別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

【身体論】 格定という話

月刊 秘伝 2013年 11月号 [雑誌]/BABジャパン

 松田さんの追悼企画・特集号がようやく出たという回でした。奥さんのエピソードがほほえましい話で、素敵でしたね。やはりいいかみさんに恵まれてこその武術家・武道家人生って気がしますね。大抵いい奥さん持ってる人が多いですよね。

 この回、溶粘歩動法の話がラストでした。溶粘歩動法でググるとなんか拙ブログがダーッと検索に引っかかるんですが、それは大丈夫なんですかね…?うーん、溶粘歩動法って凄い素晴らしい運動、能力開発法だと思うのですが、他の方に評価されて武術家・運動家ブログで続々取り上げられて話題沸騰ということにはなってないんでしょうか…?もったいない。残念ですねぇ。

 この号で、溶粘歩動法=体幹の開発の話がされるわけですが、大きく分けて人間の脊椎は三つに分けられる。背中・腰椎・腰の三つで、内二つは拘束背芯・拘束腰芯の中心になるところで、骨格の構造を考えても固まりやすい部位。腰椎だけは肋骨のように、仙骨・腸骨のように、骨が幾重にも連なる構造になっていない。ここだけは誰でも自由に動かすことが出来る、自由脊椎と言える部分。ねじるという運動の中心はここですしね。

 そして自由脊椎だけは、単純にゆるませるだけではいけない。ここを「締める」ことで初めて高度な運動をスルことが出来る。二つの拘束を解いて、人間として高度な能力を発揮するには、パフォーマンスを生み出すためには、この自由脊椎の部分を占め無くてはならないと。ほぉーなるほど!となりましたね。自由自在に身体を使いこなすためにはゆるめるだけではダメなのだというのは氏の理論と矛盾するようですが、そこはそれ、当然身体を固める=ゆるめる状態の反対の路線に行ってはならない。ゆるめながら他の部位をしっかり使うために「固める」のではなく、「締める」のだと。このゆるめながら締めることを「格定」というと。

 「格定」をするためには当然強靭な体幹が求められる。体幹レーニングの重要性を昔から主張してきた氏にとってようやくその重要性が説かれるようになったのは好ましいことだと。そしてそのためにはいわゆる逆三角形の体型ではダメなのだと。スーパーアスリートを見ればわかるように、ジョーダン・インゲマルステンマルク・ジダン・メッシといったハイパフォーマンスをなす彼らは皆胴が長い=体幹が開発されていると。なるほど、しかし水泳選手は逆三角形が多いですよね。まあ、それでも彼らは体幹も開発されているんでしょうけど、将来的に水泳選手のスーパーアスリートで正三角形型のなで肩スイマーは出てくる可能性があるんでしょうか?

 何で読んだか忘れましたが、身体をゆるめるという段階で他の部位が固まってしまう代償性拘束という現象があるというの話をみました。代償性拘束とは違うものの、自由脊椎を「格定」し、そこを土台とすることで上半身・背骨の上の部分を開発できるんだと思います。時に、「ただ脱力するだけではダメなんだ!」「単なる脱力だけじゃダメなんだ!」というのを武術家が語るのは、ここにあるのではないでしょうか?

 腰はだれでもある程度意識を持って、大まかでも動かせますが、首・頚椎からすぐ下の背骨の意識を正確に持つ・動かすというのは相当に難しですからね。個人的にも背芯をどうするかということはもうずーっと思ってて出来ないでいるテーマですし、ここを締めればよりゆるませる&動かせるというのは非常に惹かれる話でした。

 空手の横山さんがカンとジンの締めということで、丁度腰背部辺りを締めるのが大事なんだよ!という話をしていましたが、それってこの
「格定」のことを言っていたんでしょうね。

 というわけで、非常に面白かった秘伝での高岡さんの話を書きました。