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身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

【2016工藤采配批判1.5】 見当外れな打順批判、固定的起用は好ましくない

 李大浩の穴は存在しないという記事で追記をしたら長くなりましたので、分割しました。李大浩の穴云々の前に書いた打順は固定すべきではないという前菜感覚で書いたものを分割しておきます。

 要約すると、打順を固定しておけば役割を固定化することによって、選手はやりやすくなる。しかし長期的ビジョンを持つと、育成を考えて若手を何人か試さなくてはならないために固定はできない。また故障リスクを減らすために、休養を与えるべきで定期的な休養を挟むことで固定する余地は更に減る。またポストシーズンや短期決戦という戦いにおいては危機管理が重要になり、誰が抜けても戦えるように、いろんな役割をこなせる選手が望まれる。そのような観点から考えると、打線を固定すべきだという意見は的外れである。

 まあそんな内容になっております。興味のある方はご一読どうぞ。書き忘れていましたが、そうである以上どんな指揮官の指令も柔軟にこなせるような起用な選手を育成すべきであるというのはここで書いてませんでしたね。また、だからと言って全く固定すべきではないわけではなく、軸となる核となる基準は必要である。その基準を形成すべきだという大事なことも書き忘れていました。忘れてばっかですね(^ ^;)。書きたいこと多すぎていつも忘れますね。

打順を固定できることは稀

 よく、打順があーだこーだ言われます、誰を1番にすべきだとか4番を代えるべきだとか、なんだかんだいう人がいますが、そもそも打順というものは固定すべきではないと考えます。去年は3~7番まで固定して起用していましたが、それはそういう人材がいたからこその話。普通、1~8番まで固定的に起用出来るほど完成されたチームというのは存在しません。

 パリーグなのでDHを含めて、打順を1~9番まで1年間固定できればそれほど楽なことはありませんが、そんなレベルの高い選手が完全に揃うことはまずありえません。何より選手が怪我しないなんてありえませんし、層が厚い・薄いかかわらず、長期的なビジョンを持てば、チームの中心である主力選手は引退するし、FAで出て行くorメジャーへ挑戦していなくなります。そういう時代であることを考えると、固定的な起用は好ましくない。強いチームというのは次から次へと、どんどん新しい選手が育ってくるチーム。そのためには3年後にスタメンを張ってくれそうな期待の若手を抜擢して起用することが必要不可欠。そのせいで試合に負けるリスクを増やしても、我慢して期待の若手にチャンスを与え続けることが強いチームを作る&戦力を維持するために重要なのですね。

育成を考えれば固定起用は難しい

 期待の若手に一軍の球を見せておくチャンスが多ければ多いほど、一軍未満の若手が成長するチャンスは増えます。育成を売りにするチームであればあるほど、一軍での実戦機会を与えるもの。

 そういうビジョンを持って選手を育てようとすればするほど、負けてばっかりで何の収穫もないダメシーズンが減ります。優勝が狙える状況だったから、勝ちにこだわって育成が疎かになって、黄金期が過ぎたら暗黒期が到来したなんていうのは言い訳に過ぎません。フロントはこの選手が何年でピークを迎えて、何年でスタメンを張れなくなる。それ故に穴の空いたこのポジションを埋める選手を3~5年で育てるというビジョンを持っていなくてはいけない。もちろんそんなにうまくいく話ではないことは確かなのですけどね。少なくともその現実を認識して、次代の選手を育てるというビジョン&努力がなくてはいけません。

 「育てながら勝つ」でも「勝ちながら育てる」でもどちらでも良いですが、とにかくその「育てる」と「勝つ」の二つのビジョンをフロントは常に持っておかなければなりません。どちらかが疎かになってもいけない、両輪の荷車といったところでしょうか。

故障リスクが高い現代野球

 現代野球はCSを含め日本シリーズ、更には国際試合とシーズンが終わってもそのあとに更なる戦いが待っています。昔は130試合で一年が終わりましたが、今は143+3+6+7+代表戦ということがありうるわけです。下手したら一年の半分近く試合することもありうるわけですね。そうなれば故障リスクは高まる。主力選手の故障防止のためには、定期的に休ませる・休養日を設ける必要性がある。ペナントが160試合以上あってポストシーズンもあるメジャーだとそれが当たり前になっているようですしね。そういうことを考えても、打順を固定起用するというという考えがいかに時代遅れで間違った考えかわかるかと思います。

 ①育成上②故障リスクという理由から選手を固定し適用することは難しいといえます。ただ、それはそれとして特定の選手を特定の打順から外すことで十分であり、打順を組み替える必要はないという反論も成立するかと思います。それは③戦術の重要性ということを考えると、好ましく無いと思います。

戦術上打順を組み替えるのは当然

 戦術によって打線を組み替えて挑むことで相手投手を攻略しやすい・自分たちの打線が不調であるから、最低でも2点を絶対取るという戦術に変えるなど、状況に応じた柔軟な戦術変更という点を考えると、固定起用するよりもある程度時と場合に応じて変化させることを主眼に置くべきだと考えます。

 問題となるケースは、理なき打順・不合理なそれによって結果も出ないという時でしょうね。ですから
 ①監督が無能であり戦術眼がない、打線をいじっても打てない・投手を攻略できない可能性のほうが高い
 ②能力の高い選手が揃っている
 ③若手スタメンが多く5~10年以上安定してチームに在籍してくれる可能性が高い
 ④選手が起用なことをこなせない
 ⑤FA補強が頻繁に行えて戦力劣化というリスクが少ない

―という条件の殆どを満たしている時でしょうか?固定起用をしたほうが望ましいというのは。工藤監督は一年目に結果をきっちり出している以上、なかなか①は当てはまらないと見るべきではないでしょうか?

 監督が自分の戦術・戦略、ビジョンをしっかり持って戦うということは重要な要素ですから、何もせずに選手任せ、その日任せよりこちらの指揮官の方が好ましいと考えます。

固定的起用は主力の離脱などのスクランブルや短期決戦にリスクがある

 ただし、打順を固定することで、役割を固定する=選手が試合に望みやすい効果が有るという論理があります。これはそのとおりだと思います。役割を固定されたほうが選手はやりやすい。これに反対するつもりはありません。物事には一長一短あるもの、役割を限定してあげたほうが、それに専念できるので選手はやりやすいでしょう。

 ただ、その考え方はそれでいいとして、固定的なことしか出来ない応用能力の低い選手が好ましいか?そういうことで常に勝てるのか?という別の問題が当然浮上してきます。CSや日本シリーズという短期決戦や、国際大会で「相手がいい投手だから打てませんでした」は通用しない。代表クラスの選手は、そういう普段経験のない相手と戦うという状況でも結果を発揮できるようにならないといけません。

 絶対的な1番・4番であれば、まずそういうアレコレこなせ!と言われることは少ないでしょう。しかし、そうでない選手が殆どで、そういう器用な選手が多ければ多いほど指揮官は色んなパターンを組めるので有り難い。そういう選手を育てることを目指すべきだと思いますし、選手はそれに応えるよう努力すべきでしょう。

 また絶対的な1番・4番・エースなどがケガや球団からNGが出て出られない、そういう本来の実力を発揮できない時にどうするか?というのが危機管理として問われます。本来の70%の状態で戦いに望まなくてはならないという時でも、結果を出せるようにするには柔軟性が求められるのは言うまでもないことかと思われます。そのために常日頃色々なパターンを試して少しでもこなせるようになる方が好ましいと考えます。

 勿論、不器用な選手もいるでしょうし、そういう不器用な選手に起用になんでもこなすようなことを求めるべきではないという論が成立することもありうるでしょうけどね。まあ言わずもがなケースバイケースですね。

 何より、打順を固定して挑んだ秋山政権の時どうだったか?打線が不調になることはなかったのか?と言えば、当然ノーなわけです。固定しようがいじろうが、打線が不調に陥らないことなどないし、いつでも好調で打てるなんていうことはありえないわけです。それならば監督が状況・コンディション、相手チームの打線の好不調・投手の相性などなどいろんな条件を考慮して打順をいじるほうが良いと思います。

 問題は、その打順の意図を選手にきちんと説明して、使われる選手が納得しているかどうか。意思疎通・コミュニケーションがちゃんとしてあるかどうかでしょう。監督の意図が伝わらず、選手が不安になってしまえば当然動揺してしまう。マズイ結果をもたらす。時に監督が選手と話し合って、7番だと辛いとなったら、じゃあ今回は1番で使ってあげる―などと相談して気持ちを汲んでやる、配慮してやることができているかどうか、一方的に打順を決めて選手の気持ちを無視していないかどうかでしょう、ポイントは。

 事前のミーティングで「今日の投手は~だから、打順はこうする。相性のいい~がしっかり繋いでくれ」とか、意図を説明しているでしょうから、選手も監督の起用の意図がちゃんとわかるでしょう。あるいは「起用に納得出来ない場合はいつでも直に言ってくれ」とオープンにしているでしょう。コミュニケーションを重視する監督なので。

意味不明な工藤采配批判

 まあ、そんな打順を固定すべきではないというくだらない話を長々と書いたのは、たまにゲンダイとか夕刊フジあたりで、変な批判が目につくからですね。いわく打順をコロコロ変えるから打てなくなる―というようなトンチンカンな意見が出てくるのですけど、前政権の秋山時代を知らないんでしょうかね?固定的に起用して果たして優勝出来ましたか?2015のようにブッチギリに勝てましたか?と聞いてみたいものですね。選手が不調に陥ったり、流れが悪くなった時に指揮官が無策で何もせず、選手任せにするよりよっぽど良いに決まってます。

 また謎OBが出てきて、油断しているから、舐めているから、たるんでいるからとか訳のわからないものがありました。そして「指揮官が顔に出すと、選手が動揺する」というのもありました。今どきの現代っ子の選手がそんなことあるわけ無いでしょう。何より毎回ベンチで大はしゃぎしているホークスというチームを知っていればそんなこと言えるわけがない。ノリと勢い、ムードを重視するチームで今更ですね。選手が動揺するときは負ける時、いつもと同じパターンが成立せずに勝てなくなる時に決まってるでしょう。そういう時に選手は動揺して浮足立つもの。勝っている時、そんなことはなんの問題にもならないでしょう。

 前政権のように、失敗した・負けた原因を作った選手を監督が叩くならともかく、捕手以外選手を決して責めないのですから、そんなことありえないでしょう。そんな抽象的な精神論を説く日本の野球評論のレベルの低さはどうにかならないものでしょうか?野球評論に定評のある人を選ばない。ちゃんとしたOBの意見を書かないからクソ記事になるんでしょうね。そもそもOBが実名ではなく匿名で意見を述べるという時点で察しなわけですが。

 今年の采配の問題は打者云々ではなく、どう見ても継投。継投が去年と比べて異常に質が下がった。それ以外にありえないのに、そのことを指摘する記事がないというのは、ハッキリ言って異常だと思いますね。まあその話はいずれまた別でしたいと思いますので、本題の李大浩の穴は存在しないという話を。分割先はこちら→李大浩の穴は存在しない。李大浩がいる前提の野球をしているだけ