別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

中畑清は筒香嘉智を育てていない、むしろ干している。育てたのは大村巌コーチ

タイトル通り、中畑清DeNA監督は筒香嘉智を育てていない。育てたのは大村巌コーチ(現ロッテコーチ)という話をしたいと思います。

 この話を絶対にしておかなくてはならないと思うのは、何故か、中畑清が筒香嘉智を育てたという意見を唱える人があまりにも多いからです。また、中畑ファンなのか何なのかよくわかりませんが、あまりにも中畑を称えて、ラミレスを落とすような手合がいて、うんざりしたからです。

 またいつものことなのですが、「中畑の遺産」という地雷ワードを平気で主張していた手合もいました。あまりにバカっぽいので、試しに「どうして中畑が筒香を育てたって言うことになるの?中畑は関係ないでしょ」とツッコミを入れたら、急にキレだして「中畑が育てたぞ、そういう記事もある」とのこと。そして「具体的には、どういう貢献があったの?」と尋ねると、「てめえで調べろ」とのこと。

 まあ、もう相手にするのも馬鹿らしいので放っといたのですが、もしかしたら中畑がなんらかの指導によって、筒香覚醒の一助を担ったのかもしれないと検索をかけてみました。するとこんな記事が出てきました(他には見当たりませんでした)。

■キャンプ追放で選手を育てたという謎論理
 中畑監督 秋季キャンプに筒香連れていかない「荒療治」― スポニチ―もうね…。バカでしょというしかない。これを読んで、中畑が筒香を育てたなんて主張する頭の悪い人間がかくも多いと思うとうんざりします。どうして、キレて選手をキャンプから追放したら、監督がその選手を育てたなんてことになるんでしょうか?そんなのはこの記事を書いている記者の主観に過ぎないではないですか。具体的根拠のかけらもない。そんなことを言うのなら、今年(去年かな?)キャンプで体ができていないという理由で、イーグルスの梨田監督はオコエをキャンプから追放しましたが、オコエが一流プレーヤーになった時、梨田がオコエを育てたという論理が成立してしまうではないですか。

 もう、バカでしょ(二回目)。リテラシーのかけらもないのか。こんなロジックが大手を振ってまかり通る現状を見ると本当にうんざりします。

■筒香嘉智育成に貢献があったのは名伯楽大村巌
 安心と信頼の日本ハムファイターズブランド産の大村巌コーチが筒香の指導を手がけましたが、始まりは2年前。DeNA筒香嘉智はいかにして覚醒したのか?―こちらの記事を読んでも分かる通り、どうみても彼が筒香を指導したからこそ、飛躍を遂げたとするのが自然でしょう。
 要約すると、二年連続でファームでHR王と、下では打っているが一軍では駄目という典型的な若手の伸び悩み枠。そこで大村巌コーチが、筒香本人はどういう打者になりたいか、どういうバッティングをしたいのか整理して、方針を決めてあげた。これまでは他の人のアドバイスを聞いて、色々フォームを変えていた。それが却ってマイナスになったので、何でもかんでも手を出して失敗するより、一つのことを貫く方針に決めた。筒香本人はHRよりも犠牲フライなど、勝利に貢献出来るような確実性・打点を上げること、結果逆方向に打つことを重視していた。確率の低いHRよりも確実性を求める筒香は大村コーチがアドバイスする、確実に打つ技術をみるみる吸収していった。これを読めば大村コーチこそ、筒香嘉智を育てたと言って問題ないでしょう。

 そして大村コーチが主張するように、「私ではなく何より本人の努力が大きかった、筒香嘉智の自助努力が何よりも素晴らしかった」とみなすべきでしょう(ビジョントレーニングなど自分からプレーの質を上げる取り組みをしているようですしね)。*1

■根拠なき中畑の選手育成論は詭弁
 ここで言いたいのは、中畑清の貢献度合いが0だとか、むしろ邪魔してマイナスだった、-100だったとかということではありません。そりゃ、いくつか中畑氏がいい影響を与えたことがあっても不思議ではありませんからね。しかし、彼が育てたと彼の影響力が大きかったといえるほどの材料はない。大村コーチ程の成長に貢献したと言える具体的なものがない。個人的に知る限りでは、筒香が番組の対談で「中畑さんからは素振りの大切さを教わった」と言っているくらいで、中畑の貢献度が大きかったと裏付ける要素はない。日頃から今ある自分は中畑さんの指導のおかげということを言っているわけでもない。そういう根拠のない状態で、中畑が育てたと主張するのは限りなく嘘に近い。そういう言説を認めるべきではない。

■監督の起用が時に育成したと言えることもある。が、中畑前監督は筒香を辛抱強く起用してはいない
 また、打てない時期にも彼を辛抱強く、我慢して使い続けたのは中畑であり、一軍で貴重な実戦経験を与えた起用面での貢献がある。だからこそ中畑が筒香を育てたといえるという論理も成り立つかと思います。*2

 この「中畑監督が辛抱強く筒香を起用した結果」論を見て、確かに筒香を使うことは使ってはいたけども、弱小チームを再建する時、将来の大砲候補を使うのはむしろ当然のことで*3、フロントからある程度選手起用の方針は示されている以上、中畑の手柄といえることだろうか?と疑問に思っていました。

 そこで実際にどれくらい起用していたかチェックしてみると、むしろ全然起用していないというデータが出てきました。

筒香嘉智 打撃成績
 2012 108試合 446打席 386打数 84安打 10本塁打 51四球 打率.218 長打率.352 出塁率.309
 2013 23試合 56打席 51打数 11安打 1本塁打 3四球 打率.216 長打率.294 出塁率.286
 2014 114試合 461打席 410打数 123安打 22本塁打 47四球 打率.300 長打率.529 出塁率.373


―この数字を見た時に、監督一年目は筒香を辛抱強く使い続けたと言っていいかと思います。しかし二年目は全く使っていない。むしろ筒香を早めに見切って干していると言えるでしょう。

 筒香嘉智が飛躍した2014年のシーズンというのは、前述通り秋季キャンプから追放され、大村コーチと二人三脚でイチからフォームを作り始めてからの話です。そこから手応えを掴んで成長路線に乗った筒香の状況を考えると、12年に辛抱強く起用し続けたから筒香が成長したという説はあまり関係ないということが出来るでしょう(無論、試合に出続けたからこそ、相手に研究・対策されて壁にあたり試行錯誤するきっかけになったと言えるのでしょうが)。

 むしろ、12年・13年と起用に問題がある。将来性のある大砲とは言え、使い続ければいいというものではない。インコースの速い球が打てないとか、課題をハッキリさせたら、一度下に落としてその課題を克服する練習をさせて、課題をある程度克服して対応できるようになったり、状態が上がったりしてから上でもう一度使うなど、チームとしての取り組みを行わなくてはならない。選手を育てるなら一軍起用→課題発見→二軍で練習&克服→また一軍へ…―と言ったプロセスを踏まなくてはならない。

 数字が出ていない・結果が伴っていないのにもかかわらず、この2012年は明らかに筒香を起用しすぎです。結果が伴っていればともかく、結果の伴っていない高卒3年目・4年目の選手を適切なラインを超えて、起用し続ける意味がわかりません。むしろ、まだまだ体ができていない段階なのだから、怪我予防の観点から言っても、下に落としてトレーニングに当てるべきでしょう。また他にめぼしい選手がいないにせよ、他にも若手を起用しなければ、チームに実力競争原理が上手く働かない。 
 (これは中畑監督の起用の問題というより、適切な出場試合数・打席数を設定して、適切な指示を監督に与えなかったフロントのミスと言えるでしょう。もちろん新規参入したばかりで、自分たちで明確なビジョンの下、この選手を何年かけて使う。5年かけてこちらが見越した成長を遂げなかったら見切る―などといった戦略のもと採った選手がいなかったという状況なので、その点も考慮する必要があると思いますので、これを以ってフロントを叩くことはしたくないのですが。)

 そして2013年は逆に使わなさすぎです。怪我をした、不振だということがあっても、この出場数の少なさは異常です。わずか23試合で60打席にも到達していないというのは、将来の大砲候補として路線から外したと言われても仕方がない数字。他に大物スター候補が何人か入ってきたから、育成の優先順位が落ちたとしか思えない数字です。

 しかし、実際はトニ・ブランコ中村紀洋といった実績ある選手が結果を出していたから彼らを優先したという有様。これは目先の勝利を選んだ采配であり、どう見ても育成を行っていたとはいえない数字でしょう。この点を考えても筒香に目をかけ続けて辛抱強く起用していたとするのは無理があります(前述通り、2012年は自分たちが採った選手がいなかったという状況でしたが、僅か1年とはいえ、自分たち自身でドラフトで選手を採り、ファームにいる若手の状況も把握できた。それで、期待大砲候補の筒香にチャンスをここまで与えなかったのは、フロント・監督の手腕を疑われる起用方針でしょう)。

 ―このように選手起用の面から、「使い続けて」筒香嘉智を育てたとするのもまた無理があるといえます。

■監督の仕事は育成ではない、采配によって試合で勝利に導くこと&ペナントレースを制すること
 そしてそもそもなのですが、選手を育てるのは監督の仕事ではない。監督の仕事は起用や采配でチームを勝たせることであり、選手を育てることではありません。育てるのはコーチやトレーナーと言った役割の人・スタッフであって、監督に育成手腕を期待するなど木に縁りて魚を求むようなものです。

 選手育成には、優秀なコーチが必要不可欠ですが、優秀なコーチがいれば選手が育つというものでもありません。相性の問題、指導法がハマるかどうかという問題もありますし、何より本人の理解度・練習態度・才能・運と言った要素に左右されるものです。ですからこそ、優秀で実績あるコーチほど、私が育てたのではなく、本人の努力・取り組み方が素晴らしかったというようなことを言うのです。そして私は彼が成長をする手助け、サポートをしたのだよと手柄を誇ったりしないものなのです。

 大村巌コーチがリンクの記事で語っていた内容・態度がまさにそれであり、名伯楽と言うにふさわしい態度・姿勢だと思います。聞くところによるとファイターズ時代糸井の指導も手がけて、彼も大村巌コーチの手腕を称えていたといいます。記事を読んでもわかるように、大村巌コーチとの出会いが最大の転機となったのは言うまでもないでしょう。

 以前から、監督が選手を育てるというような謎論理を目にして不思議に思っていたのですが、どうも昔のタイプの全権監督の延長からくる発想のようです。監督が全権を握っているからこそ、指導も監督に一任され、選手育成まで監督の手柄になるという発想をする人がいるようです。もしくは高校野球などアマチュア野球の発想の延長で監督が選手を育てるものだと思いこんでいるかもしれません。

 いずれにせよ、現代的な野球では、現代的な組織では明確に機能で役割分担がなされます選手を育てるのはコーチであって、それをやろうとする監督というのは間違いなく失敗すると考えていいでしょう。工藤公康監督などは、投手育成手腕に自信があって自分で投手育成をやろうとしていますが、一定の結果を出してはいるものの、間違いなく古いタイプの監督であり、組織の役割というものを理解していないということが言えます(拙ブログでその問題をこれまでさんざん指摘してきました)。ですからこそ、現在のように自分の腹心・イエスマンで組閣を固めるという自体になっているわけですね。組織として問題があることは言うまでもありません。

■中畑監督は報道・メディア対策に優れた監督だった
 中畑清監督は、山崎康晃のストッパー抜擢だったり、梶谷隆幸の外野コンバートだったり、ちゃんと他にチームに貢献した内容が一応ある監督です。評価するならばそちらで評価をすればいいのに、なぜ明らかな偽りを提示して中畑監督の功績のようにするのか理解できません。*4

 以前指摘したように、野球界というのは記者・報道界が腐っている*5。故に、巨人時代・現役時代からスター選手だった中畑氏は記者たちとコネがある。そのコネを最大限利用して、中畑氏は良い記事を書いてもらっている。そういうことなのでしょう。野球報道界の腐敗はおいといて、監督というのはこのように、記者と良い関係を築いて良い記事を書いてもらうというのも手腕の一つ。時にマスコミ対策というものが出来るか出来ないかで組織が崩壊してしまうこともあるというのは以前指摘したとおりです*6

 そういう意味で、中畑氏は優秀な監督だったといえるでしょう。新規参入球団DeNAにとって観客動員を上げるのは至上命題でしたから、強い発信力を持っていた中畑監督というのはベストかどうかはさておいて、好ましい人選であったということが出来るでしょうからね。

■思うどおりに進まないと中心選手と衝突する。選手の状態に合わせたコミュニケーションではなく、自分本位のコミュニケーション
 ただ、強いチーム・勝てるチームを作るという点で好ましい選択であったかは疑問があります。彼は古くは巨人時代に、主力打者と衝突する我の強いタイプのコーチでした。巨人時代は駒田、そしてDeNAになって中村・多村とやはり主力選手というか実績のある打者と衝突する傾向があるタイプです。そして筒香のキャンプ追放もこの延長であると考えるのが自然でしょう。

 打っているときはともかく、打てないとなると非常に強くダメ出しをする。負けが込んでいたり、チームが上手く回ってない時に八つ当たりに近い形で選手に当たる。そういう傾向があるように思えます。「筒香は、今年一本しかHRを打っていないのに、満足している。だから怒鳴りつけた」などと語っていましたが、このような方針はかなり疑問です。中畑監督一年目で出場機会を与えられながら、二年目は殆ど与えられなかった高卒4年目の選手がどういう心境にあるか?一年目でそこそこいい打率・出塁率をマークして、HR20本くらい打ったとかならともかく、結果を残せていない。そんな選手が満足していることなどあり得るでしょうか?

 筒香の心情を察すれば、一年目と違いまるで出場機会が与えられず、しかも一軍の球をろくに打てない=課題が克服できていない状況。悩んでも悩んでも答えが見つからずどうしていいかわからないという段階。それを整理して、やるべきことを絞ってあげたのが大村コーチなわけで、それで結果を残したわけですが、中畑氏の言うように「自覚が足りない」という要素は見られませんし、特にその自覚云々は彼の成長には関係がないことでしょう。大村コーチが悩んで、その潜在能力の高さにもかかわらず、才能に蓋をしてしまっている状態と分析したくらいですし。

 もし中畑氏が「何をどうしたら良いのかわからない」筒香に、外部の雑音を遮断してやるために&名伯楽大村の手腕を高く評価して、二人で一からやり直すようにと大村コーチに全権委任した、失敗した場合はすべて渡しが責任を取るという態度だったのならば、中畑氏の功績と言って良いでしょう。しかし彼は打てない事実とナメた態度(を取っているとあくまで中畑氏の分析で)に怒って、キャンプから追放したのですから、全く関係ありませんね。

 そして、キャンプ地ではなく、二人で一からフォームを作り直して、光明が見えてオープン戦で結果が出ると見るや、「筒香と心中する発言」。こういう過程を見ると駄目なら見放して、結果が出た途端調子良く持ち上げるというタイプということが出来ると思います。野村流に言うと、一流は叱る・二流は褒める・三流は無視する―の逆で、一流は褒める・三流は叱るという感じでしょうか。こういう手のひらを返して急に態度を変える、両極端な態度をとるタイプを筒香がどう思うか?心情察するに余りあると思います。

 そしてラミレス監督は意味のない練習はやらない。自分たちとよくコミュニケーションを取ってくれる―という筒香の発言を聞いて分かる通り、あまりうまくコミュニケーションが取れていなかったと思えます。あの世代というのは上下関係が厳しく。上意下達のやり取りが当たり前ですから、選手とコミュニケーションで衝突しやすいのでしょうね。    というか、野村監督がメディアを通じて、選手にダメ出しをして発奮を促すというスタイルを好んでいましたが、開きはありますが中畑前監督も人を褒めるということが出来ない世代なんでしょう。ですから、怒って発奮を促すというやり方しか知らないと思えます。それがうまくいくかどうか…。特に現代ではかなり厳しい選手操縦法だと個人的に思います。

 以上、中畑前監督は筒香嘉智を育てていない。育てたのは大村コーチ―でした。正確な事実認識が広まることを願って今回は終わります。<2017/12 了>

アイキャッチ用画像

*1:大村巌コーチ自身がどこかで、中田や糸井、そして筒香を育てたことについて尋ねられて、それを否定して彼らの才能・努力が素晴らしかったんですよと言ったことをコメントしていたと記憶しているのですが、ちょっと検索かけても見つかりませんでした。ソース無しで書くのは気がひけるのですが、一度書いてしまったので、そのままにします。週刊ベースボールか、Numberとかで呼んだのかもしれません。ご存じの方いたら教えてください

*2:なぜか、清宮関係の記事で、清宮が筒香選手がどうやって育ったかということを熱心に球団に尋ねて、中畑監督が辛抱強く使い続けた実績が光るみたいなことを書いていた記事が目につきました。一社とかならまだしもいろんな媒体で見かけたのでかなり???になりました。後述するように中畑の発信能力の強さ故のそういう記者評なのですが…

*3:身売り直前の2011年に、後半昇格してHR8本打ちました。これはすごい良い大砲候補がいるなぁと当時思いました

*4:また松井秀喜を筒香に引き合わせたなど中畑氏の功績とすることも可能でしょう「3割40本100打点」も現実味 筒香覚醒の裏にあった松井秀喜の言葉 Full-count|

*5:野球界以外全てそうだと言われればそうなのでしょうけど。どこかの業界で一つくらい健全な報道空間が存在していることを期待してこう書いておきましょう

*6:【2016「工藤批判」批判】 王会長・工藤監督は秋山時代の「森脇追放」のように、反工藤派(藤井・大道・鳥越?)を粛清すべし の「工藤監督はメディア対策というものを一から考えよ」というところに昔書きました

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 塩田剛三特集ですね。大東流の堀川幸道が養神館に訪れたことがあったんですね。へぇ、知りませんでした。スパッと切れる塩田氏の技が後年力を抜いたものになったのは、堀川氏の影響では?なんて話もあるんですか、へぇ(霊術の解説をしている大宮さんはそれを否定していますが)。晩年は悟りの境地、呼吸力を出すと喜びを覚え、無我となり自他一体となって自分が動くように相手を動かせるようになったとか。
 技をかけている塩田氏の写真を見るとつま先立ちになっているのが多いとか。合気がかかるとつま先立ちになるという話は聞きますがかけるほうがつま先立ちになるというのは余り聞かないですよね。自重を伝える、あるいは重心移動の関係なのかな?
 相手の突き、腕が伸び切った一瞬に合わせると吹っ飛ぶという技を多用したと。この技見たことあったかな?ちょっと記憶に無いな。

■江東友の会、斎藤豊氏の話
 親和体道の鍛錬法、お辞儀をした状態から伸びをする、踵から腰・背筋を伸ばすというものがある。氏曰く、養神館の構えはこれに一歩踏み出したものだと。
 二ヶ条をかけるのに前膝を開くのがポイント。つま先が外を向いているソの字立ちで、自然と膝が開く真正面に向けると膝に力が入って効かなくなる。背筋を伸ばすだけで相手によく掛かる。手首を取られて上げる臂力の養成法。後ろ足の膝を伸ばし踵を強く踏むことで受けを崩す。
 上腕骨頭と肩甲骨棘が一直線に揃った時肩がゼロポジションとなる。ゼロポジションになると体幹部の力をダイレクトに伝えられると。
 ハの字立ちについても書いてあって、ギリギリのバランスで立つことを求めているのでは?とのこと。ソの字立ちなんかは普通の軸を立てるオーソドックスの立ち方と違い、体傾斜度がある異質な構えですよね。こうすることで前につんのめる=重心移動しやすい、そういう技をかけるための構えということなのでは?と個人的に思いましたが、どうなのでしょうか。
 足指の操作の話も面白いですね。床を空振りするように親指を握り込むことで、拇指球に重心がありながらも踵から足の外側に力が入る。こうすると相手に多少送れて反応しても後から軽く触れても崩せると。

■システマ創始者ミカエル・リャブコ来日セミナーレポート「シャシュカの用法」
 シャシュカ・ロシア剣の用法、剣を持っていると自然とその重みが消える所がある。そこを探していくワーク。見つかったら左右20分づつ持ち続ける。そうすると体の歪みが矯正されるという。甲野善紀氏も飛び入り参加で日本刀との攻防もあったとか。
 引いて斬るものだから、当然相手に引くことをさせない技術がある。刃に当てられた瞬間抜くことで角度をなくして切れないようにする。剣を武器でなく防御するものと考える。相手の剣を撃ち落として跳ねて思わぬことを招かないように(自分に向かってきたり、第三者に飛んでいかないように)、相手の身体に剣撃が伝わるようにする。首・胸・腰など狙った箇所に威力が向かうように撃つと。不用意に相手の剣を叩き落とすとつながりが切れて、その隙を突かれかねない。持っている武器を敢えて捨てる、武器に意識を持っていかせてその隙に打突という展開も想定済みなんですね。


■日野晃師範が解く達人技の秘密!求道者・成田新十郎“意識の領域"
 どういうことをおっしゃっているかよくわかりませんが、受けをとった日野さんが手首を握ってバランスを仕掛けようとした瞬間手が消えたと書いていますね。気がついたらその場に落ちていた意識・気配が消えてなくなったとのこと。どんな動きをする方なのか一度見てみたいですね。

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*1

■心水会・中野由哲師範剣術~空手~中国武術を貫く共通根理
 心形刀流の永野順一氏に教わったことを3つのポイントにしている。①胸をゆるめる②股関節に体重を乗せる③肘を抜く。胸をゆるめるという意識を持つと自然と含胸抜背の姿勢になる。正座をして立ち上がろうとする時、自然と前傾して立ち上がろうとする、その時体重が股関節に乗る。きちんと出来ると全身が統一されて有効な技となる。
 肘を下に向ける意識を持つと、「脇を締める」ということができるようになる。肘を下に向けることで腕の螺旋が生まれ、その解放が威力を作る。肘を抜くのには、肘の力感を溶かす。そもそも人は肘に力を入れないから、意識を溶かしてやればいいと。そういえば甲野先生も昔肩の溶かし込みとか言ってた気がします。永野氏が共同研究者ですし、その延長の発想でしょうかね。
 肘の抜きが出来ているかのチェックで肘を下ろすことで受けを崩すというのがありますが、この動きを一人でトレースしていて、肋骨を動かすのに肘からおろしていくというのも有効なのかなとふと思いました。

ゆる体操には“裏"の存在があった!高岡英夫の漢語由流体操「肩肋後回法3」
 岩合光昭氏が引退作品で述べた言葉、野生動物はなんて柔らかいんだろう。写っていた白くまの肋骨がぐにゃぐにゃであっただけでなく、野生動物は皆柔らかい。そして人間の肋骨もそこまで到達することが可能である。
 やり方は、胸の下部・中部・上部と順番に盛り上がらせていく。行ききったら、次は背中の上部・中部・下部と移動する。肩と肋骨の関係は180度反対の位置に来るようにする。(文字で説明しても伝わらないと思うのでモデルなどの図を直に見ることをおすすめします)。実際には一本一本ではなく数本まとめて動いていく。ちょうどスタジアムの観客のウェーブのような感じ。または窓にあるブラインドを指で弾いていく時、数枚まとまって弾き続けている時、最初の方がもとに戻っていくような感じ。
 前回、球としてモデル化して説明したわけだが、実はこれは不完全なモデル。というのも肋骨は球状ではないし、そういう動きをするわけでもないから。実際の肋骨は1~12番、12枚のプレートで成り立っていても、上・中・下で構造が大きく異る。上部は水平でも、中・下部は背中から脇に向かって下がり気味になって、軟骨は胸骨に向かって上がっていく。下部になればなるほど軟骨が大きくなり、胸骨に向かって上がっていく角度も大きくなる。最下部の11・12番は胸骨にくっついてすらなく浮いている状態。これを「自由肋骨」とする。フロートしているこの二本は可動性が高い。肩との相対運動しやすい。が、胸の下部・腹の全面には肋骨が殆ど無い、自由肋骨も中部・上部に比べて小さいもので、動きはするものの回転運動にならない。下部が動いても効果が小さい。ブラインドで言うと歯抜けになっていて弾けない状態。下部は回転ではなく開放する動きになって、開閉運動になってしまう。
 実際に効果があるのは1~6番まで。ここの部位が動くと肋骨の回転運動になる。昔の指導では、下部を動かすな&上部を動かせ!と硬直的な指導をしていたが、いきなり上部を動かすのは難しく、余りリターンがない指導法だと気がついた。あくまで開閉運動と理解しながらも、疑似回転運動として、下部から動かして少しづつ動かせる範囲を丈夫にスライドしていくほうが効果がある。
 
■忍術・武術・修験道・俳句──青い目の忍者「月影」の世界ハロルド・スチュワート「妙風庵の忍武術」
 武神館の流れをくむ忍者・忍術ですね。アメリカからやってきた方の話です。キレを出す技は危険。強さを隠さなければいけない。キレにこだわるな、キレが出ない強さの見えない技を磨けと。他の武道の高段者で時に上達してもイライラしている人を見ることがある。それは日常に使える技ではないから、日常と直結されていない強さだから。なるほど。小指薬指を使うと、手首が固まらずに自由になるから普段から底を使って荷物を持ちなさいとのこと。そうすることで日常から整えられていく。「堀炬燵 母立つたびに 炭香る」とか俳句良いですね、感性が磨かれているのがよくわかりますね。

■大宮司朗霊術講座「梃子の原理を用いた技」
 昔流行ったスプーン曲げにはトリックがあったという話。霊術でもテコの原理を用いたトリックがある。テコの原理の話。

■元・極真空手チャンピオンが辿り着いた“武の理"志田清之師範「衰えない“武の力"とは! ?」
 体重を威力へと転換するためにはどうしたら良いか?骨盤の垂直落下によって生まれる力を歩みで前方の力に変える。つま先・膝がブレーキとなって力が伝わらない、そこを柔らかく使うこと。関節を順番に使うドミノ倒し、各骨の力の線を養成する。


■藤本靖―意識のホームポジション「知覚の反転」
 直接視と間接視、ものを見る時に直接焦点をあわせるのを直接視。焦点を手前や奥に置くことで間接視になる。間接視だと見る人に圧迫感を与えない。(視線が痛いという言葉がありますが、見られる事自体が圧力になるということですね。ですから焦点をずらしてみることでそれが外せると)。
 間接視にすると、直接視の一部にスポットを当てる・注目する感じではなく、全体の輪郭・対象が浮かび上がって見える(これも言葉ではわかりにくいと思うので実際に載っている図をみたほうがいいでしょう)。これを「知覚の反転」という。遠位点だと身体の外側に、近位点だと身体の内側に意識を当てやすくなる。目が見やすいものを見るの延長で、水平に目を動かして呼吸、筋肉の緊張が一番リラックスできる所を探すのが良い。
 内田樹氏が14/01月号で言っていたように、肉体という物体に触っているのではなく、存在そのものに触るようにする。肉体に触るという感じだとどうしても部分的になるので、存在=スペース全体に触るようにする。そのイメージが難しいのなら相手の奥にスペースが有ると思ってやると良い。
 瞑想で肉体・身体の感覚を掘り下げるアプローチ以外に、あえて自分の肉体にアプローチせずに掘り下げる方法がある。全体にアプローチしやすくなるかわりに自分の存在と乖離しやすくなるデメリットが有る。
 耳だと、人の話が頭に入りづらい場合、雑音・空調などに耳を傾けて、間接的に入ってくるようにする。集中して聞こうとすると緊張して却って話が入ってこない場合はこうすると良い。
 楽に相手を見る、緊張しないように向かい合うために、視線を合わせながら間接視が出来るようにする。遠位点なら緊張しないとはいえ、ずっと壁を見て話されたら相手は嫌だからそうするわけにもいかない。目を合わせながらも呼吸・緊張を観察し続ける。全体と対象どちらにも焦点があっている感じになる。対人恐怖症だったり、あがり症だったり、そういうものを克服するトレーニングにいいのではないでしょうか?

中島章夫「技アリの動作術」
 趾尖球(指と裏の付け根のところですね)に体重を乗せる訓練、足裏全体で立つために「どこでもない処で立つ」ために趾尖球の感覚を鍛える。趾尖球フラット接地と3Kルートのテストの話。

*1:誰もここから買う人なんていないと思いますけど一応、楽天リンクも貼っておきます→円和の合気道 “円”の合気修得のキーワード!円和の合氣道(DVD)

高橋監督に采配を求める記事への違和感 問題は監督ではなくフロントにあり


高橋由伸監督の話をしたいと思います。これを書こうと思ったのは2016年で、その翌年球団史上初13連敗という出来事があったので今更ながらそれについてもまとめて記しておきたいと思います。

 高橋監督について書こうと思ったのは、スポナビブログを始めた時、交流戦セ・リーグ各球団ウォッチャーがどのような危機意識を持っているのか気になって、いろいろな意見をチェックしていた時、ジャイアンツのカテゴリで書かれていた記事がひっかかったからです。

 やれ、~番に誰を入れろだ、~より~を起用しろだ。監督がもっと積極的に動いて采配を揮って欲しいという・監督の采配を批判する意見が結構ありました。それについて非常に強い違和感を覚えましたので、それについて話をしてみたいと思います。

■巨人球団史上初13連敗の本質は腐朽組織 
 巨人が13連敗した事自体についてはいろんな方がいろんなことを指摘しています。貧打、投壊の要因は黄金期の反動。FA選手補強頼りで育成の放棄。長期ビジョンの欠如で原時代のツケが露呈した。人気にあぐらをかいて巨人へ来たいという一流選手がメジャーを目指すようになったなど、時代の変化についていけなかった。逆指名制度の廃止で、ドラフト一位で有望な即戦力選手を確実に取れなくなった、etc…。

 概ねそれで間違いないでしょう。しかしそんなことは所詮枝葉末節の問題。本質は別にあります。本質は巨人という球団の組織そのものが腐って機能不全に陥ったこと。腐朽組織化です。まともな論理で組織運営が行われていないから、問題が表面化したに過ぎません。

 今に始まったことではなく、元々巨人という球団は組織が腐っていたのですが、それを糊塗するだけの人気と人材とお金があったために、その問題の本質が露呈することがなかったんですね。巨人という組織には問題がある、恥部がある。こんなこといちいち今更指摘するまでもなくNPBに興味がある人であれば誰でも知っていると思いますが、一応改めて指摘しておきます。

■監督は生え抜きでなければならない純粋生え抜き主義
 巨人という組織は監督人事に純粋生え抜き主義を採用してきました。星野・落合といったトップクラスの監督を外部招聘する動きもあったので、また最近ではイチロー監督という声もあるくらいで、その純粋生え抜き主義も変化しつつあるのは確かです。

 その代償というのも変ですが、コーチ人事については他球団の硬直化した人事に比べて柔軟で外様リクルート主義とでもいうべき人事方針を採用している柔軟さもあります。常に他球団出身者をコーチとして招聘し、新しい風・思想を導入しようという優れた点がある所を触れておかないと片手落ちになるので、これについても触れておきます。

 多くの球団がコーチを元選手・在籍経歴のある選手で固めるのに対して、実力重視のシステムを採用しているので優れた方針というべきでしょう。が、しかしそれも監督=チームの顔を過去の名選手で何が何でも固めたいからという歪な思想の裏返しと考えるべきでしょう。生涯一巨人選手のキャリアで、一流の数字を残した選手となると、監督候補者は自ずと制限されてしまう。その監督候補が優秀な監督になる確率はどれくらいか?限りなく低いのは言うまでもないでしょう。原監督のような優秀とされる監督が輩出されることは滅多になく、可能性が大きいとは考えにくいわけですから。

 今回の高橋監督、また過去の長嶋監督などを見ると、この純粋生え抜き人事がいかにまずいか言うまでもないでしょう。その無能(あるいは監督としての素養がない)監督を少しでもサポートしたいという裏返しがこの巨人のコーチ人事の実力主義*1ということなのでしょう。

■高橋監督就任は歪んだ人事制度によるもの
 当たり前のことですが、歪んだ人事制度からは歪んだ人事が生まれます。原監督から高橋監督となったのも、この腐朽制度から生まれたものでした。高橋由伸は選手兼任コーチとして将来の監督候補のルートに入ったものの、まだ現役を続行するものと見られていました。それがいきなりの現役引退と監督就任。当時、高橋は左の代打として立派に機能していたにもかかわらず、それを組織の都合によって引退させるなどファンであればまず納得できない異常な処置でしょう。単なる一選手ではなく、チームの功労者・スター選手を本人が望むように全うさせてやれない組織など一体誰が支持するのでしょうか?

 これについては、「引退は残念だけれども、本人が選手よりも監督の座を望んだ。残り短い選手としての地位に未練はなく、指導者・首脳陣としての監督ポストに魅力を感じた。監督>選手という考えを持つ人は珍しくない。本人がそちらの選択に、代償があっても魅力を感じて決めたことなのだから、本人の意志を無視したわけではない。特にかまわないのでは?」という意見を持つ人もいるでしょう。

 この意見が間違っているとは思いませんが、巨人という球団は選手という地位、意見を無視する傾向が非常に強い球団。選手を使い捨てとする感覚を持っている球団です。外様の前田が大量点差がついて自分が投げる必要のない場面でも投げさせられた、野口が手術をして再起をかけたいという声を無視して手術を許さなかったーという事例を見るまでもなく、球団の意向が絶対であり、選手の立場や状況に配慮することが少ない球団です*2。生え抜き第一、外人・外様第二など色んな序列があるのでしょうけど、選手に配慮する度合いは他球団と比べて著しく小さいといえます。

 高橋由伸を監督にしたいのならば、もう一年コーチ経験を積ませつつ、選手として花道・有終の美を飾る。来年もいい数字を残したらもう一年延長して、そしてつなぎの監督からバトンタッチというのが普通のルートでしょう。ところが、野球賭博事件などもあって、負のイメージを払拭するために新しいスター監督に看板をすげ替える必要があった。そのために否が応でも高橋に監督をやってもらわなくてはならなくなった。

 何の準備もないまま監督になった高橋が、というかそもそも原監督のように、確固たる戦術・戦略プランを持っていないタイプの彼を、球団の不祥事払拭のためという理由で監督の地位につけたらどうなるか?言うまでもないでしょう。

 今のNPBを見渡して、この選手は監督向きだ。監督になったら面白そうだというタイプの選手・OBは滅多にいない。個人的にこの人の監督やるところが見てみたいと思っていた小宮山氏でさえ、ホークスのV逸はファイターズがすごすぎただけという珍な意見を述べていて不安になっているところです。監督になりたい!そのために采配とは何か?ペナントレースとは何か?短期決戦とはどう戦うべきか?などと現役時代から頭を使ったプレー、考え方、勉強をしている選手は殆どいない。そういう環境で名選手を準備不足のまま監督にしてしまったらどうなるか?言うまでもありませんよね?

高橋由伸は官僚的なタイプ、定例昇進人事で監督就任
 最大のポイントなのですが、そもそも高橋由伸という人は巨人入りを望んではいなかったということ。もともとヤクルトに入りたかったが家の事情で巨人に入らざるを得なくなったという選手でした。先に入団して活躍していた松井秀喜と同じ位の活躍をして、もしかして高橋もメジャーへ行くのでは?と言われていたこともありました。当時は一流選手であればメジャーへ行くのが一つの自然な流れ。しかしそのメジャー行きも早々に封印しました(実際にメジャーで活躍できたかは別の問題で、そもそも高橋のコンディションの問題、怪我の多さを考えるとまず難しかっただろうと思われます。なので本人としては初めから考慮の外にあったかもしれませんが、何人か無思慮で何の準備もないまま渡米する例もありましたからね。夢を選んで!難しいとわかっていても行きます!という選択もあり得たという意味で)。

 こういう経歴を見て高橋由伸という人物像を見るに、自分の意志でこれだ!という決断・選択をしないタイプだということだと思います。
監督になりたい!巨人というチームの監督をやりたい!というよりも、定例昇進人事に乗っかって自分のキャリアを一歩進めたということなのでしょう。順調なキャリアアップを望むのは人として至極当然のこと。彼としては当たり前の道、当たり前のルートを選んだということでしょうね。

 六大学のスター→巨人入り→巨人のスター→監督→(フロント入り?)…。困難で茨の道に進んで自分の追い求めたいものを追求するよりも、こういうわかりやすい華やかなキャリアを選択するタイプ。同じスター選手でも巨人の監督を務めた人かそうでないかでは雲泥の差。将来の仕事・収入に大きく関わってくる。もし今監督要請を断ったら次はないかもしれない…。そのリスクを彼は取れなかった。そして選手としての花道よりも、自身のキャリアを選択した。こういう選択肢を選んだことをみてわかるように、非常に官僚的なタイプ。模範優等生タイプだということがわかると思います(勘違いする人がいるかもしれないので、こういう高橋監督の選択を否定しているわけではありません。むしろ普通の人の普通の考え、当たり前の選択でしょう)。

■高橋監督に監督としての手腕を望むこと自体がナンセンス
 危機においては人事は抜擢をしないといけない。これが組織において一つの絶対的なセオリー。本来、若い優秀な人物・傑物を定例昇進のルートからハズして、いきなりトップに持ってくるということをするものなのですが、これをしていない。これをみるだけで巨人というチームに改革の意識がゼロ、かけらもないことがわかります

 さらに高橋由伸という官僚的な考え≒決断をするタイプの監督を選ぶということは、もう監督独自の采配を揮う、戦術をとるということを初めから期待していないということになります。監督の手腕・采配を問わないそういう選択・人事をしたのは球団首脳陣・フロントです。問題の所在はフロントにあって、高橋本人にはない。高橋監督に采配を望むこと、柔軟or奇抜な選手起用・戦術を望むことは木に縁りて魚を求むようなもの。筋違いも甚だしいと言えるでしょう。

 2011の後半、マネーボールの発想・考え方を知って、「なるほど野球・ペナントレースとはそうやって見るもの、考えるものなのか」と感心して野球を久しぶりに見始めました。過去に応援していたジャイアンツくらいしか知らなかったので、そのままジャイアンツ戦を注目して観ていたのですが、まるで理にかなわないことをやっている。こりゃダメだと呆れて、翌年からスパッとパ・リーグに切り替えた経緯がありました。そもそも巨人という組織を考えれば、理想的な野球・戦い方を求めても無駄なわけです。

 高橋監督を選んだこと一つとっても、勝つ意識・チームを強くする意識、組織改革・改善をする意識がないことがわかります。そんなチームに自分が望む理想的な采配・戦術を求めること自体がナンセンス。サッカー選手に上手い野球をやれ!と言っているようなものであり、八百屋に行って魚を買いに行くようなものだと思われます。ファンやウォッチャーであるならば、高橋監督云々よりも球団の人事制度・フロント改革を強く要求してしかるべきところでしょう。

 ファン・ウォッチャーの意識改革がなされない限り、球団も目覚めることはないのではないか。そんなことを思いましたので時期を逸しながら、強く疑問に思ったことを今更ながら書いておきました*3
<2017/11 了>

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*1:≒正確にはOBで固めないということで、必ずしも実力主義人事と言えないのですけどね。人事方針として広く門戸を開いているということであえて、わかりやすさを重視して「実力主義」としました

*2:※参照ープロ野球特別読み物 小笠原道大よ、谷佳知よ、最初から分かっていたはず

*3:※おまけとして、13連敗してヘッドコーチは据え置き、人事の目玉として吉村コーチの復帰というものがありました。これが何を意味するか?言うまでもありませんね。信賞必罰は組織の基本。失敗の責任を誰も取らないで既存の野球をやろうというのですから何をか言わんや。フロントは鹿取新GMにスイッチしましたが、そもそもGMと高橋監督は同じ慶応閥。その後ろ盾を解任して人事を下手に弄らなかったということは、来年結果を出せなければGMが監督を斬るという意思表示でしょうね

【雑誌】 月刊秘伝 2015年1月号

しれっと再開。

月刊 秘伝 2015年 01月号 [雑誌]/BABジャパン


 太気拳の岩間統正さん特集ですね。対談・インタビューなど岩間氏のエピソードが語られる号ですね。
 岩間氏曰く、立禅は最後で良い。昨今の立禅ブーム(ブームというのも変だけど)と真逆の考え方なんですね。健康法や気の実感という意味はあるけども、格闘技の中でどう使えるかというのが大事。立禅は最後で良い、そうでないとごまかしになると。

 少林流空手を元々やっていたということでその話と、型の写真が載っています。岩鶴(チントー)で猫背のように丸めて肩甲骨を最大限使おうとしているのが印象的でしたね。太気拳の差し手に通じる技法が含まれているとのこと。

 特集の三章で、「戦機」の捉え方が大事と説く氏が実際の格闘技の試合を解説しています。
 ①市原VSホイス、蹴りで間合いを作ろうとするのは間違い。間合いは手で制するもの。王向斉いわく、蹴りの理は十の内二分。半身で蹴りをする市原は間違い、半身で蹴るとのけぞる形で前後にしか動けない。澤井先生曰く、半身は負け型。(おそらく、レイピア的な剣の競技で有効な半身スタイルを剣術が含まれない総合の分野に持ってくるのは難しいでしょうね。転体=スイッチや、サイドキックなどであらかじめその利・不利を知り尽くしているのならともかく、なんとなく半身構えになるのは危険ということかと。)
 武道家は臆病でないといけない。深く考えないで習慣で蹴っているのではないか?ホイスも勝つには勝ったけど、ヒクソンとは戦いの神経が異なると。

 ②ホーストVSサップ、得意技のローにこだわって敗れたホースト。得意技は時に邪魔をする。パンチを使えば勝てた。体重差のある相手にブロックは危険。ブロックの上からでも効いてしまう。そして居着いて相手はやりやすいように攻撃できてしまう。ローで正面が空いてしまった所を付け込まれて劣勢に陥ったと。(多分ローにこだわったというより、想像以上の圧力・パワーの差で正面からパンチで打ち合えずに、リスクが少ない周りながらのローに気持ちが流れてしまった気がします。今もう一度映像を見返さないとなんとも言えませんけどね。)澤井先生曰く、技が通じるのは体重の倍まで。三倍は武の理合いの外。

 ③魔娑斗VSブアカーオ、ブアカーオの多彩な蹴りに翻弄される魔娑斗に対して、蹴りに対しては最初何もせずにリサーチする。間合いを図ってから、差す。何蹴りかはわからなくても、来た瞬間相手の気の走りに察して軸足にあわせる。(それができること自体が凄いという事は論を持たないですが、たいてい打撃系の試合では軸足カットしてもそこから加撃は出来ない。そういう技術が競技で有効にダメージを与えられない以上、あまり意味がない指摘かと思います。もちろん実戦ならどうすべきかという視点で論じておられるんでしょうけどね。多分、もっと色んな指摘や技術論があったんでしょうけど制限があって省かれたんでしょうね。実際の試合に対する色んな師範の分析とか非常に好きなので、もっとやってほしいんですけどね~。)

 ④山本KID VS須藤元気須藤元気は勝負感がある。生まれつき喧嘩上手・センスがいい人間というのはいる。しかし彼も戦機があるとはいえない。両者とも、なんとなく当たれば儲けものという感じでパンチを出している。一発でも当たれば危険なのだからもっと臆病にならないといけない。寝技もやっていて自信があるから安易に抱きついている。太気拳では寝技の攻防というのは想定していない。一対一とは限らないし、相手が武器を持ってないとも限らないから。神宮でも倒れたら必ずストップがかかって、また立ちから始まったと。

 戦機とは間合いに入った瞬間、自分の腕二本で相手の腕二本を制し、動きを封じること。そうやって守りきればいつでも打てる。ガンガン実戦をやって培った動き・感覚・技を最後に気として立禅でまとめると。実戦重視派ならではの意見・持論ということでしょうか。


異色のコラボ 中井祐樹(パラエストラ東京)×北川貴英(システマ東京)柔術とシステマの「人生補完技術」
 寝転がって、踵をペン先として内回し・外回しをする足回しのエクササイズが重要とか。チョークは人によって何が最適かは違う。誰一人同じチョークはない。最終的に身に着けたチョークは自分で発見したモノ。基本は均等に締めていくものだけど、一番強いのはぐしゃっと潰している感じ。
 三角絞めの相手の腕を挟み込まない形、ノーアームトライアングルというのがあるんですね。三角形が崩れないように自分の腕を入れることで補完して締めると。
 対談中色んな話がありますが、中井さんは自由な感じ・感性がいいですね。柔術にあまり興味が無いですが、読んでいてこの方は非常に気持のいい人なんだろうな~という感じがしました。


岡田慎一郎 異分野の達人たちに学ぶ注目連載第2回!
 中指と薬指だけを曲げるキツネの手の形で引っ掛けると相手を簡単に崩せるという話。こうすることで腕に頼らず全身の力を使いやすくなる。またグッと握られて引っ張られるという予測と違う力が働くので相手は対応しにくくなる。
 解剖学的にも中指と薬指だけは伸筋がなく屈曲優位になりやすいという根拠がある(愚地独歩の菩薩の拳はちゃんと根拠があったんですなぁ(^ ^;)、三戦で、拳を握る時、自然と中指と薬指だけは少し軽く握るというか、自然に少しだけ突き出るような感じになっていましたが、なるほどそういう違いがあるからなんですなぁ。それとこの指で腕を広げて肘を回すことで背中・肩甲骨を動かせるという個人的気付きがあったので、あとでこの事について書きたいのでとりあえずメモ)

 重心移動で歩く、結果的にあしがついてくる効率的な歩行を促すために腰ではなく仙骨を押してやる。仙骨が押されると自然と骨盤が動かされて体重がスムーズに移動する感覚が味わえる。その感覚を再現できるように仙骨を意識して歩くようにすれば良い。


キモ・フェレイラ “使える技術"を突き詰めれば、必ず小さくシンプルになる!対武器CQC(Close Quarters Combat)の極意とは?
 キモ師範の対銃の話。拳銃を持った強盗に対し財布を投げれば相手はそちらに意識が行く。その隙に逃げる。ホールドアップする瞬間、その動作で銃をかち上げる。シンプルであることが大事。強盗の心理として逆に自分が殺されることを恐れているから、接近してとっさの恐怖を与えることに主眼を置く。
 ナイフや銃といった危険性が日常にある外国ではこういう護身術が盛んになるのは自明の理ですね。ヴェトナム戦争での従軍経験から、いざとなったら相打ちに持ち込むという精神で生き延びた話などもありますね。落ち着くに鼻で呼吸すること。いきなり叫び出して周りをびっくりさせた師範、こうやると相手の強盗もびっくりするでしょ?とのこと。狂人のフリというのも実戦では有効な技術ですからね。忍者も演技しますけど、そのうち武術・武道流演技法!とか出てこないものでしょうか?


ゆる体操には“裏"の存在があった!高岡英夫の漢語由流体操「肩肋後回法 2」
 なぜ肩を前から後ろに回す疲労回復系の自助運動は存在しないのか?それは前から後ろに回す動きは四足動物が疾走するときの使い方だから。いつも使っている身体の使い方の逆をやらないと凝りはほぐれない、疲労回復効果はない。また疾走運動系の動きであるということは交感神経を優位にさせていくことになり、その点でも疲労回復に向いていないといえるから。

 肩肋という名称の通り、肩を回すだけでなく一緒に肋骨も回すことでより効果が得られる。(そういや肩を回すことばかりに気が行っていて肝心の肋骨を動かす・回すということを忘れていましたね。)多くの人が自助運動として肩を前から後ろに回す動きをやっているので、歩きと同じように普通の人でも初段から二段くらいの実力がある。これ以上うまくならないと運動法とはいえないので当然これより上の段位を目指す。殆どの人が歪な円を描く。これがなめらかな円、そしてなおかつ大きな円が描けるように目指す。

 殆どの人が肩だけが回って肋骨が参加していない、固定土台状態。プロ野球の一流ピッチャーなど肩がなめらかな円を描き、肋骨も動いている。肩だけが回るのではなく、肋骨も回るから肩肋後回法。肩と肋骨、肋骨の一本一本の間隔も広がれば広がるほどより身体は伸びてゆるむ。優れたパフォーマンスを発揮するのも同じ。当然肋骨と肩もできるだけ分離した方がいい。肩肋後回法で、肩が上のときは肋骨が下に、肩が後ろのときは肋骨が前と相対関係になるように行う。

 正円という条件で前方と後方どちらが速く回すことができるかやってみると、前方は速くできるのに対し後方は速く出来ない。やろうとすると円が崩れてしまう。それに対し前方はスピーディーにできる。個人差があっても、だいたい3倍くらいの違いが生まれる。これは脳神経系の問題。前方は速くできるのに対して、後方は出来ない。だからこそ、ゆっくりやることに意義がある。ゆっくりやることで疲労回復効果が発揮される。

 イラストでは肋骨をかなり不完全なモデルとして模式化している。胸肋軟骨は大人になると骨のように固まってしまう人も少なくないが子供の胸を触ればわかるように本来はぐにゃぐにゃ。野生動物の体幹部は驚くほどグニャグニャ。大きなしろくまでもそう。日本が世界に誇る動物写真家岩合光昭氏は引退作で語った言葉がある(ココで引いて今号はここで終わりです)。


短期集中連載 沖縄拳法大平道場 西原治沖縄拳法に伝わる“手"の極意 第2回「サンチンとナイハンチ」
 後手の先を身につけるために役に立つのがサンチン。サンチンをやることで相手の動きの兆しを感じやすい体になる。呼吸法は2つあって上地流のように下腹に貯めてチッチッと爆発させるように吐く。体の中心を雑巾を絞るような間隔で。ずっと丹田に力を込めて行う。即効性があって3ヶ月で体の変化を実感する。打撃への威力&耐久力がつく。
 二つ目はゆっくり息を長く吐きながら行う(心道流と同じかな?)。宇城憲治氏が言うような内的な変化が起こる。内的な変化が起こると受けを力を入れずにふわっと崩せるようになると。これも特別なことではなく、誰でもできるようになると。感覚的にスイッチの入れ方を知っている。他人に触れると、そのスイッチを入れてやることができる。別に気を送ったり、入れているわけではない。(宇城師範の気の理論・指導への批判なのかな?これは)
 肚・丹田を身につけるためのナイハンチ。腰を一度反らせて、今度は反対に入れるようにする。丹田と感じられるところに自分のイメージする「気」をそこに集める。そうすると不思議と足腰が安定する。そこから体全体が一体化したイメージ・感覚が大事。そこから腰を返さずに突くと威力が変わったのが実感できる。腰をひねると腕力に頼ってしまうからダメ。ナイハンチ立ちがなぜあの状態か、ちゃんと立ち方・姿勢ができれば、あの姿勢で鉤突きをするだけで威力がでるから。本部朝期氏も、空手の立ちとは全てナイハンチ立ちをどちらか捻ったものというくらい重要な基本。氏が入り身に徹底していたのも、ナイハンチに基づいた一撃の威力があったからだろうとのこと。

平上信行時代考証の裏表「武術修行者が憧憬する究極の武術秘法」
 宮本武蔵以上の達人と言われた同時代の剣客二階堂主水が行っていたという「心ノ一方」。手かざしと気合で相手の動きを封じる。宮本武蔵も構えだけで相手に打ち込ませずに相手を制したというし、各諸流派にも「馬上落」として伝わっている。天然理心流の近藤内蔵助にも「気術」がある。そういう技があることは当時から広く知られていたと察せられる。
 筆者は「神ノ一方劍」と「無手勝流眞空斬劍」を体得しているとし、前者がいわゆる不動金縛りの術で、後者は剣を用いずに相手を斬るものだとしています。剣を持たずに相手を斬るとは?念・気によって相手の神経系にパニックを起こさせる、ショック・ダメージを与えるというのは聞いたことがありますが、そのたぐいでしょうか?


武の巨星逝く合気錬体会 吉丸慶雪師範を偲ぶ
 佐川幸義氏の弟子だった吉丸慶雪氏が亡くなられたので、その経歴の紹介ですね。佐藤金兵衛氏は佐川幸義氏の弟子である山本角義という方から大東流を学んでいたんですね。知りませんでした。でその山本伝大東流も佐藤氏から学んだと。


黒田鉄山鉄山に訊け「抜刀の身法」
 左手の鞘引きの話。手で引くのではなく肩甲骨を脊柱方向に引き寄せることで抜くという話。


宮司朗霊術講座「軽重変換法と一手加えること」
 軽重変換法、相手に近づくと持ち上げやすくなり、遠ざかれば持ち上げにくくなる。つま先立ちになってやれば相手に重心が近づいて持ち上げやすい。茂呂隆氏が意識軽重法だったか?忘れましたが、天を意識すれば軽くなり、地を意識すれば重くなる。脱力云々との関係で解説していた気がするので、あまりテクニックにこだわらずともちょっと修行していればできる気がしますけどね。まあちょっとした方法・やり方を知っていれば誰でも簡単にできるよということなんでしょうけど。


安田洋介 太極遊戯
 放鬆・ファンソンという言葉の意味は単なる脱力ではないという話。筋力は使う。高岡氏が「ゆるんでいる」状態とは、必要な部位の最小限の筋出力で無駄なく立っていることであるとか、そんな話をしていましたが、そういう話でしょう。筋出力ゼロになったら流石に立てませんし、動けませんからね。背骨をまっすぐにするという人もいれば、わずかに反らせるという人もいて、どちらも間違いではない。どちらか一方が正解で、もう一方は間違いだとしたがるという話がありましたが、困ったちゃんによって困った体験をなされたのでしょうか(苦笑)。

松原秀樹「100%動ききるための調整術」
 今回もオイルマッサージの話。合気をかけるように塗り込むのがコツ。手根部、小指側を使うと良い。一人でやる場合背中は弧拳でやると、背中は自分では難しいので他人にやってもらったほうが良い。

武術秘伝書夢世界
 見たことないような異様な形をした武器が多々あるとのこと。写真では十手に鎖鎌をつけたようなものしかパッと見で理解できませんでしたが、どんな異様な武器が古に存在したのか…。ロマンありますね。

松本人志、SBホークス内川をひょっとこ呼ばわり

松本人志、「ひょっとこ」発言で内川とバトル 抗議に逆ギレ
 事情を知らない人のために一応リンクを貼っときました。メモ程度ですが書き残しておきたいという話です。前も内川にまつわるトラブルの話を書いたのですが、なんなのでしょうね?内川はもうそういう星の下に生まれついているということなんでしょうね。前回はカメラマンへの態度が良くない云々で責められたところもありましたが、今回はそういう声は殆どないと言っていいでしょうね。

 本館で角田さんとの揉めた話について松本人志の高い立場的な話を書きましたが、あの時とは比べ物にならないレベル・次元の話ですね。何考えてるのでしょうかね?他人の容姿をいじって笑いを取るなんてダメに決まってるでしょう。

 ブラックユーモアというものがあって、相手の至らないところをいじって笑いにするという領域はありますが、本人がその場に居ない&親しくなくて信頼関係もない間柄でそんなことをやったらダメに決まってる。普段からよく知っていて付き合いがあるなら、あとでいくらでもフォローすればいいでしょうけど、ろくに面識もないのでしょう?そりゃ怒られて当然ですよ。

 昔、ノムさんが松本氏に対して、「お前みたいな人間がよう芸能界で生き残ってきたな」と言われて嫌な人だと思ったという話をしていたことがありましたが、そもそも畑違いの世界・異分野の人間に対して好き勝手なことを言うのがおかしい。かつて自分が嫌な思いをした野村克也とまま同じことを松本はしている。しかし本人にそういう自覚はないのでしょうね。

 お笑い界の後輩に当たる若手ならそういうことをしても何の問題もないでしょう。しかしスポーツ界・アスリートはそういう価値観(いじられておいしいとかそういう世界)で生きてるわけではない。

 昔は野暮ったい人が多かった。今は妙にカッコつけた人が多い。ルックスで売るミーハー路線ではなく実力でやっていく、変に色気を出さずにもっと職人のようにそれだけ打ち込むようなタイプこそが業界を活性化させる。まあそんなことを言いたかったんでしょうね。でもあんな言い方したら駄目です。

 というか普通はスタジオで「エッ」ってなるでしょう。引いてお蔵入りになるものでしょう。許容してしまうスタジオの空気ってなんなんでしょうね。そしてそれをそのまま放送するセンスがアレですね、馬鹿なんでしょうね。編集は何を考えているんでしょうか。まあ今に始まったことではないのでしょうけど。

 日本代表・NPBを代表する選手をあんな扱いしたら以後ギクシャクするんじゃないでしょうか?まあ選手会としてNGを出すとかそういう話にならない限りはそこまでいかないのでしょうけど。相方の浜田さんはジャンクスポーツという番組をやっていてアスリートと繋がりありそうですけど、これ以後野球選手が出たがらなくなったりしたら…。まあ流石にそこまでは発展しないでしょうけどね。

 まあ何回か書いてますけど、年を取るたびにどんどん世間と感覚がズレていくものですからね、今後も色々騒ぎを起こしそうですね。共謀罪云々で懸念を抱く人達から叩かれてましたね、そう言えば。そのうちあのワイドナショーという番組もたちいかなくなるかもしれませんね。

 ※一日公開遅れたら、オリエンタルラジオの中田氏が吉本から松本の意見に楯突いたことを謝罪しろと言われて、いや謝らない云々という話が目に入ってきました。あれだけ売れてあれだけ大物になれば影響力も大きいわけで、ある種最高権力者みたいな存在なわけですね、松本氏は。彼はそういう自分の立場について自覚がなさすぎるんですよね。表面化していないだけで、それこそ忖度で「反松本」とみなされる人間が何人業界から消されたことか、少しは考えるべきなんですけどね。まあ周りにそういうことを言う人が居ないので言ってもしょうがないんでしょうけどね。

2016年パ・リーグCSファイナルステージ 北海道ファイターズVS福岡ホークス④ NPBに興醒めした今年の事実上の日本シリーズ

2016年パ・リーグCSファイナルステージ 北海道ファイターズVS福岡ホークス③ CSファイナル五戦目 先発攝津3回で降板というありえない継投の続きです。

■明日の継投上、東浜を早めに使うのはありえない
 3つめのありえない理由として、ここで東浜をロングリリーフで使うと③大事な明日の試合に東浜を使えなくなるから。使えたとしても今日以上に調子を落とす。そうなったら大事な場面で使えない、勝利パターンへと繋ぐ六回頃イニングまたぎで投げるのがこのCSでの東浜の役割。その役割を全うさせることが出来なくなる。さらにもし明日の試合でアクシデントが発生したら?延長の展開となったら?連投の東浜は間違いなく調子を落としており、失点のリスクが高くなる。ここまで三連投した影響があるからこそ最終戦で打ち込まれて負けのきっかけを作ったわけですから何をか言わんや。仮に東浜がこの試合抑えていたとしても、最後の六戦目でリリーフ枚数が足りなくなるリスクを犯すことになる。攝津がKOで、明日を考えて使いたくないけど使わざるを得ないという状況ならともかく、先発投手の余力を残して代えてしまうというのは今日だけでなく明日の継投の都合上からもありえない。既に二敗して追い込まれたということはこちらの継投は制限される。その制限を確実に超えている起用。一体どういう計算を立てているのか本当にわからない。こんなことで第六戦に突入していて、アクシデントが起こっていたら一体どうしていたのか?危機管理能力がない後は野となれ山となれ継投だと言わざるをえない。

■いつもと違う使われ方をした場合、違う役割をこなそうとする場合、本来の能力は発揮しづらい

 これまでの東浜の登板内容、5回途中・6回途中・6回途中という登板の仕方を見ると、大体この展開でいくというパターンが決まっていたはず。先発が5回・6回ゲームを作って、789の必勝パターンの前のつなぎ役。そして万一のロングリリーフ要因で、早い回にそなえる。さらに延長の場合でも2イニング投げる可能性は十分あったでしょう。

 つまり、東浜は早い回・7回の必勝パターンの前・遅い回の3つに備えた準備を念頭に入れてこのシリーズを戦っていたはず。まあ延長は他の投手でしのぐから考えなくても良いとは言われていたかもしれませんが。万が一の際には東浜に任された展開もありえたでしょうね。そうなると東浜は責任感から、いろんなことを考えてあれもこれもやろうとして、パンクしたでしょうね。投手の枚数が少ないので東浜が延長に投げる可能性はゼロではないですから。そういう場合にも東浜は備えなければならなかったでしょう*1。3連投の疲労・精神的重圧を考えれば、打たれるのも当然ですね。ましていつもよりタイミングが早い4回頭から。

 この前投げた5回と1回しか変わらないのなら、大して影響ないのではと思われるかもしれませんが、表裏というイニングのテンポを考えると、アウト6つ分違う。更にその間準備があるし、5回のあとにはグラウンド整備がある。ピンチになって一旦投手コーチがマウンドに向かって、次のタイミングかな?という間合いを考えれば尚更時間感覚・幅は異なってきますよね。5回・6回・6回と遅い方に合わせていたものが、急に早くなる。となると当然それに合わせるのは難しい。更に遅くなっていたらまだしも、早くなるという展開は滅多にない分難しくなる。リリーフはいつも同じ場面・展開でいくほうがやりやすいと言われます。逆に言うと使われ方が安定しなければ難しくなる。これだけ何時投げるかわからない安定しない使われ方をされたら東浜を責めるのは酷としか言いようがないでしょうね。あんな無茶苦茶な使い方で結果を残せる方が凄いと言うべきでしょう。リリーフ経験が乏しい東浜には尚更*2

 昨年は千賀がジョーカーとしてロングリリーフというか先発からバトンを受け取って勝ちを789回必勝パターンに繋ぐというえげつない役目を担っていました。千賀ほどの絶対的な存在であるからこそ可能な役割であって、今年成長したとは言え、終盤コンディションを落として安定していなかった東浜にそのような役割は無理。そもそも絶対的な存在であるから、チーム内でリードさえすればウチが必ず勝てる!という自信につながるもの。「千賀が投げる?良しイケる!」と勢いがつくもの。そうではない投手をジョーカー役に使ってもどうにもならない。むしろ4回から投げさせて、「え?大丈夫なのか?」と不安を蔓延させるだけ。あの場面同点で凌いだとしても、「やっぱり駄目じゃないか、何をやってるんだ…」と動揺を招いた以上、多分負けたでしょうね。奇策は裏目に出た場合、ダメージがデカイですから。奇策はリスクがデカイという用兵の基本をどれくらい念頭においた上での決断だったのでしょうか?

■相手先発がKOでロングリリーフ登板=得点の可能性が大きい。点がこれから入るのに動いて流れを変える必要性はどこにもない
 また、④ファイターズが2回から投手をバースに代えたこと。ロングリリーフを使ってきたことからも、東浜交代はありえない。今まで言ってきたと同じ理由で、2回で投手が代わった・マウンドを降りたということはこれから継投でバース含め4人~5人は出てくる。となると、こちらが点を入れる確率が非常に高い。勝ちパターンでもホークスを抑えきれないファイターズが負けパターンで0点で抑えきれるか?そういう計算はまずたてられない。

 仮に攝津が打たれて追いつかれたとしても、同点で継投合戦で延長勝負まで行った場合、こちらが勝てる確率のほうが大きい。守護神バースもいないわけですからね。ならば先発攝津を同点まで引っ張るのが当然。失点の内容によっては5点・6点まで我慢しても良い。必ずウチの打線ならファイターズの中継ぎから最低でも2点は取れる。どれ位点が取れるかという計算は人によって異なるとしても、取れる確率が高いの確か。いずれにせよ、相手が負けを覚悟でロングリリーフをつぎ込んできたのだから、慌てる必要はどこにもない。じっくり腰を据えて勝負を見守ればいい。バースを攻略し、そのあとの投手から点を取ることを念頭において、「乱打戦はこちらの望むところだ」と同点までゲームを絶対に動かすべきではない。

■敗因は工藤監督のファイターズフォビア

 4回頭の先発攝津から東浜交代でゲームを不用意に動かしてしまったこと。これが全てですね。全く理解ができない、不用意な行動・采配でした。敗北の90%は自滅といいますけど、まさに自滅でしたね。下手に動いて流れを変えて、相手に勢いを与えてしまった。プロ野球ニュースで平松は、「継投ではホークスが有利。なんとかしてファイターズは早い回で先発を引きずり下ろしたい。リードして後ろにつながれたらまず勝ち目はない」と語っていたように、それが殆どの人が思っていたこと。なんで相手が喜ぶこと、先発を早く降ろすということをしてしまうのか?なぜ相手の嫌がることを念頭において行動しなかったのか。

 結局、自分たちの都合・攝津がいまいち信頼できないというところしか見ていないから、そうなってしまう。4点差が2点差になってしまった!という表面上のところしか見ていない。状況・展開を冷静に把握できていたら、「このあとは点の取り合いだな。それでもウチに勝ち目がある」とドッシリと構えていられるはず。「ああ~2点差だ、コワイコワイコワイ」と浮足立っていた、パニクっていた。11ゲーム差を猛追されてひっくり返されて完全に恐怖症になったんでしょうね。冷静に物事を考えられないビビリになってしまった。敗因の真の原因はファイターズ恐怖症、ファイターズフォビアですね。どうして11ゲームもの大差をひっくり返されたのか、その原因を正確に分析して理解していないから、必要以上にやたらめったらに恐れるわけですね。

■使うなら最低限のラインを守るべき。選手を起用したなら監督は責任を全うすべし
 そもそも攝津が信頼できないなら、初めから使うべきではないんです。だったら初めから東浜を先発させておけと言いたい。もちろん連投した東浜には先発なんて無理。他に投げられそうなのが誰もいないから消去法で攝津を選んだのだとしても、使った以上は先発としての最低限の場面まで任せて、それでダメだったらあとはもうおとなしく死ぬだけ。この試合までに既に二敗してもうあとがなく残り全部勝たないといけない。そのためには攝津が5回まで行かないと、今後の展開がきつくなるという場面なのだから、そういう展開に追い込まれてしまったのだから、余計なことはもう何もすべきではない。そういう時に動けば状況を悪化させるだけ。試合を任せた以上、選手を信頼して心中するべき(あくまでここでこの選手がダメならもう仕方ないというケース限定ですが)。腐ってもエース攝津で負けるのならばそれでいいではないか。チーム内であいつにチームの命運を任せられないという立場の選手ではない。攝津で負けるのならば納得がいくが、実質1年目の東浜で負けて納得する選手がどれほどいるのか?

 工藤が自分で目をかけた選手で、今シーズンここまで使って結果を出してきたから東浜という判断だったんでしょうね。甘いですね、考え方が。前にも書きましたけど、攝津のほうが実績が上。過去のチームでの実績・貢献度を尊重しなければ、チームの序列・求心力は保てないですよね。

 何よりあそこで攝津に任せず、東浜に託した以上、敗戦の原因を作り出してしまった東浜は自分で負けたと苦しむことになる*3。そういう東浜を気遣って「あそこで使ったのはやはり無理があった。私のミスであり、東浜に責任はない」と明言してかばってやらないといけない。敗戦時の指揮官の責任を全うしていないですね。まあ敗戦後総括が出来ないのは今に始まった話ではないですけど。

 ①の理由で経験の浅い若手東浜へ任せる愚策という指摘で忘れていましたけど、経験豊富なベテラン攝津からの交代ですからね。経験豊富なベテランなら良くなくともなんとか凌いでくれるという可能性もありますけど、新人・若手にはそれがない。新人からベテランという継投ならばともかく、実績あるベテランから若手への継投ですからね…。何重の意味でもありえない愚策ですね。

■左腕加藤から右腕バースにスイッチしたファイターズに対し、タイプの似た右の攝津から右の東浜という継投
 こちらの愚策とは対照的にロングリリーフバースは素晴らしかった。あの難しい場面で完璧に凌いで逆転の流れを作った。とにかくテンポが良かった。4イニング行ったバース、ロングリリーフの成功とこちらの継投の失敗は今シーズンを象徴する現象でした。

 忘れていましたが、東浜が駄目な理由として、東浜が全盛期攝津の下位互換と書いたように、⑤東浜と攝津は割りとタイプが似ていることが挙げられます。加藤→バースと吉井は左右でロングリリーフを切り替えた。加藤が打たれることを計算に入れて、その場合は左を意識した打線に対して右投手をぶつけることで相手打線を封じるという計算があった。対照的にこちらにはそれがなかった。

 ですから、もし仮にあそこで継投でいくのならば左右を切り替えて、相手打線の戸惑いを狙う交代でなければならない。行かせるのならば左腕の嘉弥真や飯田しかない。継投に出るのならば東浜の前に必ず左腕を挟むべきだった。ところがその二人はベンチにすら入ってないから、そういう策すら取れない。そもそも左腕のロングリリーフを選択肢の中に入れていない時点で論外ですね。

 左のロングリリーフ欠如という判断、そういう布陣で臨んだ以上、ロングリリーフ投入はもうありえない。そういう判断をした以上、先発にすべてを任せる以外取る道は残されていない。そういう歪な布陣で臨んだわけで、相手からすると万一の際でもロングリリーフ左腕が挟まれてこないというのは非常に与し易かったでしょうね。特に左腕が苦手と言われるファイターズからすると何をか言わんや。最初の選手発表、ベンチ要員を見て吉井は「よし、これなら勝った」とほくそ笑んだのではないでしょうか?

 どうも力押し・真っ直ぐの速い投手を好む傾向があるのか、左腕育成に優先度をおいていない。去年から150キロ右腕がわんさかいるものの左腕がいないことが気がかりでしたが、左腕整備の失敗というのは工藤政権の課題になるかもしれません。

スクイズ無警戒の謎
 大矢いわく、ピッチャーが森に代わったばっかりだからスクイズをやりにくい。そこで勝負に出たのは見事と。個人的に小技使いの中島なんだからスクイズはありうる。なんでスクイズ警戒しないのかな?と思っていた所で、ノムも「細川が全く警戒していない。栗山の性格だとスクイズあるよ」と解説してただけに疑問だったんですが、そういうことだったんですね。

 その次の攻撃で内川を走らせて本塁憤死。次がいい働きをしている松田で無理する必要なんてないのに、とにかく浮足立っていますね、チームが。二戦目のところで伏線と書きましたが、二戦目で今宮が本塁で走塁死している。ファイターズの外野の守備の良さはもう今更言うまでもない。守備が良くない、肩がダメというデータ・根拠があるのならともかく、二度もおなじ本塁・走塁死ということをやらかしてしまった。一度目はともかく、この二度目は絶対に許されない場面。特にランナーが内川。サードコーチャーは一体何を考えているのか。逆転されたからと言ってイチかバチかをやる場面ではない。継投でも走塁でも、この場面で失敗してしまえばどうなるか?どれくらいのリスク・コストを抱えることになるのかという計算が出来ないのか?

 継投・守備のミスから攻撃のリズムも悪くして、さらに守備も~という悪循環サークルを今シーズン何度も見ましたけど、今年を象徴するにふさわしい試合展開でしたね。松田が打てなくて負けるのならもう仕方ない。チームの基本の型であるクリーンナップ・中心打者に繋いで、あとは任せる。それで負けるならもうしょうがないのに、何をやってるんでしょうか?後先考えずその場のノリでイケイケ野球をやっているからこうなるんでしょうね。流れがきている、ノッている時はイケイケで更に畳み掛けるのはありですけど、リスクがデカイ場面でやったらただの自滅でしょうにね。

■理解できないベンチメンバーに選手起用方法
 投手登録の人数の少なさで、ロングリリーフ左腕がいない。これではロングリリーフ役がいないから継投が制限される。これでマシンガン継投で勝とうとするのは虫が良すぎる・虫がヨシすぎるコーチという話をしましたが、それ以前にそもそも、ファイナルステージの人選がおかしい。内野では川島・金子、外野の代打では吉村・江川、代走では福田・城所と役割がかぶっている選手がいる。代走で足で1点を考えて福田・城所はいいとして、内野と外野の被りはどちらか一人でいい。野手より投手登録を増やすべき。

 そういうとここに来て飯田も笠原も嘉弥真も誰も使える状態にない。だから野手登録を増やすのは間違いではないという話が上がってきそうですが、そもそもこういうシーズン終盤に備えて投手を使えるように起用して調整しておくべきなんです。それがきっちり出来ていない時点で投手コーチの手腕の問題になる。使えないにしてもどこかで負けゲームを作って明日の勝ちのために敗戦処理役がいる。ファイナルステージで勝ち上がりが突破するには4勝2敗でギリギリの結果になる。2敗は絶対する。その2敗をいかに上手く負けるかがポイントになる。そのためにもどんなに使えない投手でも肩を休ませるために犠牲役が必要。こういうのは来シーズンのための経験にするために若手ですよね。島袋でも笠原でも来年のために投げさせるべきだった。まあ、長嶋野球のように捨て試合を作れない監督なのでそういう発想がそもそもないかもしれませんが。

 バリオスの起用もそうでしたけど、今使っても機能するはずないのに使おうとする*4。ここで結果を残してくれたらという希望・願望で投げさせる。8人のリリーフ全員が全員素晴らしい内容で投げてくれるという都合のいい前提でベンチメンバーを組んだのは大問題ですね。

 で、投手がダメだと。他に使えないのだと判断したのならそれはそれでいいとして、そういう方針であるならば今度は野手の力で勝つ作戦を取らなくてはいけない。具体的には采配の力・戦術で勝つことを目指さないといけない。金子は内外野イケるし小技が使える。江川・吉村も代打の切り札としてどんどんつぎ込むべき。ここぞという所以外にも積極的に代打・代走を出してベンチメンバーの野手全員をフルに使って勝ち切ることを目指さないといけない。ベンチ全員の力で勝ち上がるぞという意志を見せなくてはいけない。しかし代打・代走起用でここまで動いてくるのか!という目立った起用はない。川島・金子といったメンバーならばピンチバンター・進塁打などのつなぎ役として使えるが、そういう起用もない。城所で守備強化というのも一度だけ。何より城所なら足で勝負をかけるわけで一気に福田・城所W代走ということだってある。そういうのは博打すぎるので個人的には問題だと思いますが、こういう野手主体のベンチメンバーを組んだからにはそういう戦い方をしないと筋が通らない。選手登録と起用に齟齬がある。こういうベンチメンバーならそういう戦い方をするしかないのに一貫性がなさすぎる。

■吉井コーチの放出がチーム弱体化を招いた、ホークス最大の敗因・天敵吉井
 結果として、ウチが有利なはずの、本来強みであるはずのリリーフ陣・継投という要素で敗れた。相手サイドはクローザーすら使えないという非常事態・不利な状況にあったのにもかかわらず、それをものともせず継投を成功させた。先発・リリーフ問わず、全ての投手を上手く使い、不測の事態に万全に備えて管理仕切った吉井に対して、こちらは先発もさることながら、リリーフの使い方が最後までドがつくほどの下手くそだった。最悪な思想・手腕を見せつけた。現代野球のセオリーに逆行する非常識な采配をした。その投手の使い方の上手い下手の差がシリーズの明暗を分けたファイナル・事実上の日本シリーズでした。

 まあ、そりゃ非常識な采配・「継投」で8月の時点でリリーフ陣を崩壊させてリーグ優勝を逃していたのですから、こうなることも当然といえば当然ですよね。「継投」がいくら下手でも事前にこちらが有利と見ていたわけです。一年間を通しての「継投」がいくら下手くそでも、まさか短期決戦で無茶苦茶なことをやったりはしないだろうと思っていたわけです。そう思っていたわけですが、まさかここまで無茶苦茶だとはね…。呆れて物が言えないとはまさにこのことですね。

■ホークスフロントは今一度組織づくりを根底から見直すべき
 吉井一人いなくなったら、組織が崩壊してしまうということはそれだけ組織としてのレベル・完成度が低いということ。組織のあり方を今一度見直すべきでしょうね(まあ投手の使い方が下手くそというのは殆どのチームがそうで、ノウハウを持ってしっかり管理する吉井のようなコーチがいるチームの方が今のNPBではレアなのですが)。吉井という優秀な投手コーチと衝突したヨシコーチ・工藤監督は猛省していただかないといけません。吉井という玉を捨て、ヨシコーチという瓦を残すという非常識な人事をした理由・経緯をきっちり公開して、その決断をしたフロントには去ってもらわないといけない。まあ絶対やらないでしょうけどね。ホークスのフロントは無責任体質なので、絶対失敗の責任を追求しないし、責任を取ってちゃんと辞任する人もいませんからね。海外スカウト問題なんかもう何十年も放置ですしね。組織の問題にメスが入る・手がつけられることはまあないでしょうね。

■超優秀なコーチを野に埋もれさせるNPBの現状とは…
 吉井の流出・放出が最大の補弱、最大の不安要素だったシーズンでしたが、最後の最後までそのことを実感するシーズンになりましたね。逆に言うとファイターズは吉井の獲得(復帰)が最大の補強になったわけです。

 前にも書いた気がしますが、この吉井という超がつく優秀な投手コーチがいて、その投手コーチをロッテ、楽天オリックス、西武はとろうとしなかった。特に長年低迷している。オリックスや西武、13年以来苦しんでいる楽天はこのことを深刻に反省しなければいけない。「こんなに優秀な人材が野にいたのに、一体お前らは何をやっていたんだ?」と球団のトップはフロントの責任者を叱りつける失態でしょう。ぜひ彼らの見解を伺ってみたいものです。どうしてこんな優秀な投手コーチに声をかけなかったのか不思議でしょうがありません。

 実力ではなく、コネで組織人事を動かしているから組織が停滞する。優秀な人材は何が何でも取ってこないといけない。他所の組織の人材とその流出動向は常に目を光らせておかないといけない。捕手を育てるためのバッテリーコーチすらままならない時代で、多くのチームでその重要性が認識されている投手コーチすらも満足な人事が一般的に行われえないとなるとNPBの未来は暗いですね。今シーズンはホークスのダメさの露呈だけでなく、NPB全体の暗い将来が見えて野球への興味がガクッと落ちたシーズンとなりました。事実上の日本シリーズでお互いがベストの選択肢を選び合って切磋琢磨しあっての勝敗の決定、素晴らしい戦いを見せてくれないのですからね。このカードでそういう面白い試合が見られないということは、まず他のカードでも見られない。これではNPB全体に好影響を与えて全体が発展していくなんてことはありえない。細川もいなくなって今後のビジョンがまるで見えなくなりましたし、こんな駄文を書き続けるのも良い潮時なのかもしれませんね。と言いつつ日本シリーズやら高橋・中畑監督やら色々書くネタがまだまだあるのですが…。

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*1:ひょっとしたら投げなかった四戦目も三点差なので肩作っていたかもしれませんね。吉井の勝ち・負け展開&連投などに応じて、肩を作らせずに休ませるブルペン管理とは対照的なブルペン管理でしたから、休ませていなくても違和感ありませんからね。CSのブルペン事情がどうなっていたか詳しい情報欲しいですね。

 また、東浜が何時でもどこでも投げるように準備していた。抑えてくれると期待されていて使われたというところを見ても、非常に都合の良い考え方をして計算する・組み立てているということが伺えますね。今シーズンは「なんでもかんでも岩嵜」というヒドイ継投がありましたが、このファイナルでは「なんでもかんでも東浜」でしのぐつもりだったのでしょう。冷静に考えれば無理に決まっているのに、そうなって欲しい・そうあってほしいという当為や願望から逆算する極めて危険な考え方だと言えましょう

*2:※そういえばデーゲームだったなと気になって調べたら開始時間は18時・18時・18時・14時・14時でした。つまり、3連投した展開では大体20時以降に登板した。ここまではそれに合わせて調整していたのに対し、5戦目は4回からですからまあ15時とかそのあたりでしょう。ただでさえ緊張するCSでこれだけ時間差があれば身体も気持ちも作るのは容易ではなかったでしょう。これだけ環境が変化すれば普通はこの時間差という要因もマイナス要素と考えて継投をためらうはずなんですが…

*3:プロ野球CS:ソフトバンク 救援の東浜、大誤算 - 毎日新聞ついでに先発が初戦・三戦目でKOされたから早めに代えたとか馬鹿みたいなヨシコーチのコメントがありますね。初戦と三戦目では状況も展開も全然違うのに何言ってるんですかね

*4:多くの鷹ファンバリオスとその起用を叩きましたが、個人的には去年働いたバリオスを使うのは当然。何回かチャンスを与えるのも当然。バリオスを叩いているファンにはうんざりしました。しかし、3度目か4度目かの登板か忘れましたが、下ですら満足に結果を残せていないのに、無理やり上にあげて投げさせたことがありました。バリオス起用の問題はここにあった。3回位昇格チャンスを与えるのは当然で許容範囲内としても、下でも本来のスピードが出ておらず、前回と何も変っていないのに上で投げさせようとする。根拠なき昇格がありましたが、それはリリーフが崩壊したから。リリーフが崩壊して困ったら誰か他の人が活躍したらいいなぁ、投げてくれたら良いなという都合のいいものの考え方をする象徴的なバリオス起用でしたね。

2016年パ・リーグCSファイナルステージ 北海道ファイターズVS福岡ホークス③ CSファイナル五戦目 先発攝津3回で降板というありえない継投

2016年パ・リーグCSファイナルステージ 北海道ファイターズVS福岡ホークス② CSファイナル三戦目・四戦目の続きです。五戦目の話をして終わるつもりでしたが、終わりませんでした(´-ω-`)。

 【五戦目】 加藤VS摂津 7-4 負
 前日の勝利・流れから今日もおそらく勝つ。この流れだとおそらく最終六戦目までもつれる。上手く行けばとうとう風物詩の屈辱を晴らしてくれる、初めてのCS突破という逆転劇が見られると思っていたのでワクワクしながら観戦していました。しかし期待は裏切られ敗戦で終わり相当ショックを受けました。もちろん負けることはありえることなのでそれでガッカリはしませんが、負け方にショックを受けました。その理由、前々回書いたようにこのシーズンの中であり得ない判断であると思った2つのうちの②攝津の早期降板について書きたいと思います。この攝津の早期降板、3回を投げて交代というのはどう考えてもありえない。

 まず、相手先発加藤がまたしても新人で、しかもホークスに何回かKOされている投手ということで事前に相当有利だろうと思っていました(対鷹戦の成績は五試合で2勝1敗ですが、早々とKOされながらも負けが消えた試合があるので数字上は負けが目立っていませんね。左腕ということもありますが、5回先発して26イニングで防御率3.76という投手ですから、まあこの数字を見れば十分打ち込める。与し易い投手ですね)。その通り初回で4点をとって、これで明日に繋がったと思っていました。柳田のピッチャーゴロをミスして自滅した感が強かったですね。新人・経験の浅い投手はやはりこうなってしまいますね。ガチガチだったところに球が転がってきたら、まあそりゃ手に付かないし、判断ミスもするのは必定。

 しかし敵もさるもの。中田のHRに中島の盗塁から杉谷のタイムリーで2点差。この3点差の状況で走ってアウトになれば相手に勢いを与えてしまう。ゲームを決めかねない。ここで走った中島の勇気が褒められていましたが、大したものですね。細川もこのケースでは走らないと思っていたと解説されていましたが、そのとおりでしょうね。福田に走られた・Wスチールを決められたシーンから、足でこちらも絶対にやり返してやる!勝負どころで絶対盗塁決めてやる!という意気込みが中島、もしくはファイターズチーム全体にあったのでしょうか。

 すぐに点差を詰められてまだまだゲームは決まっていないという展開に戻されました。千賀で負けた三戦目(もちろん6点取られて何もできずに敗れた初戦も同じですが)にウチがやれなかったことをきっちりやられましたね。

■細川の意図と工藤の意志、チーム内の意志決定過程は正確に機能していたのか?
 同じくプロ野球ニュースで中田に打たれたHRについて、大矢は「真っ直ぐでストライクをアレだけ取れていたのに、なんで変化球攻めにしたのかな?まあ、4点差あったからこういう攻め方になったのだろうけど」という指摘をしていました。

 それを聞いて思いましたけど、細川と工藤あるいはヨシコーチは、お互い意思疎通がどれだけ出来ていたのか?4点差あれば細川は当然明日のことを考えてリードするはず。今日勝てば良いわけではない。目的はクライマックスシリーズ突破=明日も勝つということなので、今日勝って当然で、より明日勝つために有利になるように明日も含めたリード・攻めの配球をする。そういう細川の捕手としての計算・意図をベンチは理解していたのか?どうも細川の計算・リードを無視している気がします。そもそも配慮しているのなら、バンデンだからといって高谷にキャッチャー変えないでしょうからね。

 細川も三回で攝津を降ろして東浜を四回から投げさせるという選択があるとは思ってもいなかったし、そういう決断を工藤監督から相談されていなかったと類推します。そういう決断・選択肢がありうると知らされていたのなら、もっとリードも変っていたはず。もしこの回で失点したら、東浜にスイッチする事がありうるという判断を聞かされていたら、細川も配球を変えていたと思います(というかそんなこと無茶ですと猛反対するでしょうけどね)。まあ細川本人に聞いてみないとわかりようがありませんが、是非聞いてみたいですね。工藤から配球や投手継投についてどれくらい相談されて、意思疎通が取れていたのかを。

 作戦立案のトップである監督、意志決定のトップである監督と、(あくまで守備面限定ですが)現場のトップ最高指揮官ともいえる捕手との意思疎通は非常に重要な要素。そこで齟齬が生じていたとしたら、まあ勝てるはずはないですよね。

■KO・アクシデント以外で先発投手を3回3/3で降板させるという常識外の継投
 というのも、普通はKOされていない先発を4回に入ったら降ろすという決断はありえませんからね。4回から東浜となって、ランナーが溜まって田尾は「ここで岩嵜ではないか?」と解説してましたが、789回の3人を固定しているのだからそれはありえないですね(一応書いておくと、7回からは岩嵜・スアレス・サファテですね)。東浜を遅くてもランナー貯めた時点で、代打岡の前に変えるべきだったと言ってましたが、東浜を使った時点でもうあとがないのだから、リリーフをつぎ込めるわけがない。

 そもそも先発攝津をこの時点で降ろしては絶対に行けなかった。KOされたわけでもない、腐ってもエースであった投手・ベテラン攝津を何故3回が終わった時点で降ろしたのか?ひょっとして何かアクシデントで降板か?と思ったくらいあり得ない決断でした。

 負けたら終わりなのだから岩嵜をつぎ込むべきだという考え方ほど継投に危険な考え方はなくて、継投というのは基本何が起こるかわからない。危険球、ピッチャー返しや選手の交錯に、投げて故障・肉離れなどの怪我という事態が起こる。アクシデントがあって投げられなくなるリスクがある以上、危機管理上、リリーフは早々につぎ込めない。落合が言うように、何人も投手を出せば失点するリスクが高まる。何人も投げさせれば、必ず誰か一人はその日調子が悪い投手がいる。完璧な必勝リレーを作っても、789回の一点リードを守りきれずに延長にもつれ込んでしまうということは珍しい話ではない。まして789回に投げるという役割を固定されてない場合、いつ行くかわからない投手はもっと難しい。

 先発が早い回でKOされたり、アクシデントで降板したあとのロングリリーフが制球が効かないで苦しんで失点するというのはペナントレースでよく見る所。ロングリリーフはそれこそ投げるタイミングが2回だったり、5回だったりするわけですね(同点延長で10回からというケースもありますね)。3回の差があるということは、その日によって投げるタイミングに1時間近い差があるということ。試合が始まって1時間後に自分のコンディションのピークを持っていくのか、それとも2時間後にピークを持っていくのかの違いは相当大きい。投げろと言われたら何時でもイケるようにしておかなくてはいけないのですからね。いつでもいけるようなロングリリーフ適正のある投手は滅多にいない。

 よって先発が早々とマウンドを降りたときの継投というのは本当に難しい。どんないい投手でもその日完全に2~3イニングをゼロで抑えてくれるという保証はないわけですからね。保証がない以上、リスクに対する備え・リスクヘッジが必要になる。必然的に投手は後ろの展開に備えてとっておかなくてはならない。延長で12回やることがありうることを考えれば尚更。

 大体、東浜がダメで岩嵜で3回抑えたとしましょう。4-4で6回まで岩嵜が投げきって、789回はどうするのか?このCSシリーズでは岩嵜が7回という役割で固定されているのに、その岩嵜がいなくなればブルペンは「一体、誰が7回行くんだ?」と混乱する。森・森福やスアレス・サファテをとにかくつぎ込んでなんとかしのぐとしても、9回を過ぎればもう計算が立たなくなる。せいぜいサファテが10回も投げるくらいでしょう。延長に入ったら11回・12回は一体誰が投げるというのか?

 ノム(※野村克也、以下ノム)がS☆1で「ちょっと、この交代はわからない」と疑問を投げかけていましたけど、そういう解説とは対照的な解説だったので特筆しておきました。では、あの場面どうすればよかったのか?攝津がすぐに失点したようにあまり内容は良くなかった。だったら攝津続投でも打たれていたのではないか?そのリスクが有るならば、まだ信頼感のある東浜継投のほうが良かった、正解だったのではないか?そう思う人も一定数いるでしょう。しかしそれは前述通り、延長突入の備えからありえないというのが一つ。もう一つは次の理由・東浜のコンディションという理由からありえません。

■東浜にスイッチすることがあり得ない判断だとみなす5つの理由、①経験不足
 まず、①東浜が事実上の新人・若手であること。これまで本当に何回も言ってきましたが、経験のない若手には大舞台は難しい。過去阪神とやった2015年の日本シリーズ・CSで東浜は投げたことがありますが、それくらいで東浜は一年を通して投げきったことがない。工藤のレッスンで鍛え直されて成長したということは、モデルチェンジして新型の東浜になったということ。スタミナよりも瞬発力型になった東浜の過去の経験が十全に活かされるとは限らない*1。いくらでも投げられるという要素・持ち味がなくなった東浜を、とにかく困ったら東浜でしのぐという使い方をするのは理に合わない。

 東浜は今シーズンも開幕ローテを外れたものの、開幕して1・2週後すぐに途中からローテーションを任されるようになりました。リリーフ崩壊という事情があって終盤は後ろに回っていましたが、その前に先発としても打ち込まれ結果を残せなくなっていました。今シーズン飛躍した東浜ですが、まだまだ一年間ローテを守れるレベル、一流投手の域には達していないわけです*2

■②三連投しており、かつ内容も安定していない東浜が不慣れなロングリリーフで結果を出せると考えるのは理に合わない
 経験が浅い、一年間一度もフルでやったことのない若手東浜にゲームを託すべきではないという理由以外に、東浜はこのシリーズ3連投をしている。初戦は5回途中で打者二人からアウト2つ。二試合目は6回2アウトから登板し7回はアウト2つを計打者5人相手から取っている。三試合目は6回途中アウト2つを取りましたが、完璧ではなくヒット2本を打たれて打者計4人に投げている。

 完ぺきに役割をこなしたのは初戦だけで、残りの2試合はなんとか役割を全うしたというヒヤヒヤな内容。このシリーズ絶好調で完璧な内容を見せたのならばともかく、絶対的な信頼感があるわけでもない状態の投手に、この場面でロングリリーフを任せられる根拠はない。

 試合展開を考えると初回に4点が入って、一方の攝津は不安な立ち上がりを抑えて二回に突入した。そして早々にバースがロングリリーフで出てきて、その裏中田がHR。さらには3回のタイムリーで2点差。早め早めにいくぞと聞かされてはいても、初回の4点差でまず肩を作る準備はしていないでしょう。中田のソロのみの時点でも3点差ですから、継投はまだまだ先と見て軽くならす程度。3回のピンチでもしかしたら同点・逆転で登板があるかも?という気になって一応仕上げはしたでしょうけど、まさか2点差のままで4回頭からとは普通想定しないでしょう。繰り返しますが、同点に追いつかれてすらいないのですからね。そんな継投はシーズンで一度もなかったし、そういう準備をした投手もいなかった。

 東浜もKOされて飯田に早々交代させられた試合がありましたけど、あくまでランナーを貯めてからだった。常識外の継投で「4回の頭から行くぞ!」といくら投手コーチから伝えられていても、どんなに急いで仕上げようとしても頭ではわかっていても身体は準備できない、ついてこないでしょう。そういうロングリリーフの経験もろくになく、適正があるかどうかわからない投手にこの場面でいきなりそういうことをやらせるのは無理がある。そして、そういう役割をこなしてきたロングリリーフ役の同僚もいないから、こういう時にどうやって仕上げれば良いのか話を聞くことも出来ない。後述しますがロングリリーフをこなしてきた飯田がベンチにいないのですからね。

■中継ぎ・ロングリリーフに対する考え方の古さ・甘さ

 経験がないことよりも②3連投後一日休ませただけで、即ロングリリーフをやらせるというのは無理がある。投手起用のセオリーから外れている。今シーズンリリーフとして役割をシーズン通して(半年でも良いですが)全うしていたわけでもなく、またロングリリーフの経験が豊富というわけでもない。ロングリリーフとしての適正があるかないかもわからない投手に、この大事な場面でロングリリーフを託すというのはありえない。KOや乱調で交代不可避だったなら別ですが、まだ先発が余力を残しているあの場面でイケるかどうかわからない東浜に交代するのは東浜がダメだったたときのリスクを跳ね上げるだけ。東浜が抑えられるという明確な根拠が無い限り絶対やってはいけない愚策。

 とにかく中継ぎ・ロングリリーフという役割を舐めているとしか思えない傾向が、工藤・ヨシコーチにはある*3。おそらく大投手として先発第一時代の常識があリ、そういう経験をしてきたからそうなんでしょう。彼らの時代は先発がシーズン終盤セットアッパー・ストッパーを兼務するという時代で、優れた投手が大事な所であらゆる場面に投げるのが当たり前という発想を持っているからこそ、そういう考えになっているように思えます。リリーフに1回任せたら必ず抑えきってくれる、ロングリリーフだろうがなんだろうがいつでもどんな場面でも抑えてくれる。そういう甘い考えで継投を組み立てている恐れがありますね。良い先発投手だったら、リリーフくらい簡単にできるし、休みなんか必要ない。そういう甘い見通しが根底にあると思われます。

 故に今のホークス継投は最新の常識で運営されるのではなく、20世紀の常識で動かされていると言えるでしょう。優れたリリーフ、左右のワンポイント、ロングリリーフ、ストッパー、敗戦処理・延長用の投手などなど役割分担の重要性を理解していない。まあ流石にその役割の理解はあっても、その役割を全うさせるためにブルペンで投げさせずに休みを与えるといった発想はないのでしょう。なるべく投げさせないで一年間コンディションを維持する。そういう現代野球の常識がないので、以前書いたようにリリーフが馬鹿みたいに不調に陥る、継投が崩壊・失敗するわけですね。

 また、後述しますが、投手管理がファイターズ・吉井よりもひどく拙かったことを象徴する出来事がありました。ファイターズは大谷を含めて投手登録選手が最大で10人だったのに、ホークスは8人。短期決戦は継投が勝負を決める、リリーフの出来が勝敗を左右する要素が大きいのにもかかわらず、ファイターズよりも投手登録が二人少なかった*4。ファイターズが取れる継投策よりも二人少ない投手でやりくりしようというのですから、8人全員が全員良い状態でないと勝てるはずがない。当然そんなことはありえない。そういう投手の少なさにも関わらず、ロングリリーフを後先考えずにどんどんつぎ込んでいこうとする継投というのはありえない判断でしょう。

■ロングリリーフは難しい、ロングリリーフの登板は緊急事態

 ロングリリーフといえば、ファイターズに谷元という優れた投手がいます。すぐ肩ができて連投が効く。いつでもどこでも投げろと言われれば投げることが出来る。そういう使い勝手のいい投手というのは本当に貴重。彼の存在はファイターズにとって非常に大きいのに評価がイマイチなのは疑問です。

 彼がイマイチ評価されないのは失点することで印象が良くないことにあるんでしょうね。しかしロングリリーフというのは難しい。いつでもどこでもいけと言われて投げてしかも結果を残すのは難しい。どんなにいい投手でもそういう状況では、それなりに失点する。WBCで第二先発の役割が重要と言われるのはその何時投げるかわからない状況で投げる、しかも結果を出すというところにあるわけですね。

 ではダルビッシュのようにいい投手をそういうロングリリーフで使ったら完璧に抑えられるので、そこまですごいとはいえないのではないか?と言われるかもしれませんが、実際そういうことになったら面白いところですが、スーパーエースをそういう贅沢な使い方をするのは割に合わないので、そういう使い方をするチームは現実にはありえませんね。どんなにいい投手でもと書きましたけど、正確に表現すると本当に無茶苦茶いい投手をいつでもどこでも投げさせるようなことはしないということですね。裏を返すとそうじゃないそこそこ使い勝手の良い投手を何時でもどこでも使いまわすということなのですが。

 昔から言ってますが、ロングリリーフというのは最低2失点覚悟するべき。それでも全然かまわない。というのも、ロングリリーフを出す試合というのは先発が早々とKOされた試合やスクランブル、アクシデントで先発が降りた試合=ほぼ負け試合。負け試合をひっくり返せれば御の字・儲けものくらいで望む試合。ショートリリーフを何枚もつぎ込んで勝ちを拾うという試合もたまに見ますが、基本的にそういう試合は邪道(延長を除く)。そんなマシンガン継投で勝ちを拾っても一年間持たない。必ず中継ぎがパンクするからそういう継投は本来ありえないわけですね。だからこそ、一年間の中で捨て試合を作ってリリーフの方を温存する必要性がある。勝てそうだからいつもより早く継投をする、リリーフをどんどんつぎ込むというのは愚策なわけです。

 早々に投手を代える、ロングリリーフを使うということは非常事態宣言をすること、つまり緊急事態が発生していると警鐘を鳴らすことです。先発にアクシデントが発生したのと同じ危機が今起こっているということ。この試合は負ける可能性が高い試合だと宣言することになります。あそこで東浜をマウンドに上げたということは指揮官自らこの試合は負ける要素が大きいと考えていると白状したようなもの。攝津はKOされたと監督自ら宣言して、東浜は絶対抑えられると宣言したことになります。あの決断でナインは「え?」と動揺したと思います。

 あそこで東浜は完璧に抑えないと、指揮官の判断が疑われる。東浜が完璧なピッチングを見せて、「なるほど、だから東浜に代えたのか」とならないと、「なんでこんなピッチングをする東浜に代えたんだ。全然抑えられないじゃないか、なんでこんな早い段階で余計な交代をしたんだ、無理に投手を代えてしまうんだ」と疑惑が蔓延してしまう。動いて失敗した場合、チームは動揺する。そこから一から立て直さないといけなくなる。4-4で同点でも振り出しに戻っただけで慌てることはないのですが、勝負をかけた投手交代で打ち込まれた場合、振り出しに戻っただけなのに逆転されたような感覚に陥ってしまう。ましてひっくり返されてしまえば尚更ですね。殆ど負けムードにチームが包まれる。そこから流れをひっくり返すのは相当難しくなってしまう。

 こういうリスクが有ることを考えて継投を考えないといけない、組み立てないといけない。だからこそこの決断・継投は本当に疑問でしたね。試合を見ていて、もしここで東浜が抑えられなければ流れが一気にファイターズに行ってしまう。「こんな早い回から投手交代をして本当に投げられる状態なのか…?何か策があるのか?抑えられるという確信があるのか?」と思っていたら案の定大失敗で、「だから言ったじゃないか、一体何を考えているんだ!」と憤慨しました。

いつものように長くなったので分割しました→2016年パ・リーグCSファイナルステージ 北海道ファイターズVS福岡ホークス④ NPBに興醒めした今年の事実上の日本シリーズ


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*1:東浜は、昔はとにかく何球でも投げられる中田の下位互換と言われていましたが、工藤の鍛錬後はシンカー・ツーシーム主体の全盛期攝津の下位互換に変わっています。モデルチェンジ後はランナー何人出しても最小失点でしのいで完投勝利すればいいという持ち味を支えるスタミナはなくなりました

*2:間違いなく数年後にはそういう投手になってくれるんでしょうけどね。個人的にも期待している楽しみな存在になりましたし、今シーズンの東浜は楽しみですよね

*3:※追記―去年は右は二保で左は飯田がロングリリーフをこなしていました。谷間に寺原が投げて後ろでも同点や6回から勝利パターンへと繋げるつなぎ役のリリーフとして機能していたのでリリーフで負担がかかることはありませんでした。しかし今年は飯田はそこそこ働きましたが、二保は怪我でシーズン前から離脱で寺原は隔年投手ということなのか、ピリッとしなかった。右のロングリリーフがいない。困ったときの便利屋役もいない。そこをどう埋めるかはシーズン前からの課題だったはずなのにそこに全く手を付けなかったのですからね、何をか言わんやですね。ロングリリーフという役割を無視してマシンガン継投していましたから役割の重要性を認識しているはずもないですね。ロングリリーフとして使えそうな岩嵜をいくら良い先発候補だからといって、チーム事情上役割を専念してもらうしかないのに、ロングリリーフに専念させずに先発やらせたりセットアッパーやらせたり、無茶苦茶な使い方をしていたくらいですからね。本当アホですね。特にヨシコーチはすきあらばリリーフに先発やらせようとしたり、打たれたら逆にそのチーム・相手にぶつけていくというリベンジ登板をやるくらいなので、投手の使い方という点ではその手腕の稚拙さはもう言うまでもないでしょう。

*4:四戦目の投手登録は、ファイターズが、大谷・石井裕・宮西・井口・鍵谷・高梨(先発)・白村・谷元・バース・マーティンの10人。ホークスは東浜・岩嵜・森福・寺原・森・バンデンハーク(先発)・サファテ・スアレスの8人でした。五戦目は白村・バースが抹消されて吉川が入っています