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身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

エース摂津と先発投手事情

■摂津先発の過去四年間の成績+α

 二年連続70試合登板を超えて先発転向、その四年間の成績は―

2011 26登板 3(1)完投 14勝8敗 177回 与四球31 2.79

2012 27登板 3(2)完投 17勝5敗 193回 与四球54 1.91

2013 25登板 3(1)完投 15勝8敗 162回 与四球42 3.05

2014 22登板 1(0)完投 10勝8敗 134回 与四球59 3.90

今年 10登板 1(0)完投  4勝4敗  68回 与死球22 3.69

※()は完封、投球回は端数切り捨てです。言うまでもなく最後は防御率です。今年の数字は5/31日現在です。気になるのは毎年10本くらいしか被弾しないのに、今年はもう8本被弾しているところですね…。

 統一球ということもありましたが、先発転向後二年目で沢村賞を取り、この年ピークを迎えて、翌年数字を落とし、14年には規定投球回に至らない有り様。これでは到底一番手ピッチャー、エースとは呼べません。では他の先発ピッチャーはどうだったか?2014年先発事情を見ると―

■2014年の先発事情

中田  25先発11勝7敗145回 4.34

スタン  26先発11勝8敗172回 3.30

 ※参考 後半チームを救った武田は7、大隣は8先発に留まっています、他に二桁先発した投手は二人で、飯田の11と帆足の13のみ。

 ―という先発事情でした。これを見て考えると、FAで獲得・補強した先発がズバリあたったと言えますね。去年は、摂津・中田・スタンリッジの三人をメインに、三本柱で先発ローテを回して、やりくりしていったことがわかります。先発投手の完投が少ないシーズンでしたが、スタンリッジが2つしていることを考えると、この年の先発一番手はスタンリッジだったといえるでしょう。投球回も一番多いですし、防御率も良かったですしね。

 数字を比較してみると、摂津は中田とどっこいどっこいでしかありませんでした。これでエースといえるのか!?という声が上がるのも当然。

■2013年の先発事情

 2013年は、帆足18先発の98回で4.58、武田17先発93回3.48、寺原16先発93回4.65、大場11先発51回5.16

 ―とまあ、はっきりいって惨憺たるもの。100イニング以上投げた先発が摂津以外いない、チームに2番手投手が存在しなかったといえるわけですから、先発が整備できなかったという時点で、はっきり言ってチーム構成の大失敗、論外といえるでしょう。この体たらくを見ればフロントのクビが何人か飛んでいても全然おかしくないですね。というか責任をとらせないとダメでしょう、これ。

 改めてチェックしてみると、本当惨憺たるモノ(2回め)ですね、これ。武田は意外に17先発もしてたんですね。すぐいなくなっていたイメージでした。9先発回避ということは離脱していたのは2ヶ月位だったんですか、もっといないイメージが有りましたね。今年こそは26先発してローテを守ってほしい、ステップアップして欲しいところですね。

 10~15先発投手が他に3人くらいいて、勝ちはともかく、負けない&2点台後半から3点台前半の防御率とかならまだわかりますが、こりゃダメですね。誰も彼も防御率が悪すぎる。将来のエースを期待される武田くらいですね、これでまあ先発としてよく投げた、頑張ったよといえるのは。

 オセゲラ・バリオスがうまく育たなかった(バリオスは現在優秀なセットアッパーですが)。メジャーから取ってきたパディーヤは機能せず、二桁先発も出来なかった。これはオリックスがディクソンを連れてきたのと対照的ですね。ようやく一本立ちした左のエース大隣の病気があったとはいえ、これは酷すぎる。

 そもそもチーム事情からどうも先発がまずい、一年持ちそうにないということがわかっていたのですから、この年中継ぎで大活躍した嘉弥真をサッと先発に抜擢しておくべきだったでしょうね。本人は中継ぎ志願でしたけど、チーム事情ということで、嘉弥真に対する長期的プランが他にあるのならともかく、間違いなくこの年は先発にすべきだった。

 まあ要するに育成と勝利のバランスを考える上で、投手起用が下手くそだったということがよーくわかりますね、過去二年を見るだけで。今現在、工藤さんは秋山政権の負の遺産と向き合わなければいけない状態です。先発育成の放棄による若手エースの育成&中継ぎ酷使でリリーフ陣の再整備という課題があります。毎年中継ぎを整備するのが上手いので(補強に育成、ドラフトでいいの採ってくる&育てるので)、後者についてはそれほど心配することはないでしょう。問題は先発ですね。

 セ・リーグでもないのに、アホみたいに中継ぎつぎ込んでやりくりして勝ちを拾うというスタイルですから、そりゃ先発育たないし、中継ぎ一年持ちませんよ。いつも言ってますけど、本当プランとビジョンがわからん…。

■2012年の先発事情

 さて摂津のキャリアハイの年を見ると、大隣25先発177回2.03山田24先発148回2.78、後半チームの救世主となった武田は11先発で67回1.07、岩嵜16先発95回3.88となっています。

 ※新垣は15先発してますが、まあ計算外むしろよく先発させたなぁ…レベルですね。ついでに巽が1回千賀が2回仁保が1回先発してますね。

 優勝した翌年、チームを支えてきた先発三枚が離脱するという苦しい先発事情だったのが、それにもかかわらず先発三枚きっちり機能していた。そして後半には救世主武田が出てきている。なんでこれで優勝できなかったの?というレベルですねぇ…。

■2011年の先発事情

 んで摂津の転向した年になるわけですが、山田・岩嵜が二桁先発しているのはさておいて―

和田     26先発16勝5敗184回 1.51

ホールトン  26先発19勝6敗172回 2.19

杉内     23先発 8勝7敗171回 1.94

 ―という化け物ぶりを示しています。この年摂津がローテ全うして177回を投げていることを考えたら、先発4本柱が機能する恐ろしいチームということがわかりますね。山田も岩嵜も防御率2点台ですから何をか言わんや。正直この年は後ろも揃っていたとはいえ、他に先発できる投手もいたでしょうから無理に転向する必要はなかった。チーム事情というのはこの年ではなく、明らかに来年を見据えたものだったでしょうね。

 言うまでもなく和田がメジャーへ行って、ホールトン・杉内は巨人に行ってしまう。ならば先発出来る投手を作っておかないといけないという事情があった。まさかここまで当たるとは想定はしていなかったでしょうけどね。

 この年88勝46敗で40以上の貯金を作り出しぶっちぎって勝っていますが、果たしてここまでする必要があったのか?この三人はいなくなることがわかっていたのですから、2~3回ローテを飛ばして、新人のテストにすべきだった。貴重な一軍マウンドを味合わせる絶好の機会だったと思うんですけどね…。こういう余裕のあるシーズンでなぜ巽が6試合くらい先発していないのか…?ちょっと理解できません。

 有望な素材に経験を積ませて置くのは強いチームを作る上でのセオリー。二軍で実績を作って、才能を開花させていきなり一軍で活躍する選手もいますが、そうでない選手も多い。少なくとも将来を見据えた捨て試合を作って、チャンスを与えておかないといけない。この年なんかいくらでも捨てられたでしょうにねぇ。

 大場には8試合、大隣が4試合。他に救援があるのでおそらくロングリリーフなど半ば捨て気味でチャンスを与える意味合いで起用したのはあるんでしょうけどね。他にテストといえるのは高橋に1試合先発させただけじゃないですかね…?これでは先発に苦しむことになるのも無理は無いでしょう。

 3年くらい前からどうも出ていきそうだ、先発育成が急務!となったら先発候補を揃えておいて、一軍で試せるようにしないといけませんよね。山田・大隣・大場・岩嵜、この4人で行きたいというのはわかりますけど、もっと他にテストさせておくべき素材を揃えないと。4人全員が見事にものになる!なんて、そううまい事行くはずないでしょうからねぇ。

 別に巽押しでもないですし、使っていれば育っていた!なんて言うつもりはないですけど、結果に至る過程ですよね、問題は。将来のために先発を育てるぞ!という課題があるのに、素材を揃えていない、テストをしていないというのは大問題でしょうね。

 そのようなチーム戦略の不手際・失敗が2013年に露呈したわけですね。2013年の先発崩壊を見て分かる通り、摂津の転向というものがなければチームは完全に崩壊していたでしょうね。チームを支えた投球はまさにエースと呼ぶにふさわしいものだったといえるでしょう。

■今年の先発事情とチームのビジョンとプラン

 ホークスは新垣や和巳といった先発の柱が他にもいましたし、特に和巳というエースの存在が大きかったと思います。その存在が大きすぎましたね。先発が試合を作って当たり前、エースがいて当たり前という時代が長くあった。故に今のエース不在のチーム事情が耐えられないのでしょうね。抑えて当たり前だから先発にすぐ文句をいうファンが多い気がします。

 今の摂津のピッチングはエースと呼ぶにふさわしくないものですが、ここまでチームを支えてきてくれた選手に文句をいうことは普通できないと思います。己は出来ません。何年も活躍して当たり前なんて思いませんしね。

 むしろそういうところで、なんとかするのが監督の采配やフロントの力だと思いますからね。

 帆足にせよ、寺原にせよ、補強で取った選手はまず5年以上働くものではないと考えるべき。チーム構想の繋ぎで考えるべき存在でしょう、FA選手は。リードのいいキャッチャーや、打って守れるスター外野手以外は。そういう絶対取るべきという選手は、市場にたまにしかでない。投手も絶対必要ではないけど、いてくれることで助かった!くらいで取るべきものでしょうね。

 エース級がFAで取れるというのはまずありえませんからね、昨今のメジャーの流れを考えても取れないですよね。杉内が移籍して今の状態を見て分かる通り、4年間二桁勝利をギリギリ毎年するのがやっとというところでしょう、年齢的に考えても。それに見合う金額で取れるということはまずありませんからね。4年×2億位ならどこでもほしがるでしょうが、5億はちょっとありえないでしょう(そういえばよく考えたら黒田より高いんですね…)。

 帆足が4年で毎年2桁勝つ!だったら良かったでしょうけどね。まあそんな虫のいい話はないわけで。2億くらいの選手ということは、まあそういうことですね(帆足は1.5億くらいだったと思いますが)。寺原も今年はいいですけど、正直去年・一昨年活躍して欲しかった。今年はもうそれほど困ってないですからね。まあ寺原のせいではないですけども。

 ―今の先発事情をまとめてみますと、

①先発一番手だった摂津が劣化してきている。

②補強で取った中田はローテを守れるけど、イニングを食えるだけで頼りない、心もとない先発である。

③同じく補強で取ったスタンリッジは、再来年には日本人扱いで使えるが、年齢的にいつ先発できなくなるかわからない。

④今現在「エース?」と呼べるピッチングをしている大隣は、頼もしい存在であるが、いつ病気が再発して投げられなくなるかわからない。

⑤補強の帆足は一年投げられない、ほぼクビで間違いない(他球団の評価の方が高くなりそうだから)。

⑥寺原はいいピッチングをして、5年後まで活躍してもおかしくないが膝の手術歴があるために、怪我の再発のリスクがあり、何年もローテを全うすることを期待するのは難しい

 ―ということが言えるわけですね。今年、来年はまあ大丈夫だろうけども、3年後・5年後を考えると彼らがいないと考えてプランを建てないといけない。そういうことが言えると思います。

 先発の構築が急務であるというチーム課題が存在しています。まあどこのチームも先発やリリーフ整備は常に付きまとう課題なんですけどね。そういうことを考えると松坂の獲得というのは、良いお手本・教材としての意味合いがある。若手の手本として先発育成のいい素材になるというビジョンがあるからこそ、彼を取ったんでしょうね。4億はともかく、そういう視点があるとしたのなら、まあ獲得自体は問題無いと思います。「獲得自体は」ですけどね。

 そういうことがわかっているからこそ、工藤さんは東浜に先発のチャンスを与え、ロングリリーフの敗戦処理として飯田を調子悪くてもベンチに置き続け、武田を負け覚悟で引っ張るわけですね。

 工藤監督には次代の先発・エースを育成するぞ!という明確なビジョンがあるのでしょう。ですからその点では秋山政権よりも優れているので、問題無いと思います。少なくともチームが崩壊することはないでしょう。勝てそうなシーズンで優勝逃したりとかも。どう考えても、秋山さんはビジョンがなかった。一年一年で選手が壊れようが何だろうが知ったこっちゃない。後は野となれ山となれ的に見えましたからね。

 岩嵜に期待しているとあったので、早く使ってあげて欲しいですね。加治屋や松本もキーになると思います。大場・巽はこの時期に良くないですし、一年今のコーチが見たらもう見切りをつけて、多分トレードになるでしょうね。山田の再生というのも監督に期待されていることでしょうから、岩嵜より山田が先になるのでしょうか?

 今千賀が二軍で先発調整中ということですが、それは今のエース不在というチーム事情が大きく反映しているのでしょうね。千賀・武田を先発を支えるWエースにするというビジョンがあるのでしょう。

 ですから、千賀は多分今年はすぐには上がらないでしょうね。かなり遅くなると思います。スタミナ作りがメインという話も聞きましたが、どうも変化球が抜ける。ストライクゾーンにあまり決まらないみたいですからね。困っても150キロのまっすぐ投げといたら二軍なら余裕でしょうが、上ではそうは行かないでしょうからね。

 摂津も大隣も一度くらい抹消して飛ばしていいと思いますね。試したい先発がいるのですし。摂津はまっすぐのキレが、先ほど見たんですが、やっぱデビューの頃の映像と比べるとよくないですね。先発のためにフォームをゆったりとしたものに変えましたが、テイクバックを小さくして相手がタイミングを取りづらいフォームにするとかのほうがいいんじゃないでしょうか?

 去年良くない時は摂津のシンカーが落ちなかった。シンカーが使えずに苦しんだという印象ですが、今年は最近の試合を見る限りシンカーがうまく落ちている。しかし、まっすぐのキレが良くない&コントロールが良くない。6回や7回にHRバッターでもない選手に被弾していました。西武とヤクルト戦ですかね。あれを見ると相当まずいという印象ですね。

 今年開幕で良い内容だったのに、勝ちをつけてあげられなかった。あれがかなりまずかったかなぁ、気持ちよくスタート切らせてやれればなぁ…と思いますね。愛妻細川がようやく帰ってきて、気持ちよく投げることで変わるかな?と思いましたがどうでしょう?ミニキャンプでもやらせたほうがいいのでは?

 まあ工藤さんも功労者である摂津、チームを支えてきてエースと言われるピッチャーに一流の投手として160イニングくらい投げさせてやりたい、10勝させて五年連続二桁勝利というエースにふさわしい記録を作ってやりたいという思いがあるでしょうから難しいでしょうね…。むしろ細川が下にいる間に落としてあげたほうが良かった気がしますけども。

 大隣も北九州ということがあっても、右バッターへの高目の真っ直ぐをもってかれてしまったことが怖いですね。大隣のキレのあるボールは多少甘くてもミートされないのが持ち味だっただけに、怖い所。

 大隣はかつては速球派でも今は技巧派。奥行きを利用して抑えると言ってましたが、今の彼だと、3~4試合見られたら球筋を覚えられて打ち込まれていってしまうかもしれません。相手打者がなれる&疲労がたまってキレが落ちる―となると大隣も一年ローテを全うするのは難しいかもしれませんね…。

 大隣はまだローテを全うしたと言える年は1年だけ。摂津からエースの称号を奪うには今年一年、ローテ投げ切ってエースの称号にふさわしい成績を残してからでしょうね。

 まあ、今のところはこれまでの貢献度からして、エース摂津の称号は揺らがないでしょうね。摂津がこれまでずっとローテを守り続けてくれなかったらどうなっていたかわからないですからね。しかしエースとはいえ、摂津の力で、チームを優勝に導いた。摂津が優勝させた!!といえるようなシーズンがないのがファンにとっても印象が薄いのかもですね。