別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

怪物逸ノ城の快進撃

 新入幕で100年ぶりの優勝をするか?と言われた怪物逸ノ城。朝青龍引退後相撲を見たことがなかった己が、久々に相撲を見ることになりました。ただ強いだけ、というか、新人が「勝ち続けた」というだけなら、特に興味は持ちませんでしたが、彼は存在が少し違いますね。

 つべで5番くらい映像があったのでチェックしたのですが、下手くそですね。己が彼に惹きつけられたのが相撲の結果を流すニュースで、誰とやったかわからないのですが、組み合ってから足をせわしなく動かし続けていた映像ですね。かの双葉山は四ツになってから、せわしなく足を動かし続けていた。それにより重心コントロールをして、相手に自分の中心・重心がどこにあるかを悟らせなかった。それこそが彼の強さの秘密だと高岡さんが言ってました。

 弟子の大卒力士に映像を見せたら、そんなことやったら、あっという間に転がされるか押し込まれてしまうと、それを見て現役力士がびっくりするほど常識と異なるわけですね。よほど下丹田や軸が出来ていないと出来ないわけです。巧みな重心コントロールという裏付けが双葉山にはあって、それが強さの秘密だったわけですね。

 白鵬双葉山を目指しているわけですが、彼もそういう重さ・重心コントロールが卓越している力士です。その白鵬でもそんなことは出来ない。ところが彼はそれを現時点で不完全といえども出来てしまうわけです。これはちょっと存在が違うんじゃないか?生まれ持った格が違うなぁと惹きつけられたわけですね。

 大関横綱を破ったとはいえ、四ツで勝ったのもありますが、二番くらい引き落としで勝っています。それが力士としていかがなものか?と批判されていますが、彼の相撲、立ち会いの技術はまるでないのでああいう形になるのは致し方ないことでしょう。プロ入り4~5年でもあれをやっていたら論外ですけどね。

 というか立ち会い変わるというのは弱者の戦法・戦術であって、それが間違っているというわけでなく、本当の実力者は変わる必要がそもそもないんですね。本当に強い力士は、実力差さえあれば、遅れて立っても、余裕で相手を制する事ができてしまうわけです。だから格上が変化するなんて何事だ!というのが相撲界の常識としてあるわけですね、変な美意識だったり、客が見ててしらけるということもあるでしょうけど、それは副次的な話でして。変化して勝ち続けるということは相撲の本質から行ってもありえませんからね。立ち会う瞬間バク宙して相手の後ろに回り込めるとかならともかくそんなこと不可能ですから。

 で、怪物逸ノ城は変わることでなんとか格上に勝ったわけですが、それをフロック・まぐれと見るのは早計だと思います。誰か他の横綱大関に四ツでも勝ってましたからね。で、5番くらい見た相撲と初土俵の相撲かな?そういうのを見るとかれは引き落としがすごい多いんですね。それを多用するのは何故か?おそらく胸を合わせたりで、相手の重心を察知するのが非常に上手い。そしてこちらの重心を相手に錯覚させることが出来るのでしょう。

 双葉山と同じことをやってるとは思えませんが、根本的な技術として相手が押してくる重心をズラして、どこに力を入れていいかわからないような状態にしてしまう。そして相手が更に力んで押したところを、ふっと抜いて相手を空回りさせる。そういうことが出来る、得意なんでしょうね。だから相手が何がなんだか分からないまま敗れることになる。

 立ち会いの引き落としというのは、相手が立ち会いで読みきれなかったとか、偶然の結果というだけでなく、相手を引き込むという立ち会いの技術・間合いコントロールに、「まず引き込みたい」という強い意識が彼の根底にある結果でもあるのではないでしょうか?

 多分、ドカーンとぶつかって、相手がものすごいパワーで力負けして一気にやられてしまったという相撲は少ないのではないでしょうか?全盛期の曙みたいにそういうパワー型の力士だったら、先は見えているのでこんなに興味を惹きつけられことはなかったと思います。引きつける相撲だけに惹きつけられるとはこれいかに。

 もう、彼は入った時から朝青龍の再来と言われてたんですね。さもありなん。確かに怖い顔で似てますね(笑)。ずっと前からデーモン閣下が相撲を覚えたらとんでもないことになると絶賛していましたが、そりゃそうですね。先ほど述べたように、白鵬との一番であっさり立ち会いで形を作られてしまったように、立ち会いの技術がまるでない。これじゃしばらくは白鵬に勝てないでしょう。

 顔を見て、めちゃめちゃ怖いなぁという印象でしたが、普段の映像・しゃべり方だとすっごい優しい感じなんですね。そういうエピソードが多いとか。遊牧民出身、純朴な田舎青年という感じでしょうか。あれだけの素質があってすぐプロ入りせずに、社会人に進んだというのもそういう感じですね。自信がなかったとか。あれだけの素質&体格で自信がないってどういうことなんでしょうかね?(^ ^;)

 技術が全然ないので暫く苦しむでしょうけど、今後どうなるか楽しみですね。遠藤みたいな髷を結わない力士が出てきた時、長州みたいなプロレスラーが挑戦しているみたいで面白かったですが、またざんばら力士が出てきたのがいいですねぇ。