別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

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白鵬の発言で思うこと

白鵬が取りなおしの必要性に異議を唱えて問題になった話について。

■異議申立てのない異常性

 34回目の優勝記録を達成した場で白鵬が取り直す意味があったのか?子供が見たってわかることだと判定に疑問を投げかけました。そして肌の色は関係ないでしょうとも。

 この問題が意味することは非常に大きくて、まず力士がそういうことを言うべきではないという常識があること。普通の競技・スポーツであれば、選手がそういう判定について疑問があれば然るべき手順を踏んで異議を訴えるのが普通であり、常識。しかし相撲界ではそういうものがない。あの判定は間違っていたとなった場合、どうなるか?おそらくどうもならないでしょう。これは正直「スポーツ」としては異常なこと。

 以前、どっかで書いた通り、相撲は神事・宗教行為というファクターと、興行と、スポーツという3つの要素からなっている普通のスポーツ、興行スポーツにはありえない要素を含んで構成されています。

 まあ、ですから髷結いたくないとか、寒いから服着てやりたい、あるいはTシャツにスポンサーのロゴ入れたいとか、そういうのはもう前提としてありえないわけです。「宗教要素」がありますからね。

 そこら辺については、はじめから相撲に参入する前に理解しているでしょうから、別にケチを付けることもないでしょう。問題はそういう「宗教的要素」ではない部分へのクレームですね。

 白鵬の疑問、判定への注文というのは取り直したことへのクレームではないでしょう。正確には審判達の「日本人贔屓がある」ということでしょう。そこにクレームを付けたいわけですよね。別にそれで負けたとしても、白鵬はなんでとりなおされたんだ!なんで負けにされるんだ!ということへ憤ってるわけではなくて、背後にある問題。もういい加減にしてくれよという心情ですよね。そちらを見なくちゃいけない。

 そして大鵬を引き合いに出して、大鵬はクレームなんかつけなかった。大鵬を見習え!というのは筋違いも甚だしくて、判定に対してクレームを付けたいわけではないわけです。相撲界の構造的問題や背景にこそクレームを付けたいわけでしょう。

 白鵬が文句を言わなかったら、疑問を提示しなかったら、果たしてなにか変わるのか?良くなることがあるのか?改善されることがあるのか?と言われたらまずないでしょうからね。言わずとも良い方に変わるなら、黙ってるでしょうけど、言わなきゃ変わらないなら、そりゃ言いますよ。問題は、そういう疑問だったり、力士の意見や主張があった場合、それを組み上げるルートがないことでしょう。

 なんか的はずれなスポーツ研究者が、外国人に日本人の論理・情感はわからない。外国人は一からきっちり論理で説明して納得させないと理解して従ってくれないみたいなことを言ってましたけど、それもないとは言えないでしょうけど、こういった相撲的な価値観、力士は文句を言わずに黙って従え!というような価値観は日本人でもまるで理解できないでしょう。

 少なくとも己は理解できないですし、ブラック企業みたいで気持ち悪いなと思いますね。

 そもそも相撲は番付上なら先輩・後輩関係ない。強い奴が偉いという実力主義的なシステムを採用しています。その一番偉い、ある意味神とされる横綱が、運営をしている親方衆に黙って従えと言われても、理解出来ないのは当然じゃないでしょうか?力士までは実力制度が通用するが、引退した力士にはそれはないと言われても、?となるのではないでしょうか。

 仮に親方と書いて字のごとく、「親」なのだから従うべきだという論理になったとしても、1から10までハイハイ従えというのは無理があると思いますよ。特にモンゴルは若いものが尊重される文化だといいますし、相撲界のトップは自分だとなったら、俺に従え!―とはならないまでも、せめて意見の一つは言わせて欲しいとなるのは当然でしょう。

 こういう時に、いつも疑問に思うんですが白鵬の言い分と、事実の検証をして、なるほど「白鵬の言うとおりだ。これは変えなくちゃいけない!」と言うか、それとも「いやそれは違うよ、白鵬。これこれこうなってるし、こうだから、それはあってるけど、これは違うだろ?」となぜ出来ないのか?

 審判団の厳重注意なんてはっきり言って異常な対応で、まず徹底的に話し合わうべきでしょ。話し合いもせずに何も解決できない。意見のスレ違い、思惑の不一致が起こっているから問題になっているのに、何をしているのでしょうか?

 じゃあどうやって異議申し立てするの?協会が間違った場合はどうするの?こういう腐った組織だから八百長問題で潰れかけたんでしょうにねぇ…。メディアで白鵬の問題行動と書いてるのは、頭おかしいんじゃないですかね?意見をいうのが問題行動ならマスコミがしている事自体が問題行動でしょうに

小錦さんの解説

 んで、松本人志さんの番組でこれを取り扱っていて、まっちゃんは「白鵬さんにそう思わせているなら、我々サイドにも問題がある」という話をしていました。まずあるのかないかを調べてはっきりさせる。そしてあるのならば対策を取る。アタリマエのことですよね。

 そして小錦さんが出てきて、まっちゃん同じく、あれは白鵬が勝っていたと。小錦は自分がやってた時もそうだった。しょっちゅうだったよとのこと。相撲が日本でのスポーツである以上、日本人贔屓があるのは当たり前。興行上の理由もありますからね。それはノルディックだったか?スキーで日本人が不利なルールに改正されたように、その国の人が興行を支えている以上はある程度は納得してもらわないといけないこと。

 ただ、相撲の場合は「預かり」という判定方法があったように、大名のメンツがかかっていたため、お抱えの力士が負けてしまうと問題になるから、その場合は「預かり」というジャッジを下す場合があった。ヤクザの代打ちシステムみたいなもんですね。そういう名残があって、親方衆が下で物言いを付けるというシステムですから、いい加減それをやめてもいいかもしれません。どう見てもその結果公平・公正なジャッジがなされるような制度じゃないですからね。行司、木村なんとかさんでしたっけ?そういう木村集団が下でジャッジして物言いとかに変えたらいいんじゃないでしょうかね?

 びっくりしたのが、小錦さんが人種差別があるから横綱になれないという発言で問題になったのが、実は本人ではなく一緒にハワイから来た誰かがそういう話をマスコミにしたこと。それがまるで本人の発言のように書かれて問題になってしまったこと。そして小錦本人はそういう釈明会見で自分は言ってませんと説明することも出来なかったと。

 どう考えてもそれは異常な社会ではないでしょうかね?私の発言ではありませんと言えない社会なんて恐ろしくしょうがないですよ。その後しばらく記憶が無いと言ってましたよね。もしその時、小錦ファンだった人がその発言を聞いてショックを受けてファンを止めたとして、今また本当の話を聞いたらさらに二重のショックをウケるのではないでしょうか…?

 仮に己が小錦ファンだったとして、小錦がそういう人種差別云々発言をしていたら、ファンを辞めるどころか見下す、あいつは駄目だ!なんて思うようになってもおかしくないですし、そういう非難・罵声を浴びせる人間も少なくなかったんじゃないでしょうか?

 Wiki見るとインタビューで言ってないと釈明したけど、本当は言ったんじゃないか?とバッシング報道が巻き起こって会見へという流れのようですけどね。しかしそういう記事を書いたきっかけを作ったのはニューヨーク・タイムズですか、クソですね、ホント。

 それはさておき、武田鉄矢さんがコラムの話で大鵬さんの話を引き合いに出していました。45連勝かな?その取組が取りなおしで負けてストップしたが、実は誤審で足が出てて、大鵬は勝っていた。そのことを聞かれた時に、「そもそも横綱たるもの取り直しになるような微妙な内容であってはいけないのだ」と意に介さなかったという話があり、そのエピソードを引き合いに出していました。

 これは二重におかしいところがあって、それはまず大鵬が素晴らしいこと。白鵬もその大鵬を目指してほしいというエールならともかく、誤審を許容せよというのは筋違いであること。そもそも白鵬は「誤審」を問題にしているわけではないでしょうからね。

 そして言うまでもなく、一度勝負が決まって、ゴネてなんとかなる世界ではないこと。そしてもしそのような「納得出来ないねぇ!」と不満を表したらどうなるか?大鵬も叩かれるし、男らしくないとか言い出すでしょう。そして一番のポイントは、そのジャッジを下した行司・親方衆が一番誤審の責任者として、世の中から叩かれている時に、それをやってしまったら彼らがずーっと非難され続けるし、後悔することになるから、当の本人が許す以外その問題を収めることが出来なかったでしょう。そういう状況になったら、もうむしろ殆どだれでもそう言うしかないでしょう。

 メジャーでノーノーだか、パーフェクトだか達成したのに、誤審でそれがパーになってしまったケースが有りましたけど、ピッチャーは別にそれで文句を言わなかったでしょう。それは文句言って達成扱いになるならともかく、そうならないですし、なにより審判が一番メディア・世間に叩かれて苦しんでいるんですから、そりゃ本人が許さなかったらしゃーないでしょうに。そういう構造があることは当たり前でしょう。

 そういえば篠原が誤審で金メダル逃した時も「自分が弱いから」発言をしましたけど、そういう論理ですからね。審判を助ける、責めないというよりも、そういう文句をつける発言をすると、男らしくないとかわけわかんない論理で叩くからでしょう。

 小錦さんが白鵬は悪いうわさがない、親方衆にもみんな評価されている。悪く言われていない。その彼がこういう発言をしたのだという意味を考えて欲しいとおっしゃってましたがそのとおりだと思いますね。問題児朝青龍ならともかく、メガネ学級委員長的な、優等生白鵬の発言ですからね。ああ、そうか優等生の発言だと、角界の改革をしなくちゃならないから、「問題児白鵬」として白鵬の評判を下げようとしているという力学なのか、最近の批判記事というのは。

 朝青龍といえば、韓国の記者かなんかに日本での差別云々を問われて、「そんなもんないって言ってるだろう!しつこいぞ、キムチ野郎!」といった話がありましたね(笑)。

■対稀勢の里、変化の話

 気になって対戦見てみたんですが、稀勢の里戦で見つかった動画が2つ。今場所変わったと言われる相撲も見ましたが、例の取りなおしの相手となった稀勢の里。もうお前とはまともにやらないぞ、という協会への意趣返し的なものがある変化なのか?と思いましたが、一度白鵬を破ってる相撲を見ると、白鵬は後の先使えてない。まともに立ちあってますね。いかな白鵬といえども稀勢の里には後の先では勝てないということでしょうか。

 んで引いて白鵬が勝ってるものがあって、そこで稀勢の里が何回もつっかけてるんですね。最後の仕切りで稀勢の里が呼吸を合わせられずに二回立ち会いに失敗。つっかけてしまう。そして三回目の仕切り直しで白鵬がぱっと引き落としておしまいという相撲がありました。

 相撲って独特な競技で、普通こちらのペースで戦い、相手のペースにしないようにするもの。こっちが100の状態で、相手を0の状態にしたいというのが普通の競技ですね。でも相撲は立ち会いで、相手と呼吸・タイミングを合わせて立たないといけない。そうじゃないと試合が成立しないという不思議な競技体系になっているんですよね。

 3回仕切りますが、はっきり言って無駄。何してるの?と思えますが、要するにその間にお互いの呼吸を図りあう、見えない間の勝負をするという形になっています。その間合い・呼吸の勝負を楽しむんでしょうね。決してガンの飛ばし合いを楽しむのではなくて。3回のうち、お互いが合意したら1回目で勝負を開始してもいいというルールは非常に独特でおそらく他に見られないものではないでしょうかね?

 んで、稀勢の里の場合、多分、その呼吸を合わせるということをしていない。100%自分の立ち会いで立たないと勝てないと思ってるから、一、ニの三!でがむしゃらにイチかバチかで突っ込んでるんじゃないでしょうかね?だから相手を見てないので引き落としで負けている。変わった横綱もそうだけど、稀勢の里は何を見てるんだ?と解説の人が言ってましたけど、そういうことなんじゃないでしょうか?白鵬があれは変化じゃない、あれを変化と言うなら相撲をちゃんと勉強して下さいと言っていることから考えてもそういう要素があるんだと思いますけどね。

 横綱である以上必ず相手を受ける、というか強い力士は遅れて立つもの。相手が変化してもそれを無効化するためにはそれがいいですしね。呼吸を微妙に計り損ねて変わられて負けるというのが、まず負けない相手に負けてしまう・格下に一杯食わされるパターンですから。その可能性を摘むには、見て立つのがいい。言うまでもなくそうすれば立ち会いで十分なエネルギーを発揮できなくなるわけですけどね。それでも有利に持っていける技術がいわゆる「後の先」というわけで。

 まあ、稀勢の里ももうちょっと立ち会い考えてやらないとダメですね。考えた結果、勝つ可能性があるとしたらということなんでしょうけど、ちょっとひどい結果になってますからね。万一横綱になって、横綱対決になっても今の立ち会いをするなら白鵬からすると「きったねぇことしやがるな、コイツ」ってことになるんじゃないですかねぇ?

 とにかく、強いもの同士がガツンとぶつかり合うのがみどころなんですから、しっかり呼吸合わせてやって欲しいですね。

■将来の親方・理事長はどうなるか?

 で、おそらく問題の本質というか、白鵬が一番不満に思っているのは、国籍問題でしょうね。だから国籍は関係ないじゃなく、ごまかして「肌の色」にしたんでしょう。肌の色は一緒ですからね、日本人とモンゴル人は。親方になるのなら帰化しないといけない、モンゴル国籍を捨てないといけないということでしょうね、彼が不満なのは。せめて二重国籍を許容する方向にでも行けばいいんでしょうけどね。白鵬はモンゴルでも政治家なり、ビジネスマンなりそういう未来があるわけでしょ?だから日本に帰化したくないわけです。

 平成の大横綱という称号が意味あるのかどうかさておいて、朝青龍白鵬は特別な存在、ヴェルオリですよね。相撲文化を復活させた貢献者ですから、ちょっと考えてあげたほうがいいでしょう。朝青龍はともかく白鵬はちゃんとしているんですからねぇ。実績から言って相撲協会に残れば、彼が将来の理事長になるんでしょう?その彼をないがしろにして大丈夫なのか?と思いますよね。

 白鵬が大記録を残して、やーめたと将来協会に残らずモンゴルに帰ってしまったらどうなるか考えたことあるんですかね?相撲協会に元横綱がいなくなる、権威のかけらもなくなる事態が起こってしまいますけど、大丈夫なんですかね?

 また、今後おそらく日本人横綱はでないでしょうから、でても一人・二人、それ以外はモンゴル人だらけになって、モンゴル帰る人がいても逸ノ城をカウントしても最低3人はモンゴル人横綱ですからねぇ。鶴竜(であってるかな?)と日馬富士白鵬朝青龍になれると思いませんが、少なくとも横綱で在り続けるでしょう。他にもモンゴル人力士はいるので、誰か親方になってもおかしくないですよね。

 元横綱でなくてもモンゴル人親方だらけになる事態は当然考えられるわけで、そういう時代が来た時に、白鵬が泣く泣くモンゴルに帰ることにでもなればどういう影響をもたらすか。30~50年後かわかりませんが、日本人親方&力士VSモンゴル人親方&力士なんて構造になってしまってもおかしくないでしょう。ちょっと今のうちから考えといたほうがいいんじゃないでしょうか?

 国籍なくても特別待遇で親方にするから、日本人贔屓は興行上の問題もあるから、ゆるして―とやって懐柔しておけばいいんじゃないでしょうか?