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【CS感想】 セ2nd―巨人VS広島


 ファーストステージで阪神を下し、シーズン終盤の勢いもあって広島と巨人の戦いは面白くなるだろう。ひょっとしたら巨人を倒してしまうのでは?とまで言われていましたが、結果はあっけないものでした。

 終わってみれば、3-2、3-0、3-1と全く点が取れずにクロスゲームでの惜敗。しかし点差以上に両チームの実力・戦力差が現れたゲームでした。元々チームの地力が違う、差があるのは初めからわかりきったこと。そのためにも初戦、ここを何としてでも取って、機先を制してその後シリーズを優位に進めなくてはならなかったと思います。

 その大事な初戦、一回。ここが全てだったかもしれません。というのはアウェイでの六連戦でファーストステージを戦って広島には勢いがあるな!と相手に意識をさせるためには、やはり一回にその勢いを感じさせる必要があったと思います。「おや、いつもと違うぞ、流れに乗っていてチームに勢いがあるぞ」と相手に思わせるのはこの回ほど適切なものはないですから、絶対に点を取れ!なんてのは不可能ですが、やるべきことをしっかりやっておクべきだったのではと思いました。

 逆に言うとエース内海はそれを知っているから初回は立ち上がりの不安をいつも以上に感じていたはずですし、「それでも絶対押さえてやる。できれば三凡でビシッといきたい」と思っていたはずです。それがいきなりの丸のヒット。理想的に言えばベコベコに打ってKOすることですが、先取点というのが物凄い大きな意味を持つ短期決戦ですから、確実にランナーを送らなくてはいけない。バントかエンドランかそのどちらかしかないのに振りきってセンターフライ。

 まあ、この選択の時点で勝負あったといえるかもしれません。CSというのは下位チームは実力差があって絶対的に不利なものですから、どうしても勢いと打って勝つ=打力が求められるものですが、それでもここはまず地道に一点を取りに行くのが定石でしょう。シーズンならその攻め方でもいいというかむしろ初回の立ち上がりに付け込んでいくというのは正解ですが、菊池があたっているとはいえ、内海からここで確実にヒットを打てるという根拠がない限りやってはいけないことです。

 事実内海は暴投をしてランナー三塁にまでやってしまうコンディション。まあ、状況が違えば配球も違ったでしょうけど。もったいないと言わざるをえないところでした。続く二回今度はキッチリ送った結果、村田の焦った送球で一気に二点貰う形に。続く大竹がランナーを三塁に送れないのはまたしても嫌な感じを与えるケースとなりました。

 2回裏小窪がお返しとばかりにエラーをし、3回表菊池が出たもののキラがゲッツー。ランナーを気にしなくて良くなった内海は内角を思いっきりせめてエルドレッド死球。これでエルドレッドに内角を意識付けることが出来ました。毎回ランナーを出す不安定な内海でしたが、4回はピシャっと抑えました。広島としてはそんなに多くは訪れないはずの得点機会でエラーでの得点だけ。貴重なチャンスでタイムリーを打てなかったのが嫌な感じをさせるところになりました。

 巨人はランナーを貯めるも犠牲フライの一点止まり。内海をスパっと見切って代打で勝負。結果はダメだったものの、短期決戦の戦い方としては妥当でしょう。今日負けると嫌な感じであるとはいえ、ロングリリーフ・第二戦発澤村がいるし、彼のテストにもなりますからね。

 もしここで広島に頼れる第二戦発がいれば、内海と同じく初登板で緊張する澤村に付け込むということで思い切って代打という選択肢、博打ですがそういうことも考えられました。しかし広島には巨人の沢村のような存在がいない。そのため簡単にワンナウトをとった沢村はその後ピンチを招くものの、先頭打者を切ったこともあり、無失点で切り抜けました。

 6回に坂本のスライダーの失投をHRされ、同点2ランで追いつかれるわけですが、スライダーが甘く入っているところに、同じ球を投げるならきっちり外せよと、しっかりボールゾーンだぞと意識をさせなくてはなりませんでした。捕手の石原はそういったジェスチャーというか意思疎通が投手としっかりできていたのでしょうか?少し疑問に感じるシーンでした。

 同点に追いついた時点で7回から山口を投入。このシリーズというかチームを引っ張る選手は間違いなく菊池になるだろうと思われていましたが、見事に期待に応えてヒット→盗塁で一気に三塁に(この日は5-4の大活躍でしたね)。ここでもキラがおしいあたりでしたが討ち取られてまたしてもクリーンナップが期待に応えられない展開に。山口相手に左のキラはかなり厳しいはず。大きいのはいらない、コンパクトに打って欲しかったはずですが、どういった指示が出ていたのでしょうか…?

 村田にタイムリーを打たれてこの試合は決まるわけですが、エラーをした村田は必ず取り返そうとボールを見極めにくくなるはず。それまでに殺しておいてこのピンチでもストライクからボールになる球で振らせて打ち取りたかった。最悪歩かせて押し出しでも、本人の中には仕事をした!という取り返した感がないまま。そしてその胸のつかえを持たせたまま殺しておきたいところでしたが…。まあCSの場合は普段やらない相手ではないので、手の内を知り尽くしていますから殺すというのは難しいのですけどね。いくら代打とはいえ守備固めと言っていい橋本に四球を出すとその後が厳しくなってしまいますね。

 そして終わり方が最悪と言っていい、代走赤松の走塁死でした。足のスペシャリストが一番やってはいけないことをした。抜けて、レフトの位置を確認してから走るべきところをなんであんなに焦ったのか?やはり大舞台にあがってしまっていたのでしょうかね?次のバッターキラということを考えても無理するケースではなかったのですが…。

 で、続く第二戦は菅野がシーズン使わないフォークを使って広島打線を翻弄しセでCS初完封を達成するわけですが、勝負を決めた寺内の3ランを見ると、伏線がありました。

 前の試合、ワンナウト1・2塁で阿部の前の寺内に送らせずにそのまま打席に経たせるシーンが七回にありました。無論、もし送っても阿部敬遠村田勝負で変わらないのですけど、そこで寺内はきっちりボールに向かっていって振り切ったレフトフライを打ちました。細かいバッティングをするはずの2番寺内がああいうバッティングをしていたという前日の流れを考えると(本来は良くない傾向なのですが)、3ランを打たれたあの失投は二番だけど叩きつけてこない、長打狙って振り切ってくる可能性があるぞ!―と、もっと外にと石原はアピールをして置くべきだったのではないでしょうか?

 事前の準備をしっかりしておかなくてはならなかったと思います。ましてや大竹が打たれたときの球と同じだったのですから、なおさらだと思います。大竹・マエケンと全く違う対策をとるよりは、同じ対策をとる。変に緊張せずに振り切っていこう!という方針がある可能性を考えるとその可能性を考慮に入れる。またはその可能性を考えて、そういう狙いを確かめてみるべきではなかったのでしょうか?スライダーが抜けてきた。そういうときはまっすぐで内角に力勝負しかないと思うのですがどうも配球で相手を揺さぶれた、手玉に取れた感が石原にはありません。まあ、全部一球一球見ていたわけではないので印象ですがキャッチャーのリードというのが勝敗を左右したのではないでしょうか?石原の存在感は果たして広島というチームにどのくらいあるのでしょうか?ちょっと疑問に思いました。

 9回にチャンスを作るもまたしてもタイムリーが出ず。あと一本が出ないのはこのシーズンの特徴でしょう。打てないまでもいやらしい野球をするはずだった広島ですが、バントからのバスターやエンドラン、セーフティや粘りに粘って四球を取りに行くなど工夫が足りなかったのではないでしょうか?短期決戦は何点に抑えるか、最少失点に抑えることが大事だといいますが、どこでどうやって点を取るのか、事前プランがよくわからないゲームだったと思います。阿部は終盤背中の病気で離脱してそこから送球があまり安定しなくなったという話を見ましたが、それならもっと積極的に走るべきだったのではないでしょうか?

 最後の試合では今度は打って変わって初回のチャンスを生かし杉内から先制点をあげます。打線を組み替えて三番梵はともかく、五番小窪というのはどうなのでしょうか?どうも左キラーのようですが左キラーで勝負をかけるなら広瀬はどうして使わなかったのでしょうか?コンディションでしょうか?それとも左の代打のためなのでしょうか?広角に打てるイメージがあるので広瀬のほうがいい気がするのですが、記録も作りましたし。まあシーズン見てないのでなんとも言えないですがね。

 同点に追いつかれるまではともかく、追いつかれてから広島は杉内に手玉に取られ、守りではカウント3-1から狙いすましたかのようにエンドランでファーストロペスが一気に生還で逆転。完全に原采配の術中にハマりましたね。打順を考えれば下位に回るのでボール球を投げるという手もありましたが、そういう相手の策を見破って逆手に取るというケースが野村采配にはシーズン中どれくらいあったのでしょうかね?裏をかかれればランナーアウトやゲッツーで一気に広島に流れが来たのではないでしょうか?

 1点負けてるとはいえ投手のコマが揃っていない広島がツーアウトから投手野村に代打という決断は?そしてその裏またも横山が打たれてゲームが決まります。5回というイニングに投げる投手ではないでしょう、彼は。だからCSで中継ぎをテストしておくべきだといったのに…という気持ちになりましたね。

 6回までにリードをしていれば巨人は鉄壁のリレーが完成していますからもうどうしようもないですね。結局何の見せ場もないまま終わってしまいました。今シーズン木村は出場が少ないですが左右問わず打率330くらいで得点圏も4割超、経験もソコソコある彼がチームを引っ張っていかないといけなかったと思います。丁度ロッテの今江や井口のように。まあ井口レベルはさすがに無理として。木村は阪神で7-1。これが痛かったですね。ここで7-3とか4くらいヒットを打っていればこの巨人戦でもヨッシャァとなったのでしょうけど。

 やはりCSなどの大舞台の経験がない広島勢には3試合させるべきでしたね。そしてすこしでも打撃感を磨く。大舞台の緊張に慣れておくべきでした。ロッテのように好球必打で積極的に振り回し、ファーストステージで自信と勢いをつけた上で巨人に立ち向かっていくべきでしたね。もう一試合生きるか死ぬか、伸るか反るかの中で勝負をしておかないと、そのような本物の勢いは生まれなかったでしょう。まして広島は初CSだったのですからね。戸惑いと緊張がプレーに出てしまうようでは結局弱者が強者を飲み込むなどありえない話でしたね。

 初回ツーアウト二塁で小窪がいつもなら振ってるはずのボールに手が出なかったって記事がありましたしね。もし巨人に勝つつもりなら阪神戦で先手を取った次の試合は捨てるべきでしたね。少なくとも中継ぎテストはしておくべきでした。本来広島がやるべき細かい野球を巨人がやっている時点でもう地力が違うのですから勝てるはずもありませんね。

 唯一気を吐いたのは菊池だけでしたが、1番丸は動かせないとして、二番ではなく三番に彼を置くべきではなかったでしょうか?長打はないにしてもあたっていたのは彼だけですし、ランナーを確実に返せたとしたら彼だけだった気がします。まあ、結果論ですが、今のチーム上体で一番コンディションがいいのは誰で、そいつに全てを託そう!というような戦術的視点は欠かせなかったと思います。菊池以上のバント・エンドラン・右打ちが出来る二番を養成することや、ロングリリーフを作ること。原監督は終盤CSのために色々テストをしていましたが、最たるものが澤村のロングリリーフでしょう。そういうことができていなかったので事前の準備で負けたというべきでしょうか。

 弱者が強者を食うために、勢いにのる博打をする必要がある。トリックプレーだったり、エンドランを仕掛けて巨人がやったような一塁で一気に生還のような勢い付けるプレーがなかった、戦術がなかった。監督の采配という差は大きかったのではないでしょうか?

 また、今回の広島の敗戦について「CSに出れただけでも」―のような好意的なものが多かったのでがっかりしました。無論、次のCSに向けてこの5試合は貴重な財産になったはずですが、やるべきことをきっちりやっていないチームを褒めるのはありえないでしょう。今シーズン巨人以外どこもグズグズでした。セ・リーグは崩壊しかかっていました。巨人ですらドラ一以外有望な若手が育ってこないという現状で、来年大丈夫か?というものがありますからなおさらです。ドラフト下位・育成選手が育ってこそのチームの能力です。来年もこうだったらどうするんでしょうね、セ・リーグは…。

 CSとは3位のチームが優勝チームを破るかもしれない!というのが見どころの制度ですが、今回のような展開を見ると、最早CSで下のチームが下克上をするようなことがありうるのかな?CSの意味があるのかな?という気になってしまいますね。せめて六試合連続でやるのをやめて中日に休憩を挟まないとなんか見る方も辛いですよね。消耗戦になって選手が酷使されるのやめたほうがいいと思います。

 ※追記、さっそく広島は左の投手新外国人を取るというニュースが出てきました。今回の敗戦には元々広島の左腕不足という弱点が大きく作用したという性質がありましたからいいことだと思います(注左のワンポイント、リリーフをつぎ込めないという選択の狭さが相手にとってどれほどやりやすかったか。阿部が久本打ちましたしね。)。ただ、広島は四人の枠を使いきってしまっているので、当たったらあたったでまたやりくり困ることになると思います。

 今年のドラフト大瀬良を引き当てましたが、左腕が足りないのに左腕を指名しなくてよかったのでしょうか?トライアウトから拾ってくるのは限界がありますし、大竹が抜けるとまた先発があれというのもわかりますけどね。外国人投手の当たりをまた拾ってきて、彼を使う。んでバリントンをトレードして優秀な日本人左腕。もしくはソコソコの先発と中継ぎのセットで取り替えるという手しかない気がしますね。しかしバリントンの契約にトレードNGがなければの話ですが。まあ金ある球団なら年俸あがるから!と説得できるかもしれないですけど。

 また、広島の観客動員数が今年は微減伸びていないというのを見ました。強いチームは強い地元の支持・支えがあってこそ。親会社はもっと地域密着・地元に愛されるチームにしないといけません。球団一体何やってるんだ!という話になります。今年の赤ヘルファン急増中というニュースは一体何だったんでしょうね?

 ※追記2、書き忘れていました。「総力戦」と「全員野球」は違う言葉です。全員野球、チーム一丸となってとありましたが、各々がその役割を全うできたとはまだまだいえません。無闇矢鱈と投手を酷使することを美化してはいけません。今年勝負の年にするなら、その前まで中継ぎ投手を2~3年先を見据えて大事に使うべきでした。そういうビジョンがないのが何時までたっても勝てないもっとも大きい理由のうちの一つでしょうね。いい加減「投球制限」という概念が根付かないと日本球界の流れは変わらないでしょう。貴重な左腕の青木を使い潰して挙句トレードで巨人で活躍なんてまさに愚の骨頂。そういうところに広島というチームの問題点が現れているといえるでしょう。