を挟むべきことではないでしょう。監督が口を挟むとしたら、監督が持つ拒否権を行使する時くらいでしょう。
 まあ言わずとも、ノムさん自身もなんでもかんでも監督型ですからね。育成・起用・戦術、なんでもかんでもやりたがるタイプなので、やはり昔のタイプの名将・知将ですね。サファテの故障離脱について最終年しか活躍しない法則という話をしていますけども、年齢とこれまでの登板数見てれば壊れてもおかしくないわけで、何を言っているんでしょうね?むしろサファテがその契約で3年(4年だったかな?)毎年60~70試合投げてクローザーとしての役割をまっとうすると思っていた人のほうが少ないでしょう。というかそう考える人間がいたらバカでしょう、はっきり言って。

■ファイターズフォビア、壊れた監督

 中途半端な野村克也批判をしたところで、話を戻しまして、本筋の工藤監督・采配のトリセツのまとめをして終えるために、昔書いた工藤監督の致命的な欠陥について再度触れたいと思います。そもそも以前書いたように工藤監督というのは「壊れた監督」なのですね。ファイターズに歴史的大逆転で負けた。勝率6割をマークしてペナントで優勝できなかったのは、1980年以降はたった3例しかなかったんですね*8。86年の巨人に、91年の近鉄。そしてポストシーズンで破れた05年のホークス。そして2016年。86年や91年のケースというのは130試合制であり、現在の野球からかけ離れているとはいい難いものの、約30年前のケースなので、あまり比較の参考にはならない。05年のホークスはポストシーズンでの勝者=優勝という時代だったので、コレもまたリーグ優勝を逃したという話とは異なる次元のカテゴリーになるので除外していい。つまり近代野球、現代野球においてこのような無様な大逆転負けを喫したのは前例にないと言っても過言ではないわけですね。貯金29でむしろどうやって優勝を逃すんだという大惨敗を工藤監督は喫したわけです。*9
  で、その結果、失敗をあらゆる角度から分析して、一からペナントの戦い方・戦略というものを学習して、監督として成長を遂げる。苦い教訓を糧として名将の道を歩みはじめるーなんてことは当然ありえず、監督として壊れてしまったんですね。個人的に「ファイターズ・フォビア」(恐怖症)と読んでいますが、ファイターズを異常に恐れるようになった。目先の敗北を異常に恐れるようになったんですね。不安でしょうがないから、臆病になり、その不安から逃れるために狂ったような采配をする。その場その場で全力を上げて勝ちに行く。そしてシーズン終盤には疲弊しきってチームが沈む。先行逃げ切り型といえば聞こえはいいですが、大抵は疲労が顕在化する8月頃からガス欠になって沼に沈んでいきます。先行逃げ切り&轟沈型、沈没型采配と言えますね。

■伝統的にペナントの戦い方に問題がある。つまり戦い方が下手くそ

 そもそもなんですけど、異常な高い勝率を誇る監督なのになんで5年で2回しか優勝できなかったの?という話の続きにもなりますが、ホークスはここ十年、戦い方が下手くそな傾向があるんですね。リーグ優勝したチームの勝敗表をチェックして見ると、大体、2位・3位といったAクラスのチームと5分に渡り合っていて、Bクラスの456位、特に5・6位という戦力が破綻している、チームが崩壊してペナントを戦えなくなっているチームからごっそり貯金を作ってペナントを制するというパターンが多い。ライオンズとかファイターズが優勝した年なんかを振り返って見てみると、やはりそういうセオリーを踏まえた感じの戦い方で優勝している傾向が見て取れるんですね。
 優勝するチームのペナントの戦い方というのはたいていこういうパターンになっている。強いチームに無理をせず、五分を維持して、弱いチームから確実に星を拾っていく。また、そこそこ万遍なく勝ち越して、2位チームをカモにするというものもたまにありますね。2016年のシーズンはファイターズ・ホークス共にぶっちぎりだったので、少し違う変則的なパターンですが、戦績を五分に分けても大事な首位対決で確実に勝ちを拾える。優勝争いしているチームを直接叩くことでゲーム差を縮めて追いつく。追いやってくる二位チームだったら、差が縮まってきたとしても、直接対決でダイレクトにねじ伏せて、絶対追いつけないようにする。優勝争いするようなチームですから、2位の対抗馬をそうやってねじ伏せるというレース展開はなかなか見られないのですけど、そういうペナントを制するセオリーもあると言えばあります。
 まあ、優勝することが目的なので、優勝しさえすれば良いのですから、どんな勝ち方であろうと問題にするつもりはありませんが、ホークスの場合、優勝のパターン。ペナントの戦い方が毎回同じに見えるというのが非常に気になる・目についてしまうんですね。ホークスが優勝したシーズンを振り返って見ると、2017・2015・2014・2011・2010(CS敗退)を振り返ってみると、僅差の混パだった2010はちょっと参考にならないので除きますが、5位・6位にカモを作って勝つ!優勝争いする対抗チームである2位をボコボコにして勝つ!というような戦略・思想が見受けられないんですね。とりあえず戦う試合、目先の試合に全部勝て!とりあえず貯金作っといたら優勝できるわい!とでも言わんばかりの雑な思想が通底しているのではないかと思えてしまいます。

■ペナント戦略思考の欠如

 2011・2015・2017における、90勝ペースのペナントぶっちぎりで勝てというオーナーの指令を反映するような最強チームですが、戦い方が全て同じ、雑に見えます。6月が終わって、そろそろ今年の各チームの状態・動向が明らかになったとき、「どうも今年はこういうペナントの展開になりそうだから、このチームをカモにしよう。逆に、このチームとは分が悪いから、なんとか五分で最悪借金3をラインに済ませるようにしよう」とか、そういったペナント思想・戦略がまるでないのではないかと思えてしまいます。
 補足説明でも使った事例ですが、2009年にCSに滑り込んだ2位となった野村イーグルスですが、その原動力になったのは最下位オリックス・バファローズとのカードを19勝4敗で乗り切ったこと。チームの貯金が11でペナントを終えたことを考えると、他とは五分で乗り切って、このオリックスをカモにしてペナントを戦ってCSに入る!という明確なプラン・戦略があったことが見て取れますよね*10。ここまで見事にやれとは言いませんが、こういった戦略・思想がなければ、同じように圧勝してぶっちぎりで優勝するか、今年のように勝てそうで勝てずに僅差で敗れる・優勝を逃すということを繰り返すと思います。まさに普段の工藤筋肉野球の試合展開のように、大差をつけて圧勝するのに、僅差のクロスゲームをことごとく落としてしまう。結果、選手の能力・スペック、トータル的な戦力では圧倒しているのに、勝ち星をなかなか積み上げられずに3・4位辺りでもたもたして苦しむというかつてのジャイアンツのようなことになるように思えます(ここ最近はトップを走って8月から失速というパターンですけどね)。

■全力野球の履き違え

 工藤野球では、全力野球という言葉が盛んに喧伝されるわけですが、はっきり言ってその意味を履き違えて明後日の方向に行ってしまっています。フルスイングと積極性の勘違いというのを、かつて野村氏は説いていました。積極的に打ちに行くのと、何でもかんでも飛びついて打ちに行くのでは意味が異なる。積極性が、蛮勇・無謀になってしまっているというような趣旨で、フルスイングを否定していた、根拠のないバッティングを批判していたことがありました。
 同じように全力野球の勘違いという現象がホークスの組織内に蔓延していると思えます。ペナントで優勝する上で90も100も勝つ必要性はない。必ずしもないわけではありませんが、90勝しなければならないというのはそんなにない。2016年においてはそういうシーズンですが、対抗馬である2位・この年ならファイターズの状態を見て戦えば、大抵は優勝ラインというのは80~85勝。それより低いライン、80を切ることだってある。その年その年、状況に応じて可変するわけで、その状況に応じて適切に合わせなくてはならない。またチーム事情から育成や休養の必要性も変わるわけで、その状況も考慮入れなくてはならない。そういうケース・バイ・ケースに対する考慮・ケアというものが非常に乏しいように思えます。
 結果的に勝った・負けたという目先の事実、HRや防御率・勝星といった派手な数字しか見ていないから、本質を見落としがちになっているように思えます。
 また、甲子園の弊害なのか、アマチュアスポーツの弊害なのか、団結や結束。一つになろう!ということを賛美・強調したがる。以前チラッと触れたように人間というのは集中し、協力することで1+1が2以上の力が出せる。3にも4にもなる。プロアスリート達が団結すれば、その時の力の増加は計り知れないわけですね。故に団結ということをしたがる。しかしそれは超常的な現象であり、必ずしもそれが起こるということを期待できない。起こらないほうが多い。奇跡と言ってもいいですね。奇跡というのは心地良いので、その快楽にとらわれてしまうのですね。合唱、歌を全員で歌いたがる学校教育もそうですね。一番わかり易いですからね、協調性とかそういう話にも繋がってきますし。みんなでとりあえずなにかやってる感覚になるので、お手軽に団結&成長、一体感が得られますのでね。
 ランナーズ・ハイというのがわかりやすいですが、修行僧とか鍛えに鍛えるとある種悟りのような状態になる。そういうドーパミンとかエンドルフィンとかキメた状態。個人としてのそういう超常的な力に頼るというのは、監督の「野球小僧である柳田がなにかやってくれる」という言葉に象徴されていますね。野球が大好きなスーパーアスリートが野球をキメた状態、大好きになって夢中でプレーしてハイになった状態が起こって超常的な力を発揮する。スーパースター個人の、一個人の力を遥かに超えたビッグプレー・活躍に頼る。個人の超常的な活躍に期待することに加えて、かつ全体としてもそういう団結力という不思議な力に頼りたがる。苦しい時の神頼みならぬ、選手頼みという宗教家というか、祈り屋・拝み屋のようなスタンス。端的に言うと頑張っていれば、きっと都合の良いことが起こってくれるという発想なんですね。
 つまり指揮官として上から俯瞰してチームを見て、「今のチーム力ならば~~」という計算をすることより、戦略を立てるよりも、個人の能力を基準に頼る。都合の良い働きをしてくれることを想定するし、都合の良いようなペナント展開になること=相手チームの不幸・不運を期待する。当然、そのような思想からは敵チームそれぞれの俯瞰どころか、ましてリーグ全体の展開・流れなど読めるわけがないのですね。
 みんなで一生懸命頑張れば!きっと優勝できるよ!だからみんな頑張ろう!という戦略もなにもない甲子園球児、アマチュア選手の延長上で采配を揮っている*11。こんなことでペナントを勝てるわけがない。だからバカみたいに大逆転負けをしてしまう。
 各チームの戦力分析、今後の流れを冷静に分析し、ベストな戦い方・戦術&戦略を見定める。また戦いながら、その都度その都度適切なものに修正していくなど出来ない。ただひたすら目先の試合をなにも考えずに全力で勝ちに行くだけ。逆転負けが怖いので異常に目先の勝利・貯金の積み上げにこだわります。貯金を守ろうとする守銭奴野球ですね。
 圧倒的なシーズンがチラホラあるように、対抗馬がいない年にぶっちぎって勝っているように、それ以外の勝ち方が出来ないような状態になっていますね。工藤監督就任以前からそうだったという傾向を踏まえると、もともとこういう壊れた監督のフォビア采配はホークス野球と相性がいいという風にみなすことも出来ますけどね。工藤監督・采配になってから暴走する傾向に拍車がかかっただけ、元々あまりなかったストッパー機能が完全に一掃されただけと考えてもあながち間違いとは言えないでしょう。このチームにして、この監督ありということでしょうね。
 普通の見識があるフロントなら、日本一だろうが契約満了にするはずですからね、こんな采配を見せられれば。*12
 全力野球という無謀なスローガン、戦い方に工藤野球の本質があると言っても過言ではないでしょう。精神主義・念力主義・根性主義、そのような不合理で工藤野球は構成されています。偶然と幸運、そして特定の選手がハイになってキメた状態になること、チーム全体が団結キメて団結力という計り知れない力が出ないと勝てないということです(勿論、選手がどこよりも揃って圧倒しているシーズン以外はということですね)。

■追記、全力野球追求の謎。責任逃れのアマチュア精神

 大事なことを忘れていたので追記です。全力野球推奨の背景について、どうしてみんなで一丸となって戦おう!みんな一緒に頑張ろう!ということがことさらに強調されるのか、指摘しておくべきことを忘れていました。なぜ全力野球が唱えられるのか?それは指揮官(及びフロントも)が責任を取りたくないからですね。責任追求逃れの要素がこのスローガンにはあるわけですね。意識的にせよ、無意識的にせよ、この全力野球、「みんながんばれ」という戦術コマンドは、要するに結果を出せなかったときの責任逃れなんですね。「みんな一生懸命になって頑張った・戦った結果だから、負けたとしてもしょうがないよね?テヘッ」みたいな卑怯な精神性が背後にあると考えられます。
 一生懸命やった、全力を出し尽くして戦った結果だから、ぼくはわるくないもん!とでも言うべき開き直りがそこには込められています。アマチュア精神以前の学級会のスローガンみたいなものですね。結果を問う、組織を率いるトップには責任が伴う。そういう当たり前の論理が何処かに行ってしまって、みんな頑張ったよね?精一杯やったしダメでもいいよね。ダメだとしても俺たち頑張ったよね?みんな輝いてたよね?それって素敵やん?という体育祭や文化祭のような精神性で組織を運営する。みんな頑張ってたし、輝いてたし、楽しめたからいいじゃん?みたいな学生のお祭り気分でやっているわけですね。プロフェッショナルな、近代化された組織とは程遠い精神性・論理ですね。

■工藤監督/采配のトリセツ

 以上、工藤公康・采配論終わりです。トリセツにしてまとめますと、①何でもかんでも自分でやりたがり、工藤理論を誰彼構わず押し付けます。
 ②故に工藤理論に従わない選手・コーチは追放されます。
 ③当然、自分の言うことを聞くイエスマンだけが集まるので、コーチの役割・目的はほぼなくなります。工藤監督を招聘するならば、チームのコーチは数年の間でコーチの全入れ替えが必要になるでしょう。それどころかチーム内での担当もコロコロ入れ替えないといけなくなるでしょう。フロントがそれを拒んだりすれば、確実にチーム内に不和が発生します。対立しなくても鳥越コーチのようにチーム内で慕われる・求心力の高いコーチも追放されることになります。工藤派閥の外の人間になり、居づらくなって辞めることになるでしょう。
 ④基本的には長嶋ジャイアンツ野球をします。個人の能力に主眼をおいて、エースと4番=速球とHRが重要視され、出塁率や繋ぎという要素は軽視されます。走塁・守備も脇に置かれることになります。
 ⑤レギュラーを固定して戦うというか、今試合で使える選手かどうかということが最重視されるので、偉大な記録を持ちかつ高い能力を発揮できる選手が寵愛されます。
 ⑥故に勝利が第一で育成という点でこれからの選手を大胆に試合に出すということはありません。なので監督期間中に若手がでてくることを期待するのが非常に難しい監督ということになります。
 ⑦当然休養という概念もないので、故障が多発します。選手を使い潰すタイプの監督で、特にリリーフ継投においては考えられない酷使継投をします。
 ⑧ペナント戦略というものがなく、目先の試合を全力で戦うので、ハマるときは大勝ちして優勝しますが、単年優勝したあとはチームが劣化するので、戦力の継続性は期待できません。
 ⑨当然、フロントがドラフト、2・3軍、FA、新外国人などで新戦力を常に提供しなければならなくなります。どこからも供給できなければ、戦うに値するだけの選手たちを1軍に送り込むことが出来なければ、ペナントで戦うことは出来ません。選手・戦力ありきの監督なので。
 メジャーなどでも、監督のタイプ・GMのタイプが色々あって、海を渡る前に自分が所属する人間をきちんと調べておかないと、あちらでは成功しないと田口氏がかつて語っていましたが、イチロー・松井やダル・田中といった超A級以外の適応が必要となる日本人選手がメジャーに行く場合は、辛抱して使ってくれる&待ってくれる球団・監督がいることが非常に重大であるというセオリーがあります。工藤監督というのは、そういう辛抱してくれる・待ってくれるタイプの監督ではなく、現場の勝利最優先なタイプ。またバレンタイン監督がレッドソックスでチームを解体させていたように、コーチや選手を自分の色で染めて采配するタイプの監督なわけですね。自分流の戦い方が絶対の非常に硬直的な戦術の下、野球をするタイプと言っていいでしょう。そのときその時の選手層・選手状態から最適な戦い方をするという柔軟性を期待することは出来ないタイプです。戦力がなければまず機能しない戦い方をする監督です(※戦力が豊富な場合は、CSファイナルのように選手起用。交代戦術がズバズバ当たるという戦術の冴えを見せることもあります。長所に触れるのを忘れていたので、追記しておきました)。
 ですからまあ、到底名将とは言えない。SBホークスという巨大戦力ありきのもとで機能する指揮官ですので。当然そういった結論になるわけですけども、是非他球団で指揮を執るところを見てみたい。是非他球団で監督をやって頂きたいですね。ホークスという戦力がある球団だからこそ、あくまで成立したにすぎないわけで、あまり戦力が整備されていないチームを率いて、果たしてどこまで出来るか拙論が本当に正しいかどうか検証のためにも見てみたいですね。
 一時は横浜監督の話がありましたが、現在の横浜を見るにもうないように思えますで、今の所一番ありえそうなのが西武ですね。渡辺GMと仲が良いので、「短期決戦の弱さを払拭するために格好の人材!」とか、「若手投手の育成に定評がある!」とか、そういう理由から招聘される可能性は十分ありえます。是非、ライオンズを率いてみて欲しいですね。ホークスというチームだからこそ、優勝が厳命され、それ故に異常に目先の勝利に拘った硬直的な采配をしていたという可能性もなくはないので。優勝の期待やプレッシャーもあまり強くない西武ではのびのびやれて、結構まともな采配・戦略を採用するということも考えられなくはないので。まあ限りなく小さい可能性ですけどね。
 来年以降のペナントの話とか、FAの話とか、ロッテになぜ弱いのかという具体的な話を書くつもりでしたが文量的にまた次回。とりあえず短期決戦に弱い・名将ではない工藤論、トリセツが書けたのでこのシリーズはこれで終わります。
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*1:勿論、言うまでもなく、勝率が高いことにこしたことはなく、7割・8割・9割という高い勝率をマークすればするほど、安定感が高い・圧倒的に勝ってきたという裏付けになるので、そういう評価をする点では有効な指標になりうると思いますけどね

*2:横浜時代を含めると8/11に悪化しますけどね

*3:後述していますが、勝率6割を超えるということは、大体84勝56敗前後くらいですね。そのくらいのラインでペナントを逃すチームは存在しない。2016のホークスという例外を除けばまずないという数字なわけです。ということは5年で通算勝率が6割を超えているので、5連覇しておかしくないということになるわけです。にもかかわらず実際に優勝したのは2回だけ。工藤ホークスにおいては勝率が.650近くないと優勝できないというデータになっているわけです。この事実を重く受け止めるべきでしょうね

*4:工藤公康は歴代の名将を超えたのか?鶴岡、野村、王、秋山と続くホークス指揮官の系譜 | THE DIGEST

*5:※思い出したので書いときますが、CS1st第3戦で7回嘉弥真をまたワンポイントで使って銀次に先頭ツーベースを打たれて送られて1アウト3塁の状況を作っていましたからね。ああ、コレで今年は終わったなという状況を作り出す監督が名将???アホかと思いましたから。1-1で1アウト3塁で内野ゴロか犠牲フライで勝ち越し点で1-2。これでこの試合負け確定。ああ、今年は楽天か。苦手西武相手だろうと、楽天が初戦を取れさえすればファイナル突破するだろう。楽天がファイナル勝ち上がりで5年ぶりの日本一か~と思いましたからね。ウィーラーが何故かインコースの低めを強引に引っ張って、三遊間のゴロで台無しという展開だったので首の皮が繋がりましたけど、普通あそこで終わりですからね。新人監督平石にも負けるのか…、この監督は…。さすが名将(笑)と思いましたからね。
 ワンポイントで嘉弥真を使うのが大好きですけど、対左で絶対的な投手じゃなくなってるのに、やたら勝負所で嘉弥真や他の投手をワンポイントで使う。そして炎上するというのを本当によく見かけますからね。去年の日本シリーズでも早い回からワンポイントモイネロ(ロングイニングいかせるつもりだったかもしれませんが)で不調の丸にぶつけて逆転HR打たれて、シリーズを落としたと思いましたからね。明石のHRで結果的に選手が見事に尻拭いして勝っただけで、考えられない継投でしたからね、本来。言うまでもなく今年の日本シリーズでも最終戦にワンポイントで丸にタイムリー打たれてますし、なんだこれ?という謎継投は枚挙に暇がありません。

*6:ああ、そうかモイネロの謎ワンポイント継投で思い出しましたけど、2018の日本シリーズもありましたね…。4勝1敗1分という数字だったため、あまり目立ってはいないでしょうけど、本当にひどいシリーズでしたからね…。対セ6球団から勝つという全セ制覇を達成しましたが、苦戦した中日を除けば一番強かったのが広島だった。こちらの投手陣も打撃陣も相当苦労しましたからね。選手の実力に差があって話にならないという感じをさせなかった唯一の日本シリーズでしたから。それでも、広島が去年と全く同じミス・短期決戦の禁を犯したことで勝手に自滅してくれました。相手が下回ったおかげで一見ワンサイドで勝てましたが、短期決戦が下手で禁を犯したのは、こちらも同じ。工藤が焦って動いて継投で自滅した。5戦目、ホークスホームでの3戦目でもし負けていたら、対日本シリーズホーム連勝記録が途絶えていた。あそこでホーム連勝記録という絶対性・優位性が失われる結果になって、2勝2敗の対スコアで相手のホームの広島に帰ったらまず負けていたでしょうね。いくら広島といえど、不利・不安という要素が払拭されれば、またのびのび戦える。勢い・流れが完全に変わる。石川・デスパイネがいなくなってこれで、完全に負けたな…と思わせましたからね。

*7:ちなみに、ここ10年で今年を含めると11年目ですか、最大の負け越しは2009年のオリックスバッファローズが、楽天イーグルスに4勝19敗でやられたというものが最も差をつけられた、ボロ負けしたカードになっています

*8:参考ーまさかのⅤ逸……ソフトバンクにあったいくつかの敗因 2016年シーズン総括(福岡ソフトバンクホークス編) | VICTORY

*9:ただ、05年はロッテも勝率6割超えているんですね。ホークスが.664でロッテが.632。もしホークスがそのまま勝っていてもロッテが6割を超して敗北した珍しいケースになったことは変わりないので前例にないとするのはちょっと言いすぎですかね。珍しいこと自体に変わりはありませんが。こういう異常・レアケースが発生したのは、交流戦が36試合制であること。そして楽天創設の年という事情が大きく関わっていますね。両チームとも交流戦で二桁の貯金と楽天の勝率が3割切ってるという背景がこのレアケースの説明になるかと思います。

*10:確か野村ヤクルト時代にも、対阪神相手に20勝6敗とか、そういうことをやって優勝していた記憶がありますね

*11:甲子園興味ないのでよく知りませんけど、最近の高校生でもこんな考え方はしないでしょうし、アマチュアの監督のほうがまだプロフェッショナルに戦略を考えているんじゃないでしょうかと思えますね…。まあ未だに何百球平気で投げさせる監督もいるくらいなので玉石混交なんでしょうけどね。

*12:リリーフ陣の酷使、ムチャクチャな起用法でOB及び評論家からこんなことをやっていたら風物詩になるし、投手陣がパンクする!なんてまっとうな意見が聞こえてこないのも工藤ぶっ壊れ野球との親和性の高さを裏付けますね

続、工藤公康「愚将」論―工藤公康名将論という珍説の検証

 モデムがぶっ壊れるというトラブルなどもあって、少し間が空いてしまいましたが続きです。工藤公康は名将ではない。ホークスは未だに短期決戦に弱い風物詩チームであるという話の続きです。
 前回はこちら→2019ホークス <続・ホークスは短期決戦に弱い論>リーグ優勝を逃しても三年連続日本一だから工藤公康は名将?否、愚将・迷将の類である

目次

 

 間が空いた効用というわけではありませんが、さっそく次のような工藤公康を名将と持ち上げてしまうようなものが出てきました。日本一に三年連続でなった・三連覇したという表層上の数字、結果だけをもって判断して評価するというものです。分析ということをする上で最悪なものの見方の一つですよね。こういう物事へのアプローチの仕方、考え方というのは。
  最低なものの見方故に格好の反論材料となるので、こちらをそのまま応用して書いていこうかと思います。

■セパで明確な実力格差がある以上、日本シリーズに価値はない。連覇は評価の対象にならない

 まあ、そもそもこれらの記事に限らず、工藤監督・采配を持ち上げる人に共通していることなんですけども、①日本シリーズを過大視する―という欠陥、認識の誤りがあります。  
 西武→中日の和田一浩氏が述べていましたけど*1、今年の日本シリーズは一方的過ぎた。日本シリーズという大舞台にふさわしい試合ではない。このような著しい戦力差はNPBという前提・根幹に関わるからいち早くなんとかしないといけないと警鐘を鳴らしました*2。このような主張を見るまでもなく、今回の日本シリーズ、近年の日本シリーズにはそもそも価値がありません。
 パ・リーグの代表にアクシデントがなければほとんど間違いなく勝ってペナントが終わるというのが現実。つまり日本一になることというのは、実はものすごくハードルが低い。リーグ制覇の方がハードルが高いのだから、そのような舞台で3連覇したからと言ったって、そんなことは当然評価の対象にはならない。これが、セ・リーグサイドのチームが勝ち上がって、3連覇なら無論話は逆になりますが、勝って当然のパ・リーグサイドがCSからの勝ち上がりを含めての3連覇、リーグ優勝は1回しかしていないというのだから、評価の対象になるはずがない―という結論に普通は至るはずです。
 リーグ優勝するのが、困難な戦力でありながらもなんとか3位に滑り込んだ。そしてCSファイナルでまず勝つことは出来ないと思われていたチーム相手に勝ち抜けを果たした!―とでも言うのならばまだしも、前回・前々回で述べたとおり、当然そうではないわけですからね。ライオンズは短期決戦に弱く、セ・リーグパ・リーグよりも弱い。そういうことをきっちり押さえていれば、パ・リーグや現代野球のセオリーを知っていれば、特に偉業でもなんでもない。むしろリーグ優勝を二年連続で逃しているというマイナス査定になる話だということすらわかっていないのですから、何をか言わんや。

■故障禍はアクシデントではない、コンディション軽視の工藤采配が自ら招いたもの

 ②故障者続出というアクシデントを乗り越えて新戦力を抜擢、整備して危機を乗り切った―勿論No。壊したのは工藤公康自身の酷使采配の結果。アクシデントでもなんでもない。過去記事*3に書いた話なので繰り返しませんが、選手を休ませてコンディションの維持を図る。戦力を通年&3年先を見据えて勝利を犠牲にしてでも、休養・育成をする―といったペナントレースを戦う上での基本・セオリーを初めから放棄して無視して来た結果が今の故障禍ですので、事実誤認も甚だしいですよね。こういう主張は。
 さんざん主張してきたように、連投を避ける。疲労が溜まってきたベテラン選手をスタメンから外してベンチに下げるべきでした。無論、そういうことをきっちりやっていても、選手の故障は100%避けられるわけではありませんから、故障自体を工藤采配によるもの。100%工藤采配の責任・犠牲者だと主張するつもりはありません。が、監督として絶対にしてはならない特定投手の依存・酷使や「すきあらば~~継投」という起用法をしていた。勝ちも同点も負けのケースも関係なく役割を無視して、とにかく投げさせまくるという投手起用をしてきたのですから、責められて当然でしょう。故障の責任の一つに、間違いなく工藤公康の無茶苦茶な投手起用が背景にあった。現代ペナントレースの常識・セオリーから大きくハズレた選手・コマの使い方をしていたのですから、指揮官に責任があるとみなすのが普通。因果関係をまるで履き違えている。
 投げさせる必要もないのに、すべての試合を勝ちに行こうとしてすきあらば岩嵜を投げさせた。勝ちパターンでも同点時でも、ロングリリーフでも先発でも役割を無視してとにかく投げさせた。現代野球のセオリーからまるで考えられないような使い方をして、翌年少し状態を落とした。それでも岩嵜の起用や他のリリーフ酷使を改めず、サファテがブチ切れたのは周知の事実。
 一部で選手が監督に逆らった、サファテの造反のように報じられましたけど、そんなの当たり前ですよ。あんだけバカみたいに投げさせられれば状態を維持できないし、壊れてしまう。現場が悲鳴をあげて当然。黒田の影響でバカみたいに「男気」という言葉が使われて、サファテがこれ以上岩嵜を投げさせるなら自分が投げると直訴して、サファテの「男気」!みたいなバカな報道がされていました。が、しかし、これは男気でもなんでもなく、使い潰される年下の後輩たち・リリーフ陣の状況を黙って見ていられなかったからですよ。いついかなる時でもペナント終盤のようなブルペンフル回転状態なんですから、リリーフ陣がパンクするのは目に見えていましたからね。先発を引っ張るのも一つの手だと婉曲に表現しましたが、全部の手ですよね。とにかく先発をすぐに下ろしてリリーフに頼りすぎるという悪癖がある監督なので。
 そういう事情があったのにも関わらず、工藤は「サファテと直接話をした。そういうことを言わせてしまって申し訳ないと思っている」などとコメントをして、反省した素振りを見せながら、起用法は一切変えないままでした。ジャック・バウアーのモノマネでもしたかったのかな?という意味不明な対応でお茶を濁しただけで、現場の悲鳴を事実上無視しました*4
 そんなことをしているから岩嵜もサファテも壊れてしまうわけですね。そして翌18年には、その穴を一人一殺継投(1つのアウトをとるのに一人のピッチャーを使う)というバカなやりかた、更に投手酷使戦術を採用して、リリーフに負担をかけたのですから、120%以上、リリーフ崩壊・不安定化は工藤公康の起用法にあります。加治屋が良くなった。上で使えるようになった!!となったら、すきあらば加治屋継投で、加治屋を1年で使い潰した。石川が良ければ石川―と何枚ピッチャー壊したら気が済むのかという体たらく。

■リリーフ再建・世代交代という喫緊の課題を無視する監督が名将?

 毎年毎年、去年リリーフの酷使のツケで今年のウチは優勝争いできないとペナントレース開幕の前に思わせる采配をしてきたのが工藤采配。そんな采配・酷使継投を見て、よく名将だなんだと言えるものだというのが正直な感想ですね(まあ、ろくに見てないからこそ、そういう妄言が平気で出てくるのでしょうけどね)。今年はまず優勝争いできないというリリーフ状況・事情だった。そしてそれに加えて野手の高齢化が深刻化していた。世代交代を図る必要性が前々から言われていながらも若手野手を試さないから、全く世代交代が進まなかった。
 今に始まった問題ではなく、秋山政権時代から内野全般において次のレギュラー、後釜を探さなくてはならないというチーム事情・課題がありましたからね。秋山政権時代は、それ以上に投手陣、先発の駒不足が深刻だったのでそこまでクローズアップされませんでしたが。さらに今宮・晃・柳田が出てきたばかりで、松田・内川もバリバリ打っていて、そこまで世代交代を!という必要性も感じられなかった。まだまだ課題を先送り出来る時代でしたから。
 捕手細川の後釜を―、二塁手本多の―、そして今は三塁手松田と一塁手内川の後釜ですね。甲斐はキャッチャーとしてリードがダメ、暫定セカンドの牧原は守備範囲が狭くて使えない。セカンド・ショートによくいるタイプの1・2番バッターとして繋ぎや盗塁が上手くてテーブルセッターの役割を果たしてくれるというタイプでもない。遊以外の、一・二・三・補と全てのレギュラーで問題を抱えているというのが今のホークスのチーム事情ですね。
 世代交代もそうなんですけれども、ポイントとして重要なのは守備力ですね。ホークスというのは石を投げればゴールデングラブ選手に当たるというくらい内野が鉄壁だった。内野の守備を重視するチームだった。それが年々、内野の守備力が劣化していっている。ゴリゴリゴリゴリSAN値のように毎年毎年削られていってるというのはものすごい深刻な問題。黄金時代のホークスを支えているのはこの守備力なのに、それが最早どこのチームと比較しても大差ないくらいの守備力になってしまっている…。まあ守備を軽視する監督なので次世代の内野のレギュラー陣もドエライことになる気はしますね…。
 今のホークスというのはまともにセカンドを守れる選手がいない。これは非常に頭が痛い問題であると最後に指摘しておきたいと思います。本多が1・2塁間の打球をさばいていた頃に比べると天地の差がある。川島も牧原も、三森も周東も誰もろくに守れない。バッターがセカンドに打球を飛ばしたとき、「よし打ち取ったな」と思ったら全部打球が抜けていく。「何だみんな守備全然ダメじゃないか…。こうなったら明石しかいないな」と思ったら、明石でさえも捕れない。今や明石の守備範囲も衰えてしまって打力に目をつぶって明石で!という選択肢も取れない…。大事な内野の守備にオプションが決定的にかけているのが今のホークスです…。
 短期決戦で守備を重視して本多を!という一時期のようなことはもう出来ない内野事情があるわけですね。せいぜいバックアッパーの高田にやらせるくらいでしょう。バックアッパーなんで今宮が怪我をしたらもうどうしようもない状況になります。今のホークスというのはそういうチーム、危機管理の欠片もないチームですから、何らかのアクシデントが起きれば、一気にチームがガタガタっと崩れるチームになってしまっています。そんなチームなのに上手くアクシデントを乗り切ったと評価するとはこれいかに。むしろアクシデントを招いている招き猫にしか思えませんが…。

■優勝よりも数年先を見据えたチーム作りをすべき

 リリーフ再建・世代交代をしなくてはならない。そういうチーム事情もあって、中村晃が病気で離脱し、柳田も故障でいなくなったところでファンの間では「今年の戦力では優勝はもう無理だから、諦めて育成に切り替えるべきだ。無理して優勝を狙うよりも来年・再来年、将来を見据えた采配に切り替えて」という声が日に日に高まるという状況でした。シーズン序盤5月頃に首位を走っているときは、どうしてウチが今首位なの?と言われるくらい戦力が足らない・チームが整備されていない状態だった。今年はホークス同様、他所のチームも戦力を整備しきれないという事情があった故に、選手が揃わなくてもひょっとしたら今年も棚ぼた的に優勝できるのでは?という気持ちが芽生えるものの、やはり変に欲張ったりせずに、やはり優勝はおいといて若手の育成を、若い選手を起用してください。世代交代をメインでお願いしますという声は根強かった。
 が、しかし、そんなまっとうな意見はなんのその。目先の勝利にこだわってルーキー甲斐野をフル回転、リリーフ酷使を改めることはありませんでした。どうしてウチが首位なんだろう?という謎の背景には、甲斐野ら新戦力をフル回転・酷使したという要素が大きいですね。無論、先発柱となる大竹・高橋礼が出てきてくれたおかげでもあるのですが。
 繰り返しますが、今年はまず優勝争いできないというリリーフ状況・事情だった。それを可能にしたのはルーキーで甲斐野という当たりをドラフトでとってこれたから。他にも泉や椎野というルーキー*5で使える投手が出てきたからですね。
 これで勝ちパターンを構築できるかな?リリーフ層を厚く出来て今後数年先、長い将来も見据えて後ろを安定させる土壌ができたかな?という再建の序盤の段階。酷使のツケがたたった上での投手陣崩壊という近況があるのにも関わらず、勝利よりも投手陣の再建を重視して今年は戦わなくてはならないのにも関わらず、またバカみたいにルーキー達を投げさせまくるという有様。甲斐野が森並に頑丈という特性を持っていない限り、近いうちにまた壊されるでしょう。加えて、そういう采配をする監督ですので、またリリーフ陣を破壊して、大事な終盤に勝ちパターンが崩壊して、バカみたいに大逆転負けをするんでしょうね。ドラフトの成功・補強ありき、戦力ありきの前提でしか采配出来ないタイプの監督ですので。
 チームにとって大切な即戦力ルーキー・中継ぎエース候補を、身体の出来ていない1年目にフル稼働で、65試合も投げさせていますからね。まあ高い確率で、またすきあらば継投で壊されると見ていいでしょう。高い確率で第二のスアレスになるでしょうね。

■2019年だけでなく2018年も見切りをつけられなかった

  名将というのならば、勝てないとわかったら、コレ以上は選手を壊すだけ、消耗させるだけだから撤退の道を選ぶもの。どんなに悔しくても、勝ったときの戦果が大きいものだとしても、不可能だとわかったら撤退するもの。敗北を甘受して次に繋げるもの。見切りをつけられずにズルズルズルズル無駄な戦いを続けるから、選手を壊す。だから前評判が高くても優勝を逃すし、大逆転負けを食らうことになる。捨て試合や捨てシーズンを作れないからこういうことになる。
 これは去年の2018年も同じ。自身の采配の無謀さで岩嵜・サファテを壊して勝ちパターンを崩壊させた。789の必勝リレーが成立せずに、ペナントを戦うことが難しいとわかったら、もうスッパリ見切りをつけて来年を見据えるべき、来年に切り替えるべきだった。2016のように先発の柱がしっかりしているとでもいうならともかく、東浜が6月に離脱。この時点がもうデッドライン。ここでこの年は見切りをつけるべきだった。
 どう考えても千賀・バンデンハークの二人だけでは先発を回しきれない。この年の千賀が180イニング投げてくれるような絶対感があるかと言えばそこまで期待できるかわからない状態。現にこの年は22試合の141回。イニングを食ってくれるか、そうでなくても投げる日はほぼ負けない。絶対チームに勝ちをつけてくれるというわけでもなかった。千賀を中心に計算できるという程ではなかった。この時点でもうアウト。どう考えても優勝までの計算・目処が立たない。
 他に柱で計算できそうな投手は石川くらい。しかしその石川を先発で固定すればロングリリーフや勝ち継投の投手が足らなくなる。しかも、武田がこの年からよくなくなってしまうわけですね(エース候補と言われていた武田の不安定化でホークス先発陣は一気に計算が立たなくなっていきます)。この年の武田は完封以外は負けるという謎の投球をしていました(先発成績は確か3勝9敗)。
 他に計算できそうな先発は見当たらなかった。柱とは到底言えない、投げてみないとわからないタイプの中田がいたので、いくらでもどこまでも投げられるという特性を持つ分、負け覚悟でとにかく中田を引っ張って、この日はリリーフを休ませて確実に勝てる試合だけにリリーフを使って勝ちを拾っていくという戦術もあった。がそういうペナント全体の流れを見据えた判断もできない。中田だから信用できないと、良いピッチングをしていたのにも関わらずにファーボール1つ出しただけで謎の交代というのもありましたしね。
 来年・将来を見据えて戦うが、確実に勝てる試合は拾っていて、終盤上位が潰しあったところで、一気に勝負をかける。万一の時、優勝が狙える状況が来たときには勝負をかけられるようにしておいて、それまでは休養と育成をメインにしておく。あくまで来年・再来年の将来を基本線にする。そういうことをちゃん出来るのが名将というもの。思いがけない幸運が舞い降りたときに限ってだけ、不十分な戦力でも優勝を拾いに行くもの。優勝を狙える戦力ではないのに、身の丈に合わない戦果を手にしようとするような戦い方をする。温存をするからこそ終盤思いがけずに勝てる、優勝を拾うことも可能となるが、そういう選択肢が根本から存在していない。
 温存という選択肢とは逆に、いつでもエンジン全開フルスロットル。何も考えずにピッチャーを使い潰して、将来のリリーフエースの芽を摘むような戦い方をする監督のどこが名将なのか?撤退という選択をせずに、欲張って被害を拡大させる。全滅の憂き目に遭う。2018年か2019年のどちらか一方は必ず優勝よりも育成をメインにするべきだった。どちらか一年は育成シフトをしなければいけない年だった。育成10:勝利0という極端なバランスでなくとも、5:5だったり、6:4という割合でも勿論良し。しかし、そういう育成の割合を増やすということもしないから、去年も今年も大事なところで競り負ける。チームにとって何のプラス材料もないままただ負ける。何の収穫もない下手くそな負け方をする。優勝を狙うのに難しい戦力・状態になっても方針を柔軟に変えることが出来ない。どんな状況でも、優勝を狙えるチーム状態のような戦い方をするから、翌年に稚拙な戦い方のツケが回されることになる。チームを率いるごとに選手が成長・新人が台頭して来て強くなるどころか、年々選手が抜けて弱くなっていっている。優勝できそうだったから育成より優勝重視したというのならば、当然最低限の戦略目標である優勝を達成しろという話になってくる。育成を犠牲にして、ベテランの休養・調整を犠牲にして、勝利を追求したのにも関わらず優勝できず、チームは消耗する。これで一体名将と言えようか?いや言えない。

■育てながら(≒壊しながら)勝つ

 工藤監督というのは以前書きましたけど、確かに投手を育てる監督。育てながら勝ってきた監督でした。育てながら勝つというのは采配を行う上で理想とされる一つのものですが、彼の場合は更にもう一つ言葉が加わって、そこに「壊す」という要素が加わります。育てながら壊しながら勝つ。育てながらかつ、壊して勝つ。育成かつ酷使破壊というセット・抱き合わせ販売という監督。かつ勝つ野球をする監督なので、いつだって采配もカツカツになるのです。工藤という監督・工藤采配というものを見る上で、こここそが絶対に見落としてはならないポイントになるわけですね。
 いついかなる時も勝利に全力。シーズンを見据えた戦略も計算もあったものではなく、全部その場しのぎ。その時その時のことだけしか考えない。なので、優勝する時というのは、選手が壊れなかった時だけ&対抗馬の競争チームがこちらの戦力を下回った時だけ。先行逃げ切りで逃げまくって、追い込み型の馬が追いついてこない時だけということになります。
 壊そうがなんだろうが、その年優勝できればそれでいいという長嶋ジャイアンツ野球理論が受け入れられる人はそれでいいのでしょうけども、その年優勝した翌年&さらにその次の年も、必ず優勝できなくなるというソシャゲの強化合成みたいな代償を支払う必要がある野球なんて普通は見たくないはずです。毎年安定して優勝争いどころか優勝を見たいファンはそんなナンセンスな采配を見たくないはずです。
 指揮を取った5年間全て優勝できると思える戦力を誇りながら、たった2回しか優勝できなかったのは、ここに原因があるわけです(吉井がいた時を除けば、吉井放逐後は4年でたった1回ですからね)。先を見据えたら、良い投手をつぎ込んで勝ちを確実に拾いたいのは分かるが、我慢しないといけない。そういう我慢ができずにやったらめったら投手をつぎ込んで酷使するから、シーズン終盤失速する。そして大事な試合で競り負ける。工藤政権・采配の優勝の逃し方は全部一緒ですからね。学習能力ないのか、お前は!と言いたくなる玉砕采配。同じ失敗を何度でも繰り返す旧大日本帝国軍を連想させるものがあります。
 一年目は吉井がいたために、寺原や仁保の故障などは工藤は無関係と言えます(適切な間があって決して無理なペースで投げていませんでしたので)。が、シーズン二年目からはサファテ5連投という狂った継投に始まり、スアレスが酷使されて潰されていきました。ホールドのリーグ記録を樹立し、日本記録の17連続ホールド記録を達成したバリオスが本来勝ちパターンを担うはずでした。本来、バリオスがサファテの前を投げる予定でしたが、去年の故障(不調?)の影響もあり、結局使えないとわかると代役に白羽の矢が立ったのがスアレスでした。
 スアレスの数字を見ると、58試合で53イニング。言われるほど酷使か?と思う数字でしょう。が、実は彼は実質プロ一年目の投手でサファテの後継として発掘されてきた存在だったんですね。つまり将来のための育成枠の投手だった。そんな育成段階の投手を、身体の出来ていない投手を、いきなりプロで通年投げさせたのですから何をか言わんや。
 このときは確か25歳くらいで、未完の大器として素材として取ってきた存在でした。そんな選手を上で投げさせること事態が論外。社会人ルーキー・社会人1年目と考えれば、それくらい投げておかしくないだろうと思うものでしょうが、彼は草野球あがりというド素人だったんですね。日本の高校野球大学野球・アマチュア野球を一切経験していない。向こうのアマチュア野球をやっていたと言いますが、草野球をしていて普段は建設作業員だったという経歴の持ち主です。日本の社会人野球のようなそれと比較するのは無理がある環境で野球をしていたわけです。プロとしてどころか、プロ以前の経験すら怪しい。メキシカンリーグでいい成績を残して*6、ホークスが声をかけたという流れのようですが、これまでの経歴を見れば、通常の外国人枠とは違い、野球経験自体が乏しくアスリートとしての体が出来ていないし、まともに一シーズン高いレベルで野球をし続けたこともないわけです(メキシカンリーグがレベルが低いという意味ではなく、日本の一シーズン=長い期間やり続けたことがないということです)。
 通常、日本に来る外国人選手というのは30歳前後の完成品が来るわけですが、彼は年齢を見て分かる通り発展途上の選手。これまでの外国人選手としては少し違うタイプの選手・経歴だったわけです。そういう若い未完製品・未完成素材枠を取ってきたのは、じっくり経験を積ませて将来のサファテの後釜として長くクローザーとして働いてもらうために、素材として取ってきたということです。そのような5年先を見据えた逸材をたった1年で使い潰してしまった。もし3~4年長いスパンで体作りを主軸に、たまに上で経験を積ませるために投げるくらいだったら…。まずはしっかり身体を作ることをメインとしていれば…。一から体作りに精を出していたら今頃クローザー・守護神に困ることはなかったと考えられるわけです。そんなサファテの後釜がなぜそのサファテ本人よりも早く退団しているのでしょうか…?これは一体どういうことなんでしょうねぇ?
 勿論、うまく言ったらの話であり、必ずしも育成・守護神化が上手くいかないストーリーもありえます。が、本来フロントはそういう戦略・ヴィジョンで考えていたはず、それを潰してしまった。3年先・5年先の計画を現場が無茶な使い方をして壊した。これは間違いなく首脳陣の責任問題になる。その責任を一体誰が取ったのか、こういう暴挙を何故許したのか?その過失の追求は徹底的になされなくてはならない。が、この点での責任が追求されることも当然ないわけですね…。
 面白いことに、どうせスアレスもバカみたいに3連投させてるんだろうなと振り返ったら、実は3連投が一度もないんですね。発展途上の選手である故に、3連投させないという方針があったんでしょうね。しかし連投がリリーフにとってまずい!タブーだ!という意識がありながら、3連投・4連投ためらわない継投をしているのはなぜなのか?成長途上の選手で身体作り段階の選手でも、3連投さえさせなければなんとかなるだろうという甘い考えを持っていたことが理解できますね。58試合で53回という中途半端なイニング数になってるのも森福ワンポイントのあとで使われたりしたからですね。そんな中途半端な使い方をせずに登板試合数自体をもっと減らすべきでしょう。先発は武田・千賀・和田・東浜としっかり柱があって、森・岩嵜・サファテと勝ちパターンもしっかり構築できる。スアレスが30~40試合でも全然困らないシーズン。そんなシーズンで一体何をやっているのか…。それで優勝もできない、CS突破も出来ないとかさすがの名将(笑)ですね。

■クラッシャー工藤・破壊神クドーの犠牲者ースアレス・岩嵜・サファテ・石川・モイネロ・加治屋・二保・東浜・武田…

 この年はスアレス・岩嵜・サファテ。そして翌2017年は石川・モイネロがこのクラッシャー工藤・破壊神シドーならぬ破壊神クドーの標的になります(自動回復で回復するのは自分だけ、選手にベホマをかけるヒーラー要素は何故かこっちの破壊神には備わっていません)。同じく1年目で23歳のルーキーモイネロを3連投・4連投・3連投と惜しげもなく使い続けます。いかに野球大国キューバから来たとはいえども、大卒1年目か2年目程度の選手。上で投げることよりもプロの水になれさせること、身体作りから初めて、徐々に実戦経験を増やしていくというのがセオリー・本筋です。が勿論、選手を育てる上での基本を守るつもりはかけらもありません。身体の出来ていないうちに、疲労や故障対策も知らないうちに酷使をすれば思わぬ怪我を招き、その怪我が選手にとって致命的なものになりうるという発想はないのでしょうね。翌年、投げればまず抑えてくれるという安心感はなくなり、防御率は2点以上悪化し、抑えたり打たれたりの不安定な投手になってしまいました。
 2018年は加治屋。そしてこの年に故障が完治していない二保をピッチャーが足らないからと無理やり投げさせるおまけ付き。まだ完治もしていない投手を無理やり投げさせるなんて…。ムチャクチャにもほどがありますね。
 今年はモイネロが復活してくれたこと、甲斐野が活躍したこと、森が一時期の球威をなくしたものの、見事なコントロールPとして再生したこと。これによって勝ちパターンが安定をしました。森の長年の活躍、ホークスリリーフを支え続けてきた働きを考えると、本当に素晴らしい投手であるということが出来ます。が、裏を返せばここまで投げ続けてきた森は、今年一時離脱もあったようにいつ壊れてもおかしくないわけです。
 リリーフが故障しないように投手コーチが支える。投手の肩を守るというストッパー機能が壊れてしまっているチームなので、誰かが離脱して回らなくなるということは常に想定されますね。来年、3人全員いなくなって、勝ちパターンどころか同点・負けパターンすらもなくなり、リリーフ防御率が最下位を驀進するなんていう事態に陥っても不思議ではありませんね。
 今はもう2度も3度もブルペンで肩を作るな!というセオリーが生まれてきていますが、そんなセオリー知ったことではないでやってきていますからね。メジャー帰りの五十嵐・岡島はメジャー流で肩を1度しか作らなかったし、吉井も1度しか作らせなかった。リリーフ陣を適切に管理しているときもあったわけですが、今はもういつでもいけるように、投手コーチは監督の言いなりでやたらめったら肩を作らせて平気の平左ですからね。
 嘉弥真が契約更改でブチギレていましたけど、当たり前ですよね。馬鹿みたいに何度も肩を作って準備して投げさせられているのに、ワンポイントだから&実際投げてないから査定には関係ないみたいなことを言われれば、じゃあ何のために毎試合・毎試合肩を作って準備してるんだ。無駄に投げているんだって話ですから。だったらワンポイントじゃなくて1イニング投げさせてくれよって話ですからね。地元・沖縄でのハレの凱旋試合で投げたいあまりに4回位肩を作ってアピールしていたらしいですが、それでも投げさせてもらえなかったという記事を読んだときには、涙不可避でしたね。涙そうそうです。いつもどうでもいいときに投げさせられて、こういうときに投げさせてもらえないというのは一体どういうことなんでしょうかね?
 リリーフは惨憺たる有様でも、先発・ロングイニングを食える柱を育成してくれればいいのですが、結果はこちらもひどい有様。手掛けてきた東浜は故障して、去年の8月頃の故障明けからQSするのがやっとの6回までの投手になってしまった。そして今年は言わずもがな、5回投げるのがやっとで7試合投げて今季絶望コース。先発・東浜の場合は、酷使して壊すということはありませんが、育てはしても結局故障させてしまっているんですね。故障を見抜けない・予防できないという範疇の話であり、工藤が潰したというカテゴリーではありません。上手く使いこなせない・育成しきれないという類の話です。先発の育成・起用について、壊さずかつ勝利し、見事に管理仕切るという手腕があればまだ評価されるべきなんでしょうが、当然そういうプラス要素もありません。
 武田は2016年に180イニング以上投げ、先発の柱として目処が立ち、これで千賀・東浜と3本柱でチームも安心安泰!―そう思えた年のあとは先発としての役割を果たせない不安定な状態が続く有様*7。そして今年のペナントの終盤、右肘に違和感があるという状態で無理やり投げさせて挙句の果てに手術で完治4ヶ月だとか…。
 ホークスだけポスティングを認めないというのが話題になりましたが、ポスティングで今180イニング投げる千賀が抜ければ、大黒柱が抜けて家屋倒壊する状態ですからね。リリーフどころかもう先発でさえも崩壊するという有様ですから、そりゃ認められないですよね…。
 千賀がFAで抜ける頃にはもう工藤政権も終わっているでしょうが、そのときには果たして投手陣がどうなっているのか…。育成以上に破壊する監督なので、適切に管理してシーズンを戦うことが出来ない監督なので、遠からず投手陣は破綻すると見ています。それ以上に下がいい投手を供給できなければ、長嶋ジャイアンツよろしく毎年のように外から投手を獲って補強しなければ、必ず投手陣は崩壊、チームも低迷するでしょう。そのときになってこういう名将論者は一体どう弁解するのか聞いてみたいものですね

■監督は選手に嫌われる必要がある論についてーんなこたぁない

 ③選手との特定の距離を保つため、適切な距離感・人間関係を作るために選手と距離があった―???これもホークス報道を見てきた人には周知の事実。コーチや選手に自分の野球理論を頭ごなしに上から押し付けるから嫌われた。挙句の果てには吉井、達川、鳥越とコーチを次から次に放逐*8。結果、工藤政権二年目に吉井追放の煽りを食らってファイターズに歴史的逆転負け。五年目の今年は、鳥越追放。そこに細川・吉井が加わって、ロッテに歴史的負け越し。それが響いてライオンズに逆転負けをくらったというていたらくですからね。自分のイエスマンだけで組閣して工藤カラーで組織を塗り替えた結果がこのザマです。適切な距離感というのはイエスマンを作ることを意味するのでしょうか?自分に従わない人間を拒絶し、自分の言うことを絶対化することが適切な距離感というのでしょうかね?それで勝てればともかく、確実にどんどん成績を落としていっているわけですから何をか言わんや。後述しますが勝率も急落し、リーグ優勝にも失敗。それでよくもまあ名将だ何だと言えるものだと呆れますね。
 廣岡氏が監督がいい人だと思われたらろくなことはないと、投手に手取り足取り指導して嫌われることも辞さない工藤を褒めていましたが、完全に的外れですね。ヤクルト西武時代にナインを敵に回したが勝っていくうちについてくるようになった。結果が全てを正当化した自身の体験を引き合いに出していますけど、弱小チームの立て直しと元から常勝チームのホークスではケースが違いすぎます。何より今と昔では人との距離感・関係の築き方が大きく異る。そんな昔の人間関係をベースにした事例をあげても、適切な例えにはならない。そもそもバレンタインを招聘したロッテでは、一年で組織が破綻してしまったのに、一体何を言っているのか感が強いですね。*9
 それに嫌われるようになったのは2年目から、何でもかんでも自分でやろうとして、口出しして越権行為を繰り返したからですからね。コーチの領分にまで口出しして勝手に2・3軍の選手の打撃指導をし出して呆れられた。既存方針の指導法とまるで違う打撃を、コーチを無視していきなり直接選手に指示して、現場のコーチや選手を混乱させるというコーチングのタブーを犯した。打順や作戦指示で藤井コーチと衝突したり、コーチの言うことを無視して自分勝手にやりだしたからまずコーチ達に呆れられ、コーチ達に嫌われたわけですからね。それに伴い選手たちもファイターズにじりじり追い上げられるにつれて、あたふたしだしたから監督に不信感を抱きだしてチームも混乱していったわけで。
 優秀なコーチは持論を曲げない生き物だから衝突するわけですね。優秀なコーチはいなくなるし、無能な(もしくは毒にも薬にもならない平凡な)コーチしか残らない。現代野球は優秀なコーチを使いこなせない限り常勝チームを築くのは難しい。選手をかき集めて、その単年・シーズンだけ異常に強いというチーム止まりになるのが関の山。名将とは例外なく優秀な部下の重要性を理解し、その部下を使いこなすもの。そんなこと言うまでもないあたりまえのことでしょうにね…。監督・コーチの言うことを選手が聞かずに困るというのはよく聞く話ですが、監督が持論を押し付けて選手どころかコーチと衝突して揉めるというのは、一昔前ならともかく近年なかなか聞かない話ですよね。
 だから去年も今年も防御率最下位というチームに優勝をさらわれるんです。何でもかんでも自分でやろうとしたって膨大な仕事をこなしきれるわけがない。どんなに優秀で、あらゆる仕事をしっかり把握できて適切な手を打てる人物だとしても、結局時間も体力も足りなくなって仕事を処理しきれなくなる。パンクするに決まってる。そうなったら、意見を聞いてもらえずにいつも上から命令されるだけの部下はそらみたことか!と反発するに決まってるでしょうね。部下の信頼を得られず上手くコミュニケーションがとれない組織がうまくいくわけないでしょう。人心掌握術・部下の操作術がダメダメな上司を、部下を上手く使って組織を上手く動かせない・マネジメントできない上司を、「あの人は優秀な上司だ。優れた指揮官だ」と認めてくれる世界がいったいどこにあるというのでしょうか?
 名将というのは優秀な部下、コーチや選手をリクルートしてきて(監督が直に動いて雇用するというのはちょっとアレですが言葉のアヤということでスルーしてください)、それを上手く使いこなすもの。組織を見事に機能させるものでしょう。組織を破綻させた指揮官が名将とは片腹痛し、へそで茶を沸かしてしまうってなもんですね。去年・今年とCSファイナルを突破出来たのは単なる偶然。CS直前に選手のコンディションが整ったのもそう。事前のプランニングの結果ではない。たまたま上手く流れがきた、ハマっただけです。遇機を以て、運に恵まれたことを以て名将だなんだなんて、へそで茶どころかコーヒーも紅茶も、青汁もミルクココアもタピオカミルクティーも沸かせてしまいますよ。

■3連覇した監督は史上5人しかいないから名将?

 ここからリンクの二本目(工藤公康は歴代名将を超えたのか?)の方に書かれている話に移ります。④とすべき事の程ではないので、サラッと流しますが、野村理論に投手と外野手は監督に向いていないというものがあり、工藤公康はそれに当てはまらないという話があります。が、たった今指摘したとおり、彼は投手特有の性格、ものすごいワガママなタイプで自己本位的な上司なわけですね。故に野村理論は適切だったと言えるでしょう。巨人の藤田監督、中日→阪神楽天を歴任した星野監督という、ごくわずかの例外を除いてこの野村理論は適切なものだとみなして良いでしょうね。
 ④日本シリーズ3連覇の監督は過去5人しかいない。故に名将である―①に続く話であるが、勿論No。そもそもなんですけども、日本シリーズというものが価値をなくしているということ以前に、長いプロ野球の歴史で現代野球・近代野球と、少し昔の野球は全く違う別物と言っていい。時代背景の変化で、テクノロジーなどの変化でレベルが違う。一流どころはともかく、昔は一流以外ガクッと選手レベルが落ちるという時代。選手層がかなり薄く、今と比べると選手層に格差があった。今と昔の野球では、比較対象として適切であるとは言えないもののほうが多い*10。現代のHRバッターを、王や野村ほどHRを打ってないからスラッガーとしては二流・三流というようなものでしょう。
 長い歴史から見て、比類なき偉大な実績であるという事実をもってして、名将云々というのはケースバイケースですが、あまり意味がないと思われます。まあ何よりもCSという制度がない時代のほうが長いですしね。ライオンズ時代の3連覇×2や、11年で8度の日本一など素晴らしい実績があり、間違いなく強いチームだったと思います。が、それだけ圧倒的に勝ち続けられた裏にはパ・リーグが崩壊していた。他のチームが弱かった・戦力を安定して整えられるチームが少なかったという事情もあるわけで。
 そういう事情を考えると、逆に今のホークスの3連覇の価値は高い。よりいっそう難しくなった現代のプロ野球でそんな事ができるなんて素晴らしい!と主張することが出来るのですが、やはりリーグ優勝をしていないので、参考記録・指標にしかなりえないと思います。CSからの勝ち上がりで日本シリーズに出れるという制度があったなら、他にも3連覇を達成できたチーム・監督はいるだろうと考えて、まだ優秀な指揮官だと評価を与えるのは早いと考えるべきだと思いますね。20年か30年かわかりませんが、もっと時代が経ってから初めて比較対象となって参考にされるべき話であると思います。
 今回で終わるかと思ったら、予想以上に描きたいことが出てきて全然終わらないので続く…。次回でなんとか終わりたい…。続き→続、反工藤公康名将論 工藤監督・采配のトリセツ

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*1:戦力差歴然…日本一の戦いふさわしくない/和田一浩 - 評論家コラム - 野球コラム : 日刊スポーツ

*2:※余談ですが、このような状況を見ればセはDHを導入して当然。むしろ遅すぎて今まで一体何をやってたんだ!という話なのに、原監督のDH制導入論を4連敗・スイープの言い訳のように受け止めている意見がチラホラ見られました。彼我の実力差は歴然、3リーグあって1つのリーグだけが弱いというのならばまだしも、2リーグしかないNPBではこれは死活問題。にもかかわらずこういう現状を放置して構わないという意見・主張には驚き呆れますね。なぜセ・リーグサイドには危機感がないのか…。ファンも巨人や原を叩いている場合ではない!一刻も早くパ・リーグに追いつけ!追い越せ!で改革を進めなくては!という声が聞こえてこないのが不思議でなりません。

*3:2018ホークスのチーム崩壊の話、崩壊はヴィジョン・育成・組織論理の欠如故の当然の帰結

*4:岩嵜は、2017年の成績を見ると3連投4回もしていますね…。内3回は移動を挟んだ上での3連投という更に疲労がかかるモノ…。優勝決まった9月にもロッテ相手に3連投しているのとか頭おかしいですね、本当

*5:椎野はルーキーというか2年目の若手ですが、ほとんど試合出てなかったのでルーキーみたいなものなので

*6:メキシカンリーグを見ると、110試合制。そこで43試合投げていますね。つまり日本の野球の1年というか1シーズンに及ばない期間しか投げていない。通年でプレーした経験がない投手ということですね

*7:おそらくこれもWBC(WBSC?プレミア?)開けなのに休養を挟まずに投げたことが影響しているんでしょうね。

*8:自分の考える野球論やトレーニング法に従わない細川、摂津、大隣などベテラン選手とも衝突してましたね。そういえば。一番最初の犠牲者は松中ですが、まあ松中はね…。微妙なケースなんであれですけども。
 関係ありませんが、余談として帆足や中田などもはや一線級の力はないが、使いようによっては戦力になるかもしれないというベテラン選手をあっさり見捨てるという悪癖もあります。自分が手掛けた選手ならともかく、そうでもない単なるベテランに目をかけて最後の花道を飾ってやろうとか、少しでも輝けるように状態が上がったら使ってやろうとか、そういう温情を選手にかけるタイプではありません。長嶋監督よろしく、一度使い物にならないと見きったらもう二度と使わない。そういうタイプの監督ですね。
 選手のために監督が何が出来るか?選手に何かをしてあげるという思想を持つのではなく、監督のために選手が何をしてくれるかということを考えるタイプです。つまり自己中心的なタイプの監督。辛抱強く使えるようになるまで待つとか、選手に目をかけて最後まで見守る・決して一時の不調や失敗で見捨てたりしないというタイプではありません。ですので、ちょっとでも期待はずれだ、使えないとみなすと情け容赦なく切り捨てます。
 自分が戦力になると思う一流の選手以外は軽んじるタイプの監督であるので、なかなか実力が伴わない選手・未知数な若手を使うのをためらうわけですね。2016年のシーズン危機管理上、経験の浅い拓也を上で使って試さないといけないのに試さないとか、加治屋が使えると分かるまでテスト登板を何回もしたり、新人を信用するまで時間をかけるように、若くてまだまだ使い物にならないだろうという選手に星野監督のように大胆にチャンスを与えるようなことはしない。起用に臆病なタイプであることがわかりますね。

*9:日本シリーズ、甲斐拓也を見直した/廣岡達朗コラム―これなんですけど、なんというかまあ、いつものことなんですけど、巨人をサゲたいがために色々理屈立ててますけど、因縁付けの嫌がらせに近いですよね。大田育成失敗のときも、大田がレギュラー競争に負けたという当たり前の事実を無視してましたしね。
 無駄な補強は必要ない、何でもかんでも選手を取ればいいってもんじゃないという主張には賛同できますが、それを言いたいがためになんでもかんでも巨人下げ・否定をしていますよね。選手育てられるから、いつ出て行ってもらっても結構だなんていうチームじゃないですよ、ホークスは。
 3連覇したからリーグ優勝逃しても良いみたいなことを出だしで書いてますし、原監督のDH制導入を負けた言い訳としているのも見当違いも甚だしいですね。単に現巨人とその組織の長である原監督を叩きたいだけでしょう、これは。DH制がないならば、投手がヒットを打てばいいじゃないみたいなマリー・アントワネットやってますけど、現実的にそんなこと無理でしょうよ。打撃練習に時間を割けば、その分投手のレベルが下がるだけだし、投手の故障リスクも上がる。一方がDH制を採用した以上、もう弱い方はDH制を採用する以外道はない。そんなこともわからないんですかね?
 甲斐のリードについてもまあシーズンは間違いなく見ていないでしょうね。日本シリーズのリードは確かに別人のように良かったですけど、果たして本当にオプションがあったか疑問ですからね。千賀と礼がうまくインコースに投げられたから良いものの。では、もし投げられる状態じゃなかったらどうだったか?投手が悪いときにどういう他の組み立てで打線を封じることが出来ただろうか?と言われると…うーん、ですからね。

*10:昔はショートよりもサードのほうが守備の役割が大きかった・重視されていたとか今の人はまず知らないでしょうからね。当然そんなこと知る由もなく、長嶋がいくらすごいと言ってもサードだからなぁと思っていましたからね。守備がうまいと言ってもサードだし、上手かったらショートやってるでしょ?と思ってたのを、教えられて初めてサードが重要という時代があったことを知りましたからね

2019ホークス <続・ホークスは短期決戦に弱い論>リーグ優勝を逃しても三年連続日本一だから工藤公康は名将?否、愚将・迷将の類である

―ということで、続けて福岡ソフトバンクホークスは未だに短期決戦に弱いThe風物詩チームであるという話です。
2019ホークス パCS優勝、短期決戦に強いホークス?No、ホークスは短期決戦に依然弱い。スイープはライオンズがもっと短期決戦に弱かっただけ
続、2019パCS ライオンズがスイープされた理由 短期決戦に弱い理由①打撃・攻撃重視②リード軽視③CS現行制度の欠陥④若手投手陣=ベテランの欠如
 この二本の続きになります。既に先走ってちょいちょいホークスの話を書いてしまってますが、ライオンズが短期決戦に弱い理由をこちらで解説しました。では、ホークスはどうなのか?ホークスも同じ。未だに問題は変わっていない。短期決戦に依然弱いままのチームである。そんな話を前回・前々回でチラホラしました。
 んでまあ、過去にいくらでも工藤采配というかホークスの組織としての問題を既に拙ブログで指摘してますので、過去に書いたもののまとめ直しみたいな話です。ちょっと詳しいホークスファンなら常識みたいな話なので、読んでも大して面白くないと思いますが、まあ一応。セ・リーグ派や最近野球を見出した人。将来、過去の価値観を知りたい、本当にホークスが短期決戦に強くなったのか?工藤監督が名将か検証しようとしたい人のために書いておきます。

 

目次

工藤公康は名将ではない。そもそも球界に戦略・ビジョンを持つ監督がいない

 日本シリーズ三年連続勝利!三連覇!という結果で今年のシーズン、2019の野球が閉幕したので、ホークス強いなぁ。工藤公康は名将だなぁ―と思った方々が少なからずいると思われます。 なのでいま一度改めて記しておきます。工藤公康は愚将であり、工藤采配は稚拙です。
 まあ、采配全てが間違っているなんて言うことは流石に物理的にありえないので、全てを否定するつもりはありませんし、逆に、この采配は素晴らしい!というものも勿論ありました。しかしそれは戦術面に限られたものですし、戦略面においてではありません。工藤公康・采配には戦略的な視点が決定的に欠けています。
 別の言葉でいうと戦術的には優れているが、戦略的には最低最悪と言うべきでしょうね。工藤采配というのは目先のことしか考えずに、トータル的なことを考えない。局地的な事は考えられても、総合的な物事は考えられない。そういう特徴があります。
 そしてこれは球界全体に通底する現象なのだと思います。*1監督は何よりもまず戦略を考えよ!球団・チームとしてのヴィジョンを構築することが基本だ!そんな当たり前の思想が欠如している。故に明らかに、どうしてこんな人物が監督に!?という人事が毎年のように見られてしまう。強いチームが作りたければ、そういう人物を監督にすればいいだけなのに、そういう人事がめったに見られないわけですからね。
 まあそもそもそういうヴィジョンをしっかり持っていて、采配を行えるような人材がいないという前提が存在しているわけですが。

悪しき西武ライオンズの遺伝子を受け継ぐ工藤公康及び近年の勝利でおごるホークスフロント

 前回、ライオンズの問題点・短期決戦に弱い理由を色々語りましたので、同じようにホークスの問題点を一言で語るとすると、悪しき西武ライオンズの遺伝子でしょうね。ライオンズ野球(もしくは勝利をし続けてきた自分)こそ正しいという歪んだ価値観故に、最新の野球・ペナントのセオリーを取り入れない、考えない、無視をします。時代や環境の変化から、野球の常識も変化する。科学・テクノロジーの発展で野球が変わるし、それにつれてセオリーも変わる。つまり変化・進化して当然である故に、その最先端の変化に適応しなければならないという当たり前の姿勢に欠けています。ホークス球団内には、現場からフロントにいたるまで、このおごりにも似た価値観・伝染病が蔓延していると考えられます。*2
 西武ライオンズ十万石まんじゅう野球をしていると書きましたが、工藤公康西武ライオンズからさらなる新しい毒を持ち込んだという風に考えると、名付けるなら十万石毒まんじゅう采配とでもいいましょうかね?埋伏の毒まんじゅう采配埋伏のド工藤采配とでもいいましょうか。のちに頭ひよ子采配マッスル工藤采配といろいろ名付けているので、お気に召したものを自由に使っていただければと思います。

リーグ三連覇も出来なかったのに名将?戦力・当時の状況からリーグ六連覇も十分可能だったのに?

 まあ、いちいち言うまでもなく、本当に名将だったとしたら、そもそもリーグ優勝を逃しませんからね。前回書いたように、ライオンズがあのチームバランスで優勝すること、連覇すること自体がおかしい。なんでリーグ優勝出来なかったの?という話ですから。
 2015年かな?連覇した昔に、書いたとおり、ホークスは今のチーム事情なら他チームの動向次第だが、かなり長期的に優勝し続けることが出来る。三連覇・四連覇はまず固い。五~六~というスパンになってくると、今のレギュラー・ベテラン勢の衰え具合や、他球団の戦力の上昇なども関わってくるので断言できないが、上手く行けば六連覇くらいは出来る。
 そんなことを昔どこかで書きましたが、ママ予想通りでしたね。ファイターズに2016年に歴史的大逆転負けをくらっていなければ、六年連続での日本一制覇でしたからね。ちゃんとやっていればリーグもポストシーズンも六連覇できた。にもかかわらずリーグ三連覇・ポストシーズン勝ち上がりからの六連覇すら出来なかった。六連覇できる戦力・状況にありながらリーグ三連覇失敗からの日本シリーズ三連覇止まりという結果に終わった。こんな有様でどうして工藤が名将なんて言えるだろうか?いや言えない(反語)。
 何でもかんでも自分でやりたがって余計な口出しをせずに吉井に任せていればファイターズに大逆転負けをすることもなかったはずですし、リリーフ崩壊という後々まで尾を引く最悪の事態も免れたはずです。2016年から異常なリリーフ登板過多さえなければ、去年も今年も安定した盤石のリリーフ陣を背景に普通に優勝することは出来たでしょう。
 ※勘違いする人がいるかもしれないので、一応補足追記しておきますが、六連覇チャレンジに失敗したから無能・愚将だと言いたいわけではありません。結果を出せなかったから叩いているわけではありません。ちゃんとやるべきことをやっていて、取るべき策・準備をしっかりやった上で負ける、優勝を逃したという結果だったら、采配を否定する必要はないわけです。やるべきことは全てやった上での敗北であるから、仕方がない。これまでよく戦った。負けたとは言え見事な戦いっぷりだった。あっぱれと称えることが出来ます。ナンセンスなことをやって、チーム・戦力を消耗させる。あげくの果てにそれでも負ける、結果を残せないから采配を否定、非難しているわけです。非論理的なことをやり続けるからこそ、一部のファンは工藤野球を否定し、叩き続けているという事実を今一度抑えておかないとこの話は理解できないので、その点を頭に入れておいていただければと思います。

大差をつけておきながら大逆転負けをする監督が名将なわけがない

 そもそも名将・名指揮官は大逆転負けなんてしません。名将が2位以下に大差をつけておきながら、終盤に追いつかれて、追い抜かれてしまう。どんでん返しを食らってしまう。まくられて逆転負けを食らってペナントレース優勝を逃してしまうなんていうことはありえませんからね。一回ならまだしも二回もですよ?同じ失敗を繰り返す、学習能力のない監督を名将なんて言えるわけ無いでしょう。後述しますが、根本的に采配が変わっていない以上、また同じことをやって、同じように大逆転負けをする可能性は非常に高いと思われます。危機管理の概念がない監督・チームですからね。
 2016年にはファイターズ相手に11.5ゲーム差をまくられて歴史的な大敗北を喫して、今年はライオンズに8.5ゲーム差をまくられて負けました。大差をつけておきながら大逆転を食らってしまう指揮官・監督が優秀だと言えるでしょうか?いや、言えない(反語、二回連続二回目の登場)。
 とまあ、そういうことを論じたいわけですが、これだけ読むと「何言ってんだ、こいつ!?日本一三連覇しただけ十分凄いだろ!?六連覇なんて欲張りすぎだろ!いいかげんにしろ!?」ということになってしまうと思うので、どうして三連覇が失敗なのか?最低な結果なのか?という話を詳しくしていきたいと思います。
 本当は六連覇が可能だったという話*3と、ライオンズが短期決戦に弱いという前回・前々回の話に続けて、福岡ソフトバンクホークスも未だに短期決戦に弱いチーム、The風物詩チームであるという話をしていきたいと思います。

2016年と2017年のCSファイナルを見よ!一体どこをどう見たら短期決戦に強いなどという妄言を吐けるのか!?

 ペナントレースの戦い方が下手くそ、長期決戦が下手という意味合いにおいてでは、相対的に短期決戦の方がまだまし。そういう視点から見て言うならば、短期決戦に強いということを言えなくもないですね。まあ、言うまでもなくそんな相対的評価なんの意味もありませんが。
 そもそも短期決戦に強いと主張するのであらば、一体なぜ戦力的に有利だった2016年のCSでファイターズに勝てなかったのか説明してほしいものですね(まあ、言うまでもなく、今年と同じでなぜリーグ優勝を逃してしまうのかわからない戦力差であったわけですけどが…)。CS決戦中、相手クローザーが離脱&コンディションの問題で大谷の先発が難しく、リリーフ・抑えの1イニングしかムリだったという幸運に恵まれても、あのざまですからね。戦力的にウチの方が有利な要素が多かったのに、どうしてファイターズにCSファイナルで負けたのか、今のホークス及び工藤采配が短期決戦に強い論者の方に聞いてみたいものです。
 そして、意外と見過ごされているようですが、ホークスは2017年に優勝したあとのCSで風物詩の危機に陥りました。連敗のあと3連勝で一気に切り抜けたので印象が薄れてしまったかもしれませんが、あの采配は風物詩を招きかねない愚行中の愚行、短期決戦・CS史を語る上でしばらく重要なポイントとして語られるくらいの愚かなことを工藤監督はやりました。本当に見ていてつくづく驚き呆れましたね。

2017年風物詩ホークスの危機・再来

 このCSでの捕手は甲斐拓也、ピッチャーは東浜で次が千賀でした。短期決戦においてリードを重視すべきだ&ベテランを使うべき≒経験の浅い新人を使うな―前回書いたそのセオリーを真っ向から無視をするという今年のライオンズと同じことをやって連敗をしましたからね。頭工藤と言われても仕方のないありえない判断・決断でした。
 前回、ライオンズはCSに至る前にやるべきことをやっていない。日程のおかしさを指摘して優勝チームに有利なように制度を変えてもらう、4・5・6位のチームどれかに頼んで1stの試合中に消化試合をしてもらう。そういうファイナルを勝ち抜く上でやるべきことをやりませんでしたからね。
 前回ライオンズが取るべきだったCS対策、セオリーとして新人を使うべからずベテランを使うべし!―という鉄則を守っていませんし、日程・スケジューリングの問題についても対策をしていません。アホですね。まあ、ライオンズの悪しき遺伝子を引き継いでいるから当たり前の話なのですが、ホークス・ライオンズはともに短期決戦において同じタブーを犯した。今年と2017年、そっくり同じ誤ちが起こっているのですね。

2019年の西武ライオンズも驚きたまげるCS前の戦力調整無視、コンディション管理の欠如

 そして何より、異常だ、アホだ。頭パッパラパーなのか???となったのは、当時ぶっちぎりで優勝したのにも関わらず、もう勝利に拘る必要がなくなったのにも関わらず、主力を下げずにそのまま試合に使い続けたことですね。モイネロ・岩嵜・サファテ、確かその勝利の方程式だったはずですけど、最後までバカみたいに勝利の方程式を使い続けた。挙げ句モイネロは故障して不調、CS出場黄信号騒動がありました。
 言うまでもなく、ちゃんと本番には間に合った。試合に出れたんだから良いじゃないかという話ではありません。大事なポストシーズンで万全な状態で迎えさせるために、休み休み疲労がたまらないように使うべきです。決して万全な状態で投げられないようにすべきではない。酷使をすべきではない。この年バカみたいに1年目のモイネロを使いましたが、また優秀な選手が出てきたらバカみたいに依存する「おんぶにだっこ」采配・継投でした。子泣きじじいみたいに石化して抱きついて選手を海の底にでも沈める気なのでしょうかね?本当に一年目は素晴らしいピッチャーだったのに、プロの水に慣れていない選手を酷使するから…という怒りが、このケースを振り返って湧き上がってきますね。
 そして言わずもがなチームの中心である柳田が故障離脱。主力は休ませろ&若手の育成枠に当てろ―そういう基本がわかっていないから、来年・再来年を見据えた事ができない。未だに優勝争いしているならともかく、今年の西武のようにペナントの最後まで優勝争いをしていたのならまだ理解できますけど、なんで優勝決まったあとにもドンドン若手を試さないのか?主力を下げないのか?意味がわからないですね、本当に。西武が平井を81試合も投げさせてバカじゃないの?という話をしましたけど、同じくらいバカですよね?なんで大事なCSの前にしっかり休ませておかないのか、本当にバカ。おすぎに踏んづけられて然るべき暴挙でしたね。
 どうせ、一年通して働くこと、数字を残すことで給料が変わってくるから選手が出たいと言ってきたとか、バカみたいなことを言うんでしょうけどね。チームプラン・ヴィジョン・戦略というものがあれば、休養と育成の重要性からベテラン下げて若手を上げるに決まってる。というか他に選択肢はない。怪我されてCS前で離脱されるのが一番怖いのですからね。こういう先を見据えたことが出来ない、当たり前のことがわかっていないというのが、工藤公康に戦略眼がない・ビジョンがないと主張する所以ですね。

采配には長期的視点・戦略的視点が重要。工藤は通年を見据えたプラン自体持たない。目先の勝利という人参を追いかけるだけのアホ馬

 たまにこんだけ戦力があれば誰がやっても勝てるみたいな馬鹿なことをいう人もいますけど、むしろ戦力があればあるほど休養と育成、そして勝利のバランスを取るために采配は難しいはずなんですよ。強いからこそ、次の選手・若手の育成を考えないといけない。主力の誰をいつ・どれくらい休ませるか、どのタイミングがコンディションを維持しつつ、実戦感を落とさないベストなタイミングなのか、きっちり見抜いて起用するのは難しいはずです。選手はずっと出続けるから実戦感覚が安定するわけで、できるだけ試合に出たがるのですからね(勿論給料の面においても)。下手に休ませ続ければ「なんであいつを使ってオレを使わないんだ!」という話にもなってきてしまうでしょう。下手にベンチに置いたり、二軍に行かせたりすれば心理面、プライド上の問題。監督と選手の信頼関係という人間関係の問題からなおのこと起用・采配というのは難しくなるはずです。
 また、二軍の選手が結果を残しているのに、一軍に上げてやらなかったら、声をかけなかったら、なんでこんなに結果を出しているのに上に上がれないんだ!特定の選手を贔屓ばっかしやがって!と選手は不平不満を漏らし、二軍コーチも同じように思う。こんだけ頑張っている選手を、調子状態のいい選手を試さないなら、なんのためのコーチング・育成なんだ!オレはなんのために下で選手を育てているんだ!人を馬鹿にするのもいいかげんにしろ!!とそういう声が上がってくる。そういうことを考えれば、胃が痛くなるような思いをする人も少なくないはず。まあ、要するにペナントというものを、二軍・三軍を含めたチームという組織の構造を理解していない。采配=戦略的ヴィジョンというものを、まるで理解していないアホがそういうことを主張するのでしょうけどね。
 また、この年でいうと、楽天と優勝争いをしていたわけで、次のような判断が重要になってきます。「今主力を休ませて若手を使って、負けるリスクを上げて優勝を逃さないだろうか?そのリスクを取って負けを増やしても大丈夫なのか?勝利を第一に考えて、勝ちを積み重ねて楽天以下・2位以下のチームを引き離しておくべきか?いや、今年の他のチーム戦力を見通せば、まず間違いなくリリーフを酷使している楽天は持たないし、他のチームも終盤追い上げてくるような力はない。故に今先を見据えて主力・リリーフを休ませながら戦ったほうがトータル的な優勝の確率は上がる。よって今の時期は、多少は負けを覚悟で戦って、勝負は9月だ!」―とでも言うような先の展開を見据えた判断・采配、あえてペースを抑えて馬を走らせることで末脚を残しておくという判断がペナントでは重要になるわけですね。まあ、言うまでもなく、この年のペナントでは楽天は8月にもうバテバテで早々ギブアップしたわけですけども。だからこそ7月辺りにちょいちょい有望な若手を起用しながら戦うという育成が、本来できたはずなんですけどね…。
 そういうペナントレース展開、先をきっちり見通して、それに合わせた戦い方を適切に取るのが名将。競馬のレースでいうと名ジョッキー武豊なわけです。そういう状況状況で適切な判断もせずに、スタート直後から馬のかわいいおしりさんを鞭でひたすらスパンキングしまくる鞭全開おじさん。虐待おじさんとでもいうような采配をしている監督を名将だなんて言えませんよ。いついかなる時でも全力勝負で戦力消耗させるんですからね。それで勝てたならまだ理解できますけど、それで負けてるんですからね。1回ならまだわかりますけど、2回も大逆転負けを食らっているんですよ?学習能力ないのか貴様!おまえ、頭ついてんのか?頭にひよこ飼ってるのか?東京銘菓ひよ子を飼っているのか?ひよ子は福岡銘菓だ!!いいかげんにしろ!―と言いたくなるような有様ですからね。
 楽天やら西武やら、他のチーム事情を見誤った。戦力予想について失敗したというのならまだしも、そもそもそんな予想をしていない。他チームの戦力・勝敗の上昇・下降を予測して、ペナント全体の流れを見通して、それに合わせて適切な選手起用をするというのではなく、そんなものはなから考えずに、目先の試合を全力で戦うということしかしていないんですから。采配以前の問題ですよ。そんなことでいいのなら、監督なんかいらないでしょう。何でもかんでも口出したがって全部自分の思うがままに決めたいというのなら全権打撃・走塁・守備・投手コーチで十分。独裁コーチのポストで十分。監督の仕事じゃなくて、コーチの仕事・領分にばっかり足を踏み入れて口出ししている。根本的に監督の仕事というものを理解していないんですから。そしてそれは球界における根本的問題ですね。監督とコーチの仕事は違う。分業をキッチリして権限・責任の所在をしっかりしないといけない。まあ、以前その話はもうしたので繰り返しませんが。
 ※そうそう、書いておくの忘れていましたが、端的に言うと戦力の逐次投入の逆、戦力の過剰投入・過剰供給なんですね。工藤采配の問題というのは。10で勝てるところを100とは言わないまでも、毎回20も30も過剰に戦力を投入していく。勝ちたいがために必要以上に戦力をつぎ込む。故に最後の方では戦力が足らなくなる、疲弊・消耗し、大事な終盤にチームが駄目になる。それどころか来年・再来年にまで響く戦力の低下を招いてしまう…という結果を招いてしまう。
 流行りの言葉で言うとoverloadですかね。そりゃ、用兵においては戦力の逐次投入は戒められるべきことなんでしょうけど、ペナントの指揮においては逐次投入という要素・局面自体があまり、ありませんからね。逐次投入をしてしまった!!だから無駄な戦力消費をしてしまった…なんていうことはあまりない。にもかかわらず、戦力の過剰投入を繰り返す。これは一体何なのか?
 おそらくですが、2016年の大逆転負け。このことについて、ファイターズ・フォビア(恐怖症)という話を以前しましたけど、この他にも愚かな評論家達の歪んだ解説、「油断」という要素が挙げられると思います。優勝候補ド本命であるホークスがファイターズに破れたことを、多くの愚かな評論家は「油断」という気持ちのゆるみや精神性に原因を求めました。極めて愚かな考え方、ものの見方であると思います。かの野村克也ですらそういう不合理な、心の内面・あり方、気構えという抽象的なもの、あやふやでどうとでも言えるものをもってして説明をしていました。愚か極まりない解説ですね。普段からペナントをろくに見ずに適当なことを言っているからそうなる。不真面目で真摯とは程遠い態度で解説業を片手間でやっているからそういうことになる。野村理論を尊敬して、それを基本に物事を考えていますが、そういう負の側面・不合理的な一面が野村氏には存在します。
 話を戻して、愚かな評論家連中は負けるべくして負けた2016年の大敗戦をやれ、大谷がすごかったなど、ホークスの選手たち・監督が巨大戦力でおごった・油断したなどとわけのわからない評価・分析をしました。そしてその歪んだ分析をひよこ工藤が真に受けたということが考えられると思います。わけのわからない分析を真に受けた結果、なりふり構わず目先の試合を全力で勝ちに行く、一試合たりとも疎かにしないぞ!という歪んだ結論を導きだしたということでしょうね。病気とも言える戦力の過剰投入采配というのは。
 故に我慢したり、試合を見切るということができなくなってしまいました。彼は捨て試合を作って見切るという重要な判断をする機能が失われてしまった監督、完全に壊れた監督なんですね。そういう人間を監督として使い続けることがどういうことを意味するか…。言わずもがなですね。

2017CSファイナルにおける工藤采配の暴挙

 連敗して、ファイナル敗退危機を迎えると休ませていた柳田を強行出場させるという故障リスクを上げる愚行を犯しました。この一件を見ても指揮官としての異常性・愚かしさを説明するまでもないでしょう。今シーズン長期離脱した影にこの年の無理・無茶がたたっていたとしてもなんのおかしなこともないことですからね。そう考えれば今年のチームの中心打者柳田の離脱というのは工藤采配の当然の結果。ペナント優勝を逃したのは、自業自得以外の何物でもないことがよく理解できるかと思われます。日頃から選手のコンディション管理を無視した結果ですからね。こういう時に、止めるのが達川ヘッドの役目ですが、彼もなんとか広島魂ということを言い出して、強行出場を促しましたから、アホですね。コンディション管理概念のない世代を上においておくと、チームはもうどうしようもなくなるのだということがよく分かる話ですね。
 で、風物詩ピンチのところから、3戦目に城所スタメンが大当たりして、工藤采配流石!みたいなことが言われたと思いますが、あれも論外の采配でしたね。閃きと思いつきは紙一重ですが、あれは果たして閃きと言うことが出来るでしょうか?個人的にはあの起用は疑問だと思います。
 個人的に城所は好きな選手で、もっと使われて当然と思っていましたが、あの起用はない。というのはシーズンで城所スタメンは全然試されていなかったから。普段から城所を気にかけていて、ちょくちょく折を見てスタメンで使っていた。こういうときなら城所は活躍をしてくれて、こういうときは良くないというテストをしていたというのならば問題ない采配だと思いますが、そうではなく完全な思いつき。準備なき決断というのは指揮官の博打に過ぎない、これはダメ。
 同じく博打的に川島を急遽ライト起用しました。初戦(2戦目だったかな?)で川島が何故かライトで起用され、不幸にも打球が守っていた川島の前で何故か大きくバウンドして後ろにそらして貴重な先取点を与えてしまうという事態がありました。普通の外野手でもあの当たりを後ろにやってしまったかもしれませんが、もしシーズン中から何回もライトで守るという機会を与えられていれば、ああいうことにはならなかったはずです。なぜその準備をキッチリしておかなかったのか?ここが大問題。

采配には根拠と事前の準備、危機管理の発想が重要

 指揮官の決断として、打った采配が表になるか裏になるかは、根拠の確かさにもよりますが、あとはもう時の運、どんなに理があって妥当な判断だとしても実らないことがある。逆に全く無謀な判断・策だとしても実ってしまうこともある。故にリードどころか采配も結果論ということになる。判断の根拠さえ、ああそういうことかと納得できれば裏目になってしまってもしょうがないと納得できるが、これは明らかに事前の準備を欠いた思いつきの範疇。万一の柳田離脱・欠場に備えた際の危機管理の結果ではない。オプションとして試しておいた策ではない。
 危機管理としてオプションのテストをシーズン中になぜ試さなかったのか?なぜ危機管理のテストをしておかなかったのか?これが本当にわからない、疑問も疑問、大疑問。事前に試しておいて、これこれこういうケースならばこのオプションがベストだ!と事前に探っておくのが名将というもの。最悪の状況に備えておくものが優秀な指揮官の条件。これで工藤采配が素晴らしいとか、優秀・有能なんて言えるはずがない。柳田が故障離脱したあとでも、十分に時間はあった。柳田が出れない!?まずい!じゃあ城所や川島を今のうちに試しておこう!という時間は十分あった。なぜやらなかったのか?危機にそなえてオプションを試しておかなかったのか。理解不能。他に試しておくことがあって、それが出来なかったというのでもあれば、試しておいたそちらのオプションのほうが優先度合いが高かったということ。その優先順位が高いオプションを放棄して突発的に思いつきでやってもいないことを本番で実行するというのは閃きと言うよりも暴挙でしょう。
 野球は守備を重視しなくてはいけない。その守備を軽視して川島エラーで虎の子の1点、大事な大事な先取点を失ったのですから、何をか言わんや。スケベなことを考える人なので、いつも都合の良いことを考える。起こってほしいことが起こると良いな、こうなってくれたら良いなという都合の良いことを考えて指揮を執る、判断して采配を決めるからこういうことになるわけです。こういうことをしているうちは風物詩からは逃れることは出来ないでしょうね。
 このCSは内川の超常的な働きで勝てたと言っても過言ではないシリーズでした。もし内川がいなかったらどうなっていたか?内川がいなかったので負けました。柳田がいなかったから負けました。そんな言い訳でもするつもりだったのでしょうか?そんな馬鹿なことを言う指揮官が名将なわけないでしょう。バカも休み休み言ってほしいですね。何万回も言ってきましたけど、誰か一人がいなくなったら勝てなくなるなんて言うチームを作ったらダメなんですよ。

短期決戦で先手を取られてはならない。連敗は絶対に許されない

 この年は本当に危なかった。本当に風物詩になると思ってハラハラして観ていました。「最終的に逆転して勝ったから良いじゃないか。最終的には3連勝したじゃないか」みたいなことを言う人は、そもそも短期決戦というものをろくに理解していない。短期決戦において先手を取られたらダメなんです。初戦は絶対勝たなくてはいけない。勿論野球という競技において、初戦・その大事な試合100%絶対勝てというのはナンセンス。予想外の出来事の結果、圧倒的に強者で事前に完璧な準備・対策をしても敗北してしまうということはある。であるからこそ、二戦目が大事になる。初戦に万一、負けてしまった際に次の二戦目は100%勝たないといけない。初戦・二戦目続けて負ける確率は0%に近くないといけない。ところが二戦目すら負けてしまった。大事な短期決戦において、ありえないはずの連敗をするという結果になった。先手を取られることで、また短期決戦で連敗することでライオンズがもう半ば諦めムードになってしまった。浮足立ってしまったことを見ればなおさらよくわかりますよね。もう負けられないというプレッシャーが掛かるとチームは確実に弱くなる。その逆境・劣勢を跳ね返すのは相当難しくなる。
 なぜ短期決戦において絶対に負けてはならない初戦を落とし、かつ二戦目も落としたのか?連敗をしてしまったのか?野球のセオリーを無視した戦い方をしているからですね。現代野球のセオリーと真っ向から逆らうことをするからこういうことになる。
 ※思い出したので追記。監督の謎発言について―そもそも事前準備もしっかり出来なかったにもかかわらず、一つも負けるつもりはないというわけのわからない謎発言をしていました。短期決戦とは言えど、CSというのはその後の日本シリーズという最後の戦いを控えている。そこで相手よりも少ない試合消化数で挑むと事前準備・調整上不利になる。相手がストレートで勝ち上がって突破してくれるのならば、むしろ有り難い。こちらは相手より多く試合を消化するために、1つか2つは負けて調整をしておく必要がある。勿論負けることで相手に流れをやって不測の事態を招くリスクがあるのでなかなか敢えて負けるようなピッチャーを使ったり選手をスタメンにするというのは難しいのですけどね。何れにせよ指揮官の判断が非常に難しいことになるのが短期決戦CSという制度、にもかかわらずバカみたいに一つも負けませ~んという謎の発言をする。バカ以外の何者でもありませんね。
 どこかの記事で、他の海外のプロスポーツでも監督が不用意な発言をすることでチーム敗退の悲劇を招いたという事例を紹介していました。この事例を引き合いにして、監督には軽率な発言は許されない。本人にそんなつもりはなくても、結果として敗北をもたらすような事態になりうる。最悪の事態を招くような結果になりうる。一体、どういうつもりでそんな事を言ったのか?万一負けた場合にはどうやってフォローして巻き返すつもりだったのか。一つも負けるはずのプランニングをしていたのにも関わらず、連敗をしたというのは緊急事態と同じ。そのような事態を引き起こせば選手たちは間違いなく動揺する。チームの混乱を一体どう収拾するつもりなのか?―といったような指摘をしていた記事を当時読んだ記憶があります。まさしくその通りで一体全体何を考えていてそんなバカみたいな事を言ったのか本当に謎でしたね。結果的にはたしかに勝ちました。勝ちましたが、ありえない・許されざる指揮官の態度・発言だったとみなして徹底的に検証すべき出来事だったでしょうね。まあ、言うまでもなく責任が追求されることもなければ、責任を取ったこともないのですが…。
 工藤監督は既存のOBや記者達とコネがないので、よくアンチ工藤系の批判記事が出てくるようになっています。工藤監督のワガママを選手たちが尻拭いしているといった類の話が、毎年チラホラ書かれるわけですね。そういうった類のネタに賛同することはないのですが、この時ばかりはベンチで余計なことをした采配ミスを選手たちが必死に尻拭いをした結果と評価されても、なかなかそれを否定することは難しいでしょうね。
 いずれにせよ、指揮官の力ではなく、選手たち個人の能力・個人技の集大成で勝っている。こういう現状を知っていれば、名将だとも短期決戦に強いとも口が裂けても言えないはずです。にもかかわらずそういった謎主張・珍論を唱える人間がいるというのはろくにCSを見たことがない人間がうわっつらの結果だけをもってしてそう言っているのでしょう。

野球のセオリーを無視する工藤野球

 風物詩野球を未だにやっているというのは、工藤野球の本質にあります。工藤野球というのは、そもそも王道野球ではありません。トータルでどこよりも勝ちを積み重ねればいいという発想をしています。優秀な選手・戦力に依存して勝ちを計算するのが工藤野球の基本思想であり、力でねじ伏せることを基本に据えています。なので、王道野球=野球の長い歴史の中で培われたセオリーを無視した野球をしています。エースと大砲、速い球を投げられる投手に、遠くへボールを飛ばせる長距離砲を重視する。野球の原点とも言える話ですが、原点である選手の能力に捕らわれすぎて、線であるチーム全体のバランスという点がすっぽり抜け落ちてしまっています。原点は抑えていても、応用という話になるとまるで目を向けないのが工藤野球。個人としてではなく、それぞれの選手達を全体で一つとしてみた時、組織としてどう活かすかという視点がまるで足らない。故に今シーズンを見て分かるように、リーグで一番四球を出すし、四球を選べないという状態になる。
 マネーボール以来、出塁率OPS(出塁率長打率)が重視されるようになりました(もっと前からかな?)。野球に勝つためにはいかに塁にランナーを出して、その塁上を賑わせたランナーをヒットで繋いで一気に返すかという点が重要視されるようになりました。故にファーボールが大事だという概念が広まるようになりました。相手投手に球数を使わせれば、その分相手は長い回を投げにくくなる=リリーフを使い込まざるを得なくなる。故に球数を稼ぐことが重視される。逆にこちらは球数をいかに少なくゲームを終えるかということが重視されるようになりました。*4
 現代野球のセオリーはいかに球数を多く投げさせて、こちらは球数を少なくするか。またそのためにいかにファーボールをもぎ取り、こちらの投手はファーボールを出さないかというものになりました(言うまでもなくファーボール至上主義で、ヒットは二の次・三の次でどうでもいいというわけではありません)。過去にイニング・投球回の重要性を語りましたが、先発ピッチャーで大事なのは勝ち星よりも(勿論勝ちがつくのにこしたことはないですけどね)、どれくらい投げてくれるか、低い防御率でイニングを消化してくれるかということが大事になりました。先発がイニングを食えないとリリーフを使い込まざるを得なくなりますからね。安定して試合を作ること&いかにリリーフを休ませてくれるかという新しいセオリーが生まれました。リリーフ陣の安定や勝利の方程式の安定、それがペナントを制する新セオリーとして今や重視されるようになってきたわけですね。

出塁率=四球という現代野球のセオリーを無視して球速とHRを追求

 にもかかわらずチーム打撃成績を見ると、リーグで一番ファーボールが少ないし、投手は逆でファーボールがダントツ多い*5。無論、投手陣については、防御率が良いので、他チームと比べて特別にピッチャーが悪いという事情なわけではない。ホークスの投手陣がリーグの中でダントツ悪いというのならまだしも(実際ホークスの防御率はリーグ1位)、それでもファーボールがダントツ多いというのは、速球を異常に重視してコントロールを無視しているからでしょうね。
 指揮官が異常にまっすぐ推しなので、まっすぐにこだわるようになっている*6。それ自体は悪いことではないのですが、まっすぐ推し=パワー推しゆえにコントロールが脇においておかれている。結果、粘られるとコントロールを乱して歩かせるというケースが非常に多いように見受けられました。相手が粘らなくても、ちょっと調子が悪い日は制球が安定しない。制球が定まらずにカウントに苦しんでリズム・テンポが悪くなり、挙句の果てには歩かせてしまう。ランナーを溜めて痛打、ゲームを壊す。そういうケースが非常に目立ったように思えます。
 付け加えると、三振アウトもパで一番多く取っています。この点でもゴロを打たせるというマネーボールの発想と真逆な野球をやっていますね。バッターはHRを打って相手投手をねじ伏せる、ピッチャーは三振を取って相手打者をねじ伏せる。そういうねじ&ねじ野球を、中尾彬野球をやっているから、調子・状況が悪い時、相手がいい投手・打者が来た時にやられてしまうということでしょうね。
 力こそパワーみたいな戸愚呂思想、力を技で封じ込められながらも、更により強力な力を求めたキング・オブ・デストロイみたいな思想で投球理論を組み立てて指導しているからこういうことになる。ダメな時にどうするのか?苦しい時にどうするのか?そういう危機管理の発想がないからこういうことになる。力で全てねじ伏せろ、レベルを上げて物理で殴れみたいな考え、21世紀最凶の暴君みたいな発想で野球をしているからこういうことになる。
 駆け引きにおける引き出しが異常に狭い。勝つか負けるか二つに一つ。一か八かで野球をやっているからこういうことになる。そんな都合の良いことを期待して、現実化すると考えて野球をやるなんてナンセンス極まりないと思います。

HRか三振か、ヒットか凡退かでつなぎなし、得点効率を無視

 バッティングも同じでHRばっかり狙っている。まあ、以前書いたのでまた繰り返しですけど、歩いて選んで、粘って繋いで、チーム全体で打線で投手を攻略するという発想がないからこうなる。ひたすらヒット・HRで投手をKOすることしか考えていないから、それが出来ない時は点数が非常に入りにくくなる。出塁・盗塁などで繋がることがないから、秋山政権時代と比べてビッグイニングが少なくなってしまった。
 全員長打を狙ってバットを長く持ってフルスイングしているだけでは、その日の相手と打線の調子次第の博打になる。相手が良くない、失投を投げてくれて、HRが出るならばそれでもいいが、相手がいい時はどうするのか?相手が少ない球数でどんどんイニングを消化できてしまえるから、対戦チームとしては投手のゲームプランを考える上で非常にやりやすい。負ける時は負けるが、勝つ時は楽に勝てる。相手が嫌がることをまるでヤラない、自分がやるべきことをやれば勝てるというものすごい自己本位的な野球をしている。敵を知り己を知れば百戦殆うからずという前回の話の続きになりますが、敵を知るという要素がすっぽり抜け落ちてしまっている。
 付け加えると天の時・地の利というような、環境の考慮・状況判断という要素もない。だから毎回毎回バカみたいに同じようなやり方で負ける。別に非力なバッターでも初球からバットを長く持ってフルスイングという戦術を採用しても構いませんが、そういう効率の悪いことは、今日のケースはこれでいけるという判断があるときだけ。相手のエース級とか、通常のゲームでそううまくハマるケース・確率の方が低い。普段は非力でHRも期待できない打者だけど、今日は好調&相性がいい。だから松田でも内川でもグラシアルでもデスパイネでも、普段はランナーを返す役割の選手が敢えてバット短く持って、大きいのを狙わずに彼につなぐ―とか、そういう状況に応じて役割を入れ替えるとかそういう戦術・選択があるならまだしも、毎回全員が長打狙いのフルスイング*7。塁にでる役割、繋ぐ役割の非力なバッターが選んで塁に出ないし、そうやって非効率的なバッティングを繰り返すから効率が悪くなる。
 今年はソロHRの一点のみ、またHRは出るけどタイムリーが出ないというケースが目立ちましたが、ランナーが出ないからクリーンアップ・大砲の一発もソロで終わって効率が悪くなる。秋山政権時代と比べて、ランナーためての一発や、連打連打で打ち崩して先発KO、途中交代の投手を捕まえて大量点という試合が減ったのはそのため。いい加減、HRばっかり期待するスケベな思想と決別すべき。得点効率は悪いし、相手投手を打ち崩すことも期待しにくい。確かライオンズがファイターズ相手にHR6本打っても13-6で負けるという異常な試合をしていた記憶がありますけど、つまるところそういうチームになりかねない。
 まだライオンズさんよりも投手がいるからそうなってないだけで、いつそういう自体に陥ってしまうかわからない野球をしている。今年のライオンズは走塁に力を入れたので得点面でかなり効率化が進んでいましたが、その走塁重視という要素もホークスにはないので、ライオンズ打線の非効率化されたヴァージョンになっています。いつ投手陣が崩壊するかわからないのですから、行き着く先はライオンズより効率の悪い得点をするチームということにもなりかねません。*8
 今年のファイナルで西武ライオンズの若手投手をボッコボコに打ちのめしましたけど、アレだけ甘いところに投げてくれれば、そりゃあHRはガンガンでますよ。でもシーズン通してあんなことがどれだけあったか?ああいう試合がどれくらい期待できるのか?プレッシャーがかかれば経験の浅い投手、二流・三流の投手はああいうことが期待できます。が、しかし一流はどうなのか?エース級から同じことがどれだけ期待できるか?考えてみると良いでしょう。まあ、考えるまでもないですけどね。
 前回、ライオンズが優勝したのは偶然という話をしましたが、ひょっとしたらライオンズファンの方が読んでいたら、なんだと!貴様ッ!となったかもしれませんけども、この偶然というのはホークスも同じなんですね。運否天賦に任せた野球・勝負をやっている。戦う前にこうなったら良いなという甘い見通しでやっているという点でもこの2チームは共通しています。ですから、ホークスはペナントで痛い目を見ましたし、ライオンズもCSで痛い目を見たというわけですね、今年のパ・リーグというのは。というかほとんど毎年運否天賦の結果なんですね、どこが優勝するかしないかというのは。だからもう見ていて面白くないんですよね。

やはり今年の打線崩壊もこれまでの采配・起用の結果、自業自得

 今年は柳田が長期離脱したから勝てませんでしたというバカみたいなことを言うんでしょうけど、そんなことはなんの言い訳にもならないです。既に書いたとおりコンディション管理を怠って使い続けて、挙げ句の果てには強行出場ですし、そもそも柳田一人いなかったら勝てませんなんていうチーム作り、打線を作ってる時点で論外です。
 去年のチーム崩壊の話で、選ばない・走らないで打線が機能しなくなっているという話をしていて、中心となっているのは柳田。こんなつなぎを無視した打線じゃダメ。これじゃあ柳田一人いなくなったら崩壊する。かろうじて晃が粘って出塁している、上林が走って機動力となっているくらいじゃないかと書いていましたが、その3人がいなくなってバランスが異常に悪くなったのが今年の打線というわけだったんですね。若手の上林の離脱は予想外だとしても、晃クラスのヒットメーカーが補えないものだとしても、選ぶ・粘るといった繋ぎを実行するサブがいないのはどういうことなのか?そういう繋ぎを実行しようとした控えはいたか?そういう役割をこなせるのはせいぜい川島くらいでしょ?しかも彼は通年働くことが期待できない選手。晃の代わり、上林の代わりとして危機管理のオプションはどうなっているのか?バカみたいに勝っていた時に先を見据えて若手をドンドン抜擢して試しておかないからこういうことになる。

筋肉・パワー絶対のマッスル信仰

 筋肉・パワー理論・大正義マッスル理論というのは、ハマればものすごい力を発揮して圧倒的に勝利して、相手を威圧出来る。敵をひるませることが出来ますが、ハマらなければあっさり負ける。闘牛士に翻弄される猛牛のように、牛若丸に翻弄される弁慶のように、強大な力はいなされたら意味がない。パワーを重視するというのならそのパワーをかわせない・いなせないパワー封じに対する手段を備えた上でやらないといけないのに、そんな事を考えたことすらないのでしょう。
 パワー・スピード・テクニック、いろいろな要素バランスよく整えることで弱点や穴がなくなるのに、パワー頼みのいびつな戦力にしすぎでしょう。また筋肉・パワー理論のまずいところは、それだけ巨大な力が身につけば、その分壊れやすくなる。アスリートにいちばん重要なのはバランス感覚ですからね。しょっちゅう故障している一因にパワー偏重・過大評価という要因は間違いなくあると見ていいと思います。
 そらアスリートですから、ウェイトをがんがんやって身体を大きくしないといけない。筋肉も育てないといけない。しかしそれ以上に大きくなったパワーとどう向き合うのか。巨大な身についた力をどうコントロールするのかという難しい要素がある。大事なところを見落としているように思えますね。
 まだまだ続きますので、ひとまずこんなところで終わります。続きはまた近いうちに。続き→続、工藤公康「愚将」論―工藤公康名将論という珍説の検証

アイキャッチ用画像

*1:うん、この人は間違いなく明確な戦略を持っているな。そう思える監督はついぞ見たことがありませんでしたので。落合さんはなかなかいい線行っていたと思いましたけど、やはりヴィジョンが足らないところがありましたのでやっぱりダメでしょうね。まあ、セ・リーグ見てないですし、最近はパ・リーグもろくに見る気が起こらないので、ろくに通年で野球見ていないのでなんとも言えませんけどね。それでも、そんな監督・フロントだったらもっと話題になるので、まずヴィジョンを持った優秀な指揮官はいないと断言して間違いないでしょう。

*2:まあ、福岡移転で弱い時代にいかにお客さんに満足してもらうかということでエースと大砲だよりになったという集客上・興行上の負の遺伝子も当然存在するのでしょうけども

*3:これ見出し付けて書いたと思ったら書いてなかったですね。でもまあ、単なるまとめになるだけなので特に見出し付けて書くことでもないですかね。ファイターズに大逆転負けを食らったときの分析はすでに過去で書いていますし、去年・今年とリーグ制覇出来ない理由は折々について触れていますので、その辺りを踏まえていれば十分優勝できた、六連覇も不可能ではなかったと解釈して読んでいただければと思います。王道野球やってセオリーに則った野球をやることと、目先の勝ちにこだわって無駄に戦力消耗させるなというだけですしね。

*4:球数が多くなれば、当然相手投手はストライクゾーンで勝負をしてアウトカウントを稼ごうとする。早く勝負をしようという発想になる。このボールはボールゾーンでもストライクゾーンでもどっちでもいいやという状況と、ストライクを投げなきゃダメだという状況ではどちらが攻略をしやすいか言うまでもありませんからね

*5:無論言うまでもなく、四球の他に死球も関わってきますが、今回の話とは関係ないのでその点については触れずに飛ばしてます

*6:打たれたときは異常にもっとまっすぐで押せというコメントしてましたからね。そりゃキャッチャーはまっすぐばっかりになりますよね。変化球投げたら怒られるんですから。まっすぐまっすぐばっかり、まっすぐ工藤さんですね。選挙出たらそれをキャッチコピーにしたら良いんじゃないでしょうか?後述する通り力信仰なので、マッスル工藤の方が良いかもしれませんが

*7:勿論、長打を求められるクリーンアップにバットを短く持てというのは非現実的な策ですけどね

*8:※追記ーライオンズは内野守備においても外崎・源田と改善されています。出塁率、ファーボールを見ても、ホークスとライオンズでは雲泥の差があります。出塁率でライオンズは1位でありながら、ホークスはビリ。ファーボールをで159もの差があるシーズンでした。死球も6つ多かったことを考えると、ホークスより165人もランナーが多く出塁した事になります。ざっくり平均で1試合でホークスよりも毎回ランナーが1人多く塁にでていたということです。その上でワンヒットでホームに還ってくる効率も上だったというのが、チーム得点で174点も差をつけられたという結果になったということでしょう。HR頼みの野球がいかに効率が悪いかということの実証になったシーズンでしたね。今年のホークスの総得点は、3位の楽天614点、4位のロッテ642点に及ばない583点で、チーム得点は4位。チームが崩壊したレギュラーを最後まで揃えることが出来なかったオリックスと日ハムにしか得点で下回ったチームはなかった。データを見ていかに効率の悪いことをやっているか、いかに間違ったことをやっているか普通は気づきそうなものなんですけどね…

続、2019パCS ライオンズがスイープされた理由 短期決戦に弱い理由①打撃・攻撃重視②リード軽視③CS現行制度の欠陥④若手投手陣=ベテランの欠如

 2019ホークス パCS優勝、短期決戦に強いホークス?No、ホークスは短期決戦に依然弱い。スイープはライオンズがもっと短期決戦に弱かっただけ―の続きです。長くなってしまったので分割をしました。こちらに迷い込んでしまった方は、リンク先をお先に御覧ください(と言えるほど対して内容あるとも思えませんが。こちらを読んで、ほぅ面白いな。もっと話を聞いてみたいなと思ってから、読まれても話的には大丈夫かと思います)。
 長くなったのをただ分割しただけですので、話の構成・文のまとまりがよくありません。まあ今に始まった話じゃないですが、起承転結が良くないただの垂れ流しになっていますけど、何らかの参考になれば幸いです。

目次

 

短期決戦に弱い理由その③日程―CS制度の一番の問題点は優勝チームに不利なスケジューリング

 ちょいちょい、ライオンズの話以外に先走ってホークスの話をしている感が否めませんが(^ ^;)、ライオンズもホークスも似たようなチーム構想・思想で愚かしいことをしているという共通項があるので、ちょいちょい比較して話をしてしまうことをご寛恕ください。ライオンズもホークスと同じように短期決戦にしてはいけないことをしている。短期決戦に向かない野球をしているということを今一度念頭に置いていただければと思います。
 で、他に西武ライオンズが短期決戦に弱い理由をあげていきます。これまでの①投手陣の脆弱性に運用の拙さ②捕手の軽視・リードの重要性の軽視―の話をしたので、次は③として日程の問題を取り上げようかと思います。
 まあ、そんな大した話ではなく、散々言われていることなので今更ですが、現行のCS制度は優勝チームが日程上では不利。2位と3位が1stで試合をして勝ち上がるのを待つために、ペナント終了からCSファイナルで試合をするまでものすごく間が空いてしまう。大体2週間近く間が空いてしまうので感覚が壊れてしまう、リセットされてしまう(今回のライオンズは確か12日間ノーゲームだったはずです)。これが選手にとって非常にマズイと言われています。
 小久保氏が解説で「CS・ポストシーズンを初めて経験した時は、レギュラーシーズンが終わって、間が空いてしまって変な感じだった。やはりポストシーズンのたびにそういう変な感じになる。暫く野球を、試合をやってないでいきなり大舞台の試合でふわふわふわふわした、落ち着かない感じになる」というようなことを語っていました。
 ちょうど開幕試合のようなものなのでしょう。そういった状況から自分の調子・感覚を探って、計って、一からコンディションを作っていかないといけない、試合について今の自分の調子はどうなのか?気持ちを上げていくべきか、下げていくべきか。少し身体をいつもより動かして調整したほうがいいか?入れ込みすぎている・興奮しすぎた状態になっているから、呼吸法でもして下げる・落ち着かせるべきなのか?
 選手によってそれぞれやり方・作り方は色々あるのでしょうけど、とにかく試合をする上でベストを作る、また大舞台の大一番での自分の最適を作る事から始めないといけない。その感覚を作ることに失敗してしまえば、短期決戦なので作ってる間に終わってしまう。対照的に1stで勝ち抜けてきたチームは既に試合をしていて実戦感の調整は済んでいる。準備万端チームとそうでないチームという点で大きな差があるという点ですね。
 昔、書きましたけど、現行の制度だと屋外球場で雨天中止が多い球団が有利になりやすい。つまり楽天イーグルスロッテマリーンズに有利なシステム。試合がペナント終盤まで後ろにずれ込みやすい。スケジュール調整しやすい。再試合が多いことでCS直前まで試合をすることが可能。故に準備万端・ベストなコンディションでCSに挑むことができるんですね。はっきり言って、今のシステムだとこの二球団に有利すぎるおかしい制度なんですね。CSおかしいぞ!という意見に賛同はしませんが、この日程の問題についてだけは絶対に改めないといけない。でないと優勝チームがアレどうしてこんなに弱いの?と言われてしまうくらい無様に負けるという問題が発生する。
 サファテが風物詩のピンチを乗り切って、連敗を止めた試合の後にコメントを出していたと思うのですが「この日程はなんとかならないのか?これは難しい・厳しい。なんとかしてほしい」というようなことを言っていたかと思います。優勝チームが日程が変に空いてしまうことで下剋上をくらいやすい制度になっているのは絶対におかしい
 厳しい事を言うようですが、西武ライオンズは、この制度について去年の屈辱から、「日程を優勝チーム有利に変更すべきだ。優勝したチームが不利にならないような制度を設けるべきだ!」ときちんと提言しなかった。敗戦の要因をしっかり分析していなかったのですから、ある意味自業自得の結果であると言えます。ベストを尽くしていなかったわけですから、天も佑ける事はありませんし、勝利の女神が微笑むわけもありえませんね。
 言うまでもなく本家本元、元祖風物詩ホークスと言われるチームは真っ先にこの問題を指摘していて、NPB(多分パ・リーグの全球団の同意だけでも出来ると思いますが)に訴えなかった。あれほど屈辱を味わい、二度とCSで1位勝ち抜けで負けないためにベストを尽くさないといけない。そのチームがこの問題についてだんまり、スルーですからその愚かさ、ホークスフロントの問題の深刻さは西武ライオンズの比ではありません。戦前優勝の本命はライオンズではなくホークスとされていたことを思えばなおさらですね。
 過去、2013年に楽天イーグルスが優勝した年は、オリックスさんにお願いして1stをやっている最中に消化試合をしたこともありました。同じようなことが不可能なわけではないのですから、優勝チームはこれが可能となるようにありとあらゆる手を尽くすべきです。イーグルスはこの点、日程の重要性というものをきちんと認識している。しかし先に挙げた2チームはそうではない。こういう状態であればまた下剋上が起こる可能性が高いという事実を最早指摘するまでもないでしょう。
 

経験の浅い若手投手たちの不調・乱調は日程の影響

 この日程の問題というのは、打てなくなる。バッターの打撃感が狂うことが大きいという問題が指摘されていたので、今回のCSファイナルも西武ライオンズ打線が打てなくなるのでは?と思い見ていました。そのような予想で見ていたのですが、むしろ今回のCSでは投手の問題のほうが大きかったという意外な展開になりました。
 が、言われてみれば意外でもなんでもなく、極めて当然。当たり前すぎるほど当たり前すぎる結果でした。今回ライオンズが破れたのは先発がまるで機能しなかったことによるものでした。ニール以外先発がまともに試合を作れませんでしたからね。こういう投手事情であれば、ライオンズは初戦絶対勝つしかない。初戦に負けた時点で既にもうCS敗退が決定したも同然のチーム事情だったわけです。なぜ先発がこれほどまでに脆いのか?安定しないのか?それは彼らが軒並み若かった。ベテランと言えるようなキャリアを持たない駆け出しの若手と言える投手だったからですね。
 高橋・今井・多和田・本田…皆プロ入りで5年以下。プロでの大舞台を経験したのはせいぜい去年のCSくらいで、殆どキャリアのない若手の部類に入る先発ばかり。涌井・岸・菊池と経験ある頼もしいベテランが皆いなくなってしまったという事情を見ると、大舞台にきっちり調整して仕上げてゲームを作ってくれると期待するほうが無理がある*1。唯一キャリアがあるといえそうな先発要員なのが十亀(8年目)。そしてその十亀が4回5失点でゲームを作れないのですから、もう無理ですね。
 しかも先発陣を見ると、右投げばかりなんですね。十亀が一応サイドですけども、ホークスは彼のサイドを苦にしてはいない。投手陣全体でフォームや速球派やコントロール派などの違いもない。キャリアも若手に偏りすぎているという有様で、先発陣全体のバランスが悪すぎですね。若手の右腕ばかりでは、投手でメリハリを効かせて、特定のボール・球種を見せといて意識づけしておいて、明日に活かすなんていう6試合見据えたリードも当然出来ないでしょう。森のリードという話をしておいてなんですが、こういう状態だといかにリードのいい捕手だとしても投手陣を操作して最小失点に抑えることも相当難しいでしょうね。
 ライオンズのニール以外の先発投手は、とにかく吸い込まれるように、打ってくださいと言わんばかりの甘いところに投げていましたから、そりゃあ連打されますし、HR打たれますよ。いくら点をとってもそれ以上にバカスカ取られれば、先手先手を打たれて失点していって常に追いかける展開となったら試合というかシリーズでの戦い・プラン自体が成立しないでしょう。
 若手であるがゆえに、どうやって状態を立て直して最低限の結果でまとめる、試合を作るというノウハウがない。調整能力が乏しい。武田翔太が一年目で大エース級のピッチングをしていた年がありましたが、CSでライオンズに打ち込まれてKOされたことがありました。試合前の解説で、新人?短期決戦は新人はムリだよ―とノムさんが嘆いていましたが、まんま今回もそのセオリーがあてはまりましたね。一球一球の重み、意味がレギュラーシーズンとはまるで異なる短期決戦では、経験の浅い新人は立て直せないし、大舞台を経験していないためにプレッシャーで潰れる。実力通りの力を発揮することなどありえない。
 

短期決戦に弱い理由その④選手層の薄さもそうだがベテランの欠如

 短期決戦では実力もさることながら、状態のいい選手を見極めて調子のいい選手を使うというセオリーがあります。それに加えて経験のあるベテランを主体にして戦う。ベテランを基本とするというのもまた一つのセオリー。というか、経験の浅い新人を重用してはならないというべきでしょうね。*2
 そのセオリーを踏まえてみると、第二戦で先発が十亀が先ではなく、今井が先だったことも疑問ですし、何よりも継投で平井から平良へというリレーをしたことが理解できない采配でしたね。この継投がこのシリーズのすべてを決めた。両チームの明暗を分けたと言ってもいい決断だったと見ています。
 

CS敗退の決定的シーンは初戦の逆転負け、継投の失敗

 新人に大事な場面を負かせてはいけないというセオリー通りの結果になってしまいましたからね。しかも打たれて失点・同点というのならまだしも、そのあとの決定的な勝ち越し・逆転の大事な1点を失ったのがパスボールですからね。見ていてファンも、守っていた野手もそりゃないだろう…とがっくり来た場面。シリーズの勝敗を決定づけるシーンだったと言っても過言ではないでしょう。
 あの場面で交代はない。いくらいい投手と言えども、新人でリリーフエースから大ピンチの場面という場面で抑えてくれるとふつう思うか?レギュラーシーズンでもやったことのないような継投をぶっつけ本番でいきなりやって抑えられると思うか?監督・投手コーチが都合の良い考え方をしていたようにしか思えない。もし平井の状態が今日はどうも良くない。どうも抑えられそうにないというのならば、あそこは平良が先。そしてランナー溜まって打たれたら負けるというピンチの場面で平井にスイッチ。彼と心中するというのが筋。
 しかし彼も社会人経験の3年目、ベテランとは言えない。ピンチを乗り切るノウハウが足らないと考えるのも当然の判断。判断の一つとして十分理解できます。であるならば、もうあの場面で増田しかない。トチ狂った判断のように思えますが、もうあとを抑えられそうなコマは残っていないわけですから。あとはもう野となれ山となれでそこにCSでの突破・敗退を決める重大な決断をするしかない。初戦を落とせば100%負けるという戦力状況ですから、それ以外には選択肢はなかったでしょう。
 通常の継投にこだわるのでなければ、もっと違うプランもありますね。継投リレーで後ろに任せるのではなく、先発に任せる。また、クローザー増田に頼むという奇策。平良→平井という通常の継投策の延長以外で考えればこういうものになるでしょう。
 詳しくいうと、先発に頼るならば、ニール以外にまともな先発がいなく、後ろも頼れないという状況ですからニールを引っ張る。789回三人の投手でゼロ行進がありえないリリーフ事情ならば、ホークスが散々打ちあぐねたニールで勝負をかける。一番頼れそうなピッチャーはニールと増田というチーム事情なのですから、愚かな判断と言われようと他に選択肢がないんですから、そうする以外ありえない。
 実際の試合では、ニールがグラシアルにHRを打たれたところで交代になりました。確かに球威は落ちていましたし、コントロールも乱れてきていたので交代も当然のように思えました。しかしどちらが確率が高いかと言われたら、ニール続投か増田の投入の方がまだ抑えられる確率が高かったと思います。
 もう一つおまけに余計な話をすると、ニールは100球未満まで&6回までの投手であり、あそこでグラシアルにHRを打たれたら限界。ゴロPがフライを打たれる・簡単にスタンドまで運ばれるというのは、もう致命的。失点率が跳ね上がる。そんな先発を引っ張るという選択肢はありえない―という次のような判断も当然のものに思えます。であるのなら平井→増田か、そのまま増田。ファーストでもライトでもレフトにでも投手を入れて左右別に一人一殺みたいなトチ狂ったリレーを、奇策をやるというのもあるっちゃあるでしょうし、平井を使わずに平良から繋いで最悪増田が6つ以上のアウトを取ってもらうという継投でしょうかね。
 リリーフ事情を考えたら(先発事情においてもですが)、まず西武は負ける。10回やったら8回くらい負けるような投手事情。ならば、どこかで博打・ギャンブルをするしかない。なぜいつもどおりの継投をしたのか?いつもどおりやっていれば勝てるという野球をしているチームではないのだから、いつもとは違う野球をしなくてはならなかった。なのに、なぜああいう継投に出たのか本当に理解できません。*3
 

戦前のライオンズの試合観・思想は浅はかな「なんとかなるさ」といいうものだった?敵も己も知らず百戦して殆うしという可能性…

 CSで試合をこなしているうちに誰か一人くらいまともなピッチングをしてくれるだろう。そこで勝ち星を拾えるだろう。一つ勝てば流れが変わって、ウチに流れがくる。ラッキーボーイ・CS男が誰か出てくる。結果、勢いに乗って連勝できてCSを突破出来るだろう。―とまあ、それくらいの甘々な勝負を舐めきっていた思想で戦いに挑んでいたと。そう思われても仕方ないのではないでしょうか?
 敵を知り己を知れば百戦して殆うからずとはいいますが、自チームの投手事情というものをまるで把握できていないということでしょう。己を知らざる者が無謀な戦いを挑んで惨敗したというのが今回のライオンズ評ということになるかもしれません。敵を知らず、己を知らず、百戦して殆うしという言葉が戦前のライオンズの監督・コーチにあてはまるような気がします。
 何バカなこと言ってるんだ。そんなこと出来るわけ無いだろうと思われた方もいると思います。自分で書いていて無茶無謀だと思うくらいですから。しかし正確にライオンズの投手事情を分析すれば、それくらい戦況が悪い。戦う前から不利。なので、そういう奇策を取らざるを得なくなるわけです。で、そもそもの話になるのですが、そういう奇策を取らざるを得ないような状況に持ち込んではならないわけです、本来。
 

CSという制度下である以上ペナント終盤はCSを見据えて戦力を整えておくのがセオリー

 CSという戦いに挑む、最後の難関に挑む前に事前に、チーム状況を良いものにしておく、戦力を整えておく必要性があるわけです。何回か書いてきましたが、CSという制度が導入された以上、これまでのペナントとは違って、最後に焦点を合わせて事前に戦力を落とさないように余力を残してペナントを終えないといけない。弱い要因⑤にしても良いのでしょうけども、CSという制度・ルール下において、その新セオリーを無視した戦い方をしているのですから、そらそうなりますよ。後述すると思いますが、そういうタブーを犯して楽天イーグルスにあわやという状況を工藤監督は作りましたので、短期決戦を戦う指揮官としては論外です。
 で同じことが辻監督にも言えるわけで、ペナントを見ていないのでなんとも言えませんが、一つ確実に言えることとして、8回を投げるリリーフエースの平井を酷使しすぎ・投げさせすぎ、81試合登板って一体何を考えているのか?投手コーチ・監督・フロント、揃いも揃ってバカなんじゃないかお前ら?と言いたくなる非常識な試合数ですよね?これは。
 藤川・久保田が90試合投げてそういうのはもう無理なんだという話題・テーマが持ち上がって来たように、リリーフで初めてMVPを獲得した浅尾が二年連続70試合以上投げて結局壊れてしまったように(2011年は79試合)、過登板は確実に選手の投手寿命を縮める。同じように2年連続70試合、約80イニングを投げた摂津は、統一球の影響もあり、3年間エースクラスの活躍をするものの、翌年・翌々年は二桁勝つのがやっとの投手となって引退することになりました。それこそ大魔神佐々木や藤川のように体格も大きく特別な投手というのならともかく、どうみてもサファテのような歴史に名を残すようなスーパースターの一人とは言えない。いい投手ではあれど、そのクラスまでではない。
 そんな投手に年間70試合どころか、80試合投げさせるなんて正気の沙汰ではない。一体どういう方針で投手運用・起用をしているのか…。岩嵜・サファテの直近の例を見て何を感じていたのか…うーんこの…。来シーズンともかく、再来年には一体どうなるのか…。ただ無事を願うばかりですね。
 

おかしいのはCSではない。特定のチームがCSで弱いこと&ホークスが優勝を逃したこと&日本シリーズが形骸化していること

 ライオンズがCSで負けて日本シリーズに出れなくなったことで、またぞろぞろCS不要論・おかしいぞ!という意見が出てきていますが、なんのおかしくもないことです。おかしいとすればライオンズがCSを見据えてきっちり戦力を整えてこなかったこと。ライオンズがやるべきことをやっていなかったのですから負けて当然。何らおかしいことではありませんね。制度の前にライオンズのフロントのおかしさ・いびつさを指摘すべきでしょう。
 ついでに何度も書いていますが、日本シリーズの価値観が下がる!とか日本シリーズの意味がなくなる!みたいなアホな意見も見かけますけども、日本シリーズなんてとっくに価値なんてなくなってますからね。「セパ親善試合」でしかない今の日本シリーズに興行面以上の意味はない。パ・リーグファイナルで勝ったチームがそのまま日本一になるだけという事情が一体何年続いているというのか。2001年からセ・リーグが何回勝ったか。巨人以外のチームが勝ったか見てみれば一目瞭然でしょう*4。その日本シリーズの形骸化、セパの明確な実力格差を指摘せずして、CSの制度がおかしいということを論じること自体がナンセンスですね。ここ10年巨人以外のセ・リーグサイドのチームが日本シリーズで勝ったことがないというのが、今のセパの現状ですからね。
  話を戻して、ペナントで優勝したければペナントで優勝できる戦力を整えること。そしてCSで勝ちたければ、同じようにCSで勝ち抜けるような戦力を整えて、シーズン終盤に余力を残すこと。ただそれだけです。新制度でそういう新セオリーが生まれたのに、制度に適応せずに古いセオリーのまま、シーズン終盤までエンジン全開フルスロットルで勝手にバテといて、余力を残した相手にまくられて負けて卑怯だ!―なんてことを言うほうがナンセンスです。ホークスで例えると、ファイターズが11.5ゲーム差もつけたのに、リリーフの脚を最後までしっかり残して終盤驚異的な勝率を残して逆転するなんて卑怯だ!というようなものでしょう。そういうルールで戦っている以上、そうするのが当然であって、負けたほうがマヌケという他ないですからね。
 また、そもそも論が続いてしまって恐縮なんですけども、そもそも、今シーズンのライオンズにまくられて負けるホークスがバカなんですよ。こんだけ戦力差があって、投手陣で優位なのにライオンズに最後の最後で競り負けるほうが本来おかしいんです。交流戦辺りで、今年はこの2チームどっちが勝つと思う?と聞かれたら、「まずホークスは怪我人が多くて得点力がオチているけど、故障者が帰って戦力整ったら、やっぱりホークスじゃない?ライオンズは確かに浅村抜けたのに得点力がオチていないのは凄いけど、いかんせん投手のコマが足りなすぎるから、今年ライオンズがまた優勝・連覇するのは無理でしょー。」と答える人が殆どだったはずです(この辺りについてはまた次回の続編で詳しく)。
 今年のライオンズは敵失・敵の愚将の愚策で棚ぼた的に勝ちを拾ったに過ぎないわけです。リーグ優勝するという運に恵まれたが、CSを制する上ではライオンズにとって好ましいことが起こるという運に全く恵まれなかった。厳しい見方になりますが、本来ライオンズがホークスに勝つほうがおかしい。むしろこの戦力、防御率最下位という異常な事情でリーグ優勝できたことが奇跡でしょう。敵失・棚ぼたとは言えども、このような偉業を成し遂げてリーグ制覇・連覇を成し遂げたということ自体を褒めるべきではないかと思います。
 

ライオンズは今後どう戦うべきか?

 ライオンズの戦力を考慮すれば、「ウチはペナントで優勝できるチームではない。では、3位以内に滑り込んで、CSで勝ち上がって下剋上することが可能なのか?もちろんそういうタイプのチームでもない。ではどうするか?リーグ優勝を念頭において、そこを最大の目標として選手を育成しながら、数年先を見据えて戦っていく。万一優勝できたら、御の字。CS敗退は悔しい事かもしれないが、それを将来の糧として数年先を見据えて戦っていこう。」
 ―とまあ、普通はこういう基本姿勢の下、投手の育成を見据えて一年戦っていくものでしょう。ところが目先の試合を全力で戦って全力で消耗して、なんら投手陣に明るい材料も見られずに、とりあえず優勝を成し遂げた。優勝したことは僥倖だが、なんのCS対策も取らなかった挙げ句CSでスイープされた。これが今年のライオンズの一年に思えます。
 CSで勝ち抜ける・勝ち上がるという明確な目標を打ち立ててリーグ優勝とCS突破&日本一というさらなる高みを目指すか。それとも「もう現状の戦力・資金力ではムリだから、ハナから諦めてリーグ優勝さえできればいい。日本シリーズに出ることは諦める。万一CSを突破できれば儲けもの」という姿勢で行くのか、球団としての姿勢・思想が問われると思います。
 個人的にはもちろんリーグ優勝してCS・短期決戦に強いチームを目指してほしいと思っていますが、どうも現状を見るとライオンズは依然体質を変えないように思えます。風物詩はファンの心をズタズタにするのでどうか短期決戦に強いチーム作りを目指してほしいのですが…。
 
 あー長い。日本シリーズ前に書き終わる予定が試合終了にまでずれ込んでしまった。ホークス編の続きはまた次回→2019ホークス <続・ホークスは短期決戦に弱い論>三年連続日本一で工藤公康は名将?否、愚将・迷将の類である 

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*1:まあ、そういう事情背景があるからこそベテラン内海が使い物にならない可能性が高くても、その経験値を見込んで、若手に色々大事なことを伝えてくれること・手本になってくれることを期待して獲得したのでしょうけどね

*2:ホークスは代わりがいる、選手層が厚い。しかしウチはそういうわけではない。そもそも代わりがいないという話がありました。んで、だからこそ選手層を厚くしよう!という話を見かけました。そりゃ選手層を厚くすること自体は良いのですが、そんな事ができる資金力も組織内のリソースもないでしょう。そんなことよりも投手&投手&投手というのが現状。頼りになるベテラン先発・リリーフエース、そしてそれをしっかり管理しきれる投手コーチが肝心要の補強ポイント。そこを無視して適格な対策を取らなければなんの意味もないでしょうね

*3:※あとついでに、余談ついでに9回榎田という継投が叩かれていましたが、そこは本筋ではない。ポイントは平良という新人に大事な場面を任せて、平良ならピンチの場面でも抑えてくれるという都合のいい考えをしたことでしょう。CSでは選手の状態を把握するのが大事なので、森から2点も3点も取れる!なんて甘いことを考えずに、あの場面で同点延長を見据えて榎田を起用すること自体は間違った判断ではない。
 ―と思っていたのですが、ご存知の通り、当時は歴史的な台風が来ることが予想されていて、まず試合が中止になることが見込まれていた。ということは、クローザーの増田をあそこで使ってもどう考えても3連投以上投げることはないということ。というような日程を考えると、あそこは榎田がよっぽど状態が良くてあの場面で投げても抑えてくれるという確信がない限り投げさせてはいけない。結果、あの通りの展開になりましたから、あれはもう100%投手コーチのミスですね。大ポカ、考えられない論外の継投ですね。

*4:01年ヤクルト・02年巨人・07年中日と09年・12年の巨人の5回のみですからね

2019ホークス パCS優勝、短期決戦に強いホークス?No、ホークスは短期決戦に依然弱い。スイープはライオンズがもっと短期決戦に弱かっただけ

もうブログ書くの止めていましたが、あまりにもひどい意見がチラホラ見えましたので書くことにしました。短期決戦にホークスが強くなったという謎の珍論がチラホラ見られるようになったので、疑問に思った人がググってなんの因果か場末の拙サイトに辿り着いて、読んで参考になればいいなと思い、書き残しておきます。
 いわく、「ホークスはCSで苦杯をなめてきた。その悔しい過去・風物詩と呼ばれてバカにされてきた歴史背景があったが故に、今の短期決戦に強いホークスがある!」―とまあ、こんな書き込みを見たわけではありませんが、疑問を抱かざるをえない「短期決戦に強いホークス」論を一言でまとめると、だいたいこんな感じのものになると思うので、こんな風にまとめてみました。
 また、拙ホークス記事を何度が読んでいただいたことがあることには既知の情報になりますが、工藤監督は短期決戦に弱い・下手です。にもかかわらず、短期決戦に強い工藤監督などという珍説も見られてしまうので、工藤監督は短期決戦に強いのか?あるいは弱いのか?そういう疑問を持った人がググって迷い込んだ際に参考にしてもらうためにこの点についてもしっかり述べておこうと思います。普段パ・リーグを見ない人、セ・リーグ専門の人はそう思ってしまうのもわかりますし、今後歴史を振り返った時、ホークスは二年連続CSで2位から勝ち上がって3年連続で日本一になって3連覇しているんだな。この工藤監督という指揮官が優秀だったんだな~と、そう思われた方が、当時の価値観を検証しようと色々探して、迷い込んだときにも有益になろうかと思いますので、その辺り関連の話を書き記しておこうかと思います。
 

目次

 

なぜ短期決戦に弱いホークスが圧勝したのか?ライオンズがもっと弱かったから

 おいおい、バカなことを言っちゃいけないよ?工藤監督・ホークスが短期決戦に弱いだって?現にライオンズをスイープした。4連勝して圧勝したじゃないか。これは工藤采配の妙なくしてありえない素晴らしい戦いだったじゃないか。ホークスの選手たちも短期決戦というプレッシャーの掛かる難しい大舞台で大活躍してキッチリ結果を残したじゃないか?これが短期決戦に強くないなんてどうしてそんなことが言えるんだい?まして弱いだなんて。一体全体何をどう見たらそんなことを言えるんだい?キミは一体何を言っているんだ?
  ―とまあ、アメリカンジョークを言う前の前フリみたいな言い方で説明してみましたが、今回のCSを見た人で、工藤監督・ホークスが短期決戦に弱い・下手だということを知らない人であれば、多かれ少なかれそういう感想を持ったと思います。が、これは非常にシンプルなロジックで説明することが可能です。ホークスが強いのではないのです。ライオンズが弱いのです*1ライオンズがあまりにも弱いがためにCSファイナル史上初のリーグ優勝チームが4連敗という事態に至っただけなのです。ライオンズが短期決戦に異常に弱い。弱い・弱すぎる。十万石まんじゅう(さいたま銘菓)チームなのです。
 2016年に11.5ゲーム差をひっくり返されるという歴史的負け方をしたシーズンに、王会長が残した迷言「我々は負けたとは思っていない。ファイターズが上を行っただけ」をもじって言えば、「ホークスがライオンズより強かったわけではない。ただライオンズが下を行っただけ」なのですね。
 我々がどんなに短期決戦に弱いチーム・脆いチームだろうと、相手がもっと弱く・脆ければそんなことは関係がない。我々がいかに弱かろうと相手が勝手に負けてくれる・自滅してくれるのですから。わかりやすくするために数字化して例えますと、通常チームのCS戦闘力(もちろんこんな物ありえませんが)が100。ウチはそれが70しかない。となれば普通のチームがCSに来た場合圧倒的に不利っっっ…!―と言いたいところなんですが、ライオンズは40くらいしかない。当然70VS40の力を持つ者同士が戦えば、70の方が勝つに決まっている。本来短期決戦に弱いはずのホークスが圧勝してしまったのには、そういう背景があったんですね。今回の謎の圧勝劇のからくりというのは実は(実はというほどのものでもありませんが)、それだけなんですね。単にライオンズが異常に弱かっただけなんです。
 

なぜライオンズは短期決戦に弱いのか?①歪んだチームヴィジョン

 ライオンズは短期決戦に弱い。なぜこんなに弱いのか?それは短期決戦のセオリーを尽く無視している。逆をやっているからですね。そもそもなんですけど、CS制度というものがある現今制度上、ライオンズのような戦い方・チームヴィジョン・戦略を採用するのは論外なわけです。フロントは一体何を考えてチーム作りをしているんだろう?と不思議に思うくらいですね。
 ペナントレースを打ち勝ったチームは歴史上ないとノムさんが言ってましたが(もちろん梨田監督時代の近鉄いてまえ打線で打ち勝っているのでそれは当てはまらないのですが)、例外はあれど、この理屈は基本的には正しく、ペナントレースを制して優勝するためには投手力が非常に重要になる。
 ペナントレースを勝ち抜く上では、何よりもまず一年間安定して先発ローテを回すこと、リリーフ陣をもたせること、789回に投げる勝ちパターンを安定させることが求められます。投手陣の整備なくして優勝なし。これは長い歴史の中で培われたセオリー中のセオリーです。ライオンズの山賊打線・獅子威し打線でリーグ連覇を達成したことは素晴らしいことですが、チーム防御率が5点台に近い4点台で優勝というのはプロ野球史上でもあまり見られないこと。それだけチーム戦力・パワーバランスが異常であることを示します。そういういびつなチームが短期決戦でどうなるか?圧倒的に相性のいいチームが来てくれるならまだしも、そうでない場合はかなり難しくなる。
 野球は守備―落合野球以来、この概念が浸透して久しいですが、守備・ディフェンス面が安定しさえすれば、失点は減る。失点が少ないチームは長期的に安定する。ガタガタっと崩れて大型連敗するようなことがない。1年のペナントで計算を立てやすくなるわけですね。落合政権8年のうちに、3位が一度だけで、あとは優勝と2位しかなかったという驚異的な結果を残せた一番の要因は高い守備力と投手陣にありました。長期的視野で見て、チーム成績を安定させる守備・投手力整備にまずは力を入れるもの。フロントはまずは投手を!という心構えで戦力を整えていくものです。が、西武ライオンズというチームはそうではない。何故か異常にバッター・得点力にこだわるチーム作りを志向している*2
 無論、ドラフトなどを見ても、きっちり投手を上位で指名したりしていて、軽視しているわけではないことが分かります。しかし、西武ライオンズのウィークポイントといえば、間違いなく投手。であれば、何が何でも投手事情を改善しなくてはならないもの。長距離砲・巧打者を育てられるのは確かに魅力的ですが、野手と投手の両輪の馬車がうまく機能して初めてペナントレースで1位で完走できる。西武ライオンズというチームは、その片方の車輪が明らかに上手く回らないダメ車輪なのだから、こちらに手を付けないわけにはいかない。なのに投手補強として良いピッチャーを取ってこない。投手陣改革として優秀な投手コーチを招かない。一体何をやっているのかな?と思えてしまうフロントの有様。
 まあ、同じように一時代を築いた黄金時代を経験したヤクルトスワローズが、現在低迷しているように、ダメ組織というのは危機にあっても過去の栄耀栄華にすがり、身内だけの定例昇進人事でポストを回してそれでよしとしてしまうものなので、ライオンズもそういうことなのでしょうね。以前書きましたけど、吉井というこれほど優秀なコーチが野に眠っているのに、チームに招かないとはお前たちは一体何をやっていたんだ…と言いたくなります。オリックスバファローズ西武ライオンズというチームにとっては三顧の礼どころか百顧の礼*3でストーカーまがいの訪問をしてでも、招きたい優秀な人材だったでしょうにねぇ。
 メヒアという選手が来て早々大活躍して、「おおこれはいい選手取ったなぁ」と思いましたが、そのオフだったか、シーズン途中だったか忘れましたが、一年辺り5億という大型契約で囲い込んでいました。確かにいい選手だけど、そんな金があるならその分投手を取りに行くべき。ウィークポイント、駒が足りてなくて苦しんでいるのは投手なのだから、そんなことに金を使っていられる余裕はない。優秀なバッターをスカウトできたならば、金銭でもいいからトレードのコマにして、その分良い投手を取りに行くべきだと当時考えていました。
 まあ、外国人選手をトレードするというのは契約上も色々難しいハードルが高いのですけどね。いずれにせよメヒアというバッターを確保出来たことで、攻撃面でプラスになったのなら、その分他の選手を、おかわりでも浅村でも主力打者をトレードのコマとして、投手を取ってこないといけない。それは今でも同じ。優秀なバッターがいくら居ても、どんなに素晴らしい野球人でチームにかけがえのない存在でも、足りないのは投手なのだから、森でも山川でも誰でもいいから誰か一人トレードに出して優秀な投手を確保しないといけない
 なかなかうまく釣り合いが取れずに交渉がまとまっていないというのならまだしも、フロントは本当にそういうことをしっかりやっているのか?やっていなければ職務怠慢でしょう。工藤政権の一年目終わりにはホークスは投手が余りすぎて試合に出れないのでは?なんて言われていたくらいで、その頃にでもトレードを仕掛けておけば優秀な投手を何枚か確保できたはずですけどね…。まあホークスもなかなか選手を出さないので、上手くまとまるかどうかわかりませんけども。おかわりクラスのバッターならば大砲を欲しがる遺伝子があるので、まとまったんじゃないかと思うんですけどね…。
 まあ、そんなことはともかく、チーム事情から日ハムが糸井を放出するくらいのビッグトレードを実行しないといけないいびつなチームバランスだった。にもかかわらずそれをしていないのは大問題。この点、フロントは一体何をどう考えているのか尋ねてみたいものですね。
 

昔ながらの古臭い投手観、間違った投手起用・思想

 で、そもそも論になってしまうのですが、投手事情ついでにライオンズの異常な体質についてもう一つ触れておきたいと思います。これはナベQ監督の問題なのか?東尾監督時代からの問題なのかわかりませんが、とにかく投手運用が拙すぎる。涌井に十連投させたり、ピッチャーの役割や休養・調整という概念が欠如しているとしか思えない荒い投手起用が非常に目立ちます。
 いわゆる「俺たち」と言われるような中継ぎ陣が話題になりましたが、役割を固定して疲労をためずに万全の力を発揮できるように投手を起用するという発想がないから、こういうことになるように思えます。牧田をすきあらば投げさせて、ロングリリーフのように球数・イニングを投げているのに、また翌日同じくらい投げさせたりするのを見て、正気の沙汰ではないとドン引きしたのを記憶しています。どうせメジャーにいかれてしまうのなら、壊れるまで使い潰そうとしていたようにしか映りませんでした。監督時代のナベQ氏が、エースの岸にチームの投手が不安定だからエースのお前が投げなくてはいけないという謎の説教をしているのを見たことがありますが、いっつも不安定な投手陣なんだからまずは戦力を、投手陣を整備するのが先だろう…。過度な負担がかかるような投手陣の状況を改善するように務めるべきだろうに、何を言っているんだ…。一時的に岸が奮戦するのは良いとしても、一体いつまでエース一人に責任もたせて乗り切るつもりなのだ?と疑問に感じたことも覚えていますね。とにかく西武ライオンズの投手運用・感覚にはおかしいなあという疑問しか湧いてこない印象があります。
 後述するかと思いますが、この投手に関する異様なセンス・感覚は実は工藤公康に非常によく似ているナベQと工藤氏は非常に仲がいいという話を聞いて腑に落ちた覚えがあります。ああなるほど、だからかと。エース・大投手・名選手ならではの歪んだ価値観・視点による投手起用・野手起用なのか。最近の西武は辻さんになって走塁という面で改善されたので、あまり次のような印象を抱かれない方も多いと思うのですが、実はライオンズ野球と今のホークス野球は非常に思想が良く似ている
 エースと大砲に頼る。そしてリリーフにおいても、その年一番いい投手に頼り切って酷使する。一人の投手におんぶにだっこの「げんこつ山のたぬきさん継投」をする。優秀な特別な何人かの選手の力を主軸として、というか依存してペナントレースを戦う。一言でいうと心中野球ですね。誰か一人・二人優れた選手や状態がいい選手に頼り切って戦おうとする。だからこそ、そのリリーフエースが壊れても平気のへの座なんでしょう。その年が終わって、その酷使された投手が壊れようがなんだろうが知ったこっちゃない。ペナントを戦う上で来年・再来年のことなど知ったことではない。後は野となれ山となれ、明日は明日の風が吹く。来年のことはまた来年考えるから、とりあえず今が良ければそれでいいという戦い方をする。
 また「優れた投手ならこれくらい投げて当然、オレの若い頃はもっと投げていた。これを乗り越えなくてはオレのような大投手にはなれないぞ」という価値観故にこういうおかしな選手起用をすると考えることが出来ます。*4
 

前時代的なエース・4番絶対主義or信仰。≒長嶋ジャイアンツ野球

 かつてノムさんが長嶋ジャイアンツを批判した言葉、エースと4番ばっかり集めてどうするんだ。エースと4番だけでは野球は勝てないという主張をしていました。ままこれが当てはまる状態ですね。まさに逆野村思想。すなわち悪しき長嶋ジャイアンツ野球・思想なのですね。これは大投手特有の思考からくるものなんでしょう。超ポジティブに都合の良いことばかりを考える。困ったら大投手が、大打者が超常的な力を発揮して助けてくれる。チームが困っている時、絶体絶命の大ピンチ、もう優勝は不可能!という苦境でもなんとかしてくれる。―といったような非常に都合の良い考え方をする。
 これよりもさらに前の時代の話になりますが、神様・仏様・稲尾様という言葉があったように、超人的な大投手・大打者一人の力で勝ってしまうということがザラにあった時代があって、その前近代的な価値観・集合意識を引き継いでいるのでしょう。
 工藤監督自身が日本シリーズでHR打って勝っていますし、3連敗からの4連勝というのも経験していますし、奇跡を体験しているがゆえに、奇跡が起きて当たり前という歪んだ価値観を持っているんでしょうね。戦略とかそういうものと関係なく、一人の選手が超常的な力を発揮できることを工藤公康自身が身を以て体験しているし、チームメイトや敵でそういう選手を直に見ている。故に結局は個人技・超常的な個人の力によって、ペナント・優勝が決まるものだという浅はかな価値観を持って指揮をしていると考えられます。
 こういう思想においては神様降臨待ちになる。どうもチーム状態が苦しい、誰か神様になってくれないかな?何かを掴んで成長どころか覚醒して、大覚醒して、超常的な働きでチームに勢いをつけてくれないかな?そして、その勢いそのままで一気に連勝して優勝をしてくれないかな~。*5
 ―とまあ、おそらくこういう浅はかな思想でペナントレースを戦っているだろうと思います。捕手のリードや守備、細かなエンドランやらバントやら走塁、粘ってなんとかして出塁して~などという工夫によって、少しでも勝つ確率をあげようという涙ぐましい努力をしていないということは、裏を返せばつまり勝利・戦いというのは神風が吹くかどうか。こんな価値観・戦略思想では、誰か選手が急成長して、もしくは元からチームに所属しているスーパースター選手の誰かが超常的な働きをして流れを掴む以外ありえませんからね。人為的努力ではなく、天佑神助・偶機に頼る。そういう切り株の前で兎が勝手にぶつかって倒れてくれるのを待つ思想、幸運待ちをしているとしか考えられない監督・チーム戦略で短期決戦に強いと考えるほうが無理がありますね。*6
 ライオンズに、なまじバッティングに優れた選手がいることがマズイのかもしれませんね。「これだけ優秀なバッターが揃ってさえいればいつかは勝てる。優勝することもあるだろう」と舐めた態度をとってしまうことになる。そして現にそうなってしまいましたからね。まあ、だからこそCSで二年連続ファイナル敗退という結末に至ったわけですが。これでこのままではいくら優勝できても決してCS・短期決戦で勝つことは出来ないと学習してチーム方針・戦略を根底から見直してくれれば良いわけですが…。
 

一人の大投手・大打者≒スーパースター絶対/依存思想

 長嶋茂雄が監督一年目だったか?優勝できなかった理由を聞かれて「このチームには長嶋茂雄がいなかった」という説明をしていたという話がありますが、近代野球というか現代野球以前特有の価値観なんでしょうね。誰か一人の超常的な選手が勝敗を左右するという価値観は。
 一年を最後から逆算してペース配分を考えるというセオリーが成立していない時代。目の前の試合をただひたすらに全力で戦って、最後の方では全員総出で一戦必勝、全勝するつもりで戦うのが当たり前というバカみたいなやり方をしていた時代がありますからね(今でもたまにもうこの時期だと一敗もしないつもりで戦え!とかバカみたいなことをいう解説者やコメントを見かけますけどね(^ ^;) )。大事な時期は投手も総動員でエース及び准エースが先発した次の日くらいでもリリーフ登板していた時代ですから。
 江川さんが実際そうしていて、優勝が決まるペナントが佳境に入った残り試合あと20試合くらいの時に、この時期になったら総動員で先発が後ろで投げることも当然という解説をしていたことがあります。だから江川さんが解説で、エースの~~が今後ろでリリーフで投げるのもおかしくないみたいな話をしていた記憶があります。このようにこのくらいの時代の野球をしてきた元選手=コーチ・監督はそういう常識を持っている。昔はそうだったよね~くらいの思い出話ならばそれでいいですが、古い価値観を今でも引きずってる困ったちゃんがたまに怨霊として現れるわけですね。西武ライオンズは毎年優勝争いをしていて、現にそういう野球をしてきて優勝してきたのでしょう。だからこそ成功体験として根付いているだけに質が悪い。骨絡みの問題ですね、これは。
 大投手・大打者が優勝・ペナントを決める。だからそういう選手ばかり重視する*7。他のそうでない選手、スーパーパフォーマンスを当たり前のように行えるスター選手以外は軽視するし、そういう偉大な名選手でなかったコーチの意見は重視しない。現役時代大した選手じゃなかったやつに一体何が分かる。オレくらい活躍してチームを優勝させた経験があるのか?オレくらい数字残してから言ってみろという感覚になるのでしょうね、きっと。だから周りの意見を聞かない。唯我独尊になる(コーチングというかピッチング理論を直に勉強してその理論に一家言あるから、自分の主張・理論にうぬぼれている。故に他人の意見に耳を貸さないという話もありましたが、勉強・学力が逆に傲慢に作用して結びついてしまうということなんでしょうかね…)。
 ホークスの場合は、工藤監督の独りよがりで済みますが、辻監督の場合は、「あの辻がまた勝手なことをして!コーチの意見も聞かずに…」となっていないだけに余計たちが悪いですね。監督どころか周りのコーチ・フロントの誰も当たり前のことがわかっていないということですから…。まあ、ホークスの方も工藤思想が間違っているから周囲から嫌われているのではなく、単に自分の意見が反映されない・採用されないから反工藤派になっているだけで、問題の本質・チームの内部構造の問題としては似たりよったりなんでしょうけどね。
 

工藤ホークスと伊東亡き後のライオンズは非常に似ている―短期決戦に弱い理由その②捕手のリード軽視

 野球観・野球論というかペナント戦略が非常に古臭い・遅れた価値観を持っている。そのような共通項が工藤ホークスと伊東監督が去ってからのライオンズに共通して存在しているように見えます。
 で、次に短期決戦に弱い理由として②捕手の軽視を取り上げたいと思います。この点も工藤ホークスと同じですね。重要なポジションである捕手を軽視する。大投手特有のリードなんか必要ない、自分ひとりで投げて十分抑えられるから、お前(キャッチャー)は黙ってボール取ってろというものによる歪んだ結論なのでしょう。一流投手・大投手・エースはそれでいい。が、しかし二流投手・ヘボピッチャーはどうなるのか?チーム全体としてどうなるのか?言うまでもありませんね。
 伊東監督が放逐されるように追い出されてからのライオンズは、愛弟子細川が去るとあっという間に弱くなっていった。守備の要・扇の要の捕手がチームを去ってしまえば、それは当然そうなるもの。細川の後釜としてきちんとリードが出来る捕手がいればまだしも、当然捕手は育たず、現在のライオンズの問題の本質である正捕手不在状況がずっと続いています。*8
 野球はキャッチャーというかリードが第一と言ってもいいくらい重要な要素。しかし、そのリードをする捕手を重視しないのですから、短期決戦で勝てるわけがない 。無論、いくらリードが良いキャッチャーでも、ピッチャーがヘボピッチャーだらけならなんの意味もない。結局ある程度優秀なピッチャーの数が揃わなかったら、リードがいい捕手が居ても同じ。キャッチャーに頼らずとも優秀な投手を数多く揃えて投手王国を築けば常勝チームが作れるというのは巨人やホークスをみればわかること。
 しかし、言うまでもなく優秀な投手を何枚も持っている、獲得できる、FAせずに生涯チームにずっといてもらえるというチームではないのですから、なおさら優秀なリードが出来る捕手を重視するべきでしょう。少しでも投手の負担を軽くするために優秀な捕手が必要。この点、リードが上手い捕手の存在の必要性はホークスの比ではないほど高い。喉から手が出るほど正捕手・リードが出来るキャッチャーが欲しいはず。
 にもかかわらず、キャッチャーを育てていない。短期決戦において捕手のリードの重要性は言わずもがな。日本シリーズのような短期決戦は監督同士の、指揮官同士の采配対決以外にそれぞれの捕手同士の読み合い、リード対決という性質があるもの。そんな重要なポジションにおいて打撃を優先する打てるキャッチャー森でチーム戦略を立てているのですから、そりゃ勝てるわけがないでしょう。短期決戦に勝つためにはリードの優れた捕手が必要なのに、そのスキルの高い捕手を育てる!というヴィジョンを最初から放棄している時点でもう今後CSで勝ち上がるのはムリなのではないかという気すらしてしまいます。投手が雨後の竹の子のごとく何枚も育ってくればまた別なんでしょうが…。
 

森のリード、現状について―そもそも教えられるコーチがいない

 森のリードについてコメント出来るほど見ていませんが、打撃を優先してミーティングを免除とか、打って取り返してくれればいいから気にするなと言われているというようなチーム方針である時点で、ある程度察することが出来ます。そしてこれは、森本人の問題ではなくて、まずチームにリードを教えられるコーチがいない。プロ選手といえども、どうやってリードをすべきなのか、手取り足取り一からノウハウを教わらなければ、まずムリでしょう。
 リードについて一番大事なのは、状況判断などもありますが、打者の反応をきっちり見極められるかどうか。それが見えないと、相手の待ち・意図がわからないので、裏をかくということが出来ない。裏をかくからこそリードというのは意味を持ってくるわけで、対投手ではなく、対捕手という図式が成立して、投手だけでなく捕手とも戦わないといけないからこそ打席に立ったバッターが悩む。ピッチャーとキャッチャーの共同作業で2VS1でバッターに挑むからこそ野球というのは面白い、妙があるわけで、それがない野球になんの意味もない。見ていて面白くもなんともない。
 ちょっと話がそれましたが、要するに森にバッターの反応を見ろ!そしてその打者の意図を察知して裏をかく好リードをしろ!待ちを絞らせないようなリードを、配球の組み立てを考えろ!なんて言われても、森本人からしたら「リードの重要性は十分わかりました。では、どうやって相手の反応を見れば良いのですか?どうやって配球を組み立てたら良いんでしょうか?ご指導よろしくおねがいします」と森がペコリと頭を下げても教えられるコーチがいない。だったら育つわけがないでしょうね。
 この点、ホークスも同じ問題を抱えており、拓也(甲斐)はリードが良くない。というか、そもそもリードの概念がないんですね、彼には。これはもうチームの教育体質の問題で元々捕手を育てるシステム・マニュアル・制度的に問題があるチームでしたが、工藤監督になってからリード軽視になってしまった。というかキャッチャーにリードを要求しなくなってしまった。肩とキャッチング。そして何よりバッティングで打つことを要求する。そういう歪んだ思想の持ち主が現場のトップに立ったことでもう絶望的、地獄への道が開かれたわけですね。
 

細川がチームを去り、風物詩ホークスの影が再び忍びよってきた

 もう昔に何度も書いたのでいちいち書きませんが、細川という名捕手をFAでとってきて、短期決戦に強い内川と加えて攻守においてスキがなくなった。脱風物詩はこの二人の力を抜きにしてありえないと言っていいほど、短期決戦で見事な働きをしてくれた。リードの良い正捕手がいることで、安心して試合を見ていられたのですが、工藤監督が打てない&コンディションの面で安定してマスクをかぶれないことで彼を嫌った。結果、細川はチームを去ってしまいました。
 短期決戦においてリード・彼の重要性は言うまでもないのに、ヤクルトとの日本シリーズでも細川を固定して起用しない。短期決戦では、捕手を固定せよというセオリーを無視した(というか、そもそも知らないのでしょう)采配をしてたまげた記憶もありました。キャッチャーは所詮、ピッチャーのおまけ・添え物程度に考えているがゆえに、三連戦でキャッチャーを固定するということもしない。平気でコロコロ変えてしまうことからも一つの繋がり、単位で見るということが出来ない監督であることがよくわかります。捕手・リードを軽視する監督であるが故に、そして細川がチームを去ったがゆえに、現ホークスは確実に短期決戦に弱くなったと言えます。
 

細川&吉井コーチ亡き後歪んだチームになってしまった

 その細川亡き後、高谷という細川の指導を受けたキャッチャーがいて、彼のほうがまだリードの概念があり、投手をコントールする。組み立てを考えたり、打者の意図を外したり出来るのですが、工藤は決して使わない。対ロッテだけでも高谷で勝負すればいいのに甲斐にこだわり、起用し続けて対ロッテで大きく負け越しました。
 8勝17敗という歴史的な負け越し、惨敗をするという有様ですからね。特定のチームに対して手も足も出ずにボロ負けをし続けるというありえない事態から見ても、指揮官及びチームが、短期決戦に強いなんて本来言えるはずがないんですけどね。そういう当たり前の事実も指摘されていないのでしょうか?戦力的に圧倒的に駒不足で、ウチが格下とでも言うのならばまだしも、逆ですからね。ポルナレフばりに「ウチが上!ロッテ!貴様は下だ!」と言いたくなるような戦力差ですから。
 短期決戦に強いチームというのは安定して勝てるチームです。「怪我人で主力が欠けているから、戦力が足らないから勝てませんでした」なんてことを言うチームが短期決戦で強い訳はありません。確率や運というものは偏るもので、一時的な偏りというものはあれど、最終的に帳尻を合わせられるもの。ロッテに対してそれが出来ないということは、もう根本的に問題・欠陥を抱えていることにほかなりません。
 今年はロッテに大きく負け越して話題になりましたが、地味に去年も日ハム相手に途中まで5勝12敗という体たらくを見せていました。8月にも関わらずもうファイターズに負け越しが決定してしまうというシーズンもありましたよね。その後12勝13敗と盛り返したので目立っていませんが、この頃にはもうファイターズは首位のライオンズと大きく引き離されてギブアップ状態でしたから(この年のファイターズは13.5ゲーム差離された3位でした)、ほぼ消化試合・育成に切り替えていく段階でいくら勝っても最早後の祭り。大勢が決したあとで帳尻を合わせたって、なんの意味もありません。
 結果的に五分の数字を残したので目立っていませんが、この年はファイターズにカモられたことが響いたシーズンでした。ホークスは吉井コーチに、大逆転を許したファイターズにビクビク怯えながら戦い、惨敗していたのを記憶しています。アレだけ屈辱的な大逆転負けで優勝をさらわれておきながら、優勝して一年経った翌年またこうなってしまう。対ファイターズだけは、普通、徹底的に研究して対策を練って二度と負け越してなるものか!となるもの。このチームにだけは何が何でも勝ち越す!徹底的に叩くと臥薪嘗胆、目の敵にして挑むものなのに…。
 また、2017年には、圧勝・ぶっちぎりでペナントレースを制しましたが、唯一楽天イーグルスだけは、食らいついてきた。他のチームには7・11・9・9とたっぷり貯金を作る強さを見せたのにも関わらず、楽天だけは1つ勝ち越しただけの13勝12敗という五分の戦いをしたシーズンがありました。言うまでもなく細川が楽天イーグルスに移籍して、結果、データが行ってしまった事によるものですね。それが絶対とは言いませんが、確実に手の内を知られたという要素は影響しています。西武ライオンズから細川を取って以後ライオンズをカモにして絶対負け越さなくなったホークスの過去を振り返れば言わずもがなですね。
 記事にして書くつもりでしたが、もうめんどくさいので多分2017年のCSの話をシリーズ化して書かないと思うのですけど、この2017年のCSで楽天イーグルスを相手にホークスは初戦・二戦目と連敗をしている。風物詩未遂を起こしているわけですね。後述しますが、そんなチームが短期決戦に強いわけがありません。バカも休み休み言ってほしいですね。
 

甲斐拓也にはリードという概念がない

 甲斐というキャッチャーの何が悪いのか?彼のリードのどこがマズイのか? そもそも彼にはリードの概念がないと先に述べましたが、それは次のような事実を見ての指摘です。17年のCSで見ていて、何だこのリード…と驚き呆れたのですが、彼はボール球を要求しないんです。大きく外してボールを要求したりせずに、全部ストライクゾーンに構える。ボール球が欲しいのか、ボールでもいいのか、カウント球が欲しいのか、ファールを打たせようという意図で要求しているのかまるでわからない。まあ少なくともカウント稼いだり、ファールを打たせてカウントを良くしようとか、そういう意図くらいはあると思うのですが、とにかく全部ストライクを取ろうとする。力攻めをするんですね。
 なんでこんなリードをするようなキャッチャーになってしまったんだろう…と思っていたのですが、権藤さんの文章を読むことで気づくことが出来ました。権藤さんが解説記事で、短期決戦では強気の姿勢・勢いが大事、ストライクゾーンでどんどん攻めていくチームがメジャーでもCS・日本シリーズでも勝っていったという謎の理屈を展開していて驚いた記憶があります。が、この記事を読んで腑に落ちました。ああ、大投手というのはそういう発想をする生き物なのだなと。東浜にせよ、千賀にせよ、バカみたいにストライクゾーンに要求して全打席力勝負でいったのは、リードの概念が根本的にないんだなということが理解できました。
 普通、リードというのは細川を見て分かるように、外にボールゾーンに外すことで、相手の意識を外の出し入れに注意を向ける。「おや?インコース来ないのかな?あ、また外だ。なんだ内に来ないのか、じゃあ次は思いっきり踏み込んで、外のストライクゾーンに自分の得意の変化球が来るか、まっすぐが甘く入ってきたらそれを打~とうっと。」という意識にさせといて、思いっきり踏み込んで来たところにインコースを見せる。「って!おい!インコース来るんかい!!」とバッターが思うようにする。そうすると、自分がもう来ないなっと、思いっきり外に踏み込もうと考えた時に、でもまたインコースに来るんじゃないか?と疑心暗鬼になる。そういう意識になれば、外側に踏み込んでこれなくなるので、より安心して安全なアウトコースで勝負できる。また打席で迷って狙い球を絞れなくなる。自分が待ってない時に身体の近くに投げ込んでくる・インコースを見せてくる。そういう嫌なキャッチャーだ、そういうリードをしてくる・裏をかいてくるという印象を相手に植え付けるものがリードというもの。
 別に相手の待ちを反応を見て読み切って、裏をかいて待っていない球種で勝負してもいいんですけどね。そんな高等技術できればとっくにやっているでしょうし、全バッターに対してそれはまあ出来るものではないから、基本としてはやはりインコースに意識を植え付けることでしょう。最少のインコースの投球で最大の効果を得ること。これこそがリードの意義・セオリーとも呼べるものだと思いますが、そういう工夫を全くしていない。全部外の、アウトローのストライクゾーンへの要求ばっかり、キャッチャーとしての意図・配球観がまるでない。*9
 

悪しき負の文化に染まってしまった甲斐拓也

 そういう工夫を全くしていないリードを見て、これは一体なんなのか?彼は一体何を考えてサインを出しているのか?と言われると、鶴岡リードなんですね。アウトローとスライダーもしくは決め球で勝負をする。日ハム流メジャーリーグ大好き精神がもたらした負の影響の一つと言えるのでしょうか?ピッチャー主体による力勝負を良しとする文化がある。真正面からぶつかって、力でねじ伏せることがピッチングだという価値観があるんですね。
 ですから、全部ストライクゾーンで勝負してしまうんですね。キャッチャーの裁量、外して様子を見るということがない。ピッチャーの実力・投球次第で全て投手任せにするというキャッチャーとしては最悪な類のリードをしてしまう。だったらキャッチャーいらないじゃないか。ボールを受けるだけの単なる受け子でいいのか?捕手として最低最悪な心構え。こういうふざけた考えを許容するチーム、ファイターズ・ホークス共に大問題ですね。
 本来拓也は、細川を参考にして学習しないといけなかったのを、指導を仰いでリードのいろはを学ばなければいけなかったのを、工藤監督の影響で歪んだ価値観を持つようになってしまった。また鶴岡が自身の境遇、ドラフト下位で指名されてきたが必死に這い上がってきた雑草組という点で非常に共感を抱きやすかった。人間的にも非常に慕われていてピッチャー陣の信頼も厚かったナイスガイだったといいますし、そういう点でも鶴岡に惹かれるものがあったのでしょうね。
 ともに、野村克也という偉大な捕手・監督&伊東勤という素晴らしい捕手・監督を輩出しておきながらのこの有様というのは、一体何の因果に基づくのでしょうか?リード重視の野村派・伊東派の追放のあまりそれぞれの理論すら目の敵にされたとでもいう事情があるのでしょうかねぇ…。

 長いので分割しました。続きはこちら→続、2019パCS ライオンズがスイープされた理由 短期決戦に弱い理由①打撃・攻撃重視②リード軽視③CS現行制度の欠陥④若手投手陣=ベテランの欠如


 
アイキャッチ用画像

*1:大人はウソつきではないのです、ただ間違いをするだけなのです

*2:まあ、なぜなんて言うまでもなく、単にHR打てる長距離砲がいれば、客が入るという興行上の論理なんでしょうけどね

*3:ちなみに三顧の礼とは、三回という意味ではなく沢山という意味もある言葉なので、このたとえは気にしないように

*4:そう言えば、浅尾を酷使して潰した森さんも西武ライオンズ出身でしたしね…。悪しき西武ライオンズの遺伝子を、古い時代の野球の価値観を確実に共有していると見ていいでしょう

*5:一年目にこれだけの選手が揃っていれば、誰かが必ずやってくれる。いい投手でも仕事をして打ち崩してくれるという話をしていましたけど、根底にあるのはこの思想でしょうね。個人技の集合として野球を見ているし、捉えている。チームプレイとしての連携、エンドランやランエンドヒット、打者と走者が協力して相手投手を打ち崩すとか、つなぎという要素は当然軽視される。いわんや投手と捕手のリードにおいておや。投手と捕手が協力して打者を打ち取るという発想が軽視されるのも至極当然の主義信条の持ち主であると言えます

*6:長嶋野球では4番ばかりが集められるという異常なチームでしたが、どうして4番ばかり集めるという歪な戦力構造を前提していたかというと、この工藤野球のように、優れた一個人・超常的な一個人の神様的な働きを期待するからなんでしょうね。采配の妙なんて関係なく(まあ、工藤采配には多少、采配・指揮官の決断でなんとかしようという要素がありますが)、個人の超常的な働きを絶対視するからなんでしょう。まあ、長嶋野球=悪しき野球の代名詞として、青史にその名を止めているわけですが、実際は長嶋監督自身は鈍足大砲を好まなかった。営業・興行上の理由で大砲を打ってくれる大打者が好まれたという話もあるので、フロントがそういう選手を取ってきただけで長嶋野球=ダメ野球とするのも少し可愛そうな気もしますけどね。それでもまあ、清原や江藤なんかは直接欲しいと動いていたという要素もあります。これは落合のような、本当に一個人で超常的な働きをしてくれる選手を望んだからでしょうね。落合という成功体験に溺れたが故でしょう。落合のようにここぞという場面で必ず打ってくれる選手、超常的なパフォーマンスを発揮して、仕事をしてくれるという選手は本当に一握りですからね。それでも過去の成功体験にとらわれて、第二・第三の落合を求め続けたということなんでしょうね

*7:内川や松田、サファテなどがそうでしょうね。またこういった思想であるからこそ、過度に大谷を恐れたのでしょうね。HR打ったり、ものすごいスピードボール投げたり、素晴らしいスーパースターではあるものの、普通の選手では出来ないことをやってのけるすごい選手ではあるものの、通年で見れば大した働きをする選手ではなかった。ところがそんな大谷に対して過剰に恐れ、過敏になった。そして大逆転・歴史的屈辱の目にあったのも、つまりはそういうことなんでしょうね

*8:現在のライオンズの状況はある意味伊東・細川の呪いと言っても良いのでしょう。

*9:まあ、リードについては勉強して日が浅いので、名捕手から「いやそんな底の浅いものじゃないよ」と一笑に付されるものかもしれませんから、話半分に聞いておいてください

【雑誌】 月刊秘伝 2015年5月号

月刊 秘伝 2015年 05月号/BABジャパン

武術印のカラダ活法―療術特集ですね。
 碓井流活法の人の話が面白かったですね。右に一回転、左に一回転して深呼吸すると、宇宙のエネルギーと一体化して身体に軸ができてバランスが取れるようになると(前後左右から押してもらう。これをやったあともう一度同じように押してもらっても簡単に崩れなくなる。以前より丈夫になることがわかる。変化がわかるとのこと)。足裏の三点軸でバランスが取れるなど普通の教えもあります。色んな引き出しがある方みたいですね。
 
■システマ スティックコンディショニング
 スティック、鞭、ナイフを使って身体を調整する。痛みを伴い、体の自然な反応を引き出していくとか。快楽を基礎とする普通のマッサージやコンディショニングとは真逆の概念ですね。興味はありますが本当に痛そうなので実際に受けるとしたら、ためらいそうですね。

■特別企画・連載追悼 岡本正剛師範(大東流合気柔術六方会)武術史を変えた合気の“具現者”
 西田幸夫、小用茂夫、伊藤昇、そして光岡英稔などなど、武道界に与えた影響は計り知れない偉人ですね。他にも指導・稽古だったり、影響を受けた人は数多いでしょう。合気道系で塩田剛三と並んでその秘技・奥義を惜しまず積極的に公開をして普及をしようとした極めてリベラルでオープンな素晴らしい武術家・教育者・伝道者であったと思います。尊敬しない武道家・武術家がいるのか!?と言いたくなるようなレベルですからね。


ゆる体操には“裏”の存在があった!高岡英夫の漢語由流体操「肩肋後回法6」
 第二法は「四足動物伸緩法」。第一段は「脚支持後重心系伸緩法」です。主として脚で体重を支えて、後ろ重心系で行う伸緩法。縦系の一般的な伸び動作です。動物の気分になってやるのがひとつのコツ。身近に犬や猫がいるなら観察して、彼ら以上の深い動きを目指すこと。第二段は「腕支持前重心系伸緩法」。人類が進化する過程で、人が忘れ去って取り入れなかった伸び動作。*1
 これらの伸緩法を行う際は、第一段・第二段ともに、普段の伸び動作の際に自然に出てくる「うう〜ん」「ああ〜」といった声を出すように行う。どうやったらより気持ちが良くなる・効果が高まるのか発声の仕方を工夫して行うこと。やってみればわかるが、発声の仕方ひとつとっても、意外なほど工夫の余地がある。伸びの呻き声の出し方も、以前紹介した歩き方と同じように、厳密に判断すれば現代武道における、初段や二段レベルにとどまっている人がほとんど。しかし全くやったことがない人でも、すでに初段・二段レベ ルには達しているという点がじつに面白いところ。初学者にとっては、初段・二段というレベルは、はるか上の存在であるはずなのに、伸び動作の呻き声や、歩き方に関しては、誰もがズブの素人の域を.脱した初段・二段レベルに到達している。しかし当然それをさらに向上させていく、その伸び代はたっぷり残っている。
 第三段は「立位後支持系伸緩法」。これは立位で行う「人伸び動作法」。これは一般的な仮名ゆる体操の中の「伸びアーッ体操」として取り入れている伸緩法。ただの伸びともいえるが、わざわざ意図して体操法としてやれば、立派な体操法になる。伸びはあくまで、ほぼ無意識に行ってしまう自助運動であり、意図したものとは違う。意図して体操として行う伸び動作の方が、はるかに質の高い身体運動に上達し得る。こうしたところにも、自然に行っている自助運動を、科学化して体操法化していくことの意味を見出すことができるといえるとのこと。
 第四段は、「立位前重心系伸緩法」。一肩肋後回法をやりながら、肩がちょうど下から前方そして前上方に向い、頂点に達した付近で、「ううう〜」と呻きながら、一肩を少しづつ後ろに持っていって、身も心も崩れ落ちるがごとく「あぁ〜」と嘆息をつきながら、思い切り深くやれやれといった感じに下ろしていく。じつに素敵な過程(1・2段は四足動物の動きそのものだが、第三段の伸びは無関係のように思えるのだがどうして一緒のカテゴリなのだろうか?声、発声による効果の向上が四足動物系的なものがあるということなのか?第四段に至っては普通に肩肋後回法+発声・唸りや呻きという感じだし)。
 「ううう〜」と自然に言ってしまう、独特の身体運動を引き出すこと、深めることが身体開発上独特・重要ということなんだろうが、そのバックボーンがいまいちピンとこない。四足動物DNAにスイッチを入れて身体開発を進める上で有効・有益ということなのだろうけど。
 もし、「ううう〜」と呻くことに、どうしても抵抗があるなら、発声せずに内言の呻き声で効果が出るように工夫してみること。実際、自身も、外言・内言それぞれでやったり、色々なやり方を試したとのこと。どちらが効果があるとはっきり断言されてはいませんが多分、外言でしょうね。じゃなきゃ最初に呻き声云々の話をするわけはありませんし。ただ内言、口を閉じてちょっと「ううう」と人に聞こえない程度でやることにもそれなりの効果、違ったプラス効果などありそうなので両方やるべきでしょうか。
 第三法は「固定肋骨後回法」。 これは肋骨を固定土台として使って、 肩を回していく方法。 第一段は「脱力後回観察」です。 じつはすべての方法の第一段階は固定肋骨が前提となっている。すべてに「固定」といれると、名前がくどく長くなるので省略してある。肋骨が固定化されている=当然肩は脱力。だからわざわざ「脱力」の二文字を加えた。*2
 まずは観察法から入る。鏡を見ながら肩肋後回法を行って観察をする。コツは、はじめから鏡を見ないこと。まず鏡の前に横を向いて立つ。そのまま鏡を見ずに、何回か肩肋後回法をやって、自分の動きが定常化してきたら、あたかも他人を見るように、チラッと鏡に目をやること。つまり、動作する意識と観察する意識を別なものとして、意識分化する。人は鏡を見ながら、自分をどうこうするということに慣れ親しみすぎているので、鏡を見ながらやると、本当の自分の動きを観察することができなくなるから。ゆえに、鏡を見ずに肩を回して、定常化してきたら、その動きを少しも変えないようにしながら、チラッと鏡を見るようにする。そうすることで自分の動きを観察理解することが出来る。思ったほど、きれいな円運動は描けていないことがわかるはず。
 この意識分化による観察法は用途が広く、非常に有効な方法。こうした鏡の使い方も身につけておくと稽古にも大変役立つ。完全な意識分化による観察が出来るということも達人的な能力のひとつといえる。稽古の前の稽古というか、準備と言いますか、練習の効率・成果を上げる条件として自己観察というのも当然ポイントとしてあるわけで非常に重要なポイントですね。最近だとスマホで動画撮れば?と言われてしまうかもしれませんが、意識分化というのがポイントになるでしょうからね。
 第二段、「脱力後回修正」。鏡で観察&修正。鏡を見ながら修正し、次に鏡を見ないで修正、再度鏡で観察。すると新たな粗が見つかるので、再び修正―の繰り返し。鏡を見ない時が本当の姿なので鏡を見なくても出来るようになること。
 第三段以降は、この回転というものを、身体座標空間論を使って、 運動構造的に要素化する。第三段は、「脱力中位上昇下降」。 この「中位」とは、身体の前後の正しく中位の位置で、肩を完全に垂直に高く深く上昇・下降させるやり方です。 一見、簡単に思えるが大半の人は、肩を上昇させるときに力んでしまう。できるだけ脱力させたまま肩を高く上げることは修練がいるし、これがまた脱力のいいトレーニングになる。下げるときも、同じように大胸筋や広背筋を使わずに低く低く下げていく。また、自分の円運動の欠落している部分の解消にもなる。肩を回転させるとき、低いところは肩が通しにくく、ここで円が歪になり、ショートカットしているケースが多い(なで肩なので、肩をあげようとすると結構簡単に上がるが、下に下る範囲が殆ど無い…。固まっているということなのかこれが限界なのか…。キレイな正円にならないなぁ…)。
 第四段は、「脱力中位前後」。肩を中位の高さ、上げても下げてもいない高さ=「中位」で、肩を完全に水平に大きく前後させるやり方。こうした動きは、普段やらない分、上下の動きより難しいはず。しかも徹底的に力を抜いて、ダラ〜としながら行う。拳法や空手などでは、突きのときに、肩を前後に動かしているように思うかもしれないが、多くの場合、突き動作は、体幹部を体軸回りに回転させながら、腕の屈伸運動を行っているので、肩の出し入れをしているつもりでも、じつはそれほど肩を前後に動かしているわけではなかったりする。こうしたことに気が付くのも、この「脱力中位前後」の特徴。そして、この徹底脱力の完全水平中位で肩を十分に前後に動かす能力は、武道・武術に、高ければ高いほどメリットがある。例えば肩が動く分、体幹の動きも自在に調節することができると。
 第五段は、「脱力前位上昇下降」です。今度はちょっと難しくなる。身体を横から見たときに、肩を十分に前位に持っていく。完全にその位置のまま、完全に垂直に上昇・下降を繰り返す。やってみればわかるが、高く上昇・深く下降させると、肩は中位に戻ろうとする。そのやりにくい、「前上死点(前上の角)」と「前下死点(前下の角)」にきちんと肩を持っていけるようにすること。当然力まずにやるのがポイン卜。
 次が第六段の「脱力後位上昇下降」 です。これは第五段の反対で肩を後位に持っていき、そこで上昇・下降を繰り返す。
 第七段は「脱力上位前後」肩を上位の位置にして、大きく前後に動かし、高い位置のまま完全に水平移動させる。通常は肩を前に出しても、後ろに下げても、高さが低くなりがちだが、高度をキープしたまま、力まずやる。
 第八段は「脱力下位前後」。これも第五段の反対があったように、第七段の反対。肩を一番低い状態で、その高さを正確に維持したまま、肩を完全に水平に大きく前後に動かす(この第八段だけでも、「肩こりが解消しそうだ」と実感される人も多いでしょう―とあるが低い位置に肩がいかないからそんな感じが全くしないのだが…)。
 第九段「脱力後回正円法」で、第二法の最後となる。第一段から第八段までの鍛錬を活かして、肩で正しい円=正円を描く。前から上、上から後ろ、 後ろから下ときれいに大きく正円で回せるようになると。
 肩を一番持っていきづらいポジションは、当然最大可動範囲の頂点。上の後、下の後、下の前、上の前の四つ。四角いラインの角の部分、四つの死点。円だから四死点は無視するという姿勢でいると、本格的なトレーニングにはならない。一番持っていきづらい位置まできちっとトレーニングしておくことで、はじめて大きくきれいな円が描けるようになると。
 *3
 
 
■大宮司朗霊術講座「急所を突かれても利かない技」
 水月を撃たれても効かない、水月受身術の話です。

松原秀樹100%動き切るための調整術
 シソの実エキス、植物マグマがイイよ!という話がしてあります。アレルギーなので試してみたいのですが、あんまり大々的に流通してないみたいですね。ドラッグストアとか、沢山漢方とかサプリとか色んな健康食品的なものおいてあるところでも、なかなかおいてあるお店を見かけませんからね。前も書いたかもしれませんが、興味を持って氏のHPを覗いたら取扱停止になっています。何故なのか?
 *4

*1:第一段はヨガで言う猫の背伸びのポーズでいいのかな?それですね、で第二段がコブラのポーズ。両方共犬猫がよくやる伸び動作なのでそれを連想しますね

*2:文中でも肩を脱力して行うことが何度も書かれている。毎回のことだがそれくらい脱力を忘れやすい、ゆるむことは難しいということだろう

*3:最後に、人間の関節・骨格構造を考えてみると、いわゆる単関節につながっている一本の骨がレバー状に動くと、通常は円運動しかできない。しかし、肩まわりは違う。腕の骨と体幹の骨格が関節でつながっているのは鎖骨だけで、あとは筋肉でつながっている。さらに胸鎖関節の上台となっている部分も、肋骨と胸骨。
 前述のように、肩がスクエア状の角の死点を攻めていくように動かすということは、鎖骨のクランク運動の限界を超える必要がある。 したがってこの運動は、胸鎖関節を通して、肋骨や胸骨の動きを引き出す方法でもある。―という話があるのだが、肋骨・胸骨・鎖骨が連動して自在に動かせるようになることで関節の単純な円運動を超えることが出来る、精妙な動きが生まれるということでいいのかな?

*4:一応目次載っけときます
巻頭特集 武の先にある身体の理で“直す(ただす)”! 武術印のカラダ活法 東洋医学×西洋ボディワーク
旧・武術稽古研究会対談 日本活法整体 碓井流活法
インド伝統武術カラリパヤット
秘伝オイルマッサージ ロシア古武術ステマ スティックコンディショニング
コラム 川上 仁一 忍者に伝わる自己調整術
特別企画・連載 追悼 岡本正剛師範(大東流合気柔術六方会) 武術史を変えた合気の“具現者”
村祭りの余興、競技会有りきの伝承 朝鮮古来の武芸「テッキョン
新シリーズ! 護身術と武術の型に関するもう一つの私的な見解 平直行の「グレイシー護身術」武的考察
塩田国際合気道連盟(SIAF)・塩田泰久師範、ご子息の将大氏と登場 三代にわたる合気 塩田剛三の合気を伝えていく決意
ゆる体操には“裏”の存在があった! 高岡英夫の漢語由流体操「肩肋後回法6」
湯川進太郎 心理学から解く武道と日常構造「武道と健康」
空手の聖地沖縄で存在を示す中国武術家 天行健中国武術館 宮平保の中国武術戦闘理論
平上信行 武術秘伝書夢世界
ベテラン劇画作家は古流剣術の達人!? 漫画家とみ新蔵師インタビュー「剣の理を体現し、劇画に描く!」
黒田鉄山 鉄山に訊け「無足の動き」
時代考証の表裏 平上信行が“現代”日本武道を斬る「時代劇などにおける古流柔術
注目のガチバトル! 日本甲冑VS西洋甲冑 STEEL! 第2回リーグマッチレポート 第5回撃剣大会レビュー&誠斬会・籏谷嘉辰師範に訊く 研ぎ師・刀剣商・真剣試合……日本刀剣への熱き情熱!
宮司朗 霊術講座「急所を突かれても利かない技」
安田洋介 太極遊戯「陳氏太極拳における陰陽のバランス」
日野晃 武道者徒歩記
松原秀樹 100%動き切るための調整術
増田俊也「続・七帝柔道記」

【山中慎介VSルイス・ネリ戦解説⑤】 予見できた不正を防げなかったJBCと帝拳ジム。厳格な不正防止策を講じよ

 【山中慎介VSルイス・ネリ戦解説④】 ドーピングは体重超過よりはるかに悪質な問題―の続きです。この話分割なので、④書いた時点で殆ど書き終わっていたのに、比嘉大吾の記事を書いていて更新・公開忘れていました(^ ^;)。いつの話だよ、おいィィィイー、半年前の話じゃぁねーかァァアー!(銀魂)ってくらい前ですね。実際にこれ書いたのは4月でした…。まあ公開忘れるのは、いつものことですけどね。他の記事書いたり、調べたり、疲れてやる気なくして放置してたらこのザマよってパティーンです。疲れるとやる気と体力が回復するまで放置しないと書けなくなりましたね、ほんともう歳でブログ更新する気になれなくなりましたね。
 そんなことはさておいて、ボクシング関係の話。ボクシング記事は需要ないので基本的にどうでも良いですね。誰か注目して追っかけてる選手がいるわけでもないので、尚更です。そんな需要ないはずのボクシング記事なのに、何故か比嘉大吾の一件で書いた記事が無茶苦茶伸びました。情報・続報がないので皆さんググるんでしょうが、なぜグーグル先生が拙記事をWiki、公式ツイッターに続けて3番目に持ってきているのか…、謎であります。グーグル先生が拙記事を以って比嘉支援をしているということなのか(いや、チガウ)。
 そうじゃない、そんなどうでもいい話をしたいわけじゃあない。今回書きたいのは、こちらのブログの話・紹介。それを一度拙ブログ内で一度きっちりしておきたかった。俺が出版とかマジ無理じゃね?というブログがありまして、こちらのブログ、ボクシング解説が本当に面白かったので、一回そのことを書いておきたかったんですね。今後いつボクシング関係のこと書くかわかりませんし、今のうちに書いておかないと今後ボクシングの話題は二度とか書かないかもしれないので。
 多分、ボクシングヲタとかファンだったら常識なんでしょうけどね、こちらのサイトは。それくらいボクシング解説が的確で面白い。読んでいてためになることが多かった。書き手の視点が拙視点と重なるところが多いということよりも、書き方がフェアであるというか、わかっているなぁというポイントをきちんと抑えているんですよね。ああ、そこは自分とはチガウなという見方だった時でも(勿論己のほうが正しいという意味ではなくて)、まあそういう見方・視点もあるよねと納得できるし、読み手に対する配慮がある。巷に出て来るボクオタ批判・認識のおかしさの指摘とか、本当納得。話の持って行き方がいいんですよね。
 こんな書き方でこのサイトGoodやね!いいよね!という主張が伝わるかどうかアレですが、ずっと昔にこの記事→亀田兄弟がおもしろいこと始めたぞ!! JBCに6億6000万訴訟? 北村弁護士と強力タッグで損害賠償裁判スタート。日本のジム制度にも切りこむ「亀田兄弟の今後が見えた? これが亀田の進む道。日本ボクシング界の常識をひっくり返せ」―を読んで、面白いなと思ったことがあったんですね。前園が海外クラブからオファーを受けたが、これまで誰も海外移籍をしたことがなかったからどうすればいいかわからなかった。その状況と世界のトップクラスの選手が挑戦できない今のボクシング界は非常によく似ているという話がすごく印象に残っていた。
 だから読んでいて、ああこの記事書いた人かと、すぐに思い出したんですね。その時、何件か読んでそのままでしたが、今回山中慎介戦の試合解説でググって、亀田戦とか内山高志戦の解説とか、色々読んでものすごい参考になったんで、ぜひこのサイトが面白いよ!凄いよ!と書いておきたいなと思いました。内山高志の敗戦を解説した記事をいつか分割しようと思うも放置していましたが、こちらを読んで、ああそういうことだったのかという気づきがあったので、改めて加筆したいなと思いました。内山高志への特別な思い入れというのも、個人的に重なったので、ますます記事読んでいてこちらのボクシング解説・視点に夢中になりましたね。
 亀田1が、河野戦でいつものようにディフェンシブに戦わなかった理由とか、亀田2が2階級上の相手とまともに戦った。亀田家で一番才能があったという話とか本当に面白かったですね。ということで、万一知らない方がいらっしゃったら、こんな訳わかんないボクシング解説記事を読んでないで、こちらのサイトを参考になさることをオススメします。本当、そこから20件以上、気になった選手関係の記事読みましたから。読んでいて本当面白いですよ、このサイト。*1
 そんなことはおいといて、山中慎介のルイス・ネリ戦で語りきっていなかった話をしていきたいと思います。

⬛再戦での本田会長の問題            
 初戦の本田会長の問題を指摘した次、再戦での問題を指摘したいと思います。先に書いたようにそもそも再戦すること自体がおかしい。するならするで、再戦の条件を厳密に詰めておかなかったこともおかしい。厳しいハードルをクリアしない限り再戦を認めてはいけなかった、この時点ですでにネリの違反行為は見逃されたようなもの。この時点で今回のネリの暴挙を食い止められなかったのですから、もうアウトですね。
 「引退させるつもりだった」「やるならネリとの再戦しかない」など、なんで本人の意向を飛ばして会長が発言するのか?という疑問・違和感もありましたが、とにかく再戦をすることになりました。しかし、実のところ、この時点で山中が勝つという予想を立てた識者は殆どいなかったんですね。ネリが卑怯者・反則野郎という事実をおいといても、もう山中はネリには勝てないだろうというのが前提・常識としてあったのです。
 試合を迎えた時点で35歳という山中の年齢を考えると、まず勝てない。ネリ戦の前にすでにもうピークを過ぎた兆候は幾つも出ていて、防衛記録を作ることが目的になっていた。その目的のために最後の試合をするという流れが最初のネリ戦の時点ですでにあった。勝っても負けても引退という話が囁かれていたくらいですからね。ネリがドーピングをしていなくても、本当に山中が勝てただろうか?という事を言う人も出てくるくらいですから。*2

⬛再戦で敗れた側が勝つのは難しい        
 亀田和毅や山中自身のモレノ戦。そして内山のコラレスとの再戦などを見てもわかるように、再戦・ダイレクトリマッチで勝利するというのは非常に難しい。一度負けた相手と間を開けずにまたやって勝つというのは殆どありえない。そこに山中の衰えという要素を考慮すれば、山中サイドはマイナス要素が増す一方なのに対して、ネリサイドはプラス要素しかない。一回り若いネリは調整失敗以外は、練習して新しい技術を身につけて成長するプラス要素しかないですからね。
 内山戦の解説で書いたように、これまでのスタイルとは別の特別な戦法・技術やファイトスタイルの転換が求められる。そういう特別な対策・戦術でもない限り勝つ目はない。これまでしたことがないインファイト・接近戦の練習をしたと報道されたように、そういう認識はあったのでしょうけど、正直それくらいでは全然足りない。山中は本来右利きだが、左で箸を使う・文字を書くというような両利きと言っていい要素があって、それを活かすために両利きスタイル。サイドチェンジ・スイッチをする。また縦系のパンチ、ストレートが持ち味なわけですが、それを主体にするのではなく横の動きで回りながら戦うとか、根本的にこれまでやったことのないことをするしかない。*3
 辰吉がウィラポンと闘うには最初のエンジンがかかる前、早いラウンドで勝負をつけるしかないということを言っていたように、またガッツ石松だったか誰か忘れましたが(輪島だったかな?)、数少ないダイレクトリマッチ(もしくはリマッチ)での勝利の経験があったチャンピオンが語るには、「同じように戦ったら絶対負けるから、初めの数ラウンドで全力を出し切るくらいの勢いで行かないといけない」と語っていたように、負けた側は同じようにやったら絶対に負ける。電撃戦位の感覚で、最初の4R以内で必ずKOする。後のことは知らない。後は野となれ山となれくらいの大胆な戦術が必要となる。相手の強さは前回の試合で大体わかった。相手の癖・スタイルもわかったから、次はこうやれば勝てるなんて言うのは絶対やってはいけない態度。なぜなら相手もそれを踏まえてさらなる対策を練ってくるからその対策がハマることは考えにくいからです。この誤りを犯したのがまさに山中に返り討ちにあったモレノでしょうね*4
 まあ、そういうダイレクトリマッチの鉄則をおいといても、まず衰えた山中は勝てなかったと思います。山中は勝つことが目的ではなく、再戦すること自体が目的のように映りましたから。

⬛KOされた側はそのパンチを過剰に意識して劣勢になる
 本来、あそこで負けた時点でもう終わり。しかしドーピング疑惑が持ち上がったために、そういうケチがつく敗戦は認められない。だからもう一度やらない訳にはいかない。そういう動機からの敗戦濃厚でも試合に挑んだと類推出来るのですが、一度負けた相手というのはパンチの恐怖が染み付いてしまっているので無理があるのですね。どうしたってKOされたパンチを過度に意識して戦わなくてはいけない。
 内山のように見えなかったパンチをマークして、手数・パンチの種類を制限されたり、積極的に行くべきところをどうしてもディフェンス重視で前に出れなかったり、手が出せないということになってしまう。もらったパンチをあとから映像で再検証したりして、どうしても特定のパンチをマーク・過度に意識する。そうしなくては戦いにならない。勝利した側は相手がそういう風に意識してくれるのなら、その意識を利用して他のパンチを当てればいいので、戦いを有利に運べる。そういう図式が成立するので、敗者は勝負する前から不利なんですね。それこそ一ヶ月・二ヶ月位で間が空かずに再戦できればいいのでしょうけど、一年近く間が空いて対策をしっかり練れば練るほど警戒する意識は無意識レベルにまで染み込んで却って過剰反応を引き起こしてしまうでしょう。
 本能で闘うタイプ、学習などをあまり必要としない闘争本能全開で闘うタイプならその点問題ないのですが(学習能力が低くて試合ごとに相手への対策があまり上手く出来ないという問題点は別に存在しますが)、日本のボクサーは基本、アマ上がりの優等生タイプばかり。ボクシングではなく、殺し合い感覚で挑んで相手の耳を噛み付くようなタイプは滅多にいないので、まずダイレクトリマッチは無理だと考えたほうがいいでしょう。

⬛敗北必至の戦いに挑んだ山中の意識とは?     
 やっても勝つ目は殆ど無い。ではどうしてそんな無謀なダイレクトリマッチをやるのか?それは山中自身の個人的な思い入れ。彼のボクシング人生の集大成のため。キャリアの最後を飾る引退試合・節目としてでしょう。卑怯な行為で敗れたとしても、再戦をしない訳にはいかない。自分を破ったということは強いことには違いない。最後に満足行く強い相手は誰かと言えばネリだったということですね。負けた相手にやり返したいという動機もあるでしょうし。
 ※追記、てっきりそういう意識だと思っていたら、後日見た映像で、長谷川穂積元王者がスパーリングパートナーを買って出て、スパー後のインタビューで「今回の試合の勝率は5分5分だと思う」と言うワンシーンがありました。これを見て正直違和感しかありませんでした。まあ、これから試合をするという本人に向かって、「お前、絶対負けるぞ」なんて言えるわけ無いですから、リップサービスだとしても、勝つ確率は2:8、どんなに多くても3:7。普通に考えたらどんなに多くても、山中が勝つ確率は30%というところでしょう。敢えて多めに見積もって鼓舞したというよりも、その当たり前のことを、山中も長谷川も解っていなかったのでは…?という疑問があります。今回の事件で体重超過やネリという卑怯者が注目されたわけですが、実際体重超過をしなくともネリ優位は揺るがなかったでしょう。なんでそんなことをわざわざしたのかな?と逆に疑問が生まれるくらいです。
 前回はクスリの力があった。今回はクスリがつかえない。故にパワーで押しきれない危険性がある。だから体重超過で勝ちに行ったと考えられるわけですが、前述通り反則・ドーピング込みで戦ったという過程はどうあれ一度勝っている。そのイメージがある以上、年齢を加味してもネリの絶対的な優位は覆らない。山中がネリの踏み込んでからの右ストレート・右フックに対応できるとは思えない。
 そういう前提を考慮すると、帝拳サイドが対策を怠ったこと以上に、ネリサイドがそんな馬鹿なことをしたのはなぜなのか?ということになるわけですね。日本ボクシング界で有数の帝拳ジムに喧嘩を売る暴挙もそうですし、まず普通にやっても負けないでしょう。それほど山中のポテンシャル・スーパーというかスペシャルな世界王者としての底力を警戒していたということでしょうか?まあ単純に本人と陣営がバカなんでしょうけど、そういう卑怯な行為に出させた山中というのは老いたと言えども相手を恐れさせた、死せる孔明生ける仲達を走らす的な価値があったとも言えるでしょう。逆にネリが山中というボクサーを恐れた結果、最大限敬意を払ったとも見ることが可能なんですね(一応は)。

⬛大和氏をセコンドから外すという選択で結果は既に見えていた 
 話を戻して、山中と長谷川の認識の話。事前の認識・戦略が間違っていれば困難な試合に挑んで勝てるわけがない。そんな話は今更なのでどうでもいいとして、ポイントはセコンド・トレーナーを変更したこと。これですね。前回書いたように共に歩んできたパートナー、相棒を大事な最後の試合で見捨てたこと。これが本当に疑問というか、個人的には許すことの出来ない・看過できない決断でしたね。前回述べたように、世界中の誰がやれたと言ったとしても、セコンドの大和氏がダメだという判断を下したらもうアウト。そういう信頼関係のもとでボクサーとセコンドは成り立っているはず。戦う上で自分の拳以外、誰よりもナニよりも信頼して任せる大事なパートナーであるセコンドを信頼できない時点でもう無理。そういう基本が出来ていなかったこと。セコンドとの関係を築くという当たり前のことが出来ていなかった、この時点でああ、もう絶対無理だろうな、奇跡は起こらないだろうなと思いました。最後の最後に出る力というのはこれまでの積み重ね、それを直前で否定しているわけですから何をか言わんや。何より失礼でしょう、これまで共に歩んできた裏方に対して。失敗・敗北にはすべからく理由がある。故に個人的には何の違和感もない結果でしたね。

⬛図らずとも注目すべきリボリオ・ソリス体重超過事件   
 あと長谷川さんなのですが、体重超過でネリのことを批判していたんですが、亀田大毅の時は「負けても王座なら試合をする必要はない。JBCよ正しい道に導いてくれ」ということをブログに書いていましたよね?王座維持自体について疑問を唱えるのは良いですが、ソリスの体重超過&大幅増量という反則・卑怯な行為について言及せずというのはおかしい。それならば今回のネリを卑怯だ云々いうことは出来ないはず。ソリスは良くて、どうしてネリはだめなんでしょうか?ちょっと理解できないですね…。
 図らずとも今回のネリ事件で、亀田大毅のソリスの体重超過事件に再注目せざるを得なくなったわけですが、ソリスは1kgオーバーして当日更に6kg増量して、大毅とは3.5kg差あった…。大毅は2階級上の選手と試合したわけですね、これはヒドイ…。当時、「何だつまんねー試合しやがって、だめだこりゃ、将来性ないわ」とか思ってましたが、明確な体重差・パワー差があったわけですね。そりゃそうなるわ…。大毅くん、ボロカスに言ってごめんなさい(>人<)。IBFの立会人が、負けても王座という説明をしたのは、違反相手がIBF規定の4kgの枠を守った場合は負けて王座を失う。しかし、その規定を守れないのならば当然、負けても王座は維持されるという当たり前のルール上の規定だったのでは…?6kg増で二階級近い差がある選手に負けて王座剥奪は普通に考えて可愛そすぎるでしょう。まずありえない話ですよね…。というかよく試合をしましたよね、これ。体重差で二階級上の相手とやらせる決断を下したのは誰なのでしょうか?JBCの問題、亀田ジム承認取り消し云々以外にも、試合を強行した亀田ジムサイドも今回の帝拳ジム同じく、問題ありとして責任を問われるべき失態と言えますね。<まで追記終わり>

⬛勝てない試合≒引退興行をフイにした本田会長とJBC   
 追記して脱線した話を戻して、勝てないにせよ、そういう節目として試合をするということですから、最後の花道を飾る上でしっかり準備してやらないといけない。その準備をしっかりやらなかった。怠った本田会長には疑問しかありません。ドーピングをするような相手ですから、何をするかわからない。今回は試合前の検査でチェックはシロでした。しかし、体重超過という別の卑怯な手段に出てきた。
 ボクシングでは体重を作らないで失格・王座剥奪となっても試合をするというケースが頻発している。王座・タイトルを失格で失おうとも、自身の商品価値を下げないために減量をせずに、体重を超過して闘うというケースが多発している。直近だと亀田大毅の一戦で、負けても王者のまま騒動ですかね?亀田ジムが閉鎖に追い込まれたきっかけで、話題にもなったので記憶している方は多いでしょう(↑で追記したので話の流れがおかしくなってますが、スルーしてください)。
 全く前例のない行為ではなく、そういう可能性も十分にあるだろうなという予想範囲内の反則なんですね、ネリの体重超過は。ただ今回のネリほど体重を明らかにオーバーしてきたケースは珍しかった、非常に悪質なケースだったということに違いはないのですが、問題はそこではありません。
 問題は、このような反則行為・ルール違反が事前に十分想定出来たのにもかかわらず、きちんとした対策を本田会長及びJBCがとってこなかったことにあります。JBCは亀田サイドの説明不足云々などで負けても王座ということの責任を問うていましたが(正確には事前発表との結果の食い違いですが)、それはそれとして亀田大毅VSリボリオ・ソリス戦でそういった体重超過があったのですから、今回のような問題が発生することは十分に予見できた。にもかかわらずその防止・対策に取り込んでこなかったことを我々は決して見過ごしてはならないでしょう。
 海外ではこのような体重超過は危険であり、試合を開催するなんてありえないという指摘をしていた意見がありましたが、そのとおりでしょう。こんな危険な行為を認めるなんてどうかしているとしか思えません。岩佐選手がボクシングという競技への冒涜だと憤っていましたが、そのとおりでしょう。そしてこういう冒涜を認めてはならない。試合が開催されてはならないのです。帝拳ジムJBCはネリの共犯と言っても過言ではないでしょう。

⬛運営側には不正を許す余地を残していた・放置していた責任がある
 テレビ中継があるから、山中の最後の試合だから中止するわけにはいかなかったという言い訳は成立しません。むしろテレビ中継があるからこそ体重超過でも不成立・キャンセルになることはないと見込んだ犯罪者にその状況を悪用されるだけです。アメリカではキャンセルの際に発生する損失に対して保険をかけられるようになっているといいますし、そういった対策をきちんと模索して然るべき対策を講じておくべきでした。
 日本ではそういう保険契約が成立しない可能性はもちろんあるので、相手サイドに体重超過の際に重い罰則を課す、体重超過をしたら間違いなく負けるようなハンデを課すようにするなど。いくらでも対策は考えられたはずです。
 個人的に、犯罪者につけ入るスキを多分に残したガバガバ警備体制を取って、財宝を盗まれました!と文句をつけている様に映ります。そりゃ盗んだ泥棒が一番悪いに違いはありませんが、管理者・責任者として、泥棒に盗まれて当然の体制を敷いたトップの責任は大きい。この責任を追求しなければ何度でも泥棒に入られて財産を盗まれることになる。そうやって業界全体が腐敗して消えていくことは想像するに難くない。ボクシング界全体、WBCJBC、そして本田会長の責任は極めて重い
 そもそもなんですけど、ジムごとに放映局の縛りがあるような異常な状態をJBCが放置してきたからこそ、こういう馬鹿なことになる。放映権もそれこそ入札制度のようなものにして、試合の放映権を売ってJBCに収入が入って再配分するようなシステム、業界全体が潤うような体制を整備しておかなくてはいけなかった。そういう当然なされるべき改革を放棄し続けた結果が、今回の一方的な暴力に近い行為≒リンチに近い山中のKO負けという悲惨な事態があるのですから、JBCの機能不全は徹底的に叩かれるべきでしょう。
 放映権をその都度販売する形にすれば、たとえ今回のようなビッグマッチでキャンセルが発生しても、次のビッグマッチで優先的に放映を割り当てるということで補填できるのですからね。いずれにせよJBCの改革の放棄・組織の機能不全が一選手、レジェンド選手のリング禍を招きかねない失態を招いたことを我々はよく覚えておく必要があるでしょう。
 相撲協会が馬鹿みたいに叩かれていますが、JBCの機能不全というのは、ある意味相撲協会よりもひどいんです。内輪の元選手・関係者だけで閉鎖的に運営される組織というものは、ビジョンを持ち経営能力を持つ優秀なトップでも出て来ない限り、正常なものになることはない。優れた改革がなされて業界が健全に保たれることは考えにくい。こういう形態の組織は極めて不健全なものになりやすい。相撲協会JBCもいい加減外部から優秀な人材を連れて来るでもしないともうダメなんですよ

⬛商品価値を高めるためにボクサーは不正を厭わない    
 で、体重超過対策なんですが、リンクにあるようにボクシング界では団体・階級が乱立して、世界王者・チャンピオンというタイトルの価値が低くなった。静岡県で鈴木さんと呼びかけたら、3人に1人が振り返るように、ベガスでハイ!チャンピオン!ハイ、シリ!オッケーグーグル!で呼びかければ何十人(下手したら元王者込みで百人位)も振り返るように、タイトル一つだけでは何ら意味がなくなったわけです。
 なのでボクサーとしての商品価値を高めるために、団体統一チャンピオンや三階級制覇など、少しでも自分の価値を高めようとするわけです。複数階級制覇した王者も統一チャンピオンも今や珍しくない時代。当然それでも突出した価値にはならない。
 現在一番商品価値を高めるのに有力な方法は、KO勝利率を極めて高くしておくこと&無敗をキープすること。そういうレコードを維持しながら、人気選手・商品価値の高い選手と戦って勝つことですね。デビュー戦がメイウェザーというマクレガーのようなことは起こりえないので、ビッグマッチが組めるようになるまで高KO率&無敗は重要なファクターになるわけですね(例外としてオリンピックメダリストというのもありますが、まあ今回は関係ないので置いときます)。
 というわけで、殆どのボクサーは自身の商品価値を高めるためにというより、商品価値を失わないように体重超過で試合に挑むことをためらわないわけですね。プロモーターやテレビ制作者が体重超過の試合は参考にしない、そういうボクサーの試合を組みたがらないという暗黙の了解・ルールを作らない限りはこの傾向は消えないでしょう。
 リンク*5にあるように、当然想定されるのは罰金の高額化・出場停止の長期間化の2つでしょう。それでも世界戦だったり、注目されるビッグマッチ以外はその傾向が進むことはなく、世界戦よりも前の段階で体重超過の不正状況が減ることは考えづらいでしょうね。

⬛体重超過・違反者に有利にならない措置を採るべき    
 で、またそもそも論なんですけど、体重超過クソ野郎と試合をするのならば、今回の再戦のような58kg契約にしてはダメなんですよ。山中が以後の体重管理・食事などは自由でOKにさせておく一方、ネリについては以後医者の指導の元、必要最小限の水分・食事以外は許さない。山中が58kgなら、ネリは54kg前後のフラフラ状態で試合をさせなければ意味がない。何度でもいいますが、なんで体重を作ってこなかった方が損をするのか、契約を守れないどころか意図的に契約破りをするようなクズが得をするようなバカなシステムを採用しているのか理解できません。
 健康状態に問題がでてきてしまう。それこそ山中が半病人のような状態の選手を一方的に殴りつける行為を好まない。後味の悪い思いをしたくないというのもあるでしょう。また、それこそ防衛記録など何らかのレコード記録更新がかかっていた試合だったら、後日必ずケチが付きますからね。記録更新は偉大だけど、相手がリミットオーバーでボーナスゲームのような状態だった試合で新記録達成して果たしてどれくらい価値があるのか?と言われてしまいますからね…。それこそ亀田の防衛記録のように弱いやつとばっかりやって、防衛回数伸ばしても…ということになってしまいますから。そういうことを言われたくない以上、相手の実力を必要以上に制限するようなハンデキャップマッチは被害者側も嫌がるという性質もある。自分のパンチで相手に怪我や障害を与えかねないという競技の性質を考えると尚更ですね。
 グローブを大きくするなどの対策もありますが、そこまで意味を持つか疑問ですので、リストやアンクルに重りを付けて動きを制限するというのも考えられるでしょうか?まあ、実際やってみてもらわないとどれくらい有効かわかりません。一番いいのは被害者側がヘッドギアやボディへの防具・プロテクター着用でしょうか?相手の能力を削ぐのに効果的な方法があまり見当たらないですからね。それこそ逆ドーピングで運動能力を落とすクスリを服用させるというのも倫理的にも健康的にも問題でしょうから。
 今回バンタム級でリミットオーバーを犯したので、バンタム級以下では以後戦えないというルールが最も好ましいでしょうね。一度でもリミットを作れなければ、以後その階級での試合禁止となれば罰則としてかなり効果的になるかと思います。ウェイトを作ってこれないということはそもそもその階級でやれる身体ではないということですからね。*6

⬛ボクシングを体重増やし・戻しゲームにするな
 昔書いたんですけど、そもそも体重制がフェアといえるものなのかどうか疑問が残る。身長はまだいいとして、リーチがものを言う競技で、なんでリーチ差は許されるのか?明らかに体格の違う選手が試合することがたまに見られるが、それはいいのか?そういう疑問が必ず出てくる。
 身長もリーチも調整しようがないから、体重で階級を分けることが一番簡易。やりやすいしわかりやすいということでそれはそれでいいかと思います。しかし、計量後の明らかに度を超えた増量は問題がある。我々はネリの体重超過で忘れていることがあるのですが、山中の試合当日の体重は59.2kgで、ネリが60.1kg。その差が900gしかなかった云々という見当はずれの指摘もありましたが*7、ポイントはそこではなく、この二人の試合直前の体重は4階級上のライト級に相当します。「じゃあさ、二人共ライト級でやれよ」という話になるでしょう、普通は。
 もちろん、ライト級のリミットではないのでスーパーフェザーが適正になるのでしょうが。計量後に8kg近く増量して試合に挑むというのはやはり違和感がある。ひどい場合には10kg近く増量してくる、別人になって出てくるという話もあるくらいです。テレビで亀田和毅が「あれ、誰こいつ?お兄さんかお父さんが間違って出てきたのかな?」と冗談を言ってましたが、一回りどころか二回り大きくなって別人のようなボクサーの絵が紹介されていたので上の階級に行けば、それこそ15kg再増量して試合をする選手もザラにいるのでしょう。*8
 こういった前日計量をパスしさえすれば、あとはやりたい放題という状況はやはりおかしいでしょう。ボクシングの勝負・技量勝負というより、体重増やしゲーム・内臓頑丈勝負になってしまっている。ある程度そういう要素が入ってくるのは競技の性質上仕方ないにせよ、これでは体重増やし大食いゲーム大会要素が強すぎる。IBFが再増量は4kgまで、つまり二階級上までというルールを採用していますが、これを見ると4団体の中で一番フェアだと言えるでしょう。しかしこれでは十分とは言えない。ボクシングの現状を考えて過度の減量&再増量は禁止すべき、統一ルールを作るべきですね。別に下限がいくらでもいいと思うんですが、4kg以上の減量が禁止というリミットが出来れば、今回のような騒動はそもそも起こりえないわけですからね。ボクシングは減量・再増量のリミットを設けよ、これが結論ですね。健康面の問題も考慮して、一体どのくらいの数字が適正なのか、試行錯誤して基準を設けてルール化すべきでしょう。

 関係する話のリンクを下に貼っときます。デイリーの記事にあるように、帝拳ジムが再戦ビジネスの利権に目がくらんだと言われてもしょうがない失態ですよね、今回の事件は。
 どうでもいいことですが、リンクにも貼ったこの記事のサムネ。

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この山中の手を掲げているネリがポプテピのこの絵のポプ子と被ってしょうがない(笑)。「私のために、争わないで~」と言ってるように見えてしまう(笑)。そんなどうでもいいことを最後に書いて、この話おしまいです。

*1:ただコメント欄がないんですよね、ここのサイト。亀田和毅が身長157センチという?なものがあったので、コメントで教えてあげたいと思ったんですけど、出来ませんでした。167センチをタイプミスしたのか?175センチと思いこんでいたのを逆に書いてしまったのか?どうなんでしょうか。Wikiだと亀田和毅は170センチでしたね、もっとあると思っていたらそんなサイズだったんですね、3男は。

*2:ドーピングなし=パワーダウンしていた時点でどのくらいの差が生まれるのかわかりませんが、試合を決定づけたネリの左にスイッチしての右ストレート・右フックの対処が出来たとは思えませんからね、事前にその対策を十分にしていないかぎりまず対処不可能だと思いますからね

*3:個人的にストレート=縦系のパンチ、フック=横系のパンチという分類をしています

*4:また逆に勝つために、ダイレクトリマッチのセオリー通りに、より積極的に打って出ていって、その分返り討ちにあったと考えることも出来ますね

*5:山中×ネリ戦の教訓。ふざけた体重超過ボクサーを、どう懲らしめるか

*6:ーということを考えていたら、【比嘉大吾体重超過事件】 無期限資格停止処分だと!ふざけるなJBC…ってあれ?JBCがまともだと…!? で書いたように、JBCは強制転級措置を設けましたね。ひとまずこれで落ち着くと思いますが、海外選手はどうなるかと言われると…。まあ世界中のコミッションに働きかけて似たようなルールを採用してもらうしかないでしょうね

*7:一旦体重を落としきった選手とそうでない選手ではコンディションがまるで異なる。長谷川も言ってましたが、当日の体重差が900gしかなかったので両者のコンディションにそこまで違いはないという見当違いな記事があったんですね。→さらば山中慎介、「夢以上」のキャリアと日本ボクシング界に残したテーマ 。パワーではなく見えなかったから聞いたという主張から山中の過度な神格化は危険だという指摘があります。それも一理あるのですが、試合前に既に山中は平常心ではなかった。技術以前の体格差≒コンディションの違いによるパワー差を過度に恐れていたように見えました。事実最初の立ち上がりで一発もらったことで怖気づいたように見え、対照的にネリは山中のパンチにパワーを感じないことでイケると余裕を持って詰めに行ったように見えましたからね。「見えなかった」理由は視力の衰えなんかあったとしても間違いなくパワー差による相手のパンチを警戒した上で、カバーしきれない種類や角度のパンチを貰ったということでしょうから

*8:昔、はじめの一歩で鷹村が初世界戦でヘビー級からジュニアミドル級まで6階級落とすというストーリーで感動したものですが、現今ボクシング事情を知るとむしろ超卑怯者に映りますね…。20kg以上試合後に増やして、どう少なく見積もっても10kg近い体重差で自分より小さい人間を一方的にフルボッコにしたということですからね…。近い将来、あれ?鷹村って超卑怯者じゃね?とネタにされるでしょうねぇ…(もうなってるかもしれませんが)。