別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

【山中慎介VSルイス・ネリ戦解説⑤】 予見できた不正を防げなかったJBCと帝拳ジム。厳格な不正防止策を講じよ

 【山中慎介VSルイス・ネリ戦解説④】 ドーピングは体重超過よりはるかに悪質な問題―の続きです。この話分割なので、④書いた時点で殆ど書き終わっていたのに、比嘉大吾の記事を書いていて更新・公開忘れていました(^ ^;)。いつの話だよ、おいィィィイー、半年前の話じゃぁねーかァァアー!(銀魂)ってくらい前ですね。実際にこれ書いたのは4月でした…。まあ公開忘れるのは、いつものことですけどね。他の記事書いたり、調べたり、疲れてやる気なくして放置してたらこのザマよってパティーンです。疲れるとやる気と体力が回復するまで放置しないと書けなくなりましたね、ほんともう歳でブログ更新する気になれなくなりましたね。
 そんなことはさておいて、ボクシング関係の話。ボクシング記事は需要ないので基本的にどうでも良いですね。誰か注目して追っかけてる選手がいるわけでもないので、尚更です。そんな需要ないはずのボクシング記事なのに、何故か比嘉大吾の一件で書いた記事が無茶苦茶伸びました。情報・続報がないので皆さんググるんでしょうが、なぜグーグル先生が拙記事をWiki、公式ツイッターに続けて3番目に持ってきているのか…、謎であります。グーグル先生が拙記事を以って比嘉支援をしているということなのか(いや、チガウ)。
 そうじゃない、そんなどうでもいい話をしたいわけじゃあない。今回書きたいのは、こちらのブログの話・紹介。それを一度拙ブログ内で一度きっちりしておきたかった。俺が出版とかマジ無理じゃね?というブログがありまして、こちらのブログ、ボクシング解説が本当に面白かったので、一回そのことを書いておきたかったんですね。今後いつボクシング関係のこと書くかわかりませんし、今のうちに書いておかないと今後ボクシングの話題は二度とか書かないかもしれないので。
 多分、ボクシングヲタとかファンだったら常識なんでしょうけどね、こちらのサイトは。それくらいボクシング解説が的確で面白い。読んでいてためになることが多かった。書き手の視点が拙視点と重なるところが多いということよりも、書き方がフェアであるというか、わかっているなぁというポイントをきちんと抑えているんですよね。ああ、そこは自分とはチガウなという見方だった時でも(勿論己のほうが正しいという意味ではなくて)、まあそういう見方・視点もあるよねと納得できるし、読み手に対する配慮がある。巷に出て来るボクオタ批判・認識のおかしさの指摘とか、本当納得。話の持って行き方がいいんですよね。
 こんな書き方でこのサイトGoodやね!いいよね!という主張が伝わるかどうかアレですが、ずっと昔にこの記事→亀田兄弟がおもしろいこと始めたぞ!! JBCに6億6000万訴訟? 北村弁護士と強力タッグで損害賠償裁判スタート。日本のジム制度にも切りこむ「亀田兄弟の今後が見えた? これが亀田の進む道。日本ボクシング界の常識をひっくり返せ」―を読んで、面白いなと思ったことがあったんですね。前園が海外クラブからオファーを受けたが、これまで誰も海外移籍をしたことがなかったからどうすればいいかわからなかった。その状況と世界のトップクラスの選手が挑戦できない今のボクシング界は非常によく似ているという話がすごく印象に残っていた。
 だから読んでいて、ああこの記事書いた人かと、すぐに思い出したんですね。その時、何件か読んでそのままでしたが、今回山中慎介戦の試合解説でググって、亀田戦とか内山高志戦の解説とか、色々読んでものすごい参考になったんで、ぜひこのサイトが面白いよ!凄いよ!と書いておきたいなと思いました。内山高志の敗戦を解説した記事をいつか分割しようと思うも放置していましたが、こちらを読んで、ああそういうことだったのかという気づきがあったので、改めて加筆したいなと思いました。内山高志への特別な思い入れというのも、個人的に重なったので、ますます記事読んでいてこちらのボクシング解説・視点に夢中になりましたね。
 亀田1が、河野戦でいつものようにディフェンシブに戦わなかった理由とか、亀田2が2階級上の相手とまともに戦った。亀田家で一番才能があったという話とか本当に面白かったですね。ということで、万一知らない方がいらっしゃったら、こんな訳わかんないボクシング解説記事を読んでないで、こちらのサイトを参考になさることをオススメします。本当、そこから20件以上、気になった選手関係の記事読みましたから。読んでいて本当面白いですよ、このサイト。*1
 そんなことはおいといて、山中慎介のルイス・ネリ戦で語りきっていなかった話をしていきたいと思います。

⬛再戦での本田会長の問題            
 初戦の本田会長の問題を指摘した次、再戦での問題を指摘したいと思います。先に書いたようにそもそも再戦すること自体がおかしい。するならするで、再戦の条件を厳密に詰めておかなかったこともおかしい。厳しいハードルをクリアしない限り再戦を認めてはいけなかった、この時点ですでにネリの違反行為は見逃されたようなもの。この時点で今回のネリの暴挙を食い止められなかったのですから、もうアウトですね。
 「引退させるつもりだった」「やるならネリとの再戦しかない」など、なんで本人の意向を飛ばして会長が発言するのか?という疑問・違和感もありましたが、とにかく再戦をすることになりました。しかし、実のところ、この時点で山中が勝つという予想を立てた識者は殆どいなかったんですね。ネリが卑怯者・反則野郎という事実をおいといても、もう山中はネリには勝てないだろうというのが前提・常識としてあったのです。
 試合を迎えた時点で35歳という山中の年齢を考えると、まず勝てない。ネリ戦の前にすでにもうピークを過ぎた兆候は幾つも出ていて、防衛記録を作ることが目的になっていた。その目的のために最後の試合をするという流れが最初のネリ戦の時点ですでにあった。勝っても負けても引退という話が囁かれていたくらいですからね。ネリがドーピングをしていなくても、本当に山中が勝てただろうか?という事を言う人も出てくるくらいですから。*2

⬛再戦で敗れた側が勝つのは難しい        
 亀田和毅や山中自身のモレノ戦。そして内山のコラレスとの再戦などを見てもわかるように、再戦・ダイレクトリマッチで勝利するというのは非常に難しい。一度負けた相手と間を開けずにまたやって勝つというのは殆どありえない。そこに山中の衰えという要素を考慮すれば、山中サイドはマイナス要素が増す一方なのに対して、ネリサイドはプラス要素しかない。一回り若いネリは調整失敗以外は、練習して新しい技術を身につけて成長するプラス要素しかないですからね。
 内山戦の解説で書いたように、これまでのスタイルとは別の特別な戦法・技術やファイトスタイルの転換が求められる。そういう特別な対策・戦術でもない限り勝つ目はない。これまでしたことがないインファイト・接近戦の練習をしたと報道されたように、そういう認識はあったのでしょうけど、正直それくらいでは全然足りない。山中は本来右利きだが、左で箸を使う・文字を書くというような両利きと言っていい要素があって、それを活かすために両利きスタイル。サイドチェンジ・スイッチをする。また縦系のパンチ、ストレートが持ち味なわけですが、それを主体にするのではなく横の動きで回りながら戦うとか、根本的にこれまでやったことのないことをするしかない。*3
 辰吉がウィラポンと闘うには最初のエンジンがかかる前、早いラウンドで勝負をつけるしかないということを言っていたように、またガッツ石松だったか誰か忘れましたが(輪島だったかな?)、数少ないダイレクトリマッチ(もしくはリマッチ)での勝利の経験があったチャンピオンが語るには、「同じように戦ったら絶対負けるから、初めの数ラウンドで全力を出し切るくらいの勢いで行かないといけない」と語っていたように、負けた側は同じようにやったら絶対に負ける。電撃戦位の感覚で、最初の4R以内で必ずKOする。後のことは知らない。後は野となれ山となれくらいの大胆な戦術が必要となる。相手の強さは前回の試合で大体わかった。相手の癖・スタイルもわかったから、次はこうやれば勝てるなんて言うのは絶対やってはいけない態度。なぜなら相手もそれを踏まえてさらなる対策を練ってくるからその対策がハマることは考えにくいからです。この誤りを犯したのがまさに山中に返り討ちにあったモレノでしょうね*4
 まあ、そういうダイレクトリマッチの鉄則をおいといても、まず衰えた山中は勝てなかったと思います。山中は勝つことが目的ではなく、再戦すること自体が目的のように映りましたから。

⬛KOされた側はそのパンチを過剰に意識して劣勢になる
 本来、あそこで負けた時点でもう終わり。しかしドーピング疑惑が持ち上がったために、そういうケチがつく敗戦は認められない。だからもう一度やらない訳にはいかない。そういう動機からの敗戦濃厚でも試合に挑んだと類推出来るのですが、一度負けた相手というのはパンチの恐怖が染み付いてしまっているので無理があるのですね。どうしたってKOされたパンチを過度に意識して戦わなくてはいけない。
 内山のように見えなかったパンチをマークして、手数・パンチの種類を制限されたり、積極的に行くべきところをどうしてもディフェンス重視で前に出れなかったり、手が出せないということになってしまう。もらったパンチをあとから映像で再検証したりして、どうしても特定のパンチをマーク・過度に意識する。そうしなくては戦いにならない。勝利した側は相手がそういう風に意識してくれるのなら、その意識を利用して他のパンチを当てればいいので、戦いを有利に運べる。そういう図式が成立するので、敗者は勝負する前から不利なんですね。それこそ一ヶ月・二ヶ月位で間が空かずに再戦できればいいのでしょうけど、一年近く間が空いて対策をしっかり練れば練るほど警戒する意識は無意識レベルにまで染み込んで却って過剰反応を引き起こしてしまうでしょう。
 本能で闘うタイプ、学習などをあまり必要としない闘争本能全開で闘うタイプならその点問題ないのですが(学習能力が低くて試合ごとに相手への対策があまり上手く出来ないという問題点は別に存在しますが)、日本のボクサーは基本、アマ上がりの優等生タイプばかり。ボクシングではなく、殺し合い感覚で挑んで相手の耳を噛み付くようなタイプは滅多にいないので、まずダイレクトリマッチは無理だと考えたほうがいいでしょう。

⬛敗北必至の戦いに挑んだ山中の意識とは?     
 やっても勝つ目は殆ど無い。ではどうしてそんな無謀なダイレクトリマッチをやるのか?それは山中自身の個人的な思い入れ。彼のボクシング人生の集大成のため。キャリアの最後を飾る引退試合・節目としてでしょう。卑怯な行為で敗れたとしても、再戦をしない訳にはいかない。自分を破ったということは強いことには違いない。最後に満足行く強い相手は誰かと言えばネリだったということですね。負けた相手にやり返したいという動機もあるでしょうし。
 ※追記、てっきりそういう意識だと思っていたら、後日見た映像で、長谷川穂積元王者がスパーリングパートナーを買って出て、スパー後のインタビューで「今回の試合の勝率は5分5分だと思う」と言うワンシーンがありました。これを見て正直違和感しかありませんでした。まあ、これから試合をするという本人に向かって、「お前、絶対負けるぞ」なんて言えるわけ無いですから、リップサービスだとしても、勝つ確率は2:8、どんなに多くても3:7。普通に考えたらどんなに多くても、山中が勝つ確率は30%というところでしょう。敢えて多めに見積もって鼓舞したというよりも、その当たり前のことを、山中も長谷川も解っていなかったのでは…?という疑問があります。今回の事件で体重超過やネリという卑怯者が注目されたわけですが、実際体重超過をしなくともネリ優位は揺るがなかったでしょう。なんでそんなことをわざわざしたのかな?と逆に疑問が生まれるくらいです。
 前回はクスリの力があった。今回はクスリがつかえない。故にパワーで押しきれない危険性がある。だから体重超過で勝ちに行ったと考えられるわけですが、前述通り反則・ドーピング込みで戦ったという過程はどうあれ一度勝っている。そのイメージがある以上、年齢を加味してもネリの絶対的な優位は覆らない。山中がネリの踏み込んでからの右ストレート・右フックに対応できるとは思えない。
 そういう前提を考慮すると、帝拳サイドが対策を怠ったこと以上に、ネリサイドがそんな馬鹿なことをしたのはなぜなのか?ということになるわけですね。日本ボクシング界で有数の帝拳ジムに喧嘩を売る暴挙もそうですし、まず普通にやっても負けないでしょう。それほど山中のポテンシャル・スーパーというかスペシャルな世界王者としての底力を警戒していたということでしょうか?まあ単純に本人と陣営がバカなんでしょうけど、そういう卑怯な行為に出させた山中というのは老いたと言えども相手を恐れさせた、死せる孔明生ける仲達を走らす的な価値があったとも言えるでしょう。逆にネリが山中というボクサーを恐れた結果、最大限敬意を払ったとも見ることが可能なんですね(一応は)。

⬛大和氏をセコンドから外すという選択で結果は既に見えていた 
 話を戻して、山中と長谷川の認識の話。事前の認識・戦略が間違っていれば困難な試合に挑んで勝てるわけがない。そんな話は今更なのでどうでもいいとして、ポイントはセコンド・トレーナーを変更したこと。これですね。前回書いたように共に歩んできたパートナー、相棒を大事な最後の試合で見捨てたこと。これが本当に疑問というか、個人的には許すことの出来ない・看過できない決断でしたね。前回述べたように、世界中の誰がやれたと言ったとしても、セコンドの大和氏がダメだという判断を下したらもうアウト。そういう信頼関係のもとでボクサーとセコンドは成り立っているはず。戦う上で自分の拳以外、誰よりもナニよりも信頼して任せる大事なパートナーであるセコンドを信頼できない時点でもう無理。そういう基本が出来ていなかったこと。セコンドとの関係を築くという当たり前のことが出来ていなかった、この時点でああ、もう絶対無理だろうな、奇跡は起こらないだろうなと思いました。最後の最後に出る力というのはこれまでの積み重ね、それを直前で否定しているわけですから何をか言わんや。何より失礼でしょう、これまで共に歩んできた裏方に対して。失敗・敗北にはすべからく理由がある。故に個人的には何の違和感もない結果でしたね。

⬛図らずとも注目すべきリボリオ・ソリス体重超過事件   
 あと長谷川さんなのですが、体重超過でネリのことを批判していたんですが、亀田大毅の時は「負けても王座なら試合をする必要はない。JBCよ正しい道に導いてくれ」ということをブログに書いていましたよね?王座維持自体について疑問を唱えるのは良いですが、ソリスの体重超過&大幅増量という反則・卑怯な行為について言及せずというのはおかしい。それならば今回のネリを卑怯だ云々いうことは出来ないはず。ソリスは良くて、どうしてネリはだめなんでしょうか?ちょっと理解できないですね…。
 図らずとも今回のネリ事件で、亀田大毅のソリスの体重超過事件に再注目せざるを得なくなったわけですが、ソリスは1kgオーバーして当日更に6kg増量して、大毅とは3.5kg差あった…。大毅は2階級上の選手と試合したわけですね、これはヒドイ…。当時、「何だつまんねー試合しやがって、だめだこりゃ、将来性ないわ」とか思ってましたが、明確な体重差・パワー差があったわけですね。そりゃそうなるわ…。大毅くん、ボロカスに言ってごめんなさい(>人<)。IBFの立会人が、負けても王座という説明をしたのは、違反相手がIBF規定の4kgの枠を守った場合は負けて王座を失う。しかし、その規定を守れないのならば当然、負けても王座は維持されるという当たり前のルール上の規定だったのでは…?6kg増で二階級近い差がある選手に負けて王座剥奪は普通に考えて可愛そすぎるでしょう。まずありえない話ですよね…。というかよく試合をしましたよね、これ。体重差で二階級上の相手とやらせる決断を下したのは誰なのでしょうか?JBCの問題、亀田ジム承認取り消し云々以外にも、試合を強行した亀田ジムサイドも今回の帝拳ジム同じく、問題ありとして責任を問われるべき失態と言えますね。<まで追記終わり>

⬛勝てない試合≒引退興行をフイにした本田会長とJBC   
 追記して脱線した話を戻して、勝てないにせよ、そういう節目として試合をするということですから、最後の花道を飾る上でしっかり準備してやらないといけない。その準備をしっかりやらなかった。怠った本田会長には疑問しかありません。ドーピングをするような相手ですから、何をするかわからない。今回は試合前の検査でチェックはシロでした。しかし、体重超過という別の卑怯な手段に出てきた。
 ボクシングでは体重を作らないで失格・王座剥奪となっても試合をするというケースが頻発している。王座・タイトルを失格で失おうとも、自身の商品価値を下げないために減量をせずに、体重を超過して闘うというケースが多発している。直近だと亀田大毅の一戦で、負けても王者のまま騒動ですかね?亀田ジムが閉鎖に追い込まれたきっかけで、話題にもなったので記憶している方は多いでしょう(↑で追記したので話の流れがおかしくなってますが、スルーしてください)。
 全く前例のない行為ではなく、そういう可能性も十分にあるだろうなという予想範囲内の反則なんですね、ネリの体重超過は。ただ今回のネリほど体重を明らかにオーバーしてきたケースは珍しかった、非常に悪質なケースだったということに違いはないのですが、問題はそこではありません。
 問題は、このような反則行為・ルール違反が事前に十分想定出来たのにもかかわらず、きちんとした対策を本田会長及びJBCがとってこなかったことにあります。JBCは亀田サイドの説明不足云々などで負けても王座ということの責任を問うていましたが(正確には事前発表との結果の食い違いですが)、それはそれとして亀田大毅VSリボリオ・ソリス戦でそういった体重超過があったのですから、今回のような問題が発生することは十分に予見できた。にもかかわらずその防止・対策に取り込んでこなかったことを我々は決して見過ごしてはならないでしょう。
 海外ではこのような体重超過は危険であり、試合を開催するなんてありえないという指摘をしていた意見がありましたが、そのとおりでしょう。こんな危険な行為を認めるなんてどうかしているとしか思えません。岩佐選手がボクシングという競技への冒涜だと憤っていましたが、そのとおりでしょう。そしてこういう冒涜を認めてはならない。試合が開催されてはならないのです。帝拳ジムJBCはネリの共犯と言っても過言ではないでしょう。

⬛運営側には不正を許す余地を残していた・放置していた責任がある
 テレビ中継があるから、山中の最後の試合だから中止するわけにはいかなかったという言い訳は成立しません。むしろテレビ中継があるからこそ体重超過でも不成立・キャンセルになることはないと見込んだ犯罪者にその状況を悪用されるだけです。アメリカではキャンセルの際に発生する損失に対して保険をかけられるようになっているといいますし、そういった対策をきちんと模索して然るべき対策を講じておくべきでした。
 日本ではそういう保険契約が成立しない可能性はもちろんあるので、相手サイドに体重超過の際に重い罰則を課す、体重超過をしたら間違いなく負けるようなハンデを課すようにするなど。いくらでも対策は考えられたはずです。
 個人的に、犯罪者につけ入るスキを多分に残したガバガバ警備体制を取って、財宝を盗まれました!と文句をつけている様に映ります。そりゃ盗んだ泥棒が一番悪いに違いはありませんが、管理者・責任者として、泥棒に盗まれて当然の体制を敷いたトップの責任は大きい。この責任を追求しなければ何度でも泥棒に入られて財産を盗まれることになる。そうやって業界全体が腐敗して消えていくことは想像するに難くない。ボクシング界全体、WBCJBC、そして本田会長の責任は極めて重い
 そもそもなんですけど、ジムごとに放映局の縛りがあるような異常な状態をJBCが放置してきたからこそ、こういう馬鹿なことになる。放映権もそれこそ入札制度のようなものにして、試合の放映権を売ってJBCに収入が入って再配分するようなシステム、業界全体が潤うような体制を整備しておかなくてはいけなかった。そういう当然なされるべき改革を放棄し続けた結果が、今回の一方的な暴力に近い行為≒リンチに近い山中のKO負けという悲惨な事態があるのですから、JBCの機能不全は徹底的に叩かれるべきでしょう。
 放映権をその都度販売する形にすれば、たとえ今回のようなビッグマッチでキャンセルが発生しても、次のビッグマッチで優先的に放映を割り当てるということで補填できるのですからね。いずれにせよJBCの改革の放棄・組織の機能不全が一選手、レジェンド選手のリング禍を招きかねない失態を招いたことを我々はよく覚えておく必要があるでしょう。
 相撲協会が馬鹿みたいに叩かれていますが、JBCの機能不全というのは、ある意味相撲協会よりもひどいんです。内輪の元選手・関係者だけで閉鎖的に運営される組織というものは、ビジョンを持ち経営能力を持つ優秀なトップでも出て来ない限り、正常なものになることはない。優れた改革がなされて業界が健全に保たれることは考えにくい。こういう形態の組織は極めて不健全なものになりやすい。相撲協会JBCもいい加減外部から優秀な人材を連れて来るでもしないともうダメなんですよ

⬛商品価値を高めるためにボクサーは不正を厭わない    
 で、体重超過対策なんですが、リンクにあるようにボクシング界では団体・階級が乱立して、世界王者・チャンピオンというタイトルの価値が低くなった。静岡県で鈴木さんと呼びかけたら、3人に1人が振り返るように、ベガスでハイ!チャンピオン!ハイ、シリ!オッケーグーグル!で呼びかければ何十人(下手したら元王者込みで百人位)も振り返るように、タイトル一つだけでは何ら意味がなくなったわけです。
 なのでボクサーとしての商品価値を高めるために、団体統一チャンピオンや三階級制覇など、少しでも自分の価値を高めようとするわけです。複数階級制覇した王者も統一チャンピオンも今や珍しくない時代。当然それでも突出した価値にはならない。
 現在一番商品価値を高めるのに有力な方法は、KO勝利率を極めて高くしておくこと&無敗をキープすること。そういうレコードを維持しながら、人気選手・商品価値の高い選手と戦って勝つことですね。デビュー戦がメイウェザーというマクレガーのようなことは起こりえないので、ビッグマッチが組めるようになるまで高KO率&無敗は重要なファクターになるわけですね(例外としてオリンピックメダリストというのもありますが、まあ今回は関係ないので置いときます)。
 というわけで、殆どのボクサーは自身の商品価値を高めるためにというより、商品価値を失わないように体重超過で試合に挑むことをためらわないわけですね。プロモーターやテレビ制作者が体重超過の試合は参考にしない、そういうボクサーの試合を組みたがらないという暗黙の了解・ルールを作らない限りはこの傾向は消えないでしょう。
 リンク*5にあるように、当然想定されるのは罰金の高額化・出場停止の長期間化の2つでしょう。それでも世界戦だったり、注目されるビッグマッチ以外はその傾向が進むことはなく、世界戦よりも前の段階で体重超過の不正状況が減ることは考えづらいでしょうね。

⬛体重超過・違反者に有利にならない措置を採るべき    
 で、またそもそも論なんですけど、体重超過クソ野郎と試合をするのならば、今回の再戦のような58kg契約にしてはダメなんですよ。山中が以後の体重管理・食事などは自由でOKにさせておく一方、ネリについては以後医者の指導の元、必要最小限の水分・食事以外は許さない。山中が58kgなら、ネリは54kg前後のフラフラ状態で試合をさせなければ意味がない。何度でもいいますが、なんで体重を作ってこなかった方が損をするのか、契約を守れないどころか意図的に契約破りをするようなクズが得をするようなバカなシステムを採用しているのか理解できません。
 健康状態に問題がでてきてしまう。それこそ山中が半病人のような状態の選手を一方的に殴りつける行為を好まない。後味の悪い思いをしたくないというのもあるでしょう。また、それこそ防衛記録など何らかのレコード記録更新がかかっていた試合だったら、後日必ずケチが付きますからね。記録更新は偉大だけど、相手がリミットオーバーでボーナスゲームのような状態だった試合で新記録達成して果たしてどれくらい価値があるのか?と言われてしまいますからね…。それこそ亀田の防衛記録のように弱いやつとばっかりやって、防衛回数伸ばしても…ということになってしまいますから。そういうことを言われたくない以上、相手の実力を必要以上に制限するようなハンデキャップマッチは被害者側も嫌がるという性質もある。自分のパンチで相手に怪我や障害を与えかねないという競技の性質を考えると尚更ですね。
 グローブを大きくするなどの対策もありますが、そこまで意味を持つか疑問ですので、リストやアンクルに重りを付けて動きを制限するというのも考えられるでしょうか?まあ、実際やってみてもらわないとどれくらい有効かわかりません。一番いいのは被害者側がヘッドギアやボディへの防具・プロテクター着用でしょうか?相手の能力を削ぐのに効果的な方法があまり見当たらないですからね。それこそ逆ドーピングで運動能力を落とすクスリを服用させるというのも倫理的にも健康的にも問題でしょうから。
 今回バンタム級でリミットオーバーを犯したので、バンタム級以下では以後戦えないというルールが最も好ましいでしょうね。一度でもリミットを作れなければ、以後その階級での試合禁止となれば罰則としてかなり効果的になるかと思います。ウェイトを作ってこれないということはそもそもその階級でやれる身体ではないということですからね。*6

⬛ボクシングを体重増やし・戻しゲームにするな
 昔書いたんですけど、そもそも体重制がフェアといえるものなのかどうか疑問が残る。身長はまだいいとして、リーチがものを言う競技で、なんでリーチ差は許されるのか?明らかに体格の違う選手が試合することがたまに見られるが、それはいいのか?そういう疑問が必ず出てくる。
 身長もリーチも調整しようがないから、体重で階級を分けることが一番簡易。やりやすいしわかりやすいということでそれはそれでいいかと思います。しかし、計量後の明らかに度を超えた増量は問題がある。我々はネリの体重超過で忘れていることがあるのですが、山中の試合当日の体重は59.2kgで、ネリが60.1kg。その差が900gしかなかった云々という見当はずれの指摘もありましたが*7、ポイントはそこではなく、この二人の試合直前の体重は4階級上のライト級に相当します。「じゃあさ、二人共ライト級でやれよ」という話になるでしょう、普通は。
 もちろん、ライト級のリミットではないのでスーパーフェザーが適正になるのでしょうが。計量後に8kg近く増量して試合に挑むというのはやはり違和感がある。ひどい場合には10kg近く増量してくる、別人になって出てくるという話もあるくらいです。テレビで亀田和毅が「あれ、誰こいつ?お兄さんかお父さんが間違って出てきたのかな?」と冗談を言ってましたが、一回りどころか二回り大きくなって別人のようなボクサーの絵が紹介されていたので上の階級に行けば、それこそ15kg再増量して試合をする選手もザラにいるのでしょう。*8
 こういった前日計量をパスしさえすれば、あとはやりたい放題という状況はやはりおかしいでしょう。ボクシングの勝負・技量勝負というより、体重増やしゲーム・内臓頑丈勝負になってしまっている。ある程度そういう要素が入ってくるのは競技の性質上仕方ないにせよ、これでは体重増やし大食いゲーム大会要素が強すぎる。IBFが再増量は4kgまで、つまり二階級上までというルールを採用していますが、これを見ると4団体の中で一番フェアだと言えるでしょう。しかしこれでは十分とは言えない。ボクシングの現状を考えて過度の減量&再増量は禁止すべき、統一ルールを作るべきですね。別に下限がいくらでもいいと思うんですが、4kg以上の減量が禁止というリミットが出来れば、今回のような騒動はそもそも起こりえないわけですからね。ボクシングは減量・再増量のリミットを設けよ、これが結論ですね。健康面の問題も考慮して、一体どのくらいの数字が適正なのか、試行錯誤して基準を設けてルール化すべきでしょう。

 関係する話のリンクを下に貼っときます。デイリーの記事にあるように、帝拳ジムが再戦ビジネスの利権に目がくらんだと言われてもしょうがない失態ですよね、今回の事件は。
 どうでもいいことですが、リンクにも貼ったこの記事のサムネ。

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この山中の手を掲げているネリがポプテピのこの絵のポプ子と被ってしょうがない(笑)。「私のために、争わないで~」と言ってるように見えてしまう(笑)。そんなどうでもいいことを最後に書いて、この話おしまいです。

*1:ただコメント欄がないんですよね、ここのサイト。亀田和毅が身長157センチという?なものがあったので、コメントで教えてあげたいと思ったんですけど、出来ませんでした。167センチをタイプミスしたのか?175センチと思いこんでいたのを逆に書いてしまったのか?どうなんでしょうか。Wikiだと亀田和毅は170センチでしたね、もっとあると思っていたらそんなサイズだったんですね、3男は。

*2:ドーピングなし=パワーダウンしていた時点でどのくらいの差が生まれるのかわかりませんが、試合を決定づけたネリの左にスイッチしての右ストレート・右フックの対処が出来たとは思えませんからね、事前にその対策を十分にしていないかぎりまず対処不可能だと思いますからね

*3:個人的にストレート=縦系のパンチ、フック=横系のパンチという分類をしています

*4:また逆に勝つために、ダイレクトリマッチのセオリー通りに、より積極的に打って出ていって、その分返り討ちにあったと考えることも出来ますね

*5:山中×ネリ戦の教訓。ふざけた体重超過ボクサーを、どう懲らしめるか

*6:ーということを考えていたら、【比嘉大吾体重超過事件】 無期限資格停止処分だと!ふざけるなJBC…ってあれ?JBCがまともだと…!? で書いたように、JBCは強制転級措置を設けましたね。ひとまずこれで落ち着くと思いますが、海外選手はどうなるかと言われると…。まあ世界中のコミッションに働きかけて似たようなルールを採用してもらうしかないでしょうね

*7:一旦体重を落としきった選手とそうでない選手ではコンディションがまるで異なる。長谷川も言ってましたが、当日の体重差が900gしかなかったので両者のコンディションにそこまで違いはないという見当違いな記事があったんですね。→さらば山中慎介、「夢以上」のキャリアと日本ボクシング界に残したテーマ 。パワーではなく見えなかったから聞いたという主張から山中の過度な神格化は危険だという指摘があります。それも一理あるのですが、試合前に既に山中は平常心ではなかった。技術以前の体格差≒コンディションの違いによるパワー差を過度に恐れていたように見えました。事実最初の立ち上がりで一発もらったことで怖気づいたように見え、対照的にネリは山中のパンチにパワーを感じないことでイケると余裕を持って詰めに行ったように見えましたからね。「見えなかった」理由は視力の衰えなんかあったとしても間違いなくパワー差による相手のパンチを警戒した上で、カバーしきれない種類や角度のパンチを貰ったということでしょうから

*8:昔、はじめの一歩で鷹村が初世界戦でヘビー級からジュニアミドル級まで6階級落とすというストーリーで感動したものですが、現今ボクシング事情を知るとむしろ超卑怯者に映りますね…。20kg以上試合後に増やして、どう少なく見積もっても10kg近い体重差で自分より小さい人間を一方的にフルボッコにしたということですからね…。近い将来、あれ?鷹村って超卑怯者じゃね?とネタにされるでしょうねぇ…(もうなってるかもしれませんが)。