別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

【身体論】 中殿筋について

書こうと思って書けなかったシリーズ

なんでこんなことに気づかなかったシリーズ

ですかね?さて、何を書きたいかというと

4つの原則が生む無限の動きと身体 ロシアンマーシャルアーツ システマ入門/北川貴英

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 なんかを読んで、システマって呼吸とプッシュアップがその武道体型の中で重きを置かれているんですが、「ああ、そうだな~。プッシュアップ、腕立て伏せってよく考えたら倒地法・倒木法そのまんまだなぁ」とか思いましてね。ちょっとプッシュアップやろうと。壁に寄りかかってもやったり、人載せたり、押してもらっても潰れずにやったり、結局身体のバランスを取るのには寝っ転がっても、寄っかかっても出来なくちゃいけないですからね。普段立位でしかやらないと、立つということが、居着きと区別されませんからね。自分がいかに固まっている、stiffであるかということを体感するのにも良いことだと。

※倒地法とかは、空手の技法でまず倒れこむ感覚を覚えるために人だったり、物だったり寄りかかる練習法だったり、技術体系だったりします。武術とは、身体運動とは畢竟、倒れることですから。いかに早く、上手く、正確に倒れるか。そして倒れた状態から再び元に戻るか。それが全てですね。

 んでプッシュアップを色々スタイル変えてやっているうちに、おや、これはいいんじゃないか?なんでこんなことに気づかなかった!!という発見があったのでまあ書いておこうと。なんでこんなことに、略して撫子ですね。なでしこジャパンです。澤アニキMVPです。

 まず、手前の机でも何でもいいですから、そこに手をついてみてください。そして手で押してみてください。自分の力を最大限におもいっきり。普通の人はここで手や腕に力を入れてしまって、押してしまいます。

 その状態を認識した上で、次のステップに進みます。※力の使い方を知っている人ははじめから腕に力を入れようとはしませんが、内容を確かめる上でわざとやってみてください。次は肩甲骨、頭の上などを意識してそこから力が腕に流れるように押します。力を発揮させる部位から遠ければ、遠いほど力は発揮される量が大きくなるということがわかると思います。

 またこれが感じられなくても構いません、次のステップのほうが重要なので。次は手をついたとき、大多数の人は。頭が手をついた場所より、後ろに頭があるか、手と同じ所に頭が平行なところにあると思います。身をググっと乗り出してみてください。手を付いているところから、できるだけ前に頭を置くようにします。

 効果を感じるために少しづつ頭を前に持って行っていくとより感じられると思いますが、頭を前に出せば出すほど、手を付いている部分に力が伝わっていくことが感じられると思います。これはいったいなぜでしょうか?またどういうことを意味するのでしょうか?

 つまり効率的な力を発揮するためには腕や直接的に近い部位を使うということは極めて効率が悪いということなんですね。身体誤認をしてからだを使っている人が現代人は極めて多いということです。ほとんど腕とか力を入れていないのに、力が手を付いているテーブルや机に伝わったことを実感できたと思います。すなわち力の使い方というやつですね。合気道なんかでも力を使わないよ~なんていうキャッチフレーズはここにありますね。使い方を知ればいいのです。

 今回言いたいことはこんなことではなく、力を使うのに一番重要なのは軸・体幹、手足ではなく、こちらをもっと上手く使えば、効率よく力を使えるのだということ。先ほど倒地法のところで論じたようにいかに倒れるか、倒れれば人間が持つ力が最大限に発揮されるわけです。倒れることすなわち、身体の最も効率のよい使い方なのです。

 達人と言われる人間は僅かな動きで、人をついたり投げ飛ばしたり、コントロールをします。あの動きのどこをみて倒れているんだ?いい加減なことを言うな!と思われると思いますが、達人というのは最小限の動きで倒れて、最小限の動きで元に戻っているのですね。起き上がり小法師がありますよね。あれのめちゃくちゃすごいバージョンです。

 また人間の筋骨の部位をありとあらゆるふうにつかえるために、身体のあちこちに起き上がり小法師があると考えてもらえばイイでしょう。達人は実際に凡人が布団に寝っ転がるようにデーンと倒れなくても倒れることができるのですね。

 合気道など投げられるという行為は極めて象徴的だと思います。投げられたらどうなりますか?そう、地面にたたきつけられて、まさに寝っ転がるでしょ?達人が身体で創りだした寝っ転がるという運動エネルギーが相手に伝わって、相手が寝っ転がるという結果になるわけです。

 まあそういう達人論はおいといて、我々のような凡人が少しでも効率の良い身体の使い方を習得するのにどうすればいいか。こちらのほうが極めて重要な話です。達人の話、感覚は往々にしてレベルが高すぎて何を言っているのかさっぱりわからんということが稀によくありますから。

 手をついて、頭を前に出す=体傾斜度を深くすることで力が発揮される。一つのからだの使い方のコツですね。ここでもう一つ重要なことがあります。それが今回、ああ、なんでこんなことに気づかなかったのかというテーマです。

 大部分の人が今回の手つき実験で、正確に立てていないということを知ってもらうのにこのテストは重要なんですね。二足歩行の人間・人類にとって極めて重要な事実、それは立てていないということ!人類は、我々は、立てていないッッッ!!!とバキで強調されるレベルですね。

 いかに上手く倒れるかというかという前段階として、ではどうすればいかに上手く倒れられるのかということが問題になります。実は上手く倒れるためには上手く立つことが必要なんですね。上手く立てなければ上手く倒れることができないのです。塩田館長と高岡さんが対談の中で、「柔道や合気道の五段・六段と言っても、全然立っていないんですよね。ちゃんと立てていない。だからちょっと小突いただけですぐ、吹っ飛んでっちゃうんですよね。」―という趣旨のことを話していたと記憶していますが、これはまさにその事実を端的に表現していると言えましょう。

 じゃあ立つって何?っていう話は高岡さんが解説しているのでそちらに譲りますが、今回はタイトル通り中殿筋に話を絞りたいと思います。

 テストに戻って、では次は頭を前に出すのではなく、膝をガクッというくらいに落とす、または抜いてください。どうでしょうか?武術の覚えがある人なら最初から膝を抜いているため、違いはないと思いますが、殆どの人が膝を極端に落とした時、手・腕にものすごい力を感じると思います。

 単純な話ですね、自己の体重・自重をテーブル・机に載せたのですから。今まで感じたことのない力を感じたと思います。これはものすごい雑な段階ですが、倒れるという身体運動の本質、力の使い方を体感するのに最もわかりやすいと思います。

 立ってられないくらい、膝・下半身に今までかかっていた力を全部抜いちゃいましょう。なんだったら、頭を先ほどのようにググ~ッと乗り出して足を宙に浮かせても構いません。どうでしょうか?力が腕に、手にかかってることかと思います。

 一流アスリートなどはスポーツで力を発揮する時このような力を発揮している。だからこそ凡人と決定的な動きの質・違い、パフォーマンスの差が生まれるのですね。自分が何かのスポーツで、ああ~~くん、または~~ちゃんは上手いよなぁ。なんであんなに上手いんだろう?自分はどうして下手なんだろう?という原因はここにあるのですね。力の発揮量がこのようなコツを知っている知らないで全く違うのですから。

 当然、次のようなツッコミが入ると思います。まず、この力は確かにものすごい大きい力だけど、こんな状態じゃ自由に動けないし、正確な運動なんて無理だよ!と。つまり運動がデキる子、一流アスリートやメダリストなんて言うのはこの力を使う=上手く倒れている。かつ上手く立っているからこのような自分の体重を預けてしまってもすぐ立ち直れる、体重を預けている間でもふたたび元の姿勢に戻る技術(感覚・意識)に長けているのですね。

 足を浮かせるほど手に力をかける。体重を預けてしまって何も出来ないよ!トニー出来無いよという状態はいわば入り口なんですね。全てはここから何です。始まりの街ローグ・タウンです。

 次に、手に力がこれまで以上に発揮される。というのは理解できました。倒れることで身体の体重が手に伝わるんですね、と。でもそれは手だけで早く走ることなどにつながるのですか?と。簡単な話ですね。歩くにも走るにも足で地面を蹴ってという意識を持つのではなく、グニャア、フニャァとなって、身体を・軸を倒してみてください。身体から全身の力を抜いて。倒れる=前方推進力でしょ?動くという人間の基礎はこの倒れることにある。

 だからこそすべての運動・芸術ありとあらゆるパフォーマンスは倒れることに集約されると己は語るわけです。

 上手く倒れる=上手く立つという話がなんとなく理解できれば構いません。そして今回の己が気づいたこと。それは足を抜く、中殿筋の抜きでした。膝をガクッとやって下半身の力を抜けば腕に力が伝わる(特にお腹くらいのテーブルよりもう一段低い椅子などによっかかってやるとより実感できます)。上手く立つ、立位というのは身体のありとあらゆる部位の筋出力を最小限で済ませるということです。

 そうやって下半身の力をあっちら、こっちらもぞもぞ動いて抜いているうちに、当然うまく立つための腸腰筋、大腰筋や腸骨筋を意識して動かそうともぞもぞやっていて気づいたことでした。両足をいっぺんにやるより、右左と一本一本やるほうが上手くハムストリングスを使って、裏転子あたりを絞ることができる。ハムと裏転子が作用すると足は殆ど無いがごとしにプランプランになります。

 足を下に力を抜いていって、腸腰筋のストレッチみたいにえっちらおっちら動かしていると自然に腹部・腰背部あたりを引き伸ばすような感じになりますね。で、自分の中で上手く軸が通るようにするには中殿筋にこんなに力がかかっていたのかというくらい、中殿筋が頑張ってしまっているんですね。まさかこんな力が入っているとはと思うくらいびっくり。座る時間が長いからか、自然にここを固めてしまっていた。

 で中殿筋から力を抜くことに意識を集中させるわけですね。中殿筋は外に向かって力を入れる形になります。内側に力を集める感じにすると中殿筋はこれまた筋肉の螺旋構造につながるような感じで、力が抜けながらも発揮されているという、絞るという感覚になって他の筋骨と連動している感覚になります。ココらへんがふにゃふにゃで、足に力が入らず、がくがくする感じですね。膝が笑うというのがありますが、あそこまでではありませんがああいう感覚です。

 力はハムと裏転子だけ、ということを改めて認識し直す結果になりました。そして正確に立つということはそれだけで、力が流れるようになる。つまり腕に力が伝わるようになるんですね。中殿筋を抜くだけで、テーブルについた手に力が伝わる。正確に立てば正確に伝わるということ。当り前のことでありながら、気づかなかった。実感していなかった。

 テーブルに手をついて、足を抜く、膝から力を、中殿筋の力を抜く、これだけで居着いた身体を正す良いストレッチになる。お勧めです。