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別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい

優勝候補オリックスという虚妄

 プロ野球ニュースを見るとなぜか、プロであるはずの野球評論家の評価が軒並み高かったオリックス。そして開幕で大コケして一時期2勝14敗、借金12というぶっちぎりの最下位になっていました(※4・22時点では6連勝して7勝14敗と借金7にまで盛り返しています)。

 この低迷で、どうして優勝候補オリックスが…?というコメントをちらほら見かけたり、聞いたりしました。むしろどうしてそういう評価になったのか、己には理解出来ません。今シーズンオリックスはBクラスが有力なチーム。まず優勝争いは出来ないだろうというチームのはずです。

 優勝争いをするのは、北海道ファイターズ福岡ホークス。間違いなくこの二強。そして残りの一つの椅子を埼玉や千葉そしてオリックスバッファローズが争うという展開になるはず。Aクラスに入るということも、展開・状況次第でなくはないけれども、優勝という可能性は限りなく小さい。そういう状況のはずです。

 どうも、去年優勝争いをした。若手が育った・実力がついた。そしてブランコ・バリントン・小谷野・中島と補強をしたから、さらに戦力が上積みされて、今年は優勝できるだろうというような楽観があるようです。去年ゲーム差なしの2位で、そこからさらに戦力が増えたから優勝だ!!!というのはパ・リーグを見ていない人が考えることでしょう。

 もしくは「ペナント争いという力学」を知らない人、「プロ野球球団の組織論」を知らない人であるかになるでしょう。現在、持ち直してはいますけども、オリックスはこのまま沈むというか厳しいシーズンを過ごすことになる可能性が非常に高いと思われます。それはスタートダッシュで躓いて大型連敗したからというわけではなく、構造的・論理的必然性が背景にあるからです。

【去年のペナント状況】

 まず、去年のペナント状況の整理からしたいと思います。オリックスは優勝候補どころか、下位であると予想されていました。みな優勝候補に大補強をしたホークスがぶっちぎりで優勝すると見ていて、対向するチームは果たしてどこだろうか?という予想をしていました。そういうなかで2位予想は人によってまちまちだったという感じでした。ところが、そのバラける2位予想でもオリックスをあげていた人はいなかったと思います。

 金村さんが、森脇監督と仲がいいということもあって、確か唯一オリックスが二位と予想をしていた記憶があります。それでも本人曰く「下駄を履かせた」ということでした。つまり去年の開幕時点では、誰もオリックスが優勝するとか、Aクラスに入ると思っていなかった状況だったわけですね。

 去年の己の予想は(2014パ・リーグ予想)で書いたように、オリックスは最下位でした。パ・リーグのどのチームも、去年優勝した楽天や安定して強い日ハム・西武を優先的に考えて、まずオリックスを熱心に研究しなかった。もちろんスコアラーを派遣して対策を考えるはずですが、「どうやって優勝候補の大本命であるホークスと戦うか!」とホークス対策と同じような熱意を抱いてオリックスの分析・研究はしなかったはずです。

 せいぜい、成長してきた捕手伊藤を攻略することくらいでしょう。事実開幕全く打てませんでしたからね。去年の伊藤。

 オリックスが優勝争いできた要因として①他球団の警戒がなかった

 ―ということをまず念頭に置く必要性があります。今年は徹底して研究される。相手も「強いチーム」だということで対策を取ってくるわけです。ですから、皮肉なことに、「オリックスが強くなかったからこそ、他チームは警戒しなかったからその分楽に戦えた。ところが、強くなったために、以前のように舐めて向かってこなくなる。真剣に対策を練られてしまう。その結果、オリックスは弱くなってしまう」という構造が今年は基本として存在するのですね。

【優勝できた楽天との比較分析】

 優勝した楽天(2013日本一)が去年最下位に沈んでしまったのは(2014パ最下位)、エースで無敗ピッチングを続けた大・大黒柱である田中の離脱に、五番の主力打者マギーの離脱というだけではないんですね。必ず翌年は徹底して研究されて、選手の弱点を徹底的に突かれて、去年のような実力を発揮できなくなる。選手の数字は去年より必ず落ちる。翌年は戦力が自然とダウンする、弱くなるという力学・構造もあったんですね。

 これまでパ・リーグを見たことがなかった己は、楽天というチームを「パ・リーグをで一番弱い球団」だと思っていました。だからホークスが優勝するにはここからいくら貯金を作るかがキーになるという予想をしていました。ところが、楽天戦を見たら投手力・打撃力は乏しいものの、細かい野球・繋ぎをそこそこきっちりやってくる。守備力がそこそこ備わっており、「なんだこのチームそこそこ基本ができているじゃないか、全然ダメチームじゃないじゃないか」と感じたことを覚えています。優勝する前年からチームとしてその下地・基盤がしっかり作られていたんですね、実は。

 野球・ペナントは投手・守備を計算できる状態にすれば、打撃力はひとまず目をつぶって何とか戦えるものです。というか投手が一年回せなければ、ペナントレースを制することが出来ないという構造になっています。安定して弱い球団というのは投手力がない(=投手を楽にする守備力がない)故に低迷しています。広島が優勝候補と呼ばれるチームになったのは、投手力の整備にあることは言うまでもなく、万年最下位だった阪神も今の投手力を見ればその違いは明らかですね。

 要するにシーズンでBクラスに沈むチームとは殆ど「投手陣の整備に失敗した」結果負けるのですね。ついで重要になるのは投手力を支える守備力がないこと、そして点を取る能力が乏しいということで下位に低迷するわけですが、野球というスポーツは高い打撃能力・センスが有る優秀な選手を揃えなくても、点が入るスポーツであり、ノーヒットでも点を取ることが出来ます。ヒットやホームランをガンガン打たずとも一点をもぎ取る能力が高ければ勝つことが出来る競技です。

 点が入りやすい競技ですから、乏しい攻撃力でありながらも、虎の子の1点を守りきれば勝てる構造になっています。優勝するチームはほぼ例外なく、一点差・二点差のクロスゲームに強いチームです。要するに「1点を取る能力と1点を守る能力」に長けた野球をすることがペナントで勝つ極意と言えます。

 現代野球は、その「1点をいかに取るか、守るか」のために非常に細かい戦術・能力が求められる野球になっています。

 イーグルスは1点を取るための「繋ぎの野球」というのがきっちり出来ていました。それに対してオリックスは去年からその「細かい野球」、粘って何とか食らいついて後ろにつなぐというのが出来ていませんでした。それができていたのはせいぜい川端くらいでした(オリックスの開幕絶不調は彼の怪我と無関係ではないでしょう)。

 もちろん平野という選手もいたのですが、彼はベテラン。安達・駿太・竹原・中村といった新加入の若手が細かいこと嫌らしいことがしっかり出来ていないといけない。つまり「育成」が機能していない。失敗しているということです。

 オリックスで期待の新人野手がここ数年出てきていません、ホークスで言えばギータや中村、今宮といった選手がいない。左投手専用の左キラーなどでもいいですが、そういう選手がいない。それでは今年更なる上積みを期待することは難しい。

 対称的に、優勝したイーグルスは、トレードで獲得した名手藤田を始め、枡田・銀次・島内・岡島と言った選手が次々と出てきて打ち出しました(無論その前年からもそこそこ打っていましたが)。坂口やT岡田と言った選手が去年よりも打ったとは言え、彼らはベテラン。それに突出した数字を何か残したわけでもない。これでは優勝するのは厳しい。

 常勝チームならともかく、下位に低迷するような弱小球団が優勝するには、「あまり特徴がよく知られていない無名選手が複数人一気に出てくる」必要性があります。そうなると、相手チームが打線を機能させずに、点で分断して各個撃破して対処するという打線を抑える基本対策が出来なくなる。相手が有効な対策、基本セオリーを作り上げない内にこちらの打線の繋ぎを成立させて勝つ。まあこれしかないわけです(補足1※)。

 (※前後の打者によってバッターというのは左右されます。自分が凡退しても次の打者が打ってくれるとか、前のバッターが球数を使わせたから自分は初球から思い切り振っていけるなど、前後の打者が良ければ良いほど成績は上がりやすい。逆に前後の打者が悪いとよりいろんな制約が生まれて数字が落ちてしまう。打者に「役割」があって、「役割」をきっちり果たすことで打線は機能する、「打線がつながる」わけですね。)

 ―というのも、必ず翌年は徹底して研究されて打線が繋がらなくなる。打者は数字をガクッと落とすことが想定されるからです。優秀な選手・バッターは内川(8年連続3割)に代表されるように安定して数字を残します。研究されても結果を残せるというのはほんの一握りの突出した能力を持つ選手しかいない。何より、144試合フルに出続けるということ自体がものすごく大変なこと。

 楽天で二年連続で3割を打って変わらない活躍を示したのは銀次くらいでしょう。それでも120試合以上出ていません。つまりフルシーズン出て、かつ打率やHR・四球数などを維持するという選手はほんの一握りの一流のみなんですね。枡田がガクッと数字を落としたように、研究されて弱点がバレたり、シーズンをフルに戦う上で体力が持たず怪我して離脱したりしてしまうのですね。ひどい時には怪我の影響で能力自体を損なってしまうケースも珍しくありません。素晴らしい盗塁能力を見せていた聖澤などまさにこのケースですね。

 故に②新人は特に研究で、ベテランでも疲労や怪我で能力を劣化させやすい。その翌年フルシーズン安定して出場して同じ数字を残すこと、結果を出し続けることが難しくなります。

 ですから、新しい戦力がその穴を埋めるということがなおさら必要になるわけです。原監督が優勝した翌年チームは弱くなると常々言っているのはこういうことですね。優勝すればCS・日本シリーズで更に長く闘うのですから、なおさら翌年不調になりやすい確率が高まるわけですね。

 「去年優勝した(優勝争いした)から、今年も強い」―はありえないのです。「優勝争いしたから、今年は弱い」―というのが基本なのです。

 何言ってるんだ、じゃあホークスは今年は弱くなるはずじゃないか!いい加減なこと言うな!―と思うかもしれませんが、ホークスは層が厚いだけではなく、常に優勝争いをしているチームだということ。毎年優勝争いをしているチームというのは、「一年をどう戦うのか」ということをよく知っているんですね。

 それはつまり、シーズン外を含めて一年をどう過ごすか、オフにはどう身体を休めて、シーズンが始まったら安定して戦うためにどういう準備をしておけばいいかということを知り尽くしているわけです。選手はもちろん、球団にそのノウハウがしっかり作られているから、翌年への戦力ダウンを最小限に抑えられるわけなんですね(また潜在能力の高い選手であり、更に成長する・コーチがさせるということでもあります)。

 優勝したことがないチームというのは、そういう経験が乏しい。ノウハウがない。7~8年くらい前に2位になったことがあるだけで、選手の殆どが優勝争いをした経験がない。あるのは外様組だけ。外様組というのはFAなどで必然的に年齢が高いので一年通して安定して戦える確率が低いもの。チームの柱になってほしい、うってつけの存在・常勝日ハム出身の糸井ですら怪我という段階ですしね。

 優勝争いの経験に乏しいチームは一年を通じて戦うことがわからない。オフシーズンを含めたコンディションの維持などのノウハウがない。この経験値の乏しさを考えても今年のオリックスは厳しいといえるでしょう。

 また、楽天では守備固めに、岩崎達郎・森山周という存在がいました。彼らの巧さで、「ああこれは一点を守る野球をしっかりやっているなぁ、これは優勝するなぁ」と思ったものです。ではオリックスにこの二人のような守備固めがいたでしょうか?言わずもがなですね。これではほかがコケてくれない限り優勝するのは難しい。

オリックスの弱さは組織力の不在】

 初めてパ・リーグを見た年に、オリックスが補強をしたので二位という予想を己はしました。しかし、蓋を開けたら最下位。その後も、ペナントを見続けて、このチームは一番弱い。パ・リーグのお荷物球団だなという感想を抱くチームでした。

 補強をした年のオリは駄目になると言われているようですが、それは要するに、「補強が若手の育成の場を奪う」からの一言につきます。期待の新人も実際チャンスを与えて、場数を踏まなければ物になることはない。その数少ないチャンスがなくなってしまう。故に、一昔前の「大砲ばかりを補強して機能しなかった長嶋巨人」のように、チーム力が底上げされないことになるのですね(かといって大砲ばかりを補強しても無意味だという批判は今年のオリックスには当てはまりません。何故かそんなズレた批判を何回か目にしたので一応)。

 強いチームとは、フロントが主導して作るもの。それは、どんな選手が今必要とされていると考えること、そしてそのような選手を何年以内に育てるかとチーム内で意思統一することです。誰と誰を競わせて、そのポジションを埋めるのか?とチーム内でわかりやすく育てるヴィジョンを共有することで強いチームは作られます。

 強いチームは、育成です。スカウトが選手を発掘し、コーチがしっかり育てる。それが出来なければ、たまによそのチームの不調などがからみ合って一年だけ優勝するようなことがあっても、長期的に勝ち続けること、安定してAクラス入りするようなことはありえません。

 補強というのはあくまで副次的なもの、必要最小限に行われるべきものです。そうしなければ強い組織というのは作れない、組織の論理に歪みが出ます。「年がら年中補強を繰り返すオリックス」というチームは基本的にダメなチーム、「機能不全を起こしている組織」だということを認識する必要があるでしょう。

 よって、③補強をしたから戦力が上積みされて今年は優勝できるというのはありえないといえます。コンディションのノウハウ以上に、育成のビジョンがないチームが安定して強いことはありえません

 本当は、もっと書こうと思いましたが、力尽きました。分割して続きを。投手の話だけですけどね、あとは。