別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

続、大谷翔平のポスティング移籍の話

長くなったので分割しました、前回*1の続きです。分割したら全体としての話がよくわからなくなるのでは…。というかそもそもこんなクソ長いの読む人いるのでしょうか(笑)。もうタイトルも適当です。まあ興味のある箇所でも拾い読みで来る人がいれば拾い読みしていただければ。しかし書いているうちに色々思い出したり、思いついたりで倍くらいに文量が増えましたね。それくらい大谷関係で話したいことがあったんですなぁ。

※補論、大谷のメジャーでの活躍はNPBに適応しなかったが故  
 忘れていたので追記をしますが、今大谷はメジャーでそこそこ活躍をしています。一流と言える数字ではないものの渡米一年目としては十分。文句のつけようがない数字であることは言うまでもありません。どうして大谷がここまでメジャーに「適応」*2して活躍できているのか?それは当然、大谷の身体能力、適応・対処能力が優れているということもありますが、そもそも彼はNPB流・NPBで最大限数字を残すためのNPBモードと言える身体作りやフォームづくりをしなかったから。
  日本のプロで求められる能力とメジャーで求められる能力、また技術は前提が違う故に異なる。NPB出身の選手がMLBで活躍するためにはそのモデルチェンジが必要不可欠であるという話をリンク先で昔しましたが、NPBでのキャリアが異常に浅いがゆえに彼はそのモデルチェンジがそもそも必要ないんですね。ダルでさえ一年目の「適応」・修正に散々苦しんだことを見てわかるように、NPBでの技術を磨けば磨くほど、その環境に順応すればするほど、モデルチェンジは大変になる。大谷が今活躍できているとすれば、それはNPBで実績を残さずにいち早く渡米したという背景が一因としてあると言えるでしょう。となれば、言わずもがなで誰も彼もがいち早くメジャーに行きたいとなって、NPBの構造が壊れてしまう危険性が高まるわけですね。故に今回の大谷ケースは「ズル」に値すると言えるわけです。
 また、最終シーズンでろくに働かなかったのにポスティングという事態で考えられることは今シーズンろくに働けない見通しが立っていたという線ですよね。どうせ今年もろくにプレーできない。だったら居ても居なくてもおんなじだから、その分いち早く向こうで準備・適応のために権利を認めた。そういう筋書きだったらやはりまだ納得する余地はあったものの、今回の大谷の活躍でその線もなくなった。故に大谷の活躍・プレーを見て非常に複雑な気持ちを抱くことになるわけですね。

大谷の無知・ワガママは周囲に良き助言者がいなければ当然   
 彼がNPB・日本野球の長い歴史・背景を知らない現代っ子ということなんでしょうね、こういう価値観・行動をするのは。だからといって、個人的に「大谷!てめえ!何考えてんだバカ野郎!!」と言う気になれないのは、大谷翔平の年齢・高卒6年目の24~25歳なら、まあそういうものだろうなと思うからです。
 野球漬けの人間が高い知識・教養、深い知見を持ち、プロ野球の歴史に精通していることなんてまずない。野球選手としてだけでなく人間としても素晴らしい!なんてことあるはずもない。他人から言われたことをそのまま鵜呑みにしてしまうだろうなと思うからです。まず、本人の何が何でも「メジャーに行きたい!」という思いがあって、それに寄り添う人間の佞言。「こうやれば最もリスクが少なくメジャーへ行けるよ」という甘い囁きにコロッと参ってしまうのは自明の理だと思いますから。*3
 せめてもう一年残留すべきだった。また一年残留するつもりだったが、ファイターズ・球団から要らないと言われた云々の経緯が欲しかった。ファイターズサイドも何の説明もなく5年経ったからポスティングという態度は非常に疑問に思えます。そして5年でポスティングという蛮行に何の問題視もしなかった、新たな年数・実績条件付をしようとしないNPBは大問題だと考えます。
 大谷が一昔前のポスティング制度のように100億円近い値がついて、球団に資金がはいるとでも言うのならばまだ選手を育てて撃ってその資金で更にいい選手を調達する。より安定して強いチームを作り続ける・戦力を維持するという経営なのでわかりますが、今はもう20億円が天井でそこまで旨みがない。ファイターズがやっているのは悪く言えば、メジャーのための育成の肩代わり・下請けと言ってもいい。そんなメジャーの下部機構のようなことを許容していいのか?NPBは野球リーグとしてのプライドはないのか?

追記2、ファイターズの戦略について             
 ファイターズにとって大谷の育成は損、メリットがない。大谷が所属したことで広告・PR、球団のブランド価値の向上という要素があれど、それを補って余りある対価が得られたとは到底考えられない。しかし、当然そこにはファイターズにメリットがあったと考えるべきでしょう。彼らには大谷放出に見合った長期的視点・戦略があったように思えます。
 まず、大谷育成によるレジェンド戦略。大谷というプレーヤーが今後メジャーで大活躍してイチロー並みのレジェンドになる可能性は十分にある。投手としてルーズショルダーで選手寿命が10年ほどなのではないかという話もありますが、投手として100勝ほどしてから打者に専念したとしても、両方の成績で二刀流のパイオニアとして素晴らしい数字を残すと考えられます。そうなるとつい最近までのON=王・長嶋と言った球界のカリスマのような存在、次世代のカリスマとなる可能性が高いわけですね。イチローやダル・田中に次いで、将来元レジェンド・スーパースターとして球界のカリスマとなって君臨することは想像するに難くない。そういうカリスマをバックに球界での発言権を増やす。大谷がGMや監督となった時、大谷さんの下で野球がやりたいという有望選手を指名・FAでの獲得などもありえるでしょう。そのようなレジェンド・カリスマ戦略が一つ。
 次に、メジャーの下請けから始まって、この業務を着実にこなすことで米でもファイターズブランドを確立するという戦略(現にレンジャーズやパドレスと業務提携してますからね)。ダルに引き続いて大谷を送り出した、次は清宮になるのかどうかわかりませんが、今後もメジャーへドンドンスーパースターを送り出すことで、日本ハムファイターズ知名度を米でも確立する。あちらでの影響力を増すことで色んなビジネス展開があるでしょう。それはまあどうなるか未知数な点が大きいので置いといて、ポイントはマイナー非経由選手の育成。
 向こうのドラフト一位のような有望選手、特に二刀流志望の選手を獲得して育成するという戦略が考えられます。過酷なマイナーよりも5年くらい日本でゆったりやって下地を作って、それからメジャーに逆輸入というルートを選ぶ人間が出てきてもちっともおかしくない。全米ドラ一候補をファイターズの手で作ったり、スーパースター候補を育成して将来の彼らのビジネス・マネジメントに食い込むという戦略。日本のファン・日本ビジネス開拓だったり、より安定した環境・コーチングなどの下育成を受けたい、野球がしてみたいと考える米・中南米の選手が出てきて来日しても全然おかしくない。二刀流志望者ならノウハウがあるファイターズで学んでみたいと思うでしょうからね。おそらくファイターズにはそういう戦略があるのだと思えます。
 そう言えば昔、イチローの影響からか日本の安定した環境を選んで来日したマイナー選手がいましたね(マイナー行く前に先に日本に来て何年か二軍に居たんだったかどうだったか?)。その後どうなったか忘れましたが、大して話題になっていないところからすると余り成功しなかったのでしょう。それはオリックスという環境だったことと、日本のコーチング環境・コーチ陣の質は当たり外れが大きいこと。またメジャー環境と日本の環境は異なり、その違いを念頭に育成・指導ができる優秀なコーチが現在のNPBにおいてさえ殆どいないこと。当たり前ですがNPBで数字を残すためのコーチングが仕事なわけで、MLBで活躍するための技術を考える・教える必要性がそもそもないですからね。ファイターズはその場合、NPBで通用する選手よりも、MLBで通用する・MLB技術をも同時に教えなくてはならないので、より優れた指導技術を持ったコーチにその理解のあるフロント人材。指導論・指導ノウハウが必要になってくることになります。
 投手に限って言うと、日本のボールが小さい・操りやすいという点から、実戦積ませるだけでほっとけば経験値が溜まって成長することが可能という背景があります(本人の資質に左右されますが)。また、日本人投手が優秀なためにアメリカを経験した元メジャー経験投手コーチも珍しくない故に彼らから有益なアドバイスをいくらでも受けられるでしょう。しかし対照的に打者はそうではない。優秀な元メジャー経験打者で指導力も備えているとなると、青木だったりW松井くらいだったり自ずと限られてしまう。イチローが帰ってこなければ尚更ですね。まあ松井もヤンキース重視で帰ってくる可能性が殆ど無いようですが。その点をどうするかでしょうね。ものすごい先の話になりますが、そういう時大谷・清宮がファイターズの財産になることは想像するに難くありませんね。ファイターズはメジャーを利用して、阪神や巨人と言った球団をカリスマ・選手指導実績で乗り越えて「球界の盟主」になろうと考えているかもしれませんね(ちょっと球界の盟主というのは違うかな?)。
 またまた思い出しましたが、そう言えばレンジャーズ以前にパドレスと太いパイプを築いていて、てっきり大谷はパドレスに行くものだと思いこんでいましたが、エンゼルスに落ち着いたんですよね、大谷は*4パドレス日本ハムを通じて囲い込んでいたと言えたのに、エンゼルスを選んだ。それは年俸・金額の理由がない以上、条件面での優遇以外ありえない。パドレスの出した条件以上の二刀流起用、投手としても打者としても大谷に配慮するという条件を提案したはずです。くわしいことはわかりませんが、成長段階・過渡期にある大谷に最大限配慮した内容になっていることは間違いないでしょう。一選手のわがままをそこまで聞き入れるとなると相当負担になりそうなものですがエンゼルスはそんな条件をよく呑んだものだと思います。ほぼパドレスで決まっていたようなものをひっくり返すほどの条項・契約内容とは一体どんなものだったのでしょうか?いずれ明らかになるんでしょうけど、気になりますね。パドレスエンゼルスでどれだけ開きがあったのか。

禁断の扉を開いた大谷とファイターズ             
 今後は大谷ケースが続発する。5年でポスティングを認めてほしいという選手が我も我もと出るでしょう。その時に一体どうするのか?ポスティング制度自体がなくなるという話がありますが、そうならずに今後も存続し続けるということで決着した場合、どうするのか?表面上の数字では大谷と遜色ない数字を残す選手は今後も沢山出てくるでしょうからね。ファイターズは5年なのに、なぜうちは7年なのか?それどころかうちはポスティング自体認めていないなんてそんな事おかしい!フェアじゃない!ということに必ずなってきますし。ドラフト上位の有望選手は事前にその条件詰めがなされることになるでしょう。巨人のような球団はそれが故に特定選手から事前に指名を断られるケースもでてくるでしょう。
 また、よくあるケースですが、プロ入りで急成長した場合どうするのか?大谷のような前評判のない高卒選手が大谷並の実績を残した時、成長してメジャーでもやれる選手になったからポスティングさせてと言い出すこともあるでしょう。「どうして大谷は5年で俺はダメなんだ!」ということになってくることもあるでしょう。その時どうするのか?大谷の場合は入団前にそういう交渉をしたから認めた、君は違うからダメということが通るでしょうか?正直、糸井のほうが二刀流の制限がない分ファイターズに貢献をしていた。その糸井はゴネたことで追放され、大谷はポスティングというのはおかしくはないでしょうか?
 大谷は投手、そして安打や本塁打で評価された選手なわけですが、走塁で突出した場合はどうするのでしょうか?年間盗塁で80・90といった異次元の数字を叩き出す選手がいて(Rヘンダーソンの130盗塁が年間最高っぽいので140くらいにしときましょうか)、安打はNPBでも普通レベルだが、嫌らしい小技がうまくて粘って四球を稼ぐのが上手い。打率260~270の微妙な選手だが、選球眼で出塁率4割以上をマークする。守備がうまくてどこでも守れるユーティリティで守備・走塁で間違いなくメジャーでもトップクラスという場合どうするのか?160キロ投げてないから160メートル特大弾のパワーを持ってないからダメという理屈が通るでしょうか?大谷のようなスーパースター以外に、野球では1点を取り、守るためのプレーヤーが非常に重要であり、重視される。長打はなくとも出塁率が高く、ほぼ間違いなく二塁を陥れる選手がいればそれは超重要な選手。世間が球速だHRだという派手な数字に幻惑されやすい傾向がある中、ちゃんとその重要性を理解してそういう場合も、大谷並に特別扱いするのか?
 また、ゴネた糸井で思い出しましたが、大谷の年俸が安すぎるのではないか?という話がありました。正直、通年の数字を見ればそんなに大したことではないので給料として適正、むしろ高いと思いました。大谷というキャラクターがもたらす付加価値・集客&グッズおよび宣伝効果など考慮するともっともらってもという声が上がるのは当然かもしれません。しかし大谷は一切文句をつけなかった。それが5年でメジャーという契約があったからだとするとどうでしょうか?メジャーに最短で行かせてくれるのならば給料は安くていいor最短で行かせてあげるから安年俸で働いてねという取り決めがあったとしたら?これもまた調査・解明されるべきことではないでしょうか?
 
NPBはポスティング制度を明確にルール化せよ         
 とにかく、1選手と1球団で恣意的に決めていいことではないはず。特定球団で自由にしていい、裁量があっていい事項ではない。ポスティングについてはNPBが実績基準を作り、それらに応じて個々のケースで判断するとか、それをクリアしたら選手は球団にポスティングを無条件に要求できるなどといった制度にすべき。球団ごとに裁量権をもたせるとするならば、事前に球団のポスティングに至る条件を明瞭にさせる。また特別な選手、それこそ大谷のような存在が出てきたらNPBが預かる。NPB預かりとして球団の意志にかかわらずメジャーへ行かせることを可能にする制度の導入、特例として対処することも考えるべき。またドラフトではなく、育成環境・方針の話し合いで特権的に所属球団をNPB立ち会いのもと委ねるという方式だって採用してもいいでしょう。なんでもいいですが、とにかくもっとNPBが介在することでルール化・公平性を保つやり方にすることは可能なはずです。
 ダルや田中が巨人・阪神だったら球団がポスティング行使を容認せず、球団と選手が衝突するという事態も起こるわけですから*5。そう言うケースが有りうる以上、本来NPBMLBというステップでいいと考える選手でさえ、そういう球団に指名されたためやはりMLB一本でという誰も得しないケースだって生まれてしまう。また大谷は指名拒否で強行指名でファイターズ説得できたからいいものの、失敗したらどうするのか?第二第三の大谷ケースが発生しないわけではないのに、というか今後も発生する確率は高いのに無為無策でありすぎる。
 
問題・責任の所在はNPBにある。見解をきっちり示せ      
 たまに勘違いする人がいるので*6あえてわざわざ書いておきますが、別に大谷が卑怯者のクズ野郎だという主張がしたいわけではありません。あくまで現今制度と慣習を考えると大谷のやったことはルール違反になるはず。そのルールや制度自体に疑問や違和感があるにせよ、それならばそのルール違反を許すことはおかしいし、疑問の声が上がらなければならない。ところが大谷ケースはNPBにとって重要な判例になるはずなのに何もしないし、今後のためのルール作りもしない。大谷という選手任せ、ファイターズという球団任せ、その都度その都度の場当たり対応、なんだこれは?こんな馬鹿なことやっていていいのか?ということなのです。一機構としてこんな場当たり的な対応が許されるのか?何がセーフで何がアウトなのか?どこまでが許されてどこまでが許されないのか?全くわからない。大谷が5年で渡米した。第二の2nd大谷が大卒・社会人で出てきて今度は大谷並の実績をフルシーズン出場を達成して3年で残したら3年でのポスティングすら許容範囲なのか?
 もうNPBがキッチリルールを作って統一的なルールを設けなくてはいけない。そういう時代になった。いい加減NPBがなんとかするべき。アマチュアとの二元機構状態を解消して、統一的な野球機構を形成して、アマチュア選手の保護・強化育成を考えるべきだし、海外市場を見据えたマーケティング。韓国・中国・台湾・オーストラリア…などを視野に入れて海外選手枠の受け入れ拡大や、球団の増加、移籍活性化のためのレンタル移籍制度などなどやるべきことはいくらでもある山積み状態なのに何ら改革を行おうとしない現状は見ていてクレイジーとしか言いようがない。停滞・衰退する腐朽組織の様相を呈している。せめてポスティングのことくらいちゃんとやりましょうとなぜならないのか不思議でしょうがない。
 
NPBは何もしない。死んでいるのと同じ。いち早く再生せよ   
 そもそもNPBという機構が決定権を持つコミッショナーの下で、一元的にプロ興行を発展させていこうという当たり前の経営が実現できないようになっている。規則はあっても実際は実現不可能なように手足を縛られ、経営が事実上死んだようになっている。この異常事態をいい加減なんとかしようとメディアが指摘しないのは異常でしょう。*7
 今の状況だと、その都度の選手や球団の対応というケースバイケースで行き当たりばったりになる。というかもうなっている。そんなことでいいわけがない。ガバナンスなき組織機構がどうなるか?待っているのは衰退と破滅、ただでさえ野球人口・日本の人口が減ってシュリンクしているのにどうするのか?座して死ぬのを待つのか?日本野球機構。変化・改革をせよ。心あるものは動け、魂あるならば感じ取れ。そんな訳のわからない警鐘の一文を最後に書いて今回はおしまい。

追記3、田澤ルールについて
 分割したのでちょっと文量バランスがおかしくなったのでおまけでこんな話を。田澤がマイナー落ちして、NPB復帰も選択肢の一つではないかという話が持ち上がった時、こんな記事(今こそ田澤ルールを見直すべきではないか?(菊地慶剛) )が出てきました。ツイッターなどで反応を見てもそれに賛同する意見ばかりでした。こういった主張・流れも個人的に疑問に思うところです。まだNPBは改革の端緒もつけていない。スタート地点にすら立っていない。改革が完成してもはや規制も必要なくなった。そういった時点で初めて、体制に逆らったいわば「咎人」への「恩赦」も実行すべきでは?という話になってくるはず。時代も変わったのだし、もういいでしょう、そろそろ許してあげましょうという話になるはず(ですからなによりもまず先に、NPBガバナンス改革を訴えないといけないですね)。
 ルール破りについての感覚がおかしいのではないでしょうか?あえて罪人みたいな書き方をしていますが、そういう思いがあるからそうしろというのではなく、球界のためのルール・規制なわけですよね。だったら、そのルールを破った以上、罰則を受けるのは当然でしょう。
 形式論理上というか、球界の構造・ルールを考えた場合、そういう罰則が下って当然。むしろ個人的に2年というのは短いし、罰則として非常に弱い。MLB行きの抑止力としては非常に弱いと感じます。本来の保護規制としての意味合いを考えるならば、黒い霧のように球界追放&プロアマ日本野球全体からの追放というのが筋ではないでしょうか?そうでなければ抑止力として成立しない。罰則が弱すぎるなら何のためのルール・規制なのかイマイチわからないでしょう、何なんでしょうかこの中途半端なルールは。
 無論、前述通り、このような歪な状態を許していいわけではなく、ルール破りには厳しい処置を設ける一方、改革を進めて実力あるものなら誰でも一早く行かせて大丈夫な球界になるようにすべきだし、海外FAの短縮・平等化ということも進めるべきなのでしょうが。本来すべき改革が全く進まない以上=片手落ちである以上、こういう中途半端な規制になるのも致し方ないということでしょうか…。
 そりゃ選手一個人のことを考えれば、田澤選手がNPB復帰したいというのであれば認めてあげたいとは思いますが、では今後田澤選手のようにポンポン有望な選手があちらに行ってしまったらどうするのでしょうね?その事をちゃんと考えて、NPBの空洞化問題を本当に踏まえて田澤ルール撤廃を主張しているのでしょうか?撤廃論者の人たちは?
 あと、田澤ルールは田澤選手のあとに出来たので、本人には適用されない云々という話もあって、色々面白そうなところなのですが、結局はNPBの裁量次第ということになりそうです。仮にOKを出したとしてもあえて火中の栗を拾うように獲得に手を挙げる球団があるかと言われるとどうでしょうか?個人的見解ですが、田澤選手自体は多分、ルールを破って渡米した以上、覚悟を決めていると思いますけどね。どうであれNPBを蹴って渡米した・MLBの道を選んだからには、ここで骨を埋める。そういう覚悟を持ってやっていると思うので、本人の意志表示もないうちに撤廃云々という話をしても迷惑になるだけではないでしょうか?
 中には変なのが、「あれだけワガママ言っておいて悪くなったら日本に帰りたいだとふざけるな!!」なんて言って因縁つけるでしょうからね。アマ関係はわかりませんが、大学・社会人の関係者に迷惑がかかったでしょうし(ググったら高校→社会人なんで大学はないですね)、それこそ星野仙一のような大物が「わしが関係者に話しつけてやるから帰ってこい!わしが全部面倒見てやるから気にするな!」とでも言ってプロ・アマ各関係者全方位に話をつけでもしないとNPB復帰は無理ではないかと思いますね。
アイキャッチ用画像

*1:

*2:「適応」という重大な概念については過去に解説したのでこちらを参照下さい―メジャー移籍する選手の「通用」する・しないは、「活躍」の間違い 

*3:大谷が良い人に恵まれていないんだろうなと思わせる要素はいくつかあって、こういうメジャー移籍の決断を止める人が居なかったこと。そしてメジャーで一時故障離脱した時、個人として専属トレーナーを雇っていなかったということ。
 あれ程の選手であればお金に困ることはないはず。あっても将来の投資として絶対自身の体のケアのために専属トレーナー・コンディション維持のための身体調整の専門家を雇うべき。無論、天才・達人的な専門家が急遽専属として渡米してついてきてくれるということは考えづらい。しからば5年契約くらいで色々な専門家を複数人雇うことで専属チーム、チーム大谷を形成する。チーム大谷で情報を共有して、交渉連絡役が国内のコーチ・トレーナーと連絡を取り、必要に応じて来てもらったりオフに日本で調整をしたりする。そういった高度なバックアップ体制・専門家集団を形成するはず。単身渡米は必ず失敗する。優れたバックアッパーの存在が成功には欠かせない。身体ができあがってなく、未知の二刀流で故障リスクが大きい彼ならば尚更。野球に専念するために通訳・調理師・メディア対応などをこなす存在が彼には不可欠。そのためにチーム大谷を形成するのが当然だと思っていたので、専属トレーナーすら居ないというのは非常に驚きましたね。今後も大谷はちょいちょい故障する、予想外の事態に躓くことが考えられますね、こういう事前対応の準備ができてないことを考えると。

*4:大谷とパドレスを繋ぐラインは非常に豊富で、まずパドレスだと思われていました。以下その材料です。ググれば簡単に探せる話ですが、一応。大谷を追っていたドジャーススカウトが買収云々騒動でパドレス入りしていた。旧ドジャースでアジア担当を務めていたエーシー興梠氏とスカウト部長のローガン・ホワイト氏、この二人が大谷を追っていた。旧ドジャース元オーナーもフロントに入ってドジャース日本人コネ野茂・斉藤・石井をパドレスに繋いだ。そして野茂と斉藤は実際にパドレスのフロント入り(野茂の長男は日ハムの通訳)。パドレスSAランディ・スミスが日ハムのスカウトディレクターを兼業。パドレスのグリーン監督は元日本ハム選手。地元放送局解説者が元日本ハムのスウィーニー。元日本ハム中嶋聡や金子打撃コーチがパドレスにコーチ留学。コンディショニングコーチ中垣征一郎もパドレスに移籍。移籍を想定して、パドレスは6人ローテやベタンコートという選手に二刀流をやらせる。言うまでもなくアメリカでのキャンプ地がパドレスだったことなどなど。

*5:ダルや田中クラスの選手を巨人・阪神で育てられるはずないだろ!というのはまた別次元の話、可能性の話ですからツッコまないように

*6:というか、そういう文章を読めないバカに限って、いちいち書かなくてもいいクソコメをつけてくるので、毎回わざわざこういうことを書いておかないといけないのですが(怒)

*7:このような状態、NPBが頭としての経営機能が死んでオーナー集団の寄り合い・友愛団体、仲良しクラブのような存在になっているのはプロ野球がつい最近までビジネスとして殆成立しなかったからという背景があります。パ・リーグの試合は観客より選手・関係者のほうが多かったという時代がつい最近までありました。高校・大学野球こそ野球でプロが二次・三次の存在であった時代ですらあったといいますし、巨人を中心とした試合しか興行として成り立っていなかった歪な時代が長かったのですね。ところが今は新規参入の球団を中心にビジネスとして成立する横並びの時代が来ました。巨人と阪神、そしてせいぜい中日くらいの時代から、今や人気ご当地球団は多数。巨人抜きにプロ野球は成り立たないという時代から確実に変化するようになったんですね。その先に考えられるのは、さらなる球団拡大・新規参入による黒字ご当地球団が誕生することで既存システム維持派と変革派の図式・パワーバランスが変わる。巨人や阪神といった守旧勢力は発言権を失い一人気球団としてしか存在し得なくなる。究極的には不健全な報道関係会社の追放ということすらありえる。それによってNPBの健全化が図られることになるので、球団拡大・新規参入というのは非常に重要なポイントなんですね。NPBの将来・滅亡と繁栄をわけかねない一大分岐点と行ってもおかしくないテーマなんですね、実は。