別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい

【山中慎介VSルイス・ネリ戦解説①】 17/8/15初対決の内容分析<前編> 敗北の原因はセコンドの「暴走」によるものにあらず、陣営のファイトプランの誤りにあり


 山中・ネリ戦の結果を知ってから、この話を書こう書こうと思っていましたが、相撲云々で全然進みませんでした(ブラックフェイスの話書いてたからかな?)。まあ相撲関係は書き終わってたんですが、それ書いてエナジーを消耗して書く気がしなくなってたんで。先週から書き続けてようやく殆ど書き終わりました。
 あとはいつもどおり、クッソ長くなった分、整合性をつけて読みやすくするためにどういう順序で編集するかですね。おそらく一記事の三回分くらいの文量になったので、さあこっからどういうふうに分けるかで試行錯誤。4・5日か~一週間に一本くらいで適宜更新できるのが一番いいんですけどね~。いつも、そういやこれってどうだったっけ?とググると新しい情報や、ああそうかこういう視点もあったかと書きたくなることが次々でてくるんで中途半端に公開すると相撲の時みたいに初めの記事と整合性がつかないわけわかんないことになりそうで怖いんですよね~。どう考えてもシリーズモノなのに①~⑦と長引いた挙げ句のトータルの一貫性、最初と最後の整合性が…になってしまったのでね、相撲の記事。
 それはさておき、とりあえず山中=ネリ戦の経緯で分割。再戦の前のおかしな最初の対決の話をプレリュード的に書いて、残りを分割することにしました。追記とか文量次第でまた変わるでしょうけど、暫定感覚で公開します。暫定王者ですね。意味わからない王者の乱立のように、意味わからない事になったらこの記事もいつの間にか消えてるでしょう(笑)。
 一応、本題が再戦とその異常性の指摘なので、次回の本題で書くべき前書きをこちらでも重複して最初に書きます。繋がってる話ということを忘れてもらわないように&大事なテーマなので。

■前書き
 山中慎介とルイス・ネリ戦でのピント外れの声が大きいので書いておきたいと思いました。端的にいうとルイス・ネリを責めるのは筋違いであり、本当の問題はWBCどころかボクシング業界・構造・ルールそのものにこそあるのです。責めるとしたらそちらが筋。間違っているのは一人のボクサーではなく、そういう卑怯なやり方がまかり通ってしまう制度・システムそのもの。こういう卑怯な行為を禁止・厳罰化していないルールそのものなのです。
 そしてこの件においてはJBCも同罪。こういう事態が起こりうることは事前に想定できたのですから、そういう対処をしてこなかった以上、トップが責任を取るべき失態。責任を取らないJBC相撲協会以上に歪んだおかしい組織だということを我々はもっと認識すべきでしょう。
 また、このような試合を組んだ、プロモートした帝拳ジム本田明彦会長にも責任がある点を決して見過ごしてはならないでしょう。これらの責任を無視して、ネリ一個人を卑怯なクソ野郎として叩いて鬱憤(うっぷん)を晴らしても、問題は決して解決しない、また同じ失態が何度でも起こることを我々は理解しなければならないでしょう。ボクシング界の構造的問題から必然的に起きたのが今回のネリ騒動であり、その歪な構造が改善されない限りボクシングを見ない覚悟がファンには求められるでしょう。

■試合→TKO負け(セコンド乱入)→ドーピング発覚
 山中慎介が3月1日にルイス・ネリ(メキシコ)と再戦し敗れたことが本題なのですが、それ以前の最初の対戦について触れることがあまりにも多すぎるので、まず最初にこちらでその点について語りたいと思います。村田の判定負けと、この敗戦については拙ブログでも書こうと思ったんですけどめんどくさくて更新放置していたのと、ボクシングについて興味をなくしていたので書きませんでした。既に書いてあればよかったのですが、書かなかったので、ネリとの最初の対戦から改めて振り返りたいと思います。
 前年の8月15日、山中は具志堅用高の国内最多防衛記録に並ぶ13回目の防衛に挑むことになりました。しかし結果は指名挑戦者で歳が山中よりも一回り若いネリに4回2分29秒にTKO負けを喫し、WBC世界バンタム級王座の防衛に失敗。このまま引退か?―となったところ、試合後ネリがドーピング検査で陽性反応が出たことで、どうなるんだ?とネリ騒動の始まりとなるルール違反第一弾・第一章が展開されました。
 また、この試合はセコンドの乱入でTKOとなり、ストップが早いのではないか?と話題になりましたので、その点について触れておかねばならないのでまずその話からしたいと思います。
 そもそもなんでドーピングで引っかかったクソ違反野郎と再戦をするのかという話が本筋なのですが、それ以前の段階で色々おかしな話がありますので、まず一番おかしいと感じたセコンド「暴走」事件。セコンドへの帝拳ジムのおかしな態度について触れて、それからドーピングにまつわる事の経緯を時系列的に振り返りながら語っていきたいと思います。実はドーピングは今回に始まったことではないという伏線があったんですね、それについても触れないわけにはいかない大事なポイントなので。
 時系列的に言うと本当はドーピング→セコンドのストップの是非騒動の方がいいかなとも思ったんですが、まあ文章のオチ・シメとしていいのと、次回に話を繋げやすいので。ボクシングのリングでの内容・分析or解説的な話を最初にしたほうが読む人にとってもとっつきやすいでしょうしね(需要があるとは言ってない)。
 たんにセコンドのストップはおかしいことではないよで済む話だったらワタクシ一個人の感想で終えて詳細を語ることもない話なのですが、調べる内に帝拳ジム本田明彦会長への疑問が湧いてきたので、筆が止まらなくなった状態になったので長々詳細を書いて内容をみっちり振り返りたいと思います。

■本田会長のトレーナーのタオル判断を「暴走」と責める大失態
 で、そもそもなんですが、マッチメイク以前にも本田会長には問題があったんですね。最初の試合で山中がTKOとなった試合ではトレーナー・セコンドがタオルを入れた、リングに入って止めた。その判断を会長が非難したという一件がありました※参照*1


●セコンドのストップには遅すぎるという言葉はあっても早すぎるという言葉はあってはならない
 この試合は山中がキャリアのピークを過ぎていたため、というかボクシング自体に興味をなくして見ていなかったのですが、会長のこういったコメントには違和感しかありませんでした。
 セコンドのストップの判断というものは、早すぎたということはあっても、遅すぎたということはあってはならない。遅すぎればどういう事態になるか言うまでもないでしょう。無事に帰るまでが遠足、選手を無事に家まで返すのがトレーナー・セコンドの仕事。セコンドが周囲の人間が早いと思える段階でも止めてしまうのは業務上やむを得ない。

●ボクサーやジムの会長がトレーナーの判断に文句をつけることはありえない
 そもそもそういうピンチに陥った時点でもう本人の責任なのですから、それについて選手や会長が文句をつけるのはおかしいでしょう。日頃から選手と二人三脚で一緒に歩んできたトレーナーの判断に文句があるはずない。ともに歩み、ともに探し、ともに笑い、ともに誓ってここまで来た、コブクロ魂でここまで来たトレーナーがそう判断したというのならば、もうそれはしょうがないというか、違和感も異論もあるはずがないじゃないですか。
 わかりやすくいうと夫婦で夫が妻の判断がおかしかった云々責め立てて夫婦喧嘩を公衆の面前で始めるようなもの。一言で言うと大人気ない、またはみっともない行為です。
 まあ、夫婦でもどちらかがだらしなくて、夫や妻が困ることがある。それで揉めることはあるという人もいるかも知れません。しかし、事前にきっちり話し合って共通解を持っておけばそんなことで関係がこじれるようなことが起こるわけがない。深刻なトラブルを引き起こさないようにセコンド内での意思統一・作戦プランの明確な共有ができていなかった、事前準備がしっかりなされていなかったということですから、その時点で既に言い訳できない失態であると考えます。

 セコンド内での意思統一というのは戦う前に当然成されておく基本段階です。その戦いの基本を疎かにしていたというのならば、最早試合前から今回の勝負は決まっていたと言っても過言ではないでしょう。

●セコンド軽視、陣営の足並みが乱れていた時点で敗北は既に決まっていた
 可能性としては低いと思いますが、普段からイマイチ信用のおけないトレーナーだったというのなら、そういうトレーナーを他のトレーナーに替えなかったという別の問題になりますしね。実績・信頼関係があるスタッフでセコンドを固めるというのは基本ですから。
 ボクシングは個人競技と思われていますが、実は闘う選手以外にも重要な役割があるのです。相手を分析し、作戦プランを立てて、そのための練習プランを考える云々という大事な役割がセコンド達にはあります。それら作戦立案・マネジメントするトレーナー他セコンド集団のチーム戦という背景を持つ競技でもあるのですね。
 集団競技で長期間試合をし続けるプロ野球のコーチ・監督ほどではありませんが、彼らのバックアップが地味に重要になる競技なのですね。優れたサポートチームによって名ボクサー・チャンピオンは支えられるという要素があり、世界の最前線で闘うトップランクのボクサーならば、その要素を決して軽視してはならないものなのです。ボクシング雑誌などでたまにセコンドの視点・分析が語られるので、そういう陣営があの時何を考えて、どういう作戦を決断・変更したかということを知るとより面白くボクシングを観ることが出来るのでおすすめです(ダイマ)。
 大事なことなのでもう一度書いておきますが、そういう重要なスタッフの判断というものを信じられないというのはそもそもおかしなことですし、選手や会長がトレーナーと齟齬があったことを示す発言が試合後にポロポロ出てくるのはチーム内の意思統一の欠如という点で、大問題なのです。この点をもう深く掘り下げないとは思いますが、帝拳ジムの問題の一つとして記憶していただければと思います。

■映像を見る限り大和心トレーナーの判断は適切
 で、本当にそんなにまだまだ余裕がある段階なのに、何をトチ狂ったのかトレーナーが止めてしまったと言えるほど本当に止めるのが早かったのか?と気になったので、今頃映像をチェックしてきました。個人的には全く違和感がなく、大和心トレーナーの判断は妥当であるものだと思いました。

●TKO、セコンドのストップまでの個人的視点
 件のラウンドで山中はストップに至るまでに5回危ないシーンが有りました。テレビの解説者風にコメントすると大体次のような感じになります。
1回目:「ああ、良いのもらっちゃいましたね。効いたかな?」
2回目:「ああまた良いのをもらっちゃった。ちょっともう完全に相手ペースですね。チャンピオンの試合運びではなくなってますね。まずいでね。ああちょっと効いちゃったかな?効いてるなぁ~」
3回目:ここで良いパンチが入りました。この時点でヒートアップですね「あ!、これまずいですね!これ以上もらうともう倒されちゃう。なんとか凌がないと。パンチ返してペースを取り戻すなり、なんとかしていかないとまずいですよ、これ」(超興奮&早口)。
4回目:「ああ、連続してもらっている。もうこれじゃ負けちゃいますね。ダメージ次第では止めたほうが良いかもしれませんね」。
5回目:ここでパンチをまとめられる形になるわけですが、ストップが明らかに遅い。見ていて危ないと感じました。「ああ、もう駄目ですね。止めないとダメ。レフリーまだ止めないのかな?レフリーが止めないならセコンドは止めたほうが良いですよ、これ。ああ、危ない!止めろ止めろ止めろ!早く!」
 「ちょっと止めるのが遅いですよ。セコンド何やっとんの、選手を一体何だと思ってるの。帝拳さんのセコンドのタオル入れる体制・システムはどうなってるんですかね?ちょっと帝拳さんのやり方は問題ありますよ、これ。ちゃんとしていただかないと。いくら山中さんの日本記録かかっている試合だからと言ったってこれはダメですよ」と試合が終わったあとでも憤りを顕にしたでしょう。
 ―とまあこんな感じで。テレビ解説者・ゲストで喋れる立場だったらそういう風にコメントしていたでしょう。2ch(今は5ch)の実況スレで、「【放送事故】 ゲスト解説者ヒートアップしすぎwwwワロタwww」というクソスレが立つくらいには興奮してまくしたてたと思います。むしろレフリーのストップの判断が遅いと思えましたからね。セコンドを務めたトレーナー大和心氏の判断は極めて妥当。むしろあの段階・状況でストップを命じなかった会長の判断を非難すべきでしょう。

(※●余談スタンディングダウンの是非について―
 余談になりますが、長谷川も防衛記録がとまったJBC未公認の統一戦がありました。長谷川のケースは、個人的にレフリーストップは早いと思いました。早いというかスダンディングでダウンでカウントを取るべきで、一度間をおいて再開後また打たれたらストップが好ましいと思いました。
 今回のケースも山中がパンチをまとめられた時に、レフリーがスタンディングでダウンを取ってカウントを数えて間を開ける。そしてもう一度再開してほしかったと思いました。しかし、これはその選手を応援する側の贔屓目でもあります。もし長谷川があそこでスタンディングで間が空いたためにKOを免れて、持ち直して逆に判定で勝利した。結果、逆転することととなれば相手サイドはどう思うか?
 山中も同じ。あそこで畳み掛けるチャンスをレフリーがスタンディングダウンでもぎ取ることになってしまいます。安全性のためにはそれが最適であり、そうすべきだと思いますが、勝ち目が少なくワンチャンスにかけるしかないボクサーの勝利の芽を摘むことにもなります。「あそこでレフリーがスタンディングダウンを入れなかったら、うちのボクサーが残り1分もあったし、確実に仕留められたのに!レフリーがおかしい!」―ということになってしまいます。番狂わせが起きにくくスリリングでエキサイトする展開が少なくなる。ボクシングの魅力減に間違いなく繋がる。そういうことを許容できるか?と言われると難しいでしょうね。
 安全性のためにスタンディングダウンを取る方針が定められたとしても、まだ余裕があるのにスタンディングダウンのせいで2ポイント失ってしまったじゃないか!という問題は必ず起こるでしょうからね。
 まあ、何れにせよパンチをまとめられる展開は敗北の一歩手前の「詰み」(チェックメイト)の段階、敗北必死の展開なんです。スタンディングダウンで間が開こうが開くまいが負ける一歩手前な段階であることに違いはない。今回のテーマで大事なのはそこですね)<余談ここまで>

■続行していたとしても山中はまず敗れていた
 山中本人は意外と大したことないし、効いていなかったと言ってました。試合後のインタビューで意外ときれいな顔をしていたように、顔そらしや首ひねりで衝撃を上手く逃していたパンチもあったんでしょう。
 それでもストップという結論に変わりはないでしょう。前のRで左を当てながらも、相手のパンチをそれ以上に被弾して確実に劣勢展開。山中が支配したRはなく(判定は三人共37-39でネリでした)、挑戦者優位ペースで進み、4Rという早い段階で一方的にパンチをまとめられたことからも勝利の目は殆ど無い。
 タオル(WBCはタオル棄権制度はなく、正確にはセコンドのリングインで棄権となりますが面倒くさいのでタオルで表記します)に至るまでの過程で確実に何発かはもらっていた。どのパンチがどれくらい効果的だったかわかりませんが、まとめて何発かもらう展開が続いて、ロープ際に追い詰められてまともな対応ができていない状態でしたから、ストップは当然でしょう。あそこで止めずに続行していたら、それこそ決定的に効く一撃をもらっていたのは間違いないでしょうから。
 タオルに文句を言っている人が結構多くて驚いたのですが、おそらくあの場面が決定的に山中が劣位にあることを証明した展開だということを理解できないからなのでしょうね。後述しますが、普通あの展開を見せられたらもう山中に打つ手はないので以後ネリに一方的にやられて負けるということがわかります。しかしそれがわからない・知らない人は、「もしあそこでタオルがなく続行していれば山中が勝ったかも…」と考えるからなのでしょう。 
 ネリがラッシュをかける、ガンガン前に行くタイプで異国の地で初の世界挑戦という前提を考えると、スタミナ切れという可能性もありえます。あのピンチを凌いで、ネリのスタミナが切れた8・9R以降経験豊富な山中が逆転、試合を支配して山中ペースに―といった展開も一応は考えられるでしょう。
 しかし年齢差が一回り以上離れていて、ピークを過ぎた山中がスタミナを保ちながら終盤に有利な展開を築けるはずがない。そして相手のスタミナが切れて勝負所のRに入った頃にはもうポイントで圧倒的大差がついて山中の勝ちはKOしかなくなっている。となれば、公開採点のポイント差次第でしょうけども、それ以後はネリも逃げまくってポイントアウト・判定勝ちで試合が終わっていたでしょう。
 多少の予想外の出来事があったとしても、基本この流れでまず変わらない。37-39で4Rをしのいだとしても(タオル無しで続行してもしダウンをしていたら8-10判定で、36-39に変わります)、あのワンサイドの展開ではその後ダウンをせずにいくとしても殆どネリにポイントを持っていかれる。1度でもダウンをして8-10でネリになるRがあれば…。4R以後も防戦一方で押し込まれることを考えるとやはりどう都合よく考えても5ポイントは離されて終盤を迎えるでしょうから、まず勝ち目はなかったと見做すのが妥当なところでしょう。

●ピンチを凌ぐ方法、必要なディフェンス技術の欠如
 基本この展開で流れは変わらないと書きましたが、それは流れを変える武器は勿論、何よりもネリの攻撃を封じる防御力がないから。後述しますが神の左は無力化され、ネリの詰めを山中は裁くことが出来ずに定期的にロープやコーナーに追い込まれる展開が続くからですね。もうあの時点で負けは確定したと言っていいほど彼我の戦力差は明らかでした。どうして防御力・ディフェンス技術がないのかという話をしていきます。
 あの早いラウンドであんな一方的な展開を作られた以上、山中の負けは最早明らか。効いてなかったと言うのならばなぜ反撃でパンチを出さなかったのか?応戦して戦える意志表示をしなければレフリーがストップすることもありえますし、亀ガードのようにガードを固めてカウンター狙いでまだ戦えるところを見せるとか、何らかのパンチを引っ掛けて、体勢を入れ替えるなど、窮地脱出の模索をしなければならない。
 手が出ないけどまだまだ戦いたいと思っているのなら、打ってこいと挑発したり大声あげてまだやれるぞ!と示したり何らかのアクションを起こさないといけない。押されているけど、まだ大丈夫なんだな。余裕がまだあってやれるんだなと思わせる何らかの行為をしなくてはいけない。そうしなかった以上、一方的に打たれてどうしようもなくなっているようにしか見えないのでストップは当然。
 普通ディフェンスに専念していたとしても、打つぞという目・肩・足運びでのフェイントで相手の攻撃を抑制したり、ウィービングやダッキングを交えたり、肩をぶつけるタックルで相手の突進を止めたり、パーで相手をコントロールしようとしたり、サイドに回ってホールド気味にクリンチしたり、なんとかしてしのごうとするはず。ロープ際で何も出来ないディフェンススキルのなさ、ピンチを凌ぐ引き出しのなさを見せていた以上、セコンド・レフリーのストップは常識的なものでしょう。(ウィービングやダッキングのような動きでディフェンスしていただろ!という人がいるかも知れないので、一応書いておきますが窮地を脱しなければ意味がない。相手の攻撃を無効化したり、攻守が逆転するくらい効果的な技術になったりして初めてディフェンス技術というのは意味を成すものです。一方的に攻撃された苦し紛れではディフェンスとして成立していない。効果があるといえる一定水準に達成していないので当然ノーカンになります)
 あの展開でセコンドの判断の是非を試合後に問うなんてむしろそちらのほうがどうかしているかと思います。

(●※追記補足解説、首ひねり・顔そらし―
 首ひねりという技術はディフェンスの高等技術の一つであることはあるんですけど、山中の使っていたそれはちょっと違うんですね。
 ミニマム級のチャンピオンで星野か高山だったか、ちょっと誰だったか忘れちゃったんですが、無茶苦茶首ひねりが上手くて首ひねりを多用する選手がいたんですけど、その選手は本当もう傍目から見ていてもわかるくらいグルンって感じで顔に来たパンチをひねって、「いなす」んですね。んで、顔面打った相手がそれで上体流されてつんのってしまうくらい。そうやって相手のバランスが崩れてから攻撃の機会を作ってしまう。
 ピンチをチャンスにするほどの場面での首ひねりではなかったんですが、防御場面から攻撃場面に攻守を入れ替える。受即攻かな?というくらい見事に防御と攻撃を繋げてしまうというのを見たことがあるんですけど、それくらいの完成度でないと首ひねり・顔そらしは意味がない。
 ダメージを減らすので意味がないことはないんですけど、パンチを流すと同時に合わせてフックをかぶせるとかスウェー気味にのけぞりながらアッパーを出すとか、当たらないにせよ同時にパンチを出して攻撃に繋げられないと意味がない。最後のその場しのぎ・急場しのぎにしかならないんですね。
 実際、山中がうまくいなしていて効いてなかったとしても、そこで反撃をくわえられない、合わせるパンチを出せない以上、防御をする必要がないですから相手・ネリはお構いなしにドンドン回転あげてパンチ叩き込めてしまう。効いていてパンチを合わせられなかったのか、首ひねりに専念していたのかわかりませんが、専念してあのレベルならばディフェンススキルが低いということですから止められても文句は言えないですよね。
 要するに首ひねりというのは攻撃に繋げられるくらい高いレベルでないと意味がない。そうでない首ひねりは効いてしまってもうすることがこれしか残されていないという段階での技術なので、そこでパンチを出せずにずっと打たれ続けていたら止められるのは当然だと思います。
 ※更に追記、あと気づいたので追記しますが、攻撃技術に偏って左のストレートに拘った山中が、首ひねりという戦術にたどり着いたのは必然のように思えます。中・近距離タイプの選手が首ひねり+カウンターや相打ち覚悟で打ち合うというのならともかく、遠距離主体の山中のディフェンス技術としてそこまで最適とは思えない。勿論色んな戦術・得意パンチ・他のディフェンス技術などの兼ね合いで決まることですけどね。
 遠距離からズドンで決められる山中にとって同じ遠距離タイプに同じ土俵で負けることはない。オーソドックスの中・近距離はポジショニングで苦労しない。苦労するのは中・近距離タイプで間合いを詰めてくるサウスポー。得意な左ストレートが距離が足らない分打てなくなってしまいますからね。
 そうなると、当然左ストレートを打つために間合いを取るために下がるか左右に回るかしないといけない。そのケースで山中はあまりにも真っ直ぐ下る事が多いので、真っ直ぐ下る悪癖があると言われます。真っ直ぐ下ると当然追う方は追いやすいので、同じパターン(相手が詰める→下がる→また詰めてくる→また下がる)の繰り返しで防戦一方になりやすい。で更に追いつめられた時に逃れるのが首ひねりだったということのように思えますね。
 「だったらはじめから真っ直ぐ下るなよ。左右に動く練習しなさいよ、アウトボクサーなら基本中の基本だろ…」と思われるのですが、多分、彼の場合、真っ直ぐ下った時に生まれる距離感がちょうど左ストレートを打ちやすいんでしょうね。んで距離を詰めて来た相手にズドンとカウンター合わせて仕留めたいor圧力をかけたいとまあそういうことなんでしょう。
 これまでだってそういう風に距離を詰められて左ストレートそのものを打てなくなるという場面はあったはずです。その打開策が真っ直ぐ下がっての即左ストレートだった。オーソドックスだとそれでも右足のポジショニングで被弾しにくいところを確保できますが、サウスポーではまっすぐ詰められてしまうので対サウスポー用の捌く技術が求められるはずなんですが、山中は「神の左」があるので、相手はそれを警戒して詰めることが出来なかった。
 故にディフェンス面で苦労することもなく、もし距離をミスって詰められてちょっと危ないという展開になっても首ひねりやっておけば十分だったということでしょうね。左ストレートという突出した武器を基に構築されたのが「山中戦術」。山中のスタイルが攻撃主体戦術だということを考えると、何故山中が真っ直ぐ下って首ひねりを多用する癖があるのか、よく理解できると思います。いつでも左を振れるようにディフェンスは最小限に済ませる。左を振るための「真っ直ぐ下る」&「首ひねり」なんですね。
 ボクシングには「攻撃は最大の防御」という性質がありますから、次で書いているように山中の左が衰えた時点で大ピンチ。「攻撃力=防御力」という図式を成立させてきた山中の左の攻撃力・有効性が低下してしまえば、山中の防御力はガクッと落ちるということですからね)<補足解説ここまで>

●ネリ優位を裏付ける神の左の威力低下
 参照記事THE PAGEの記事では、ネリは今もレバーが痛いんだというセリフがあって、山中のパンチが効いていた証言があるので、もしかしたら終盤ボディの累積ダメージで足が止まってワンチャンKOあるのか?とも思えます。しかし、左が見えていたというセリフがあるので絶望的でしょうね。実際、ネリが山中の左を見切っているように映りましたし。山中の「見えない左」が早いRで見切られているとすると、その山中戦術の優位性は消失したということですからね。
 負けるだろうなと思わせるシーンは3Rの終盤にネリが山中の左を躱したシーン。左ストレートを多分2回程躱していたんですね。あの左を警戒せざるを得ないからこそ、殆どのボクサーは前に出られない・攻撃ができなかったのに、早いうちからヒットもしていましたが、いともたやすく(個人の感想です)攻撃の流れの中にある過程で避けたので、ネリがケアしなくても躱せてしまった以上ダメだなと思いました。
 ガンガン前に出ていくので4Rでも被弾はしていましたが、ネリの圧力は減らないし、また左をやはり見切って躱してしまうシーンがありましたから。結局ネリという選手の強さを甘く見て侮っていた。そして何より山中の現在の戦力を高いままだと甘く評価していたわけですね。彼我の戦力を正確に認識出来ていなかった。間違った認識から正しい結果・目的達成がならないことは言うまでもありませんね。

 おかしい…ドーピングの話で2本でまとめるはずだったのに、初対戦の分析でさえこの記事一本で終わらない…。ずっとボクシングネタで書いてなかったから、溜まりすぎて余計なことをグダグダ書きすぎた…。二本に分けても初戦の話が上手くまとまっている感は少ないなぁ…。技術論だけで一本に再構成するかな。
 まだまだ残っている初対決の解説②*2に続きます。

アイキャッチ用画像

*1:タオル投入早すぎる!山中 涙の陥落…4回TKOでV13夢散― スポニチ Sponichi Annex 格闘技
 会長の非難コメントについてこちらのほうが詳しかったのでこちらも参照

*2: