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身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

采配/落合博満について、一言二言

采配/落合博満

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 さて、いまさらなんですが、ちょっと書いてみたいと思います。まず、己の興味関心はなぜ落合という常勝チームを築いた人間が日本シリーズで結果を残せないのか?というただ一点にあります。だから、その理由を探りたい。日本シリーズについてどう語っているのかを知りたかったので、そのことに関する言及がなかったので、あんまり評価できません。もちろん、己個人の主観ですがね。

日本シリーズ全データ分析―短期決戦の方程式 (ちくま新書 810)/小野 俊哉

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こんなのがあるみたいです。ちょっと参考にして、なぜ落合さんが勝てないのかまた考えてみたいと思います。早速手に入れたので読んだら書くかも?まあ余計な話ですね。

 ただ、そういう己の主観を抜きにすれば、非常に面白い。多分書店の書籍売上10位のやつに必ずはいっているでしょう。マーケティングでこういうふうに編集しますといって編集者がやったのか、それとも落合氏個人の感覚でやったのかわかりませんが、ターゲットにサラリーマンをおいてつくってますね。

 大体、野球を見てこういう本を買う人が何を求めているか、勝負の法則・組織の法則を日常に活かしたい企業勤めの人間なんだろうとわかってやっているんでしょうな。上司・部下・会社・サラリーマン・仕事…そういった単語が随所に出てきますね。特に企業の上の人などは自分の仕事に対する心構えとかそういうの学ぶのに熱心ですから、間違いなく購入するでしょう。相当売れてるんじゃないですかね?

 落合博満が名将である所以、それは非常にシンプルですね。勝つために最も合理的なことは何か?そういう単純な理を突き詰めることですね。落合流、オレ流というものがあるとすれば、非常にシンプルでしょうね。強い選手を育てる(または強い選手が育つような環境を整備する)、プロフェッショナルな技術・精神を備えた選手が多ければ多いほど強いチームと考える。やるべきことを理解している選手がやるべきことをやる(自分でその時その時決断できるプロであれ!というのは随所に出てくる主張です。)。そして然るべくして勝つ。当たり前のことを、当たり前にやって、当たり前に勝つということですね。非常にシンプルかつ理にかなった戦略であるといえるでしょう。

 補強=他チームからの獲得というのが谷繁・和田と限りなく少ないのも、プロフェッショナルとは絶え間ない努力で作られるもの、日常によって維持されるものであると考える。ならば、取ってくるより鍛え上げればいい―とまで考えているかどうかはわかりませんが、少なくとも他所から取ってくる前にチャンスをしっかり与えることを重視しているのは確かでしょう。信賞必罰は組織原理の中でも最も一番下に来る礎。一年目にまずトレード凍結で人心の安定を図ったことは、大名が国替えされて新しい国の民をどう統治するのかということと共通するものがありますね。最低限チャンスは必ず与えるという方針は公平・公正さを感じさせます。

 一年目はまだ何もやってないわけですから、ここでいきなり人を動かしたら、なんで俺がと、知りもしないくせに!と必ず不満が生まれ、チームの中でもいつか俺も…と不安が生まれてしまいますからね。

 引用している言葉とか、ページ数結構いい加減ですがご容赦を。

一章 自分で育つ人になる

 ポストシーズンなんて昔はなかった。まだ若手のうちは一年通して学ぶべきことが山ほどある。間を置かずに練習すべしとあります(p30)。強い選手とは言うまでもなくタレントがある選手ですが、それは練習から作られる。だから練習せよ!となりますね。当たり前の話です。成功したかったら努力せよ!ですね。実力のある選手は心を病まない(p36。極論するとイップスは練習で技術で何とかしろということになります。これについては後述)。

 人生において大事なとき、レギュラーを獲得するようなときは没頭してそれに専念すべし(p53)。一流までは一人でなれる。しかし超一流は周りのサポートがなければならない(p54)。三冠王になると誰も口出しできなくなる。目を持っている人にいつもと違う所があるか聞きに行って、周りの環境を重要視した。カメラマンさんをフォームチェックの頼りにしていたなんてプロフェッショナルでありましたしね。バッティングピッチャーなどに敬意を払っていたのもそれ故でしょう。

 まだまだこれからも先があると考える若手ともう残りが少ないと考えるベテランなら、ベテランを起用する(p58)。8年間で世代交代の必要性がなかったことを考えても、レギュラーになったのは森野ただ一人。急いては事を仕損じる。30代までに一人前になれば良い(p60)。20代でレギュラーになっても30代でユニフォームを脱ぐくらいなら、30代でレギュラー、40代まで現役を続けられたほうが良い。25~30は土台作り。重要なのは30代。25くらいの選手を見ればどれだけ必死に土台作りをしてきたか一目瞭然。ベンチを見れば出たくてウズウズしている。41の谷繁や39の和田にも俺の現役45までやれるぞと心のなかで呼びかけている(言ってあげればいいのに(^ ^;))。

二章 勝つということ

 負けない努力をする。負けない戦い方とは投手を中心とした戦い。投手・守りは計算ができても、打者・攻めは計算ができないから。0対1で敗れれば、勝てないときは負けない努力をするんだ、と一点取られた投手を責める(p65)。三点取ったから、あるいはそれ以内に抑えたからといって仕事をしたとは言えない。仕事をしたといえるのは勝った時だけ(守備・守りに重点を置いているチーム作りだからこそ言えるセリフですね)。すべて投手から始まる。投手がボールを投げることで攻める。野手は全て投手の受身であるから、投手を中心に考える。

 采配は結果論であり、事実だけが歴史に残る(p74)。いつも語られる山井の完全試合での9回交代。正しいとか間違っていたかとかそういうことを考えない。ただ最善の選択をしたというだけ。この考えは勝負に過去のことに対するとらわれは禁物を実践していますね。常に今があり流れている。選択の連続のなか過去のことでくよくよしているなんてもっての外。それを地で行っていますね。その勝負哲学を見事に体現している。普通の人なら絶対あ~こうすりゃよかったなぁ、とかアレはね~とか絶対引きずるもの。この人はどんな選択も一選択肢にすぎない。まさに非凡の超傑ですな。あとがきにも、選択を引きずるな、区切りをつけよとありますね。

 勝利の方程式ではなく、勝負の方程式。なぜなら勝負に絶対はない。岩瀬でも打たれることはあるから。しかし最も最善を積み上げていけば、負けたとしても次に繋がる(p83)。

 オールスターでもWBCでも最優先に考えるべきことは選手の事情。選手は会社と契約している身、個人企業主(p91)。その選手を壊してしまえば人生を台無しにしてしまう。何より優先されるのは契約であり、選手の事情である(プロフェッショナルを裏付ける精神の裏は契約したこと、約束したことを絶対に成し遂げるというその精神にありますね。個人事業主の身を最優先に考えるのはオールスターで中継ぎを先発させたことからもわかります。先発を使うとリーグ戦に影響してしまう、コンディションを損ないかねないからこその選出をしましたね)。出場辞退の理由で企業秘密のコンディションを晒すことはできない。個人企業主である以上、そこで価値を高めたい選手はもちろん出ればいい。判断は選手自身ですべき。

三章 どうやって才能を伸ばすか

 注意しなければ気づかないような小さなミスをこそ指摘する。失敗は構わないが怠慢・手抜きは許さない(p106)。これも組織を動かすルール・規律の点で重要ですね。

 2004年の補強なしに、現有戦力の10~15%の底上げで優勝できると断言して実際に優勝した年について―上司の言うことを明確化する。方針を示し、結果を出す。こうして初めて部下の信頼が得られて、組織が機能する(p114)。

 自主性=プロ精神を重視するから当然自由を重んじる。それは好き勝手ではない。当然結果と責任が求められる。上司の影響力は絶対だからなるべく変な影響力を与えないように配慮する。会うたびに挨拶したり、後ろからバッティング指導で「おい」と声をかけるだけでみんな振り向いたりする世界。だから変に気を使わせたくない、選手に最大限配慮する(p118)。

 最低限の約束事だけを決めて、あとは自由にする(p122)。自由は最大の規律。自由にするということは大人扱いをする。相手の行動を認めることである。ところが大人扱いすることを履き違えている場合がある。何でもかんでも指導者が選手に配慮してしまうケースがある。それでは特別扱いになってしまう。特別扱いとは違う。そうなると特別扱いされている選手からチームの規律は乱れていく。

 チーム作りの基本は育成、現状の戦力をどう整備するか(p124)。今は外国人も育てる時代になった。ドミニカなど安上がりで取って育てて使う。森コーチが直で見て取ってくる。ネルソンはサンダル履きに飛び入りでテストに参加して基本も何もないめちゃくちゃで150キロ出して合格した。4年間鍛えて開幕投手まで育った。

 2004年終わって18人に戦力外通告をした。これくらい大刷新をするのは例年できない。必要と感じたこの年だけ。以後は必要なポジションに必要な補強を考えて限定的に行った。ドラフトで五人とるなら五人を引退させなければならない。選手を斬るのは苦渋の決断。ドラゴンズの競争に敗れても、楽天で活躍した鉄平を見ると育成方針が間違っていなかったと他所で活躍するのを見て嬉しく思う。

 高い成績を残したものだけが自分の引き際を決めることができる。野球人生は選手で終わりではない。そのため監督・コーチやフロント・首脳陣ともめるようなことはすべきではない。契約社会はドライなもの。どんなに成績を残して貢献してもチーム事情でいらないとなったら、そういう評価をしてくれる他所の球団に移るしかない。引き際は綺麗にすべし(p131)。

 最近は皆平均、しっかりした野球チームからスタートするから。一芸に秀でたもののほうが成長の予想がつかないという魅力がある。今は平均から一芸を見いだせればいい時代に変わっている。

 守り勝つ野球をするドラゴンズにおいて英智・岩崎といったスーパーサブ・守備固めは高い評価を与えられる(p139)。

 選手の思いを理解して、的確なアドバイスをすること。信頼なき助言は効果なし。調子を崩している投手にいきなり走りこめといえば、叱られていると勘違いする。この場合は不調で走るという基本に目を向けさせた。会話の中で要点を絞って、信頼していることが伝わるように。競技を楽しんだ経験はないが、それが成長を促すならそれもまた良し(p143)(競技を楽しんだことがないというのは落合というスーパーアスリートにして特徴的な発言であると言えますね~)。

 成長したけりゃ、家庭を持ちなさい(p144)。絶対とってやる!とられてたまるか!というレギュラー競争こそが強いチームをつくる。

 監督になってどうしても知りたいのは自分の言葉が選手にどう伝わっているか、コミュニケーション・意思疎通の正確性。誤解が怖いからこそシンプルな言葉で伝える。高度な技術こそシンプルな言葉になる。

 見なくてもわかるで成長は止まる(p150)。プロだからこそ必ず足を運んで自分の目で見る。川上・廣岡・関根氏は今でもキャンプに足を運ぶ。そういう人は自分の経験した時代で止まっている。外から同じでも中には必ず変化がある。

四章 本物のリーダー

 何でも自分でやろうとする監督ほど失敗していた(p156)。一年たりともユニフォームを脱いだことがない森氏に全てを委ねた。投手の全権を委ねていたから、本人も明日先発する投手を知らなかったことがあった。そこまで信頼していた。だから先発情報が漏れることもなかった。監督が知らないものを知れるはずがない。

 森氏に任せたのはコネ・派閥ではなく、能力によって任せた(p160)。

 審判の調子が悪いのに気づいた例を出して―固定観念を取り払っていつもと同じ出来事に常に違ったことはないかということに頭を働かせる。そういうところから気づきが生まれる。いち早く変化に気づくことが出来る。(p164)。

 2009にブレークした藤井。誰もがレギュラーを勝ち取ったと見たが、まだ打球判断に不安があると見ていた。そこで大島や野本・セサルなどと競わせた。またグスマン/カラスコなどを取って、競争意識を煽り争わせる。世代交代は監督やコーチがすすめるものではない。選手が競争によって勝ち取るもの。ドラゴンズのレギュラーは皆勝ち取ったもの。競争によってレギュラーを勝ち取ったチームは強い。2010年7月8ゲーム差あっても終盤でウチが追いついているという自身がチームにあふれていた(p173)。

 練習内容は選手・コーチに任せる。監督が顔を出す時緊張がみなぎるもの。その時だけ練習をしっかりやる。監督は数日経って選手の状態がどう変わったか伝えてやる。毎日見ている人間は変化・違いがわからない。変化を見極めるためには数日おきが良い(p176)。やるべきことを選定して、やってもらう。足りないな、コーチがやれない補い切れないなと思うものだけ監督が直に行うということなんでしょうね。組織を動かす上で理にかなってますね。中間管理職に権限を委ねてその実力をいかんなく発揮してもらう。足りないな、とかチェックだけを行うわけですね。

 データより信頼すべきは感性。重要なのはデータ分析能力。自分自身が観察し、どう判断するか。それが出来る選手が結果を残す(p181)。

 選手のコンディションの情報は絶対に守らなくてはならない機密事項。ファンサービスやメディアウケなどで絶対軽々しく話してはならないもの。今期絶望とか、何ヶ月とかそういう情報が公になるのを見ると選手は傷つく。ブルペンを映すことすら禁止した。セーブがつく場面だろうと岩瀬を年間考えて休ませる。登録しても帰してしまうことがあった。そんな時にブルペンを映されたら戦術が崩壊する。情報公開とは発信する側の事情を考慮すべし。オープンにしたら勝てなくなる(p185)。機密事項ということを理解せよ!ということですね。

 球団の財産は選手。だから財産である選手を守ることを第一に考える。社員とその家族の生活を守るのが第一。だから後援会の人に恨まれてもキャンプに連れて行って川上・山本昌を出さなかった。連れていけばテレビやら何やら断る口実になるから。レギュラー選手はシーズン終わって身体を休めるのもまた次のシーズンのために重要だから。身内に恨まれることになっても必要なことをきっちりやる。そういう時には嫌われるのが監督の仕事(p190)。徹底した選手とそのコンディションへの配慮ですね。

 チームリーダーは選手の自主性を奪う故に不要。セカンドゴロでランナーをサードに進める手堅いプレーより、思い切って三塁方向でアウトになるプレーがいいこともある。時に手堅く進めても勢いがつかない。自分で決めてやると思い切って三塁方向に引っ張るほうが次に期待できるケースがあるから。競争心・自立心が奪われること組織にとってマイナス(p194)。これが例の「収穫は井端のサードゴロ。君たちにはわからんで結構」―ってやつですね。なるほどね。

 氏自身が考える常勝チームを作れた理由は、下積み時代があったこととトップに立ったこと両方の経験をしていること。エリートと雑草両方のキャリアがあるからスターの気持ちもそうでないできない人間の気持ちもわかる。スター監督はできない選手の気持ちがわからないし、叩き上げ監督はスターに配慮できず変にぶつかってしまう(p203)。

 「違和感」と「切り替える」という流行り言葉。どっちもダメ。コンディションを整えられない選手は失格、使わないし。切り替えるという発想には反省がない。来季に切り替えるという言葉もまたおかしい。目先の一戦一戦にベストを注ぐべき(選手・戦力を常に練習である程度整えられるからこそ言える論理でしょうね。実際横浜だったらどうなるかわかりませんね。未来を見据えて若手を使うこともあるでしょう。それほど一軍戦力にレギュラーがいなくて、かつ二軍で育ったという条件がつくんでしょうが。シーズン戦う前に猛練習で鍛え上げているでしょうからどうなるか?うーん見てみたいなぁ…)。今日のベストが明日の未来につながる。A級戦犯という言葉があるが、戦った選手を責めることはない。違和感で舞台に上がらなかった選手こそ本当のA級戦犯

五章 常勝チームの作り方

 前著で見ているだけでいい、教えないと書いた。上司はこんなこともできないのか!は禁句と書いた。しかしへぇ、こんなことも知らないんだなと驚くのは一度や二度ではなかった。毎日日が暮れるまで遊ぶ中で身体の使い方を覚えた。今の子はそういう環境でないからそういうことを知ることから始めないといけない。野球の情報は知っていても身体の使い方のことは知らない。

 自分の頭で考えて、体で覚える。そのために秋に、2月に紅白戦を行うと通達した。となれば、それまでに体を作っておかなくてはならない。そしてそういう準備をしておけばいつでも戦える。準備の重要さがわかる。

 倒れるまで、選手が納得するまで練習をやる。オーバーワーク気味でもコーチは止めない。全身全霊で練習に打ち込む選手に配慮することこそ重要(p220)。

 全試合に全力を注ぐのではなく、チャンスを残した負け方をすべき。それが次に繋がる(p224)。負け試合・見切らなければペナントを制することはそりゃできないですね。

 なでしこも、女子ソフトもしっかりバックアップを。後ろの支えがなければ強いチームなど作れるはずがない(p227)。勝負の世界には一番と二番では天国と地獄ほどの差がある(p229)。これは二位とビリは本質的に一緒という己の哲学とも共通します。まあ、己の場合元ネタは両さんですが(^ ^;)。

 即戦力の新人も体力強化から始めないといけないのが現状。ノムさんID野球はお見事。IDを否定もしない、データは重要に決まってる。ただ頭より体力を先に考えている。不思議なことに6勤1休でドラゴンズが成功しているのに、真似をしない。いいと思えばどんどん取り入れていけばいいのになぜやらない?弱いチームほど成功者を真似るべきではないか。

 歴史を学ばねば、その世界と組織の衰退につながる。だから同じ世界の仲間・運命共同体として記者や審判にも敬意を払う。士気をあげるために決して審判に対して猛烈な抗議をしない。それは審判を下に見る=侮辱につながるから(p240)。

 極論から物事を見ることで本質が理解できる。日本シリーズ7戦引き分けたらどうするのか?という提案を行ったのもそのため。アジアシリーズなどスケジュールがどうなるか分からない。そうすることで非常時の準備と対策ができる。これこそ指揮官の務め(p253)。つまり危機管理とは最悪を考え、それに対処する方法を考えることを地で行ってますね。さすがです。

 就任初年度、不調だった川崎を開幕投手に任せることで復活を図った。そのことは本人・監督・森・谷繁の四人しか知らなかった。これ自体は成功しなかったが、川崎のためにというチーム一丸となるムードができた(p256)。復活を目指す川崎の努力がチームに火をつけたわけですね。ベテランの取り組み方は若手への影響力はチーム作りの基本となった。新しいチーム作りをする上で絶対必要なことですね。

 2006年契約最後の年に優勝して涙を流してしまったのは今年が最後で延長されると思ってなかったから。この年日本一になれるという確信があったがダメだった。そして次の年はそこまで良いチームを創り上げたという自信はなかったが、日本一になることができた(p261)。勝つことだけではなく、ファンを楽しませることまで評価に入れることがある。しかし、どんなに魅力あるチームでも下位に低迷したら意味が無い。最大のファンサービスは勝つことと信じて方針をぶらさない(p262)。

六章 次世代のリーダー

 どんなに世の中がスピーディーになっても必要なステップは外さない。人材育成はしっかりステップを踏んで行う。ドラフト上位・下位関係なく一から選手作りの段階を踏んでいく(p266)。

 選手を見ているだけでも、コーチは教えなくてはならない(p268)。まず納得させる方便として俺より数字を残せる奴がいるか?(→!ここにいるぞ!ジャーンジャーン)と最高の数字を残した俺よりお前の言うことは正しいか?とつきつけることで上下の秩序、タテの関係を確立する。トップブリーダーみたいですね、上手な犬のしつけ方。その上で相手の意図を理解して、方針を決める。最終決定権はもちろん監督である落合自身が持つ。

 絶対に指導を押し付けない、鉄拳指導をしないの二点を守らせた(p269)。ただ監督の分身である存在はどうしても作らなくてはならない(参謀・ナンバー2のことですね)。一番育ったコーチは早川和夫。素晴らしいノック技術を身につけた。

 山田久志投手の例を上げて偉大な選手の世代交代・配置転換は選手が言ってくるまで行わない。浅尾と転換するときは本人のサインを待つ。選手は必ず日頃サインを発している。それをしっかり受け止めてやること。立ち居振る舞いを観察していれば、わかる。それを受けてから勧めれば、相手に不満や後悔を残さず進めることができる(p274)(そういえば指揮官の条件として非情さというのをノムさんがあげていたなぁ。川上さんは非常だったと。それもやっぱりあるのかな?)。

 揚げ足取りの批判ばかりで、リーダーは育たない。お手並み拝見の温かい目で見るべき(p279)。

 絶対的な基本はあっても、絶対的な方法論はない。これまで素晴らしい才能を持った選手が潰れるのを何度も見てきた。だからこそ指導は恐ろしい。多くのことを教えて混乱させたり、本人がそれを理解できずに間違った方向に進んでしまうこともある。新しいものを身につけさせるより、本人がいま持っているものを引き出すやり方のほうが、本人の長所をスポイルすることがない。

 引継ぎは一切しない(p284)―そうする必要のないもの、後任が困らないチームを残してきた。新しいものはいま何をすべきかということを正確に把握し、指針を示すこと。前任者以上の実績よりも次への土台を作るときという例えがありますが、それは実はドラゴンズに当てはまる例かもしれないですね。山崎取ったり不安がありますからね…。

 野球界変革の必要性(p288)。真っ先に行わなければならないのは野球協約の見直し。ルールがその世界の発展を停滞させることなどあってはならない。コミッショナーは最終決定者であり、強権を持っているが名誉職(=天下りポストでしょうね)化してしまっている。法律のプロより経営者、そのプロの方がいいのではないか?今は我慢の時代、次の飛躍の時までに真剣に変革ができるリーダーを考えておかなくてはならない。

 仕事の成功と人生の幸せは全くの別物(p295)。自分は白飯一杯と焼き鮭で十分幸せ。どんな人間も一度きりの人生に悔いなき采配を振るうべき。

予想以上に長引いたので、とりあえずここで終わり、考察はまた別枠で。上に上げた本を読んでまた何か思いつくかもしれませんからね。

続き→予定