別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

書評―身体のホームポジション/藤本靖

 こっちで初めての記事更新。ブログ移行の見直し&再掲です。元は10/10に書いたものです

身体のホームポジション

身体のホームポジション

 

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 ロルフィングというボディワークの施術者である氏の著作。ホームポジションという概念を提唱し、その大事さを訴えます。藤本さんは秘伝で連載していて、目や耳や口や鼻の使い方について書いていて、その話が非常に興味深く印象に残っていました。その藤本さんの著作と言うこともあって、迷わず購入(図書館にさせました)。体の内側の声を聞くこと。普段私たちは目で外側の情報にひきつけられてしまいます。つまり知らず知らずのうちに外側社会に引きずられてしまうわけですね。それによって内側のバランスを崩して体をおかしくしてしまうわけです。

 体の本来の機能・姿勢それを取り戻しましょう。そうすれば、身体の不調に悩まされることはなくなりますよ。そして体の本当の使い方、あり方を知ると日常がもっと軽く、楽しいものになります。そのために身体を探求していくわけですね。内側の情報と外側の情報両方に対して適切な受容と反応を起こさないといけない。なるほど、なるほど、まあ当然そうですよね。そのバランスが狂えば適切な反応をすることができないわけですから。

 【顔が重要である】―
個人的にこのことが非常に気にかかるテーマとなっていまして、その顔の器官である目や、鼻などについて解説してあることで非常にひきつけられたんですね。高岡英夫さんが顔を見れば、その人の凄さがわかる、顔にその人間の情報が多く出ている。写真見ただけで身体の持つ情報がわかるっていうくらいですからね。その観察眼というものを身に着けたい、あるいはその顔に反映されるような鍛錬、日常のあり方は何なのか?当然そういうことに興味がいくわけですね。顔というものの性質をより深く知りたかったんですね。そういうところに格好のテーマで、身体論の人が本を出すわけですから食いつかない訳ありません。

 美人だとか、不細工だとかそういうことではありませんよ。変な例えですけど、不細工なのになぜか魅力を感じるといったことがありますよね。あるいはなんかあったかさを感じるとか独特の心地よさというものがあったりしますよね。えもいわれぬ、なぜかわからないけどひきつけられる魅力の正体ですね。その理由を知りたい。

 大体鍛錬をしているスポーツ選手というのは顔が凄い印象的ですよね。よく左右の顔のバランスといって、鏡で顔の真ん中において、左右の顔がゆがんでない人間が端正な顔に見えるといいますよね。決して目鼻立ちが整っているということだけではなく、左右のバランスが著しく整っているということ一つでも、その人間の状態のよさというものを図ることができるわけです。そしてスポーツ選手、一流のアスリートは例外なくズレがないですよね。おそらく内部情報と外部情報のずれがないのでしょう。

 大体顔見れば、凄いかどうかってわかりますよね。浅田真央ちゃんみたとき、なんて顔してるんだろうってビックリしましたもんね。ダルビッシュくんもまるで歌舞伎役者が見栄を切ってるような独特の凄みがありますし、朝青龍だって江戸時代の浮世絵の中の力士に近いものがありますものね。

 

【本文の内容へ】
 耳の話。耳は聞こうという意識でなくて、自然に音が入ってくるという感じで聞くと音が捉えやすい。耳は半身の筋肉全てにつながっており、耳が固まるということは身体の体側部全体に緊張が広がるということになる。耳にはいわゆる平衡感覚をつかさどる三半規管があるから、バランス感覚にもかかわっている。片足バランスで音を拾う、耳を澄ませるようにするとバランスが保たれやすくなる。耳の穴をかっぽじって~ということばがあるように、耳の穴を広げるような意識を持つとより音がうまく拾えて、聞き取れる。聴覚野は耳の少し上にあるので人の話を聞くときにはここを意識して聞く、ここで聞いているんだという意識を持つと、よく話が伝わる。胸鎖乳突筋という耳から胸につながる筋肉がある。耳が固まると首を回す役割をするこの筋肉が固まって、ノーという首を振る動作がしにくくなる。まさにノーと言えない日本人になるわけだ。

 耳だけではないのだが、鼻の少し奥に蝶形骨という、読んで字のごとく蝶の形をした骨がある。ここが固まると肋骨、横隔膜まで固まってしまう。ここにお皿があって、呼吸のたびに上下する。吸気で上、呼気で下というエクササイズをすると自由度が戻る。耳を軽くつまんでこのエクササイズをやる。コレかなりお勧め。顔が固まっていることを非常によく理解できます。コレやると耳鼻科という言葉があるように、耳と鼻がつながっていることが良く認識できますね。

 目の話。パソコンを使っていると自然に身体が崩れて姿勢が悪くなる。そういったときはいったん目を離して目を閉じる。パソコンとの関係をリセットする。画面一点ではなく、視野を広げて全体を見る感じで行うと良い。指を立てて、左右の視野がどこまであるのかチェックする。ここまでしか目で捉えられないというところから広げるレッスンをするといい。また左右の視野がずれていると、感覚もずれやすいので注意。実際左右の視野をチェックしてみると、やっぱり利き目の右目は焦点視・非焦点視スムーズに切り替えられますけど、そうじゃない左目は焦点視での視野の範囲も非焦点視への切り替えもスムーズに行かないですね。左右で視野・見る力にズレ・差がありますね。

  目は水の中に眼球というボールが浮かんで漂っているというイメージを持つとうまく使える。六つの筋肉で結ばれているから、それをゆるめることが大事*2。眼窩を指でなぞってみると目が意外に小さいことがわかる。それは普段目を使う上で、周辺の筋肉を間違って酷使させすぎているから、目に力がはいりすぎて周辺を固めてしまっている。なぞって、しっかりここまでが眼窩で、目玉だぞと再認識するのが大事。

 目をつぶって首を触りながら、目を動かすと首の筋肉が動くのがわかる。知らず知らずのうちに首・肩を酷使することにもなるわけですね。正しい使い方、姿勢をとらないと大変です。脳の後ろに視覚野はあるので、そこから見るようにする。「トンボの目」実際の目に意識をおかないことで楽に使えるようになる。武道で言う遠山の目付け、対象に焦点をあわせながらも、周辺を同時に見ることが大事。

 視線がぶれると身体もぶれる、不安定になる。人に見られるのが苦手なのは、情報を受け取ってもらうことになれていないから、禅のように木を見ながら、木に見られる感覚を身につける必要がある。視線を対象に持っていく、ぶつけていくのではなく、向こうから情報が目にはいっていく感じ。一点に視線を合わせず、両目同時に使う。遠近全て同時に見れる「無限焦点」、丹田に力が入って、自然と緩んでくる。

 口の話。たいていアゴが固まっている。割り箸をかんであごの筋肉を緩ませてやると身体が柔らかくなっていることに気づくはず。下アゴが緩むとそのアゴの上にある舌も緩む。おしゃべりを楽しむ女性というのは、ここを緩ませてリラックスしたいからということもある。舌から、肛門まで内臓はつながっている。このリンクが重要なために、舌をリラックスさせて内臓まで全てリラックスさせる。下アゴをぶら下げるには、上アゴを天井のアーチのように意識してやると良い。上アゴを広げるようなイメージで。上アゴから一本の長いソーセージがぶら下がっているような内臓感覚が重要。

 鼻の話。鼻腔全体を意識して呼吸すると自然と腹式呼吸になる。鼻だけでなく、目の周辺にまでつながっている。また前述の蝶形骨が使えるようになる。匂うと正中線が整えられるという働きがある。篩骨(しこつ)―鼻骨のすぐ後ろにある骨。その後ろに蝶形骨がある。この篩骨から尾骨までがつながっている。正中線のスタートと終点なわけですね。五十代を過ぎると嗅覚は急激に衰えるといい、鼻のエクササイズは老化予防にも良い。鼻筋を通すという言葉があるように、この骨を意識すると、軸が通ってスッとなる。

 このあと視線と空間、近くと連動させることで行動、動作が全く違う動きに改善されるという話、筋膜や皮膚が大事であるといった話がでてきます。特に皮膚の一体性は重要な話ですね。「許す」感覚、「触れる」動きと「触れられる」動きといった話、探りながら、味わいながら動くアクティブタッチの話があります。興味深い話ですので、是非読んでみてください。

 最後に筆者が禅の体験を通じて、言葉ではなく実感として平和や幸せ、愛といった感覚を身体で体験したとあります。ただ生きていることに充実感を得られるんだと。ただ生きるそのこと自体に充実感を覚える身体の豊かさがなにより、必要な時代なんでしょうね。自分を含めて、今の世間で生きるただそれだけで満たされた感覚・気持ちいい感覚がある、幸福であるという豊かな身体感覚を持った人間がどのくらいいるでしょうか?う~ん、深い。いや、やはり藤本さんという人は凄い人なんだなぁと改めて思いました。

もうとっくに品切れで手に入らないっぽいですが。しかし武術家なら実際にワザを見せるというメリットが有りますが、治療家・療法士ですか?そういう人の実技ってどれくらい需要があるんでしょうかね?本見ただけじゃわからないからDVDほしいという人そんなに多いんでしょうか?だったら実際セミナー参加したほうが良いと思うんですけどね。

*2:上下左右の4つ以外に上斜筋・下斜筋というのが鼻・内側から眼球にくっついていると左右均等に3:3じゃなくて内側から時計回り・反時計回りで細かい動きを調整する構造みたいですね。だからどうだというわけではありませんが、改めて気になってググったもので。まあ筋肉が鼻・真ん中から付いてるわけですから、目を動かすときに、視点を意識するよりも目頭の筋肉を意識して動かすとスムーズに動かしやすくなったりするかもしれません。ちょっとやってみたら細かく動かすにはこっちのほうが良いのかな?という気がしました