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メジャー移籍する選手の「通用」する・しないは、「活躍」の間違い

 ※ブログインポート後に分割して書いたので、インポートで反映されなかったので、手動で再掲してます。元は15/11に書いたものです。

 松田のメジャー移籍のところで書いたわけですが、今後も使いそうなので分割して、単独記事化しました。NPB選手がメジャーに移籍して成功するためには、「適応」という概念が重要になると思われるので、その話を。

目次

メジャー移籍選手の成功の鍵は「適応」にあり

 よく、「松田は通用しないよ!」みたいなコメントを見ますが(中島の時は守備のまずさから絶対無理、ありえないとわかっていたのに、何故か結構好意的なコメントが多かったんですけどね…。HR打ってた大砲だからか…?)、よく使われている「通用」という言葉、これについての誤解がかなり多い。というか使う人は大して考えもなしに使っていると感じます。
 まあ人によっていろんな見方があるとは思いますが、己は「適応」の他に、「通用」「活躍」の3つの概念で、日本人のメジャー移籍を考えています。

NPB仕様からMLB仕様に変更する「適応」期間・準備

 ちょうど、「アダプターテクニック」のように、メジャー移籍する選手にはメジャーに適応する独特の技術が求められる。優れた格闘家・武道家でも、その優れた能力・技を、異なる技術体系を持つ相手に発揮する方法論・技術がないと全く無意味になる。日本の電化製品を海外で使うためにはアダプターが必要になるように、「アダプターテクニック」として、ちゃんと現実化・技術化しておかなければならない*1。<br「アダプターテクニック」がない場合、優れた武道家でも簡単に負けてしまう。インチキ武道家・武術家だからリアルを重視した格闘家に負けるのではなく、「アダプターテクニック」がないばかりに惨敗するというケースが有る。その優れた能力の活かし方・使い方を知らなければ宝の持ち腐れになってしまうわけですね。

 ですから、メジャーへ移籍しようと考えている日本人選手は、優れた能力を持っているだけではダメなわけです。メジャーという舞台で活躍するためには、その能力をメジャー用に作り変える必要性がある。NPB選手としての能力が100とした場合、メジャー用に作り変えるアダプターが「1」でないといけない。このがアダプターが「0.8」とか「0.6」ならば実際の能力は80、60に落ちてしまう。このアダプターをしっかりしておくことが非常に重要になる。
 ※無論、独特の技術・能力を持っているがゆえに、このアダプターが「1.2」「1.4」となって、向こうでその実力をより発揮できるという選手もいることはいるでしょうね。頑丈で中4日でも平気で、球速だけが売りでコントロールがアバウトな投手でもガンガン振ってくれる向こうのスタイルなら、あっちで通用どころかより成功するなんていうケースも普通にあるでしょう。

 そもそも、その選手がメジャーでやる能力値自体が少ない。仮にイチローや松井が500とか1000という高い数字を持つ選手であるならば、アダプターが「0.8」とか「0.6」と低いとしても高い数字が残るので、さほど問題がない。元々実力があって評価されるのでちゃんと実戦機会が与えられる。あとは実戦でなれさえすれば、やるべきことやるべきでないことなど取捨選択して自然に適応していく。しかし実力が飛び抜けていない場合は、この能力値の変換が成否を分ける死活的なファクターになる。
 異なる環境への変化・対応、「適応」ですね。NPBで鍛えた能力を、MLB仕様に磨き上げること・変化させることを己は「適応」と定義しています。


MLBからNPBはたやすいが逆は難しい

 どんな選手も「適応」出来なければ、実力を発揮できない。これはメジャーリーガーでも同じ。能力が高い選手ならば、その能力自体が桁違いなために、「適応」のハードルも低い。意外と指摘されていないことかもしれないですが、NPB選手がMLBに「適応」するよりも、MLB選手がNPBに「適応」するほうがハードルが低い(というか初めからそういう適応という事を考えていないからでしょうかね、こういう話がされないのは)。

 NPBは3Aくらいの実力と言われながら、3Aから取ってきた選手が失敗するケースが多い。それどころかメジャーでもそこそこの数字を残した選手でもそうなることがある。これがMLBの一流どころならそうでもないでしょうけどね。まあ需要と供給の問題で、NPBが欲しがる選手が偏る、また枠の問題があって誰も彼もがNPBでやるわけでもないなどなど、いろんな事情が絡みますが。
 日本に来るMLBの選手が成功しやすい・活躍しやすいというより、NPB選手の方が移籍ハードルが相対的に高い。というのも日本は興行優先で、ドーム・人工芝球場が多く、人工芝になれさえすれば守備の問題はたやすくクリアできる。対称的に天然芝が多く手入れも行き届いていないMLBでは、複雑なバウンド処理が球場ごとに求められる。
 そもそも、日本とあちらでは、競技をする球場の前提が違うゆえに守備のセオリーが違う。子供の頃から野球をやって前提の異なるセオリーから始まった動きをしているがゆえに、ゼロからセオリーを再構築する必要がある。その「適応」をいかに早くこなすかというのは非常に重要なファクターになるわけですね。特に守備が重視される内野はそう。だからこそ日本人内野手は皆苦しんできたわけですね。

 

NPBが求める大砲は守備には目を瞑ってもらえる

 NPBは大抵大砲を求めるので、守備は目をつぶってレフト・ファースト・DHで起用されるケースが多い。HR・長打さえあるのならば守備はただこなしてくれさえすればいいというところもあるくらいですからね、ラミレス然り。というわけでそういう大砲枠は打撃一本に専念できる。しかし、日本人選手は二遊間の場合特に、打撃以外守備の「適応」という問題が加わってくる。打撃だけでなく守備も加わって二重のハードルに苦しめられるわけですね。

 野手で成功しているイチロー・松井が外野手だというのは、守備の「適応」のハードルが内野手に比べて低いことがあげられるでしょうね。最近では青木がそうですしね。

「適応」の概念を理解し「通用」と「活躍」を使い分けるべき

 イチロー・松井のように、「適応」に成功すれば、次は「活躍」出来るかどうか。多くの人は「活躍」を「通用」とごっちゃにして語っているようで、メジャーでも一流の成績を残すことを「活躍」、一流とまではいかないレベルを「通用」とすれば、「通用」する選手はいくらでもいます。守備固め・代打専門を「活躍」と考える人は少ないでしょうが、それも野球の重要な役割、そこで一定の役割を果たした人ならば「通用」とみなすべきでしょう。日本球界で一流だった人がレギュラーを勝ち取れないことに寂しさを感じるのは別問題としても。

■活躍はせずとも日本人内野手は普通にMLBに通用してきた

 松井稼頭央・井口・岩村、日本人内野手は「通用」しなかったと言われますが、向こうの一流じゃない選手と比較すれば、まあそういう選手は普通にゴロゴロいるなというレベルでしょう。あとは試合に出続ければ、物足りない数字でも受け取る金額は日本の倍・三倍ですからね。数字が落ちて、.270、15本、55打点など、どのチームにも2~3人はいるような、プロ野球好きでないと知らないような選手になったとしても、選手としては十分な範囲。絶対欠かせないというレベルの選手ではないにせよ、球団が戦力として考える重要な選手でしょう。
 そういう選手をプロ野球ファンが「通用」しないなんていう言葉を使ってしまうのは誤りだと考えますね。というか選手やNPB全体に失礼ですよね、そもそも。一流の数字を残せなかったことを「通用しなかった」なんていう言い方をするのは

■年間100試合出場100安打している選手を通用しないは不適切

 だったら、なんでそれらの選手は出戻りしたんだ?結局ダメだから都落ちした、スゴスゴ尻尾巻いて帰ってきたんじゃないか!という風に考える人が多い。そういうメジャーで一軍で出場し続ければ、日本よりも稼げるなら稼げばいいじゃん―という話になる。「出てない=帰ってくる=通用しない」という発想ですね。
 今、調べて気づきましたが、日本人内野手は松井がちょうど600試合・600安打で、井口が両方500のW500(正式にはそこまでいってない)、そして岩村がW400という数字になっているんですね。最も成功した二遊間内野手松井稼頭央。二遊間の選手がメジャーを目指す場合、まず彼を超えることが次の日本人選手の目標になるんでしょう。100盗塁以上していますしね。あとHRでいうと岩村が一応一番HRを打ってはいますけどね(44本)。求められる役割はHRより安打と盗塁、あとは四死球での出塁率でしょうから。
 このレベルの選手達を「通用」しないとする見方はどうでしょうか。己は、「活躍」はしていない―というべきだと思います。
 実際の守備を見ていないので、断言するわけにはいかないのですが、名手と言われる松井稼頭央が二遊間でやり続けたのですから、守備での貢献度を考えると大したものだと思いますけどね。「活躍」と言い切るのはどうかと思いますが、十分称賛に値する選手だと思います。

 通用しなかったというのは、ろくに一軍の舞台に立っていない、中村ノリ・西岡・中島という選手に当てはまる言葉でしょう。
 ※ちなみにムネリンは260試合の140安打ですね。一年、100試合・100安打を一つのノルマと考えると、4年でこれは物足りないというより「通用」しないという言葉でくくられても致し方のないところ。まあでも本人が前からマイナーでもという気持ちで、やること自体が目的!という意識で楽しんでやっていますので、ムネリンのケースは覚悟して今でもやっていることなのでいいのでは?下手な出戻り選手よりも評価されるのではないでしょうか?もはや「おもしろ外人枠」ですからね(^ ^;)。

過酷なメジャーの環境

 話を戻して、では「通用」するから、それでいいのか?内野手で最長6年(実際は7年で最後の一年はろくに出場していません)やって、おそらくまだ残ろうとすればそうすることも十分可能だった稼頭央がどうして帰ってきたか?おそらく井口・岩村もまあ同様でしょう。何故彼らは帰ってくるかと言うと、それはメジャーの環境が移動距離や気候などで厳しいから。また食事も違えば文化が違う、そういう競技外での私生活面の「適応」が大変。言葉も英語以外にスペイン語などが求められる(ゴジラの方の松井はスペイン語出来たらしいですね)。
 異なる環境・言葉の通じないチームメイト、長距離移動に、ゲーム終わりのケータリングの食事。あの鉄人金本さんが、ようやく試合を終えて食事&移動では辛い、あの環境では到底やれない・難しいというくらいですからね。加えて内野手は守備負担が多いわけですから、桁外れの身体の強さが必要ということでしょう。
 さらに、イチロー・松井のような特別な数字を残さない選手は、
トレードの対象になる(メジャーでは一流でも対象になりますが)。頻繁にトレードが行われて、環境が一から変わる。そこでまた微妙な調整をしなくてはいけない。日本でさえトレードで住むところが変わるのは辛いといいますからね。3選手ともシーズン途中の移籍を経験しているところをみれば、メジャーでその球団だけで全うするかプラス1球団くらいで終わるというキャリアは考えづらい。
 一年で1回しか対戦しないことが多いというメジャーでデータなどが機能しない。NPBではキャリアの積み重ねが確実に経験として反映されるものが、メジャーではそうもいかない。こういう厳しさもあるでしょうね。同一リーグ内移籍ならまだしも、リーグ・地区が変わったら打者はたまったもんじゃないでしょう。

 また、選手も人間ですから、社会的成功を収めて、家庭を持たないワケがない。嫁・子供が欲しい、家庭を築いたら安定した環境でやりたいと考えるようになる。まあ、5年もやったら日本が恋しくなるでしょうし、そろそろ一流扱いされた頃に戻りたくなるということではないでしょうか?また、前述したように子供の教育を考えて、あっちこっちトレードで学校・家を変えることをしたくないというのもあるでしょう。
 MLBキャリアも評価されて、オファーが来たらちょうど帰るのにいいタイミングということになるんでしょう。まあ、とにかく野球以前の環境が厳しい。一試合一試合区切ってみるとNPBと大した違いはなくても、1シーズンで見ると大変。今143試合ですが、それよりもMLBは20試合近く多く、またプレーオフもありますからね…。そりゃ国際大会に選手を出したくないでしょう、壊れますもん。
 そういうことを考えると、「活躍」した向こうでもとびっきりの一流選手と言われるような選手でない限りずっとは残ってやらないわけですね。5年位で、残りのプロ人生を考えて出戻りするのが自然な流れになるわけですね。
 ※ムネリンが低い年棒でも残るのは、家族のことを考えるとありえない。周囲はいいね、素敵!なんていいますが、カミさん子供のことを考えたら…ですね。まあおそらく今年帰ってこないのならば、NPBで価値はグッと落ちるので、イチローオリックスに帰ってくるまで粘るのではないでしょうか?来年なら、間違いなくオリックス入りして一生イチローの右腕として生きるかと思われます。キャリアプラン的にそれがベストでしょう。

厳しいと言われる内野手の挑戦は是か非か?

 イチロー・松井クラスの選手ならばともかく、それより劣る選手であるならば、「通用」しないからやめろという主張は、「活躍」は難しいからやめたら?と言いかえるべきとして話を終えます。そして次に気になったマイナーでも頑張るのならば応援するという奇妙な意見はなんなのでしょうか?マイナーでやり続けるならばいいけど、帰ってくるのは許さないというわけのわからない主張は理解できません。
 自分が転職をするとして、その転職先で給料がガクッと落ちて、勤務先・時間なども遥かに悪くなって、ろくな仕事も任されないが、たまに来るチャンスをしっかり掴んだら、以前より数倍にアップする―そんな話・オファーをされて、さあどうしようか?と普通はなるはず。日本に帰ってくるな云々言う人はそういうオファーを出されたら真剣に悩まないのでしょうか?またそのハイリスクハイリターン話を飲むのでしょうか?
 選手の権利ですし、自分がもしそうならどれくらい成功する確率があるか一から十まで徹底的に条件・状況を精査するでしょう。そんなことしないという人ならばともかく(それはそれで単なる大馬鹿者でそんな大馬鹿者が口を出す名となるだけですが)、選手の権利行使で外野がとやかくいうべきではない。本人の価値観と決断の問題なのですから、部外者が無責任なことを言うべきではないと個人的には思います。そういう声は見ていて不愉快ですね。オリの金子選手の時もそうでしたけど、ルールの範囲内で適正に行っていることでどうして文句をつけられなくてはいけないのか、そんな否定的なことを言われなくてはならないのかまるで理解できませんね。

MLBで適応するため、成功するためには事前の準備が必要不可欠

 そういうのは論外の話として、内野手であろうとなかろうと、挑戦する前にはしっかり環境を調べておくことが必要不可欠でしょう。田口壮が断言。「日本人内野手はメジャーで通用する」 ―と文中にあるように、井口選手が三年前からメジャーでやることを想定して、右打ちを意識して適応を図ったように、事前の準備が必要不可欠ですね。またGM・監督などをしっかり調べておいて、自分にチャンスがしっかりもらえるか調べてそうでない球団は避けるという選択もポイントでしょう。
 高年俸かどうか、待遇が良いか悪いかという理由で選んでは絶対にいけない。金だけで行くと失敗の可能性はぐっと上がると見ていいでしょう。間違いなく中島・中村ノリはそのケースでしょうね。スタイルチェンジのための準備期間・「適応」するまでちゃんと待ってくれるかどうかという点をしっかり精査せずにMLBに移籍するのは自殺行為だというのがセオリーとして広まらないかぎり、安易な挑戦と失敗は今後も続くでしょうね。あのボビー・バレンタインも球団や監督によって、選手を使い続けてくれる所とそうでない所がある。そういう球団に行って早い内に数字を残せないとずっとファーム付にされるという話をしていましたからね。そしてそれはMLBに限った話ではなく、NPBでも新外国人打者を5月くらいで早々と下に落としてあとはファームでいくら打とうが絶対チャンスを与えない球団が珍しくないことを考えれば明らかですね。

 今までの内野手を見ると、成功しなかった選手は、そもそもパワーが無い選手なんですよね。中島は前述の条件で落ちてその点を試されなかった要素があるのでまた微妙ですが、西岡・田中・ムネリンと上手くいかなかった実例を見ると、基本向こうではパワーが無いとやれないという傾向があるように思います*2
 井端なんか凄い良い選手ですが、彼がメジャーだとどうだったのかというのは見てみたいですよね。まあ彼はもういないので、守備の名手で彼クラスの右打ち&ねばねばマンということですが。最低限のパワー(HR15?20本か?)が無いと、どれだけ技術があってもダメなのかどうかという点は地味に気になる話ですね*3

アイキャッチ用画像 全然いい画像が見つからなかった…

 

*1:※参照―合気道と中国武術はなぜ強いのか?

*2:そもそも中島はセカンドでも守備範囲的に?という選手。まあ一応内野がどこでも出来るサードタイプ。それで多分20本打てるかどうかという選手だったので、日本人内野手の括りにしないほうが賢明かもしれません

*3:※追記、おそらくムネリンのようにNPBですらあまりHRやツーベースを打てない繋ぎが主役割りの内野手はまず無理でしょうね。向こうは球が速い、スピードボールがこちらより平均+5キロくらいになるという点を除いても、ボールが少し大きい。故に球速や投手のパワーが伝わりやすくなり、なおかつ球質が悪い分少し動く。小柄で非力なバッターがそのボールを安定してヒットを量産するのは難しいということのように思えますね。ツーベース30本以上打っている年もありますけど、それくらいでは難しいのでは?と思います