別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

八重樫とか亀田とか最近の試合の感想


 亀田大が日本では二例目でしたっけ?団体王者統一戦に挑みました。実は彼の試合はもう退屈なので見ないことにしていました。くっついてボディ打ちしかなくて、しかもハードパンチャーでもないからKOも期待できないので。んでIBFの王者決定戦も見ていなかったんですが、ボクシングブログでリンクが貼ってあってそれを見たら、足を使ってアウトボクシングで完封していました。ローブローで2ポイント減点されていましたが、それがなければ8ポイント差くらいついてましたのでまさに圧勝。

 何より足を使ってジャブやら左右のコンビネーションやら、出入り(ロングからのパンチの差し合いにくっついての打ち合い)やらちゃんとボクシングとしての展開があったので、「なんだ亀田大毅やるじゃないか。なるほど、この前まではライトフライ・フライで減量がキツイ。減量によるスタミナ切れで足が使えなかったが、この階級ならその影響もなく、足が使えてボクシングの引き出しも増えるのか」と思って、統一戦を楽しみにしていたものでした。

 そういえば内藤ぶん投げて謹慎開けた試合では、足を使っていた気がします。なんだこの子、足が使えるんじゃん。じゃあ次はそれでイケるな。という印象があって、それなのになんでもっと足使わないのか不思議に思った事を思い出しました。この階級なら足が使える!面白い試合になる!しかも統一戦!とwktkしていたんですが…。

 まず試合についてですが、以前のつまらないボクシングに逆戻り。あれ?なんで?と思ったら、リーチで9センチ劣っているんですね。前回のタイトルマッチは確か4センチ位の差。それくらいのリーチ・体格差ならなんとかできるけども、リーチでかなり差がつくと、もうどうにも出来ない。いくらスピードで相手を上回っていても、体格差をカバーできないということですね。9センチの差の前では彼の引き出しは完全に封じられる。出来るのはああいうくっついてボディ打ちオンリー。

 対照的に弟亀田和毅は13センチだったか、それくらいのリーチ差も彼はスピード、テクニック(というか地力の差かな?相手は明らかに一回り大きかったのにその上を生きましたからね)で跳ね返して試合を優位に進めていきました。ジャブにそこから左の軽い三連発に繋げる。そして右も刺してましたしね。あのジャブの打ち方は三連打を想定しているからなんだろうけど、それとは別に最短距離でまっすぐいくストレートに近い左がほしいですね。右のオーバーハンド気味で打つ時脇が開いてバランスが崩れるのも気になりました。

 亀田家のスタイル、三人全員に言えることですが、ジャブがない・ストレート系が少ない。よって手数が少なく、先手が取れない。何か想定外のことがあったら、もう引き出しがないので対応できないですよね。三男は才能がある、地力があるので、既に相手をねじ伏せてますから、今のままでもしばらく困らないですが、もっと上を目指すなら限界があるでしょうね。

 んで、今回大毅はまさにその想定外、リーチ差により本来の自分のボクシングが出来ずに負けました。相手も大毅とおんなじようなタイプで全く同じ地味なことをやりあうという退屈な展開。相手は、ああ名前ソリスか。ソリスは、あんだけリーチ・体格差あって別の攻め方出来なかったのかという感じですね。一応勝ちを拾いましたけど、計量オーバーしてあんな勝ち方じゃ世界での評価は下がるんじゃないでしょうか?

 それはさておき、今回IBFの事前説明と食い違うという騒動がありました。軽量をクリアできなかった相手がタイトル挑戦資格がなく、IBFは未成立。WBAのみのタイトルを掛けた変則タイトルマッチということで納得できたんですが、しかしなぜIBFは事前説明と食い違ったのか。

 亀田パパによればウチはちゃんと英語・西語(ボクシングの公用語はこの二つ)の通訳をつけている。しかしJBCはそれもいなかった。JBCの怠慢だと言ってましたが、そのとおりだと思います。少なくとも国内試合でのタイトルマッチを運営する機構が、ルール確認をしっかり出来ていなかったということは大問題でしょう。事前説明では―と言ってますが、「ルールブックを読む限りではIBFはタイトルがそのままで移動しないのでは?」と事前に確認ができなかったということは、IBFのルールブックを読み込んでいなかったこと以外の何物でもないでしょう。これは本来自分達が事前に確認すべきことだったのですから、亀田家よりJBCの問題でしょう。

 IBFも事前の説明が違っていたというなら、担当者の責任ですから、処罰が求められます。単なるミステークだとか言ってた外人はバカなんじゃないでしょうか?本人は確実に開催国の運営機構に説明する義務があるでしょうし、相手が通訳をつけていないで誤解したのなら、そのことを不手際として正確に抗議しなくてはならないでしょう。間違えちゃった、(・ω<)テヘペロなんてバカな説明ありえないでしょう。

 そういえば前回のタイトルマッチで軽量が繰り上がってJBCが確認できずにウンタラカンタラありましたが、どうもIBFは私達のルールは当たり前。というか国際タイトル認定する権威ある組織なんだから、その傘下にある各国ボクシング機構はそのルール・慣習をしっかり学ぶべきだという態度なのかもしれません。まあ世界を頂点にその下に各国のボクシング機構が傘下にある序列と考えると理解できなくもないですが、傲慢っちゃ傲慢ですね。そして新団体を承認した以上、さかのぼってどういう団体でどういうルール運用をする組織なのかきっちり熟知した人がJBCにいなかったのでしょうか?世界のボクシング事情に疎いとか?だとしたらやっぱりダメダメとしか言えませんね。

 まあ、WBAのように金が入るボクサー有利にタイトルマッチを組む。特定のボクサーを贔屓するという性質がIBFにあるかどうかなんて知らないので、IBFが正しく、JBCがダメとはいえませんけどね。ただ、今回の対応はどちらにも落ち度があることは間違いないでしょうね。それを亀田家が悪いみたいな捉え方は明らかにおかしいと思います。

 んで、疑惑をかけられないためにも大毅は返上して一階級あげたら?という記事を見ましたが、前述通り大毅はリーチ差で何も出来ませんから、バンダムにあげたらもう何も出来ないでしょう。よっぽどマッチメイクでリーチ差がない選手とやれるなら別ですけどね。確かIBFのランキング見たら大毅よりリーチ差が5cm以上ある選手が4人位いて、一人はカバジェロ佐藤洋太みたいな手長がいました。15cmくらい大毅と差があったのでそんな手長ボクサーとやったら、まず100%負けるでしょうね。相手によっぽど変な弱点でもない限り、あっさりポイントアウトされるでしょうから。

 コツコツリーチ差5センチ以内のボクサーを選んで戦うしかないでしょうね。今のスタイルのままなら。本当は優秀なトレーナー呼んで一からパンチの引き出しを増やして行くべきなのですが…。なんでカネあるのにトレーナー大金積んで呼んでこないのか?カネの使い方わかってないんですかね?世界レベルじゃもう通用しないですよ、もう何年も前から言われていますけど。興毅なんかもうひどいでしょ?

 誰だったか?坂田だったかな?興毅の試合評で慎重に言葉を選んで、下半身の鍛え方が足りないのでは?という話をしていましたが、猛練習をしている亀田家にあって練習量が足りないとは考えにくいので、やはり質の問題でしょうね。技術面のトレーナーだけでなく、コンディショニングコーチもしくは体の面のトレーニングコーチ。そういうエキスパートによるメニューが必要。今の練習は意味を成していないのでしょう。IBF王者決定戦の時大毅が相手と接触してふらついたり、上から潰されて審判が止めたり、身体の力・圧力がおんなじくらいの相手に負けていたのはちょっと気になりましたしね。あと
和毅もあれだけいいボクサーなのにバランスを崩すシーンがありましたからなんか作り方に問題があるんじゃないでしょうかね?

 興毅は空位になったWBA狙いに行くんでしょうけど、あんなので4階級制覇したって、はっ?って感じですよね。畑山が「大毅を打ち合いを避けているから、客が盛り上がらない。勝てばいいってものじゃないでしょ?」と酷評しましたけど、ディフェンシブ過ぎて挙句つまらない、判定ギリギリじゃ客が納得しないですよ。いい加減トレーナーつけてパンチの種類を増やさないと、しょっぱいボクサーのまま人々の心に残っちゃいますよ。

 
和毅が最初中南米(ハワイだっけか?)とか相手の南アフリカとかでタイトルマッチをすると言われていたのがフィリピンに変更。そして興毅は韓国で防衛戦とどうやら東洋での亀田家というブランドを狙っていくつもりだったんでしょうね。苦戦で判定に疑問がついて、もう完全に滑った感ありますが。どうするんでしょうね?今後もアジア戦略を展開していくんでしょうか?亀田家は。

 あ、忘れてた。今回の統一戦で計量オーバーしても興行上試合はしなくてはいけないから、試合が行われる。たまに勝ちにこだわる、無敗レコードとかにこだわる選手がタイトルよりも勝ちを選ぶということがあるという話を聞きましたが、ああいう軽量失敗のケースは罰金だけじゃなくて、ポイント3ポイント程マイナスするとか、グラブを大きい物に変えるとか罰則を厳しくしないと、そういうケースはなくならないでしょう。軽量失敗して試合をする場合、まず間違いなく失敗したほうが負けるような制度にしないと悪用する選手が絶対出てきますよ。

 まあ、だからこそ現行の体重制は意味が無い、もっと事前体重から厳密に測って条件に差がつかないように階級を設定すべきだ。リーチ差・身長差を考慮すべきだと。真のクラス査定基準を導入すべきだと言ってるんですけどね。ルール制度を逆手に取られたというのはずる賢い亀田家では初めてなんじゃないですかね?


 さて、その話はおしまいで、井上・村田・八重樫ですが。前回、こりゃダメだなと思われた井上も。左左のボディ、左右のボディ、左で上下の打ち分けに、ジャブ・ストレートと十分パンチの引き出しを見せていました。キャリアの浅さは気になるとはいえ、完全に相手をコントロールできる試合運びでした。と言ってもまだ穴があって完璧とはいえないか。それでも世界レベルでやるのに問題はないでしょう。次は世界戦でしょうね。

 相手がダウンした時、早いRでもう止めるべきだと思いました。実力の差がありすぎだったので。ストップ掛かる前にも連打があってワンサイドだったのに止めるのが遅くて審判にちょっとイラッとしました。早いラウンドの内はともかく、あそこですぐ止めない意味がわからないですね。軽い階級だけにそこまで決まらないっていうのもありますけど、ああいう展開ならもう止めるべきでしょう。

 井上にとってキャリアの浅さというのは一つの問題点ですから、なるべく長くやりたかったのは確かですよね。最初序盤で倒せるのにツメが甘いな…と思いましたが、1Rでも多くやるために詰めなかったんでしょうかね、やっぱり。その選択で正解でしょうね。長いラウンドやっとかないと世界戦で怖いですからね。

 以前も書きましたっけ?井上の問題として、身体・動きが硬い。ネコのように、ドロのように、ぐにゃぐにゃになって動くような感じでないとバネが生きてこない。パンチ力、ウィニングブローがあればともかく、それがない彼にはバネ・スピード・手数のラッシュが求められる。そのためにはもっと自由自在に身体が使えないといけないんですが、ちょっと固い。無論ボクサーとしてはトップクラスですからそのレベルとしては十分ですが、もっと上に行くなら、それを突き詰めないと4階級・5階級制覇はできないでしょう。多分バンタムで壁に当たる気がします。体格・リーチも標準ですし。

 彼の顔とボクシング見てるとすごい真面目だということがわかります。真面目すぎるというのがちょっとマイナスに出ている。もっとふざけるというか、遊び心を持って楽しむようにやらないと成長が止まってしまうと危惧してしまいますね。長谷川の全盛期のように、パンチのバネというかノビがないというのは上の階級の「強いやつ」に挑む上で確実に問題になるでしょう。

 今後3年位はまあ、フライ級。スーパーフライ級に移るのがせいぜいでしょうから、3年まではその問題が課題としてのしかかってくることはないでしょうが、そっから先は確実にこれが彼につきまとってきますから、コートとしては将来を見据えて今から考えておくべき課題かと思います。亀田がトレーナー導入せずに今の苦境を招いたようなことにならないためにも、今から取り組んでほしいと思います。


 村田は→
sportiva.shueisha.co.jp/clm/keiba_figh
TKO勝ちも、村田諒太に課せられた多くのノルマ スポルティーバ

 ―にあるように、村田は器用なタイプじゃない。香川さんが言うとおり4回戦・6回戦のステップをちゃんと踏むべきでしょうね。こんなマッチメイクなら、いつかどこかでコケかねない。せめて短期間で、二ヶ月・三ヶ月くらいのハイペースで噛ませとやるべきでしょう。減量がキツイなら一階級上で、噛ませを呼んでくればいいわけですから。一つ一つ課題を設けてやっていくべきではないでしょうか?

 いきなり8回戦とか、才能型のボクサーならそれでもいける。才能ある選手は一を聞いて十を知るように吸収していくので問題ないでしょうけど、完全にパワー型の村田はスタイルチェンジに時間がかかりますよ。正直、未だにあんな感じなのか…というレベルですからね。本人も言ってましたけど、ヘッドギアで効かないから、取り敢えずくっついてボディ打っとけというスタイルから未だに抜け切れていませんからね。

 正直、あんまり経験ない人をリングにあげたようなイメージありましたから。逆に言うと、そんな感じの選手が身体の圧力とパンチ力だけで勝ててしまうんですから、これで技術身につけて行ったら、コイツどんだけ強くなるんだろうな…と空恐ろしい存在ですよね。打ち下ろしを多用・テーマにしているのかな?とおもったら、多分力任せにおもいっきりぶん殴ろうとしてるんでしょうね。

 相手がパンチの力をそらすのが上手かった。ああいう流す選手で、しかもポイントを上手く取っていく選手とやった場合、ポイントアウトされる可能性は高いですね。12Rあれば確実にKO出来るかもしれませんが、逆に8回戦くらいだと危険じゃないでしょうか?

 まあ、村田は下手であるが故に逆に凄いなと思った試合でしたね。結局逃げる相手を押し潰していく試合になるでしょうから、飛び込みボディで距離を潰すのか左ジャブで相手をコントロールしていくのか、頭つけたり肩とかで相手を力づくでコーナー、ロープ際に追い詰めて、ズドンと行くのか。まあ色いろあると思うんですけど、やはり左ジャブ、ストレート系のパンチを磨いてほしいと思いますね。

 そういえば、香川さんが解説していましたけど、相手は典型的なハの字ガードのワイドオープンで、そういうボクサーに如何に真ん中にパンチをねじ込んでいけるか、ねじ込み式のパンチを軸に倒して欲しいとか解説していました。解説的確すぎるだろ(^ ^;)。


 で、今年は八重樫の年だと思わせる試合でしたね。ライトフライで二桁防衛を達成したエドガル・ソーサをほぼ完璧にコントロールした。アウトボクシング一辺倒ではなく、時折打ち合いにも応じるという見ていても楽しい試合。本当に八重樫の試合は見ていて面白いですね。

 ポイントはフットワーク。左へ動くのではなく、右へ動くこと。普通構えていて、手が前にある方向に回るのはだれでも楽にできるのですが、逆側は足をステップさせづらいし、真ん中が大きく開いてしまうので、そこを攻められやすいんですね。そのため前後のストライドを小さくし、左右の足幅がほぼ揃っているようにして、左右どちらにも動きやすくするというスタイルが取られることが多いのですが、見事その通りにやって相手が捉えきれないフットワークを見せました。

 左へ追いかけようと思ったら右へ、右かと思えばその逆の左へと。フットワーク、相手を詰めるために左右どちらにもタイソンみたいな感じでグワーッと行けるタイプならともかく、そうでないボクサー、バランスが優れていないとああいうタイプを捕まえるのは難しいですね。

 エドガル・ソーサも一度敗れてピークを落とした、一つ下の階級、年齢的にもこれから下り坂といえなくもないですが、それでも彼のボクサーとしての強さはリングで光っていましたから、それをコントロールした八重樫は見事といえるでしょう。前回の統一戦では1~2ポイント差で井岡にやられましたが、このフットワークなら井岡にも勝てるかもしれないですね。7センチ差のリーチで前回あんな感じでしたし。彼ならロマゴンに挑戦するかもしれません。次はメダリストと言ってますし、まあ八重樫が今後注目すべきNo1ボクサーということでしょう(山仲がいるんですが…それは?)。

 やはり左ジャブ、ストレート系で刺さないと動く相手をコントロール出来ないですよね。本当ボクシングの基本というか、生命線というかストレート系もっと磨いて欲しいですね、みんな。フック主体ボクサー増えすぎ。

 そういうこと考えるとやはり山仲の左は素晴らしいんですよね。あんな大砲普通早いラウンドで当たらないですからね。コツコツ崩して中盤・終盤お互いラストカード斬り合って当てるものなのに簡単に当てちゃいますからね。ねじ込み式でグーンと伸びるらしいですね。モレノサンタクルスか一体どちらとやるかわかりませんが、ビッグマッチをしそうなのは山仲でしょうかね。内山も真っ直ぐ系が打てる数少ないボクサーなのに、内山は年齢的にもう厳しそうなんでビッグマッチ期待できないかもしれないですね…。この期に及んで国内か…。

 クリス・ジョンとうとう敗れたんですね。見てないんですが、どうも衰えたっぽいですね。まあそりゃそうですよね、いったい何年防衛してるんだって人でしたから。んで、村田の試合のメインでそのクリスに勝ったシンビウィ・ベトウィカと下田がやると。下田ようやくかぁ、長かったですね。

 IBFバンタムのジェイミー・マクドネルっての指名試合やらないから剥奪されたんですね。じゃあその指名試合のマリンガと誰かがってところでしょうか?誰か岩佐とか大場とか日本人選手が入り込むかな?IBFとして日本を市場にアピールするとかないかな?まだ大毅と高山くらいしかIBFタイトルホルダーいませんからね。