別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

メジャーの日本人ピッチャーの話


 ―そんな話をちょっと。以前、【ストライクゾーン・統一球】 国際基準についてという記事で日本の投手とメジャーの投手のフォームの違い、マウンドの違いなどについて書きましたが、それについて田中のフォームは果たして大丈夫なのかという話。
 体格の良くない日本人投手に向いたフォームというのは前に踏み込んで、ホームや打者までなるべく近づいてぎりぎりの所でリリースするというもの。対照的に体格のいい向こうの主流は、身長・リーチの高さを活かして角度をつけて投げるために踏み込まないで手投げのようにその場で投げる。そのフォームに適するようにマウンドが作られている。日本は踏み込みやすいように低く・柔らかいマウンド。そしてアメリカのは高く硬いと。

 ―まあそんな話を書きましたが、田中のフォームは以前工藤さんが解説していたように、日本一打者の手元でリリースするフォーム。それによって変化球がギリギリまで変化せずにバッターが見極められないという話をしていました。それこそが田中の活躍を支えた一つの要因なんでしょうけど、それはすなわち日本の投球・マウンドに最適化した合理的なフォームということが出来ます。
逆に言うと日本に最適化した投球フォームは、アメリカで最適化されたフォームではない。真逆のフォームになってしまうリスクが有る。
 真逆とまで言えるかどうかはわかりませんが、アメリカの主流とは言えないフォームであること。上原のような投手は元々向こうの投球理論を参考にしたので、テイクバックが小さくあまり踏み込まないフォームです。西武の西口のようにヒラリと投げた後伸び上がるようにして、投げることで前に踏み込むよりも上下の重心移動を上手くピッチングに利用しているということなのでしょうか?とにかく上原のようなフォームは向こうの主流に近い、マウンドに適応しやすいフォームだといえるでしょう。

 前に踏み込むことが必ずしも、成功に結びつかないというわけではないのが、黒田という偉大な成功例を見るとわかります。彼は普通に前に踏み込んで投げていますから。ただ黒田はメジャーに32か33に行って7年目というように、かなり遅い年齢で向こうに行ったケースです。ダルや田中のように24、5という若い年齢で行くのとはまた異なってくるという気がするのですね。
 元からの頑丈さとか、投球スタイルとかで色々関わってくるのかもしれませんが、今後10年から15年は先発として投げるのなら、今のフォームをアメリカに合わせたフォームに変えていくほうがいいのではないのか?という気がするんですよね。ダルを見てわかるように、短期的には間違いなく通じる。しかし7年後三十という年齢を越えて、体質も変わってなかなか疲れがとれなくなったり、身体が硬くなって可動域が小さくなってくる頃に、それで大丈夫なのか?長期的な故障リスクが高まってしまうのではないか?と思ってしまうのですよね。

 黒田は
調整法とか向こう流を多く取り入れたというので、黒田を見習えば7年は間違いなく大丈夫なんでしょうけど、彼らが四十歳近くまでやるならば、15年先を見据えたことをやらなくてはならない。ならば投球フォームは前に踏み込むよりもその場で手投げのようにするフォームに変えるべきではないのか?ダルなんか腰を痛めていますし、負担がかからないような、故障リスクを減らすためのフォームを新しく作り上げるべきではないかと思うんですけどね。
 例えば、サファテとかスタンリッジとか外国人投手のフォームというのは、投げた後
殆ど踏み込まずに、その場で時計回りするような形で、真上から腕を振り下ろしてもバランスを崩さないことを念頭に置いたようなフォームをしています。それがベストで、それがむこうの主流だかどうだかとわかりませんが、そういうようなフォームをもっと参考にすべきではないでしょうか?
 以前、松坂はもう限界で向こうのフォームを参考にしたり、投球内容・ピッチングの組み立てをかえたり、一からやり直すべきではということを書きましたが、松坂はコーチとともに一からフォームを作りなおしたようですね。残念ながら開幕ローテは逃したようですが、それでもそのうち入れそうな良いピッチングをしているとのこと。コーチは人種差別的発言がどうしたこうしたで問題になっていましたが、なかなか良い取り組み方なのではないでしょうか?チラッと見ただけなんですが、やはり以前のような前にグッと踏み込むようなフォームではなく、その場で投げるフォームに見えました。日本人投手でそのような「適応」を図った選手はまだいないので、結果どうなるか注目したいと思っています。多分、そこそこの成績を残すのではないかと思うんですけどね*1

 そういえばグライシンガーが復活したということを思い出して、今一度見直した所、彼はやはり外国人投手には珍しく、日本人投手のように前に踏み込んで投げていましたね。そういう意味で、もう日本で現役を続けるのは無理だというような投手でも、日本流のフォームを取り入れることでまた復活するというケースもありそうです。今後そういう投手が出てくるかどうかに注目したいですね。
 個人的にウルフという投手については評価が低いです。成績が下降していますし、年齢的にも成長が見込めない。しかしたまたま見た時、少し前に踏み込むような投げ方をしていたので、ひょっとしたらそういう再生ができるかも知れません。そういう点で注目したいですね(でも、また登板を見たら、今度はさほど踏み込んではいませんでした。じゃあちょっとホークスに来て大当たりするという線はないかな?細川のリードがはまって好投をする可能性にかけるしかないですね)。

 ※そうそう、メジャーの中四日間隔をヤンキースがいきなりやりかねない。ボビーが日本人選手を使うのに、しっかり適用させるのに上手い球団とそうでない球団があるという話をしていて、ヤンキースがいきなり田中を中四日で使ったりしたら心配だったんですが、中5日で大事に使うようなのでその点は一安心ですね。ダルと同じで一年目はメジャーのやり方にどう慣れるかでしょうね。大事なのは三年目からですね。
 もう一つ、楽天という新球団にいて、楽天のマーというよりマーの楽天というところがありました。それが向こうに行って巨人のようなチームに所属するようになり、そこでのメディアの対応という点でどうかな?というのもありますよね。松井秀喜のように巨人に在籍していて、だいたいそういう対応が必要になるんだろうなということを知っていると知っていないではそういう対応の上手さが結構違いますからね。まあ、その点イチローとか黒田とかに上手く教えてもらいたいところですね。

*1:実際は言わずもがな。やはり肩と股関節という投手にとって大事な箇所を2箇所も痛めてしまっていては、もうどうしようもなかったんでしょうね