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身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

2016日本シリーズ広島カープVS北海道日本ハムファイターズ 不思議な日本シリーズ<前編>何故日本ハムファイターズは短期決戦に弱いのか


 今頃書いていなかった2016年不思議な日本シリーズの話*1。もうめんどくさいから書くのやめようかなと思いましたが、広島カープのCS敗退という事件があったのでそのことについていずれ書くだろうから、どうせ書くなら、まあやっぱりこの話も書こうかなと今更ながら書くことにしました。
 とにかく不可思議な日本シリーズでした。というのもお互い短期決戦が下手なチーム、弱いチームなので、「???」と思うことが目立ったシリーズでした。ファイターズは言うまでもなく日本シリーズで唯一セリーグに分が悪い球団。
 90年~92年に西武ライオンズが3連覇して以降、93年から02年までライオンズは5回日本シリーズで敗れるという出負け状態が続いていましたが、04年・08年には見事日本一になっています。そして言うまでもなく03年からはパ・リーグ絶対時代に突入します。この03~17年まで実に15回中12回パ・リーグ側が勝って日本一になっており、セ・リーグ側の球団はたったの3回しか優勝できていない。最近10年間では日本一になったセ・リーグ球団は巨人しかないという有様です(巨人が日本一になったのは09年と12年です。ちなみに残りの一回は中日の07年です)。
 このセ・リーグの弱さとパ・リーグの強さというのは面白い話ですが、以前から折々語っていますし、本論ではないのでいずれまた。いずれ書く2017日本シリーズで触れると思いますのでね。本論は、日本ハムファイターズが異常に日本シリーズに弱いということ。日本シリーズパ・リーグ側が負けた三回、07年・09年・12年のシリーズで負けた球団は全てファイターズなのですね。ファイターズだけが唯一日本シリーズに弱い*2
 なぜなのか?スモールベースボールを、いやらしい野球をしっかりやっている北海道日本ハムファイターズは、むしろ短期決戦に強いはず。大砲・長距離砲と先発・抑えをかき集めて圧倒的戦力でペナントを制する。その反動で日本シリーズのような短期決戦で嘘のように空回りして実力を発揮できずに負けるという事例は過去の日本シリーズでいくらでも見られたのですが、言うまでもなくファイターズはそういうタイプのチームではない。

日本ハムファイターズは短期決戦のセオリーを無視する
 真剣にプロ野球を分析しだしたのが11年の日本シリーズからなので、それ以前は自分の目で実際に見ていないので、どうして弱いのか想像も付きませんでした。そういう背景があったので、前から疑問に思っていた謎が解き明かされて、実に個人的に勉強になった日本シリーズでした。もったいぶって答えを引っ張ろうかと思いましたが、流石に読み手に迷惑なので、先に答えを言ってしまうと、日本ハムファイターズは短期決戦というもの、日本シリーズというものを重視していない。勝てば儲けものくらいにしか考えていないのですね。日本ハムファイターズは、短期決戦のセオリーを根本から無視しています。
 なぜなのか?おそらくアメリカ・メジャー流の経営方針、いかに少ない金で強いチームを作るか―というマネーボールセイバーメトリクス思考に囚われすぎているからではないかと見ています。まあ、①FA選手流出の多さから頼りになるベテラン・チームリーダーの不在、②総額年俸の安さに基づく選手たちのコンプレックス。ドライな経営のために選手のモチベーションがどうしても頭打ちになること。日本一ボーナス査定などの不在(あるいは他球団と比較した相対的な安さ)など過去にすでに触れていますが、今回初めてファイターズの日本シリーズを観戦して「ああだから弱いのか」と納得したのでそんな話をしてみたいと思います。①・②は誰でも思いつきますし、どこでも指摘されている話だと思いますので、あまり目にすることのない大事な要因③短期決戦のセオリー無視という点を今回指摘したいと思います。*3

■10/22、初戦in広島 ジョンソンVS大谷 5-1
 初戦の一回にして既に違和感のあるプレイ・選択が見られたシリーズでした。ファイターズの問題として、ピッチャーの立ち上がりに初回にバントを選択するという消極性という点を指摘したいと思います。もちろん、大谷という絶対的な投手がいる以上、初回にバントで確実に一点を取りに行く選択・戦術は間違いではありません。というか殆どの監督がこの選択をするでしょう。一点あればまず勝てる確率が高いわけですから。どちらかというと強硬策に出るほうが間違いと言えるでしょうね。

 では、どうしてここでバントを消極策と指摘したのか?それはファイターズというのは常に手堅い戦術しか採用しない。実に消極的な戦いをするからなんですね。短期決戦には「~すべからず」という、してはいけないことがいくつかあります。そのしてはいけないこと=ミスを恐れるが余り、ガチガチな安全策しか選択しないという傾向があることがこのシリーズを見てわかりました。
 中島はこのあとジョンソンに対して3打数2安打。西川は4打数2安打。1・2番がジョンソンに対して相性がいい、もしくは状態がいい。それは所詮結果論だと言われることかもしれませんが(実際中島に打たせていたら同じ結果だったかわかりませんからね)。投手の立ち上がりというのは相手投手を攻略する際、狙い所の一つ。どんな投手だって立ち上がりは難しい。その立ち上がりで先頭打者が幸先よくヒットでノーアウトランナー1塁という状況で簡単に1アウト与えるのは好ましくないこと。1アウト与えるということは相手投手に「大量失点はもうないな」と落ち着かせてしまうことになる。
 積極的に打ちに行くべき、強硬策に出るべきというのはリスクも有るわけで、大事な初戦の一回表に取るのをためらうのも当然。堅実にバントで繋ごうというのは妥当。しかし、ここでやりたいのは西川の盗塁、及びエンドランなんですね。

■バッテリーの盗塁阻止率が低いのだから積極的に走るべき
 というのは、広島カープというのはキャッチャーに穴がある。これまで交流戦でホークスが与しやすしと楽観できたのは、ほぼ100%に近い確率で盗塁が成功するからです。過去書いたことがあると思いますが、1試合で6盗塁したゲームもあったはずです。キャッチャーの肩が異常に弱い、もしくは投手のセットポジションからのクイックに難があるために余裕で次の塁がもらえる*4
 こういう傾向がある以上、西川サイドの問題・足・腰などに何らかの問題がない限り、積極的に走らせて実際どうなのが試してみたい所。ジョンソンという左腕がセ・リーグで数字を残した優秀な左腕で、682回打者に投げて11本しか本塁打を打たれていない投手(与四球を引いた数字です)。62回打者と対戦しないと本塁打が出ない確率です。無論、調子や相性などが加味されるものでそのまま使えるデータではありませんが、初見・一回目の対戦で簡単にHRが出るとは考えにくい投手であるというのは間違いないわけです。まして左腕に苦手な傾向があるこの年のファイターズならなおさら。
 何故走らなかったと言えば、この年の交流戦で西川は盗塁死しているのですね。そういう背景もあったかも知れません。また左腕だから走りにくいという要素もあったでしょうか*5。この初回でジョンソンは3回牽制を入れた。鈴木尚広いわく、ジョンソンは敢えて最初に牽制で情報を与えることでランナーが走りにくいように誘導したと。そこには色んな駆け引きがあったと考えられますが、いずれにせよ最低でもエンドランを試す、積極的に攻めていくべきなのには違いない。1番バッター、今年は長打を捨てた西川が大事な先頭バッターで塁に出たんですから、そこでチャレンジしないのはありえない。一回のリスクある盗塁・エンドラン失敗でダメになるようなチームではない。そんなチームが日本一になれるわけがない。手堅い策を取れば取るほどベンチは萎縮する・固まるといいますし、そういう役割の一番なんですから思い切って勝負しないのは短期決戦ではありえないと思いましたね。

 初回の西川の当たりはファール性の当たりで無理に取りに行く必要がなかった。それを安部が判断を誤って内野安打にしてしまった。相手がミスした以上、そこにつけ込みたい。仮に走って失敗したとしても、2番の中島が1番の役割をこなせないわけではない。もう一度ゼロからスタートでいい。
 先発大谷が絶対的な存在であるから経験が浅いのにもかかわらず初戦に抜擢したわけですから、思い切って勝負をかけていい。指揮官が余裕・遊びを持つと言ったら変ですが、そういう思い切った策を取る余裕があることを示すべきという点でもやるべきだったと考えます。若い選手が多い以上、硬くなっているのをほぐすために、積極的に攻めてオッケーだぞという意味で、勢い・ムードにのせてしまうという意味でも、思い切ったプレーをさせるべき場面だったのではないでしょうか。

■短期決戦は思い切り・積極性が重要
 無論、ここはあくまで個人的にしてみたい程度の話であり、本論はそこではありません。ファイターズはこのシリーズ通じてすべてにおいて異常に消極的だった。短期決戦は好球必打下剋上のロッテがそれを徹底していて短期決戦になると必ず「失敗なんか気にするな!」と初球からガンガン振り切っていく。打てる球を絞ってそれが来たなら迷わず振り切ることがポイントの一つになる。短期決戦は方針を決めて積極的に行かなければいけないのに、ところどころガチガチで緊張していた。とにかくミスをしないようにという意識が強くて、堅実に・大事にという意識が強くて相手を楽にさせてしまっていた。
 実際にはいろんな条件・事情、判断要素がそこに絡んできますから、それでいろいろ勘案した結果走れなかったということがあるでしょうから、その結果走らなかったという選択でも別にいいのです。問題はそれ以後も「大事な場面で走るなり、バスターなり、ここ一番でこんな策を打ってくるのか!」というリスクある戦術を一つも選択しなかったことですね。まるでそういう手を打たなかった。それでは相手側がこちらの策・作戦に頭を悩ませる必要がない。非常に楽でやりやすいシリーズになってしまう。相手の指揮官が何をするかわからない、常に相手の意図を読んで対策を打たなければならないというのと、何もしてこないのでは戦いやすさがまるで違う。戦いやすいことこの上ない。戦いやすい・難いという点で天と地ほどの違いが生まれてしまう。こういうスタイルを取るからこそファイターズは短期決戦に弱いのだなとつくづく認識したシリーズでした。
 ホークスが盗塁をしなくなって、走られることを警戒しなくてよくなったために、ファイターズバッテリーが攻めやすくなった。打線を料理することに頭を悩ませなくてよくなったのと同じで、ファイターズはこのシリーズで足を封印することで自分達の持ち味を殺してしまったように見えました。
 ファイターズが走ったのは計4回で、大野の重盗警戒での2盗を除けば、3回。西川の1つと岡の2つしかありませんでした。ファイターズの選手の足を考えると非常に消極的だったと言えるでしょう。

■積極的な広島と消極的な日本ハム
 逆にカープはあれだけのピッチャーはそう簡単には撃てないから積極的に足でかき回していこう。アウトになってもしょうがないという割り切り・積極策に打って出た*6。これが功を奏したように見えました。
 リンク先にあるように、Wスチールで勢いに乗った。広島ムードになりましたからね。続く第二試合でも暴走で走るべきではないと思いましたが、それでも積極的な走塁で点を取ることで広島はノッた。イケイケドンドン・ノリノリムードになりましたからね。ハマればデカイは逆も真なりですが、積極的に行った広島と消極性が目立った日ハムは見事に対照的な存在でしたね。

 1回から3回までスコアリングポジションにランナーを置きながら得点ならず。4回の松山・エルドレッドのHRで流れは一気に広島に。7回レアードのHRで1-3。大谷が続いて代打矢野の失敗でチャンスは消え、西川・中島の連打で今村にスイッチ。今村が岡をきっちり打ち取ってファイターズが厳しくなった所。裏、大谷が降板して出てきた石井が打ち込まれ、1-5で勝負が完全に決してしまったという試合でした。
 ここでポイントというか気になったのは、岡の存在。ヒット二本にしっかり選んでつないだこと。矢野のゲッツーのあとに凡退でシリーズ男にはなれませんでしたが、個人的にちょっと面白い存在だなと思いました。そして次にポイントになってくるのですが、HRを打ったレアードにジャクソンがぶつけてしまったこと。これが後に伏線になりますね。また、大谷が投げる方ではダメでもバッティングの方でヒット二本を打ったこと。これで「大谷はやはりすごいんだな…」と広島ベンチは幻惑されてしまったように見えましたね。

■短期決戦はベテラン重視。若手は危険、日本シリーズは「カーブ」が重要
 短期決戦ですから一番いい投手から使っていくというのはわかりますが、本当は経験豊富なベテランを使わなくてはいけない。先発で投げたのは大谷・増井・有原・高梨・加藤そして大谷の故障でまた増井。本来なら経験豊富な増井―といいたい所ですが、増井も本職はリリーフ・セットアッパーで先発経験は殆ど今年のみで信用できるかと言えば未知数。
 今年の交流戦はファイターズホームで広島・マツダスタジアムではやっていない。事前に大谷が不慣れな広島のマウンドで大丈夫か?という思いはありましたが、まさかここまで不安要素が現実化してしまうとは…。雨という不運も加わって大谷はバランスを崩しながら投げて以後投げられなくなるという事態まで引き起こしました。こういう事がありうるから経験豊富なベテラン。色んな引き出しを持っていて、アクシデントに対処しやすいベテランが必要なのですが、そもそも先発ベテラン投手がいないというわけですね。先発経験が結構あるメンドーサなんかいましたけど、今年の出来で大事な初戦に使えるかと言えばまず無理でしょうからね。
 それはおいといても日本シリーズといえば「カーブ」広島カープならぬ広島(での)カーブが勝負を決めることになる。カーブを持っている有原や高梨を先に持ってきたほうがいいのでは?万一負けるにしてもカーブを広島打線に植え付けることが出来るし、慣れ親しんだマウンドで確実に大谷で1勝。というか1-1で札幌に帰ってきてそこで3連勝で決めるというプランのほうがセオリーに沿っているのでは?
 投手の運用においても、おそらくこの二人のカーブが軸になってくる。直近では2013の美馬のような形で、どちらかコンディション・カーブのキレがいいほうを中心に組み立てていく感じになると思っていました。「カーブ」を有効に使うというのが日本シリーズのセオリーであるのに、そのカーブの有効性という認識がない非常に不思議な日本シリーズに見えました(まあ、この投手の運用においてはまたしても吉井コーチの思うがまま・手のひらの上とでも言うような見事な起用法が見られたので、いつもの方針を貫いて十分に勝てるということなのでしょうけどね)。

■日ハムは広島のデータを持っていない・研究していない?
 また、鷹ファンなら知っていると思うのですが、エルドレッドというバッターはインハイに穴がある。達川さんなんかも言っていましたけど、「145km以上のまっすぐならまず打てない。ただし145出ない人はあそこに投げないでください。それ以下の真っ直ぐならインハイでも打ちます」と言っていたように、そこに来ると分かっていても絶対打てないので鶴岡が全部インハイに構えてそこに投げさせるという試合があったくらいです。いくら一発があるとはいえ、エルドレッドに対してはインハイ攻めが基本になるのは間違いない。しかし大野等ファイターズキャッチャー陣にはエルドレッドに対してインハイを主体に攻める姿勢は見られなかった。手が届く・打ちやすい外主体で攻めてしまっていて挙句の果てに好き放題打たれてしまった。広島のデータを持っていないのかな?スコアラーも派遣していないのでは???と非常に不思議に映りましたね。

カープの二連勝の影にシリーズ敗退の兆しあり(引き)
 2戦目も1-5というスコアで広島カープの勝ちでした。2回、小窪のタイムリーで先制。打撃コーチが小窪がいいと推薦があってそれがハマったとのこと。
 デーブの菊池のバスター解説。バスターで狙ってショートには打てない。バスター失敗で野手の真正面に言ってしまえばゲッツーとなり、お前は一体何をやってるんだということになる。確かにバントの場面で来るのは、まっすぐ・スライダーでカーブはないと読みやすかったかもしれないが大したものだと。
 で、丸のバントにより意表を突かれ増井がエラーをしてしまい、ココで勝負が決まった。増井も先発経験が豊富でないから経験不足という点が少し怖い。そして普段投げない球場でのマウンドに大舞台での初先発という不安がハマってしまった。地味に大谷の次というの不利になったんでしょうね。増井も先発で150キロを出せるすごい投手ですが、大谷の速い真っ直ぐの後だとそこまで速く感じない。2013の日本シリーズ楽天が田中ではなく則本を初戦に持ってきたのも、田中を初戦にした後だと則本に対応しやすくなるという要素を考慮した結果なんでしょうね。
 ワンサイドではないにせよ6・7回という段階で広島がゲームを決めてしまった。圧勝・楽勝とは言わないまでもそれに近いゲーム運びに見えました。ホームとは言え簡単にカープが連勝をしたことで、事前にファイターズが勝つという予想を立てていたのですが、拙予想がこれで外れてしまった!と思いました。この連勝でほぼカープの勝ちは決まったようなものでしたからね。

 ところがところがシリーズは思わぬ方向へ進みました。まさかの四連敗で広島カープの逆転負け。何故広島は短期決戦で優位な先手必勝・初戦と二戦を取りながら敗北したのか?それはこの試合での菊池のバスターと丸のバントにありました。このプレーで広島の敗北は既に決まっていたと言っていいでしょうね。それくらいこのプレーは疑問に残るおかしなもの。それについてはまた次回(絶妙な引き)。*7
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*1:あ、忘れてた。2016セパ親善試合でした。

*2:その間、楽天は一度しか日本シリーズに進出していない&オリックスは一度も日本シリーズに進出していないことには触れてはいけない、いいね?

*3:忘れてました大事な要素としてキャッチャー軽視がありましたね。前々から語っていたのでまあ今更ですが、日本ハムは鶴岡という選手を使っていたことからもわかるように捕手のリードを重視しない。④短期決戦における捕手の重要性の欠如という要素もまた大きいでしょう

*4:気になったので数字を見てきました 石原は阻止率.333で巨人小林についでセ2位で、會澤は.250でした。セ・リーグでは決して悪くないのですね。全然刺せない捕手だと思っていましたが、たしかその時の投手・組んでいた投手はバリントンだと思いますが、彼のクイックに難があったのか?ホークスベンチが昔から癖を見抜いていた・情報収集で知っていたのか。あとは、ホームの札幌ならともかくアウェイのマツダスタジアムでは走りにくいorグラウンドコンディションがよくわからないから、走りやすいかどうかがわからないという要素があったのでしょうか?千葉と宮城以外あまり屋外球場でやりませんからね、パ・リーグは。まあ、それでも最悪第七戦までもつれることを考えても、今実際に盗塁することで走りやすいのか・難いのか、確かめておく・知っておく必要性があるのでやっておくべきだったかと思います。相手にファイターズはガンガン走ってきてプレッシャーを掛けてくるなというイメージを植え付ける意味でも行くべきだったと思いますね。

*5:本当に左投手から“盗む”のは難しいのか | プロ野球 | Baseball Gate こんなサイトの左右投手別盗塁成功率というデータがありました。惜しむらくは12-16でその年毎の数値がわからないことですかね。それでも参考になる数字でしょう。こちらにあるように西川は左右で左のほうが成功率が落ちるとは言え、悪いわけではない。対右腕.862で対左腕が.750。8割以上の成功率が欲しいものとは言え、この成功率でチャレンジしないのは消極的でしょうね。

*6:第1戦 走る勇気 大谷攻略|日本シリーズ2016 - スポーツ:朝日新聞デジタル

*7:また疑惑のプレー、田中広輔がレフト西川の好返球でタッチアウトが覆ってセーフという場面がありました。覆ったものの、ヘルメットに先にミットが触れていたのでは?と話題になったシーンですね。ノムさんもコメントしていましたが、ノーアウトの場面で次は3番丸。無理する場面ではない。3塁コーチャーは罰金。何故無理してランナーを回したのか?これも含めて次回語りたいと思います

【雑誌】 月刊秘伝 2015年3月号

秘伝 2015年 03 月号/BABジャパン


韓氏意拳特集です。
 韓氏意拳は個人的にかなり気になっているのですが、読んでいても多分、さっぱりわからないかと思います。拳理拳論というよりも実践を見ないと、一触を感じないとどうにもならないかと思います。禅の話みたいになんのこっちゃいなになる人がほとんどでしょう。大事なことは語ることが出来ない―の世界ですからね。韓競辰師の動きを実際に見たいですよね、やはり。写真だけですが、やはり野生動物というか、熊みたいなバランスをしていて、ああ凄いなぁと思いましたね。

 光岡英稔師の文が載っています。「上がらない腕」という話なのですけど、そう言えば著作を呼んだときも、そういう話をしていたことを思い出しましたね。普通の人間は生きていく上で何らかの疑問や違和感を抱えながら生きていく。家庭や地域の外部環境だったり、自身の容姿や能力だったり、個人的な興味関心事(勉学、スポーツ、ボードゲーム、蒐集、舞踊、音楽、芸術…)。そんな中で、腕を上げるということに違和感を抱き続ける、光岡英稔という人物のセンスはどうなっているんだと驚嘆せざるを得ないですね。普通の武道家、身体研究に携わる人間ならば、大体立つことに注目するわけですよね。どうやって立つか、どうやったらきちんと立てるかというのがテーマになるわけです。氏を凄いと思うのは、そこから一歩進んで「腕が上がらない」*1というテーマを抱えているわけですよね。肘抜き・肩抜きというような、腕の動きを阻害するという単なる技術論じゃないはずなんですよね。それなら脚がどうとか腰がどうとか全てに拘るはずですから。その一点に集約されるのが底知れぬセンスを感じさせますよね。さっき検索したらPVみたいなのがありましたけど、やはり動きの練度というか滑らかさが凄いですよね。

ゆる体操には"裏"の存在があった!高岡英夫の漢語由流体操「肩肋後回法4」
 後は上から下、前は下から上とつぶやきながら行う。キーワードはもっとゆるめるように、肋骨と肋骨の間が開いていくようにする。肩は自然に回して、肩を手伝うよう回すのがポイント。(―って書いてあるのに、ただ肩を回すことに意識が行っていた。肋骨を動かすのがポイントなのに何やってるんでしょうね)肋骨の上部に息が入るようになると、上丹田が刺激され頭が冴えて落ち着いた状態になる。
 肋骨の上部が回らない限り、ずれ回転運動が成立しない限り、本当に肩はきれいに回ることはない。自由脊椎=腰椎の三番から胸椎の十一番が下部、胸椎の十番から六番が中部、そして残りの胸椎の五番から一番までが上部。下部から少しづつ山の麓から頂上を目指す形でステップアップしていく。
 初心者のうちは「稲穂振り」という現象が起こる。肋骨の上部は疲労が最も激しい部分であり、その拘縮を取ることを目的とするならば正しい全身運動(文中では「するのでなければ」となっていますが、これは多分誤字ですね「であれば」の間違いでしょう。あ、違うか上部は動かない・動かせないから、上部を動かす目的でなければ「稲穂振り」現象は可とするだから「なければ」でいいのか)。習熟していく内に、体の曲線・たわみが直線に近づいていく。起点も高くなっていく。軸をキープしたまま、ずらし回転運動を行うことができるようになる。肋骨の上部が動くということは、その支えとなっている中部・下部を必要なだけ格定されなくてはならない。つまり肋骨を動かすトレーニングでありながらも軸を通す訓練でもあると。回転運動を行う以上、体軸を動かすわけで、垂軸と体軸の分離と一致を行う必要があるので。
 腹式呼吸は肺の下部、胸式呼吸は肺の上部を使えるようにするもの。どちらも重要であるので出来るようにならないといけない。

■甲冑戦の真実 Part1 西洋甲冑戦「STEEL! 」激戦必至! 現代に蘇る"騎士バトル"を観る!&Part2 「大阪の陣」再現! ガチ甲冑合戦レポート"合戦"で検証する、武の実戦性
 甲冑戦の再現という面白い取り組みですね。しかし実戦で再現というのは面白くはあっても、陣形でのそれが伴わないといけませんし、なにより弓矢がないとどうなんでしょう?長槍の用意や騎馬の用意とか、まあそこはひとまず省いてということなんでしょうけどね。個人的にはそれを含めてさらに糧食の準備、兵站とかやってほしいですね~(出来るわけない)。

■短期集中連載 沖縄拳法大平道場 西原治沖縄拳法に伝わる"手"の極意 第三回「"重み""ムチミ"の技法」
 縦回転の動き、パッサイの諸手突きの動きを「波返し」とする。波が返っていくように相手に重みを伝える。個人的に重みを伝える、流し込むというテーマがあって、写真の「波返し」の突き・蹴りが自分の考えていたものと同じで興奮しました。そうか、諸手突きのときの遣い方でつくと下半身の力をうまく伝えられるのか、なるほど。前蹴りも腰の小さな縦回転だけで重みを乗せられると。五十四歩の型にある両手受けに応用すると、相手の蹴りを吹っ飛ばせると。
 接触反応、触っただけで相手を崩していく、皮膚感覚の話なのかな?「ムチミ」という話があります。これはちょっとよく理解できないですね。受けてみないとわからなさそう。一定の圧を与えることで相手が下がれずに崩れ落ちると。ムチミの受けによって相手からは遠く、自分からは近くという間合いのコントロールが出来る。

■平上信行が"現代"日本武道を斬る時代考証の裏表「秘剣の数々からみる超絶的秘傳法世界」
 前半は膨大な流派が存在し、それが失伝・消滅していったという話。後半は前回の続きで、秘剣の話です。剛刀を自由自在に操る「不有劍」、空中殺法「天狗劍」、背後からの的に対する「後眼劍」、多人数に対する「宿露劍」などが紹介されています。神代秘伝剣法「国譲逆鉾劍」とか、道教由来の「三星劍」とか厨二心をくすぐるものが多いですね。
 「魔傳血脈鬼盃劍」(盃は旧字)「晦日新月目光劍」相手の秘傳・極意を奪う魔剣。対鉄砲の秘剣「飛鳥劍」「玉龍劍」。そして居合が生まれると当然それに応じて居合の秘剣が誕生したと。

■大宮司朗霊術講座「心理学的な原理に基づく霊術の技」
 観念運動、心理的効果・思い込みが効果をもたらすという話。自己暗示が自分の力になる方法として、正座凝念法・宇宙大霊同化法・精気吐納法などが紹介されていますね。

■安田洋介太極遊戯「兵器(武器)修練が養う功夫
 強い筋力の重要性、日本の太極拳でその重要性が認識されないのは武器を使ってないからでは?とのこと。普通は800~1000グラム、重いものだと1500グラムにもなる。中国でも演舞用の400~500グラムの軽いものが主流になりつつある。勁を鍛えるのには重い武器を扱うのが良い。昔は30キロ以上ある大刀を使う人もいたと。

*1:だと間違いになるのかな?「上がらない腕」と「腕が上がらない」を使い分けている可能性もありますからね

中畑清は筒香嘉智を育てていない、むしろ干している。育てたのは大村巌コーチ

タイトル通り、中畑清DeNA監督は筒香嘉智を育てていない。育てたのは大村巌コーチ(現ロッテコーチ)という話をしたいと思います。

 この話を絶対にしておかなくてはならないと思うのは、何故か、中畑清が筒香嘉智を育てたという意見を唱える人があまりにも多いからです。また、中畑ファンなのか何なのかよくわかりませんが、あまりにも中畑を称えて、ラミレスを落とすような手合がいて、うんざりしたからです。

 またいつものことなのですが、「中畑の遺産」という地雷ワードを平気で主張していた手合もいました。あまりにバカっぽいので、試しに「どうして中畑が筒香を育てたって言うことになるの?中畑は関係ないでしょ」とツッコミを入れたら、急にキレだして「中畑が育てたぞ、そういう記事もある」とのこと。そして「具体的には、どういう貢献があったの?」と尋ねると、「てめえで調べろ」とのこと。

 まあ、もう相手にするのも馬鹿らしいので放っといたのですが、もしかしたら中畑がなんらかの指導によって、筒香覚醒の一助を担ったのかもしれないと検索をかけてみました。するとこんな記事が出てきました(他には見当たりませんでした)。

■キャンプ追放で選手を育てたという謎論理
 中畑監督 秋季キャンプに筒香連れていかない「荒療治」― スポニチ―もうね…。バカでしょというしかない。これを読んで、中畑が筒香を育てたなんて主張する頭の悪い人間がかくも多いと思うとうんざりします。どうして、キレて選手をキャンプから追放したら、監督がその選手を育てたなんてことになるんでしょうか?そんなのはこの記事を書いている記者の主観に過ぎないではないですか。具体的根拠のかけらもない。そんなことを言うのなら、今年(去年かな?)キャンプで体ができていないという理由で、イーグルスの梨田監督はオコエをキャンプから追放しましたが、オコエが一流プレーヤーになった時、梨田がオコエを育てたという論理が成立してしまうではないですか。

 もう、バカでしょ(二回目)。リテラシーのかけらもないのか。こんなロジックが大手を振ってまかり通る現状を見ると本当にうんざりします。

■筒香嘉智育成に貢献があったのは名伯楽大村巌
 安心と信頼の日本ハムファイターズブランド産の大村巌コーチが筒香の指導を手がけましたが、始まりは2年前。DeNA筒香嘉智はいかにして覚醒したのか?―こちらの記事を読んでも分かる通り、どうみても彼が筒香を指導したからこそ、飛躍を遂げたとするのが自然でしょう。
 要約すると、二年連続でファームでHR王と、下では打っているが一軍では駄目という典型的な若手の伸び悩み枠。そこで大村巌コーチが、筒香本人はどういう打者になりたいか、どういうバッティングをしたいのか整理して、方針を決めてあげた。これまでは他の人のアドバイスを聞いて、色々フォームを変えていた。それが却ってマイナスになったので、何でもかんでも手を出して失敗するより、一つのことを貫く方針に決めた。筒香本人はHRよりも犠牲フライなど、勝利に貢献出来るような確実性・打点を上げること、結果逆方向に打つことを重視していた。確率の低いHRよりも確実性を求める筒香は大村コーチがアドバイスする、確実に打つ技術をみるみる吸収していった。これを読めば大村コーチこそ、筒香嘉智を育てたと言って問題ないでしょう。

 そして大村コーチが主張するように、「私ではなく何より本人の努力が大きかった、筒香嘉智の自助努力が何よりも素晴らしかった」とみなすべきでしょう(ビジョントレーニングなど自分からプレーの質を上げる取り組みをしているようですしね)。*1

■根拠なき中畑の選手育成論は詭弁
 ここで言いたいのは、中畑清の貢献度合いが0だとか、むしろ邪魔してマイナスだった、-100だったとかということではありません。そりゃ、いくつか中畑氏がいい影響を与えたことがあっても不思議ではありませんからね。しかし、彼が育てたと彼の影響力が大きかったといえるほどの材料はない。大村コーチ程の成長に貢献したと言える具体的なものがない。個人的に知る限りでは、筒香が番組の対談で「中畑さんからは素振りの大切さを教わった」と言っているくらいで、中畑の貢献度が大きかったと裏付ける要素はない。日頃から今ある自分は中畑さんの指導のおかげということを言っているわけでもない。そういう根拠のない状態で、中畑が育てたと主張するのは限りなく嘘に近い。そういう言説を認めるべきではない。

■監督の起用が時に育成したと言えることもある。が、中畑前監督は筒香を辛抱強く起用してはいない
 また、打てない時期にも彼を辛抱強く、我慢して使い続けたのは中畑であり、一軍で貴重な実戦経験を与えた起用面での貢献がある。だからこそ中畑が筒香を育てたといえるという論理も成り立つかと思います。*2

 この「中畑監督が辛抱強く筒香を起用した結果」論を見て、確かに筒香を使うことは使ってはいたけども、弱小チームを再建する時、将来の大砲候補を使うのはむしろ当然のことで*3、フロントからある程度選手起用の方針は示されている以上、中畑の手柄といえることだろうか?と疑問に思っていました。

 そこで実際にどれくらい起用していたかチェックしてみると、むしろ全然起用していないというデータが出てきました。

筒香嘉智 打撃成績
 2012 108試合 446打席 386打数 84安打 10本塁打 51四球 打率.218 長打率.352 出塁率.309
 2013 23試合 56打席 51打数 11安打 1本塁打 3四球 打率.216 長打率.294 出塁率.286
 2014 114試合 461打席 410打数 123安打 22本塁打 47四球 打率.300 長打率.529 出塁率.373


―この数字を見た時に、監督一年目は筒香を辛抱強く使い続けたと言っていいかと思います。しかし二年目は全く使っていない。むしろ筒香を早めに見切って干していると言えるでしょう。

 筒香嘉智が飛躍した2014年のシーズンというのは、前述通り秋季キャンプから追放され、大村コーチと二人三脚でイチからフォームを作り始めてからの話です。そこから手応えを掴んで成長路線に乗った筒香の状況を考えると、12年に辛抱強く起用し続けたから筒香が成長したという説はあまり関係ないということが出来るでしょう(無論、試合に出続けたからこそ、相手に研究・対策されて壁にあたり試行錯誤するきっかけになったと言えるのでしょうが)。

 むしろ、12年・13年と起用に問題がある。将来性のある大砲とは言え、使い続ければいいというものではない。インコースの速い球が打てないとか、課題をハッキリさせたら、一度下に落としてその課題を克服する練習をさせて、課題をある程度克服して対応できるようになったり、状態が上がったりしてから上でもう一度使うなど、チームとしての取り組みを行わなくてはならない。選手を育てるなら一軍起用→課題発見→二軍で練習&克服→また一軍へ…―と言ったプロセスを踏まなくてはならない。

 数字が出ていない・結果が伴っていないのにもかかわらず、この2012年は明らかに筒香を起用しすぎです。結果が伴っていればともかく、結果の伴っていない高卒3年目・4年目の選手を適切なラインを超えて、起用し続ける意味がわかりません。むしろ、まだまだ体ができていない段階なのだから、怪我予防の観点から言っても、下に落としてトレーニングに当てるべきでしょう。また他にめぼしい選手がいないにせよ、他にも若手を起用しなければ、チームに実力競争原理が上手く働かない。 
 (これは中畑監督の起用の問題というより、適切な出場試合数・打席数を設定して、適切な指示を監督に与えなかったフロントのミスと言えるでしょう。もちろん新規参入したばかりで、自分たちで明確なビジョンの下、この選手を何年かけて使う。5年かけてこちらが見越した成長を遂げなかったら見切る―などといった戦略のもと採った選手がいなかったという状況なので、その点も考慮する必要があると思いますので、これを以ってフロントを叩くことはしたくないのですが。)

 そして2013年は逆に使わなさすぎです。怪我をした、不振だということがあっても、この出場数の少なさは異常です。わずか23試合で60打席にも到達していないというのは、将来の大砲候補として路線から外したと言われても仕方がない数字。他に大物スター候補が何人か入ってきたから、育成の優先順位が落ちたとしか思えない数字です。

 しかし、実際はトニ・ブランコ中村紀洋といった実績ある選手が結果を出していたから彼らを優先したという有様。これは目先の勝利を選んだ采配であり、どう見ても育成を行っていたとはいえない数字でしょう。この点を考えても筒香に目をかけ続けて辛抱強く起用していたとするのは無理があります(前述通り、2012年は自分たちが採った選手がいなかったという状況でしたが、僅か1年とはいえ、自分たち自身でドラフトで選手を採り、ファームにいる若手の状況も把握できた。それで、期待大砲候補の筒香にチャンスをここまで与えなかったのは、フロント・監督の手腕を疑われる起用方針でしょう)。

 ―このように選手起用の面から、「使い続けて」筒香嘉智を育てたとするのもまた無理があるといえます。

■監督の仕事は育成ではない、采配によって試合で勝利に導くこと&ペナントレースを制すること
 そしてそもそもなのですが、選手を育てるのは監督の仕事ではない。監督の仕事は起用や采配でチームを勝たせることであり、選手を育てることではありません。育てるのはコーチやトレーナーと言った役割の人・スタッフであって、監督に育成手腕を期待するなど木に縁りて魚を求むようなものです。

 選手育成には、優秀なコーチが必要不可欠ですが、優秀なコーチがいれば選手が育つというものでもありません。相性の問題、指導法がハマるかどうかという問題もありますし、何より本人の理解度・練習態度・才能・運と言った要素に左右されるものです。ですからこそ、優秀で実績あるコーチほど、私が育てたのではなく、本人の努力・取り組み方が素晴らしかったというようなことを言うのです。そして私は彼が成長をする手助け、サポートをしたのだよと手柄を誇ったりしないものなのです。

 大村巌コーチがリンクの記事で語っていた内容・態度がまさにそれであり、名伯楽と言うにふさわしい態度・姿勢だと思います。聞くところによるとファイターズ時代糸井の指導も手がけて、彼も大村巌コーチの手腕を称えていたといいます。記事を読んでもわかるように、大村巌コーチとの出会いが最大の転機となったのは言うまでもないでしょう。

 以前から、監督が選手を育てるというような謎論理を目にして不思議に思っていたのですが、どうも昔のタイプの全権監督の延長からくる発想のようです。監督が全権を握っているからこそ、指導も監督に一任され、選手育成まで監督の手柄になるという発想をする人がいるようです。もしくは高校野球などアマチュア野球の発想の延長で監督が選手を育てるものだと思いこんでいるかもしれません。

 いずれにせよ、現代的な野球では、現代的な組織では明確に機能で役割分担がなされます選手を育てるのはコーチであって、それをやろうとする監督というのは間違いなく失敗すると考えていいでしょう。工藤公康監督などは、投手育成手腕に自信があって自分で投手育成をやろうとしていますが、一定の結果を出してはいるものの、間違いなく古いタイプの監督であり、組織の役割というものを理解していないということが言えます(拙ブログでその問題をこれまでさんざん指摘してきました)。ですからこそ、現在のように自分の腹心・イエスマンで組閣を固めるという自体になっているわけですね。組織として問題があることは言うまでもありません。

■中畑監督は報道・メディア対策に優れた監督だった
 中畑清監督は、山崎康晃のストッパー抜擢だったり、梶谷隆幸の外野コンバートだったり、ちゃんと他にチームに貢献した内容が一応ある監督です。評価するならばそちらで評価をすればいいのに、なぜ明らかな偽りを提示して中畑監督の功績のようにするのか理解できません。*4

 以前指摘したように、野球界というのは記者・報道界が腐っている*5。故に、巨人時代・現役時代からスター選手だった中畑氏は記者たちとコネがある。そのコネを最大限利用して、中畑氏は良い記事を書いてもらっている。そういうことなのでしょう。野球報道界の腐敗はおいといて、監督というのはこのように、記者と良い関係を築いて良い記事を書いてもらうというのも手腕の一つ。時にマスコミ対策というものが出来るか出来ないかで組織が崩壊してしまうこともあるというのは以前指摘したとおりです*6

 そういう意味で、中畑氏は優秀な監督だったといえるでしょう。新規参入球団DeNAにとって観客動員を上げるのは至上命題でしたから、強い発信力を持っていた中畑監督というのはベストかどうかはさておいて、好ましい人選であったということが出来るでしょうからね。

■思うどおりに進まないと中心選手と衝突する。選手の状態に合わせたコミュニケーションではなく、自分本位のコミュニケーション
 ただ、強いチーム・勝てるチームを作るという点で好ましい選択であったかは疑問があります。彼は古くは巨人時代に、主力打者と衝突する我の強いタイプのコーチでした。巨人時代は駒田、そしてDeNAになって中村・多村とやはり主力選手というか実績のある打者と衝突する傾向があるタイプです。そして筒香のキャンプ追放もこの延長であると考えるのが自然でしょう。

 打っているときはともかく、打てないとなると非常に強くダメ出しをする。負けが込んでいたり、チームが上手く回ってない時に八つ当たりに近い形で選手に当たる。そういう傾向があるように思えます。「筒香は、今年一本しかHRを打っていないのに、満足している。だから怒鳴りつけた」などと語っていましたが、このような方針はかなり疑問です。中畑監督一年目で出場機会を与えられながら、二年目は殆ど与えられなかった高卒4年目の選手がどういう心境にあるか?一年目でそこそこいい打率・出塁率をマークして、HR20本くらい打ったとかならともかく、結果を残せていない。そんな選手が満足していることなどあり得るでしょうか?

 筒香の心情を察すれば、一年目と違いまるで出場機会が与えられず、しかも一軍の球をろくに打てない=課題が克服できていない状況。悩んでも悩んでも答えが見つからずどうしていいかわからないという段階。それを整理して、やるべきことを絞ってあげたのが大村コーチなわけで、それで結果を残したわけですが、中畑氏の言うように「自覚が足りない」という要素は見られませんし、特にその自覚云々は彼の成長には関係がないことでしょう。大村コーチが悩んで、その潜在能力の高さにもかかわらず、才能に蓋をしてしまっている状態と分析したくらいですし。

 もし中畑氏が「何をどうしたら良いのかわからない」筒香に、外部の雑音を遮断してやるために&名伯楽大村の手腕を高く評価して、二人で一からやり直すようにと大村コーチに全権委任した、失敗した場合はすべて渡しが責任を取るという態度だったのならば、中畑氏の功績と言って良いでしょう。しかし彼は打てない事実とナメた態度(を取っているとあくまで中畑氏の分析で)に怒って、キャンプから追放したのですから、全く関係ありませんね。

 そして、キャンプ地ではなく、二人で一からフォームを作り直して、光明が見えてオープン戦で結果が出ると見るや、「筒香と心中する発言」。こういう過程を見ると駄目なら見放して、結果が出た途端調子良く持ち上げるというタイプということが出来ると思います。野村流に言うと、一流は叱る・二流は褒める・三流は無視する―の逆で、一流は褒める・三流は叱るという感じでしょうか。こういう手のひらを返して急に態度を変える、両極端な態度をとるタイプを筒香がどう思うか?心情察するに余りあると思います。

 そしてラミレス監督は意味のない練習はやらない。自分たちとよくコミュニケーションを取ってくれる―という筒香の発言を聞いて分かる通り、あまりうまくコミュニケーションが取れていなかったと思えます。あの世代というのは上下関係が厳しく。上意下達のやり取りが当たり前ですから、選手とコミュニケーションで衝突しやすいのでしょうね。    というか、野村監督がメディアを通じて、選手にダメ出しをして発奮を促すというスタイルを好んでいましたが、開きはありますが中畑前監督も人を褒めるということが出来ない世代なんでしょう。ですから、怒って発奮を促すというやり方しか知らないと思えます。それがうまくいくかどうか…。特に現代ではかなり厳しい選手操縦法だと個人的に思います。

 以上、中畑前監督は筒香嘉智を育てていない。育てたのは大村コーチ―でした。正確な事実認識が広まることを願って今回は終わります。<2017/12 了>

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*1:大村巌コーチ自身がどこかで、中田や糸井、そして筒香を育てたことについて尋ねられて、それを否定して彼らの才能・努力が素晴らしかったんですよと言ったことをコメントしていたと記憶しているのですが、ちょっと検索かけても見つかりませんでした。ソース無しで書くのは気がひけるのですが、一度書いてしまったので、そのままにします。週刊ベースボールか、Numberとかで呼んだのかもしれません。ご存じの方いたら教えてください

*2:なぜか、清宮関係の記事で、清宮が筒香選手がどうやって育ったかということを熱心に球団に尋ねて、中畑監督が辛抱強く使い続けた実績が光るみたいなことを書いていた記事が目につきました。一社とかならまだしもいろんな媒体で見かけたのでかなり???になりました。後述するように中畑の発信能力の強さ故のそういう記者評なのですが…

*3:身売り直前の2011年に、後半昇格してHR8本打ちました。これはすごい良い大砲候補がいるなぁと当時思いました

*4:また松井秀喜を筒香に引き合わせたなど中畑氏の功績とすることも可能でしょう「3割40本100打点」も現実味 筒香覚醒の裏にあった松井秀喜の言葉 Full-count|

*5:野球界以外全てそうだと言われればそうなのでしょうけど。どこかの業界で一つくらい健全な報道空間が存在していることを期待してこう書いておきましょう

*6:【2016「工藤批判」批判】 王会長・工藤監督は秋山時代の「森脇追放」のように、反工藤派(藤井・大道・鳥越?)を粛清すべし の「工藤監督はメディア対策というものを一から考えよ」というところに昔書きました

【雑誌】 月刊秘伝 2015年2月号


月刊 秘伝 2015年 02月号 [雑誌]/BABジャパン


 塩田剛三特集ですね。大東流の堀川幸道が養神館に訪れたことがあったんですね。へぇ、知りませんでした。スパッと切れる塩田氏の技が後年力を抜いたものになったのは、堀川氏の影響では?なんて話もあるんですか、へぇ(霊術の解説をしている大宮さんはそれを否定していますが)。晩年は悟りの境地、呼吸力を出すと喜びを覚え、無我となり自他一体となって自分が動くように相手を動かせるようになったとか。
 技をかけている塩田氏の写真を見るとつま先立ちになっているのが多いとか。合気がかかるとつま先立ちになるという話は聞きますがかけるほうがつま先立ちになるというのは余り聞かないですよね。自重を伝える、あるいは重心移動の関係なのかな?
 相手の突き、腕が伸び切った一瞬に合わせると吹っ飛ぶという技を多用したと。この技見たことあったかな?ちょっと記憶に無いな。

■江東友の会、斎藤豊氏の話
 親和体道の鍛錬法、お辞儀をした状態から伸びをする、踵から腰・背筋を伸ばすというものがある。氏曰く、養神館の構えはこれに一歩踏み出したものだと。
 二ヶ条をかけるのに前膝を開くのがポイント。つま先が外を向いているソの字立ちで、自然と膝が開く真正面に向けると膝に力が入って効かなくなる。背筋を伸ばすだけで相手によく掛かる。手首を取られて上げる臂力の養成法。後ろ足の膝を伸ばし踵を強く踏むことで受けを崩す。
 上腕骨頭と肩甲骨棘が一直線に揃った時肩がゼロポジションとなる。ゼロポジションになると体幹部の力をダイレクトに伝えられると。
 ハの字立ちについても書いてあって、ギリギリのバランスで立つことを求めているのでは?とのこと。ソの字立ちなんかは普通の軸を立てるオーソドックスの立ち方と違い、体傾斜度がある異質な構えですよね。こうすることで前につんのめる=重心移動しやすい、そういう技をかけるための構えということなのでは?と個人的に思いましたが、どうなのでしょうか。
 足指の操作の話も面白いですね。床を空振りするように親指を握り込むことで、拇指球に重心がありながらも踵から足の外側に力が入る。こうすると相手に多少送れて反応しても後から軽く触れても崩せると。

■システマ創始者ミカエル・リャブコ来日セミナーレポート「シャシュカの用法」
 シャシュカ・ロシア剣の用法、剣を持っていると自然とその重みが消える所がある。そこを探していくワーク。見つかったら左右20分づつ持ち続ける。そうすると体の歪みが矯正されるという。甲野善紀氏も飛び入り参加で日本刀との攻防もあったとか。
 引いて斬るものだから、当然相手に引くことをさせない技術がある。刃に当てられた瞬間抜くことで角度をなくして切れないようにする。剣を武器でなく防御するものと考える。相手の剣を撃ち落として跳ねて思わぬことを招かないように(自分に向かってきたり、第三者に飛んでいかないように)、相手の身体に剣撃が伝わるようにする。首・胸・腰など狙った箇所に威力が向かうように撃つと。不用意に相手の剣を叩き落とすとつながりが切れて、その隙を突かれかねない。持っている武器を敢えて捨てる、武器に意識を持っていかせてその隙に打突という展開も想定済みなんですね。


■日野晃師範が解く達人技の秘密!求道者・成田新十郎“意識の領域"
 どういうことをおっしゃっているかよくわかりませんが、受けをとった日野さんが手首を握ってバランスを仕掛けようとした瞬間手が消えたと書いていますね。気がついたらその場に落ちていた意識・気配が消えてなくなったとのこと。どんな動きをする方なのか一度見てみたいですね。

如是我聞 円和の合氣道/BABジャパン


“円”の合気 修得のキーワード! 稽古日誌に記された短く深いことば


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*1

■心水会・中野由哲師範剣術~空手~中国武術を貫く共通根理
 心形刀流の永野順一氏に教わったことを3つのポイントにしている。①胸をゆるめる②股関節に体重を乗せる③肘を抜く。胸をゆるめるという意識を持つと自然と含胸抜背の姿勢になる。正座をして立ち上がろうとする時、自然と前傾して立ち上がろうとする、その時体重が股関節に乗る。きちんと出来ると全身が統一されて有効な技となる。
 肘を下に向ける意識を持つと、「脇を締める」ということができるようになる。肘を下に向けることで腕の螺旋が生まれ、その解放が威力を作る。肘を抜くのには、肘の力感を溶かす。そもそも人は肘に力を入れないから、意識を溶かしてやればいいと。そういえば甲野先生も昔肩の溶かし込みとか言ってた気がします。永野氏が共同研究者ですし、その延長の発想でしょうかね。
 肘の抜きが出来ているかのチェックで肘を下ろすことで受けを崩すというのがありますが、この動きを一人でトレースしていて、肋骨を動かすのに肘からおろしていくというのも有効なのかなとふと思いました。

ゆる体操には“裏"の存在があった!高岡英夫の漢語由流体操「肩肋後回法3」
 岩合光昭氏が引退作品で述べた言葉、野生動物はなんて柔らかいんだろう。写っていた白くまの肋骨がぐにゃぐにゃであっただけでなく、野生動物は皆柔らかい。そして人間の肋骨もそこまで到達することが可能である。
 やり方は、胸の下部・中部・上部と順番に盛り上がらせていく。行ききったら、次は背中の上部・中部・下部と移動する。肩と肋骨の関係は180度反対の位置に来るようにする。(文字で説明しても伝わらないと思うのでモデルなどの図を直に見ることをおすすめします)。実際には一本一本ではなく数本まとめて動いていく。ちょうどスタジアムの観客のウェーブのような感じ。または窓にあるブラインドを指で弾いていく時、数枚まとまって弾き続けている時、最初の方がもとに戻っていくような感じ。
 前回、球としてモデル化して説明したわけだが、実はこれは不完全なモデル。というのも肋骨は球状ではないし、そういう動きをするわけでもないから。実際の肋骨は1~12番、12枚のプレートで成り立っていても、上・中・下で構造が大きく異る。上部は水平でも、中・下部は背中から脇に向かって下がり気味になって、軟骨は胸骨に向かって上がっていく。下部になればなるほど軟骨が大きくなり、胸骨に向かって上がっていく角度も大きくなる。最下部の11・12番は胸骨にくっついてすらなく浮いている状態。これを「自由肋骨」とする。フロートしているこの二本は可動性が高い。肩との相対運動しやすい。が、胸の下部・腹の全面には肋骨が殆ど無い、自由肋骨も中部・上部に比べて小さいもので、動きはするものの回転運動にならない。下部が動いても効果が小さい。ブラインドで言うと歯抜けになっていて弾けない状態。下部は回転ではなく開放する動きになって、開閉運動になってしまう。
 実際に効果があるのは1~6番まで。ここの部位が動くと肋骨の回転運動になる。昔の指導では、下部を動かすな&上部を動かせ!と硬直的な指導をしていたが、いきなり上部を動かすのは難しく、余りリターンがない指導法だと気がついた。あくまで開閉運動と理解しながらも、疑似回転運動として、下部から動かして少しづつ動かせる範囲を丈夫にスライドしていくほうが効果がある。
 
■忍術・武術・修験道・俳句──青い目の忍者「月影」の世界ハロルド・スチュワート「妙風庵の忍武術」
 武神館の流れをくむ忍者・忍術ですね。アメリカからやってきた方の話です。キレを出す技は危険。強さを隠さなければいけない。キレにこだわるな、キレが出ない強さの見えない技を磨けと。他の武道の高段者で時に上達してもイライラしている人を見ることがある。それは日常に使える技ではないから、日常と直結されていない強さだから。なるほど。小指薬指を使うと、手首が固まらずに自由になるから普段から底を使って荷物を持ちなさいとのこと。そうすることで日常から整えられていく。「堀炬燵 母立つたびに 炭香る」とか俳句良いですね、感性が磨かれているのがよくわかりますね。

■大宮司朗霊術講座「梃子の原理を用いた技」
 昔流行ったスプーン曲げにはトリックがあったという話。霊術でもテコの原理を用いたトリックがある。テコの原理の話。

■元・極真空手チャンピオンが辿り着いた“武の理"志田清之師範「衰えない“武の力"とは! ?」
 体重を威力へと転換するためにはどうしたら良いか?骨盤の垂直落下によって生まれる力を歩みで前方の力に変える。つま先・膝がブレーキとなって力が伝わらない、そこを柔らかく使うこと。関節を順番に使うドミノ倒し、各骨の力の線を養成する。


■藤本靖―意識のホームポジション「知覚の反転」
 直接視と間接視、ものを見る時に直接焦点をあわせるのを直接視。焦点を手前や奥に置くことで間接視になる。間接視だと見る人に圧迫感を与えない。(視線が痛いという言葉がありますが、見られる事自体が圧力になるということですね。ですから焦点をずらしてみることでそれが外せると)。
 間接視にすると、直接視の一部にスポットを当てる・注目する感じではなく、全体の輪郭・対象が浮かび上がって見える(これも言葉ではわかりにくいと思うので実際に載っている図をみたほうがいいでしょう)。これを「知覚の反転」という。遠位点だと身体の外側に、近位点だと身体の内側に意識を当てやすくなる。目が見やすいものを見るの延長で、水平に目を動かして呼吸、筋肉の緊張が一番リラックスできる所を探すのが良い。
 内田樹氏が14/01月号で言っていたように、肉体という物体に触っているのではなく、存在そのものに触るようにする。肉体に触るという感じだとどうしても部分的になるので、存在=スペース全体に触るようにする。そのイメージが難しいのなら相手の奥にスペースが有ると思ってやると良い。
 瞑想で肉体・身体の感覚を掘り下げるアプローチ以外に、あえて自分の肉体にアプローチせずに掘り下げる方法がある。全体にアプローチしやすくなるかわりに自分の存在と乖離しやすくなるデメリットが有る。
 耳だと、人の話が頭に入りづらい場合、雑音・空調などに耳を傾けて、間接的に入ってくるようにする。集中して聞こうとすると緊張して却って話が入ってこない場合はこうすると良い。
 楽に相手を見る、緊張しないように向かい合うために、視線を合わせながら間接視が出来るようにする。遠位点なら緊張しないとはいえ、ずっと壁を見て話されたら相手は嫌だからそうするわけにもいかない。目を合わせながらも呼吸・緊張を観察し続ける。全体と対象どちらにも焦点があっている感じになる。対人恐怖症だったり、あがり症だったり、そういうものを克服するトレーニングにいいのではないでしょうか?

中島章夫「技アリの動作術」
 趾尖球(指と裏の付け根のところですね)に体重を乗せる訓練、足裏全体で立つために「どこでもない処で立つ」ために趾尖球の感覚を鍛える。趾尖球フラット接地と3Kルートのテストの話。

*1:誰もここから買う人なんていないと思いますけど一応、楽天リンクも貼っておきます→円和の合気道 “円”の合気修得のキーワード!円和の合氣道(DVD)

高橋監督に采配を求める記事への違和感 問題は監督ではなくフロントにあり


高橋由伸監督の話をしたいと思います。これを書こうと思ったのは2016年で、その翌年球団史上初13連敗という出来事があったので今更ながらそれについてもまとめて記しておきたいと思います。

 高橋監督について書こうと思ったのは、スポナビブログを始めた時、交流戦セ・リーグ各球団ウォッチャーがどのような危機意識を持っているのか気になって、いろいろな意見をチェックしていた時、ジャイアンツのカテゴリで書かれていた記事がひっかかったからです。

 やれ、~番に誰を入れろだ、~より~を起用しろだ。監督がもっと積極的に動いて采配を揮って欲しいという・監督の采配を批判する意見が結構ありました。それについて非常に強い違和感を覚えましたので、それについて話をしてみたいと思います。

■巨人球団史上初13連敗の本質は腐朽組織 
 巨人が13連敗した事自体についてはいろんな方がいろんなことを指摘しています。貧打、投壊の要因は黄金期の反動。FA選手補強頼りで育成の放棄。長期ビジョンの欠如で原時代のツケが露呈した。人気にあぐらをかいて巨人へ来たいという一流選手がメジャーを目指すようになったなど、時代の変化についていけなかった。逆指名制度の廃止で、ドラフト一位で有望な即戦力選手を確実に取れなくなった、etc…。

 概ねそれで間違いないでしょう。しかしそんなことは所詮枝葉末節の問題。本質は別にあります。本質は巨人という球団の組織そのものが腐って機能不全に陥ったこと。腐朽組織化です。まともな論理で組織運営が行われていないから、問題が表面化したに過ぎません。

 今に始まったことではなく、元々巨人という球団は組織が腐っていたのですが、それを糊塗するだけの人気と人材とお金があったために、その問題の本質が露呈することがなかったんですね。巨人という組織には問題がある、恥部がある。こんなこといちいち今更指摘するまでもなくNPBに興味がある人であれば誰でも知っていると思いますが、一応改めて指摘しておきます。

■監督は生え抜きでなければならない純粋生え抜き主義
 巨人という組織は監督人事に純粋生え抜き主義を採用してきました。星野・落合といったトップクラスの監督を外部招聘する動きもあったので、また最近ではイチロー監督という声もあるくらいで、その純粋生え抜き主義も変化しつつあるのは確かです。

 その代償というのも変ですが、コーチ人事については他球団の硬直化した人事に比べて柔軟で外様リクルート主義とでもいうべき人事方針を採用している柔軟さもあります。常に他球団出身者をコーチとして招聘し、新しい風・思想を導入しようという優れた点がある所を触れておかないと片手落ちになるので、これについても触れておきます。

 多くの球団がコーチを元選手・在籍経歴のある選手で固めるのに対して、実力重視のシステムを採用しているので優れた方針というべきでしょう。が、しかしそれも監督=チームの顔を過去の名選手で何が何でも固めたいからという歪な思想の裏返しと考えるべきでしょう。生涯一巨人選手のキャリアで、一流の数字を残した選手となると、監督候補者は自ずと制限されてしまう。その監督候補が優秀な監督になる確率はどれくらいか?限りなく低いのは言うまでもないでしょう。原監督のような優秀とされる監督が輩出されることは滅多になく、可能性が大きいとは考えにくいわけですから。

 今回の高橋監督、また過去の長嶋監督などを見ると、この純粋生え抜き人事がいかにまずいか言うまでもないでしょう。その無能(あるいは監督としての素養がない)監督を少しでもサポートしたいという裏返しがこの巨人のコーチ人事の実力主義*1ということなのでしょう。

■高橋監督就任は歪んだ人事制度によるもの
 当たり前のことですが、歪んだ人事制度からは歪んだ人事が生まれます。原監督から高橋監督となったのも、この腐朽制度から生まれたものでした。高橋由伸は選手兼任コーチとして将来の監督候補のルートに入ったものの、まだ現役を続行するものと見られていました。それがいきなりの現役引退と監督就任。当時、高橋は左の代打として立派に機能していたにもかかわらず、それを組織の都合によって引退させるなどファンであればまず納得できない異常な処置でしょう。単なる一選手ではなく、チームの功労者・スター選手を本人が望むように全うさせてやれない組織など一体誰が支持するのでしょうか?

 これについては、「引退は残念だけれども、本人が選手よりも監督の座を望んだ。残り短い選手としての地位に未練はなく、指導者・首脳陣としての監督ポストに魅力を感じた。監督>選手という考えを持つ人は珍しくない。本人がそちらの選択に、代償があっても魅力を感じて決めたことなのだから、本人の意志を無視したわけではない。特にかまわないのでは?」という意見を持つ人もいるでしょう。

 この意見が間違っているとは思いませんが、巨人という球団は選手という地位、意見を無視する傾向が非常に強い球団。選手を使い捨てとする感覚を持っている球団です。外様の前田が大量点差がついて自分が投げる必要のない場面でも投げさせられた、野口が手術をして再起をかけたいという声を無視して手術を許さなかったーという事例を見るまでもなく、球団の意向が絶対であり、選手の立場や状況に配慮することが少ない球団です*2。生え抜き第一、外人・外様第二など色んな序列があるのでしょうけど、選手に配慮する度合いは他球団と比べて著しく小さいといえます。

 高橋由伸を監督にしたいのならば、もう一年コーチ経験を積ませつつ、選手として花道・有終の美を飾る。来年もいい数字を残したらもう一年延長して、そしてつなぎの監督からバトンタッチというのが普通のルートでしょう。ところが、野球賭博事件などもあって、負のイメージを払拭するために新しいスター監督に看板をすげ替える必要があった。そのために否が応でも高橋に監督をやってもらわなくてはならなくなった。

 何の準備もないまま監督になった高橋が、というかそもそも原監督のように、確固たる戦術・戦略プランを持っていないタイプの彼を、球団の不祥事払拭のためという理由で監督の地位につけたらどうなるか?言うまでもないでしょう。

 今のNPBを見渡して、この選手は監督向きだ。監督になったら面白そうだというタイプの選手・OBは滅多にいない。個人的にこの人の監督やるところが見てみたいと思っていた小宮山氏でさえ、ホークスのV逸はファイターズがすごすぎただけという珍な意見を述べていて不安になっているところです。監督になりたい!そのために采配とは何か?ペナントレースとは何か?短期決戦とはどう戦うべきか?などと現役時代から頭を使ったプレー、考え方、勉強をしている選手は殆どいない。そういう環境で名選手を準備不足のまま監督にしてしまったらどうなるか?言うまでもありませんよね?

高橋由伸は官僚的なタイプ、定例昇進人事で監督就任
 最大のポイントなのですが、そもそも高橋由伸という人は巨人入りを望んではいなかったということ。もともとヤクルトに入りたかったが家の事情で巨人に入らざるを得なくなったという選手でした。先に入団して活躍していた松井秀喜と同じ位の活躍をして、もしかして高橋もメジャーへ行くのでは?と言われていたこともありました。当時は一流選手であればメジャーへ行くのが一つの自然な流れ。しかしそのメジャー行きも早々に封印しました(実際にメジャーで活躍できたかは別の問題で、そもそも高橋のコンディションの問題、怪我の多さを考えるとまず難しかっただろうと思われます。なので本人としては初めから考慮の外にあったかもしれませんが、何人か無思慮で何の準備もないまま渡米する例もありましたからね。夢を選んで!難しいとわかっていても行きます!という選択もあり得たという意味で)。

 こういう経歴を見て高橋由伸という人物像を見るに、自分の意志でこれだ!という決断・選択をしないタイプだということだと思います。
監督になりたい!巨人というチームの監督をやりたい!というよりも、定例昇進人事に乗っかって自分のキャリアを一歩進めたということなのでしょう。順調なキャリアアップを望むのは人として至極当然のこと。彼としては当たり前の道、当たり前のルートを選んだということでしょうね。

 六大学のスター→巨人入り→巨人のスター→監督→(フロント入り?)…。困難で茨の道に進んで自分の追い求めたいものを追求するよりも、こういうわかりやすい華やかなキャリアを選択するタイプ。同じスター選手でも巨人の監督を務めた人かそうでないかでは雲泥の差。将来の仕事・収入に大きく関わってくる。もし今監督要請を断ったら次はないかもしれない…。そのリスクを彼は取れなかった。そして選手としての花道よりも、自身のキャリアを選択した。こういう選択肢を選んだことをみてわかるように、非常に官僚的なタイプ。模範優等生タイプだということがわかると思います(勘違いする人がいるかもしれないので、こういう高橋監督の選択を否定しているわけではありません。むしろ普通の人の普通の考え、当たり前の選択でしょう)。

■高橋監督に監督としての手腕を望むこと自体がナンセンス
 危機においては人事は抜擢をしないといけない。これが組織において一つの絶対的なセオリー。本来、若い優秀な人物・傑物を定例昇進のルートからハズして、いきなりトップに持ってくるということをするものなのですが、これをしていない。これをみるだけで巨人というチームに改革の意識がゼロ、かけらもないことがわかります

 さらに高橋由伸という官僚的な考え≒決断をするタイプの監督を選ぶということは、もう監督独自の采配を揮う、戦術をとるということを初めから期待していないということになります。監督の手腕・采配を問わないそういう選択・人事をしたのは球団首脳陣・フロントです。問題の所在はフロントにあって、高橋本人にはない。高橋監督に采配を望むこと、柔軟or奇抜な選手起用・戦術を望むことは木に縁りて魚を求むようなもの。筋違いも甚だしいと言えるでしょう。

 2011の後半、マネーボールの発想・考え方を知って、「なるほど野球・ペナントレースとはそうやって見るもの、考えるものなのか」と感心して野球を久しぶりに見始めました。過去に応援していたジャイアンツくらいしか知らなかったので、そのままジャイアンツ戦を注目して観ていたのですが、まるで理にかなわないことをやっている。こりゃダメだと呆れて、翌年からスパッとパ・リーグに切り替えた経緯がありました。そもそも巨人という組織を考えれば、理想的な野球・戦い方を求めても無駄なわけです。

 高橋監督を選んだこと一つとっても、勝つ意識・チームを強くする意識、組織改革・改善をする意識がないことがわかります。そんなチームに自分が望む理想的な采配・戦術を求めること自体がナンセンス。サッカー選手に上手い野球をやれ!と言っているようなものであり、八百屋に行って魚を買いに行くようなものだと思われます。ファンやウォッチャーであるならば、高橋監督云々よりも球団の人事制度・フロント改革を強く要求してしかるべきところでしょう。

 ファン・ウォッチャーの意識改革がなされない限り、球団も目覚めることはないのではないか。そんなことを思いましたので時期を逸しながら、強く疑問に思ったことを今更ながら書いておきました*3
<2017/11 了>

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*1:≒正確にはOBで固めないということで、必ずしも実力主義人事と言えないのですけどね。人事方針として広く門戸を開いているということであえて、わかりやすさを重視して「実力主義」としました

*2:※参照ープロ野球特別読み物 小笠原道大よ、谷佳知よ、最初から分かっていたはず

*3:※おまけとして、13連敗してヘッドコーチは据え置き、人事の目玉として吉村コーチの復帰というものがありました。これが何を意味するか?言うまでもありませんね。信賞必罰は組織の基本。失敗の責任を誰も取らないで既存の野球をやろうというのですから何をか言わんや。フロントは鹿取新GMにスイッチしましたが、そもそもGMと高橋監督は同じ慶応閥。その後ろ盾を解任して人事を下手に弄らなかったということは、来年結果を出せなければGMが監督を斬るという意思表示でしょうね

【雑誌】 月刊秘伝 2015年1月号

しれっと再開。

月刊 秘伝 2015年 01月号 [雑誌]/BABジャパン


 太気拳の岩間統正さん特集ですね。対談・インタビューなど岩間氏のエピソードが語られる号ですね。
 岩間氏曰く、立禅は最後で良い。昨今の立禅ブーム(ブームというのも変だけど)と真逆の考え方なんですね。健康法や気の実感という意味はあるけども、格闘技の中でどう使えるかというのが大事。立禅は最後で良い、そうでないとごまかしになると。

 少林流空手を元々やっていたということでその話と、型の写真が載っています。岩鶴(チントー)で猫背のように丸めて肩甲骨を最大限使おうとしているのが印象的でしたね。太気拳の差し手に通じる技法が含まれているとのこと。

 特集の三章で、「戦機」の捉え方が大事と説く氏が実際の格闘技の試合を解説しています。
 ①市原VSホイス、蹴りで間合いを作ろうとするのは間違い。間合いは手で制するもの。王向斉いわく、蹴りの理は十の内二分。半身で蹴りをする市原は間違い、半身で蹴るとのけぞる形で前後にしか動けない。澤井先生曰く、半身は負け型。(おそらく、レイピア的な剣の競技で有効な半身スタイルを剣術が含まれない総合の分野に持ってくるのは難しいでしょうね。転体=スイッチや、サイドキックなどであらかじめその利・不利を知り尽くしているのならともかく、なんとなく半身構えになるのは危険ということかと。)
 武道家は臆病でないといけない。深く考えないで習慣で蹴っているのではないか?ホイスも勝つには勝ったけど、ヒクソンとは戦いの神経が異なると。

 ②ホーストVSサップ、得意技のローにこだわって敗れたホースト。得意技は時に邪魔をする。パンチを使えば勝てた。体重差のある相手にブロックは危険。ブロックの上からでも効いてしまう。そして居着いて相手はやりやすいように攻撃できてしまう。ローで正面が空いてしまった所を付け込まれて劣勢に陥ったと。(多分ローにこだわったというより、想像以上の圧力・パワーの差で正面からパンチで打ち合えずに、リスクが少ない周りながらのローに気持ちが流れてしまった気がします。今もう一度映像を見返さないとなんとも言えませんけどね。)澤井先生曰く、技が通じるのは体重の倍まで。三倍は武の理合いの外。

 ③魔娑斗VSブアカーオ、ブアカーオの多彩な蹴りに翻弄される魔娑斗に対して、蹴りに対しては最初何もせずにリサーチする。間合いを図ってから、差す。何蹴りかはわからなくても、来た瞬間相手の気の走りに察して軸足にあわせる。(それができること自体が凄いという事は論を持たないですが、たいてい打撃系の試合では軸足カットしてもそこから加撃は出来ない。そういう技術が競技で有効にダメージを与えられない以上、あまり意味がない指摘かと思います。もちろん実戦ならどうすべきかという視点で論じておられるんでしょうけどね。多分、もっと色んな指摘や技術論があったんでしょうけど制限があって省かれたんでしょうね。実際の試合に対する色んな師範の分析とか非常に好きなので、もっとやってほしいんですけどね~。)

 ④山本KID VS須藤元気須藤元気は勝負感がある。生まれつき喧嘩上手・センスがいい人間というのはいる。しかし彼も戦機があるとはいえない。両者とも、なんとなく当たれば儲けものという感じでパンチを出している。一発でも当たれば危険なのだからもっと臆病にならないといけない。寝技もやっていて自信があるから安易に抱きついている。太気拳では寝技の攻防というのは想定していない。一対一とは限らないし、相手が武器を持ってないとも限らないから。神宮でも倒れたら必ずストップがかかって、また立ちから始まったと。

 戦機とは間合いに入った瞬間、自分の腕二本で相手の腕二本を制し、動きを封じること。そうやって守りきればいつでも打てる。ガンガン実戦をやって培った動き・感覚・技を最後に気として立禅でまとめると。実戦重視派ならではの意見・持論ということでしょうか。


異色のコラボ 中井祐樹(パラエストラ東京)×北川貴英(システマ東京)柔術とシステマの「人生補完技術」
 寝転がって、踵をペン先として内回し・外回しをする足回しのエクササイズが重要とか。チョークは人によって何が最適かは違う。誰一人同じチョークはない。最終的に身に着けたチョークは自分で発見したモノ。基本は均等に締めていくものだけど、一番強いのはぐしゃっと潰している感じ。
 三角絞めの相手の腕を挟み込まない形、ノーアームトライアングルというのがあるんですね。三角形が崩れないように自分の腕を入れることで補完して締めると。
 対談中色んな話がありますが、中井さんは自由な感じ・感性がいいですね。柔術にあまり興味が無いですが、読んでいてこの方は非常に気持のいい人なんだろうな~という感じがしました。


岡田慎一郎 異分野の達人たちに学ぶ注目連載第2回!
 中指と薬指だけを曲げるキツネの手の形で引っ掛けると相手を簡単に崩せるという話。こうすることで腕に頼らず全身の力を使いやすくなる。またグッと握られて引っ張られるという予測と違う力が働くので相手は対応しにくくなる。
 解剖学的にも中指と薬指だけは伸筋がなく屈曲優位になりやすいという根拠がある(愚地独歩の菩薩の拳はちゃんと根拠があったんですなぁ(^ ^;)、三戦で、拳を握る時、自然と中指と薬指だけは少し軽く握るというか、自然に少しだけ突き出るような感じになっていましたが、なるほどそういう違いがあるからなんですなぁ。それとこの指で腕を広げて肘を回すことで背中・肩甲骨を動かせるという個人的気付きがあったので、あとでこの事について書きたいのでとりあえずメモ)

 重心移動で歩く、結果的にあしがついてくる効率的な歩行を促すために腰ではなく仙骨を押してやる。仙骨が押されると自然と骨盤が動かされて体重がスムーズに移動する感覚が味わえる。その感覚を再現できるように仙骨を意識して歩くようにすれば良い。


キモ・フェレイラ “使える技術"を突き詰めれば、必ず小さくシンプルになる!対武器CQC(Close Quarters Combat)の極意とは?
 キモ師範の対銃の話。拳銃を持った強盗に対し財布を投げれば相手はそちらに意識が行く。その隙に逃げる。ホールドアップする瞬間、その動作で銃をかち上げる。シンプルであることが大事。強盗の心理として逆に自分が殺されることを恐れているから、接近してとっさの恐怖を与えることに主眼を置く。
 ナイフや銃といった危険性が日常にある外国ではこういう護身術が盛んになるのは自明の理ですね。ヴェトナム戦争での従軍経験から、いざとなったら相打ちに持ち込むという精神で生き延びた話などもありますね。落ち着くに鼻で呼吸すること。いきなり叫び出して周りをびっくりさせた師範、こうやると相手の強盗もびっくりするでしょ?とのこと。狂人のフリというのも実戦では有効な技術ですからね。忍者も演技しますけど、そのうち武術・武道流演技法!とか出てこないものでしょうか?


ゆる体操には“裏"の存在があった!高岡英夫の漢語由流体操「肩肋後回法 2」
 なぜ肩を前から後ろに回す疲労回復系の自助運動は存在しないのか?それは前から後ろに回す動きは四足動物が疾走するときの使い方だから。いつも使っている身体の使い方の逆をやらないと凝りはほぐれない、疲労回復効果はない。また疾走運動系の動きであるということは交感神経を優位にさせていくことになり、その点でも疲労回復に向いていないといえるから。

 肩肋という名称の通り、肩を回すだけでなく一緒に肋骨も回すことでより効果が得られる。(そういや肩を回すことばかりに気が行っていて肝心の肋骨を動かす・回すということを忘れていましたね。)多くの人が自助運動として肩を前から後ろに回す動きをやっているので、歩きと同じように普通の人でも初段から二段くらいの実力がある。これ以上うまくならないと運動法とはいえないので当然これより上の段位を目指す。殆どの人が歪な円を描く。これがなめらかな円、そしてなおかつ大きな円が描けるように目指す。

 殆どの人が肩だけが回って肋骨が参加していない、固定土台状態。プロ野球の一流ピッチャーなど肩がなめらかな円を描き、肋骨も動いている。肩だけが回るのではなく、肋骨も回るから肩肋後回法。肩と肋骨、肋骨の一本一本の間隔も広がれば広がるほどより身体は伸びてゆるむ。優れたパフォーマンスを発揮するのも同じ。当然肋骨と肩もできるだけ分離した方がいい。肩肋後回法で、肩が上のときは肋骨が下に、肩が後ろのときは肋骨が前と相対関係になるように行う。

 正円という条件で前方と後方どちらが速く回すことができるかやってみると、前方は速くできるのに対し後方は速く出来ない。やろうとすると円が崩れてしまう。それに対し前方はスピーディーにできる。個人差があっても、だいたい3倍くらいの違いが生まれる。これは脳神経系の問題。前方は速くできるのに対して、後方は出来ない。だからこそ、ゆっくりやることに意義がある。ゆっくりやることで疲労回復効果が発揮される。

 イラストでは肋骨をかなり不完全なモデルとして模式化している。胸肋軟骨は大人になると骨のように固まってしまう人も少なくないが子供の胸を触ればわかるように本来はぐにゃぐにゃ。野生動物の体幹部は驚くほどグニャグニャ。大きなしろくまでもそう。日本が世界に誇る動物写真家岩合光昭氏は引退作で語った言葉がある(ココで引いて今号はここで終わりです)。


短期集中連載 沖縄拳法大平道場 西原治沖縄拳法に伝わる“手"の極意 第2回「サンチンとナイハンチ」
 後手の先を身につけるために役に立つのがサンチン。サンチンをやることで相手の動きの兆しを感じやすい体になる。呼吸法は2つあって上地流のように下腹に貯めてチッチッと爆発させるように吐く。体の中心を雑巾を絞るような間隔で。ずっと丹田に力を込めて行う。即効性があって3ヶ月で体の変化を実感する。打撃への威力&耐久力がつく。
 二つ目はゆっくり息を長く吐きながら行う(心道流と同じかな?)。宇城憲治氏が言うような内的な変化が起こる。内的な変化が起こると受けを力を入れずにふわっと崩せるようになると。これも特別なことではなく、誰でもできるようになると。感覚的にスイッチの入れ方を知っている。他人に触れると、そのスイッチを入れてやることができる。別に気を送ったり、入れているわけではない。(宇城師範の気の理論・指導への批判なのかな?これは)
 肚・丹田を身につけるためのナイハンチ。腰を一度反らせて、今度は反対に入れるようにする。丹田と感じられるところに自分のイメージする「気」をそこに集める。そうすると不思議と足腰が安定する。そこから体全体が一体化したイメージ・感覚が大事。そこから腰を返さずに突くと威力が変わったのが実感できる。腰をひねると腕力に頼ってしまうからダメ。ナイハンチ立ちがなぜあの状態か、ちゃんと立ち方・姿勢ができれば、あの姿勢で鉤突きをするだけで威力がでるから。本部朝期氏も、空手の立ちとは全てナイハンチ立ちをどちらか捻ったものというくらい重要な基本。氏が入り身に徹底していたのも、ナイハンチに基づいた一撃の威力があったからだろうとのこと。

平上信行時代考証の裏表「武術修行者が憧憬する究極の武術秘法」
 宮本武蔵以上の達人と言われた同時代の剣客二階堂主水が行っていたという「心ノ一方」。手かざしと気合で相手の動きを封じる。宮本武蔵も構えだけで相手に打ち込ませずに相手を制したというし、各諸流派にも「馬上落」として伝わっている。天然理心流の近藤内蔵助にも「気術」がある。そういう技があることは当時から広く知られていたと察せられる。
 筆者は「神ノ一方劍」と「無手勝流眞空斬劍」を体得しているとし、前者がいわゆる不動金縛りの術で、後者は剣を用いずに相手を斬るものだとしています。剣を持たずに相手を斬るとは?念・気によって相手の神経系にパニックを起こさせる、ショック・ダメージを与えるというのは聞いたことがありますが、そのたぐいでしょうか?


武の巨星逝く合気錬体会 吉丸慶雪師範を偲ぶ
 佐川幸義氏の弟子だった吉丸慶雪氏が亡くなられたので、その経歴の紹介ですね。佐藤金兵衛氏は佐川幸義氏の弟子である山本角義という方から大東流を学んでいたんですね。知りませんでした。でその山本伝大東流も佐藤氏から学んだと。


黒田鉄山鉄山に訊け「抜刀の身法」
 左手の鞘引きの話。手で引くのではなく肩甲骨を脊柱方向に引き寄せることで抜くという話。


宮司朗霊術講座「軽重変換法と一手加えること」
 軽重変換法、相手に近づくと持ち上げやすくなり、遠ざかれば持ち上げにくくなる。つま先立ちになってやれば相手に重心が近づいて持ち上げやすい。茂呂隆氏が意識軽重法だったか?忘れましたが、天を意識すれば軽くなり、地を意識すれば重くなる。脱力云々との関係で解説していた気がするので、あまりテクニックにこだわらずともちょっと修行していればできる気がしますけどね。まあちょっとした方法・やり方を知っていれば誰でも簡単にできるよということなんでしょうけど。


安田洋介 太極遊戯
 放鬆・ファンソンという言葉の意味は単なる脱力ではないという話。筋力は使う。高岡氏が「ゆるんでいる」状態とは、必要な部位の最小限の筋出力で無駄なく立っていることであるとか、そんな話をしていましたが、そういう話でしょう。筋出力ゼロになったら流石に立てませんし、動けませんからね。背骨をまっすぐにするという人もいれば、わずかに反らせるという人もいて、どちらも間違いではない。どちらか一方が正解で、もう一方は間違いだとしたがるという話がありましたが、困ったちゃんによって困った体験をなされたのでしょうか(苦笑)。

松原秀樹「100%動ききるための調整術」
 今回もオイルマッサージの話。合気をかけるように塗り込むのがコツ。手根部、小指側を使うと良い。一人でやる場合背中は弧拳でやると、背中は自分では難しいので他人にやってもらったほうが良い。

武術秘伝書夢世界
 見たことないような異様な形をした武器が多々あるとのこと。写真では十手に鎖鎌をつけたようなものしかパッと見で理解できませんでしたが、どんな異様な武器が古に存在したのか…。ロマンありますね。

松本人志、SBホークス内川をひょっとこ呼ばわり

松本人志、「ひょっとこ」発言で内川とバトル 抗議に逆ギレ
 事情を知らない人のために一応リンクを貼っときました。メモ程度ですが書き残しておきたいという話です。前も内川にまつわるトラブルの話を書いたのですが、なんなのでしょうね?内川はもうそういう星の下に生まれついているということなんでしょうね。前回はカメラマンへの態度が良くない云々で責められたところもありましたが、今回はそういう声は殆どないと言っていいでしょうね。

 本館で角田さんとの揉めた話について松本人志の高い立場的な話を書きましたが、あの時とは比べ物にならないレベル・次元の話ですね。何考えてるのでしょうかね?他人の容姿をいじって笑いを取るなんてダメに決まってるでしょう。

 ブラックユーモアというものがあって、相手の至らないところをいじって笑いにするという領域はありますが、本人がその場に居ない&親しくなくて信頼関係もない間柄でそんなことをやったらダメに決まってる。普段からよく知っていて付き合いがあるなら、あとでいくらでもフォローすればいいでしょうけど、ろくに面識もないのでしょう?そりゃ怒られて当然ですよ。

 昔、ノムさんが松本氏に対して、「お前みたいな人間がよう芸能界で生き残ってきたな」と言われて嫌な人だと思ったという話をしていたことがありましたが、そもそも畑違いの世界・異分野の人間に対して好き勝手なことを言うのがおかしい。かつて自分が嫌な思いをした野村克也とまま同じことを松本はしている。しかし本人にそういう自覚はないのでしょうね。

 お笑い界の後輩に当たる若手ならそういうことをしても何の問題もないでしょう。しかしスポーツ界・アスリートはそういう価値観(いじられておいしいとかそういう世界)で生きてるわけではない。

 昔は野暮ったい人が多かった。今は妙にカッコつけた人が多い。ルックスで売るミーハー路線ではなく実力でやっていく、変に色気を出さずにもっと職人のようにそれだけ打ち込むようなタイプこそが業界を活性化させる。まあそんなことを言いたかったんでしょうね。でもあんな言い方したら駄目です。

 というか普通はスタジオで「エッ」ってなるでしょう。引いてお蔵入りになるものでしょう。許容してしまうスタジオの空気ってなんなんでしょうね。そしてそれをそのまま放送するセンスがアレですね、馬鹿なんでしょうね。編集は何を考えているんでしょうか。まあ今に始まったことではないのでしょうけど。

 日本代表・NPBを代表する選手をあんな扱いしたら以後ギクシャクするんじゃないでしょうか?まあ選手会としてNGを出すとかそういう話にならない限りはそこまでいかないのでしょうけど。相方の浜田さんはジャンクスポーツという番組をやっていてアスリートと繋がりありそうですけど、これ以後野球選手が出たがらなくなったりしたら…。まあ流石にそこまでは発展しないでしょうけどね。

 まあ何回か書いてますけど、年を取るたびにどんどん世間と感覚がズレていくものですからね、今後も色々騒ぎを起こしそうですね。共謀罪云々で懸念を抱く人達から叩かれてましたね、そう言えば。そのうちあのワイドナショーという番組もたちいかなくなるかもしれませんね。

 ※一日公開遅れたら、オリエンタルラジオの中田氏が吉本から松本の意見に楯突いたことを謝罪しろと言われて、いや謝らない云々という話が目に入ってきました。あれだけ売れてあれだけ大物になれば影響力も大きいわけで、ある種最高権力者みたいな存在なわけですね、松本氏は。彼はそういう自分の立場について自覚がなさすぎるんですよね。表面化していないだけで、それこそ忖度で「反松本」とみなされる人間が何人業界から消されたことか、少しは考えるべきなんですけどね。まあ周りにそういうことを言う人が居ないので言ってもしょうがないんでしょうけどね。