読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい

2016パ・リーグMVP大谷選出への疑問

プロ野球関係(殆どSBホークス)

 日本ハムファイターズ大谷翔平選手が投手・DH両方でベストナインを受賞し、更に2016年度の最高選手に送られるMVPにも輝きました。この選出には強い違和感を抱いたので一本書いておこうと思いました(何故今頃?というのは単純に書こうと思って書いてなかったからです)。

 今回の選考は非常におかしい、はっきり言って選考基準を考え直すべきだと思いました。大谷翔平が素晴らしい選手であることは論をまたないでしょう。が、しかしMVPに選出するのは適当ではないと思います。

■今年の大谷の成績はMVPにふさわしいものではない
 大谷翔平の2016年度の成績は次の通り―
【投手】
 登板21(先発20) 10勝4敗完投4(内完封1)投球回140 勝率.714防御率1.86
【打者】
 104試合382打席(323打数)104安打22本塁打67打点 打率.322長打率.588出塁率.416

 この数字を見てどう思うかは各個人の主観や評価基準によって様々だと思います。個人的には投手としても打者としても一流から少し劣る数字だと考えます。1.5流の選手だと見るのが普通の数字だと考えます。

 が、しかし言うまでもなく大谷というのは二刀流という前人未到の挑戦をしている選手。1.5+1.5で超一流の数字を残しているとみなすことも出来なくはありません。そういう考えから彼をMVPに選出するという考えをする人も一定数いることでしょう。そういう考え方は十分理解できます。

 シーズンを終えた成績がこれくらいだとしても、投手としてローテを守りきった&打者として500打席以上立ったのならば、二刀流としてどちらでも一年間やりきったのでMVPに選ばれても全く違和感はありません。むしろ否定的な声に投打両方できっちり一年シーズンを通して働いたことは賞賛に値すると、擁護する側に回ったでしょう。しかし、今シーズンの大谷はどちらも一年間フルにやっていない、規定に達していない。それでMVPというのは筋違いではないかと思います。

■大谷はまだ体作りの段階の選手
 ノムさんはスーパースターが休むなというブラック企業の論理のようなことを言っていましたが、そういう主張とは別の論理で一年間きちんと出場していない選手は一流とはいえないと考えます。

 ただその一流云々とは別の論理・背景が大谷にはあります。彼はまだまだ高卒四年目(当時)であり、体作りの段階の選手。二刀流という前人未到の挑戦をしているだけに、怪我のリスクも倍(下手したらいつもの2倍のジャンプをして、3倍の回転をすることで回転エネルギーが加わって怪我のリスクも10倍に跳ね上がるところです)。そういう段階にある選手だけに、栗山監督も吉井投手コーチも彼のコンディションを守ることを念頭に、出場やスケジューリングに配慮したという背景があります。

 そういう選手、つまりまだ一年間まともに働くことが出来ない選手をMVPに選ぶというのはおかしいと考えます。上記の数字を以て、それでも十分な数字を残したと考える人もいると思いますが、あくまで一年間フルに働いてこそ数字というのは評価されるもの。一年間ずっとやるというのは非常に大変なことであり、その条件をクリアした選手たちの中でもっと数字を残した人間=タイトルを取った選手というのは素晴らしいと評価され、歴史に名が残り賞賛されるわけです。

■大谷MVP選出はフェアなものではない
 大谷は一年間通してパ・リーグの一流打者との数字競争をクリアしていない。打率・HR・打点などの数字で大谷が一番だという結果を残していない。タイトルを獲得していない。投手としても同じで、並み居る一流投手と三振や勝利や投球回といった数字で互角に戦っていない。これでMVPに選ばれるのは他の投手・打者に対してフェアではない。

 一年間通して安定して数字を残す、結果を出すというのは難しい。仮に大谷が一年間やった場合、投手としてはもっと数字が落ちたと考えられます。長いシーズン必ず何処かで調子の悪い日が来る。特に投手は疲労がたまり、コンディションを落とす。そこで炎上したりすることはエースでもあること。故に先発でローテを守りきっていない大谷にはケチがつくわけですね(打者起用を優先するという背景はあれど、本質的には彼の体を守るためにローテを飛ばすという決断を監督・コーチがして、大谷を大事に使ってきた。そういう選手がMVPにふさわしいとは思えません)。

 当然打者としても同じで、一時は史上初の規定打席到達せず首位打者という可能性もあったわけですが、それくらい打席に立っていないということ。首位打者というのはファーボールを選んで極力打席に立つ数を減らすことがコツだと落合氏が説くように、そもそも打席に立たなければ高い打率を維持しやすいのは当たり前なわけです。これはフェアとはいえない(それでも、規定打席到達せずに首位打者を取るのならばそれはそれですごいことには違いないのですけどね)。

 もちろん逆の可能性もあるわけです。一年やっても数字は落ちない。それどころか打者として三冠王に近い数字を叩き出していた。投手としては沢村賞を取るくらいにNPBに敵なし状態で無双したということも考えられる。大事なことはいずれにせよ、彼は一年間やっていないということ。そういう人間をMVPに選ぶべきではない。MVP選出基準をクリアしているとはいえない。基準を満たしていない彼をMVPに選んだ人間の考えを問いただしたい気持ちでいっぱいです。*1

■一番素晴らしい選手とそのシーズン最も活躍した選手というのは意味が違う
 大谷が日本で一番素晴らしい選手、スーパースターであることは誰も異論を挟まないでしょう。しかし彼はまだ一年を通してプレーすることが出来ない選手。まだ未完成の選手なわけです(吉井投手コーチいわく、完成度はまだ10%とのこと。身びいきで差し引くとしてもせいぜい30%くらいの選手でしょう)。大谷はNPB最も魅力的である選手・客を呼べる選手でしょう。また最も素晴らしい選手かもしれません。それでも、2016年のシーズンを振り返った時、最も一年間活躍した選手=MVPとして表彰しようという基準から見た時、それは当てはまらない。MVPの基準とは本来別物であるはずです。

 何回も繰り返して言いますがMVPというのは一年間、最も活躍した選手に与えられるべきもの。投手の中で一年素晴らしい数字を残した選手、そして打者の中で一年素晴らしい数字を残した選手をチェックして、結果優勝に最も貢献した選手が選ばれるもの*2

 余談として、この基準だと優勝チームの中に三冠王沢村賞という超一流の打者と投手がいた場合非常に難しい。投手と打者が別物であるという競技の性質を考えた場合、例外規定として投手・打者同時受賞がありうる制度に変えるべきでしょう。新人王でもそういう話があるくらいですし、NPBは例外規定を考えておくべきだと思います。

 そして大谷というケースは競技の性質上ありえない投手・打者の二つをこなしてしまう稀有な例。であるからこそ、基準がない。一流の打者・一流の投手と数字を比べて劣っている場合、もう一方の成績がこれくらいだから+アルファとして打者・投手の数字を足してMVPの基準を満たす。競合する選手よりもMVPにふさわしいということが言えない。非常に難しいケースなわけですね。

■大谷MVPは悪しき前例になりかねない
 大谷をMVPを選ぶべきではないと考えるのは、例えば今ファイターズが二刀流の挑戦を続けているように、今後二刀流の投打両方こなす選手が出てくる可能性があること。その選手が今年の大谷のように投手として半分、打者として半分という数字を残した場合、MVPを与えなくてはならなくなる。超ユーティリティプレイヤーで内外野捕も投手も代打もこなす。そして頑丈がとりえで毎試合投げて、打って守るという働きをする。が、数字はそこそこで使い勝手が良い枠を抜けない選手。そういう選手が10勝20本という今回の大谷のノルマをクリアしたらどうするのか?MVPを与えなくてはいけなくなるではないか。

 超器用な頑丈選手、仮に趙貴陽という名前にしましょうか。趙貴陽はただ異常に投げて打席に立って守備についただけ、たまにいいプレーをするくらいでMVPにはふさわしくない。その選手が今年の大谷くらいの数字を残した場合MVPを与えなくてはいけなくなる。

 大谷は凄い選手だからMVPを与えたが、趙貴陽はそうではないからという理由は通らない。そういう選手が出てきた場合、MVPを受賞出来なかったら大問題になるでしょう。*3

 いずれにせよ、将来二刀流選手のために投打のカウント基準を明確化する必要がある。投手メインの場合、打撃数字をいかにカウントして投手成績に上乗せするか?また打者メインの場合はその逆という換算式が必要になる。その時々の流れ、投高打低などの潮流があり数字の価値基準も上下動する。その変化に応じてMVPにふさわしい数字をきっちり評価する、カウントできるようにならないといけない。

 無論、人によって評価基準は異なるので、Aが選ばれたけど、AよりもB選手がMVPにふさわしい!と意見が割れるのは構わない。大事なのはその人がどういう評価基準・尺度からMVPに選出したかということをきっちり説明出来るかどうか。その過程が大事。

■タイトルを獲得せずMVP?
 また問題だと考えるのは、今回大谷が一つもタイトルを獲得していないこと。せめて一つでもタイトルを獲得していれば、タイトルホルダーという条件付けが可能だった。それがないのにMVPにしてしまったから、ハードルがわけのわからないことになってしまった。次、そういうケースが起こったらどうするんだという話になってしまう。本当に厄介な前例を作ってしまったなと憤るところです。

 大谷という選手は超一流。来年・再来年はますます成長して、出場試合数も増えるでしょうし数字も伸ばすでしょう。来年こそタイトルを投打でいくつも獲得して、今回のような微妙な話にならずに、文句のつけようがなくMVPを取ることは考えられるわけです。なのに、何故今年大谷にMVPを受賞させてしまったのか?非常に悩ましい事例だと思います。

 これは稀勢の里横綱昇進の話に通じるものがあると思います。目先の派手な事実に飛びついてしまって、祭り上げてしまう。微妙な事例であれば、さらなる精進を望んで次の結果を待つ。そういうことが出来なくなった。『うしおととら』のキリオ、天才的な素質を持つ子供が出てきたら矢も盾もたまらず、ホイホイ獣の槍の後継者に選んでしまったという話を思い出しましたね(適切な話かな、これ?)。

■大谷のDHとしてのベストナイン受賞は妥当
 また、DHとしての受賞について違和感を覚えましたので調べた所、基準を満たしそうな選手はいくらでもいるかと思ったら、実はほとんどいない。各球団でDHを担ったウィーラー、メヒア、レアード、長谷川、デスパイネが該当しそうですが、当てはまるのは実はロッテマリーンズデスパイネしかいない。

 楽天の外国人打者は打っていたイメージがあるので、条件を満たした選手がいるかと思いきや、殆どフル出場した選手がいない。唯一フルシーズン働いたのはウィーラーで140試合出場して、27本塁打88打点.265。打率で大きく数字を落としているがDH=大砲という役割を考えるとベストナインにふさわしいのでは?と思う所。が、しかしDH専ではなく、ファーストで48試合・外野で47試合出場している。

 西武メヒアは35本塁打を打っているものの、DH出場は41試合でDHで打った本塁打は6本のみ。DHで選出するにはDHでの活躍がメインでないことがネックとなる。守備位置なんか関係なく、打ってるのならDHにしてしまえばいいという考えもあるでしょうが、落合・松井がいうように、DHというの意外と難しい。守備について試合のリズムを整えながらでないと打席に入って力を発揮することは出来ないと言われるポジションです。バレンティンなんかも去年の日本シリーズでDHで使うよりも、下手でも守備に就かせて体を動かして温めたほうが打撃が良くなると言われたりしましたからね。その逆で去年の李大浩なんか守備に就かせるよりもDHの方が調子が良かった。そういうケースが有るように、DHで打撃が良くなる・悪くなるという要素があり、それを無視してはならない。DHで数字を残していない場合、ベストナインから除外されるわけですね。フルシーズンDHで固定起用されるケースが少ない上に、DHで実力を発揮する選手が限られるとなるとベストナイン資格を持つものは自ずと限られるのですね。

■現在のプロ野球でDH専門は希少
 DHというポジションは外野やファーストを守らせながら就かせるポジションであり、専門にするポジションではない。長いシーズンを戦うために、コンディションを落とした選手や怪我をした選手をDHにおいて様子を見るというのが今の野球では一般的。守れない・走れない選手をDH専で使うという偏った起用をするケースは今や殆ど無くなっている。そういうことを考えると、そもそもDH大谷の競争相手はいないわけですね。オリックスは持ち回りで使い、ホークスは長谷川が90試合ほどDHで出場していますが、十分な数字を残せなかったのは言うまでもありません。

 チームメイトのレアードも140試合をサードで出場しています。DHでの出場はたった3試合。39本塁打を打った彼の成績は紹介するまでもないでしょう。もし本塁打王の彼がDHメインで出場していたなら、まず彼がDHでベストナインに選ばれていたでしょう。またレアードの競争相手の松田がゴールデングラブを取って、前年度並みの35本くらいHRを打っていたら、松田がサードベストナインを受賞して、レアードはDHで選出されるという可能性もあったでしょうが、今年の松田はエラー連発でHRも30本台に行かず、打率も.259と振るわなかった。

 とまあそういうことを考えると、唯一の競争相手となりうるのはロッテのデスパイネしかいない。彼はキューバの国内リーグに参加しNPBでもプレーする。一年中野球をするという過酷な環境にあるために、DH専で試合に出る稀有な例のため大谷の唯一の競争相手になるわけですね(それでも7試合ほどレフトを守っています)。123試合535打席24本塁打87打点打率.268(全出場は130試合です)、この数字で大谷とデスパイネを比較するならば、特に大谷で文句はないでしょう。

 DHで見た場合、主にDHで出場した大谷*4デスパイネを差し置いてベストナインに選ばれるのもさほど違和感はありません。出場試合数で少しデスパイネに劣るところがひっかかりますが、DHというポジションの役割は何よりもHR。そして勝負どころでの大事な一撃ですから、今年印象的な一打の多かった大谷でもさほど問題はないでしょう。

 唯、DHでベストナインに選出されるというのは一応名誉ではあるものの、若い大谷には不名誉な要素がある。来年*5は外野で選出されることを目指してほしいと思うところです。DHで選出されているのに30本以上HRを打っていないというのも人によっては違和感を覚えるでしょうしね。

■MVPは数字上レアードがふさわしい
 最後に付け足しとして、ファイターズを優勝に導いたのに大谷の存在が大きかったのは確かですが、他にも一年間通して働いた選手はいる。投手としては宮西谷元は一年間素晴らしい働きをした。有原・増井・高梨・マーティンなどはいい働きをしましたが、一年間与えられた役割を全うしなかった所があるので除きましょう(高梨の場合は途中から先発に格上げされたので、負の面はないのですが。役割的にMVPというのは難しい。数字的にもね)。NPBは中継ぎ・セットアッパーが評価されづらいので、この二人のMVPが無理だとしても、打者に打点王中田にHR王のレアードがいる。この貢献度はMVPとして文句ないレベル。打率・打点・本塁打をトータルで見るとレアードの方が上。MVPはレアードで文句ない。

 大谷はホークスを逆転する1番で先頭打者HRという印象的な活躍がありましたが、MVPというタイトルをこれまでの基準で考えた場合、やはりMVPに選ぶのは適切ではない。ましてチームメイトにレアードというふさわしい数字を残した選手がいるのならば、タイトルホルダーという基準をクリアした選手がいるのならば、レアードにすべきだった。

■通常なら投手のベストナインは和田
 またホークス和田が最多勝最多勝率のタイトルを取りながら、同じく大谷のためにベストナインを逃しています。打者ならともかく、投手というのは一年間与えられた役割をきっちりこなすこと。ローテを守るかセットアッパーとして60試合前後をきっちり投げることが何よりも大事*6

 個人的に今年優勝できなかった要素として、というか勝負どころで勝つことこそエースの役割なので、それができずチームを優勝に導けなかった和田にベストナインと言うものを与えるのには違和感がありますが、それは個人的な感情でしかなく、NPBのこれまでのタイトル基準から考えれば間違いなく和田になるはず。そういう基準を恣意的に捻じ曲げるようなことはすべきではない。

 終盤肘を痛めて2試合ローテを飛ばして24試合というのはちょっと引っかかるところですが、それでも規定に到達していない大谷と比べるのならば間違いなく和田でしょう。また二年連続セーブ王に輝き、パ・リーグ新記録の43セーブをあげたサファテだって選ばれてもおかしくないと言える。今シーズンは無茶苦茶な使われ方で失敗が多かったというマイナス要素がありますけどね。まあ分業制が進んだ今、代打や代走、セットアッパーにクローザーというのをプラスしてベストナイン~イレブンとして選出するほうが適切でしょう。こちらの場合は該当者なしを基準にして素晴らしい選手がいたら選ぶということにすればいいでしょう。

■糸井のゴールデングラブ賞も適切ではない
 この話に絡んで糸井のゴールデングラブ賞受賞についても一言。糸井は足の影響で今年は守備範囲が狭まって、守備では貢献度が低かった。西川や中村晃の方が守備で貢献度が高かったと言われているように、糸井が選ばれる根拠がない。普段の守備では守備範囲が狭かったが、ファインプレーを連発していた。勝負どころできわどい打球をアウトにして流れを引き込んだなどの根拠が本当にあるのでしょうか?例えばファイターズ・ホークスの直接対決で陽がサヨナラになる場面でファインプレーでファイターズを勝利に導き、優勝に大きく貢献したワンプレーがありました。そのような素晴らしいプレーがいくつかあったのでしょうか?それならば数字以上の勝利の貢献があったということで納得できるのですが…。

■公明公正なタイトル競争のためにタイトル選出者の資格を審査する新制度を導入すべし
 いずれにせよ、タイトル選定が記者投票制という不確かなものである以上、そこにチェックが必要であると思われます。今回のように大谷の選出はおかしい!となったら、その投票をした記者らは実名と投票理由を明確にする。そのおかしい投票・選出理由を繰り返した場合は、基準を喪失するといったようなチェック制度の導入が必要であると個人的に考える次第です。今回の事例を見ると、無記名投票は好ましくないと言わざるをえないでしょう。無論、記名制にした場合それはそれでまた癒着など別の問題も起こってくるのでしょうけどね…。

 公明公正なタイトル選定のために記名・審査制度に変えるべきだと思いますが、まあNPBが率先して「やるじゃないか!」という改革をすることはないので、言うだけ無駄でしょうけどね。簡単に書き終わるからこのネタを先に書こうと書いたはずなのに、何故こんなに長くなった…。

北海道日本ハムファイターズ 大谷翔平 投手三冠への軌跡 [DVD]

楽天リンク→北海道日本ハムファイターズ 大谷翔平 〜投手三冠への軌跡〜

*1:今回のように投打両方で規定に到達していないのにMVPとなるのなら、せめて一試合も休まずに投打どちらかで出場した場合でしょう。その場合ならまだ説得力を持ったと思います。が、言うまでもなく何度か怪我防止や、コンディションのために休んでいますからね。それでMVPに選ぶというのはおかしいと言わざるを得ませんね

*2:時に優勝チームの中で際立った数字を残した選手がいない場合には優勝チーム以外から選出されるケースもありますが

*3:現実的には考えにくいので、考えやすい例として、30本くらいHRを打つ強打者で基本中継ぎ・守護神タイプにしましょうか。そういうタイプで投手としては便利屋で先発・ロングリリーフ・セットアッパーとして大車輪の働きをして、10勝20Hくらいの40試合登板するタイプにしましょう。それはそれでもちろんすごいですが、投打でタイトルは取れない、そういう選手が出てきたらどうするんでしょうかね?個人的には大谷が受賞できて、その選手、また趙貴陽という名前にしておきますか。趙貴陽が受賞できないとなれば大問題になると思いますが…

*4:DHで80試合、投手で7試合で、途中出場が17試合です

*5:もしくは再来年、でも再来年にはMLB行ってるんでしょうけど

*6:まあベストナインは殆ど先発なので後者は参考程度に

落合博満は何故GMとして結果を残せなかったのか?(後編)

プロ野球関係(殆どSBホークス)

落合博満は何故GMとして結果を残せなかったのか?(前編) の続きになります。前回、名GM根本さんの話をした続きです。そもそも名GMとはどういう人なのか?そしてNPB・日本球界では名GMが出る余地があまりないという話ですね。


■名GM星野仙一はFA補強・トレードを積極的に行った
 もう一つ好例として星野仙一氏があげられると思います。彼は監督として結果を残しているがゆえに名将(闘将)と言われますが、その手腕に疑問符がつくこともあります。かの野村克也は「彼はGMのようなことをやって編成に口を出すでしょう。それは本来の監督のやるべきことではない。彼のやっていることは越権行為でしょう」というようなことを言っていたと記憶してますが、彼の監督としての手腕は名参謀島野に支えられていたことなどもありますが、GMとしての手腕、選手獲得・補強面が強いんですね。かの1:4の大トレード、落合を中日に連れてきたのも彼の手腕ですからね。他にも愛甲・前田・関川・久慈・武田などといった選手も外からとってきていますね。

 阪神でも楽天でも数々の選手を獲得してきましたが、阪神では片岡・金本・伊良部・久慈・下柳。そして楽天ではメジャーリーガーの岩村・松井、最近ではロッテの今江で今年は細川に岸を獲得しました。選手を放出してチーム内の選手の入れ替えをすることを厭わないし、積極的に他所から選手を獲得するというのが星野仙一のスタイルですね。

■改革、組織の作り変えには子飼いで周りを固める必要がある
 優秀な選手を集めてチームの実力を高める。数を増やして少数に当たる、有利な状況を築いて不利な状況に相手を追い込むという戦いの基本戦略ですが、自分のやり方を進める上で子飼いを集めるというのは改革の基本ということもあるでしょう。GMとしてチームを作り変えることを期待された場合、かのように他所から選手を大量に取ってくるのは一つのセオリーといえますね。

 わかりやすい具体例としては、野村克也阪神タイガースの監督としてダメ組織改革を任された時に、全く自己の子飼いを連れてこなかったことですね。当時阪神の球団本部長だった野崎勝義いわく、野村が連れてきたコーチはヘッドコーチに松井優典、投手コーチに八木沢荘六、打撃コーチに柏原純一の3人*1だけで、他にも多くの注文が来ると思っていたがこれだけだったとか。

 一から腐朽組織を作り変えるためには大量の子飼い・トップの命令の意図を理解して手足のごとく働いてくれる子分を連れてこないと不可能。その常識を野村氏は知らなかった。後年、阪神はキャンプが終わればその後街で酒が飲みたいから、ミーティングで上の空だったみたいなダメ組織の空気、意識の低さのせいに論点をすり替えていますが、そもそもそういう組織に対する常識が欠けていたんですね。そりゃ阪神で失敗するに決まってますね。

 対照的に星野仙一島野育夫田淵幸一佐藤義則*2西本聖達川光男前田健(トレーニングコーチ)を連れてきています。二軍コーチに山口高志水谷実雄がいることもポイントですね。組織を変えるにはなるべく多くの子飼いを連れてくる、外様・外部招聘をするというセオリーをきっちり守っていたのですね*3野村克也が矢野・赤星などを育てていたことも大きいですが、星野仙一の優勝はこのような星野の組織改革の実績の上にあるもの。素直に彼の実力・手腕を褒めるべきでしょうね。

■子飼いで固めはしたものの落合GMは補強面で失敗した
 落合GMはコーチ人事で自らの好ましい人物子飼いで固めましたが、GMとして必要な選手補強という面ではまるで駄目だった。資金の制約上FAはもちろん、トレードも積極的にしてこなかった。自由契約からFAとなった小笠原に、著書に出たこともあるロッテ工藤という子飼いの獲得はありました。育成選手だった亀澤をとってきたのは見事で一定の効果ももちろんありました。しかし小笠原にせよ、亀沢にせよ、主力としてレギュラーとしてきっちり仕事ができたというレベルではありませんでした。

 楽天から金銭で復帰した岩崎をオリックス三ツ俣とトレードしたくらいで、あとは金銭で西武から捕手武山とソフトバンクから大場を取ったくらい。いずれも戦力として期待できるような選手ではありませんでした。それでも取れる選手を取っていると言われるかもしれませんが、チームを作り変えるときには星野仙一のように、あるいは根本陸夫のように大胆に主力を放出して大型トレードを実現させないといけない。落合GMにはそれが出来なかった。

 そもそも「オレ竜」と言われるように、独立独歩で行動していた落合には星野や根本のようなコネ・パイプがそれ程ない*4。ジジころがしの名人と星野が言われるように、個人的なスポンサーがいくらでもいるという政治力がなければGMとして成功するのは難しい。

 あるとすれば、一時期巨人の監督にと言われたように渡辺恒雄が彼を高く評価していたので、その繋がりで巨人と大型トレードを実現するといったところでしょうか。それが出来なかった以上、彼がGMで成功するのは難しいというべきでしょう。

■トレード否定派=GMとして不向き
 そして著書で本人が選手のためにはトレードを封印すると書いていたように、トレードというものに積極的どころか消極的。とするとそもそも前提としてGMの資質に欠けているわけですね。好きあらばトレードを仕掛けるという人でないと、トレード情報は入ってこないしルートも築けない・機能しないでしょうしね。

■名GMの条件はトレード、クビにしてもアフターケア出来る政治力を持つ人間
 GMという仕事の本質は首切りにあるというところがある。名GMの二人がトレードなどで放出をためらわずに出来たのは、トレード=事実上の解雇・首切りをしても後々きちんとケアが出来る人物たからですね。引退後に「今までお疲れさん、一緒にやれて色々助けられたよ。ありがとう」とひと声かけて、就職の世話をきっちりしてやれば、首を切られた選手のほうも多少のわだかまりは残っていても、最終的には遺恨を残しませんからね。

 何より個人的な遺恨云々よりも、トレード≒組織からの追放を行うと、悪評が断つわけですね。気に食わないからクビにしたとか、さんざん酷使しといて投げられなくなったらポイ捨てだとか。そういう悪評がついてしまえば、あの人のいる球団に行けば簡単にクビを切られるぞとなって色んな交渉がやりにくくなるわけです。が、政治力があって、しっかり引退後などに面倒を見るコネがあル人物なら、あの人についていけば安心だということになる。星野仙一の求心力が高いというのはつまるところそこにあるわけですね*5

 GMとしての資質は財力・政治力の有無にある。そういう能力に長けている人というのは二人しか今まで論じていないように、球界にそもそも滅多に出てこないというわけですね。ですからある人物・あるGMが、優秀なのか無能なのかと論じる以前に、そもそも日本球界は優秀なGMが輩出されづらい環境にあるわけですね。

■既存のトップだった落合全権監督は改革に向いた人材ではない
 あと、もう一つそもそも論になるのですが(「そもそも」を三回連続して言ってますね(^ ^;) )、中日は縁もゆかりもないどころか、つい先日まで8年間監督として巨大な権力を持っていたわけですね。腐った組織を一から作り変えなくてはいけないという状況ではなかったわけです。もともと自分がある程度築きあげた組織であるわけですね。ということは組織改革・構造改革をするのに向いた存在であるとはいえないんですよね。

 落合が散々上に文句をつけてきた、しかしこれまでバカなフロントはそれをやらなかった。GMになってようやくその改革ができる権限を手に入れた。落合の改革はこれからだ!―という状況でない限り、あまり落合GMというのは機能しない&するはずがないわけですね。

■中日の問題は経営と選手育成システムにあり
 ちらっと書きましたけど、中日の問題というのはホークスやファイターズのように若手が伸びてこないこと、育ってこないこと。きっちりファームで一軍でやれる下地を築いて、上でテストして使えるように育てるというプロセスが機能していないことにあるわけですね。

 構造的な問題が中日球団に存在する。選手を育てるには明確な前提・思想で意志が統一されていることが必要になる。例えばホークスなんかは身体能力を重視して、技術はなくとも可能性があるタイプの選手を下で三年間練習付けにして、それで芽が出なかったら諦めるという方針で育成選手を取っていますね。また基本的に強肩・強打・俊足をクリアしているタイプを取ってくる。その上で別基準で、ショートなど守備が大事な選手を獲得したり(例:今宮)、俊足強打ではなくとも卓越したバットコントロール・センスがあるタイプを取ってくる(例:中村晃・長谷川、取った時点では晃はちょっと違ったかもしれませんが)。まあ要するにドラフトで獲得する基準が明確になっている必要性があるわけですね。

■育成方針はチーム内で明確に共有されていなければならない
 ドラフトでウチならこういう選手を採用するということを、チームの一・二軍(三軍)で共有されている。育成方針が一貫しているから、所属チーム内のコーチ・スタッフが目指す方向・ヴィジョンが共有されている。例えば藤田太陽さんだったか、「阪神がスカウトとコーチの意図がズレている。スカウトの評価を無視して選手の持ち味を理解せずに、コーチの意向を押し付ける」というような話をしていたと思いますが、スカウトがどういう選手になると評価してドラフトで取るべきと推薦したのか。そしてコーチはその評価を受けてどういう指導をすべきなのかズレがあってはいけないわけですね。

 中日の実情がどうだったか知りませんが、若手が育っていないというのは一軍で落合監督が若手を積極的に起用してこなかったという事実もさることながら、スカウトとコーチの問題も大きかったと見るべきでしょう。落合GMが手を付けなくてはいけなかったのはそこですね。補強がGMの仕事であると言っても、強いチームの基本は育成にありますから、育成に問題がある組織の育成システムを一から作り直すことをしなかったというのは後々落合GMの評価を大きく下げることになるでしょう。

 逆に言うと今後中日で一軍で活躍する選手が出てきて、落合GMの育成システム見直しがあってその結果育ったで選手だ―という話になれば、落合GMはちゃんとやるべきことをやっていた。やはり名GMだったという話になるわけですね。今はダメGMという評価が定着していますが、数年後にひっくり返る可能性も一応あるわけです。そういう話を今のところ聞かないので多分無理だと思いますが*6

■選手がやりやすい環境を整えるのが「落合竜」、しかしGMとなって監督のやりやすい環境を整えるという発想はなかった
 コーチを子飼いで固めることを肯定的に書きましたけど、そもそも谷繁監督・谷繁政権になった以上は彼がやりやすいように彼と同年代かもしくは若いコーチにしなければいけないと以前書きました(※過去記事参照―【中日落合GM誕生】 落合博満は静かに、そして動じないで書いたと思っていましたが、こっちではありませんでしたね。タイトル的にこちらだと思いましたが、内容を見返したらこっちじゃなくて落合GMはコミッショナーの布石?で書いていました。まあ関連記事ということで一度貼っちゃったので残しておきます。)。そのつもりで落合GMもいる。兼任監督のサポート上、森ヘッドをおいているのだろうと書きましたが、専任監督になっても森ヘッドを置き続けていましたね。はっきり言ってやってはいけない悪手でしたね、森ヘッド続投は。彼が優秀であっても、彼がコーチで居座ればパワーバランスがおかしくなる。スマホゲームや居眠りをして叩かれていた加藤秀司コーチがいましたが、谷繁監督よりも年上でコミュニケーションを取りづらいことこの上ないだけでなく、選手育成の実績も上げられなかったとなれば落合GMの眼は節穴だと言われるのもやむなしでしょうね。落合自身がが監督であればそんなことはなかったでしょうけど、年下の谷繁ならばそういうことが起こりうると想像できなかったのは問題ですね。

 かのように縁もゆかりもない年上コーチがいれば、規律が保ちづらくなるもの。その上森ヘッドという絶対的な存在がいれば尚更。谷繁監督は落合GMの傀儡だと叩かれたように、谷繁監督が現場組のトップとして適切な権限と責任を持つことができなくなる。GMとして戦力を揃えて、選手起用の方針など決めたら現場に介入せずに監督に任せるのが基本。その基本を逸脱していたのは言うまでもないでしょう。

GMとして指名した監督を守れなかったのは問題。説明責任を果たさないのも問題。
 個人的に一番問題だと思ったのは、選手の現役生活を全うさせること&契約重視が信条のはずの落合が兼任監督ということを打診しといて、専任監督としての契約期間を守らせることができなかったことですね。兼任監督なんてGM兼監督のようなもので時代遅れなわけです。それで結果を出すことはまず出来ない。そういう選択をしたのにも関わらず谷繁を守りきることができなかった。4年契約を全うさせることができなかった。お家騒動で監督を選ぶことが出来ない事情がある中で谷繁を兼任監督にするという苦しい選択をした。そういう負担を押し付けといて谷繁を守らないのは無責任極まりない態度であると思います。せめて休養発表の時点で辞任を示唆すべきだった&谷繁監督を守れなくて申し訳ないと謝罪すべきだったでしょう。それがないのはおかしい。責任を取るという点でも疑問ですね。

 谷繁が想像以上に馬鹿だった。監督として使えなかったという理由があったかもしれません。しかし、それならそれで落合はGMである以上、きっちりどうして谷繁が監督としてダメなのかということを説明をすべきだった、説明責任が果たされていないのは問題でしょう。

  また監督との意思疎通・コミュニケーションが上手くなされていなかったのも、組織として問題ですね。谷繁がまだ戦力として使えると思っていた選手がクビになって、それをGMから説明されていなくて選手本人から直接引退の挨拶を受けてどういうことだ?と怒っていたという話がありましたが、GMとして監督に相談する・意思疎通を常にしておくということができなかった。編成のトップと現場のトップのホットラインを築くことをしなかった。ホウ・レン・ソウが落合GMには出来なかったわけですね。

■全権を持つものは成功すれば絶賛されるが失敗すれば拙い手腕を非難される
 全権監督の時にドラフトで自分の好きなように選手を指名していたのに、谷繁監督はそうさせてもらえなかった。その上、ベイスターズの山崎のように谷繁が欲しがった選手は活躍して落合指名選手鳴かず飛ばず。こういうことが続けば、そりゃ不満が高まって責任を取るべきだとなるのは当たり前ですね。スカウトの意見があって、その上で意思決定をするのがトップとしてあるべきことなのに、そういう手順をすっ飛ばして独裁的な権限を発揮してしまえば、必ず下からの不満は高まる。説明・コミュニケーションを怠るところがあるというのは落合がGMというよりも組織を動かす資質に欠けていると見るべきでしょう。

 組織というのは同じ方向を向いた上で、上と下が意志を共有していないといけない。そのためには綿密なコミュニケーションが大事。そういうことを軽視する落合はGMに向いていない、成果を挙げるのは難しい。まあそんな結論で今回は終わりたいと思います。この話書くの3日・4日前に終わるはずだったが、めっちゃかかった…。まあいつものことですがね。更にまだいくつか書いておきたいことがあるので、うーん、付け足して3つにする。前中後編にしようかな。

中日ドラゴンズ80年史 シリーズ1(1974ー1999)/ベースボールマガジン

(楽天リンク)

中日ドラゴンズ80年史 シリーズ2(2000ー2016)/ベースボールマガジン

(楽天リンク)

中日ドラゴンズ80年史 シリーズ3(1936ー1973)/ベースボールマガジン

(楽天リンク)

かっ飛ばせ!ひとこと英会話 中日ドラゴンズ/Jリサーチ出版

(楽天リンク)

*1:誰だこれ?と思ったのでググってみたら、投手コーチの八木沢氏はともかく他二人は実績が見当たりませんね。本人は著書で「人事はコネではなく実力で行わなければならない」と書いていましたが、柏原氏が野村の南海クビの一連の事件に抗議して一時任意引退という事態にまで発展した経緯を見ると、まあ実力ではなくコネですよね。実力あるコーチをヤクルトで育ててそれを阪神に連れてきて、コーチを固めるというセオリーを守らなかった。優れた部下を育てることで組織を動かすというセオリーを踏んでいない。優れた部下に任せることをしない。まあそういう独裁者気質がある人なんですよね、ノムさんは。まあそれに見合う実力がちゃんと備わっているので、これは長所と短所は表裏一体という話になるのですが。

*2:はのちの腹心であって、星野が連れてきたわけではないですが、一応参考までに。後に彼を星野派に取り込んでいるのでまあ列挙して良いだろうという判断です。別に必ずしも外から連れてこなくても、乗り込んで説得して内にシンパを形成してもいいわけです。というか改革の手段としてはこれも常套手段・セオリーの一つですね

*3:この頃の阪神オリックス在籍者が目立ちますね、なんででしょうね?イチロー時代でオリックスが強かったからでしょうか?野村監督の辞任で仰木さんが有力後任候補だったからなのかな?

*4:もちろん、個人的な感想で実は企業のトップとか、某球団の代表とか色々あるかもしれませんけどね。知る限りではそういう話を聞いたことがないので

*5:与田を使い潰したと言われますが、その後彼の面倒をしっかり見ている。長嶋茂雄が條辺・三浦を使い潰した後知らん顔というのと対蹠的ですね

*6:聞いたのは社会人野球の選手を自分の目でチェックしていたという話です。でもそれはGMの仕事ではなくてスカウトがやることですよね。GM自身の目で確かめるのも仕事の一つだとは思いますが、それは最終確認くらいなもの。本来スカウトの仕事を自分でやるというのは少し違いますからね。逆に言うと優秀なスカウトを連れてこれなかった証左ということでしょう

落合博満は何故GMとして結果を残せなかったのか?(前編)

プロ野球関係(殆どSBホークス)

落合GMの辞任について。

 就任一年目の2004年にいきなり優勝し、07年にはCS勝ち抜けの日本一。福留のメジャー移籍やWBCで主力選手が抜けた08年の3位を除けば全て1位か2位という驚異的な手腕を発揮しました。監督最終年には球団初のリーグ連覇を達成と文句のつけようのない結果を出し続けてきた落合は名監督・超一流の監督であることは言うまでもないでしょう。

 現役時代も3度の三冠王という記録を残すなど超一流の打者・選手であったことは揺るぎない事実であり、「名選手かつ名監督」という稀有な存在でありました。かくいう己も落合氏の見事な手腕と独特の分析・着眼点から彼のファン・信者となって、彼の発言を逐一チェックするようになりました。

 彼が14年にGMに就任することが決まったときには、どうやって中日を立て直していくのか、ワクワクしながら見ていたものでした。しかし結果は谷繁監督の途中解任と3年連続Bクラスという結果に終わりました。

■名監督、名GMとは限らず
 名選手、名監督ならず―の逆を行く「名選手かつ名監督」だった落合。その落合ならば「名選手かつ名監督かつ名GM」になるだろう。ところが実際はダメGM・愚GMという結果に終わりました。超一流選手・超一流監督、しかしGMとしては二流・三流。

 中日的・落合的に言うとオレ竜ならぬ二竜・三竜でしょうか?まあそんなくだらない話はさておいて、なぜ落合はGMとして成功しなかったのか?という話をしたいと思います。監督としてダメならば、いつもの「名選手、名監督ならず」だったで話は終わりますからね。

 「名監督、名GMならず」ということがありうるということは今後の日本球界にとって非常に重要な視点かもしれませんので、語っておくことも大事だと思いますので今回はそんな話をしたいと思います。

GMとは?
 そもそもGMとは何なのか?メジャーではGMという制度が根付いています。球団のフロント・編成の最高責任者ですね。General Manager=組織のマネジメントを担う最高位職と言った感じでしょうか。近代化・官僚化以降の組織というものは、部門毎に権限を分ける。担当・部門毎に分けてそれぞれの職務を担当する。そして最高・中央司令部がそれを統括する。一番上のトップの組織が意思決定を行い、指令を出す。与えられた指令を各部門は実行する。それが基本ですね。明確な戦略・ビジョンがない場合は最高位の機関が明確な指示を出さずに、「よきにはからえ」で現場に丸投げをするということもママありますが。

 まあ、要するに組織を動かす最高責任者がGMです。軍隊なんかでは現場の実行部隊と違い、組織の意思決定などの指示を出す人たちを制服組と呼びますが、まあその制服組のトップとしてもいいでしょうね。デスクワークと現場の両者を明確に分けて更にその上にトップがいるなんていう形態も珍しくないですから。球団社長の下にGMがいる。GMは組織の序列上の2位・3位ということもまあありえるので。大統領と首相の関係のように、球団代表がNo1でGMを選んで経営を任せる。No2であるGMの人事権を持つだけで経営にはノータッチというのが一つの基本的な形でもありますしね。

 アメリカ・メジャーリーグGMという制度が一般化しているのは、職務の権限を明確化してその責任を担う事が経営上の基本、大事なことだからですね。成功すれば高報酬、失敗すれば責任を取らされて首を切られるというわかりやすい公式が成立しています*1。強いチームを作るには良いトップ=良いGMを連れてくればいいということになるわけですね。

 現場の監督ならば、目標は優勝ですから勝利を念頭において采配をふるえば良いわけですが、GMの場合はまたちょっと異なる要素があるわけです。当然、勝つために強いチームを作るということを目指しますが、球団経営のいちばん大事な要素は黒字を出すということですから、勝てなくても、人気がなくても、収益さえ上がれば成立するわけです。なので時に成果を挙げられない評判の悪いGMがいるわけですね。優れた選手をホイホイ放出することを厭わず、目先の金を確保するタイプが。

 まあ当たり前の話ですが、30近く球団があるメジャーにおいて、すべての球団に金があって、ファンが熱心に支持してくれて、優勝を目指して強いチームづくりだけを目指していればいいという環境にあるわけではないのですね。

 日本の球団でも強いチームづくりを目指しているのではない球団が幾つかありますから、まあいわずもがなでしょうか。勝つ気がなく惰性で球団経営をしているというのは枚挙に暇がありませんからね。勝つ気がないのではなく、単純に球団経営、強いチームづくりというものを理解していない可能性もありますが、まあそんな話は置いときましょう。

GMの目標は必ずしも強いチームを作ることではない。オーナー・球団トップの意向に沿うことがGMの役目
 GMというのは経営の要素、ビジネスの要素がある。とすると結果=勝利ではなく、結果=黒字もしくは球団の値段の維持になる。現在マイアミ・マーリンズに球団売却の話があるように、親会社・オーナーが変わる時、球団の価値が下がっていたら球団自体の存続が危うくなるわけですから、GMの最優先課題というのは球団の価値の維持及び向上になるわけですね。当然雇い主であるオーナーや企業の意向である収益を上げろという意向も無視できない。となると、ドケチ経営で選手やスッタフに給料を払わずに、絞り上げたお金をオーナーにーということもありうるわけです。

 選手・球団(職員)・ファンよりもお金ということはまあ何時でもどこでもブラック企業のような利益至上主義の会社で聞く話なので、特に違和感を抱く話でもないかと思います。で、長々こういう話を何故したかというと、GMには①チームを強くすることを求められて就任するケースと、②利益・黒字を出すことを求められて就任するという二つのケースが有るわけですね。

 てっきり、落合GM就任というのは①の方のチームを強くするためだと思いこんでいましたが、実は落合GMというのは②のお金の要素が強かったわけですね。就任直後に8億円のコストカットをしたということで話題になりましたが、結局白井オーナーの判断というのは、常勝軍団を作ることよりも球団の維持に重きが置かれていたということでしょう。

■年俸抑制・コストカットはチームを弱くする
 年俸抑制という手段は球団を保有する上で手っ取り早い手段ですが、当然それを行えばチームの士気が下がる・弱くなるのは当たり前の話ですよね。この会社で働いていたら、最近までは景気が良くて同業他社に比べて給与が高い会社だったけど、業績悪化に伴って優秀な(?)同僚・先輩たちの給料が軒並み20~30%以上カットされた。今後も給料が上る見込みはない―そんな状況になったら選手のやる気は削がれるに決まってますからね。

 そんな状況でその会社の雰囲気・空気は良くなるわけがない。そのイライラは当然伝播してファンと喧嘩したり、コーチと選手が衝突したりという最近の組織としての歪な事態につながるわけですね。

 そもそも中日という球団は、セリーグの中で阪神・巨人と並んでFAでの補強を厭わない球団だった。ウッズ・和田・谷繁・川崎などなど他球団から主力選手を取ってくることが絶対ではないにせよ、重要な要素を占める球団だった。FA補強ができるということは、要するに資金力があるということ。資金力がなくてFA選手が取れないだけならまだしも、既存の選手をつなぎとめるのに必要な資金がなくなった。そのため総年俸抑制・コストカットをしなくてはならなくなったという重要な経営の転換点があったわけですね。

 その中日ドラゴンズという球団の転換期にあって、その変革を落合GMに任せようということになり、コストカットを行った。これが決定的な失敗だった。金満球団ではないにせよ、資金力のある球団から資金力のないケチケチ球団になった。旧態依然の親会社頼みの球団経営をしてはいけないというのは今年日本シリーズに出た2チームのファイターズ・カープを見てもわかること。親会社に頼らず球団がきちんと努力をすれば収益をあげられるというのは、最近新規参入してきたDeNAベイスターズで自明のこと(DeNAになってから売上が大体倍になっていますからね)。ホークスも球団単独で黒字を上げていることからもわかるように、戦略を持って適切な経営を行えば、年俸抑制というコストカット、つまり従業員の懐に手を突っ込むという負の手段に頼る必要性はないわけです。

 利益を上げるために球団にも時間が必要でしょうから、一時的な年俸抑制というのはやむを得ない手段であり、それは致し方ないと思います。選手にも「今こういう努力をしている最中で、成果が出たらまた元の給料基準に戻して頑張って数字を残したらちゃんと前みたいに年俸を上げるからしばらく我慢してくれないか」と説明をしたら、選手も反発をすることはなかったと思います。

 平田・大島が落合GMを嫌って反発した。このままでは中日を去るだろうと言われたのもこれによるわけですね。「確かにチームは低迷しているし、優勝もできていないが、自分たちはきちんと結果を出している。数字を残している。なのに給与に反映されないのはおかしい。適切な経営努力をして黒字を増やして、選手の給与に当てる割合を増やそうともせずに、何だその態度は!」と反発するのは当然ですね。*2


■年俸抑制は間違いではない。が次の一手経営の改善が必要だった。その次の改革に手を付けなかったのが失敗の本質
 落合GMが適切な対策を打たなかった、黒字を増やすために中日ドラコンズをより魅力的な球団にすることをやらなかった。問題はこれに尽きるわけですね。しかし、これは落合GM一人の責任ではなくて、むしろ球団やオーナー白井氏サイドの責任と言えるでしょう。どうみても落合GMは野球バカ(否定的な意味合いではなくね)で野球畑の人間。そんな人間が収益を上げる云々経営畑の話がわかると思えない。今後いかにして球団を生まれ変わらせるか、抜本的な改革をする人物を連れてきて、一から球団経営を見直すことを行わなかったことのほうが問題でしょう*3

 また、親会社の予算がなくなったというのなら、日本ハムファイターズが行っているように、最初から総年俸の予算を決めて、BOS(ベイスボール・オペレーション・システム)という基準を作る。その基準に従って選手の年俸を決定するというような公平な査定基準を導入するなどやり方はいくらでもあったはずです。

 そういう基準づくりをせずに、落合GMという一個人に委任してしまった、任せきってしまったところに問題があったわけですね。どうみても誰かトップ一人でなんとかなるような性質の問題ではない、構造的問題であり、組織として体制を一から改造しなくてはいけない問題。そうせずに問題の本質を見誤って、優秀な一個人に全面委任するという決断を下した。これは白井オーナーの根本的な認識ミスであると言うべきでしょう。

■白井オーナーや球団トップの責任は落合GM以上に大きい
 彼は落合監督招聘のときにも、色んな監督候補が上がっても、次々NGを出して最後に出た落合の名前にようやくGoサインを出したという経緯があります。優秀なトップ・人材を選んで全面委任すればそれでうまくいくという過去の成功体験を未だに引きずっている可能性は高いでしょうね。それで今回一度落合GMという体制で痛い目を見たわけですが、果たして次こそは問題の本質はGMや監督ではなく、経営判断をする球団トップだと理解して対策を打つことが出来るでしょうか?これまでの経緯を見るとなかなか厳しそうな気がしますね。

■落合GMは無能か?
 ここまで書いてきたことを読むと、では落合GMはやはり無能ということでおしまいになりそうですが、正確に言うと落合のGMとしての実力は未知数と言うべきだと思います。個人的に落合を高く評価しているから、こういうのではなく、そもそもGMが実力を発揮する前提として、球団が強くなろうというビジョンを持っているかどうかというのがあると思うからです。ファイターズにしろ、ベイスターズにしろ球団がちゃんとチームを強くしようという意図があるわけですね。

 ところが落合GMの中日のケースでは、球団がそもそも経営を根本的に見直して強いチームを作ろうという意志・戦略がなかった。資金力があって資金面でのバックアップがある。その予算から選手補強を行えるという前提がなければ、日本・NPBにおいてはGMの役割は殆ど無い。GMとして出来ること、選択肢がほとんど与えられていなかった。そういうことを考えると、落合GMの手腕は未知数というのが適切かと思います。

 ただ、NPBの閉鎖的な環境*4では、ファイヤーセールのような選手がホイホイ放出されることもない。大型トレードが当たり前でもなく、FAで選手を放出してその代わりにドラフトの指名権利をもらうなどといった選択肢もない。NPBでは優秀なGMというものがそもそも出ることが殆ど無いといえます。

 日本だと監督が全権を持って、GMのようなことまでやるのが一般的だった。あまり知らないのですが日本ハム大沢親分がそんな感じだったとか。GMよりも全権監督のほうが結果を出しやすいという要素はあるでしょうね。明確に球団経営・ビジョンがしっかりしていないなら尚更。

■過去の名GM根本陸夫星野仙一
 GMといえば、やはり西武ライオンズダイエーホークスの黄金時代を築いた根本陸夫氏だと思います。彼がどうやって強い球団を築いたかというと、それは球界に張り巡らせた人脈にあるといえると思います。アマ球界の情報を正確につかむことは、将来のスター候補がプロの世界で当たるかどうかということを知る上で不可欠ですし、何より不人気だったパ・リーグに来てくれるかどうかわからない環境では選手を家族や高校・大学・社会人野球の会社を含めて囲い込む必要がある。物量作戦で、ありとあらゆる関係者の世話をすることで優秀な選手を入団させる必要があった。

 またスカウトというのが全国のいたるところでアマチュア選手を見ているように、優秀なスカウトをどれだけ確保しているかということがドラフトの成否を分ける。ドラフトで優秀な選手を取れるかどうかが、チームを強くするか弱くするかを決めるもっとも重要な要素と言えるといっても過言ではありません。根本氏が二つの弱小球団を強く出来ることが出来たのは、いろいろな要素があるでしょうが、彼の人脈網に加えて、優秀なスカウトを知っていた・チームに迎えることが出来たという点が大きいといえるでしょう。

 根本・星野の話でそもそも優秀なGMとはどういう能力を持った人間か?GMに必要な資質とは何か?という話をこれからする予定でしたが、長くなりすぎたので分割しました。中途半端な感がなくもないですが、一本にするとあまりにも長いので。続きはこちら→落合博満は何故GMとして結果を残せなかったのか?(後編)

 

采配

落合博満 バッティングの理屈―――三冠王が考え抜いた「野球の基本」

~中日ドラゴンズ創立80周年記念~ 強竜列伝 栄光の軌跡編 [DVD]/日本コロムビア

一応、楽天リンクも。(采配落合博満バッティングの理屈強竜列伝 栄光の軌跡編)

*1:無論、アホオーナーがアホGMを連れてくるという事例もあるのでこの組織のセオリーも絶対的な話ではありません

*2:契約更改の席で大島に一番として得点圏打率がどうたら、守備がどうたらケチを付けていましたからね。払える金がないのでそうやって少しでも評価を下げようとそういう事を言ったのでしょうけど、まあそんなこと言えば当然嫌われるに決まってますよね

*3:というか、落合政権時代から客が入らないという話がされていて、集客のために何ら具体的な改善をしてこなかったことにもっと注目すべきだったでしょうね。それを玄人好みの野球だからと落合野球に責任を押し付ける声がありましたが、DeNAが無茶苦茶弱くても集客に成功した事実を見てわかるように、要するに球団の営業力次第ですからね。弱いならともかく強ければ地味でも集客はやり方次第で絶対にできたはずですね。問題の本質は球団のビジョンのなさ・旧態依然の経営にこそあるわけですね

*4:悪口ではなく、メジャーと比較して選手の移動がオープンではないことを指します

身体の話(2016/11?)

身体論―個人的に身体動作で感じたこと


 ようやく首も治ってきて、締切迫っていた本も返して、未消化の野球ネタを消化したいと思います。今シーズンのおかしかった継投のチェックやら、CS・日本シリーズ、来季へのホークス人事・選手の移動で4本は書きたい。落合さんが中日を去ったこととか、巨人ネタとかカウントすると6本は描くことが溜まっているわけですが、1月中に3本くらいは消化して終わってるはずですが、どうしてこうなった…。まあ、そんな愚痴はさておいて、とりあえず簡単に更新できる身体論から更新したいと思います。先月の穴埋めとして回すかな?これ。

 ○ヘッドバンギングでゆるめる―シャワーで頭を洗っているときに気づいた身体のゆるめ方。低い位置にシャワーを固定して手を膝について頭・背中・腰をゆらす。当然やり過ぎたら危険な行為だが、シャワーを浴びながらの姿勢でゆすることで背骨を効果的にゆるめられる。もちろん、よく映像で見かける危険な十代・切れる若者みたいに激しく振るのはダメ。頭を振ると言うよりも、身体・背骨を振る。腰を揺らすことができればそれでも良いと思うが、それを全身にうまく波及させたい。腰より上をほぐすことが効果的にできるやり方はあまりないので良いと思った。軸タンブリングなんか、背骨が上手くゆすれないけれども、この姿勢だと上手くゆれる。まあ、当然軸にはならないけれども、軸を作る前のほぐしとして良いのではないかと思う。

 四つん這いで、四足で地面に手をついた姿勢でゆらして上手くゆるむのならそれでいいと思う。まあ、個人的にはそれではあまりうまく揺れないので、こちらのほうが効果があると思う。直立から自然に腰を曲げて、膝に手をおいて頭・腰・足と横から見た時に三角形に見える形ですね。まあ、そんなに姿勢にこだわらずに、揺らして自分で一番いいポジションを探すのが良いでしょう。膝も腰も自然に任せてOK。

 頭から背中を軽く揺らすことでゆるめていく。逆に足からゆるめて波動を上半身にゆるめるのもいいかと。うまく背骨全体がうねるとポーンと気持ちよく抜けるところがある。地面にスターンと抜ける感じがポイントかな?まあこの場合、地面から天への垂直軸と体軸は切り離されて直角で交わる形になるので、背骨が頭から尻へ地面から見て垂直に抜けるということだけど。そういえば、武田鉄矢さんが尻尾があるようにという意識の話していたっけ。今度は尻尾を意識してやってみるかな。そんなことを思ってやってみましたけど、あんまり感じは変化しませんでしたね。


 ○壁たて伏せ、机などに倒れ込みながら落下感覚を鍛える。そんなことを多分前にも書いたと思いますけど、階段で登る時に、一段ごとに倒れ込みながら練習するというのもいいのかも。人目に触れると恥ずかしいので人がいないことを要確認で。


 ○肩甲骨、骨ほぐし*1と肩甲骨を突き出す腕立で可動域が広がった話。ふと、骨ほぐし・骨ストレッチをやったところ、背中・肩まわりがラクになって気になって本をチラ見してやっていました。手首と鎖骨と頭上でバタフライの腕の使い方で手首を掴んでほぐすやつくらいですけどね。

 で、はてなブログだったかな?肩こり対策云々で肩甲骨の可動域を広げようみたいなのを読んで、久々に肩甲骨を突き出す身体操作をやって、固まっていることを実感。肩甲骨を突き出して、背中あたりの肉が肩甲骨同士で挟めるようにする。椅子かなんかに手をついて、腕立て伏せをする姿勢で、腕力・上腕二頭筋や三頭筋・大胸筋に力を入れるのではなく、肩甲骨を動かす。肩甲骨が突き出るように背中側に力をかける、圧力をかける用にする。肩甲骨はローリング・回転することや左右・上下に動くことも大事なので、いろいろな方向に動かす。お風呂上がりに体が柔らかい時にやると効果的。

 いきなりやると痛めるので、徐々に可動域を広げること。決して無理せずに、ちょっとでも痛いと感じたら間を開けて次の日とかにまたやったほうが良いと思いますね、痛めたという話をよく聞くので。肩こり・背中の疲れ・痛みというのは肩甲骨のそば・周辺の筋肉から固まっていくので、そういう痛みを持っている人にはオススメですね。肩甲骨剥がしが最近ではアスリートの常識になっていると思いますが、必ずパートナーがいるので、一人でもできるやり方なのでいいかと。

 ラジオ体操などにある身体をねじる運動が、年取ってから若い頃より回らなくなった感があったが、これをやって肩甲骨・背中の可動域が広がった結果、スムーズに回るようになった。ちょっと腰をかがめると腰が辛くなるようになったが、背中とかすぐ疲れるようになってきたので、その対策・ケアに有効だと思いました。

 ゆる体操で肩をぐるぐる回すやつで肋骨が動くような感じがまるで無かったんですが、可動域が狭かった。固まってたからなんでしょうね。ちょっとやってみたらちょっと動く感はありましたね。まあ全然肋骨動かないんですけど。

 ○肋骨をアコーディオンのように使う―んで、肋骨を動かすという話になって、そのアプローチとしてアコーディオンのように動かすという話。脇の下に手を入れて、肋骨を抑えて(もちろん力を入れずに軽く触るだけ)アコーディオンのように肋骨を伸ばしたり縮める。左右それぞれやる。肋骨を動かすことで肩甲骨と肋骨の癒着が弱まるのか、添えた手によって支えが増えた結果かわからないが、肩甲骨が背中の中央により易くなる。可動域が広がる。添えた手の上に脇を乗っけるイメージでズルっとやると、より肋骨と肩甲骨が別れる・肩甲骨が浮く感覚があった。

 とまあ、そんな身体で感じたこと・気づきをメモ。

*1:ゆるめる力 骨ストレッチ/文藝春秋

読んだのこれだったのか、どうか忘れましたが。

北海道日本ハムファイターズ、新広島市と新球場建設交渉 総予算増でどんな球団に変わるのか?

プロ野球関係(殆どSBホークス)

首を痛めた影響であんまり長いのを書けないので短い野球ネタを。

 北海道の新広島市で新球場が作られるという話*1

 個人的にあーだこーだ語る必要もないことでしょう。こちらの文章(プロ野球・日ハムが新球場構想で描く未来図)を読んでいただければ十分かと思います。*2

 一応書いておきますが、プロ野球の球団経営に重要なのは球場収入が球団側にあるかどうか。最近だと広島が新球場を作ってグッズなど収益を上げて採算が取れるというか黒字を増やした話が一番新しいですね。言うまでもなくホークスは過去に870億円という大金を注ぎ込んで球場を買い取っています。それだけ出しても採算が取れると見込めるくらい球団が球場を所有するというのは意味合いとして大きいわけですね。

 オリックス・バファローズバファローズが赤字に耐えきれなかった原因の一つとして大阪ドームの使用料問題があったくらいですからね。結局は球団が潰れ、使用するところがなく困って合併したオリックスに10億円で引き取ってもらうという結果になっていましたが。オリックスの場合は、自前球場で経営面・資金面で問題がないのに低迷しているというかなりレアなケースになりますが、まあ本題とは関係ないので無視して結構な事例でしょう。

 ホークスが二軍球場を一から建てて選手育成&ファン獲得のために投資できるのも、球団単独で黒字であり、つぎ込める資金があるからですね。金があり、正しい使い方で投資をすればきっちりペイできるというのが現代野球興行の常識になっていると言っていいでしょう。

 ですから、最近だと横浜も浜スタの使用料が高すぎるということで交渉を行い、新潟や静岡へ球団を移すという話も持ち上がっているわけですね。親会社がDeNAに変わって集客路線が成功し、軌道に乗ってきた段階にありますからね。球団の集客・基本ビジネスモデルが安定してきた今、新球場建設で数十億かけても、10年~20年何年くらいになるかわかりませんが、確実に球団経営にプラスとなる・採算が取れることはわかるわけですね。

 ホークス・カープベイスターズという事例を見ても、ファイターズが新球場を建設しないはずがないといえるわけですね。初見の人にはなんで?になるかもしれませんが、このブログではホークスファイターズ、この二球団が現NPBのナンバーワンツー球団である(NPBで一番の球団はこの二つのうちのどちらか)と書き続けてきました。そのファイターズが球場建設、独自の理念を持ったボールパーク建設に乗り出さないとは考えづらいのですね。

 ファイターズは前々からビジョンを持った球団運営をしてきました。選手の生きた教材となるベテラン落合招聘から札幌移転による地域密着路線など、フロント主導で球団を強くするセオリーを抑えて着実にステップアップしていった経緯があります。次なるファイターズのステップアップとして既に成功事例がある球場建設に乗り出さないわけがないと考えていました。

 「ファイターズが優れたビジョンとフロントを有しているのは理解した。ならばなぜ最初っから、球場を建設しなかったんだい?親会社がいくらか出して、後は数十億借金して20年がかりでも返しておけば今よりもっとマシだったのでは?」と考える人もいるかと思います。特に青少年20代以下くらいだと。「確実に儲かるのがわかっているなら、計算が立っているのなら、最初に投資しとけばよかったじゃん。そうしたらもっとコストが減って儲かっていただろうに、なんでそうしなかったの?もったいない」と思うでしょう。

 しかし、まあゲームではないのでね。現実で数十億もかかるビッグプロジェクトにGoを出せる会社は早々ない。今でこそ野球興行が成功して間違いなくペイする・採算が取れるとわかりますけど、当時のパ・リーグイチローが出て変わってきていたとは言え、まだまだ客がいない時代だったんですね。リーグとして軌道に乗ってきたというものの、近鉄の撤退・球団の消滅があったように、リスクもまだまだあったわけですね。

 今でこそ日ハムは200万を超える集客を記録して、北海道に完全に根付いたといえますが、それまで北海道で新球団として受け入れられるか、北海道の人間が地元チームとして贔屓にしてくれるか?熱心なファンとなって見に来てくれるか不安定&不確定要素が多かったわけですからね。そこにリスクがあった以上、コストがかかっても札幌市主導の第3セクター球場を使わざるを得ないという判断をしてもおかしくはない。というか果断なトップと豊富な資金でもなければ、そういった思い切った決断・将来への投資はまずできないものでしょうからね。無難・無難で挑戦の中でもコストの小さい方、妥当な判断を積み重ねていった当然の選択でしょうね。

 かつて、日本ハムは地域密着を図る上で北海道の客を惹きつけるための戦略・戦術を取ってきました。阪神からメジャーへ行って全国的な知名度があった新庄に、巨人ファンが多い事情から積極的に巨人選手をトレードなどで獲得し、客を呼び込もうとしました。ヤクルト黄金時代の一人稲葉を獲得したのも人間性以外にもそういった事情があったんでしょうね。巨人ファンほどではなくても、コアなファン・野村ヤクルトの評価をするファンの興味を引き寄せたでしょうからね。

 まあ、そういう集客を意識してなんとかファンを球場に呼びこもうという段階が日本ハムにもあったわけですね。そしてここに至って、間違いなく北海道に根付いた・新規ファンを開拓して固定客を掴んだので、さらなる収入アップが見込める新球場建設・保有という次の段階に至ったということですね。

 そのような事情を考えると、ファイターズが新球場を保有してもまず大丈夫だろう。成功するだろうと言えるわけですが、そこに一抹の不安がないわけでもないのですね。

 ファイターズといえば西川・中島・陽・中田などなど魅力的な選手を連想しますが、やはり何と言ってもダルビッシュや大谷といったスーパースターが在籍したチームというイメージが強い。スーパースターであるダルビッシュや大谷が抜ければ当然客足は落ちる。今年は観客動員で200万オーバーしたわけですが、ダルが抜けル前までは200万まであと少しという所で足踏みして、ダルがいなくなって190万人を割って15年に元の状態190万のラインに戻るようになりました。ダルの穴を大谷で埋められたと見ていいでしょうね、人気の面でも、優勝争いの面でも。その大谷が抜けた穴でまた10万人ほど観客動員数が落ちるリスクが有る。中田も抜けて打線ががくっと落ちて優勝争いが難しくなれば、ダルビッシュロスよりも大変なことになるかもしれません。大谷ロスのリスク・危機があるわけですね。

 糸井といった5ツールの外野手が育ったことで育成の上手いチームという印象が強く、実際に次から次へ良い選手が育つとはいえ、糸井のようないい選手をそうそう何人も育てられたわけではない。

 陽にしても、中田・糸井にしても、そして言うまでもなくダルも大谷もドラ一の選手なわけですね。ドラ一の選手が確実に大物に育つわけでもなく、球団の育成も重要なポイントであり、きっちりいい環境を整えて選手を導いたことは素晴らしいのですが、ドラ一でいい選手をそうそう何度もひけるわけではない。

 その年の一番いい選手を取る、ドラフトでウチは絶対逃げないと言う通り、確実にいい選手を指名するでしょう。しかしそう何度も競合・くじで勝つわけではない。当たり前のことですけどね。

 来年オフには大谷・中田がいなくなると言われています。主力打者二人が抜けて、将来の日本の大砲として活躍間違い無しと期待される清宮を指名できれば良いのでしょうが、果たしてそのような素材を今回も見事にドラ一で獲得できるのか…?仮に取れたとしても、清宮が一年目から大活躍するとは考えにくいですし、中田のように目処が立つまで3年かかってもおかしくない。外野で3割、もしくは30本どちらでもいいので100打点あげられるようなそこそこ長打力がある選手が育たないと相当厳しい。そういう選手がドラ一以外で育つのか?それこそトレードして取ってきた大田が開花すれば見事なんですけどね。なかなかそううまいこといかないでしょうしね。

 まあ、そこら辺の不安や懸念は新球場関係なく、ファイターズフロント・現場&ファンも今後数年間、間違いなく低迷する打線・打撃面をどうするかという課題に直面して悩むところでしょう。スーパーエースとしてダル・大谷に続く第三のスーパースターピッチャーの育成に、中田・打者大谷に代わる第三の中心打者をどうやって育成するか?前者はそういうスターが高校生投手で出てきて、かつくじで当てるという不確実なものなので、若手投手を育成する・投手陣整備で乗り切るというのがまあ無難なところでしょう。クリーンナップを打てるバッターを今後3年~5年以内に育てられるか?出来なければFAやトレードで一時的な応急処置的なものとはいえ取ってこないといけなくなるでしょうね。クリーンナップ不在問題はかなり深刻だと思います。

 まあ、そこら辺は規定の事実なのでおいといて、ポイントは新球場で採算がとれるようになり、25億円という「予算の壁・天井」がなくなったファイターズの方針・路線はどうなるかということですね。

 糸井というスターでさえも、球団の方針に逆らうのならば放出するという一貫して変わらない姿勢を貫いてきたわけですが、それを続けるのかどうか?収入増で25億円の壁・天井という仕方がない背景がなくなるわけですが、選手への年俸として還元するのか?

 日ハムがイマイチ観客動員数に伸び悩んだのは、選手の流出が激しいことが背景にあったと思います。せっかく育ってファイターズの顔になった主力選手が、他球団に移ってしまう。地元だからFAで移るという理由、ドラフトで指名されたから仕方なく北海道に行ったけど、本当は地元の広島に…or福岡にor大阪にというのならばともかく、お金が払えないからという理由で選手が去ってしまうのはファンとしてはいたたまれないもの。足を運んで特に熱心に応援してきた贔屓の選手がいなくなってしまうと、ガクッと来るでしょう。

 優れた選手をFAで取ってこれなくとも流出だけは食い止めてほしいというのが大抵のファンが抱く人情かと思います。予算制限がなくなればそういうこともなくなるのか?「辛いです…北海道が好きなので…」という事例がなくなり、より長期的に選手の活躍を見守ることが出来て、ファンが球場に足を運んでくれるようになるのか?

 収入・予算が増えれば当然そうなる。そうやっていい選手の流出が止まって、より今まで以上に素晴らしい強い球団になる。これまでは定期的な選手の流出があった分、数年に一度低迷するという現象が避けられなかった。そういう「捨てシーズン」の年もなくなり、いい事だらけだ!となればいいのですが、そう言いきれない事情・背景があります。

 ファイターズの選手流出の激しさは有名で、信頼と安心の日本ハムブランドなどと言われるくらいです。しかし、補強と育成は両立しないというセオリーがあるように*3、メジャーへ行く以外選手の流出が止まれば、新人選手に与えられるポジション・実戦機会が減ることにもつながります。貴重な実戦経験の場がベテランが残留することで減ってしまって、新人の育成が難しくなる。これまでの日本ハムのような若手選手の成長による空いたポジションの穴埋め・活発な新陳代謝が起こらなくなってしまうリスクが有るわけですね。

 ーとなると、今回の陽のケースのようにそれこそ「卒業」とでも言って無理やりFAに追い込んでいくという形も考えられますが、毎回そうするわけにもいかない。①若手の模範となる人格か、②これまで負った怪我の度合いはどのくらいか=今後も間違いなく活躍が期待できるか、③その選手のポジションが埋めにくいポジションか、④また現在の若手の中でそのポジションを埋められそうな若手がどのくらい育っているか

 ―まあそのような要素を検討してその都度判断することになりそうですが、若手が育ってうまく穴埋めしてくれるという保証があるわけでもない。今までは育ったらFAしてもらうしかないという状態でほとんど選択の余地がない状態でした。なので迷う必要性がなかったわけですが、今後はその都度計算して判断しなくてはならない。穴埋めに失敗して、引き止めるべきだった!というケースも多々出てくるでしょう。その時にフロントは一貫した方針を保っていられるのか、一つのポイントになると思います。

 まあ、埋めにくい二遊間はなるべく流出させずに確保して、穴埋めしやすい外野はよっぽどのことでもない限りは引き止めないという方針なので、それをそのまま引き継ぐ気もしますね。武田勝を引き止めたように、投手事情を勘案して貴重なリリーフ・抑えを中心に、若手の育成と合わせて考えて先発も若くて頑丈な選手を引き止めるくらいになるのでしょうか。

 そういう事情を色々考えると、吉井コーチの復帰はフロントの思惑が見えますよね。低迷する打撃陣&大谷の受けた先発の穴を埋める投手陣整備、大谷がいなくてもしばらく投手の力で守り勝てるようにしてほしいという思いがあるのでしょう。栗山さんは大谷が渡米するまでだと予想していますが、栗山監督後新監督に引き継ぐ一番重要なポイントは投手陣になるでしょうから。やはりタイミング的に吉井コーチを呼び戻さざるをえなかったというのがフロントにはあったのではないでしょうか?「吉井えもん~なんとかしてよ~」というところでしょう。

 ダル資金(はもうないんだったか?)に、大谷のポスティングで20億。そして大谷の代理人事業やスポンサーなどの窓口となって大谷ビジネスを球団が手がける・一枚噛むことで今後も定期的な収入を得る形になりそうで、その資金を新球場費用に使うようですね。そして新球場完成後にはダルや大谷の所属するチームの開幕戦とか、カードを組んで凱旋登板というものまで見据えていそうですね。そこら辺も非常に注目度大ですね。

 ホークスはメジャーを超える世界一の球団を作るという理念・野望を持っていますが、メジャーとの交流・選手を送り出すことには消極的で、一歩も二歩も遅れそうな感じがしますが、今のままでは何をどうやってもファイターズのメジャー戦略ヴィジョンには及ばない気がします。この状況で次の一手はどうするのでしょうか?なにかあるのでしょうか?

 今思えばという結果論ですけど、松坂獲得も他にメジャー戦略がないからこそのやむを得ない選択という気がしますからね。よその球団のダル・大谷の凱旋登板というイベントが大成功でもしないと方針を見直すことはない感じのようですね。ホークスは井口選手くらいでメジャーでそこそこやった選手がいないのが気がかりなんですよね。ホークスからはパッとしていないイメージが強いですからね。

 話を戻して、ファイターズはそれゆえに多くの弱点を抱えていたわけですね。ベテラン野手を確保できないから&育成の場にするから、左右の代打の切り札が揃うことがない、代打の層が薄い。弱いチームを手っ取り早く強くするには投手陣を良くすることですから、若い投手を多く指名して、芽が出ないと見るやスパッとものすごい早い期間で見切ってクビにするという傾向もありますね。よその球団でも投手を多く指名して、毎年多くの投手がクビを切られるという傾向はありますが、日本ハムはその傾向が際立っていると思います。これは一長一短ある方針ですが、実力競争を促す反面、そのリスクの高さに有望かどうか未知数という選手は敬遠しがちになる。有望な選手でも場合によっては事前の接触であまりいい反応を示さないこともあるでしょうね。より長く見てくれる球団に行きたいということになりたがる。まあ、ココらへんはスカウトの手腕・球団と高校・大学・社会人などのコネ・パイプ云々の領域になるでしょうけどね。

 後何故かファイターズは捕手を軽視するんですよね。捕手育成に力を入れている話も聞かないですし、有望な捕手を1・2順目で指名することが殆ど無い。大野と清水くらいだったと記憶しています。まあそこら辺は最近のロッテ以外どこも同じでそこまで際立った話ではありませんが、いいチームは捕手を育てる・捕手が育つチームであるという個人的な意見からすると意外なところですね。そこら辺にもメスが入ると面白いんですけどね。まあ細川がクビになって声をかけないくらいなのでしばらくは変わる気配はないでしょうかね…。

 捕手を重視しないですが、投手は何より重視することは間違いないですから、やはり投手第一の方針を選ぶのでしょうか。投手の流出が少なくなって、かつFAなどの獲得が増えるかもしれませんね。資金が増えた分、FA獲得の余地も出る。その時にどういった選手を獲得するのか。前述通りクリーンナップ不在問題という課題があって、セオリー通り選手育成が難しそうだから、スムーズな穴埋めが出来ないために一時的に大砲をFAで獲得する。普通の球団なら当たり前の判断で驚くべきことでもないですが、大物打者はそうそうFAしないし、巨人・阪神オリックス・SBという資金力ある球団との競争に勝てるかどうかわからない。あるとしたらThe4番という選手ではなく、地味ながらもバッターをしぶとく返してくれるという選手を獲得するという感じになりそうですね。それこそ稲葉や新庄のような選手補強になるでしょうか。その二人は守備が良い・黄金時代を知っているなどのウリ・プラスアルファがありましたが、それがなくても取る必要性がある気がしますね*4

 ファン増大のために北海道出身選手を集めるという地域密着のセオリーがありますが、そうすると育成のために選手枠を開けておく、少数精鋭方針に歪みが出ることにもなりますが、どうするでしょうか?今後客足が落ちることが想定されるので、一時的にでも北海道出身選手を優遇するというのは期間を区切る、制限を設けるのならばやって良いのではないかという気がしますが。

 打撃面での問題、穴埋めが最優先されるとしても、まず投手陣第一姿勢を崩さないという決断も十分ありえますね。投手陣が崩れさえしなければ、まず大負け・低迷はしませんからね。投手陣の管理をしっかりすることで、中継ぎ陣の崩壊を避ける。吉井コーチがいるのでそれが出来ると計算していいでしょう。リリーフが崩壊することはない。複数年に渡ってリリーフ陣が安定することが保証される。資金の目処が立つならば来年補強できるからという計算で、投げ勝つ野球路線を選ぶ。今よりも投手のペースで無茶をして勝つという極端な守り勝つ野球を選ぶ可能性もあることはありますね。*5

 まあ予算が増える・使える金が増えると言っても、予算が青天井なわけではない。他所からいい選手をいつでも、いくらでも取ってこれるということになるのは考えにくいでしょうからこれはあまり可能性としては低い気がしますね。ないことはないでしょうけど。

 選手に払う年俸・条件や待遇もさることながら、NPBの場合FAはコネが左右する事が多い。日ハムのこれまでの「実力主義」の方針を考えると、コネやパイプ・ルートが存在している・うまく機能させられるとは考えづらい。FAなどをうまく活用するにしても、コネを使いこなせるようになるまでまた段階を踏まないといけないでしょうね。まあ、これまでの既存方針・路線から大きく逸脱しないと見るほうが自然でしょうか。

 いずれにせよ来年オフからしばらくの間、短期的に間違いなく、ファイターズは投手か打者どちらかを補強しなければ戦えない状況にあるわけで、資金面という制限がなくなってFAにも参戦できるようになったファイターズが、どのようにFAをうまく使うかというポイントが出てくるわけですね。どういう選手を取るのか、面白いところですよね。FAで選手を取るという方針で、これまでの方針が崩れる可能性も当然ある。予算制限がなくなって、選手も球団の事情をこれまでは理解して我慢していたけど、じゃあ言わせてくれよということにもなる。大谷の年俸が低すぎでは?と話題になったくらいですからね。そこら辺でもどうなるか興味は尽きないですね。

 ホークスが二軍球場を建設したように、二軍に力を入れるというプランももちろん考えられるところですね。鎌ヶ谷という場所から移転して球場を作るというのも面白い気がします。東京に本拠があった時代があるので、もうこれ以上開拓余地はないとして、そこはおいといて新規ファンの開拓のために関西に二軍を置くのも面白いかもしれません。個人的にウェスタンに移ってもらってホークス二軍と競争してもらいところですが、まあ変わらないでしょうね。

 他所のチームの実績ある選手を取るものよりも、福利厚生を充実させ、早くリタイアしたら球団職員のような職を紹介して、将来の保証をする。若手の首にする・見切る年齢を一つでも二つでも上げるようにする。こうすることで事前に指名についてノーを言われないようにする。目に見えない大事な要素に力を入れることこそ常勝軍団の基本。育成路線はそのままで、より選手のために力・資金を注ぐ球団になって欲しいところですね。より多くの良い選手がファイターズで活躍してこそファンも足を運ぶ常勝球団になると考えています。

 また、チラッと触れましたけど大谷のような選手を送り出すメジャー路線ですよね。どんどん選手をあっちに送り込むことで、パドレスのような球団と提携してやっていく。いい投手を育ててそのビジネスで収入を確保するとか、パイプを作って埋もれているマイナーリーガーを安く使うとか考えられますよね。前から海外枠をうまく使うことで定評のある球団なので、そこまで方針が変わらないですけど。海外枠をうまく使って、メジャービジネスを開拓していくというプランならば、一番いいのは海外枠の制限撤廃一人でも二人でも枠を増やすというのが一番今の課題を乗り切る手っ取り早い手段なので、それができれば一番いいんでしょうけどね。楽天の三木谷さんなんか賛成しているようですけど、孫さんはどうだったかな?まあセ・リーグ系がうんとは言わないでしょうから、難しいと思いますけどね。

そしてまた短いつもりが結構長くなったといういつものオチ。

アイキャッチ用画像

2016 OFFICIAL DVD HOKKAIDO NIPPON-HAM FIGHTERS『FIGHTERS STRIKE BACK 挑戦者から王者へ~2016年宇宙一への軌跡』

*1:北広島市と日ハム 新球場構想で2月1日から本格協議 | どうしんウェブ/電子版  リンクは途中までしか読めませんが、他に良いリンクもなかったので

*2:本題とは関係ありませんが、同じリンク内で次のような文章→勝負には負けたが「広島圧勝」と言える理由 | 競馬好きエコノミストの市場深読み劇場がありまして、まるで見当ハズレな指摘だと思ったら、エコノミストで競馬メインの人でしたね。この文章は11月のもので新広島市の新球場について本格協議が決まったのが12月。一ヶ月後に事態が急展開したことだからセーフと言いたくなりますが、前々からファイターズは新球場を作ろうか、それとも札幌市が条件を改善してとどまってもらうかという話はずっとあったので、アウトだと思いますね。そういう流れがあることを知らずに、そういう話に首を突っ込んでしまうのはいかがなものかと思いますね。まあ専門外なんで軽く小ネタとして触れたという感覚なんでしょうけども。これ以上突っ込んでもNPB警察だ!になってしまうのでやめときますか。まあ、あまりにも広島>日ハムという意見が素っ頓狂すぎて「!?」になったのでね。

*3:個人的には定説というよりも、両立しづらい・難しいくらいのレベルで考えていますが

*4:まあクリーンナップ不在問題と新球場による予算増を並べて書いてるわけですが、現実的には当然収入増で予算増にはタイムラグがある。何処かから将来的な収入増は確実だからと資金を借りるとか、親会社がよっしゃ今が大事なときだから一時的に大砲のために金だすで!とでもならないと無理な話なんですけどね。ここで並列的に書いていますけど、じゃあ短期的な問題のために予算をすぐ捻出できるかというとこれまでの日ハムの方針から言うと、うーん厳しそうですよね…。となると、せっかくの新球場で短期的な低迷を許容するのか?新監督就任の話題作りで乗り切るとかなんでしょうかねぇ?中畑監督のような集客効果を見込んだ監督にするとかもあるのかも…?

*5:守り勝つ野球といえば落合野球ですが、全権を望む&実績故に高年俸の落合さんは厳しいでしょうね

【雑誌】 月刊秘伝 2014年12月号

秘伝
月刊 秘伝 2014年 12月号 [雑誌]/BABジャパン


この号は柔軟特集ですね。
 序文、ストレッチが流行ったのはつい最近、40年位しか歴史がない。1975年にボブ・アンダーソンが『ストレッチング』を出したことから広まった。*1歴史が浅いこともあって批判あり、新しい方法の提唱がありという流れになっていると。動きの柔らかさと身体の軟らかさ、この2つが合わさって「柔軟性」。相補うものを見つけていくべしと。また、バレエやっている人が民俗芸能をやった所、まるで膝が使えなかったという実例から、西洋ダンス・バレエと日本舞踊では同じ舞踊でも求められる柔らかさというものは当然違うという指摘。
 なんのための柔らかさなのかという、自分の目的にあった柔らかさを追求するというテーマもあるという話。


 「カラリパヤット」インドに伝わる武術の話ですね。ネルカルという足上げを基本としてスタートする。体作り→武器術というステップ。戦争に使える人間育成がメインだった時代の影響を受け継いでいるという感じでしょうか。対人稽古・スパーリングでは延々と技を出し合うというやり方で、一本とる・勝敗という観念がないとか。それで相手の動きを読む能力を養うと。ウルミという金属製の鞭が出てきますけど、ベルセルクでこんな武器あったな、そういや。元ネタこれかな?

 「テコンドー」、ストレッチのコツの話。前後開脚の際に前足を開こうとするのではなく、後ろ足を爪先を横に向けて後方に引くと開くようになる。しっかり骨盤を立てて行うこと。そうでないと効果が出ない、柔軟性の獲得に繋がらない。
 股抜き➖(左右)開脚してから、大腿骨はそのままで骨盤を回転させる意識で上体を倒す。上体がベタッとついた上体から、息を吐きつつ下腹を膨らませて骨盤を更に回すと、少し身体が浮いて手で軽く支えるだけで脚が自然と後方へ抜けると。開脚から脚を後ろへ抜いて、うつぶせで寝たような状態になって、そこから自然と立ち上がれるとカッコいいですね。
 ストレッチのコツは2回やること。一回やって間を置いて二回目にやると少し可動域が広がる。三回目は無理をして傷めることになるのでやらないとのこと。

 「カポエィラ」粘り強さ、瞬発力を養う伸縮性を目的としたストレッチとか。尻を締めることで蹴りが加速するとか。逆立ちで普段取らない姿勢によって健康促進効果があると考えると、いずれ流行る日が来るのかも?あんまり老人が集団で逆立ちしまくる絵は想像しにくいですけどね。身体がもともと柔らかい人は柔らかすぎてカポエィラの技が出来ないことがあるとか。


岡田慎一郎 「日常生活と柔軟性」
 ストレッチを暇さえあればやって人一倍身体を柔らかくすることに励んだ。静的な準備運動では足上げなど人以上にできたのだが、動的な実戦となるとまるで使うことが出来なかった。それで以後やらなくなったのだが、人に動きが柔らかい・滑らかと言われるようになった。立位体前屈では10センチ以上床から離れているし、開脚も出来ない状態。関節の可動域は狭くなっているのに今のほうが動きが柔らかくなっている。

 立位体前屈をもう一度やってみる。下半身ではなく上半身からアプローチする。一度前に腕を出して下におろして一回転して耳に腕をつけてそのまま立位体前屈を行う。すると、肩甲骨がスライドした分腕を長く使えて、手が床につくようになる(写真がないとわかりにくいので補足。例えると水泳のバタフライのような感じですかね。)。小指を上に向けるとより使える(コークスクリューパンチみたいに小指が上に来るように、あるいは野球でシュートを投げる感じですね➖って喩えていたら、バタフライとかピッチングやパンチ、バレーのブロック・スパイクに活かせるってちゃんとすぐ次のところで書いてありましたね(^ ^;) )。

 寝て行うストレッチもある。うつぶせで寝ることで背中・腰をリラックスさせる。ただ首・頭に負荷がかかるので顔を向ける方の腕を顔の横に持って来て、脚も同じく蛙のように上げておく。反対側の手と足は下方に伸ばす。腕が卍になると。

 また赤ちゃんからヒントを得た正座のまま倒れて寝るポーズ。脊柱・仙骨を伸ばしてくれる。内臓に負担がかからない。股関節・足首にもストレッチ効果がある。首に負担がかかるのでアゴを下に向けないこと。上に向けるのがポイントだとか。

 長座から筋力を使わずに股関節をうまく使って柔らかく立つ。煙が登るように立つとか。柔らかな動きを身につける良い練習法のようですね。


稲吉優流 「しなやかな身体“柔芯体"」
 ストレッチ批判に対して、ストレッチはウォームアップで行うものではない。関節・筋肉の可動性を広げるトレーニングであると。それをウォームアップとして行う、あるいはウォームアップせずに行えば弊害があるに決まっている。要するにストレッチ批判というのはストレッチの問題と言うよりやり方の問題。骨盤を車輪のように回しながら前屈を行う。
 柔軟性というのは人それぞれ、特定の教えを絶対視しないこと。固まった身体とは固まった心につながる。人の意見を受け入れない人間=嫌な社会を作ってしまう。究極の目的は人を笑顔にすること。いくら笑って見せても目が笑っていない人はすぐにわかる。自信という芯があるからこそ微笑みという柔らかさが生まれる。


日本韓氏意拳学会東京分館韓氏意拳 講習会レポート「“真に動ける"身体の獲得」
 韓氏意拳を扱っているものってそういえば見たことないですね。秘伝だと初登場なのかな?まあ他の雑誌チェックしているわけではないのでわかりませんが。最近初めて光岡先生秘伝出てましたね。あんまり取材とか好きそうじゃないタイプに見えますが、DVDとかださないのかなぁ〜。 


春風館 赤羽根龍夫・赤羽根大介 あらゆる武術に通底する“誘い"という必勝法則 柳生新陰流“当てさせずして、当てる"勝利の方程式
 家康の人生哲学と柳生新陰流の兵法の発想は通じているという話。「待ち」と「誘い」という刀法を家康が実際に行っていたのは言うまでもない。「誘い」とはフェイントではなく、「相手を動かすこと」。新陰流の「誘い」には前提として命懸けの「懸(かか)り」がある。

 先に動いて相手の反応を誘発してそこにカウンターを入れる。大拍子・小拍子、おおきく振りかぶって大技と見せて小技。相手の踏み込む直前、斜に構えて間合いが大きくなったと錯覚させる。しかし実際には間合いは変わっていないのでコンパクトに打ち込む小拍子で打つ。わざと空振りしてからの二の太刀。(剣術わからないので多分正確に理解できていないと思う)

 隙を見せるだけでは相手はその誘いに乗ってくれない。攻撃するという意志があって「懸り」は成立する。最後に膝をエマすことによる素早い抜き打ちの話がありますね。剣術には興味がないのですが、相手を誘導することによって百発百中を可能にするというのは、非常に惹かれましたね。いかに相手を誘うか、誘導して気づかれないうちに自分から勝手に当たりに来てくれるというふうに持ち込むかという術理を研究するにはやはり剣術のほうが良いのかも。


湯川進太郎 ココロを通せば見えてくる意外なトコロ心理学から解く武道と日常構造
 「心配」と「反すう」の話。未来のマイナスのことを考えてストレスとなる「心配」。過去に起きた失敗などのマイナスのことを考えることでストレスとなる「反すう」がある。ストレスが披露・倦怠ひどいときは心身症となる。武術の稽古は心に効く。今に集中する、身体の感覚・呼吸に集中することでアレコレ考える癖、マイナスになることを防ぐことが出来る。


藤本靖 “ホームポジション"シリーズ第3弾意識のホームポジション
 身体編・動き編と続いて今度は意識編。その意識編の前フリみたいな感じですね。神経系には自律神経と体性神経の2つあって、自律神経失調症の話。交感神経と迷走神経がある。迷走神経には腹側と背中側の二種類ある。緊張を溶かそうとすると、これまで隠れていた緊張が爆発する危険性があるため一気に溶かそうとしてはいけない。
 体性神経(運動神経と感覚神経)のバランスをとること。また自律神経と体性神経の相互作用というテーマがある。2つがどういうふうに関係しあっているか、現代でも未だによくわかっていない。
 そして共鳴というテーマがある。施術がうまくいくかいかないかは共鳴次第。物理世界に「リズムの同期」という現象がある。同じ方向に同期するものを同位相に同期する。逆方向なら逆位相。ロウソクの火を一定の距離に近づけると同位相に同期して、遠ざけると逆位相になるという現象がある。これをヒントに「共鳴」について考察すると。
 また時間についてのテーマがある。時間・今に集中することを重視しながら感じている今は常にゼロコンマ何秒分かズレがある。それをどう考えるか。面白そうな話ですな。


ゆる体操には“裏"の存在があった!高岡英夫の漢語由流体操「肩肋後回法1」
 4つ目は肩肋後回法、ゆる体操で言うところの肩ユッタリ回し体操。人は疲れたら肩を回してコリをほぐそうとする。その時肩を前から後ろに回す。逆に前から後ろに回してほぐそうとする人はいない。それは何故か?
 運動進化論的に考えると、犬・猫のような四足動物から人間の運動は進化しており、四足動物のそれを引き継いでいる。チーターの「ずれ回転運動」のように、肩甲骨は後ろに回転する。そしてそれに遅れて肋骨が回転することで、ものすごい推進力・速さを生み出す構造になっている。
 「ずれ回転運動」は車などのタイヤによる車輪を中心とした回転運動とは異なることに注意。機械のように固定して回転運動させたら、一回転・二回転で骨・身体がバラバラに砕け散ってしまう。
 回転運動といっても実際に回転しているわけではなく、少しづつ順番に動いてずれ動いていった軌跡が回転しているように見える。肩甲骨が360度回るのではなく、想定される中心から軌跡が回転しているように見える運動となる。
 直立二足歩行をすることでこのような運動は失われた。もし四足歩行をしていたら人類もこの運動を行っていただろうと。
 野生動物もコリ解消のための自助運動を行っている。犬猫の「伸び」がそれ、前重心系の伸びと後ろ重心系の伸びがある(ヨガやストレッチでよく知られているポーズですね)。
 肩を後ろに回すのと前重心系の伸びに近似した運動構造がある。肩を回す時、一番高く上げた所。そこで少し止める・動きを抑制すると効果的。後ろ重心では、上半身を90度前に倒して手をついて背中を伸ばそうとすると肩甲骨と肋骨の間を広げながら、背中を少し反らそうとしたがる。これは後ろ重心系の伸びと同じ構造だということがわかる。そして必ずと言っていいほど「ア、ア〜」とうめき声に似た呼吸法を行う(肩を回すときは「ウ、ウ〜ン」)。
 後ろ重心は伸びとして同じ運動が残っているが、前重心は肩を回すということでしか運動として残っていない。しかもそれは後ろ重心の伸びと比較して効果が弱い。今号ではここまで、次回に続く。


福井雅一 関西発・注目の空手家が挑む!「突き・崩し・投げ」 古伝空手の現代翻訳本誌初登場!
 古伝空手の現代翻訳家というキャッチフレーズいいですねぇ。正座から立ち上がるときの話、中足(親指の付け根)を膝より前に出すと身体がつんのめる。手前に置くとまっすぐ立てる。
 背中を壁につけて息吹をする。十のうち七を吐いて、最後の三をコッと急激に吐いて鼻から吸うと、壁と背中の間の隙間がなくなる。その状態から突きをすると威力が変わり、拳を押さえ込んでもらっても楽に突ける。息吹で骨盤の角度が調整された結果、威力が変わる。最適な角度はやや前傾とのこと。
 交差法で躱して打つのだから正中ではなく肩口を突く。三角になった分側面から崩されることもなく、重さも乗る。
 内受けから肘に手刀を当てて投げる・崩す瑞泉拳(古流・武道空手の基本ですね)。相手の肘の内側をまっすぐ真ん中に捉えられれば、重心移動だけで崩せる。後ろ足をまっすぐ伸ばしておくこと。重心移動を学ぶことで打撃の威力が上がるという考え。
 五寸釘を刺すように角度を調整して、肩を支点に腰を捻らず、腕の重みだけで打ち込む。日野さんの言うことと通じるものがあるなぁ。体験した人はやはりシステマのストライクに似ていると感じたようですね。
 消える動き、等速度で最短距離を動くことで傍目にはゆっくり躱したとしか見えなくても正対した相手には消えるように見える。
 打つ瞬間、視界の端に手を出すことで相手の間合いをコントロールする。人は視覚で間合いを作っているから、打つ瞬間少し手を出すだけで、脳が混乱して手に意識がなくなり、威力もなくなる。
 相手の目を見るのではなく、自分の目を見せる。そうすれば呼吸がシンクロする。呼吸の隙間に拳をおいてやれば相手は避けることが出来ない。
 名前は出せないが色んな高名な空手家から学んでそれを伝えることをやっている。みんな一度はチャンピオンになったことのある人が来る。さらなる技を求めて飢えた人ばかり、教えられる人がいない現状があると。

 本文以外の写真での説明ページが面白すぎるので、別にしてメモ。基礎鍛錬としてスクワット・腕立・腹筋・背筋を十回三セット行う。ドローイングしながら、一回往復で十カウントゆっくりやる。常に腹横筋を意識することと。
 腹圧をしっかりかけることで突かれても空気がパンパンに入ったゴムタイヤのごとく跳ね返すことが出来る。
 大山倍達の動画では肩口を突き、拳を身体に巻きつけるよう腰に戻している。首里手の口伝は三戦は身体に拳を巻きつけるよう「骨のない所」にそわせる。肋骨下部、骨盤の間の僅かな箇所に収まる。泊手では腰骨の上に置くと肩甲骨が自然に使えるという。拳は腹と面一にして腰は捻らない。三戦で上下に腹を締めて、真ん中にまとめることによって、ナイファンチの横移動も決まり、セイサンに移行しても威力がボケない。
 取られた腕を人差し指を先導に胸を閉じるよう肩甲骨から腕を差し込む。胸、胸部の開閉とあります。これ肘を主体に腕立て伏せみたいな形でやってましたが、力士や吉川投手みたいな形でやってますね。こちらのほうが効果あるのかな?小指・肘に縁があるのかな、この号は。
 親指の上に他の四本の指を乗せる(足尖蹴りの形)ことで腸腰筋・ガマクの効いた蹴りになる。予備動作が少なく、歩きながら自在に出来ると。四肢をそれぞれ押さえ込まれても胸の開閉で、腕の抑えを外し、足尖蹴りで脚の抑えを簡単に跳ね返せると。
 ナイファンチの分解。腕・脚を引っ掛けて崩したくなるが、中心を捉えたら一歩踏み出すだけで相手は倒れる。
 軸をタテに回す投げ、重心を回す投げ。ふむ、説明だけではよくわからない。着衣を想定していない脇を指しただけで投げるというのは相撲取りが喜びそうですな。支持基底面を外す、頭部が中心にない場合人間の重心コントロールは非常に脆くなる。それを利用した投げということなのだろうか?無茶苦茶面白いですね、大阪の人かぁ。習いに行くのは無理ですなぁ。

宮司古神道や武術に通じる“霊術"の世界を明かす!霊術講座 「霊術の技と植芝盛平翁が行った技との繋がり」
 二指大力法、しゃがんだ状態から背後に棒を置く。それを上から押さえつけてもらい、二本の指だけで押し返す。杖突き返しという技があるように、捻ることで突いてきた相手をうまく投げ返すことが出来る原理があるので、捻ることがポイントになると思っていたが、今一度試した所、前回の軽身法のように身体全体の力を急激にかけるのがコツだとわかった。
 また何度もやるうちに自然とかけられる方も対策をしようと意識的・無意識的問わず手だけでなく体全体の力で抑えるようになってかかりにくくなったと。戦前の霊術家など術者はこういうことを防ぐためにうまく誘導していたと思われると。
 座った状態での両手持ちを返すという合気道でよくある技があるが、これもただ抑えるだけでは簡単に返される。先程の例のように全体重をかける、また受の丹田に向かって押し込むようにすると簡単には技がかけられなくなる。大東流では一度見せた技は二度と使わない。相手はそれに対応してくるものという教えがあるように次はかけ辛い状態にして、それでもかかる状態を探すというふうにしないといけない。
 片手大力法、大男二人に横にした棒の端を持ってもらい、真正面から押してもらうのを真ん中を片手で持って跳ね返す。ベクトルずらし、相手がまっすぐ押してくるものを斜め上に持っていくだけで均衡がずれて相手は崩れる(おそらく二人の左右バランスも崩れて味方内でも自滅するのだろう)。浮いた分うまく力が入れられない。もっと大人数でもできる、その時左右の人の力が均等になるのがコツだと。
 また植芝翁がやっていた棒の端を持ったのを三人が押し込むのに微動だにしないというのも特に不思議な話ではない。筋力で押される力に対抗したのではなく、持ってる棒の先端・下方に力をくわえることで相手の押す力を無効化している。掴んで押しているから、引っ張るような力も加えないと立ってられなくなる。その引っ張る力が弟子が加減している(=やらせ)と取られることもあると。ちなみにNHKの番組でも棒を押し込む力で対抗しているとちゃんと技の解説があったとのこと。

新極真会 三瓶啓二身体ゼロ化ー三瓶式身体理論の実践
 足踏み・腕振り、腸骨を意識するなど、空手と健康の話が中心でした。空手が良いですよ!というPRなんでしょうけど、ゆとり教育云々のところが個人的に合わないだろうなぁと違和感を覚えました。

日野晃武道者徒歩記
 ゴロフキンはしっかり肘を使えているという話。腕の力みが他の選手の半分以下。その分体重が素直に拳に乗る。だから軽く見えて重い。人は見た目に無意識的に反応するから軽く見えるパンチに防御態勢が取られない。よってその分更に効く(想像だが、システマのストライクとかなりにている気がするが、実際の所どうなのだろうか?)。
 真っ直ぐ(垂直)の姿勢で歩くだけ。相手の攻撃を読まないからこそ鉄壁の防御。伊藤一刀斎が身体の働きを使うと書いてある。情緒ではなく働き。これが奥儀だと気づくのに30年かかった。ゴロフキンが自覚的に肘を使っているとすれば、他の選手は肘も動いているというレベル。
 フットワークを使わない、ベタ足。ということは足に力みがなく、体重が浮くことはない。その分がそのままそっくり体重=パンチ力として転化される。踵を挙げないから、パンチがヒットした時跳ね返りがなく相手に伝わる。全てが理にかなっている。
 とにかく攻めることで、上下左右ブレなく相手に迫っていくからプレッシャーとなる。プレッシャーをかわそうとするために相手の攻撃は正確ではなくなる。それがゴロフキンの防御をより確かなものにする。だからまともにもらわない。ゴロフキンがきれいな顔をしているのはそのため。相手よりも先にパンチを出すから正面に入っても簡単にもらうことはない。無意味に相手の前に立ってない。
 日野さんのこういう解説って初めてみた気がしますね。もっと優れている!と思うアスリートの解説してほしいですね。ゴロフキンの肘に注目して映像をチェックしたくなりましたね。

川江礼子 ガンと闘う「心は自由を失わない。私は私らしく生きるだけ」
 全身ガンになりながら修行を続ける女傑の話ですね。鍛えることが好きという人はまさしくこういうタイプで、こういう人生を送るんでしょうなぁ。

天野敏武の根源力! 禅が拓く新しい世界
 関係ないですが、落語界で分裂闘争があった話が気になりました。相撲や空手やプロレスやら、何でもかんでも一時期大組織の形成&分裂という流れが社会史としてあったんじゃないかなと変なことが気になりました。大組織から離れた師、小さい組織の師に付く当時の落語家と自分を重ね合わせた話。自分流を如何に作るか、落語家的に言うと「江戸の風」を感じさせるという極意があるようですね。

江口英顕「二人太極拳
 楊名時氏のお弟子さんですか、ページが少ないのがもったいないですね。色々面白そうな話をしてくれそうなのに。2ページだけだとさわりで終わっちゃうでしょう。もったいない。


中島章夫「強くなるための技アリの動作術」
 踵・小指・薬指=足の3Kルート。踵から拇指球に重心移動して技をかけるのと、この3Kルートの重心移動だと後者のほうが技がより効くという話。

*1:
ボブ・アンダーソンのストレッチング(初版)

アマゾンでおいてあるみたいですね。古典的名著で未だに読まれている感じでしょうか?

【2016/12 内山VSコラレス】 内山高志は何故敗れたのか

ボクシング


 さて、サボってたブログを再開しますか。あーこれ書くのに3日もかかってしまった。長い長い。毎週日曜更新予定が元日に書いてないから、あとでもう一本書いて日時ずらして埋めましょうか。スポーツ関係ではやはり、内山高志の大晦日の試合について触れない訳にはいかないでしょう。ボクシング関係を熱心に見ていたときには、彼を中心にボクシングを観ていた時期がありましたし、一つの時代の終焉を意味する出来事ですからね、内山の敗戦というのは。個人的にも彼のファンであり、彼の試合の話を多分一番多く書いたと思うので。

検索してみると


 こんなところですかね。三浦戦以前の映像も見たんですが、それについては特に記事にして書いたわけでもなかったようですね。

  一番最初に書いたのはこれで、2011年の対三浦戦。6年近くも前になるんですねぇ。感慨深いですね。まあそんなことは置いといて内山高志は何故敗れたのかという話を云々したいと思います。

 

【目次】

 

ショックだった内山の敗戦

 彼がコラレスに敗れた16年の4月の試合、最初の試合ですね。それについて特にコメントはしませんでした。試合自体も負けたと人づてに聞いて、結果を知っていたので観ませんでした。それくらいショックでしたね、彼の敗戦は。

 内山というスーパーチャンピオン、日本人で山中慎介と並んでPFP(数多いボクサーの中で一体誰が一番強いのか?と語られるランキングですね、トップ10が発表されるんですけど、それに日本人がランキング入りすること、ランク内に入ることは異例中の異例です。ちなみに今だと井上も入るようになっていますね)内にカウントされる絶対的な存在である彼が敗れるということはショック以外の何物でもなく、身内の死くらいの衝撃がありました。

 戦艦大和(おもちゃ)が沈んで「敗戦とはこういうことなのか…」とそのショックの度合をこち亀両さんが説明するようなネタみたいな話がありましたが、当時の日本人としては戦艦大和が沈むということは、国が沈む・破壊されるくらいの衝撃を受けたでしょうし、天地を揺るがす出来事だったでしょう。そういう衝撃が個人的にありました。

 また、金閣寺で例えましょうかね。三島由紀夫が絶対崇高なる存在、汚されてはいけない神聖な存在を「金閣寺」で表現したという話がありますが*1、その自分の中の神聖な存在が崩れ落ちるという感覚がありました。

 そんな話をすれば内山の敗戦がどれくらいインパクトがある出来事だったか伝わるでしょうか?それぐらいセンセーショナルな出来事とはいえ、個人的に意外な出来事ではありませんでした。「ああ、やはりとうとうこの時が来てしまったか…。」という感じでしたね。

内山の敗因は年齢の壁・「衰え」によるもの

 何故か「内山高志」「コラレス」「敗戦」などのキーワードで試合の感想をググってみてみると、語られていないのですけど、今回の内山高志の敗戦の本質は「衰え」ですからね*2。そりゃ、今年37歳(2017年には38歳ですかね)のボクサーが戦って勝つのは無理がある。格下ならともかく、前回敗れた相手=ギリギリの勝負をしなくてはいけない相手。そんな相手に勝つことはかなり難しい。

 年齢の壁に勝てる選手はどこにもいないのがボクシングの常識ですからね(ヘビー級などのパワーが規格外なクラスだと例外的なボクサーが存在しますけども)。16年の最初のコラレスとの試合の時点で36歳、それで敗れたということは、もう「衰え」以外の何物でもない。全盛期のピークを過ぎて限界が来たということ。日本人ボクサーがリマッチで勝った事例もここ最近では川嶋に勝った徳山の事例くらいで殆ど勝つ可能性はゼロに近い(徳山は格下川嶋に一撃をもらってしまってのKO負けという背景を考えるとなおさらですね。後どうでもいいことですが徳山は帰化していたっけか?まあどうでもいいでしょう日本ジム所属=日本人ボクサーということで)。

再戦は内山が勝つ可能性が高いと思っていた

 ただ、事前にコラレスとの試合・りマッチでは内山が勝つ可能性も高いと思っていました。試合内容を観ていない段階で、「ホーリー・ボクシング」さんの内山 vs コラレス というブログ記事を見て、内山の右に下がる癖を突かれたという文章を読んで、こう思いました。

 普通のスタイルで戦う中間距離のボクサーが、身長の低さを活かしてラフなインファイトにもちこむという戦略・戦術に出た。まともに戦って内山に勝てるはずがないから、自分の本来のスタイルを捨てて相手が苦手なことを徹底的につく作戦に出た。自分の長所を活かすよりも相手の短所につけいることに勝機を見出した。普段自分がやらないことを会えてやる大胆な作戦・賭けに出た。そのため本来のファイトスタイルとはガラッと変えて、全く違うボクサーと戦うことになった。それに面食らって戦前に構築したプランが崩壊して、事前予想とは違う戦略を立てないといけなくなって「どうしようかな?」と内山が戸惑っていたところ、不用意な一撃をもらって負けてしまったのだろう。ーとまあそんなことを実際に映像見るまでは思っていました*3

 であるから、所詮付け焼き刃のインファイト。再戦が決まったのなら、相手のファイトスタイル・手口を研究して対策さえきちんと済ませれば、格下相手に本来の戦い方をすれば負けることはない。内山が衰えているとしても、偶然の要素が強い敗戦ならば、リマッチで勝つ可能性も十分あるだろうと考えていました。

 衰えの段階・程度がどのくらいか、それによって勝負は見えないが、まあ6・4か7・3で内山が判定勝利するのではないかなと思っていました。が、結果はご承知の通り敗戦。いずれにせよこれが内山の最後の試合になる可能性が高い。ならば書く気の無くなったボクシング記事を書かない訳にはいかないと実際の試合を第一戦からチェックすることにしました。

コラレスの実際の動きを見てイケるという予断は全く消え去った

 「コラレスというのは、小さくて本来中間距離の選手。スーパーチャンピオンと戦うために強引にインファイトに持ち込んだ。そこまで巧い・強い選手ではない。格下の選手だ。」ー誰だそんな適当なことを言ったやつは!と言いたくなるくらい素晴らしい動きをしていました。第1Rの最初の動きを見ただけで、「あ、これヤバイ。強いぞ」とすぐわかりました。

 リゴンドーやドネア、ガンボア(だったかな?)というような天才型・万能型の系列に数えられるボクサー。まあ人によってはドネアはちょっと違うだろという方もいるとは思いますが、個人的には天才型・万能型と一括りにしています。

 とにかく(スピードが)速いし、(行動するまでの起動時間が)早い。バランスがいいからどんな態勢・姿勢からでもパンチを打てる。万能型はガチャガチャ動きながらもいきなりパッて飛び込んでパンチを放り込んでくる。出入りがうまいんですね。そして回転力がある。コンビネーションが豊富。あれだけパンチを次から次へとバランス良く繰り出されると対処するのは相当難しい。

 内山のようなハードパンチャーの一撃をもらうのは爆弾処理をするのと同じことだと書いたことがあると思いますが、手数&スピード&回転力というのも似たような性質があるといえます。破壊力がないとしても、速いパンチをもらってしまうと一瞬効いて意識を失ったところに2・3発まとめられてもらってしまう。それがダメージとなってのちのちのKOにつながってしまうということになるので簡単には踏み込めない・攻められない。


問題は1Rではなく、2R目の左のクロスを合わされたこと。

 実際に最初の試合を見たときに、最初の1Rのダウンはあまり大したことのないものに見えました。ガードを下げるスタイルの内山は、右にスウェーでかわす癖がある。癖があるというよりも、そもそも内山相手にパンチを放り込めるボクサーがこれまで存在しなかった。一撃・二撃を右にスウェーするだけで、もうその次の追撃を貰う可能性はゼロなのでそれでなんの問題もなかったんですね。

 個人的に「いけない」と思ったのは、2R目の右にカウンターを合わされた時、左のクロスを被されたときでした。見ていて「あっ!」と声が出るくらい完璧にタイミングを合わされた一撃でした。KOタイムが2:59で、あと1秒あれば…と言われていましたが、あそこまで完璧にご自慢の右ストレートに被せられたらあそこで試合が終わっていなくても相当厳しかったと思いました。

 カウンターを合わせられる。タイミングが完璧だったというのは、実力の差がはっきりないと相当難しいこと。たまたまや偶然の出来事で片付ける訳にはいかない現象。個人的にはこちらのほうが問題だと思いました。

 最初の1Rのダウン・追撃の話にもつながるのですが、これまで内山はそんなパンチを貰うことはなかった。右にスウェーする癖があるから、研究されてその対策がハマった結果と言われていますが、それが原因で負けたのでしょうか?個人的には違うと思います。これまでコラレスというタイプの選手と当たっていないにせよ、世界の強豪をことごとく屠ってきた内山相手に似たような対策・作戦で挑まれることがなかったとは考えにくい。

なぜ内山はコラレスのパンチを貰ってダウンしたのか?

 ではなぜ内山はその一撃をもらってしまったのか。戦後「パンチが見えなかった」というコメントをしたとおり、視力の衰えがまず考えられると思います。それもあるのでしょうけど、やはりパンチ力・体の圧力の衰えなんでしょうね(人によってはこの2つパンチと体の力を分けて捉える人もいると思いますが)。

 ハードパンチャーとやるときというのは、どうしてもディフェンスに比重を置かないといけない。西岡がドネアと対戦したときに右のガードを上げて挑みましたよね?ああしないとドネアと戦えないというプランで挑んだ。その時点で西岡の勝つ確率というのはかなり乏しかったんですね(もちろん、それが間違っている。そうすべきではないという話ではありません。もう一つ一応書いておくと、ドネアは今の階級よりも低いときはハードパンチャーと言ってよかったのですが、上げてからはどちらかと言うとスピード&タイミング系ですね。一応補足)。

 ハードパンチャーの考えられない重い一撃を食らってしまえば、それで試合が終わってしまう。ものすごいリスクがある。それ故にどうしてもいつもよりもディフェンスに比重を置かないといけない。普段の比重が、オフェンスとディフェンス5:5だとしましょう。それを4:6や3:7にしないといけなくなる。

パンチ力・体の圧力=防御力

 そうなるとディフェンスに力を入れている分、攻撃力が落ちるんですね。言うまでもなくボクシングというのは攻防一体型の競技、攻撃と防御・守備が明確に分割されている野球のような競技とは違うわけです。ターン制でもないので、攻撃・自分が攻めているという局面でも常に守備や防御に意識を割いておく必要性があるわけですね。

 モハメド・アリがかつて来日したとき、当時目新しいパンチングマシーン測定機械を前にして、アリのパンチ力を試す!!という実験?イベントが行われたところ、アリは軽く打ってライト級くらいのパンチ力だったという話がありました。アリは実戦・試合で防御を無視して全力でパンチを打てる機会なんてないよ、こんなパンチ力測る機械なんて意味がないということを知っていたわけですね。機会ゼロだけに機械もゼロ=無意味(激ウマ)だと。

 最近だと、八重樫が稀代のハードパンチャーロマゴンと戦った試合がありました。八重樫もハードパンチャーではないにせよ、それまでの試合で絶妙なテクニック・試合運びを見せただけに、彼のテクニックが一体どう発揮されるのか?というポイントが有りました。が、実際にはそのテクニックをほとんど発揮することなくやられてしまいました。これも相手のパンチ力を警戒する必要から、攻撃に割くことができる比重が落ちてしまったからですね。

ハードパンチャー相手に防御の比率を下げることは本能が許さない

 となると、「そもそも相手は天下に謳われる名ボクサーなんだから、そんな防御なんかに意識をおいてないで、いちがばちか攻撃に意識10とか9とか8とかおいて、玉砕覚悟でドーンとぶつかっていかんかい!消極的で見ていてつまらんわい!初めから勝ち目が殆どない戦いなんだから、男ならやってやらんかい!」と思う人がいるでしょう(と言うか、昔そんな馬鹿なことを書いた気がする(^ ^;) )。

 そういうふうにできれば簡単なんですけども、6とか7とかくらいに比重を上げることはひょっとしたら人によっては可能かもしれませんけど、人間には防衛本能というものがある。そしてボクサーは当てる練習と同じように避ける練習・躱す練習をするわけですね。そういう長年の練習の上でパターン的な反応をするのが刻み込まれていますから、強打を前にして玉砕覚悟で!とやったとしても自然と体が反応してしまうわけですね。

 先に肌・皮膚や身体で感じて、頭で判断するよりも前に行動を起こしてしまうのがスポーツ・武術の妙。その自然な反応を抑制して危険な行動を出来るかと言われるとかなり難しいでしょう。むしろ身体と脳のバランスが崩れてイップスみたいな変な状態になりかねない。まあ言うは易し行うは難しってことでしょうね。

圧力が落ちた結果、内山の間合いコントロールも落ちた

 まあ、長々書きましたけど、要するにこれまで内山はその強打の威力で相手を自然と下がらせていた。ディフェンスに意識を向けざるを得ない状態に追い込んでいっていた。内山の圧力を前に踏み込めるボクサーなどいないということですね。相手が内山の強打を意識するあまり防御重視で攻撃力が落ちる、結果内山はディフェンス面に気を取られずに攻撃に専念できる(あくまで比率の話で、もちろん本人の意識の上では当然ディフェンスも重視していたと思いますけどね)。相手が防御重視→攻撃専念が可能→なおさら相手は防御意識→∞…のまあ好循環サイクルですね。だからこそ内山は圧倒的な強さ・KO率を誇ることができたわけです。

 「攻撃は最大の防御」といいますけど、優れたディフェンス技術の一番の基礎は実はパンチ力という矛盾した前提があるわけですね。内山のパンチ力の衰えというのは=ディフェンス・防御力の低下とイコールだったわけです。

 コラレスの真価は今後明らかになるとして、良いボクサーであるのは間違いないものの、かといって内山相手にあそこまで簡単に踏み込んでパンチを振れるというのは全盛期の内山なら考えられなかったでしょうね。全盛期でないにせよ、三年前の内山だったら判定に持ち込めても、もっと動きを制限されて、手数が出せずにコラレスは判定負けしていたと思いますね。

 内山のほうがリーチで7センチ長い。内山のほうがその分有利にも関わらず、間合いをコントロールしていた時間が長かったのはコラレスだった。これもいかに内山の圧力が失われたのかという裏付けのひとつになるでしょうね。

 1Rのダウンも2Rのダウンも、要するに内山の圧力が減ってこれまでなら踏み込めるはずのない間合いに踏み込まれたから。圧力の低下=間合いコントロール能力が衰えた・内山の支配エリアが縮まった結果、内山は本来想定する必要のないスウェーした状態から追撃のパンチを貰ってしまった。コラレスのディフェンスの比重を上げることができなかったが故に右にカウンターを合わされてしまったということでしょうね。


30歳の壁・35歳の壁

 内藤も長谷川も30歳を超えたあたりで少し「おや?」というところが出てきた。そして35歳ともなればもう限界、まず無理ですね。むしろ内山は35歳でそれほどの相手ではなかったと言っても3RKOという健在ぶりを見せつけたことを賞賛すべきでしょうね。西岡も「もうキャリアを終える、最後にやるとしたらドネアしかいない」ということになったのが35歳だったことを考えると当然すぎる結果ですね。

 不沈艦・難攻不落の要塞内山が陥落した今、山中慎介が日本の現役最高ボクサーと考えられるわけですが、彼もその35歳という壁に迫りつつあるわけで、モレノというスーパースターを下して、最後の試合は一体誰とやるのか!という段階に入っているといえるでしょう。

不利な再戦で今回の戦略・戦術は最適だったか?

 内山は前回の対戦よりも衰えることはあっても成長することはない。対照的にコラレスはこれからのボクサーで成長する可能性が高い。コラレスの調整失敗などがなければ、前回よりもさらに悪い条件でぶつかることになる。リマッチ・再戦の難しさというよりも年齢の時点で既に不利。基本的に「相手は更に強くなり、こちらはさらに弱くなる」という前提の上で戦略・戦術を構築しなくてはならない。果たして今回の対戦はその工夫があったのか?とセコンドの姿勢に疑問を覚えました。

 内山の戦略というのは世界トップクラスのパンチ力の圧力で相手を下がらせて、序盤は相手を覚えることとボディで相手のスタミナ・戦闘力を削る作業に集中する。そして頃合いを見計らって仕留めるという基本的なものです。内山の強打を嫌がって誘導して、ガードを下げさせて上を打ったり、頭を下げさせてこちらに近づいたところにボディ・下に打ったりとKO前には相手をコントロールして、今の自分から打たれに行っただろという状態に追い込む、追い込み漁が内山のハンティングのパターンの一つですね。今回はその追い込みがろくにできなかった。

 というか、ああいうスピード型を捕まえる・仕留めることは衰えた今相当難しい。その相手を追い詰めるために何をするのか?足を使うのか、これまで持っていなかった新しいパンチ*4を身につけるのか、スイッチか、遠くなる間合いを潰すために体・肩をぶつけていって距離を潰すのか、サウスポーの得意なノーモーション(空手で言う追い突きですね)の左ストレートは自然と頭が流れる位置が一定になるのでそれにカウンターの左を合わせるのか…。

 まあ色々考えられると思うのですけど、そのような目新しい対策がなかった。既存の強打からのプレッシャーで終盤仕留めるという戦略を採用してしまった。これでは再戦で勝つのは難しかったでしょうね。

 特にまずかったのは内山が右を振れなかったこと。本来、ガードを下げて圧力をかけるスタイルだったのに、ガードを上げて相手の左を警戒しながら戦った。結果、右の手数が減ってしまった。一番警戒すべき大砲がない以上、コラレスは非常にやりやすかったでしょうね。

 KOされたきっかけの左のクロスが見えなかったとは言え、ガードを終盤まで上げ続けたのはどうなのか?序盤右のボディで削って相手のスピードを落とせた、危険性はもうないという段階でガードを下げて本来の内山スタイルに戻すべきではなかったか?あのスピード&回転力のあるコラレス相手に右のストレートを振らずに勝とうというのはいくら内山でも無理がある戦略に見えました。

 まあ、それを言うなら前回の最初の試合で想像以上にスピードがある。1Rでダウンを喫した時点で、「ちょっとスピードあるからガードを上げて、ボディ叩きに集中して削って、パンチをもらうリスクを下げようか」という指示を2Rはいる前になぜ出せなかったのかという話になるのですが。

 6Rくらいから行こうと思っていたという話だったようですが、実際内山優位に持ち込めたのは終盤の9Rから。消化不良で余力を残して終わってしまったというように、ペース配分に問題があった(もちろんこちらのペースに持ち込む戦術が欠けていた結果ともいえますが、右を振れず終始コラレスペースでしたからね。勝負をかけるポイントになる局面が殆どなかった結果ともいえます)。

大晦日の再戦というスケジューリングへの疑問

 どこかでガッと勝負をかける瞬間・詰める瞬間がなかったのでスタミナが落ちているのか?と心配をしたのですが、試合後のコメントを聞くとどうもそうではなかった様子。事前に復帰戦をやって前回2Rで終わっているので試合感の調整、また今のコンディションで12Rといわなくても長いRを消化できるかどうかの確認をやっておくべきではなかったでしょうか?

 長谷川が三階級制覇に失敗した時の事前の試合で調整・次戦の世界戦を無視した試合内容だったのを見てこれはまずいのではないかという話を書いたことがありましたが、特に負けた後新しいことをやらなくてはいけないという段階で復帰戦をパスしての再戦というのは非常に疑問の残る陣営のスケジューリングだったといえるでしょう。

 TV局の都合、大晦日に必ず試合をやるという変な縛りを考慮しなければ…と思わざるを得ませんね。8・9月頃に復帰戦を挟んで、そこから半年を目処に再戦というスケジュールは組めなかったのでしょうか?年齢との戦いになるので間を開けるのも良くないのでしょうけど、間に一試合挟んで短い期間になってしまうけども、すぐ再戦というスケジューリングの方がまだ良かったという気がします。コラレスの都合が優先される、再戦の機会を実現するのにはその日程しかなかったというのなら話は別ですが…。

 セコンドへの疑問は盛んにジャブを突いてという指示を出していたこと。それはセコンドがあえて言うほどのことか?ということと、ガードを上げた状態でこれまでの位置からのジャブと軌道が異なるのにそのジャブをある段階までならともかく、始終やらせるべきかという疑問があるからですね。

 そりゃジャブは基本ですけど、普段の下げた位置からではないジャブは内山は慣れていないはず。上から打ち下ろし気味、かぶせるようなジャブになってしまう。それでは内山本来のジャブ・真っ直ぐ系のパンチの威力が出ないのではないか?

 たまに上から相手のガードを下げさせるようなジャブをすることはありましたが、今回はそのようなキレのない上からのジャブが目立った。内山のまっすぐ系のパンチは目を見張る物がありますが、今回はそのまっすぐ系が右のストレート以外にジャブもキレが悪かった。もちろん良いジャブもありましたけどね。相手が下がって、回って距離が空いていたとはいえ、かなりキレの悪いジャブがありました。

 どこかの段階でいつものように右ボディをぶち込んで、相手の動きが衰えた所でガードを下げていつも通りのスタイルで行けという指示をだすべきだったでしょうね。ガードを高く挙げた分、これまでの内山のパンチの軌道ではなくなった。その微妙な違いが与えた影響は軽視できないでしょう。内山はグローブで鼻あたりをこするという癖がありますが、その癖がいつも以上に目立っていたと思います。普段の自分の思うプラン、相手をコントロール出来ないという苛立ちが彼の癖となって現れたと思います。思い通りに行かない時に人はいつもの癖で心を整えよう・落ち着けようとするものですからね。

負けた後の再戦は基本戦略と方針を変えなくてはいけない

 輪島氏が再戦で勝った経験から、再戦の心持ちとして同じようにやったら前回と同じ展開になる。初めの3Rで6R分の力を使って戦うくらいのペースで挑まないといけないという話をしていました。相手のスピードという性質を考えると、輪島氏のアドバイスをそのまま応用できないのは確かですが、同じようにやってはいけないというのは当てはまったはずです。何かいつもとは違う切り札を用意しておいてほしかったですね。

 右のガードもそうですが、左のガードを上げることで、ソリスをKOしたようなショートフックも出しにくくなる。相手がスタンスを広くして頭の位置を自由自在に変えてくるタイプでその動きを制限するためには、低い位置からの左のショートなど、動きを制限するパンチが重要になる。相手の体を起こすためにもどこかで左を低い位置において見せてほしかったですね。

 再戦というと最近では山中に敗れたモレノマクドネルに敗れた亀田和毅を連想しますが、勝った相手もそのままではいない。再戦する上で前回やった相手との経験を活かしてさらに作戦を練ってくるもの。前回は自分がこういうのがまずかった、その不味かった点・短所すら克服すれば、気をつければ次回は勝てるという安易な想定があったように見えました。当然その考えは相手にもわかると言うか、想定の範囲内。負けた方はさらにもう一つ二つ相手の予想外のことをしないといけない。

 亀田興毅が判定に疑問符が付いた結果、ランダエタと再戦して今度は前回と全く違うスタイルで足を使って完封したように、再戦というものには前回とまるで違う何か別の引き出しが必要であるというふうに個人的には思えました。

コラレスの終盤の「逃げ」よりも問題は審判のジャッジ

 試合を見て、9R以降逃げ回っていて汚い・卑怯だ!という意見を持った方が多かったようです。が、内山のようなハードパンチャー・名チャンピオン相手に真っ向から打ち合えというのがそもそも無茶な注文。ポイントで勝っていれば、まず普通は逃げ回るでしょう。ボディが効いたのなら尚更ですね。

 内山本人も言っていましたが、ああいう逃げ回る相手でも仕留めないといけない。ボクシングというのはそういう競技ですからね。しかし疑問に思ったのはレフリング、レフリーの判断ですね。いつも言うように相手がクリンチを多用したらしっかりホールディングの反則を取らないといけない。一回目はよくあることなのでいいとして、二回目で注意して、三回目は絶対に減点しないといけない。次のRにまたいだとは言え、ボディが効いて嫌がって四回目のクリンチに入ったとき確実に減点すべきでした。あれをやらなかった以上、もうボクシングとしての競技は成立していない、競技になってないですね。

 ホールディングを取って、-1点にしても総合的な判定には影響がなかったと結果から逆算できますが、あの時点でしっかりレフリーがホールディングを取っていれば、これ以上はクリンチができないとコラレスも陣営もクリンチをためらうし、クリンチでしのげという指示も出しにくくなる。そこに内山がパンチを当てる機会が生まれる。反則一つとる・とらないで展開がガラッと変わる。そういう重要な所でしっかり反則を取れないボクシングの試合ほど見ていてイラッとするものはないですね。

 今回の試合はコラレスが上回っていた、これに異議はない。しかしそういうアヤがついてしまうからスッキリしない、イライラするのです。仮にレフリングに問題があった、レフリーが反則をしっかり取るべきだったとあとからWBA協会がジャッジして無効試合にしても同じでしょう。だからもう一回再戦せよと司令が下ることになったとしても、内山のコンディションはこれから更に落ちるわけですからね。

コラレスの反則について

 また内山の足をコラレスが何度も踏んだという報道がありました*5。写真からすると、計4回ですかね?コラレスが内山の足を踏んでいました。記事では偶然ではないと思うがと書いてありますが、わざとに決まってるでしょう。反則をしようがなんだろうが勝つというのがボクシングのプロの世界の常識。もちろん意図的に踏みに行ったというよりも、間を詰める・前に踏み込む過程で足を踏めたらラッキーとか、仮に踏んでしまってもアクシデントの一貫、踏んでしまっても構わない。絶対踏まないようにしようとケアする必要はない。クリーンファイトに徹する必要性はない。注意されたらその時初めて踏まないように気をつけようくらいの感覚なんでしょうけどね。

 ああいうのはその場ですぐ抗議をしないといけない。ホールディングもそうですが、ラウンド終わりに反則をすぐ審判になんで減点をしないんだと問いたださないといけない。クリンチも足踏みも一回はただの偶然でも二回目からは故意であれ、偶然であれなんであれ、すぐ反則にしないと競技として成立しない。すぐにやられた側は自己申告すること、現代は映像チェックなんか簡単なんだから、ビデオ判定員がすぐチェックして、事実だと認定出来たらすぐ審判に伝える。そして次回からはR合間に反則が確認されたの減点しますと観客に周知してすぐ減点する。もちろん審判が自分の目で確かめて即減点のジャッジをするのが一番いいのだけど。いつまでたっても反則は通ったもの勝ちという伝統で興行をやっていれば、競技としての完成度・透明度が向上することはないでしょうね。

 内山は自身ではアマのエリートではないということを言いますが、反則に対して対処の引き出しがないというのは他のアマのエリートと変わらないのでは?という思いを一瞬抱きました。というか通常の内山ならそもそもそれすらさせなかったので対処とかいちいち考える必要もなかったでしょうからね。

 1Rでコラレスの前足に内山の前に出した足が引っかかってよろめいたシーンが有りましたが、ああいうのはこれまでなら絶対になかったシーンでしたからね。ああいうバランスを崩すというシーンはやはり今の内山の状態を象徴しているのだと思いました。

海外に出る日本ボクサーは反則技を練習すべし

 個人的には現在のボクシングルールが反則を積極的に減点しない以上、反則を練習に組み込んで練習しておくべきだと思います。肘打ち・頭突き・足踏み(後はローブローですか?)、日本のボクサーはこれらを練習としてある程度組み込んでおくべきでしょう。

 無論、実際の試合でそれを使えと言いたいわけではありません。かつて新コータローまかりとおる 柔道編 という漫画の中で相手を意図的に破壊して勝つケンカ柔道・ぶっ壊し柔道というものがありました。そのイカれた流儀はなぜ生まれたかといえば、より実践性を高めて護身をする上で、相手があらゆる手段を講じてくるという前提で柔道を構築しなければ、実戦では機能しない・使えないという発想から生まれたという設定がありました。

 作中で鮫島春樹が「ぶっ壊し柔道はぶっ壊されないための柔道だ」と言っていたように、反則ボクシングは、こちらが反則をするためではなく、相手が反則をしてくるとなったときに、それにやられないようにするためのボクシングになるわけですね。反則への対処をするには、反則を意図的に行う場合、どういう意識で繰り出すものなのかを知っておく必要がある。事前にどういう意識で反則をするものなのかということを十分に理解しておかないと、とっさのときに有効な対処ができないと思います。

 相手が反則をしてくる!その対処もしなくては!となると、あれもこれもケアしなくてはならなくなる。が、実際は反則をする分、他の行動が制限されるわけですから、そこまで対処は難しくない。まあ、なんの世界でも同じですが、知ると知らないでは大きな差がつくということですね。事前にしっかり知っておくべきことだということですね。予防注射みたいなものと考えましょう。

 また修羅の門なんかで、傭兵で戦場上がりの相手が反則を仕掛けた結果、主人公の陸奥が本気になって同じようにルール無視の反則を仕掛けてねじ伏せたという話がありましたね。同じように、基本的に反則をすることはないが、相手が反則を仕掛けたら、ただじゃ済まさない。こちらも反則を解禁して徹底的に相手を叩き潰すというスタンスで行かないと相手に反則の使用をためらわせることができない。抑止効果によりクリーンファイトをせざるをえないという段階に持ち込めないでしょうね。

 今回のように中南米の才能あるボクサーが勝つためにはなりふり構わない、反則しても勝てばそれでいいという考えが存在する以上は対策としてしっかりやっておくべきでしょうね。アマ上がりのボクサーが多い今、日本人ボクサーはキレイすぎる傾向があると思います。前々から気になっていましたが、そういうボクシングは変則や不意の事態に脆いんですよね。今回のように強い相手ならまだしもつまらない相手につまらない敗戦をするリスクがある以上、ジムはしっかり対策をしてほしいと思います。

判定への疑問、7ポイント差はありえない

 またやはり触れておかなくてはいけないのは判定について。ダウンさせたRと9R以降内山が取って、それ以外はコントロールしたコラレスが取ったとして、2ポイント差でコラレスの勝利とするのがまあ妥当なライン。そこから人によってジャッジが変わって、内山につけてもおかしくないし、4ポイント差でコラレスの勝ちにしても、ん~と個人的におかしいと思っても、まあ想定の範囲内。しかし7ポイント差はどう考えてもありえない。一体どこに目をつけているのかという話。

 WBAが手数を重視する傾向があるとはいっても、7ポイント差ということは一つドローで9Rコラレスがとって、内山が取ったのはダウンを与えたラウンドと他に1つだけということになる。いくらなんでもそれはない。アグレッシブに左右をまんべんなく振ったコラレスに対し、右を殆ど振れなかった内山が前半ポイントを取れなかったのは妥当。が、後半9R以降ボディが効いて逃げ回ったコラレスの手数を評価するというのはおかしい。それならとりあえず手数を出して後は逃げ回れば良いことになる。試合をコントロールしているアウトボクシングと逃げ回っていることも見極められないなら判定員なんか辞めたほうが良い。というか辞めさせるべきでしょう。

 審判・判定ともにケチがつく嫌な試合になってしまいましたね…。

反則対策の他にドーピング対策も導入すべき

 また、これは書くかどうか迷いましたが一応書いておきたいと思います。セコンドの対策に疑問と書いたのですが、コラレスが内山に挑戦する前の暫定王座決定戦の対ロドリゲス戦の映像をチェックしたのですが、正直大したボクサーには見えなかった。スピードとスイッチをすることと、コンパクトな連打があるものの、基本的にディフェンス重視でそこまでの選手ではない。内山の圧力を前にジリ貧かもしくは仕留めきれずに判定に持ち込まれるくらいの予断をセコンドが持ってもまるでおかしくないという試合でした。

 そういうボクサーが若くて成長の余地があるとは言え、内山との試合では一段階成長して別人のようなキレとスピードを持っていた。井上のように階級を一つ上げて減量から解放されて本来のパワーを発揮したとか、そういう事情があるわけでもないのに、こんなことがありうるのか…?と疑問に思いました。

 が、2013年のアービング・ベリー戦の映像があって、それを見る限り、まあ今回のような出来でもおかしくはないと感じさせる動きをしていました。

 15年5月に、同じくスーパーフェザーで現ライト級の粟生隆寛WBOの王座決定戦でベルトランというボクサーにKO負けするものの相手は禁止薬物を使用しており無効試合になったという例がつい最近ありました。

 これだけ別人のように動きが良くなるということと、内山戦以後試合をやってないことを考えると、ひょっとしてコラレスは薬かなにかやってるのではないか?と粟生の事例から疑ったのですが、過去の映像を見る限り、まあ、ああいう優れた動きをしても別におかしくないでしょうね。

 ただコラレスにも薬物反応マリファナ無効試合にされた過去があるんですね。こういう話を聞くと日本ボクシング協会は積極的にドーピング検査を試合の事前と事後に徹底化する必要があるのではないかと思いますね。海外の試合でもドーピング検査を奨励する・試合条件に組み込む必要があると感じました。

 コラレスが優れたボクサーで、今回の勝利にも異論はないにせよ、変な疑いが入る余地は事前にしっかり潰しておいてほしいと感じました。ゴタゴタでまるで機能していないJBCに望むのは厳しいのでボクサーOBやジム会長連は積極的に働きかけてほしいかと思います(というかJBCの再生が先か…)。

最後に

 とにかく、内山というボクサーは強かった。素晴らしい完成度だった。自分が見た限り間違いなく日本史上最高のボクサーでした。たまたまCSで見たファイティング原田みたいな存在もすごいと思いましたが、やはりスーパーフェザー級という軽量級が主体の日本人ボクサーの中で中量級でその実力・強さを発揮し続けた点で、やはり内山を日本史上最高にあげたいと思います。長谷川・徳山・山中と言ったスターも彼らはバンタム以下でその真価を発揮したという点で個人的にやはり内山を推しますね。

 その優れた最高のボクサーがマカオやベガスという最高の舞台で最強の相手、ウォータースやガンボアやガルシアやロマチェンコといった望む相手とやれなかったこと。せめて海外の舞台で顔を売りにいくという意味合いがあるフォルトナと試合ができなかったのかと悔やまれてなりません。

 年齢の壁に当たったとは言え、自分が戦いたいと思う強い相手と最高の場所で戦って敗れるなら納得もするもの。しかし、これからの若手のホープと戦いたくもない試合を組まされて、そこで現役のキャリアを終えるという展開を見ると、悔しくして悲しくて本当に辛いですね。

 戦って、やるべきことをすべてやった上で負けて死ぬならともかく、戦うことすらできずに退出を求められるなんて、その背景を考えるとこんなに心が痛むことはない。

 もし内山さんの友人でリングサイドにいたとしたら、号泣してしまったでしょうね。それくらい可哀想で残念でならない。負けた後も本人はやることをやった上の結果・これも天命ということでサバサバしているでしょうけど、周りはもうどん底に沈むのではないでしょうか?お通夜状態になってもおかしくないと思いますね。

 かの吉田沙保里が負けたことで取り返しのつかないことをしてしまった。日本国民すべての皆さんに謝りたいというセリフを発して話題になりましたが、亡き父への思いなど色んな思いがあったにせよ、応援してくれる人たちが自分が負けることでショックを受けてしまう・傷ついてしまうという事実を知っていたからこそ、ああいう表現・涙になったのではないかと今更ながら気づきましたね。

 いづれにせよ、内山高志さんは個人的に今まで見てきた中で素晴らしい最高のボクサーでした。ボクシングを辞めたとしても、これからもずっとファンで有り続けるでしょう。最高の試合に感謝の言葉を添えて今回は終わりたいと思います。素晴らしい試合の数々ほんとうに最高でした、ありがとうございました。

アイキャッチ用画像

内山高志写真集 漸進 (日刊スポーツグラフ)

*1:金閣寺 (新潮文庫)

*2:無論、衰えについては一応は触れてはいるものの、技術上の問題やビッグマッチを逃してモチベーションの欠如という方をより重要という見方が殆どでした。モチベーションの低下、気力の問題を軽視はしませんけども、それよりも何よりも一番大きいのは衰えだと個人的には思います。ここの文章はそういう意味ですね

*3:もちろん、本当は違ったのですが、コラレスが肘を振り回して当てたというコメをどっかでみたこともあって、己の内山がまともに力負けするはずがないという偏見・予断があって、そういう解釈をしていました。三浦・金子戦などのように、たまに内山は不用意にもらうこともあるので、その延長だろうと勝手に解釈していました。実際にコラレス戦を見て、もう一度ホーリー・ボクシングさんのブログ記事を読み直すとブログの主が書いていることと、当時思った拙感想と全然違う受け取り方をしているんですけどね(^ ^;)。思い込みというものは恐ろしいですね

*4:たとえば、出入りの激しいボクサーなのでそうさせないように、入る瞬間にアッパーを合わせるとか、当てなくてもアッパーを見せれば相手は簡単に踏み込めなくなるでしょうからね

*5:狙われた左足 コラレス・内山戦で繰り返されたあるシーン