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身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

続、反工藤公康名将論 工藤監督・采配のトリセツ

続、工藤公康「愚将」論―工藤公康名将論という珍説の検証の続きです。トリセツのオチまで長いので、迷い込んだ初見の方は一番最後のトリセツを読んで、興味を持って面白いなと思ったら、本文を読まれることをおすすめします。そこで面白いと感じなければ読んでも無駄だと思いますので。

目次

■最高勝率を誇る監督だから名将?勝率は優れた監督を示す指標にあらず。重要なのは優勝回数と優勝率

 また、次のような主張もありました。見当違いの名将論だったのでぜひ取り上げたいと思いました。ちょっと繋がりが悪くなってしまいますが、こちら→【名将】工藤公康監督 通算259勝 143敗 勝率.644: みじかめっ!なんJの話をしたいと思います。史上最高勝率監督である工藤公康は名将である云々という話です。リンク中の話の中身はどうでもよくて、 ポイントは最高勝率を誇る鶴岡一人監督の.609を大きく上回る突出した勝率を誇っているという点ですね。確かに名将と言われる監督たちに比べてまだまだ日が浅い。5年程度しかチームを率いていない。監督経験・キャリアが浅いと言えども、今の時点でこの数字は素晴らしい。名将と言ってよいのではないか―とまあ、こういう主張です。
 一見、筋の通った理屈。説得力のある話に思えます。この数字を見て、なるほど、確かに工藤監督ってすごいな。そう思う人は多いでしょう。が、これは根本的に物事のポイントを捉え違えた主張です。昔、落合博満はなぜ日本シリーズに弱いのか?という話をしたときに、「通算勝率は13勝17敗1分の.433。5割を少し下回った数字に過ぎない。そこまで言うほど弱いといえるだろうか?」というコメントが有りました。そのときに確か次のようなコメントを返した記憶があります。
 「勝率というのは何ら意味をなさない。日本シリーズにおいて重要なのは日本シリーズで勝つこと=先に4勝することであり、そこがポイント。それまでに3敗することは認められているわけで、そこで0敗であろうが3敗であろうが関係ない。4勝出来たのであれば、3敗しても何の問題もない。靖国参拝もなんの問題もないわけです。逆に4勝されてしまえばどれだけ勝っていても意味はない。3勝だろうが0勝だろうが、どれだけ惜しかろうが惨敗だろうが、負けは負け。そこに大した違い、意味はない。互角の勝負を繰り広げてどちらが勝ってもおかしくない名勝負だった!という日本シリーズだろうが、33-4で圧倒的に敗北しようが負けは負けなんです。そこに意味はない(名勝負を繰り広げることでファンに語り継がれるという点では興行・文学・ドラマ的な意味合いは発生しますけどね)。あくまで戦略目標・目的は日本シリーズを制する4勝の達成。そこにおいては勝率という指標は意味をなさない*1
 ―正確かどうかはわかりませんが、まあ確かそういったたぐいのコメント返しをしたことを覚えています。ここまで語れば勘の言い方はもうお気づきだと思いますが。ポイントはリーグ優勝を達成できたか?そしてその上で日本シリーズを制することが出来たか?その2点ですね。CS制度、ポストシーズン制度が確立された今はCSで勝ち上がることもそうですが、名将に問われるべきもっとも大切なポイントは①リーグ優勝CS突破日本シリーズ制覇。この3つがポイントになります。
 このシリーズに通底するまとめ・ポイントの話ですが、表面上だけみれば、③5年間で4回日本一という輝かしい実績・数字で優秀な監督に見える。そう見えてしまうのですが、ポイントは①のリーグ優勝。5年間でたった2回しか優勝していないということ。③の点について評価しない人はいないでしょうが、ここで言いたいのは①及び②の内容をよく見ておく必要があるということ。①リーグの優勝の仕方と②CSでの戦い方、勝ち方・負け方に大きな疑問符がつく。問題のある戦い方があるということ。それを知れば、短期決戦にも弱いし、工藤公康=名将などとは到底言えないという結論になるということですね。

■勝ち方に問題があるー勝率の急落が意味するもの。将来の負け・長期的戦力低下になる勝ち方をしている

 本題・要約の話をしたところで、元の勝率の話を続けます。今頃気づきましたが、上のリンクは2017年のもの、つまり通算3年目までの数字だったんですね。で、去年と今年の数字を合わせると.608(※参照―工藤公康 監督成績 - プロ野球記録)。これでも鶴岡一人監督の勝率に並ぶ素晴らしい数字です。リンク中を見て分かるように、去年と今年、工藤監督はグッと勝率を下げたわけです。コレが一体何を意味するか?
 もうおわかりですね。強い時、ぶっちぎりで優勝したシーズンで無駄に勝利重視で育成をサボるからこういうことになる。若手を抜擢して経験を積ませる。リリーフを故障しないように休ませて、来年以降のために大事に使う。そういうことをしっかりやってこなかったツケが去年・今年と一気に来て、ガクッと数字を落とした・戦力を低下させたわけです。3年先を見据えて常に優勝できるようにチーム状態を整えておく。戦力が衰えないように来シーズン・再来シーズンのことを考えておくのが、名将というものでしょう。それに失敗して戦力をガクッと落としてしまった。それが、この勝率の低下.657(17年)→.557(18年)→.551(19年)という数字に現れています。これを見て、戦略目標であるペナント制覇に失敗し続けた監督を果たして名将と言うことが出来るでしょうか?
 繰り返しになりますが、言うまでもなく、高い勝率の維持が戦略的目標ではなく、優勝すること=パ・リーグを制覇することが戦略目標なのですから、勝率が悪化しても優勝さえできれば特に問題はないわけです。物理上、論理上不可能ですが、勝率が1割だろうが0割だろうが優勝できればそれで何ら問題はないわけです。勝ち続けることというのは6割、7割という高い勝率をキープし続けることではありません。まあ、勿論そうすることが出来ることに越したことはありませんが、もっとも大事なのは優勝し続けることです。それが出来なかった、戦略目標達成に失敗した監督を名将と評価することは難しいと今一度改めて主張しておきたいと思います。
 むしろ低勝率で優勝し続けることのほうが遥かに難しいわけで、勝率の高さよりもいかに低い勝率で多くの優勝を重ねることが出来たかという方が名将・優秀な指揮官と評価する上で適切でないかと思いますけどね。まあ、当然、高かったらダメということがあるわけではないので勝率の高さを無理に否定する必要はありませんが。ただ一つ断言できるのは、歴代まれに見る勝率を誇りながら、5年のうちたった2回しか優勝できなかったという事実は非常に重いということです。
 .608という歴代1位の監督と殆ど変わらない2位の勝率を誇る監督と言われれば、「じゃあものすごく優勝したんだろうねぇ~。一体在任中何回優勝したの?え?5年やってて2回しか優勝できなかったの?そんなに勝ってたのに?それだけ勝率が高いのなら、少なくとも3回は優勝できるでしょ?そんだけ強いチームを率いていたっていうのなら、なんで残りの3回は勝てなかったの?」―とまあ、そんな感想を抱く人がほとんどのハズ。
 歴代の中でも高い勝率を誇るにも関わらず優勝できたのは僅か2回。監督にとって重要なのは勝率ではなく優勝確率なわけです。優勝確率わずか2/5。バッターなら立派な4割バッターですけどね…。無論、先発投手なら10勝くらいのローテ守ってくれる有り難い先発のコマの一人となりますが…エース級の先発には到底なりえない数字…。
 西武の黄金時代の監督だった森さんは8/9であったことと比較してみるとどうでしょうか?果たして本当に名将と言えるでしょうか*2?むしろペナントレースの本来の目的、優勝という項目をクリアするのがいかに下手くそかという裏付けになっている数字のように思えます。2位に0.5ゲーム差つける、勝率で.001でも上回ればそれでいい(勝ち星が優先されるシーズンなら勝ち星1つでも上回ればですね)。にもかかわらず、優勝した年はブッちぎりで異常な強さを見せつけ、負けるときは僅差で競り負けている。勝星がほしい時に勝てない。もう勝つ必要のない時に無駄に勝っているということですからね。2回しか優勝していないのに異常に勝率が高いというのは、ペナントレースの戦い方が拙いという事実の裏付けであると捉えるべきでしょう。*3
 では、どうしてこういう拙いペナント戦略になるのか?バカな戦い方で勝てるシーズンで優勝できないということになってしまうのか?これには「全力野球の履き違え」というものが根底にあるように思えます。これについては後述でひとまずおいといて、目についた工藤公康名将論への反論を続けます。

■王・秋山はポストシーズンで負けたが、工藤は負けなし&2位からファイナルを突破したから名将!?

 話を二本目のリンク記事*4の話に戻します。ここまでだけだと、特にとりあえげて批判・反論しておく必要性のある記事に思えないのですが、捨て置けない決定的に「!?」と、かつての少年マガジンばりの顔芸をしてしまう記述がありました。いわく、王も秋山もリーグで優勝・1位勝ち上がりチームからのポストシーズンで敗退を経験している。が、工藤はむしろ逆に優勝を逃してからのCS突破をしている。故に工藤は短期決戦に強い優秀な指揮官であると。
 これはもう、完全に無視することの出来ない、捨てておくことの出来ない暴論ですね。そもそもポストシーズンを導入した初期においてはセオリーが確立されていないという難しさがあるし、初期にはアドバンテージの一勝もなかった。日程上、2位3位が中4日でエースの3連投が可能だったというものでもなかった。優勝チームが日程上不利という今でも続く事情以外にも、2位VS3位の勝ち上がりチームに有利だった要素がまだまだあった時代だったんですね。2010年にロッテに下剋上を食らった年がそうでした。優勝チームを得意とする先発・~~キラーという先発がいれば、かなり有利になるという日程だったんですね。そういう事情で成瀬というホークスキラーがいたという事情もまた大きかったわけで。一人絶対的な投手が居たらそれだけで勝ち上がることが可能な制度だったという事情を無視してホークスの風物詩は理解できないわけですね。
 そういう背景を理解していれば、普通はそう簡単にポストシーズン・CSで負けたからダメ、CSで勝ったから名将なんて話はできないはずなんですが…。既に述べたとおり去年&今年のCSファイナル突破というのは、西武ライオンズが風物詩野球をやっており、それ故に初めて2位からCSを突破できたという要素が大きいわけです。そもそもリーグ優勝を逃すほうがおかしいのです。それに加えて、前回・前々回と書いたとおり、工藤はCSを見据えた采配をしていたわけではない=短期決戦に強い監督ではありませんので、何をか言わんや。
 工藤がコレはもうペナントで勝つのは無理だ、CSを見据えて戦うと見事に判断して、すっぱりリーグ優勝を諦めて、作戦・戦略目標を切り替えた。あっさりリーグ優勝という果実に見切りをつけて、CSを見据えて戦った。結果、その判断は見事に的中し、CSを勝ち上がった!ーというのでもあれば、そういう分析も許容できますが、実際は逆ですからね。優勝に固執してバカみたいに中継ぎ酷使、ベテラン依存起用で若手野手の育成軽視。で、挙句の果てにまたも大逆転負けですから(故障の疑いがある武田登板による右肘故障というおまけ付きで)。
 過去リーグ優勝を逃した中で大逆転負けを2回もしているのに、それについては触れずにノータッチで評価だけ。そこのところはどうなの?それは評価基準に反映されないの?あなたの評価基準は一体どうなってるの?と言いたくなりますね。

■風物詩野球を採用して、ロッテに間違いなくCSで負ける工藤野球が短期決戦に強い「短期決戦の鬼」?

 んで、短期決戦の鬼だ!なんていうわけのわからないキャッチフレーズでアイドルのように売り出していますけど、正直バカなんじゃないかな?と思いますよ。だって、今年はロッテと楽天がペナント終盤まで3位争いを繰り広げましたが、もしロッテが3位に入ってきていたら、短期決戦に強いロッテが必ず勝ち上がっていましたからね(まあ、強いというかホークス・ライオンズが弱いというか。あとロッテの戦力がちゃんと終盤に整備されていたらという条件付きになりますけど)*5。そして仮にホークスがバカみたいに大逆転負けをくらわずに優勝していたとしたら、ほぼ間違いなく100%とは言わずとも、90%くらいの高確率でロッテに下剋上食らっていましたよ。普通にペナント見ていればわかるでしょうよ。8勝17敗という圧倒的なスコアでボコボコにやられてしまったんですからね。1勝するのに2敗以上する計算になる相性ですからね、間違いなく下剋上食らってましたよ。
 マリンでは圧倒的に負けた、ボコボコにされたが、ホームだと6勝7敗でほとんど五分だからヘーキヘーキなんていう意見を見かけましたが、短期決戦というプレッシャーが掛かる戦いで苦手意識のある相手に試合感が鈍っている状況で上手く戦えると考えるほうがおかしい。
 参考として2010年の風物詩のときには15勝9敗、相性が良くてもCSで負けた経験を持っているのにホームだとほぼ5分だからなんとかなるなんて絶対言えないでしょう。大事な初戦を落としたら、やっぱりウチは今年はもうロッテマリーンズに勝てないんだと、今年のライオンズのようにてんやわんやであたふたして、アップアップになって負けた可能性が大です。
 1勝2敗ペースで負ければ危ないというのがファイナルステージです。1勝2敗×2、三連戦のカードを連続で負け越しすれば敗退してしまうというのがファイナル。実際最初のヤフオクドームでの4月・5月のカードは1勝2敗の連続負け越しだったので絶対ありえないとは言えないわけです。というか今年の対ロッテとのゲーム運びを見れば、かなりの確率でそういうゲーム展開になるのが予想されてしまうわけですね。
 万に一つもあってはいけないという短期決戦で、2017年で風物詩野球を炸裂させたのを見て、その後の日本シリーズと対翌年の広島での稚拙な戦い方を見て&これまでの雑な工藤野球=筋肉信仰・崇拝、力こそ全てという野球を見て、そういう細心の注意を払った戦い方が出来ると考えるほうがおかしい。2017年は楽天だったから、まだあの絶対的不利な状況からひっくり返すことが出来ましたが、今年は岩嵜もサファテもいないし、CS大活躍男内川が超常的な力を発揮することを期待できない。これで初戦をなくしたら、まずロッテに負けるとみなせる戦力・チーム事情ですからね。17年も18年も横浜・広島が相手だから、格下・短期決戦下手相手だったからなんとかなったという感じでしたが、そうでなかったらというIfを考えると、ゾッとする危ない場面がありましたからね。要するに相手の戦力が足りない格下相手か、相手がヘタを打つ愚かな相手でないと勝てない。幸運に恵まれないと勝てないわけですからね*6
 少なくとも風物詩を危惧する鷹ファンは優勝争いをしている終盤は気が気じゃなかったはずです。チームを指揮する人間やフロント首脳陣はそういう危機感をもっていたはずです。あれだけCSで悔しい思いをしてきたのに、ロッテに2回もやられたのに、再び同じ過ちを繰り返そうとしているなんて、一体フロントは何を考えているのか!?と言いたくなる体たらく。特定の1チームに、圧倒的な戦力差があるわけでもないのに、ワンサイドでボコボコにやられてしまう。このような危機・非常事態に直面して、「さすが工藤、名将」とか「日本一になった、三連覇したから良かったじゃないか」なんていう意見を見かけると本当にバカだと思いますね。危機管理や組織運営というものをまるで理解していない、およそ人の上に立てない人間だと思いますね。

■特定の苦手チームを作る監督、偏った戦術の弱点を突かれて大差のカード負け越しをするような監督が名将のはずがない

 言うまでもないことですが、そもそも特定のチームに、明確な戦力差があるわけでもないのにバカみたいに一方的に・ワンサイドで負け越してしまうなんていう事態を招く監督を名将なんていう方がおかしいという事実を提示しておきましょうか。
 バランスとしておかしくなるものの、特定のチーム・ロッテにだけ弱くなるにしても、他のチームには圧倒的に勝てるというチームバランス・戦力バランスを整えたというのならばまだわかります。優勝するだけの勝ち星としての帳尻が最後に合えばいいのですからね。が、他の4チームに大きく勝ち越すことが出来たか?無論言うまでもなく、オリックス以外に大きく勝ち越すことは出来なかった。楽天にも西武にも1つ勝ち越しただけ。というか戦力的にロッテに勝ち越しできないのはおかしい。少なくとも今年のロッテとは、楽天くらいの対戦成績でなければおかしい。
 3つ・4つ負け越したら常勝チーム、優勝を目指すチームとしては問題。5つ負け越したら、どうしてうちはこのチームに対してこんなに弱いのか?相性が悪いのか?とちょっと問題となるレベル。それが9つの負け越しですからね。なんで?どうしてこんなに勝てないの?歴史的大敗レベルの負け越しですからね(もちろん、もっとワンサイドでボロ負けしたチーム、二桁負け越したチーム・カードはいくらでもありますが、あくまでホークスの近年の歴史という意味です。実際、ホークスが2017年に、オリックスとロッテに18勝7敗と大差をつけて勝っていますしね)。*7
 過去10年のパの5チームとの相性をみても、ここまでワンサイドでボロ負けしたカードはありませんでした。どんなに相性が悪くても4つ負け越すカードがあるくらいなのが、ここ近年のホークスでした。で、何度も語ってきたとおり、2016年吉井放逐で吉井が再加入した後のファイターズに、9勝15敗で6つ負け越したという数字が目立つくらいですね。過去十年振り返っても、特定チームへの最大の負け越しは6だという事実にもっと目を向けるべきでしょう。
 それが今年はワーストの9という事実。この対ロッテへの相性の悪さ戦いの拙さが優勝を逃したと言っても過言ではないわけです。ロッテに2つ勝っていれば、ゲーム差なしの勝率で.002上回って優勝できたという数字は非常に意味が重い。ロッテ相手にせめて10勝15敗のスコアでいけただろうと要求することは、ペナントレースを見た上で、果たして暴論と言えるでしょうか?今年のロッテを見て、マリーンズさん相手には手も足も出ないよと言ってしまうようなチームだったと果たして本当に言えるでしょうか?
 こういうていたらくだったために、日本シリーズで4連敗をした巨人について、過去の日本シリーズの名言というか迷言が呼び起こされて、「巨人はロッテより弱い」という言葉がチラホラ見受けられました。この言葉を見て思ったのは、巨人はロッテより弱いのではなく、ホークスがマリーンズにただただ勝てない、ひたすら弱い。「ソフトバンクはロッテより弱い」という重い現実でしたね。風評被害を受けた巨人さんに申し訳ない気持ちになりましたね。まあ、対ロッテ戦を分析していれば、もっと戦い方があったとは思うのですけどね…。

■優勝を逃すのは?「油断」ー野村克也の分析から

 ※目についてしまったのでこの話書いてしまいましたが、ちょっと前後のつながりが悪い余計な話ですね。一回書いたので消しませんが、飛ばしていただいて構いません。おまけ程度の話と思ってください。
 2018ホークスが優勝を逃したのは「油断」が原因であるという説を未だに聞きます。2016の時もそうですが、リリーフ防御率の悪化・継投の拙さ。若手選手の起用欠如&ベテラン依存。結果、主力の怪我を招き、その穴を埋める若手が出てこないなど、要因を指摘していれば別ですが、謎の精神論を持ち出す風潮にはついていけませんね。そういう非理性的な態度に今の野球界の現状がよく現れているというべきでしょう。たるんどる!とか、根性だ!という精神論で乗り越えられる要素は小さいし、偶然の要素が強い。また因縁つけで、あとからどうとでも言えてしまう。そんな話を評論として聞きたいと思う人はいないでしょうから、こういう主張をする場合大抵バカか老害なのでスルー&アナライザー失格の烙印を押しています。
 野村克也氏も謎の精神論を持ち出していますね…。→野村克也氏、ソフトバンク・工藤監督の采配に疑問「監督は試合中に喜怒哀楽を出すものではない」 | ベースボールチャンネル(BaseBall Channel)
 ○ケガ人が多すぎた。「優勝候補の大本命」と解説者からお墨付きをもらったこと、17年シーズンに大勝ちしたことによる油断があったとしか思えない。
 ーと、ありますが、「油断」は関係ないでしょう。選手管理で上が下手こかない限り、現場は破綻しないのですから。2016と同じ失敗を繰り返しただけですから、フロントも監督も学習能力がないバカだと言えば済むこと。本当にペナントをちゃんと見ているのかと言いたくなる主張ですよね…。本当は最初、野村氏も老害評論家であり、精神論で語る愚かな性質がある。投手のコンディションを守るという現代野球のセオリーを未だに学習していない。成長を止めてしまった旧世代の人。老害評論家たちとまではいかないが、古い常識と過去の栄光に囚われたタイプであり、老害評論家連に半分片足を突っ込んでいる。ーとまあそんな風に書く予定でしたが、後半を読むと微妙にわかっているような、わかっていないようないかんとも判断しづらいんですよね。文を締める結論で次のように書いていますからね。
 ○せっかく育成しても、選手の起用法にムチャが生じるようなことがあれば、選手のコンディションにジワジワと影響してくる。それがこれだけのケガ人の多さにつながっているのだろう。12球団一の戦力を誇っているはずのソフトバンクだけに、工藤監督の手綱の引き方には問題があったと私は見ている。
 ○工藤の采配は「とにかく動く」。それで墓穴を掘ることが多い。とくに彼は投手出身であるにもかかわらず、投手を信用していないのか、コロコロ、コロコロよく代える。そのことによって投手陣が疲弊してしまったことは大いに考えられる。
 ーとまあ、工藤采配に問題があったとちゃんと指摘しているのですが、じゃあ具体的にどうまずいのかということを投手交代の早さ以外明言していないので、うーん…となってしまうところ。間違っていないし、当たっていると思うのですが、具体的にどこがどうという細かい点になるとふわっと、モヤッとしている。ダメ出しをしづらいところですね。100%間違っていると言いづらい。まあここがポイント!と明確化出来ていない以上、問題があったと見ているというぼやかし方をしている以上、わかっていないとみなしていいのでしょうけどね。具体的に語ってみよ!と詰められないので失格の烙印を押すのだけは止めておきます。
 ○工藤は名将ではない。優れているのはソフトバンク球団のマネジメント能力。毎年、宮崎市内での春季キャンプは一軍、二軍、三軍の全選手が、同じ所でキャンプを行う。二軍の選手の活躍がすぐに一軍のグラウンドに届く。そこで一軍選手たちの間で緊張感が生まれ、激しい生存競争が行われる。
 ー間違いではありませんが、緊張が生じても、レギュラー固定化宣言など、若手を試さない・チャンスを与えないという悪癖があるわけですから、この性質はあまり機能しない。特に2018年は若手の突上げという競争原理は働いていなかったはずなんですけどね…。
 ○ベンチ内での工藤の表情。監督は感情を表に出さないほうがいい。選手がベンチ内を見て気を取られ、プレッシャーになることもある。不安な場面でうまく行って、ホッとするとその感情がベンチ・選手に伝染してしまう。次のイニングはどんな投手起用をすべきか頭を悩ませる。喜んでいる暇などない。
 ○大型契約選手、最終年しか活躍していない法則。サファテも?
 ー落合氏も、監督が表情を出すと選手はそれを見ているから動揺すると今年の日本シリーズでも話題にしていましたね。原監督が表情出したことで若い選手は動揺したと。この話に全肯定するわけではないのですけど、監督のあり方として一つの参考になる話だと思うのでメモしておきました。また監督が継投で頭を悩ませるという記述がありますけど、未だに監督が継投を決めるという古いスタイルですね。投手コーチが決めることで、監督が口を挟むべきことではないでしょう。監督が口を挟むとしたら、監督が持つ拒否権を行使する時くらいでしょう。
 まあ言わずとも、ノムさん自身もなんでもかんでも監督型ですからね。育成・起用・戦術、なんでもかんでもやりたがるタイプなので、やはり昔のタイプの名将・知将ですね。サファテの故障離脱について最終年しか活躍しない法則という話をしていますけども、年齢とこれまでの登板数見てれば壊れてもおかしくないわけで、何を言っているんでしょうね?むしろサファテがその契約で3年(4年だったかな?)毎年60~70試合投げてクローザーとしての役割をまっとうすると思っていた人のほうが少ないでしょう。というかそう考える人間がいたらバカでしょう、はっきり言って。

■ファイターズフォビア、壊れた監督

 中途半端な野村克也批判をしたところで、話を戻しまして、本筋の工藤監督・采配のトリセツのまとめをして終えるために、昔書いた工藤監督の致命的な欠陥について再度触れたいと思います。そもそも以前書いたように工藤監督というのは「壊れた監督」なのですね。ファイターズに歴史的大逆転で負けた。勝率6割をマークしてペナントで優勝できなかったのは、1980年以降はたった3例しかなかったんですね*8。86年の巨人に、91年の近鉄。そしてポストシーズンで破れた05年のホークス。そして2016年。86年や91年のケースというのは130試合制であり、現在の野球からかけ離れているとはいい難いものの、約30年前のケースなので、あまり比較の参考にはならない。05年のホークスはポストシーズンでの勝者=優勝という時代だったので、コレもまたリーグ優勝を逃したという話とは異なる次元のカテゴリーになるので除外していい。つまり近代野球、現代野球においてこのような無様な大逆転負けを喫したのは前例にないと言っても過言ではないわけですね。貯金29でむしろどうやって優勝を逃すんだという大惨敗を工藤監督は喫したわけです。*9
  で、その結果、失敗をあらゆる角度から分析して、一からペナントの戦い方・戦略というものを学習して、監督として成長を遂げる。苦い教訓を糧として名将の道を歩みはじめるーなんてことは当然ありえず、監督として壊れてしまったんですね。個人的に「ファイターズ・フォビア」(恐怖症)と読んでいますが、ファイターズを異常に恐れるようになった。目先の敗北を異常に恐れるようになったんですね。不安でしょうがないから、臆病になり、その不安から逃れるために狂ったような采配をする。その場その場で全力を上げて勝ちに行く。そしてシーズン終盤には疲弊しきってチームが沈む。先行逃げ切り型といえば聞こえはいいですが、大抵は疲労が顕在化する8月頃からガス欠になって沼に沈んでいきます。先行逃げ切り&轟沈型、沈没型采配と言えますね。

■伝統的にペナントの戦い方に問題がある。つまり戦い方が下手くそ

 そもそもなんですけど、異常な高い勝率を誇る監督なのになんで5年で2回しか優勝できなかったの?という話の続きにもなりますが、ホークスはここ十年、戦い方が下手くそな傾向があるんですね。リーグ優勝したチームの勝敗表をチェックして見ると、大体、2位・3位といったAクラスのチームと5分に渡り合っていて、Bクラスの456位、特に5・6位という戦力が破綻している、チームが崩壊してペナントを戦えなくなっているチームからごっそり貯金を作ってペナントを制するというパターンが多い。ライオンズとかファイターズが優勝した年なんかを振り返って見てみると、やはりそういうセオリーを踏まえた感じの戦い方で優勝している傾向が見て取れるんですね。
 優勝するチームのペナントの戦い方というのはたいていこういうパターンになっている。強いチームに無理をせず、五分を維持して、弱いチームから確実に星を拾っていく。また、そこそこ万遍なく勝ち越して、2位チームをカモにするというものもたまにありますね。2016年のシーズンはファイターズ・ホークス共にぶっちぎりだったので、少し違う変則的なパターンですが、戦績を五分に分けても大事な首位対決で確実に勝ちを拾える。優勝争いしているチームを直接叩くことでゲーム差を縮めて追いつく。追いやってくる二位チームだったら、差が縮まってきたとしても、直接対決でダイレクトにねじ伏せて、絶対追いつけないようにする。優勝争いするようなチームですから、2位の対抗馬をそうやってねじ伏せるというレース展開はなかなか見られないのですけど、そういうペナントを制するセオリーもあると言えばあります。
 まあ、優勝することが目的なので、優勝しさえすれば良いのですから、どんな勝ち方であろうと問題にするつもりはありませんが、ホークスの場合、優勝のパターン。ペナントの戦い方が毎回同じに見えるというのが非常に気になる・目についてしまうんですね。ホークスが優勝したシーズンを振り返って見ると、2017・2015・2014・2011・2010(CS敗退)を振り返ってみると、僅差の混パだった2010はちょっと参考にならないので除きますが、5位・6位にカモを作って勝つ!優勝争いする対抗チームである2位をボコボコにして勝つ!というような戦略・思想が見受けられないんですね。とりあえず戦う試合、目先の試合に全部勝て!とりあえず貯金作っといたら優勝できるわい!とでも言わんばかりの雑な思想が通底しているのではないかと思えてしまいます。

■ペナント戦略思考の欠如

 2011・2015・2017における、90勝ペースのペナントぶっちぎりで勝てというオーナーの指令を反映するような最強チームですが、戦い方が全て同じ、雑に見えます。6月が終わって、そろそろ今年の各チームの状態・動向が明らかになったとき、「どうも今年はこういうペナントの展開になりそうだから、このチームをカモにしよう。逆に、このチームとは分が悪いから、なんとか五分で最悪借金3をラインに済ませるようにしよう」とか、そういったペナント思想・戦略がまるでないのではないかと思えてしまいます。
 補足説明でも使った事例ですが、2009年にCSに滑り込んだ2位となった野村イーグルスですが、その原動力になったのは最下位オリックス・バファローズとのカードを19勝4敗で乗り切ったこと。チームの貯金が11でペナントを終えたことを考えると、他とは五分で乗り切って、このオリックスをカモにしてペナントを戦ってCSに入る!という明確なプラン・戦略があったことが見て取れますよね*10。ここまで見事にやれとは言いませんが、こういった戦略・思想がなければ、同じように圧勝してぶっちぎりで優勝するか、今年のように勝てそうで勝てずに僅差で敗れる・優勝を逃すということを繰り返すと思います。まさに普段の工藤筋肉野球の試合展開のように、大差をつけて圧勝するのに、僅差のクロスゲームをことごとく落としてしまう。結果、選手の能力・スペック、トータル的な戦力では圧倒しているのに、勝ち星をなかなか積み上げられずに3・4位辺りでもたもたして苦しむというかつてのジャイアンツのようなことになるように思えます(ここ最近はトップを走って8月から失速というパターンですけどね)。

■全力野球の履き違え

 工藤野球では、全力野球という言葉が盛んに喧伝されるわけですが、はっきり言ってその意味を履き違えて明後日の方向に行ってしまっています。フルスイングと積極性の勘違いというのを、かつて野村氏は説いていました。積極的に打ちに行くのと、何でもかんでも飛びついて打ちに行くのでは意味が異なる。積極性が、蛮勇・無謀になってしまっているというような趣旨で、フルスイングを否定していた、根拠のないバッティングを批判していたことがありました。
 同じように全力野球の勘違いという現象がホークスの組織内に蔓延していると思えます。ペナントで優勝する上で90も100も勝つ必要性はない。必ずしもないわけではありませんが、90勝しなければならないというのはそんなにない。2016年においてはそういうシーズンですが、対抗馬である2位・この年ならファイターズの状態を見て戦えば、大抵は優勝ラインというのは80~85勝。それより低いライン、80を切ることだってある。その年その年、状況に応じて可変するわけで、その状況に応じて適切に合わせなくてはならない。またチーム事情から育成や休養の必要性も変わるわけで、その状況も考慮入れなくてはならない。そういうケース・バイ・ケースに対する考慮・ケアというものが非常に乏しいように思えます。
 結果的に勝った・負けたという目先の事実、HRや防御率・勝星といった派手な数字しか見ていないから、本質を見落としがちになっているように思えます。
 また、甲子園の弊害なのか、アマチュアスポーツの弊害なのか、団結や結束。一つになろう!ということを賛美・強調したがる。以前チラッと触れたように人間というのは集中し、協力することで1+1が2以上の力が出せる。3にも4にもなる。プロアスリート達が団結すれば、その時の力の増加は計り知れないわけですね。故に団結ということをしたがる。しかしそれは超常的な現象であり、必ずしもそれが起こるということを期待できない。起こらないほうが多い。奇跡と言ってもいいですね。奇跡というのは心地良いので、その快楽にとらわれてしまうのですね。合唱、歌を全員で歌いたがる学校教育もそうですね。一番わかり易いですからね、協調性とかそういう話にも繋がってきますし。みんなでとりあえずなにかやってる感覚になるので、お手軽に団結&成長、一体感が得られますのでね。
 ランナーズ・ハイというのがわかりやすいですが、修行僧とか鍛えに鍛えるとある種悟りのような状態になる。そういうドーパミンとかエンドルフィンとかキメた状態。個人としてのそういう超常的な力に頼るというのは、監督の「野球小僧である柳田がなにかやってくれる」という言葉に象徴されていますね。野球が大好きなスーパーアスリートが野球をキメた状態、大好きになって夢中でプレーしてハイになった状態が起こって超常的な力を発揮する。スーパースター個人の、一個人の力を遥かに超えたビッグプレー・活躍に頼る。個人の超常的な活躍に期待することに加えて、かつ全体としてもそういう団結力という不思議な力に頼りたがる。苦しい時の神頼みならぬ、選手頼みという宗教家というか、祈り屋・拝み屋のようなスタンス。端的に言うと頑張っていれば、きっと都合の良いことが起こってくれるという発想なんですね。
 つまり指揮官として上から俯瞰してチームを見て、「今のチーム力ならば~~」という計算をすることより、戦略を立てるよりも、個人の能力を基準に頼る。都合の良い働きをしてくれることを想定するし、都合の良いようなペナント展開になること=相手チームの不幸・不運を期待する。当然、そのような思想からは敵チームそれぞれの俯瞰どころか、ましてリーグ全体の展開・流れなど読めるわけがないのですね。
 みんなで一生懸命頑張れば!きっと優勝できるよ!だからみんな頑張ろう!という戦略もなにもない甲子園球児、アマチュア選手の延長上で采配を揮っている*11。こんなことでペナントを勝てるわけがない。だからバカみたいに大逆転負けをしてしまう。
 各チームの戦力分析、今後の流れを冷静に分析し、ベストな戦い方・戦術&戦略を見定める。また戦いながら、その都度その都度適切なものに修正していくなど出来ない。ただひたすら目先の試合をなにも考えずに全力で勝ちに行くだけ。逆転負けが怖いので異常に目先の勝利・貯金の積み上げにこだわります。貯金を守ろうとする守銭奴野球ですね。
 圧倒的なシーズンがチラホラあるように、対抗馬がいない年にぶっちぎって勝っているように、それ以外の勝ち方が出来ないような状態になっていますね。工藤監督就任以前からそうだったという傾向を踏まえると、もともとこういう壊れた監督のフォビア采配はホークス野球と相性がいいという風にみなすことも出来ますけどね。工藤監督・采配になってから暴走する傾向に拍車がかかっただけ、元々あまりなかったストッパー機能が完全に一掃されただけと考えてもあながち間違いとは言えないでしょう。このチームにして、この監督ありということでしょうね。
 普通の見識があるフロントなら、日本一だろうが契約満了にするはずですからね、こんな采配を見せられれば。*12
 全力野球という無謀なスローガン、戦い方に工藤野球の本質があると言っても過言ではないでしょう。精神主義・念力主義・根性主義、そのような不合理で工藤野球は構成されています。偶然と幸運、そして特定の選手がハイになってキメた状態になること、チーム全体が団結キメて団結力という計り知れない力が出ないと勝てないということです(勿論、選手がどこよりも揃って圧倒しているシーズン以外はということですね)。

■追記、全力野球追求の謎。責任逃れのアマチュア精神

 大事なことを忘れていたので追記です。全力野球推奨の背景について、どうしてみんなで一丸となって戦おう!みんな一緒に頑張ろう!ということがことさらに強調されるのか、指摘しておくべきことを忘れていました。なぜ全力野球が唱えられるのか?それは指揮官(及びフロントも)が責任を取りたくないからですね。責任追求逃れの要素がこのスローガンにはあるわけですね。意識的にせよ、無意識的にせよ、この全力野球、「みんながんばれ」という戦術コマンドは、要するに結果を出せなかったときの責任逃れなんですね。「みんな一生懸命になって頑張った・戦った結果だから、負けたとしてもしょうがないよね?テヘッ」みたいな卑怯な精神性が背後にあると考えられます。
 一生懸命やった、全力を出し尽くして戦った結果だから、ぼくはわるくないもん!とでも言うべき開き直りがそこには込められています。アマチュア精神以前の学級会のスローガンみたいなものですね。結果を問う、組織を率いるトップには責任が伴う。そういう当たり前の論理が何処かに行ってしまって、みんな頑張ったよね?精一杯やったしダメでもいいよね。ダメだとしても俺たち頑張ったよね?みんな輝いてたよね?それって素敵やん?という体育祭や文化祭のような精神性で組織を運営する。みんな頑張ってたし、輝いてたし、楽しめたからいいじゃん?みたいな学生のお祭り気分でやっているわけですね。プロフェッショナルな、近代化された組織とは程遠い精神性・論理ですね。

■工藤監督/采配のトリセツ

 以上、工藤公康・采配論終わりです。トリセツにしてまとめますと、①何でもかんでも自分でやりたがり、工藤理論を誰彼構わず押し付けます。
 ②故に工藤理論に従わない選手・コーチは追放されます。
 ③当然、自分の言うことを聞くイエスマンだけが集まるので、コーチの役割・目的はほぼなくなります。工藤監督を招聘するならば、チームのコーチは数年の間でコーチの全入れ替えが必要になるでしょう。それどころかチーム内での担当もコロコロ入れ替えないといけなくなるでしょう。フロントがそれを拒んだりすれば、確実にチーム内に不和が発生します。対立しなくても鳥越コーチのようにチーム内で慕われる・求心力の高いコーチも追放されることになります。工藤派閥の外の人間になり、居づらくなって辞めることになるでしょう。
 ④基本的には長嶋ジャイアンツ野球をします。個人の能力に主眼をおいて、エースと4番=速球とHRが重要視され、出塁率や繋ぎという要素は軽視されます。走塁・守備も脇に置かれることになります。
 ⑤レギュラーを固定して戦うというか、今試合で使える選手かどうかということが最重視されるので、偉大な記録を持ちかつ高い能力を発揮できる選手が寵愛されます。
 ⑥故に勝利が第一で育成という点でこれからの選手を大胆に試合に出すということはありません。なので監督期間中に若手がでてくることを期待するのが非常に難しい監督ということになります。
 ⑦当然休養という概念もないので、故障が多発します。選手を使い潰すタイプの監督で、特にリリーフ継投においては考えられない酷使継投をします。
 ⑧ペナント戦略というものがなく、目先の試合を全力で戦うので、ハマるときは大勝ちして優勝しますが、単年優勝したあとはチームが劣化するので、戦力の継続性は期待できません。
 ⑨当然、フロントがドラフト、2・3軍、FA、新外国人などで新戦力を常に提供しなければならなくなります。どこからも供給できなければ、戦うに値するだけの選手たちを1軍に送り込むことが出来なければ、ペナントで戦うことは出来ません。選手・戦力ありきの監督なので。
 メジャーなどでも、監督のタイプ・GMのタイプが色々あって、海を渡る前に自分が所属する人間をきちんと調べておかないと、あちらでは成功しないと田口氏がかつて語っていましたが、イチロー・松井やダル・田中といった超A級以外の適応が必要となる日本人選手がメジャーに行く場合は、辛抱して使ってくれる&待ってくれる球団・監督がいることが非常に重大であるというセオリーがあります。工藤監督というのは、そういう辛抱してくれる・待ってくれるタイプの監督ではなく、現場の勝利最優先なタイプ。またバレンタイン監督がレッドソックスでチームを解体させていたように、コーチや選手を自分の色で染めて采配するタイプの監督なわけですね。自分流の戦い方が絶対の非常に硬直的な戦術の下、野球をするタイプと言っていいでしょう。そのときその時の選手層・選手状態から最適な戦い方をするという柔軟性を期待することは出来ないタイプです。戦力がなければまず機能しない戦い方をする監督です(※戦力が豊富な場合は、CSファイナルのように選手起用。交代戦術がズバズバ当たるという戦術の冴えを見せることもあります。長所に触れるのを忘れていたので、追記しておきました)。
 ですからまあ、到底名将とは言えない。SBホークスという巨大戦力ありきのもとで機能する指揮官ですので。当然そういった結論になるわけですけども、是非他球団で指揮を執るところを見てみたい。是非他球団で監督をやって頂きたいですね。ホークスという戦力がある球団だからこそ、あくまで成立したにすぎないわけで、あまり戦力が整備されていないチームを率いて、果たしてどこまで出来るか拙論が本当に正しいかどうか検証のためにも見てみたいですね。
 一時は横浜監督の話がありましたが、現在の横浜を見るにもうないように思えますで、今の所一番ありえそうなのが西武ですね。渡辺GMと仲が良いので、「短期決戦の弱さを払拭するために格好の人材!」とか、「若手投手の育成に定評がある!」とか、そういう理由から招聘される可能性は十分ありえます。是非、ライオンズを率いてみて欲しいですね。ホークスというチームだからこそ、優勝が厳命され、それ故に異常に目先の勝利に拘った硬直的な采配をしていたという可能性もなくはないので。優勝の期待やプレッシャーもあまり強くない西武ではのびのびやれて、結構まともな采配・戦略を採用するということも考えられなくはないので。まあ限りなく小さい可能性ですけどね。
 来年以降のペナントの話とか、FAの話とか、ロッテになぜ弱いのかという具体的な話を書くつもりでしたが文量的にまた次回。とりあえず短期決戦に弱い・名将ではない工藤論、トリセツが書けたのでこのシリーズはこれで終わります。
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*1:勿論、言うまでもなく、勝率が高いことにこしたことはなく、7割・8割・9割という高い勝率をマークすればするほど、安定感が高い・圧倒的に勝ってきたという裏付けになるので、そういう評価をする点では有効な指標になりうると思いますけどね

*2:横浜時代を含めると8/11に悪化しますけどね

*3:後述していますが、勝率6割を超えるということは、大体84勝56敗前後くらいですね。そのくらいのラインでペナントを逃すチームは存在しない。2016のホークスという例外を除けばまずないという数字なわけです。ということは5年で通算勝率が6割を超えているので、5連覇しておかしくないということになるわけです。にもかかわらず実際に優勝したのは2回だけ。工藤ホークスにおいては勝率が.650近くないと優勝できないというデータになっているわけです。この事実を重く受け止めるべきでしょうね

*4:工藤公康は歴代の名将を超えたのか?鶴岡、野村、王、秋山と続くホークス指揮官の系譜 | THE DIGEST

*5:※思い出したので書いときますが、CS1st第3戦で7回嘉弥真をまたワンポイントで使って銀次に先頭ツーベースを打たれて送られて1アウト3塁の状況を作っていましたからね。ああ、コレで今年は終わったなという状況を作り出す監督が名将???アホかと思いましたから。1-1で1アウト3塁で内野ゴロか犠牲フライで勝ち越し点で1-2。これでこの試合負け確定。ああ、今年は楽天か。苦手西武相手だろうと、楽天が初戦を取れさえすればファイナル突破するだろう。楽天がファイナル勝ち上がりで5年ぶりの日本一か~と思いましたからね。ウィーラーが何故かインコースの低めを強引に引っ張って、三遊間のゴロで台無しという展開だったので首の皮が繋がりましたけど、普通あそこで終わりですからね。新人監督平石にも負けるのか…、この監督は…。さすが名将(笑)と思いましたからね。
 ワンポイントで嘉弥真を使うのが大好きですけど、対左で絶対的な投手じゃなくなってるのに、やたら勝負所で嘉弥真や他の投手をワンポイントで使う。そして炎上するというのを本当によく見かけますからね。去年の日本シリーズでも早い回からワンポイントモイネロ(ロングイニングいかせるつもりだったかもしれませんが)で不調の丸にぶつけて逆転HR打たれて、シリーズを落としたと思いましたからね。明石のHRで結果的に選手が見事に尻拭いして勝っただけで、考えられない継投でしたからね、本来。言うまでもなく今年の日本シリーズでも最終戦にワンポイントで丸にタイムリー打たれてますし、なんだこれ?という謎継投は枚挙に暇がありません。

*6:ああ、そうかモイネロの謎ワンポイント継投で思い出しましたけど、2018の日本シリーズもありましたね…。4勝1敗1分という数字だったため、あまり目立ってはいないでしょうけど、本当にひどいシリーズでしたからね…。対セ6球団から勝つという全セ制覇を達成しましたが、苦戦した中日を除けば一番強かったのが広島だった。こちらの投手陣も打撃陣も相当苦労しましたからね。選手の実力に差があって話にならないという感じをさせなかった唯一の日本シリーズでしたから。それでも、広島が去年と全く同じミス・短期決戦の禁を犯したことで勝手に自滅してくれました。相手が下回ったおかげで一見ワンサイドで勝てましたが、短期決戦が下手で禁を犯したのは、こちらも同じ。工藤が焦って動いて継投で自滅した。5戦目、ホークスホームでの3戦目でもし負けていたら、対日本シリーズホーム連勝記録が途絶えていた。あそこでホーム連勝記録という絶対性・優位性が失われる結果になって、2勝2敗の対スコアで相手のホームの広島に帰ったらまず負けていたでしょうね。いくら広島といえど、不利・不安という要素が払拭されれば、またのびのび戦える。勢い・流れが完全に変わる。石川・デスパイネがいなくなってこれで、完全に負けたな…と思わせましたからね。

*7:ちなみに、ここ10年で今年を含めると11年目ですか、最大の負け越しは2009年のオリックスバッファローズが、楽天イーグルスに4勝19敗でやられたというものが最も差をつけられた、ボロ負けしたカードになっています

*8:参考ーまさかのⅤ逸……ソフトバンクにあったいくつかの敗因 2016年シーズン総括(福岡ソフトバンクホークス編) | VICTORY

*9:ただ、05年はロッテも勝率6割超えているんですね。ホークスが.664でロッテが.632。もしホークスがそのまま勝っていてもロッテが6割を超して敗北した珍しいケースになったことは変わりないので前例にないとするのはちょっと言いすぎですかね。珍しいこと自体に変わりはありませんが。こういう異常・レアケースが発生したのは、交流戦が36試合制であること。そして楽天創設の年という事情が大きく関わっていますね。両チームとも交流戦で二桁の貯金と楽天の勝率が3割切ってるという背景がこのレアケースの説明になるかと思います。

*10:確か野村ヤクルト時代にも、対阪神相手に20勝6敗とか、そういうことをやって優勝していた記憶がありますね

*11:甲子園興味ないのでよく知りませんけど、最近の高校生でもこんな考え方はしないでしょうし、アマチュアの監督のほうがまだプロフェッショナルに戦略を考えているんじゃないでしょうかと思えますね…。まあ未だに何百球平気で投げさせる監督もいるくらいなので玉石混交なんでしょうけどね。

*12:リリーフ陣の酷使、ムチャクチャな起用法でOB及び評論家からこんなことをやっていたら風物詩になるし、投手陣がパンクする!なんてまっとうな意見が聞こえてこないのも工藤ぶっ壊れ野球との親和性の高さを裏付けますね