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身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

佐藤義則・ヨシコーチは優秀なコーチではない。ド無能なドム脳コーチである

野球ネタが溜まってるんで、ボクシングの話を書き終える前に一つ二つ軽い野球ネタを挟みたいと思います。

 書きたいと思っていた佐藤義則ことヨシコーチは優秀・有能なコーチではない。無能・ド無能なドム脳コーチであるという話です。

 優秀な投手コーチと言えば誰という話題で、必ずと言っていいほど名前が上がるヨシコーチ。しかし、彼は優秀な投手コーチではありません。彼は現代野球のセオリーから逆行する古い価値観を持ったコーチ。先発至上主義という歪んだ価値観を持ったコーチであり、チーム・投手陣に負の影響をもたらす危険なコーチです。外から見ているウチはわからなかった、気づかなかったことなので、鷹ファン(?)としてペナントを見る・味方のコーチとして見た時に、つくづく最低のコーチだなと感じたので、そのことを記しておきたいと思いました。鷹派の人間がどういう風に彼を見たのかという視点がなにかしらの一助になれば、これ幸い。
 何故か鷹ファンでもヨシコーチがいなくなるのは痛いといったり、オリックスでとうとう藤井コーチについでヨシコーチが帰ってくるのか!みたいな声があるので、その人達にとっても参考になるかと。ヨシコーチ待望論みたいなことを書いてあるオリファンのブログも見ましたからね。ハッキリ言ってオリックスに来たら混乱するだけだと思います。今年の楽天の投手陣もダメになるんだろうなぁ…。いいリリーフを連投させたり、無理くり先発させたりしてぐちゃぐちゃにさせるんだろうなぁと見てますから。楽天ファンでもヨシコーチの復帰に喜ぶ人半分、恐怖におののく人半分という感じですからね。
 結論を先に書いておくと、彼は①大エース育成をする。②その大エース頼みの、大エースありきの投手スケジューリングをする。結果、エース以外の投手を雑に投げさせて使い潰すというコーチです*1。①ありきの投手コーチなので、鷹での三年間のように大エース育成が出来なければ、どうした佐藤義!一体何のための前進守備大エース投手育成コーチだ!というオチになってしまうわけです。
 ホークスは過去に斉藤和巳という大エースが存在してその投手に頼り切って潰してしまうという過去・苦い教訓がありました。にもかかわらず大投手育成&投手酷使コーチを招聘して昨今の投手事情ですから、学習能力のかけらもない鶏頭フロントと糾弾されてもしょうがないでしょう。
 一年目は吉井コーチという酷使を許さない優れた投手コーチがいて、工藤監督とヨシコーチのクビにしっかりと首輪と鎖で繋いでコントロールしていてくれたのでなんとかなりました。後述する取扱説明書を見事に読んでいた優れたやり方と言えるでしょう。がしかし、吉井コーチという管理人・門番が追放されるとあとは言わずもがな。世紀末ケンシロウの世界のような荒野が広がる惨状になりました。長年パ・リーグのトップを走り続けてきたリリーフ防御率は悪化していき、今年の岩嵜・サファテの離脱という見事な埋伏の毒コーチでしたね。

■名伯楽ヨシコーチ
 佐藤義則コーチと言えば、ダルビッシュ田中将大という日本を代表する投手を育て上げた名伯楽。故に彼を優秀なコーチと評価する声は球界でも数多い。しかし、ちょっと詳しい人なら知っている当たり前の話ですが、実態はそうではありません。偉大な投手2人がヨシコーチを素晴らしいコーチだと褒め上げる故、そういう「ヨシコーチ有能論」とでもいうような勘違いした論説を多々目にするようになったので、一度はっきり書いておこうと思っていました。かくいう己もヨシコーチが来るときには「おお!あのダルと田中を育てたヨシコーチが来るのか!!やったぜ」となったくらいですから、実際目の当たりにしてみないとそういう錯覚を抱く人が多いのもむべなるかな(責任逃れ)。
 ダルビッシュが褒めていた鶴岡というキャッチャーに、佐藤義則というコーチは、実際目の当たりにしてみるとどちらも酷いものでしたね。ダルが褒めるからさぞかし良い捕手・コーチなんだろうと思っていましたが、ダルにとっては素晴らしくても他の選手にとってはそうではないということですね。ダルという唯一絶対の存在だからこそ当てはまる。ダルでなければ無意味という存在・理論、オリジナルならぬダルジナル理論/現象はまだまだありそうな気がします。ダルの話は好きなんですけど、そういう要素を差し引かないといけないんだろうなと最近感じていますね。

■ヨシコーチがプラス効果を発揮するには条件がある
 より正確に言うと無能というよりも、彼が効果を発揮するケースは限られるコーチということですね。負の効果も大きいので、ふぐの調理法のようにしっかりその毒抜きをしなければならないタイプであるということです。まず、彼がその真価を発揮するのはダルビッシュ田中のような大型長身右腕、甲子園でスターとなるような逸材・優秀な素材がいる時に限られます。そういう限られた天才・スーパースターとも言うような選手がいない限り、ハッキリ言って無意味。普通の凡百の投手は大エースだった彼のピッチング理論を吸収して育つことはない。指導が活きることはない。これまでの投手コーチ経歴を見るとそう考えるのが自然。
 松井裕樹は左腕でかつ体格がそれほど良くない。サイズが大きくないためにヨシコーチ理論がハマらなかった。また安楽は言わずとしれた甲子園での投げ過ぎで肩・肘に問題を抱えている。田中やダルに並ぶ優れた素材であっても故障を抱えているような投手に対しては有効な指導法がないことを意味していると考えます。まあ、安楽の場合は指導期間がもっとあれば変わったかもしれませんが、故障持ちの釜田などをお構いなしにかなり投げさせたこと、連投・疲労度なんのそのという投手状態考慮なしの中継ぎ投手起用などを見ると根本的にコンディショニングの概念がないと思わせますからね。

■ヨシコーチの真価を発揮させる取扱説明書
 故に、佐藤義則投手コーチ・ヨシコーチが効果を発揮するのは絶対的なエースを育てること以外ありえないのです。そしてそのヨシコーチが絶対的なエース投手を育てるには
 ①若くしてその名を知られる素材であること。それも球界を代表する投手になるような素材がチームにいること(ダルや田中クラスの超高校級の選手であること)
 ②壊れない頑丈な体を持っていること(もしくはコンディションの重要性を熟知しており壊れないケアが自分で出来るorサポート体制が十全に存在していること)
 ③絶対的な真っ直ぐを持ち、かつ決め球を持っていること(もしくはそれを補えるカウント球をいくつか持っている)
 ―という選手がいることが条件になってくるかと思います。菊池雄星を手がけることでもあれば、超大型左腕は不可能、右腕でなければ無理。右腕限定コーチということがはっきりするのでしょうけどね。そもそも超大型左腕(体格が良くて真っ直ぐが150を超える)というような投手は中々でてきませんからね。*2
 個人的に投げ込み理論・投げ込み指導をする投手コーチというのは好きではないのですが、何故かと言うと、じゃあ投げ込み以外に何をどうするの?と言われた時、有効な指導法・別の引き出しを持たないように見えるからですね(逆に言うと投げ込みが適さないなと思ったら、違う指導法を示すことが出来る引き出しがあるコーチならば投げ込み理論コーチでも構わない・優秀なコーチだと考えるということですね)。
 いずれにせよ彼は選手に合わせて指導法を変えられるという豊富な引き出し・指導法を持つコーチではない。投手に合わせて指導を変えられる広く浅く教えられるタイプではなく、特定の投手にのみ指導が出来る狭く深く教えるタイプ。その狭く深い指導に適する素材がいるか、マッチするか事前に調べた上でないと何の意味もないコーチであるということですね。

■エース育成を期待して起用するならばその危険性を最小限にしなければならない
 また、ヨシコーチはファイターズ・イーグルスと渡り歩いた中、前身の日本ハム楽天で「一人の大エースを育てる代わりにその他大勢のピッチャーを壊しまくる」コーチという評判が定着していました。ベヘリットに生贄に捧げられたとか、SSRを強くするための強化合成の素材にされただとか、まあいろいろ言われるいわくつきのコーチ。
 ということは、あらゆる投手に応じて色んな引き出しを持っているタイプではなく、自分の理論・理想とする限られた投手にしか通用しない諸刃の剣指導・育成をする危険なタイプだというわけですね。ブルペンでも試合でも、とにかく本人の調子やタイプお構いなしに投げさせまくってしまう。その挙げ句多くの投手がその教えについていけずダメになる。指導と育成の両輪のバランスを取ってうまく自転車を走らせることが出来ない。選手を育てることと勝つこと、この二つを同時にこなすことが難しいことは言うまでもないですが、そういうやりくり・操縦が上手くないタイプ。昭和の古い時代の大エースで、その価値観を引きずっている。もしくは自分自身が無茶苦茶投げてきたから、大エースだった自分はこれくらい投げた。だからこれくらい他の投手に投げさせても平気やろ、と現代のセオリー・価値観を無視する。大エースとそれ以外の普通投手と別パターンにして指導法を分けられない。故に、全ての投手に大エース理論を当てはめるのでハマれば大エースを育ててくれるけど、外れれば壊してしまう。というか殆どのピッチャーを壊すリスクを孕んだまじんぎり使い・ダイジョーブ博士。当たればデカイが、外れれば大損害をもたらすリスクがあるコーチなんですね。そういう背景を知れば、こういうコーチは怖くて普通投手陣を一任したり全面的に任せられないと思うのですけどね…。
 鷹・ホークスでの彼を見る限り彼を招聘したメリットはまるでない。中継ぎは先発ができない・先発失格の投手がやるという考えを持っていることからも分かる通り、リリーフのやりくりが下手くそ(というかその重要性すら理解していない可能性もあります)。またピンチでマウンドに行って有益なアドバイスを出来るわけでもないので、一軍ベンチにいてもしょうがない人材。なんで一軍ベンチを任されていたのかわからない理解に苦しむ配置・人事です。*3継投についても、以前書いたとおり「リベンジ継投」という、打たれた相手・チームに積極的にぶつけていくという継投をするという傾向もありますね。一度やられた相手にやり返したいという投手心理だけで、相性を考えて柔軟な起用をして上手く使いこなすということもありませんからね。
 育成では球界を代表する投手を育てた実績があるので、二・三軍での育成を割り当てるべきタイプ、育成を重視した全ての投手に対してアドバイスをする巡回コーチ的なポストがベストなわけですが、どういう取扱説明書を受け取ったのでしょうか?フロントは。一軍と二軍は所詮役割が違うだけで、重要性は変わらない。優秀な選手を着実に下で育てることは場合によっては一軍よりも重要。そういうこともあまり理解していないのでしょうね、彼は。これは個人の問題と言うよりもチーム、球界全体の問題とも言えるでしょうけどね。また工藤監督同じく、「この俺が二軍などでやれるか!」という歪んだプライドを持っているということでもあるのでしょうけど。
 ハッキリ言って育成と管理を同時にこなす吉井コーチと比べると天と地ほどの差がある。彼のような投手を壊して当たり前のような起用・価値観を持ち、チームに害をもたらすタイプを優秀・有能という括りで吉井コーチと並べて論じるのは無理があるどころかハッキリ言って失礼、不愉快極まりないですよね。
 吉井コーチとヨシコーチは手腕はおろかタイプ的にも明らかに別物であるという当たり前のことを、重要なので今一度明確に記しておきたいと思います。

■ヨシコーチが鷹で育てた投手はいない、東浜・岩嵜・千賀・サファテは何の関係もない
 育成でなにがしかの貢献があればよかったのですが、ハッキリ言って鷹の三年での彼の功績はない。まだ未知数の要素が幾分かありますが、先にヨシコーチの指導のおかげだとする勘違いした言説の誤りを指摘しておきます。
 まず、東浜・岩嵜・千賀はヨシコーチとは関係がない。まったくプラス項がないとまではいいませんが、あったとしても微々たるレベルでしょう。東浜と岩嵜は工藤塾でフィジカルトレーニングを工藤が徹底させた成果ですし、千賀はそもそも元からあれくらい投げられる投手。
 千賀の場合は既にその前から下で倉野の体幹レーニングで頭角を現して、何度も書いているように高山ピッチングコーチが酷使して故障離脱した。結果、一軍を拒否して下で体作りや投球フォームなど、イチから自分の信念を持って試行錯誤した。千賀自身の自助努力の成果ですね。そして2015シーズン終盤に出てきたときには殆ど先発投手として完成していた。素晴らしいボールを投げたのはCSや日本シリーズでのヤクルト戦を見れば言わずもがな。そもそも彼の存在が突出して凄かったのはデビューイヤーのオールスターで明らかでしたからね。*4
 もう一つついでに何故かサファテが2017シーズン、去年の劣化からさらに数字を落とすどころか数字を向上させた。キングオブクローザーとなったのをヨシコーチのおかげだという話が出てきたのですが、これも全く根拠が無い話。彼が良くなったのは、自分が7敗したことがチームが優勝を逃した原因だと、さらなる進化を求めてまたトレーニングを改善したからですね。そもそも彼は前任のファルケンボーグと違い、練習熱心・研究熱心なタイプで苦手なクイックにも取り組み、研究努力を怠らないタイプ。故にピークをすぎたはずの年齢でも進化したのですね。五十嵐からナックルカーブを学んだのもそうですし。
 サファテについて言うと、西武から移籍してきた時に守護神を任せてくれた秋山監督*5と、フォークを使うことを勧めてくれた広島のキャッチャー西山とそのフォークでストライクを取ること・カウント球として使うことを教えてくれた細川が大きかったと語っている記事を見たことはあっても、ヨシコーチが何かをしたから~という記事は見たことがありません。少なくとも今のサファテの進化は彼の自助努力・創意工夫によるものであり、ヨシコーチは関係がない。むしろ明確なソースもないのに、どうしてそういう話が出てくるのか疑問に思うくらいです。あったら必ず「ヨシコーチの指摘のおかげで困ったときでも簡単にストライクが取れるようになった~~」とか、サファテの性格から考えて必ず発言するでしょうからね。

■ただしこの先ヨシコーチの評価が覆る可能性はある
 ここまで見る限り、投手育成に何の実績もなかったわけですが、彼は何故か武田の育成を任されていました。また前述の条件に当てはまりそうな高橋純平と田中正義という存在がいますので(ジャスティスの田中の方はウィニングショットがなくて苦しんでいますが)、彼らが数年後に一軍で大活躍して、それこそ田中将大のように今の自分があるのはヨシコーチのおかげと言う可能性は勿論あります。その場合はヨシコーチ効果はそれ相応の代償を払いながらも十分にあった、見返りはあったという評価に当然変わることになります。
 しかしながら、現時点では特に記しておくべきヨシコーチ効果というものはない。期待された役割・投手それも大エース育成という働きは出来なかったというのが妥当などころでしょう。おそらくはその評価のまま変わらないと思いますが、数年後武田・高橋・田中らが飛躍的な成長を遂げてその評価を覆してくれることを願うばかりです。

■ドム脳ヨシコーチよりも深刻な球界のコーチ常識
 ドム脳ヨシコーチと書いたわけなのですが、言うまでもなく彼が他のコーチと比較して突出して無能・ダメコーチなわけではない。これはもうヨシコーチに始まった話ではないわけですね。高山コーチ然り、現監督の工藤然り、阪神からその手腕を買われて招聘された久保コーチ然り、中継ぎを酷使・ぶっ壊す投手コーチというのは枚挙にいとまがないわけです。その代償にリリーフ整備が上手い、大型長身右腕の再生が上手い、変化球を教えるのが上手いなどの諸条件・オプションが備わっているのならばむしろマシ。そのようなDVD購入特典もなく、むやみに投手を使い潰したり下手くそな指導で投手を混乱させるドム以下のザク・グフ・ズゴックコーチが粗製乱造されている、ガンガル投手コーチで球界は溢れかえっているのが現状なわけですね。せめてシャア専用ザクくらいのコーチが出てこないのか?と言いたくなる球界の現状・誤った常識こそ問題とすべきなわけです。
 まともな投手コーチと言われて、元横浜の権藤監督*6と何万回も書いているように吉井コーチくらいしかないのが現状。ヨシコーチが優秀無能以前にもっと日本球界の投手コーチのレベルが低すぎる、投手運用が下手くそすぎるということがもっと話題にならないといけない。Aコーチが優秀でBコーチが無能なんて言っている場合じゃない現実がある。そちらのほうがヨシコーチの実情よりもっと広まって欲しいところですね。
 ※追記、改めて振り返って読むと、タイトル的に釣り気味な卑怯なものになってしまいましたね。ドム脳とはいうものの、それでも結局ダルビッシュ田中将大という偉大な投手二人の育成に大きく貢献した・成果があったということからも、他の凡百の投手コーチと同一視することは出来ない。他のダメコーチらとは大きく異なる。指導方法・起用についていかに欠点・マイナス要素が大きくてもしっかりとした実績があるため、優秀・有能であるという部分までは消し去ることは出来ませんね。副作用があってリスクがあるので、使用する際は医師の指示に従って、問題があった場合には直ちに服用を中止しなくてはならないということ。そういういわくつき・注意事項を無視して手放しで称賛してはいけないコーチだということ。そういうリスクがありながらも、偉大な投手を輩出した手腕は素晴らしいと称賛して終わることにしましょう。アッパレ佐藤義則・ヨシコーチ、グッバイヨシコーチ。フォーエバーヨシコーチ。

■補論、「エース」の話。プロ野球で「エース」に頼るべきではない
 既に書き終わった観がありますが、ちょっと書いていて余った話があるのでそれもおまけで書いておきます。エース重視、エースを主体とする投手起用の話です。
 昨シーズンから試合を殆ど見なくなったのですが、それは試合を見ていて毎回先発を降ろすのが早すぎるから。「こんなところで先発おろしていたら夏場以降リリーフ・中継ぎがへばるだろ。潰れるに決まってるだろう。学習能力ないのか!去年の大逆転・ドンデンをもう忘れたのか、サメ頭!!」とバカみたいな継投を繰り返すのでイライラして見ていられなかったんですね。
 で、毎回六回には先発を下ろすのですが、そんな中なぜか千賀だけ七回まで引っ張るケースがチラホラ見られました。あれ?なんで今日は千賀が七回・八回まで投げているんだろう?と不思議に思ったのですが、おそらく「エース理論」を採用しているからなんでしょうね、工藤監督とヨシコーチは。
 大投手・エースと呼ばれる超一流投手を柱にする。そのエースがイニングイーターとなってチームを勝たせる。エースの日にのみ限ってその日は中継ぎ投手を休ませる日と考える。エースの日に中継ぎを休ませられるから、その定休日を逆算してリリーフを酷使する。そういう発想を持っているんでしょうね、昭和の野球をして来た人達は。

 個人的に「エース」という言葉をあまり使わないのは、高校野球ならともかくプロ野球で「エース」なんて言うものは存在しないと考えているからです。ダルビッシュ田中将大のように完投をしまくり&イニング食いまくり、田中に至ってはシーズン無敗という大記録を成し遂げましたが、あれくらいの存在ならばエースがチームを勝たせる。チームにとって唯一無二の絶対的な存在・大事な存在というのもわかりますが、そういう存在が出るのは稀。昭和の古臭い時代ならともかく五十試合も先発する投手はいないわけです。「エース」が存在することは殆どありえない。であるならば、そのような「エース」がチームを優勝させるというような、絶対的な先発投手信仰とでも言うような思想を持つべきではない*7
 「エース」という価値観を過度に重視すべきではない。先発投手六枚+αに、リリーフ陣。それも七八九回を投げる勝ちパから負けパ、同点パターン、延長に敗戦処理に、左のワンポイントにロングリリーフ…といくらでも役割はあって、その役割をそれぞれこなしてくれる存在が大事なわけです(勿論敗戦処理が守護神より重要なわけはなく、役割の軽重は存在しますが)。投手陣全体の役割、バランスが大事に決まっている。そこに誰か1人大事な投手がいればいいという価値観が入り込む余地は微塵もない。去年・今年で言えば、千賀のような投手がいることは言うまでもなくありがたいですけどね。また、先発が揃うことが大事なのは言うまでもなく、重要なことには変わりないので、「エース」という言葉ではなく、「第一投手」や「先発一番手」という言葉を好んで使っています、まあ個人的な価値観に基づく用語の話なので、どうでもいいっちゃどうでもいい話ですが。
 工藤・ヨシコーチは昭和の古臭い野球観を持っているので、通年単位でのスパン・複数年にまたがって投手陣を考える・コンディションを保つという発想を持ちません。その日その日の行き当たりばったりで後は野となれ山となれ、リリーフの誰かがなんとかしてくれる、岩嵜・モイネロ・サファテがなんとかしてくれるというバカみたいな考えで継投をしています。
 危機管理の発想のかけらもないので誰かが故障したら、状態を落としたらという考え・備えがありません。その時一番状態の良い投手の誰かに頼り切るだけですね。隙きあらば誰々継投になります。

 話を戻して、では千賀だけなぜ長く投げさせるのか?それはエースに頼り切るという古臭い価値観で動いているからですね。エース千賀にすべてを託す。後は野となれ山となれ。ですから千賀が駄目になったときなど、もうどうしようもないしどうすることもできないし、むしろどうしろと?という感じでパニックになります。
 去年なんかWBCの影響で必ずコンディションが落ちるということは分かっていたのですから、序盤に千賀を投げさせるべきではない。にもかかわらず平気で投げさせましたからね、無能極まりないです。それどころか投げられない、投げさせてはいけない状態でもお構いなしに投げさせましたから。
 千賀はWBCの影響から背中に張りを覚えて寝返りを打っただけで激痛が走り目が覚めてしまったといいます。そんなコンディションの状態の投手を先発させて、あまつさえ六回を投げて「もう一イニングイケるか?」と聞いてさらにもう一イニング行かせるのですから狂ってるとしか言いようがありません。前に書きましたが、投手はいけるかと聞かれたら絶対行くもの。頼られれば期待に応えようとするもの。コンディションを落としている選手にそんなことを聞くこと自体どうかしている。挙げ句、結局千賀はこのシーズン結構な期間離脱をすることになりましたから、何をか言わんや。
 投手を育てるというのは、その育てた投手・大成した投手を如何に長く活躍させるかということでもあります。いくら指導をして素晴らしい投手にしても、その優れた選手を短期間で故障させたら何の意味もない。斉藤和巳ほどの存在がいまいち投手として巷で名前が挙がらないのも、その活動期間の短さとは無縁ではないですからね。いかに選手を守るか、輝く全盛期を長くするかということを現場・フロントは考えなくてはいけない。そういう発想がないフロント・コーチ・監督を優秀・有能とは評価できないわけです。*8
 困ったら特定の選手の高い能力に頼る、というより依存する。その選手が高いパフォーマンスを発揮してなんとかしてくれるといった特定の選手に甘える、特定の選手頼みの采配は最低です。というかそもそもそれを采配と言えるのか?そういう采配・価値観が大手を振ってまかり通ってしまう今のNPBの現状を見ると応援する、野球観戦を楽しむ気になれないのが正直なところですね。

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*1:まあ、エースの起用すらも雑で酷使すると言われればそうなのでしょうが

*2:※注③で書いたことは武田久か勝かが彼の影響で育った云々をちらっと見かけたのでその場合はまたちょっと変わってきます。具体的な話があればよかったのですが、ちょっとそういう記事が見当たらなかったのでその要素については保留します。この両者にヨシコーチ効果があればまた話は変わってくるので、その場合はまた追記したいと思います。

*3:※追記ー今年の楽天は梨田監督の途中辞任で平石氏が監督代行に昇格しました。平石代行の下でブルペンとベンチ担当が入れ換えとなりました。森山氏がベンチに、ヨシコーチはブルペンに変わり、役割が入れ換えられましたがまさに適切と言えるでしょう(ブルペンを任せることも不安といえば不安ですが)。また来年2019年からは一・二軍の巡回コーチを任せられることになったようですが、下で育成・巡回コーチを任せるべきコーチであると書いたとおりの起用をしていますね。まさに取り扱い説明書どおりの起用というべきでしょうね。

*4:※追記2ー書くの忘れていましたが、千賀は代名詞であるお化けフォークを一緒に自主トレをした中日の吉見投手から教わったという話がありましたね。さらに、自分で野球塾に通っていて、そこの先生から身体の使い方・理論を教わって、投げ方を変えて伸びたという話もありました。他の投手なら無理でも、石川投手ならばこの理論を体現できると連れて行って、石川選手の成長・飛躍につながったという話もありました。あとどうでもいいことですが、千賀と同じ高校に通っていた人が「自分は千賀の3つ上の世代で千賀に会ったことはないけど、ウチの学校は昼休みにバイクが廊下を走っているような高校だったから、プロ選手が出るなんて本当に信じられない」という書き込みがあって、本当だったら凄いなと感心しました(笑)。

*5:余談ですが、その前からチームで好成績を残した五十嵐を守護神ではなく、サファテを守護神にしてしまうのはどうなのか?本人たちの意向がマッチした結果ならばいいが、そうでなくては五十嵐に失礼では?と疑問を呈したことがありました。こういう結果を見るに秋山監督の決断は正しかったわけですね。秋山采配に否定的な己ですが、この点に関しては流石秋山監督と称賛の声を送らせていただきます

*6:勿論コーチではありませんが。その後中日や代表で投手コーチやってましたけどね

*7:無論、前述通りダルや田中がチームに存在する場合はその限りではありません

*8:そうそう、そう言えば日本シリーズでの田中将大の160球投げた翌日の登板について、自分は投げたいと言ってないという後日談が出てきて、星野さんの殿堂入りパーティーで森山コーチやヨシコーチに騙されたという話が出ていましたね(【日本シリーズ回想】マー160球翌日連投Sで日本一 「志願」とだまされた星野監督― スポニチ Sponichi Annex 野球)。だから日本シリーズなどの短期決戦で弱いんだろうなぁと星野采配を当時批判しましたが、ヨシコーチあってのこの迷采配だったわけですね。田中で勝てるという算段が崩れてまさかの敗戦となった時に、160球投げた翌日でも平気でマウンドにあげるという狂った決断を指揮官に奨める。隙きあらば田中、後は野となれ山となれという深謀遠慮のかけらもない思考。こういうコーチ・腹心を信用して重用する将というのは、決して大事な場面で結果を残し続けることは出来ないでしょうね。情に厚いというのは美点でありますが、ムードに流されて不合理な決断をしてはいけない。選手・コーチとのコミュニケーション意思疎通という点からも大問題ですね。