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2015CSファイナル 今シーズンのパ・リーグは工藤公康のために存在するのか

2015CS 日ハムVSロッテ―の続きになります。

 ―タイトル通りですが、CSファイナルステージを見て、今シーズンのパ・リーグ工藤公康のために存在したなぁ~としみじみ思いました(甲子園は清原の~という名台詞をもじって)。

 1stを見て、ロッテファンかな?多分違う他球団ファンだと思うんですが、これはロッテが鷹に勝つんじゃないか!勢いが凄いみたいなコメントが結構有ったんですけど、あるわけないだろと思ってみてました。6試合でいまの鷹に2敗しか出来ない。4勝2敗できると思っているのか?とヤレヤレ状態でした。

 04年西武が鷹を倒した時は、監督が伊東さん。そして言うまでもなく05と10年の相手はロッテ。CSで涙をのんできた鷹にとって絶好のトラウマを晴らす相手、雪辱にこれ以上ない相手だったわけですね(本来は相手が1位で、こっちが3位でやりたいんですが)。これを知った時は、工藤さんはおいしいなぁ。これでその名声・地位をホークスフロント内に確固たるものとするだろうなぁ、と思いましたね。

事前に消耗していたロッテ

 後からわかった話になりますが、ロッテは実はいつも福岡に来るときに使っている宿舎を利用できなかったとのこと。理由はビールかけが出来ないから。そのためハムがおさえていた宿を譲ってもらって、そこを利用したとか。

 だからなんだ?と思うかもしれませんが、いつも利用しているのとは違う環境で過ごすというのは、微妙にストレスを感じるものです。いつもと同じ感じで過ごす・そして戦うというリズムが乱れる。そこがいつもよりもすごく過ごしやすくて、リフレッシュできて、やるぞ!となれたのならば別ですけどね。そういう微妙なストレスが精神面に与えた影響を無視できないと思いますね。

 ちょうど、ドイツがワールドカップで優勝した時に、自分たちのベストパフォーマンスが引き出せるようにと、一から宿舎というか、滞在するキャンプを作ったという話がありましたよね。日本は真逆でお偉いさんの意向優先で、過ごしにくいところを選んだ結果本来のパフォーマンスを発揮できずに終わったと、その話を連想させますね。

 また、05年と10年の時は、相手がどちらも西武だったために、千葉・埼玉という場所、殆どホームで戦うことが出来た。短い移動距離で、いつものように福岡に乗り込むことが出来たと。

 しかし、今回はCS進出が決まるまで、ぎりぎりのゲーム差で戦い続けた。ペナントが終わったのが10/6で、CS1stがすぐの10/10。休めるのは3日しかなかった。マリン→宮城→札幌→福岡という移動をして、クタクタになってしまったと。試合感覚が開かなかったという点では、打撃感の問題がクリアされるので有利だったのでしょうけど、投手陣には辛かったでしょうね。特に中継ぎは。

 ハードな試合スケジュールに、ハードな長距離移動、これで選手の心身はかなり疲れてしまった。この時点ですでに勝負はかなり不利な条件にあったということですね。

ファイナルで勝つためには1stで涌井を使うべきではなかった

 逆転してCS出場を決める。そして、最終戦で中4日で涌井が最多勝を上げる。という二つの奇跡というほどではないですけど、「勢い」をつけるハードルをクリアしました。ロッテというチームがCSで勝ち上がるために、最終戦で涌井に最多勝を取らせるということをした決断は、否定的な批判がなされていますが、個人的に正しかったと思います。チームが涌井に最多勝を!と一つになれたわけですから。

 しかし、CS1stで涌井を最終戦に使ってしまった。問題があるとすれば、こちらだと思いますね。ロッテが勝つためには、涌井がファイナルで初戦と最終戦に投げること、特に初戦で涌井で勝つことだったと思いますね。最終戦は、無論勝たなくてはいけませんが、涌井で勝ちがつく必要はない。そこまでとにかく持っていくことでしょう。

 ロッテの投手陣、先発を見た場合、ホークスに勝つとしたら柱になるのは間違いなく涌井。涌井で2勝する算段を立てないといけない。あとは残り4試合で2勝することを考えればいい。そして最後の試合に全てをかける。今年のホークスに勝てる投手というのは他に見当たらないわけですから(他チームにだって存在しない状態です)、「出る」ことでなく、「勝つ」ことを考えたら、涌井は絶対とっておかなければいけなかったはず。

 無論、ファイナルに出ないと意味が無い。出られなければ、CS突破の可能性すら消えるのだから、最終戦で涌井を行かせるのが当然という考えが主流になると思いますけど、今年の鷹&鴎の投手陣を比べた時に、出ただけではノーチャンス。まず、間違いなく負ける。何か奇策・秘策としての先発投手がいたならともかく、鷹キラー・鷹に苦手意識を抱かせている唐川を使うでもなく負けたわけですから、涌井を温存して負ければ、もうしょうがないと割り切る必要性があったと思いますね。

苦しい鴎の先発陣&枚数

 今年の鴎の先発投手陣は―(イニングの端数省略)

○大嶺 3.17 24試合 8勝7敗 133回

○石川 3.27 27試合 12勝12敗 178回

○涌井 3.39 28試合 15勝9敗 188回

○イデウン 3.84 37試合 9勝9敗 119回

○チェン 3.23 14試合 3勝2敗 61回

 ―となっており、古谷・藤岡・唐川は先発として投げたり、投げなかったりでしょうか?ちょっと良くわかりませんが、50~60イニング程度であり、先発として機能したとは到底言えない数字です。チェンは終盤調子をあげていたので、CSで計算できる存在ではありましたけどね。

 一番手涌井・二番手石川・三番手大嶺、ここまでは良いですけど、456番手がいない。イデウンは中継ぎに回されたことを考えると、4番手としていっていいか微妙なところ。ファイナルでは中4日で使うとしても計算できる先発が5枚必要。CS1stでただでさえ少ない先発を3枚消費してしまえば、ファイナルで相当きつくなる。

 ファイナルの3試合目から中5日でようやく1stで投げた投手を使える。最初の1・2試合で、相手は先発1・2番手を使ってこれるのに対して、こちらは4・5番手を当てないといけない。三番手以内に入っていなかったチェンが対ハムに相性が良かったこともあって、チェンを使えた。よって三番手大嶺を鷹の初戦に当てることが出来たので、「大嶺・古谷・石川」という順でしたが、やはりこの先発陣はきつかった(初戦勝てていれば、2・3試合目の内容はまた違ったのでしょうが)。

序盤は優勝チーム有利、中盤は実は1st突破チームが優位

 こちらが先発の3番手か4番手を相手に当てるということは、相手の1・2番手が来る最初の1・2試合目を終えてしまいさえすれば、今度はこちらの1・2番手という優秀なピッチャーを相手の3番手以下の投手に当てることができる。却ってこちらのほうが有利になるんですね。

 前回、CSでは先手必勝。それはセオリーを実行するがゆえに、地力の差がもろに出る。セオリーを着実に実行できる=地力で上回るから、初戦で勝利して、それ以後も有利にすすめると書きましたが、ファイナルに限って言うと、1・2試合目にはこちらが相手の戦艦に横腹を晒す不利な状況であるのに対し、その状況を躱すことさえできれば、逆にこちらが相手の横腹をつける有利な状況になるわけですね。

 ファイナルでは確か8回やって、初戦とったチームが全て勝ち上がっていたはずです。それは上位・優勝チームはともかくとして、下位チームは3・4試合目には1stで使ったエースが出てくる、そこまでで五分ならエースを出した試合で勝って有利にできるという見通しがあるから。05年や10年はその状況とちょっと違いますけどね(※)。去年はハムが1stで3枚投手をつぎ込んで、大谷や上沢などを使えない。逆にこちらが1・2番手を使えて、優位に戦える。相手は1・2番手を序盤は使えないという展開でした。

 (※10年は、成瀬無双でCS1stで投げて、今なら中3日で投げられないのが、その時の日程では中4日あって、そのままファイナルで初戦で投げられたんですね。そのため初戦と6戦目で投げて2勝出来たという違いが現在のCS制度に存在しますね。今後もこの日程、初戦にCS1stで投げた投手は中4日でファイナルで投げられないという形で行くのではないかと思いますね。

 05年は逆に1・2番手の投手でどちらとも試合を落とすという展開になっています。まあラビットボール時代なので先発投手が重要ではなかったという要素が大きいでしょうか。六戦方式ではなく五戦方式だったので用意する投手は5枚で良かったですしね。)

 去年のCSは、鷹の先発投手陣事情が怪しく、逆にファイターズは先発は良かった。鷹に強い中村とメンドーサもいたという形だったので、ハムは有利・まともに戦える状態だったわけですね。鷹と3勝3敗(アドバン含まず)で五分でしたし。

 去年のCSのように、ファイナルでも使える先発が存在する。最低5枚、それ以上あればなおよし。ただ、去年は5戦目・6戦目に使う投手が大谷・上沢という若い投手ということもあって、1stで投げてファイナルでも結果を出すということには至りませんでした。しかし戦前から、事前にある程度計算が立っていたのは事実です。

 で、話は戻って、やはりロッテの先発は3枚まで。涌井・石川・大嶺の三枚まで、あと二枚鷹と戦える先発が欲しかった。1stでチェンを使うことで大嶺を使えたのは大きかったわけですが、鷹とのその後の勝負を考えると、札幌での最後は大嶺に託すべきではなかったでしょうか?

 1と6戦目が涌井で、4戦目・5戦目が石川・チェン・大嶺で状況次第。ファイナルに出るだけではダメ、勝つことを念頭に置いて戦って欲しかったというのが個人的感想です。

ロッテはCS経由の日本一戦略を放棄すべき

 本来、こういう手もあったのと思うのですが、それが出来なかったのは、ロッテの「ゴールデンイヤー」という言葉にあったのではないでしょうか?そもそも5年周期で日本一になれるというような変なプレッシャーを掛けてはいけない。負けて当然勝てば凄い!奇跡!というノーリスク・ハイリターンだからこそプレッシャーを感じずに思い切って戦える。それが絶対CSファイナルに出ないといけない、勝たないといけないというプレッシャーになってはダメでしょう。これは球団の戦略やファンの姿勢が間違っていたと思います。

 伊東監督が、ゴールデンイヤーでプレッシャーを感じていると言っていました、負けたら解任という報道もありました、それでは初めから勝てない。負ける確率を上げてしまう誤った環境を作ってしまったと思いましたね。CS・プレーオフは、出れば出るほど選手の身体を傷つけるもの。無理にCSなどでシーズンを伸ばしてしまえば、来年に響く。ロッテが下克上の後ガクッと戦力を落としたのと同じように、その後の2年・3年まで犠牲することも考えられる。

 若くて、丈夫な選手がいて、彼らのキャリアを積むためならいいですが、ロッテは若手で経験を積ませたいというのは鈴木、中村、田村くらいでしょうか?大卒・社会人の即戦力投手を補強する傾向のあるロッテとして、投手の寿命を縮めるCSで下克上戦略というのは諸刃の剣。今年の鷹を見るに、この「Aクラスに入ってCSで日本一を狙う」というあわよくば作戦はもはや通用しなくなったと考えて、戦略を一から考えなおす時が来ていると思いますね。

 実際、かなり動きが硬かった。プレッシャーに加えて疲労が凄かったのでしょう。怪我人情報も多かったですしね。クルーズは直前にふくらはぎやって、角中も骨折明け。デスパイネキューバリーグで一年中試合している状態、大谷も怪我明けで、1stでは機能しなかった。内が救世主として出てきたのが幸い。清田も確かCS終わった後、怪我で肩が上がらないとかあったような?どうだったかな?西野の離脱もありましたし、とにかく戦前から相当きつい状態でしたね。

 もし、このような不利な状況からでも勝つとしたら、初戦を取ること。初戦を取って残り5試合を3勝2敗でいいという形にできれば、まだチャンスが出てくる。鷹も取らないといけない初戦を落としたという焦りが生まれプレッシャーが出てきて、動きが鈍る。そこにつけいるチャンスが出てくる。ロッテが勝つためには初戦を絶対取ることが必要だった、最低条件だったわけですね。その初戦を落としたからこそ、もうアウト。田村は自分が後ろに逸らしたせいだと泣いていましたが、それだけではなかったはずです。これで殆どCSの負けが確定したんですから。

 田村以外のチームメイトも、同じように感じたでしょうね。残り4勝1敗というのは相当きつい。何より相手には千賀がいる。先発がそろっていて、なおかつロングリリーフ・第二先発がしっかり備わっている。千賀が降りたら後ろの投手が使えない・誰もいないとかならともかく、今シーズンは最後までコンディション調整を万全に整えた最強リリーフ陣がいるわけですから、希望は皆無です。

 去年はアホみたいに中継ぎつぎ込んで終盤バテるという、いつも風物詩のパターンをまたか…という形で繰り返して、結果大事なCSで勝利パターンが打たれるという事もあっての苦戦でしたからね。その去年と比べて先発の枚数は整っている、第二先発がいる、リリーフ陣は完璧に近いという状況。これでどうやって勝てというのか?

事前に戦う準備を済ませていた工藤ホークス

 工藤監督、さすがだなぁと思ったのは、去年と違って、下手にフェニックスリーグなどで試合しに出かけずに、福岡に残ってコンディション調整を優先したこと。「ここでやるんだから、ここでずっとやっといたほうが良い。人工芝と天然芝は違うし、同じ人工芝でも違う、なれた環境でやること、環境を変えないことでスムーズにゲームに入れる。遠征していつもと生活リズムが変わるのもマイナス。下手に天気が荒れてゲームができなくなる可能性があるならなおさら」

 ―というようなコメントを残して、紅白戦で細かい状況をメインに調整を進めたことですね。しっかり準備を優勝前から見据えていたということで、大したものだなぁ。これは試合日程空いても関係ないな。多少不利でも、きっちり立て直してくるだろうと安心したものでした。

 まあそもそも18ゲームも差が開いているチームということでしたしね。戦力差・実力差が試合前から有り過ぎた。その差がモロに出た形になりました。これでも終盤は調整で勝ちを拾いに行かなかったわけで、もし全力だったらもっと開いたでしょうからね。指揮官が去年のままならばまだワンチャンあったんでしょうけど、今年のペナントの戦い方を見て、まあそりゃ不可能・ノーチャンスですよね。

 長くなったので、実際の試合についてのコメントは次回。鬼門のCSも、当たり前のようにペナントを戦って終えれば、当たり前のように勝って終えることができるのだということを証明した「工藤公康ホークス」のシーズンになったという感じでしたね。

 鷹の強さ、ホークスの強さばかりが目立って、パを見ていない人には「工藤公康ホークス」ではなく「ホークス」の部分しか見えていないのでしょうけどね。とにかく2巡目までに相手投手を攻略するのが上手い、戦略が当たるという凄さとかもうちょっと注目されても良いんですけどね(それも、選手の地力があっての話でしょうけど)。

続き→2015CS ホークスVSロッテ