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NPB監督人事の怪

 秋山監督の今シーズン限りでの辞任の申し入れがあったことで、これで5人の監督が今シーズン限りで退くことになりました。

 セ・リーグでは広島野村監督、ヤクルト小川監督。パ・リーグでは西武伊原監督、楽天星野監督、そしてSB秋山監督の五名ですね。組織の論理は信賞必罰ですから、結果を出せない監督は退任して然るべき。いかなる理由があるにせよ、一定の期間内で成果を出せないのならば責任を取らなくてはなりません。そこでまず疑問に思うのが就任以来3年連続でAクラス入りを逃したDeNAの中畑監督は何故辞めないのか?ということでしょう。

○低迷する責任を取らない横浜の怪

 本人も公約としてAクラス入り、CSに連れていけないのならばクビ!と語っていたはずですね。進退伺という消極的な形ではなく、責任をとってその職を退くのが筋でしょう。ただ、今年の低迷の要因に正捕手であった鶴岡の流出という事態があったので、責任は編成にあると言えることも確かです。ならば、高田GMが責任を取るべきでしょう。

 三年というのはチーム改革を占う上で一つの目安の期間です。これまでのベイスターズを見て、結果は出なかったが着実に成果が出ている。来年必ず結果が出せるという何かがあるのならともかく、そういうものがまるでない。であるならば、どちらか必ず責任を取るべきでしょう。DeNAが新規参入したとき、これでセ・リーグは賢い野球をする球団が増えて面白くなると書きましたが、その賢さがまるで伴っていない、豊富な資金があるならともかくこれでは勝てません。

 日本ハムのようなフロント主導の組織になると思っていましたが、どうも高田GMの手腕よりフロントそのものが良かったということでしょうね。三年目か四年目に結果を出すという長期的なプランが見られない。ベイスターズの課題は先発は言うまでもなく投手陣の整備。にも関わらず有望な新人三上を使い潰しても構わないというような起用法ですからね。

 広島・ヤクルト・日本ハムのように外国人獲得に独自スカウトやパイプを開拓するなどといった動きが見られないのは大問題でしょうね。最近は阪神も独自スカウトを!という動きがあるくらいですしね。キューバは良かったと思いますけど、ベイスターズが何よりも重視するのはクローザーや先発の投手。外国人投手を成功させるのは難しいですが、近年広島がいい投手を発掘しているように対策がないわけではありません。まして広島が低予算でできているのですからこれをやらない理由はないでしょう。安くていい選手を取れるのなら、その分補強費が確保され、別に使えるのですからね。

 中畑監督を褒めるもので、筒香を外野にコンバートして才能を開花させたというものを見ました。が、これは誤りでしょう。もともと将来性があると評判が高かった筒香選手が打てるようになったのは然程不思議なことではありませんし、なにせ今年あった筒香・梶谷選手の衝突事故が、不慣れな外野守備にあった。経験が浅い故に、目が切れないそのために位置確認が間に合わず衝突してしまったと言われています。であるならば、選手のこういった事態も筒香選手の成長と共に中畑監督の責任として問われるべきことでしょう。

 そして毎回、思うことですが、GMの仕事は編成どの選手を取ってきて切るのか、どういうコーチ・監督を揃えるか、チームを任せるかということです。そして選ばれた監督の仕事は、選手の育成ではなく試合での采配です。一年をどう戦うかという長期的な選手起用含めて、誰を使い誰を使わないかという選択や試合での戦術の選択こそ監督の責任であり、仕事です。選手を育てるのは主にコーチの仕事です。これを履き違えている人が非常に多い。もちろん、発展途上の選手の将来性を見込んで目先の損失を我慢するという選択は、その経験を活かして選手が成長した場合、監督の功績にもなりますけどね。

 ベイスターズというチームがすることは、球場が攻撃有利という地理環境でもまず守りの整備、すなわちセンターラインを強化することであるはずです。ブランコ・モーガンバルディリス、その獲得は間違いではありませんし有意義だったと言えますが何より重要なのは投手のはずです。モスコーソ一人くらいで未だに投手に当たりがない。枠がないのにグリエルを取ってきたようなことを、本来投手でやるべきはずです。安く取ってきて結果を出したら出来高で、という形で何人か取って来るということができたのに行わなかったのは何故なのでしょうか?

 グライシンガーを再生させた西本コーチをひっぱってこれるかどうか、つまりそういう外国人投手をうまく育成できる専門家を取れるかどうかはDeNAというチームの鍵になるでしょう。

 センターラインの話に戻りますが、キャッチャー・セカンド・ショート・センターを未だ守備重視で誰一人固定できないというのはどういうことなのでしょうか?打てないということでも守備がいい荒波をもっと使わないのはちょっと理解できませんが、あの藤田が放出されたことを考えるとそれも当然かもしれませんが。

 いずれにせよ、中畑監督は来シーズン優勝しようが、CS行きという目標を達成しようが辞めるということを明言すべきでしょうね。彼が監督をすることで、良い選手やコーチを取ってこれるという理由がないのに続投はチームの士気を間違いなく下げるでしょう。

○辞任するという筋を通した野村監督も、後任は内部昇格

 さて、次に広島ですが、その指揮能力に疑問符がつくことが多かった野村監督。去年に続いてCS進出というある程度の成果を出したものの、今年の巨人の実力からして優勝しないと行けないシーズンだったはずです。そういう時に勝てない、交流戦パ・リーグに対してまともに戦えないというチーム事情を考えても責任を取るのが筋。昨年まで長い間結果を出せなかったという事情を考えると今年でどういう結果になっても辞めるつもりだったという彼の姿勢はズバリ信賞必罰の論理を実行するものであるといえるでしょう。

 ただ、CSという弱いチームがここに全力を注いで対策をすべき場所で、一点も取れないというのは、やはり彼の能力を象徴することだったと思います。智将の方の野村監督ことノムさんは、二番最強説を唱えるように、二番の重要性は言うまでもないことです。その二番に丸という選手を用いるのですから、当然一点を取るチャンスは減る(逆にビッグイニングを作れる期待値は上がるでしょうが、短期決戦にそれは無謀でしょう)。そういう選択を取ったことはやはり采配能力が高いとはいえないと思います。

 言うまでもなく広島黄金時代の監督は古葉監督であり、外様系の人です。監督というのは有能な人物を連れて来るべきであり、内部に適任がいなければ外から優秀な人材を招聘しなくてはなりません。新監督になる緒方監督の手腕は未知数ですが、これまで内部にいて野村采配に批判的でないとするならば、あまり期待できないと言わざるをえないでしょう。優秀なコーチを外から連れてくるか、選手補強がうまくいかない限り、躍進は考えづらいと思います。

 同じく、ヤクルトも真中コーチという内部昇格です。ヤクルトというチームはしっかりしていますが、今のヤクルトというチームの課題はバッティングではなく、ピッチングスタッフの整備のはずです。そのためにしばらくは中継ぎを使い潰さないような継投の工夫が求められますし、二軍・一軍でどうやっていい投手をやりくりしてスワローズを支える若手投手を育てるのかということが重要になるはずです。そういう時に外から連れてくる、もしくは投手出身監督でなくて大丈夫なのでしょうか?正直、それならば小川監督と対して変わらないのでは?定例昇格人事なのでは?と感じてしまいます。

 ヤクルトに求められるのは細かい野球ではなく、選手を壊さないこと、一年間戦えるように鍛えることです。コンディションやトレーニングコーチ、そして投手コーチなどを外部から招聘すべきだと思います。何より定例昇格という内部だけの閉ざされた組織が健全であるとは思えません。外部から新しい風が入ってこない限り、ヤクルトという組織が変わらないのではないでしょうか?無論、きっちりと賢い野球をするので、他のチームの停滞や新戦力の当たりで上に行くことがあってもおかしくはないでしょう。しかし安定してAクラス・優勝争いが出来るとは思えないですね。また先発や中継ぎがパンクして今のような状態になるでしょう。

楽天・SB・西武、成功・失敗?

 西武田辺監督はよく存じ上げないのでなんとも言えませんが、伊原監督という?な人物を選んでおきながらすぐ切ったこと。そういう経緯を見るとどうなのでしょうか?まあ西武の問題は監督の問題とはいえない所があるので、来シーズン次第でしょうかね。

 楽天星野監督は、休養したことを理由に辞任を申し出ました。高齢に病気、そして一定の期間ということを考えると妥当なところでしょう。しかし疑問は内部昇格での大久保コーチという人物を選んだこと。過去の経歴、人間性ということも問題ですが、オーナーのコネという理由での昇格であること。

 そもそも彼は打撃コーチとしての才能があったので、己もその点はいいと思いましたが、コーチとしての能力と監督としてのそれは全く別物。監督代理の時、投手コーチに優秀なヨシコーチがいるのにもかかわらず、彼に仰がずに投手の起用法を色々いじくったこと。経験が浅い、代理監督なら投手のことはコーチに任せるべきでしょう。自分の起用法・方針と違うとはいえども、監督経験がないのに知らない分野に口を出すのはいい傾向とは思えません。

 現在、彼が監督就任で客のボイコットに、選手の流出話が持ち上がっています。そういう逆風を跳ね返すまでの能力を発揮できるのでしょうか?何より結果が問われますが、これだけ世間からプレッシャーを掛けられるようなことだと、スタートでちょっと躓いただけで猛反発、内部の反対派からの突き上げを食らうでしょう。それでも組織の混乱をピシっと抑えることが本当に出来るのでしょうか?

 巨人で一定の結果を残した橋上コーチを参謀として呼び戻すようなので、ヘッドコーチ・参謀という点ではそんなに心配することはないと思いますが、やはり投手でしょうね。名伯楽ヨシコーチがいなくなって、誰が投手陣を引っ張っていくのか。監督が余計なことをしなければいいですが…。投手コーチが誰になるか?というのが一つのキーになるでしょう。聞く所によるとヨシコーチは、一流を育てることは出来ても、それ以外はそんなに育てられないという評があるとのこと。であるならば、新投手コーチがちょっと芽が出ていない若手投手陣・素材をどうやって伸ばすかということも注目したいところですね。

 最後に秋山監督ですが、なんども書いてきたように彼は監督としての才が余りありません。ノムさんいわく外野手の監督に名監督なし―というように、内野プレーに関係ないから、状況を計算するという頭脳が育たない。外野でバッティングのような素振りをしたりする。そういう典型だと思います。落合さんのように、シーズン・プランを計算するという配分がないんですよね。多分目先の一試合一試合(もしくはワンカード、ツーカード)をただ消化するだけというようなことになっていると思います。

 それはさておき、球団は彼に続投要請をしたということ。秋山監督が自主的に辞任を申し出なければ、あと何年やらせる気だったのか、正直フロントとしての能力を疑います。去年の時点で能力が乏しいこと、指揮官向きではないことがハッキリわかったはずなのに、この判断ですからフロントが相当マヌケであることは間違いないでしょう。

 そもそもこの監督を育てて、次期監督に指名したのは王さんですから、責任は王さんにあると言って良いでしょう。「次期監督はOBで」のような発言をしたり、今年の???な補強といい、王さんが球団に間違った判断をもたらしていると思えてなりません。そうであるならば王さんが余計な口出しをしないように、何らかの改革をするべきだと思います。

 二年くらい前から書いてきたように、個人的に工藤・古田監督が好ましいと書いてきました。ですが、このような「OBだから工藤」という路線には一抹の不安を感じます。コーチにもまた西武ライオンズダイエーホークスというキャリアの人を選ぶみたいな話も見ましたし…。

 まあ、ホークスについてはまた色々書くと思うので、今回はこのへんで。