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セパ交流戦ラスト―なぜセ・リーグとパ・リーグの格差が生まれたか(2010)


ラストです。
 では、なぜ今シーズンここまで結果がパに偏ったのか?という疑問に答える一番大事な話。*1

 色々言われてきたパのほうがレベルが高いなどという話で片付けられる問題ではないことを説明してきました。では、何故今シーズンパワンサイドで偏った結果になったのか?それはセ・パの野球の違いにあるといえるでしょう。最も大きいのは、セは一貫して789というゲーム後半に全力を注ぐ方式に移ってきたこと。先発完投がいかに少ないか、パと比較すればわかるでしょう。セットアッパー・クローザーに依存して、完投能力のある先発投手育成を怠ってきた。また投手が打席に立つ以上、勝負どころの後半で代打を送られやすい。つまりDH制の有無。これが両リーグを決定的に隔てるものとなっているわけです。パ・リーグの投手ならそういうことはありえないので、純粋に投手の状態次第でマウンドを降りるかどうかが決まる。調子が良くてまだ投げられるのに降ろされるということはありえませんからね。

 セはメジャーの中四日ローテーションはまだ取り入れてませんが、先発がゲーム作って、後は継投策というゲームパターンが基本。ベンチワークがより重要な要素を占めるようになっています。これだったら先発の負担が少ないのでリリーフ枚数増やして中4日のほうが合理的に思えますけどね。

 セがこういう方式になっていったのは、おそらく大魔神佐々木あたりからの影響ではないかと思います。中日星野さんもソンドンヨルだっけ?そんなセットアッパー&クローザーでチームを導きましたし。最終的には岡田阪神JFKに至る3枚看板の形になりました。そして今の巨人の強さ、三連覇の原動力は越智・山口・クルーンの形なくしてはありえなかったでしょう。
 さらに巨人が豊田・マイケル・小林雅などといったようなパの抑え型投手を獲得してきたのも、この延長上にあります。

 阪神・中日・巨人と本来パと互角、それ以上に戦える球団が不調だった最大の理由はこの投手陣の不調にあったといえるでしょう。中日も岩瀬投手の不調がモロに出ましたしね。セの抑え・継投主体戦術では、チームの成績が長期的に安定しないという性質があります。後半リリーフピッチャーに頼りすぎるために、2~3年はもったとしても、壊れるor数字を落とす。結果リリーフピッチャー短期使い捨てになる可能性が大きいですから。リリーフが壊れてそのシーズンボロッボロは現代野球では見慣れた画ですね。

 大魔神佐々木時代には40~50試合だったのに、今や60~70試合当たり前の時代になりましたしね。ただ、藤川投手や久保田投手の80~90試合は異常でしょう。明らかに酷使しすぎて、安定感が失われますよ。勝っていい試合、勝たなくてもいい試合を絶妙に見抜いて、上手く休ませながら使ってやらないと確実に駄目になるでしょう。二人とも一時の絶対感がなくなっていますしね。安定して任せられる守りの要としてもっと休ませないと。阪神がヤクルトにまくられるという珍事、巨人に14ゲームでしたっけ?ひっくり返されるという珍事の原因もここにあったでしょうからね。
 人によって色々性質があるでしょうけど、回またぎで使って、789は3人ではなく、2人にしたり、チームによって相性のいい他の中継ぎ使うなりして中継ぎエース・ストッパーは休ませるようにしないと、いけません。どこかの国の政府みたいに単年度で複式簿記もなく、ドンブリ勘定でやってたら、単年度優勝できても長期的にぐちゃぐちゃになります。

 結論として、この抑えピッチャーの不調ということが大きいでしょう。三球団どこかは毎年鬼のような鉄壁封鎖をしてきましたし、今年はそれがなかったというのが原因です。

 DHがある=先発にいけるとこまで任せる。DHがない=打順のめぐり合わせで投手の交代という大きな決断が勝負の分かれ目になる。言うまでもなく789回に回ってくる打順の三巡目、四巡目のほうが先発は失点しやすい=投手に代打を送る機会が増えますからね。

 巨人がノーアウトでランナー出したら、代走鈴木→盗塁→代打川相→バント→ワンアウト三塁で犠牲フライ一点という鬼図式を作り出して、反則技すれすれのような勝利の方程式で、優勝したシーズンがありました。これはともかくとして最終回になればなるほど一点を奪う采配の意味が大きくなるわけです。当然交代は頻繁にされることになり、後で投げられる投手陣をいかに枚数を増やせるか、使える投手を多く用意できるかということが、セでの強さと直結するわけですね。

 今シーズンはそれがなかった。それが全てです。そして重要なことは今年はちょっとわかりませんが、長いシーズンでず~っと同じ勝ちパターンの投手で一年いくことはかなり稀であるということです。チーム力、長期戦と交流戦の結果は別物ということです。巨人が阪神に10何連勝したシーズンも逆に巨人にそれまで強かったんです。おもしろいことに、阪・中・巨は三すくみのような感じで、じゃんけんのグー・チョキ・パーになってます。去年は逆でした。
 大体シーズン前にやられたチーム対策をしてくるからでしょう。やられたチーム対策は万全で、勝ち越したチームは疎かになるというか、そもそもうまく行っている以上対策を立てようがないという要素があります。そんな感じで今年はじゃんけんサイクルが見事に逆になりました。去年相性の良かった・カモにしていたチームに負け越してしまうのはそういうポイントがありますね。

 それはさておき今年のセの不調・パの好調というのは、セの安定した上位三球団が守護神、勝ちパの三柱神体制整備の谷間にあった。そこが全てでしょう。そして、交流戦は順位に直結しにくい。無理することはない。一回負けたら一ゲーム開くのが、0.5で済むんですからね。

 そしてもうひとつ重要なのがホームゲームですね。サッカーではホームでやると俗に平均して0.8点多いという傾向があって、ほとんど事前に一点取ってるようなものになります。安定して強いソフトバンクを見ると、ホームで圧倒的に強いということがわかります。
 つまり地域密着の成功と、普段見られない球団との対決に盛り上がっていることがわかります。なにより広い球場を生かしてどうやって戦えばいいのかという地の利を十分に生かしているのでしょう。中日くらいしか広いとこありませんから、どうしてもホークスに弱くなるのでしょうね。今シーズン調子よくないホークスにもこの成績というのはそれ以外考えられないですね。鷹は9-3、10-2、10-1とホームで毎年圧倒的に強いです。そこが交流戦上位に必ず入る秘訣でしょうね。
 巨人にしろ、中日にしろホームでは圧倒的8-4ですが、アウェイで負けすぎましたね。逆の4-8です。仕方のないことといえば仕方のないことですが。何より不思議なことは2位の西武がホームで負け越したのにアウェイで圧倒的に強かったという珍事でしょう。アウェイで9-3…。なんでしょうね、この珍事は…。ちょっと説明がつきません。狭いセ・リーグの球場で、ライオンズ打線にセの投手陣が怖気づいて制球を乱して打ち込まれたということでしょうか?あとは普段野球を見る埼玉県民の大半がセリーグ派が多くて、彼らが応援しに来たのでホームでのファンの支援がなかったとかか?ライオンズは安定して交流戦弱いというか、そんなに強くないですね。なんでだろ?

 巨人が狭い球場、飛ぶ球、飛ぶ気圧を有効に利用してHRで勝つ。地の利にあったチーム作りをするといった点で一応成功しているわけです。ただ今後も絶対的なエースが育ちにくい環境にあるのは間違いないでしょうね。これだと絶対的な投手を外国やパ・リーグから定期的に連れてこないとまず安定して勝てないのではないでしょうか?

 そして決定的な理由のひとつに監督があります。今年のオリックスの監督は阪神監督の岡田さん、で楽天広島にいたブラウンさんです。つまりこの二球団はセに対する戦い方、チーム特性を知り抜いているわけですね。オリックスが優勝し、楽天が広島に4タコ食らわせた。それが今シーズンパ上位独占の原因ですね。
 本来横浜のように貯金製造機、ATMがパ・リーグでもどのチームか出てくるものなんですね。ところが今シーズンはそれがなかった。去年に至っては楽9-15、オリ8-16ですからね。まんまパのATM候補が故障したんです。そして今年はヤクルトがそうなってしまったということが、パの上位独占につながったんですね。交流戦でのセパ格差というのは、パ・リーグは弱いチーム・駄目チームが長期的に低迷し続けるという要素がないこと。逆にセ・リーグは一度弱くなると中長期的に弱いまま、なかなかチームを立て直せないという傾向があるからという点にあるといえるでしょう。要するにセ・リーグの球団・フロントがいかにビジョンなしにチームを動かしているかということですね。

 先ほど述べたように、負けた方は雪辱を期すためにより対策を練ってきます。来シーズンの交流戦ではむしろ、セが対策をつんできそうな気がしますけどね。特に広・横・ヤ監督は雪辱の二年目となりますし。期待して良いんじゃないでしょうか?横浜はキャッチャー不在だったり、吉村どこいった?のような根本的にまずい要素が多いので、短期的にはどうにもならないだろうって気がしますけどね。

*1:バックナンバー | セ・パ交流戦 | NPB.jp 日本野球機構 交流戦のデータはNPBの公式サイト参照。気になったことがあった方は実際の成績をこちらでチェックすることをオススメします