別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

【雑誌】 月刊秘伝 2015年3月号

秘伝 2015年 03 月号/BABジャパン


韓氏意拳特集です。
 韓氏意拳は個人的にかなり気になっているのですが、読んでいても多分、さっぱりわからないかと思います。拳理拳論というよりも実践を見ないと、一触を感じないとどうにもならないかと思います。禅の話みたいになんのこっちゃいなになる人がほとんどでしょう。大事なことは語ることが出来ない―の世界ですからね。韓競辰師の動きを実際に見たいですよね、やはり。写真だけですが、やはり野生動物というか、熊みたいなバランスをしていて、ああ凄いなぁと思いましたね。

 光岡英稔師の文が載っています。「上がらない腕」という話なのですけど、そう言えば著作を呼んだときも、そういう話をしていたことを思い出しましたね。普通の人間は生きていく上で何らかの疑問や違和感を抱えながら生きていく。家庭や地域の外部環境だったり、自身の容姿や能力だったり、個人的な興味関心事(勉学、スポーツ、ボードゲーム、蒐集、舞踊、音楽、芸術…)。そんな中で、腕を上げるということに違和感を抱き続ける、光岡英稔という人物のセンスはどうなっているんだと驚嘆せざるを得ないですね。普通の武道家、身体研究に携わる人間ならば、大体立つことに注目するわけですよね。どうやって立つか、どうやったらきちんと立てるかというのがテーマになるわけです。氏を凄いと思うのは、そこから一歩進んで「腕が上がらない」*1というテーマを抱えているわけですよね。肘抜き・肩抜きというような、腕の動きを阻害するという単なる技術論じゃないはずなんですよね。それなら脚がどうとか腰がどうとか全てに拘るはずですから。その一点に集約されるのが底知れぬセンスを感じさせますよね。さっき検索したらPVみたいなのがありましたけど、やはり動きの練度というか滑らかさが凄いですよね。

ゆる体操には"裏"の存在があった!高岡英夫の漢語由流体操「肩肋後回法4」
 後は上から下、前は下から上とつぶやきながら行う。キーワードはもっとゆるめるように、肋骨と肋骨の間が開いていくようにする。肩は自然に回して、肩を手伝うよう回すのがポイント。(―って書いてあるのに、ただ肩を回すことに意識が行っていた。肋骨を動かすのがポイントなのに何やってるんでしょうね)肋骨の上部に息が入るようになると、上丹田が刺激され頭が冴えて落ち着いた状態になる。
 肋骨の上部が回らない限り、ずれ回転運動が成立しない限り、本当に肩はきれいに回ることはない。自由脊椎=腰椎の三番から胸椎の十一番が下部、胸椎の十番から六番が中部、そして残りの胸椎の五番から一番までが上部。下部から少しづつ山の麓から頂上を目指す形でステップアップしていく。
 初心者のうちは「稲穂振り」という現象が起こる。肋骨の上部は疲労が最も激しい部分であり、その拘縮を取ることを目的とするならば正しい全身運動(文中では「するのでなければ」となっていますが、これは多分誤字ですね「であれば」の間違いでしょう。あ、違うか上部は動かない・動かせないから、上部を動かす目的でなければ「稲穂振り」現象は可とするだから「なければ」でいいのか)。習熟していく内に、体の曲線・たわみが直線に近づいていく。起点も高くなっていく。軸をキープしたまま、ずらし回転運動を行うことができるようになる。肋骨の上部が動くということは、その支えとなっている中部・下部を必要なだけ格定されなくてはならない。つまり肋骨を動かすトレーニングでありながらも軸を通す訓練でもあると。回転運動を行う以上、体軸を動かすわけで、垂軸と体軸の分離と一致を行う必要があるので。
 腹式呼吸は肺の下部、胸式呼吸は肺の上部を使えるようにするもの。どちらも重要であるので出来るようにならないといけない。

■甲冑戦の真実 Part1 西洋甲冑戦「STEEL! 」激戦必至! 現代に蘇る"騎士バトル"を観る!&Part2 「大阪の陣」再現! ガチ甲冑合戦レポート"合戦"で検証する、武の実戦性
 甲冑戦の再現という面白い取り組みですね。しかし実戦で再現というのは面白くはあっても、陣形でのそれが伴わないといけませんし、なにより弓矢がないとどうなんでしょう?長槍の用意や騎馬の用意とか、まあそこはひとまず省いてということなんでしょうけどね。個人的にはそれを含めてさらに糧食の準備、兵站とかやってほしいですね~(出来るわけない)。

■短期集中連載 沖縄拳法大平道場 西原治沖縄拳法に伝わる"手"の極意 第三回「"重み""ムチミ"の技法」
 縦回転の動き、パッサイの諸手突きの動きを「波返し」とする。波が返っていくように相手に重みを伝える。個人的に重みを伝える、流し込むというテーマがあって、写真の「波返し」の突き・蹴りが自分の考えていたものと同じで興奮しました。そうか、諸手突きのときの遣い方でつくと下半身の力をうまく伝えられるのか、なるほど。前蹴りも腰の小さな縦回転だけで重みを乗せられると。五十四歩の型にある両手受けに応用すると、相手の蹴りを吹っ飛ばせると。
 接触反応、触っただけで相手を崩していく、皮膚感覚の話なのかな?「ムチミ」という話があります。これはちょっとよく理解できないですね。受けてみないとわからなさそう。一定の圧を与えることで相手が下がれずに崩れ落ちると。ムチミの受けによって相手からは遠く、自分からは近くという間合いのコントロールが出来る。

■平上信行が"現代"日本武道を斬る時代考証の裏表「秘剣の数々からみる超絶的秘傳法世界」
 前半は膨大な流派が存在し、それが失伝・消滅していったという話。後半は前回の続きで、秘剣の話です。剛刀を自由自在に操る「不有劍」、空中殺法「天狗劍」、背後からの的に対する「後眼劍」、多人数に対する「宿露劍」などが紹介されています。神代秘伝剣法「国譲逆鉾劍」とか、道教由来の「三星劍」とか厨二心をくすぐるものが多いですね。
 「魔傳血脈鬼盃劍」(盃は旧字)「晦日新月目光劍」相手の秘傳・極意を奪う魔剣。対鉄砲の秘剣「飛鳥劍」「玉龍劍」。そして居合が生まれると当然それに応じて居合の秘剣が誕生したと。

■大宮司朗霊術講座「心理学的な原理に基づく霊術の技」
 観念運動、心理的効果・思い込みが効果をもたらすという話。自己暗示が自分の力になる方法として、正座凝念法・宇宙大霊同化法・精気吐納法などが紹介されていますね。

■安田洋介太極遊戯「兵器(武器)修練が養う功夫
 強い筋力の重要性、日本の太極拳でその重要性が認識されないのは武器を使ってないからでは?とのこと。普通は800~1000グラム、重いものだと1500グラムにもなる。中国でも演舞用の400~500グラムの軽いものが主流になりつつある。勁を鍛えるのには重い武器を扱うのが良い。昔は30キロ以上ある大刀を使う人もいたと。

*1:だと間違いになるのかな?「上がらない腕」と「腕が上がらない」を使い分けている可能性もありますからね