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書評―【前編】 勝利をよぶ身体 誰も解き明かせなかった最強格闘家11人の「極意」/高岡 英夫

過去記事の再掲です。元は11/01に書いたものです。
勝利をよぶ身体 誰も解き明かせなかった最強格闘家11人の「極意」/高岡 英夫

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 ―を読んだので書きますね。目次・構成は以下のとおりです

第1章 吉田沙保里―なぜ「タックルの女王」なのか
第2章 白鵬―「後の先」を追求する男
第3章 エメリヤーエンコ・ヒョードル―皇帝の秘密
第4章 桜庭和志―野生の強さを持つ男
第5章 ヒクソン・グレイシー―均整美から生まれる極意
第6章 藤原敏男―蹴撃の魔術師
第7章 山下泰裕―ヘーシンクとならぶ「柔道の巨人」
第8章 マイク・タイソン―サイエンティフィックな野獣
第9章 アントニオ猪木―格闘芸術の創始者
第10章 ブルース・リー―男がしびれる天才

 この本自体は『超人のメカニズム』の再販なんですね。前三人が追加で、あと削られた人もいるみたいですが、そういえば以前読んだなぁと、でも加筆もあるので楽しめました。

吉田沙保里
 吉田沙保里はサイボーグ。特定の条件に設定された身体になっていてそこに無限の強さを発揮する。つまりレスリング専用に身体および意識を磨き上げたというわけですね。多層な五段がさねの『流舟』が怒涛の推進力・圧力をもたらす。彼女の前に立つとグリズリーが立っているように感じる。※流舟は上方への浮き身と前方への推進力をもたらす身体意識

 人間は腰があって、直立が出来る。四足動物は腰がない。ゆえにあれほど早く動ける。彼女はこの流舟によってタックルの遊び・逃げが生じずにスピーディで強力なタックルが出来る。さらに相手はタックルを潰そうと上から覆いかぶさってくるので、それに負けないように首から上に上向きに流舟がかかっている。またタックルは基本的に相手をいったん上へ持ち上げるものだから流舟が作られると。

 揉合系の人間が発達する手の身体意識『パーム』が重性となって発達している。普通は相手に力を出させないようにするため、やわらかくあったかくなることが多いが、彼女は重性。相手がどうあろうがお構いなしに、力でふんづかまえてやろうということ(こういうのってやっぱり彼女の性格に基づくのだろうか?やさしい性格の人だったら、なんというかやっぱりなるべく相手に気遣って、前者のような柔らかく・暖かく相手を無力化していく構造になるんじゃないかな?)。このパームが手の三倍力のある足に対抗して相手をふんづかまえる基。
 小沢一郎も豪腕といって、この
重性のパームが発達しているという。周りの政治家をがっちり捕まえて逃がさないんだとか。その割にはどっかいくやつ、いうことがわからない奴はどっかいけよっていう気質があると思いますけどね。

 彼女はタックル以外優れた技術はあまりない。しかしタックルを決めてしまえばそれで勝てるからそれで十分。こういう突き詰めた方針を選んだ。一度決めたらこうだと突き進むセンター。彼女の中丹田は下丹田の四倍、体積で言うと十倍で、「燃えるお姉さん」という感じ。日本女子レスリングの快進撃は彼女という精神的支柱が背後にあった。

 中丹田にある『温球』は彼女に敵を捕まえる時、猛獣が久しぶりにご馳走にありつくような高揚感を与える。男性が愛しい女性を抱きしめるような高揚感らしい。以前宇城師範の温球という話があって、気になっていたが、こういう感覚になるのかあ…。妄想していれば、
温球が発達するのかな?(笑)。よし、たくさんの女性・異性を抱きしめる訓練をしましょう!(^ ^;)。吉田はタックルすると同時にこのような高揚感が味わえるから、タックルというスタイルを選んだ。宮本武蔵も斬るときに快感、というか天にも昇るようなすばらしい気持ちを感じていたはずだと。

 かかと中心で、相当足首が柔らかいはず。彼女の『肩包面』『アーダー』はやわらかく、動くように発達するのではなく、高速タックルがあるがゆえ。その後の相手を捕捉するために重い・硬いものを作り出すようになっている。本来レスリングならもっとやわらかい方が有利だが、
高速タックルを主軸とする彼女ならではのもの。相手をネジ倒すのにはこっちの方がいい。

白鵬
 白鵬は対照的に吉田のような先の先ではなく、後の先を目指す人間。格闘家は普通中丹田が発達して下丹田の倍あるのが普通なのに、
白鵬中丹田は丹田よりも小さくなっている。しかも上丹田が発達しているから、落ち着いて冷静で、どっしりしているイメージを与える。先の先は中丹田が発達している者向き、後の先は下丹田。普通立会いという運動を考えると遅れて立つことは考えられないロス。それを可能にする身体意識の装置ならではのもの。

 下丹田は双葉と比べ物にはならない程度。朝青龍と比べても全体的な身体の柔らかさは劣る。しかし部分で見ると柔軟性、力士に必要なモチモチ感がある。
上腕から肘にかけて赤子が抱くような姿勢を普通とるが、かれはそり気味になる。だからたまに懐に入られる。同時に堂々とした姿勢となり、相撲ファンを魅了する(連勝ストップの敗因はまさにこの懐に入られたところだしなぁ)。

 発達したセンターに『ウォール』が彼を背後から支えている。だから普通の力士はものすごい圧力を感じる。背後に壁を背負ったような感じになる。これによって遅れて立ってもあたり負けない。その分相手を観察して多彩な駆け引きの立会いを有利に進められる。初日や序盤に土がつきやすいのもスロースターター、身体意識の特徴から来るもの。ウォールがあるがゆえに、多くの人が見ている緊張しやすい場所でも、普段のような状態を保って結果を出せる。白鵬は不調でも並の力士の会心の当たりが出来、好調なら三倍近い当たりになると。

 第四軸センターはしっかり通っているが、第三軸が腰の辺りで途中で切れている。下丹田が発達しているゆえに中丹田が下に引っ張られて下がっている。さらに発達した上丹田に天の気が降りてきて胸にまで入ってしまい、それがさらに
中丹田を押し下げている。貴乃花よりはるかに身体意識は発達しているが、中丹田は彼より弱い。双葉に近い身体意識をしており、まねるようになってから近づく傾向に拍車がかかった。騒がしい相撲協会を安定させるために彼のような横綱がいるのはいいこと。


ヒョードル

 ヒョードルは背後にぬりかべのように重さと厚みがある身体意識が発生している。これが攻撃力の要となっている。ガードポジションで相手にコントロールされる状況でも、普通なら殴りにこない間合いでも、ヒョードルは殴りにいく。それができるのは、このぬりかべディレクターゆえ。普通はガードポジションで思いっきり殴ると、相手にコントロールされて躱されて拳をグランドぶつけて怪我をするリスクがあるから出来ない。

 彼を相手にすると言い知れぬプレッシャー、壁が迫ってくれるようになって、精神的に圧迫される。それでヒョードルは優位に立てる。ウォールが炎のように燃え盛っていて、相手は火を持っている相手と向かい合っているようになる。これでもヒョードルは優位に立てる。精神性、駆け引き、以上に格という点で、ヒョードルを格上の存在にする。

 ヒョードル中丹田が左右に二つ、重性になっている。こういう構造はうつ病患者しか持っていないもので、いわゆる胸がふさがるという状態になっている。そして、その代わりにセンターのように縦に中丹田が細く形成されている。よって「氷の皇帝」といわれるように格闘家に付き物のファイティングスピリットのようなものが薄い。こういう人物が世界最強の男として君臨している例を見ると必ずしも、中丹田は丸い形状でなくてもいいと思わせる。それほど独創的。縦型楕円型というのはあっても、軸化したものは見たことがなかった。縦になるということは重力に沿って最小限になること。つまり無駄がないようになる。彼の闘争心は最小限の必要なときだけに向けられる。

 上丹田から天性の気をシャワーをあびるようにおろしており、冷静に考えられる。観察できる。客観的に危ないような状況でも、冷静に判断・対処ができる。考えなくても相手から受けた打撃などで本能的に感じられる。中丹田も必要最小限だから、それによるマイナス面、かーっと熱くなって無駄なことをしてしまうということがない。セコンドが判断するような指示が必要のないほど判断力が突出している(危ない!というところでも一瞬で立てなおして試合をものにしてしまうというのが見た限りで二回くらいありましたから、そういうのを可能にする優れた頭脳という点でもヒョードルは注目すべき存在なんでしょうね)。

 宇宙、下天から天性の気を導入するのはジョーダンジダンと同じ。戦う種目でないから、二人には氷という通称はつけられなかった(もし二人が格闘家なら氷の~という通名がついたのでしょうか?まあ、ロシア系の特徴という気がしますけども、氷の云々は)。元揉合系の選手だからパームが発達しており、センターに上丹田が発達しているので、微妙な重力バランスが瞬間的に体で判断できるために、組み技、投げ技に強い。関節も非常に無理がなく極められる。タックルなどに対抗するために下半身も重性、剛性が発達するのが普通だが、彼はここまで天性の気に支えられている。

 恐ろしい顔の作りをしているのに、闘争心を感じさせず、天性の気が入っているため得も知れぬ魅力となっている。強大な身体意識の発達が顕在意識に訴えかけて、マシントレーニングのまずさを理解させている。彼は
マシントレーニングをやっていない。

 首・胸・腰に同心円のような蛇・爬虫類型ディレクターがある。これによってぐにゃぐにゃとした動きができる。これは後述の桜庭と同じ。攻撃力に目を奪われがちだが彼はディフェンス能力が非常に高い。それはこの柔軟性
、蛇・爬虫類型ディレクターが可能にするもの。ヒョードルの身体意識の発達、独特性はまさに60億分の一にふさわしい物。

【桜庭】
 桜庭は熱性の意識を下、脇から入れるのではなく上空から入れている。だから「お日様」のような温かい顔・表情をする。50年前くらいの少年がよくこういう顔をしていた。

 チューリップかスイセンのように腰のディレクターが発達している。これを仙骨動流と呼んでいる。仙骨の意識が非常に発達しており、自由自在の腰の動きが可能。切れ上がったり、下がったり常に動いているからやってる方は捉えどころがない。奇想天外なパフォーマンスはこの腰に基づく。腰の意識が脳にまで届いており、彼は腰に脳がある状態。この腰の身体感覚から思考が生まれてくる。さらに前述どおり熱性の意識で人に暖かさを感じさせる。面白さと暖かさと強さがあいまっているのが桜庭の魅力。

 鉄人ルー・テーズを連想させるウォール。これにより強力な投げ・組みが可能。自由自在の腰とあいまって、相手は捉えようがなくなる。ウォールは下突き、剣の切り上げに使われる(桜庭は打撃が得意ではないが、このウォールの使い方を覚えれば、打撃でも強力な打撃が使えるようになるのでしょうか?)。

 頭にかかっている二重のウォールは蛇や鰻のように頭を動かせる。これは原人や猿人に似ている。原生林などで動く動物が発達させるもの。普通蛇など人間より早くても、平地なら倍程度しかない。しかし密集した森ではそのスピードは10倍近く開く。動きながら障害物をよけることが普通人間には出来ない。桜庭の身体意識はこういったものに近く、四足動物的。だからグラウンドやそこに移動する過程に非常に強い。総合は移行過程が多いから、非常に有利になるだろう。

 優れた身体意識を持っているから、彼もまた筋力トレーニングの限界に気づく。DS的に見てヒクソンと桜庭がやれば、ヒクソンが勝つ。体調が悪ければ、桜庭が勝つこともありうる。貴乃花千代の富士という本来強大な壁になる存在にぶつからなかったため、その後の成長があまりなかったように、ヒクソンは桜庭にとっての壁になってほしい。負けても桜庭が成長するきっかけになる。センターが通れば畏敬を集める存在になる。腿裏が弱く、前方力がない。前方の圧力があれば、もっと強くなれる。追記で今後の桜庭に期待できると書いてありますが、個人的に全く期待できないと考えるのは己だけだろうか。ファンだからこそぼろ負けする桜庭は見たくないんだけれども…。

ヒクソン
 ヒクソン・舟木戦から。互角の攻防を繰り返して結果に至るものではなく、終始ヒクソンが圧倒して終える結果に。舟木も優れた選手だが、ヒクソンの整った均衡美の身体意識とば差があった。体幹部はヒクソンがヘビなら、舟木は丸太.それくらい開発度が違う。ヒクソンは『ベスト』が発達しており、ローターという使い方で、
マウントで体幹部を崩さずパウンドできる。手打ちで効くパンチを打つことが可能。

 以前より発達した
『肩包面』と『心田』により浮き落としができた。舟木は自分で立ってるつもりだったはずだが、ヒクソンに組まれた時点で浮き上がってしまっていた。だからあっさり倒されたように見える。上丹田の発達が少し弱いから表情が落ち着かなく見える。もっと発達したらすばらしい格闘家として成長する。

 マットに寝たあとから汗をかき始めた。これは熱性のエネルギーを取り入れたことによる。そのあと格段に動きが良くなった。組み合うことがさらにヒクソンの構造を良くする方向に行ってしまった。ロープ際の攻防がないほうが良かった。

 身体の使い方という点で桜庭は良い勝負をする。柔軟性、腰・立ち技で桜庭が優れている。しかし『ベスト』が弱く、フィニッシュに持っていく力がヒクソンのほうが優れているので、ヒクソンが勝つだろう。桜庭はベストが弱い。

あと半分、あるので分割します。

※誤変換があまりにも多かったので修正しました。