別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

【雑誌】 月刊秘伝 2015年4月号

秘伝 2015年 04 月号/BABジャパン


 毎月一つずつ更新するはずだったのをすっかり忘れてました(笑)。というわけで久しぶりに更新。(※2019/01漢語由流体操追記)
 殺陣特集ですね。余り興味がある分野ではないので触れることはありませんが、ゴジラの中の人を演じていた、ゴジラ剣法という方の話が面白かったですね。叔父さんに剣を教わっていたが、その叔父さんは戦争に行かなかった。なぜならゴロツキを斬り殺してムショに入っていたからという時代と土地柄を象徴する話(^_^;)。示現流をいきなり習いに行った話とかも好きですね~。弓づくりの人の話がありますが、根性の悪い竹の方が作りにくい分、仕上がったあと質の良いものに出来上がるとか、つくり手ではないとわからない良い話ですね。

■ロシア伝統集団戦「ステンカ(壁)」
 多民族国家ロシアでは集団での抗争がよくあって、それを基に発展していった集団戦術という感じでしょうか。フックや回し蹴りはスペースを贅沢に使う技であり、そういう技術を使うことはない。自分の隣りにいる味方に当たってしまうから有効ではない、使えない技であるからそういう技を用いることはしないと。アッパーのようなたてに撃つ打ち方が主になる。また草刈りなど日常に使う動きと矛盾しないようになっていると。蹴りもタテに縦回転で鼠径部を踏みつけるように蹴ると。日本人のような引く身体の使い方ではなく押す使い方をするのも特徴。仲間が横にいることを前提としたような戦いをするようですが、写真にあるように同じタイミングで突き・蹴りを繰り出すのでしょうか?司令塔が号令出して戦うとか?同調の技術があるとかなんでしょうか?チームプレイを前提とした武術はあまりないのでそこら辺面白そうですね。*1

■マーシャルアーツに挑んだ日本武道家たち
池本淳一「明治大正 異種格闘決闘録」—
 日本VS西洋の初対決は相撲と西洋の格闘家。公式な記録として、はっきり残っていないが、どうも相撲取りが相手をねじ伏せたことだけは確からしいという話。植民地支配にボクシングが西洋人の優秀さを示すために用いられたというのは有名な話ですね。この初めての試合はボクサーかレスラーだったんですかね?相手の格闘家というのは。

太気拳 岩間統正「有形無形の武」—
 今の太気拳は本来の太気拳ではないと。こう来たら後という発想は太気流空手であって、太気拳ではない。あらゆる攻撃をあらゆる部位で滑らすのが「差手」。未経験者でも三年で錬士、現在錬士なら教士に。熱意とセンスがあれば二年でいけるかもしれないと。長年の経験から「最大効率の稽古」が出来るとのこと。
 随分、意気込んでらっしゃいますけど、どうなんでしょうか?今現在後進育成に成功されているのでしょうか?師がいくら達人で教え方がうまくても、弟子が育つとは限らないのが武道・武術界の常ですからね…。師一人、弟子一人と言われる世界ですからねぇ。

■高岡英夫の漢語由流体操「肩肋後回法5」—*2
 一肩肋後回法の理論編のまとめ。人間の背骨には、拘束背芯と拘束腰芯という二つの拘束の中心がある(拘束腰芯については、「腰仙揉溶法」の解説参照)。この肩肋後回法は、もうひとつの拘束の中心、拘束背芯と密接な関連がある。拘束背芯は大椎=頚椎の七番から胸椎の三番。肩肋後回法でゆるめるのが肋骨の一番から五番までであり、完全に一致していないとはいえ多くの部分が重なっている。つまり拘束背芯を溶解するのに適している。残りの肋骨の二段=四番と五番は、拘束背芯には含まれておらず、拘束腰芯(と文中では表記されているが、拘束背芯の誤記だろう)と重なっている肋骨の一番から三番よりはるかに動きやすくなっている。ゆえにここを動かして上部へのずらし回転運動が出来るようにアプローチしていって一番から三番も動かせるようにすることで、拘束背芯を溶かせるようにしていくと)。拘束背芯を溶解させようとする時、最も肩肋後回法がベーシックな取り組みの三つのうちの一つとなる(残り二つは何なんでしょ?また「肩肋後回法は、拘束背芯の溶解をめざす時、非常に無理なくアプローチしていける方法として、とくにおすすめできるメソッドといえます」―と書かれているが、残りの2つは肩肋後回法にアプローチ的に劣るのだろうか?どうもこの肋骨を動かしていくというのが難しくて出来ないので他の方法を知りたいのだが、やはり肋骨を動かすことそれ自体が難しいということなのか…)。

 呼吸が胸・前面に入る傾向がある。肺の上部に息を入れるには背骨と肋骨が動いて、そこに息が入るようにする必要がある。ということは肺の上部に息が入ると当然拘束背芯も解きほぐされることになる。肩肋後回法を呼吸の視点から考えると、どちらかというと、胸に息が入ってくる傾向にある。しかし、身体の裏側にも息が入ってくるという大きな特徴がある。肋骨のより上部に息が入るには、背中側の肋骨と背骨が呼吸運動に参加して、その部分に息を吸い込む余地を作る必要がある。逆にいうと、肋骨のより上部に息が入る=拘束背芯の部分が動き出すということ。(「逆に言うと」」という表現が少しひっかかるのだが、運動と呼吸を対偶として並べたときの逆かな。関連・連動することだから、「逆」という言葉に変に引っかかってしまった(^ ^;) )。よって呼吸が胸の裏側・肋骨の上部に入る&動き出す=拘束背芯の部位も動いて解きほぐされるという公式が成り立つと。呼吸・運動・溶解の三つをセットとして捉えるべしというところかな。それこそ逆に言うと呼吸が浅ければ、肋骨や胸郭の運動性は低いし、身体は拘縮して拘束背芯が強い状態
 野生動物は肩こりに悩む必要がないが、拘束背芯は存在する。野生の四足歩行動物にも非常に柔らかい拘束背芯が見られる。運動性の高い柔らかな身のこなしをする動物ほど小さく弱い拘束となっている。草食動物のほうがどちらかと言えばより拘束背芯に近い拘束が見られ、実際の動きも乏しい傾向にある。イタチ科が哺乳類の中で最も拘束背芯が見られない。*3
 軸とは一本ではない。三本存在する。地球の重心と人間の重心を結んでいる垂軸(物理学では重心線)。常に変わらないのが垂軸、もし人間が寝たら身体と垂軸は直交することになる。このように垂直で変化しないから垂軸。人間の体に存在するのは体軸。概ね背骨に沿って形成されるもので、可変する。直体軸と曲体軸に分けることが出来て、陸上のクラウチングスタートの時のように背骨が曲がっているときには体軸も曲がって曲体軸となる。そして、直立していく時に形成されるであろう仮想の体軸が直体軸≒潜在体軸。*4
 第一段は稲穂振軸、垂体分離で行ったほうが容易なためにこちらからスタートする。人間の体軸がゆったり揺れる時、稲穂が風に吹かれたときのようにゆれる。人間がリラックスしている時頭部はしなだれる稲穂のようになる。 理論編でも語ったように、肩肋後回法は、副交感神経系のトレーニング法なので、リラックスした状態の稲穂型から入るのが、一番自然 。肩をゆったりと前から後ろに回す動きと、この稲穂状の振軸の動きは、非常に相性がいい。
 格闘技のように直立したまま体軸が前後左右に動くときは交感神経優位状態にある。まずリラックスして気持ちよくなる副交感神経系優位状態で解きほぐしていくことを念頭に行うから、体軸を直線のままではなく曲げる、曲体軸を取る。実際の舟漕ぎ運動では体軸は直立して行われているが、船を漕いでいる絵を想像するとき、多くの人が稲穂振りをして船を漕いでいる絵を連想するハズ。このイメージで行うと良い。
 第二段は垂体一致の前段階になる「直線振軸」。自然に動かすと稲穂振りになるように、体軸を直立させたまま、直線状に体軸が振れるように行うのは想像以上に難しい。これが垂体軸一致法の基礎トレーニングになっているのだが、運動進化論的見地から見ると四足歩行動物時代に、伸び動作によって思いっきり副交感神経系に入っていくというDNAがあり、体幹部を反らす稲穂振り系の動きが、リラックスするための最適の動きとして作られてきた事実があるから。ゆるんだ状態で体軸を振ろうとするとき、稲穂振りになってしまう(格闘技で直立したまま前後左右に軸を動かす交感神経系優位の動きをするとあったように、交感神経系優位の運動と副交感神経系優位の運動という矛盾した行動を行う上での難しさがあるということでしょうか)。
 第三段は「稲穂振軸縮幅化」、第一段ではリラックスを念頭に大きく動いていいが、今度はその稲穂振り・振軸を小さくコントロールすることを追求する(第一段ではそういう事を考えずに大きく動かして気持ちよさを追求すること)。第三段は鏡を見ながらチェックしてコントロールするのがベスト。振り幅を小さくすることで下の方から垂体一致していることが実感できる。「本当にのびのび気持ちよくなると、こんな動きになるんだ、あとはこの振軸を小さくしていけば良いんだな」という感じになる。
 第四段は「直線振軸縮幅化」、第二段と第三段を組み合わせたもの。(それぞれ一段と三段は曲体軸、第二段と第四段は直体軸)。そして第二項で「垂体一致法」という課目の、「直立垂体一致軸」という段階に入る。その名の通り、直立垂体一致軸のまま肩肋後回法を行う。言うまでもなく垂体一致しながら肩肋後回法を行うのは至難の業。見てきたとおり、進むに連れてコントロールの精度が高まっていく。二段からそうだが第二項に入ると脱力しながらかつ筋肉を締めるということをしなくてはいけない。軸を動かさないことを意識するあまり、肩まで固まって円どころか五角形・六角形のようなカクカクな動きになってしまうことも。軸を通しながら脱力し、かつ肩をキレイに大きく回すという難しさがあると。

■システマ創始者アメリカツアー随行
 システマアメリセミナーの話ですね。システマアメリカでどういう風に受容されているのかという話です。

■徐谷鳴老師来日セミナー 心意六合拳の極意を示す
 心意六合拳って名前がかっこいいですよね。なのでずっと前から記憶に残っています。上海で有名だった綿拳と心意六合拳だった。戦うためだけを考える門派だから、門下生に犯罪者が多く出た。逆に太極拳はそうならなかったと。心意六合拳が一度途絶えたというのもそういう背景があるんでしょうかね。あと、徐老師が腕振りをする写真が何枚もあるのですが、その腕振りがとてもキレイで印象に残りましたね。

■霊術講座「精神作用を用いて身体を操る観念法」
 前回に続いた観念運動の話です。脊椎反射を意図的に起こすために観念運動を利用する話。手を握ろうとせずに思うだけで自然に体が動くようにする。これを利用したものが鉄身硬直術や柔軟不随術。硬くするものと軟らかくするもの。クラゲのように全身ぐにゃぐにゃに出来る。さらに進むと内臓のコントロールまで出来るとのこと。霊術の大家松本道別(ちわき)は弟子が修行の際、水月に突きを受けた影響で脱肛した時、観念で元に戻せると教えて実際にそれで治したというエピソードを挙げている。

■意識のホームポジション「知覚の反転」
 前回の続き。間接視でハンカチ抜き取りゲームをやるとうまくいく。間接視だと覚醒度が落ちる。最終的に間接視を行わなくても全体をつかめるようになるのが理想。
 「参照点」という話。立位体前屈をハンカチを持ちながら行うといつもより楽に身体が曲げられる。これは何かを持つ・触ることで崩れるバランスが整いやすくなるから。クラシックバレエでバーを頼りに片足を上げているが、バーをギュッと掴んで支えているのではなく、軽く触るだけでバランスが整うから、ああいう風に触りながらやっている。盗塁するランナーが手袋を握っているのも、不安定なスライディングという状況の中で参照点を確保することでバランスを保ちやすくなるから。試しに屈伸をタオルを片手に握ってやってみると動きの滑らかさがまるで違うことがわかる。
 何かを握る事ができる状況はそうそうないので、視点で参照点を確保するようにする。どこか自分の呼吸が楽なところか、身体が緊張しないところか探す。場所によって楽な所・辛い所を見つけること(実例では立位体前屈でボールを使って視点の参照点を探していました)。
 目の使い方でバランスが大きく変わる。視神経は脳幹・中脳につながっているのでそこに影響が出る。また目から後頭部・首・背中の緊張をもたらすと。
 また過去に交通事故にあった影響などで、空間認識に問題がある。その方向に緊張していることがある。過去のトラウマがもたらす影響、脳の空間認識パターンに問題があるケースなどもあると。
 ストレスに対する対処が上手い人は無意識に自分にいい反応をもたらす参照点を見つけてそこを見ている。逆もまた然り。下手な人はその逆の緊張する方向を見ていると。丹田を意識して、見る方向を変える。どこを見るとより丹田が実感できるかなどにも応用できると。

中島章夫 技アリの動作術
 踵に重心を置くのを後ろ重心、足裏均等(踵と趾均等)に重心を置く中心重心。前者よりも後者のほうが安定する。背中を押された反応を試してみれば一目瞭然。中間重心で腕を前に出すと自然に身体が傾いて足が一歩前に出る。これを受がいる状態で行うと、受が手を持つ・触ると身体が前に出ない。釣り合い反射で相手がこちらのバランスを取ってくれる(ただし積極的な動きを行う場合は別)。中間重心をキープしたまま歩むと、受・相手は釣り合いを取ろうとして後退し、最終的に倒れると。

 最後に読書レビューを読んで気になった本のタイトルをメモです。いつか読むかもしれません。
身体はどのように変わってきたか 〔16世紀から現代まで〕/藤原書店

声が変わると人生が変わる! : 声を良くする完全マニュアル55/春秋社

*1:どうでもいいことですが、ゴールデンカムイでスタンカ出てきてましたね。意外とロシア関係では有名なのかな?システマの次に注目されたりするのでしょうか

*2:5月号のところで書く肩肋後回法6を間違えて肩肋後回法5をもう一度書いてしまったのでもったいないのでこちらに移して増補することにしました。だもんで追記になります

*3: 具体的には、 カワウソやイタチ・ヒョウ・トラなどといった動物の拘束は小さく、弱い。カワウソなどは、半水生ということもあり、拘束背芯はほとんどない。陸生の動物でも、イタチなどには拘束背芯はほとんど見られない。これらの動物は、頭から背骨を通って、尻尾まで、まるでヘビに近い運動構造をしている。こうした動物が、もっとも運動性が高く動きの精度も突出している。ちなみに野生動物の「強さ」を「体重」 で割って比較してみると、哺乳類最強はイタチ科の動物。その強さは、ネコ科を上回る。そうした最強のイタチの身体の特徴は、ヘビのように、頭から背骨、そして尻尾の先まで、中心といえるところがほぼどこにもないこと。それと同時に、背骨のすべてが中心になり得る身体をしている。故にイタチ科は哺乳類の中で最も拘束背芯が見られない。
 拘束背芯を解消してイタチ科のような最強生物を目指して、肩肋後回法に取り組むこと。繰り返しになるが肩肋後回法こそが、拘束背芯を解きほぐすためのもっともベーシックで正当な方法なのだから。

*4: 理論編で説明してきたとおり、全てのトレーニング法は、トレーニング法の種類によって閾値が異なるにせよ、そのトレーニング法の中身が高まるor極まってくると、必ずやセンターのトレーニング法になってくる。というわけで第一法はセンターの運用法となる体系となっている。二項に分かれていて、第一項が「垂体軸分化法」、第二項が「垂体軸一致法」。
 人体を貫いているもっとも重要な軸のことを中央軸というが、中央軸一本しかありえないという観念を持つ人は多い。野球やゴルフ、フイギュアスケート、クラシックバレエなどの人は、「軸」という概念を比較的多用していて、「軸=一本」と捉えるのが一般的。また、剣道などの「正中線」などの概念も同様。「正中線」について深い認識を持っている人でも、「軸」の数を一本だと考えてきていた。 ところが実際はそうではない。「軸」は一本ではありえない。「軸」は、じつは垂軸と体軸という、ふたつの軸が一致して、重なり合って存在することで、あたかも一本に見える現象こそが「軸」なのだと。
 では、その垂軸とは何かというと、地球の重心と人間の重心を結んでいるライン、物理学では重心線と呼ばれているラインに沿って、その延長線も含めて形成される直線状の身体意識のこと。この垂軸は、人間が地球上でどのように動こうと人間の体位に関わらず垂直。人間が寝ているとき、垂軸はその身体に対し直交している。 つまり、垂直以外ありえない軸。だから垂軸と命名される。
 もうひとつの体軸は、概ね人間の背骨に沿って形成される「軸」。ただ、背骨はつねにまっすぐというわけではなく、陸上短距離のクラウチングスタートの時のように、しゃがむような姿勢をとれば、当然背骨は曲がる。このような場合、体軸はさらに曲体軸と直体軸の二本の軸に分かれる。曲体軸は、その曲がった背骨に沿って曲線状に形成される軸のこと。一方、直体軸は少々難解で、その曲がっている背骨が、もしそのポジションで真っ直ぐだったとしたら、このへんを通るであろうというラインに形成される軸。つまり、その瞬間においては、潜在化されている軸(潜在体軸ともいう)。したがって、クラウチングスタート時の姿勢を例にすると、まず垂軸があり、曲体軸と直体軸があって、合計三本の軸が存在することになる。