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身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

2016日本シリーズ広島カープVS北海道日本ハムファイターズ 不思議な日本シリーズのおまけ

 

 ―のおまけの感想などです。まずは三戦目の古田解説のあまりから。メモったので一応残しておこうかなと。2回表、黒田は大体狙ったところにボールが行っている。有原は行っていない。鈴木に対して外の球が甘く高く入ってヒット。エルドレッドはまとめ打ちするタイプ。オールスターまでに20~30本HR打ったと思ったらピタッと止まる。打つ・打たないが時期によって波がある。今打っている時・ノッている時かもしれない。要注意と言った所でHR。
 この試合の大野のリードは、左打者のインコース・右打者のアウトコースを軸に組み立てていました。初回は左が二人だったから積極的にインコースを攻める形になっていたが、二回は右打者が続いて全てアウトコース。9・10球全てアウトコース攻めになってしまった。右打者のインコース攻めがないというのが非常に気になるリードでしたね。
 で、古田解説に戻って、打たれだすときというのはバッテリーが後手を踏む。これまでの外のストレート・高めの釣り球をHRにした。なので今回はもうまっすぐで来ないだろと思っていたはず。ファール2球もタイミングが合っていたと。ということは、それを見て配球を変えなければいけなかった。どういう選択をするべきだったのか聞いてみたいですね。
 西川か中島かちょっと忘れましたけど、粘ってファーボールで繋いだ場面で、稲葉さんが「昔スリーツーは消極的に行けということを古田さんが言っていて、まさにその通りの結果」。それを受けて古田さんが「俺、そんなこと言ったっけ?」と応えていたのが面白かったですね(笑)。
 またプロ野球ニュースで笘篠さんのコメント。ハム側の不思議な攻め方。積極的な打者安部に初球簡単にストライクを取りに行った。これまでも初球には必ず手を出している傾向があるのになんで簡単にストライクを取りに行ったのかな?とのこと。ファイターズは投手の状況・投手が投げやすいということを中心に置きすぎという気がしましたね。

■第四戦in札幌ドーム 3-1 高梨VS岡田
 この試合は古田さんが解説ではなかったのでそんなに書くことありません。四戦目、外野の守備力が命運を分けたという話をしておきながら、外野守備に定評があるファイターズのエラー。この試合の広島の先制点はエルドレッドのライトフライを近藤がエラーによるものでした。なんでセンターが捕球しなかったんでしょうか?セカンドが深く追いすぎて迷ったところに近藤が突進してきて遠慮した?2アウトなのでランナー1塁なのに、生還されてしまった。タッチアップ警戒とか、足の早いランナーが2塁にいて、外野に飛んだ場合肩の強いライトが優先的にケアするという場面でもないですし…。そもそも1塁にいるランナーは新井でしたからねぇ…。というか近藤の肩はそもそもどうだったか、地肩はともかくイップスであんまり正確に送球できなかったような?
 というかそもそもこの場面、ここまでノーヒットで抑えられていた高梨相手に、丸が先頭ファーボールで出塁。で4番の新井の場面で1B2Sのカウントで盗塁失敗なんですよね。この場面で普通走るかなぁ?まともにやっていたら高梨は攻略できないという判断…?そりゃツラゲという固有名詞が発生するくらい、ゲッツー打つことで有名な人ですけど。ファールが一塁線切れるゴロでそれを見て引っ掛けてゲッツーがありそうというのもわかるんですけどね。で、結局ノーアウトランナー1塁という形が、ランナーを全く進めることが出来ない。ランナーが釘付けで1塁ままで終わるという最悪の場面だったんですよね。そのカープ側の拙攻を近藤がエラーで助けるという何だこのシリーズ…という展開でした。
レフト松山でレフト方向に狙おうという意識がファイターズ打線にあったかも?たまたまかな。

 10/26、この試合のプロ野球ニュースの気になったメモ。エルドレッドは145キロ以上のインハイ攻めで、低めに早く変化する球で打ち取るというのがセオリー。5回の満塁の場面、4番新井に外中心の攻め方、右打ちを意識していた新井はアウトローに構えていたのがインハイに来て中途半端なスイングになって討ち取られた。対照的に中田はスライダーに狙いを絞ってHR。新聞のインタビューには石原のリードにやられたという話があったが、達川曰く、石原のリードに慣れてきたのではないかとのこと。
 ジャクソンVSレアード。レアードの攻め方で達川解説。レアードのような外国人は真っ直ぐを待ちながらスライダーを打つタイミングのとり方を子供の頃から練習する。ストライクゾーンに入ってくるスライダーは危険。初球外のスライダーの厳しい良い球で、それをマークさせて次はアウトローのいいところ。レアードはいいスライダーを見せられてまっすぐは殆ど捨てていた。そこへアウトローでここまでは完璧。なのにHRを打たれたスライダーは甘いところへ入ったと。

■石原のリードへの感想
 キャッチャーはボールゾーンに投げさせたかったんでしょうね。しかしボール球を投げるという概念がない外国人投手にあの中途半端な所で構えてボール球だという意図が伝わっていたのでしょうか?このシリーズでキャッチャーがボール球を投げるんだぞ!ストライクいらないよ!という姿勢、歩かせても次の打者で勝負。トータルでアウトを三つ取るから歩かせてもいいとボール球という素材を惜しげもなくふんだんに使って豪華な料理をつくるという姿勢がまるで見られませんでしたね。そういう駆け引きが見どころなのに、そういうものがまるでなくて面白くなかったですね。
 それと気になったのが石原のリードで、彼のリードが良かったと言われることが何回かあったのですけど、それっておそらくジャクソンのリードだと思うのですね。良い投手・持ち球が豊富な投手を好リードしても、それはシリーズ全体の話ではないと思います。そのジャクソンの球を活かして次の試合につなげる、次の中継ぎ投手につなげるという展開があったのかと言われると、なかったように思えます。石原のリードに慣れられたというのも、パターンが決まってたんじゃないですかね?序盤はツーシーム・カットで、中盤でカーブ・チェンジアップ、ランナー溜まったら右バッターのインハイにカットというのが5戦目のパターンでしたけど、おそらく1戦目もこの組み立てとあまり変わらなかったのではないでしょうか?ランナー溜まった場面でファイターズ打線はインコースツーシーム・カットを狙っていましたからね。それと左ピッチャーといえば芯を外してのゴロ、引っ掛けさせてゲッツーを取る。ゲッツーを簡単に取れるからイニングを食える、ゲームを作れるというイメージがありますが、ゲッツーが非常に少なかったですよね。パワーピッチャー系だからということなんでしょうかねぇ?
 短期決戦というのは指揮官同士の対決であると同時に、キャッチャー同士の対決でもあります。石原VS大野・市川であまり目立ったところのないシリーズでしたが、どちらかが明確に上回ったとは言えないシリーズ。キャッチャー軽視どうし、課題の残るシリーズになりましたね。
 ファイターズはもう前からなので特に触れることはありませんが、問題は広島カープの方。中村奨成くんが入りましたけど、伝統的にキャッチャーが育たない球団ですからね。広島のキャッチャーと聞いてパッと思いつくのは達川さんしか居ない。そういう球団がキャッチャーを育てられるかと言われるとまず無理でしょうね。

■セパ格差、パ・リーグの壁を想定したチーム作りをすべし&試合ごとに悪くなった広島のリリーフと良くなっていった日ハムのリリーフ
 前回書いたようにポイントになったジャクソンのデッドボール。一度レアードにぶつけているために際どいところへ投げられなかったんですね。パワーピッチャーでまっすぐと外スラのみ。あそこでインコースをつけなければ、まあそうなるでしょうねという所。カープは大事な終盤にボコボコ打たれて同点・逆転されていた。そういうところを見てもキャッチャーの配球に問題がないとは言えないでしょうねエルドレッドもそうなんですが、ジャクソンの球速ではセ・リーグで通じてもパ・リーグでは通用しないという良い見本だったように思えます。マウンドが合わなかったのかも知れませんが、出ていた球速・最速は150や151でしたが、140後半の球が多かった。サファテの160キロなど速い投手がゴロゴロいるパ・リーグでは初見でも対応するのに難しいと感じさせなかったように思えましたね。

 8回表鈴木のサイン見落としからバントミス。さらに盗塁で代走赤松が刺されるというドタバタ・拙攻。なんか解説で去年西武コーチの人がいるから中継ぎのクイックなどのフォームの癖も知っている。札幌ドームのグラウンドは、ナゴドかどこかに似ていて走りやすいなんていうコメントが途中アナから上がってきた途端のこれですからね。うーん、というところ。
 6回からリリーフで出てきたバースの素晴らしいカットボール日本ハムは試合が経つに連れ素晴らしいリリーフが出てきた。リリーフの状態が上がっていった。この後に投げた宮西然り、どんどん内容が良くなっていった。宮西は最後に左にはスライダーでいく。自分の一番自信のあるボールで行くと、もう前から決めていたみたいですね。それで丸を討ち取ったと。対照的に広島はリリーフがどんどん悪くなっていった。その差でしょうね。この試合最終回、満塁まで持っていった広島カープの粘りは称賛すべきものでしたね。

■第五戦 加藤VSジョンソン 5☓-1
 三戦と五戦目は古田さん解説なので面白かったですね。細かく書くのはこれで最後ですね。
 一回表、鈴木誠也はスリーボール・ノーストライクでも振ってくる。要注意→振ってファール、その次の球でタイムリーヒット。若手らしからぬ待ち方をすると。
 ファイターズは前回ジョンソン相手にレアードのHRくらいでヒットは出てもいい当たりはあんまりなかった。前回やられた分、ファイターズは攻略の小細工をいろいろ考えてきているはず。加藤は腕のフリの割にボールが来ない。杉内のように腕のフリとボールの速さが一致しないピッチャーは打ちづらい。真っ直ぐでファールが取れるからコントロール、いっぱいいっぱいの所を狙わずにファールでカウントを稼ぐくらいのつもりで―と言ったそばから、チェンジアップが甘く高く入ってヒットと。まっすぐにタイミングがあっていなかった&追い込んでもいなかったのにどうしてチェンジアップを選択したのだろうか?
 同じく2表、ノーアウト2・3塁でショートゴロで3塁ランナーは突っ込まず。ピッチャーゴロのように見えた当たりだが、ピッチャーゴロでもランダウンで同じ2・3塁の形が作れる。ベンチの指示でピッチャーゴロの当たりは突っ込むなという指示だったかもとのことでしたが、これもおそらくカープベンチは明確な指示を出していなかったんでしょうね…。
 田中恒成に対して、まっすぐ8球インコースのきわどいところがボールで最後の勝負球がチェンジアップ。これでチェンジアップなら振るだろうと思えたが、選んだ。初めからカットで繋ぐつもりだったのか、よく繋いだ。とても素晴らしいプレーに映りました。で、継投策で代わったメンドーサが丸を三振と。
 2裏、前回苦労したカットボールが少し甘く入ったのを中田がレフト前ヒット。レアードはジョンソンとアメリカ時代に対戦経験がある。レアードの膝下にストライクが決まるのが大事。ココでストライクが取れて、しかも曲げられることでバッターは迷う。インハイが投げきれずに同じようにレフト前ヒット。
 稲葉曰く、左打者は追い込まれるまで、インコースのツーシム&外のカットボールのどっちかに絞るべき。西川が外のカットボールをレフトフライにしている。この球だと犠牲フライの可能性がある。故に外のカットボールは投げてこない場面。よって田中賢介にはインコースのツーシムの連投でファーストゴロと。賢介も外に打ち上げにくいこの球で勝負と分かっていたはず。分かっていてもこの結果、いいピッチャーですな。こういう球が投げられるからこそ沢村賞ということでしょうね。ふと思いましたが左右の違いはあれど黒田とタイプが似ていますね。メジャー流の動かす球使いという点で。そういう意味でもこの第五戦で慣れという要素があったんでしょうか?
 ラストバッター市川、中田・レアードが打ったのと同じような球。それが三遊間ではなくセンター前に飛んだ。田中は中田・レアードの当たり同じく、三遊間をケアしていたのに逆方向の打球を上手く取った。ファインプレーだと。田中の送球がそれたのをエルドレッドがうまくカバー。二重の好守備でしたね。しかし右打者に3回インハイを投げきれなかった。投げきれるわけでもないのに危険なところに要求し続けた石原のリードはどうなのでしょう?これはいいのでしょうか…?全部ゴロ性になったように、あのボールがフライとして上がるリスクがないということなんでしょうかね?ジョンソンのカットはまず上がっていかないということだから、この選択でいいということなのでしょうか?
 2塁ベース付近の当たり、人工芝かアンツーカーでツーバウンド目の跳ね方が違う。ホームグラウンドは有利。
 3裏、中島セーフティーの構え・ゆさぶり。岡のインコースの見逃し方ぶつかりそうな当たりでクルッと回る見逃し方はインコースに強いタイプの見逃し方なのかな?四戦目でもこの巧い見逃し方をやっていたんですよね、岡。ジョンソンは右バッターに対するインコースのカットが生命線。ストロングポイントを逆に狙い撃って投げにくくさせる。マイナス思考に入るとじゃあ外へ。そして逆にその外が狙われたら…となっていくと。相手投手の攻略法の一つに相手の最もいい球を逆に狙ってそれを投げにくくさせるというものがあるということですね。
 で、岡が選んで繋いで西川へ。西川もセーフティと打線で攻略しようという意志が感じられると。西川はジョンソンに対し、ゆるい球・遅い球にタイミングを合わせながら、速い球に対応しようとする。速い球に対応しようとするとファールがもっと前に飛ぶはず。インコースツーシームをバットの根っこにでも当ててカット・ファールに出来るから外のゆるい球が見逃せる。とにかく当てて転がしてなんとかしようという狙い。初戦の3塁への内野安打・ボテボテの当たりもそういう意図から生まれたもの。で、菊池の守備でセカンドゴロになるもののランナーを3塁に進めた。
 4表、メンドーサの好投。ツーシームばっかり、特に右バッターのインサイド右打者は打ちづらい。角度があって140キロ後半で沈んでくる。広島は左投手の加藤用に右打者を並べているから尚更。古田さんは狙ってやったわけじゃないんだろうけどとコメントしていましたが、CSでやっているので確実に計算内ですよね。吉井コーチの計算通り、手のひらの上でコロコロされていますね。
 4裏、カーブ・チェンジアップ、ゆるい球を使い出す。全て変化球で最後に頭にないインローまっすぐでレアードを見逃し三振。打者の頭にない裏を書く石原のリード。右打者へのカットで勝負する場面が多い。逆に言うとランナーのいない場面ではカーブ・スライダーなどで勝負して、その球を効果的に使うためにランナーがいない場面ではあまり使いたくないとのこと。
 5表、メンドーサの膝下に来るボールの角度から言ってバットの下で打ってしまう。初見で対処するのは難しい。ベンチはゴロを打たせないような指示・対策をしないといけない。石原が裏を書いたように、菊池へのインコース攻めで意識付けをさせて外で三振。丸にカーブを見せて外への甘いスライダーを打ち損じからのまたカーブでの見逃し三振。市川の好リード。
 5裏、外の球を合わせてレフト前ヒット。そして市川の送りバントからの中島の三遊間の当たりで暴走・三塁憤死。前日の近藤のエラーのように、このようにハムにもまずいプレーはチラホラあったわけですね。しかし結果はファイターズの勝利という…。
 6表、その前からも使っていたとは思うが、印象に残るツーシーム以外にチェンジアップが冴えたという印象。チェンジアップも決まりだして最後までメンドーサで行けるんじゃないかと思わせる快投。
 6裏、左に対して外主体で攻めるようになってきたかな?どうだったか。前回は粘った西川も今回は普通に凡退。序盤内に投げて意識させて回が進むごとに外を使い、広く使おうということかな。全く肩が開かない大谷のバッティングでツーベース。中田に対して、ツーシームインコースではなくまっすぐの連投。まっすぐとツーシームの使い分けが効果的ということなのかな?待っていなかったカーブで勝負。裏を書かれて見逃すところだが甘く入ってきたのでつい手を出してしまったと。

■勝負を分けた継投策
 ここでジョンソンは95球。まだまだ行ける球数だがベンチは動き出した。ここで代えるのか?7表、小窪にストレートのファーボール。送って石原、進塁打で3塁の形を作るも無駄に。
 7裏、ピッチャー今村に交代で先頭賢介に四球。また送って中島が三遊間にという展開。今度は三塁に進む。浅いセンターフライで賢介が生還同点。カープはダメで、ファイターズは虎の子の1点をもぎ取った。両チームの実力の差を見せつける決定的な場面でしたね。
 確かに前回も7回でジョンソンは捕まったというか、打たれだした。100球が一つの目処になる投手なんでしょう。そういう要素を考慮したというのは十分わかります。しかし789の8回を任されているジャクソンが二試合連続で打たれている。少なくとももう札幌ドームで投げさせられない。投げれば3連投という悪条件も付きますからね。そう考えると7回まで引っ張る。出来るだけ引っ張って、ヘーゲンスか大瀬良なんか挟んで今村と繋いで最後は中崎。ファイターズがマツダに合わなかったように、どうもカープサイドも札幌ドームに合わないという傾向がある以上、今投げているジョンソンに託す。同点覚悟で出来るだけ引っ張って、延長を視野に中継ぎは温存すべき所。そういう場面で789の3枚を通常通り投入するという継投は大問題でしょうね。

 どういう決断を下すにせよ、大事なシリーズ・短期決戦でその都度その都度、調子を見極めつつ状態のいい選手から使っていくという短期決戦のセオリーを無視したことには違いありませんね。継投のやりくりというのはどの監督・コーチでも頭を悩ませる問題ですが、決まり決まった789回のパターンに固執する。JFKで毎回投げさせる投手が同じということをやるのは愚か極まりない判断・決断でしょう。パワプロのCPUじゃないんですから、毎回同じことやっていれば良いのならば監督なんて必要ないでしょうに。監督個人の意志・裁量が極力反映されない決断をする≒責任逃れですね。そういう官僚の前例踏襲主義のような決定をする人間を監督にする組織というのはろくな組織ではないでしょう。谷元・宮西・バースをその日の状況に応じて使い分けた。クローザーをその日ごとに柔軟に使い分け、見事に結果を出した吉井コーチと極めて対蹠的でしたね。

■追いつかれた時点で負け確定。ラストはまさかのサヨナラ負け、しかもクローザーが満塁弾被弾
 第四戦でのジャクソンのスライダー・ウイニングショットを狙って打ったレアードはキャッチャーとして非常に嫌なタイプと。大谷との対決で、ジャクソンはパワーピッチャー。速球・ファールでカウントを稼いでスライダーで勝負をするタイプ。追い込んで外に落したいがそういう球を持ってない。インコースか膝下にスライダーを投げるしかない。
 最後は札幌ドーム初登板の中崎が西川に満塁弾を打たれて前田さんが「ホームランはないだろー」と叫んでジエンド。賢介にファーボールを出してからなのですが、左打者相手に制球が良くなかった。急に悪くなっていました。まあ、正確にはその前の陽に対するインコースの勝負球が甘く入ってレフトフライというところからですが。で歩かせてからバント&ヒットで岡へのデッドボールなのですけども、問題のデッドボールの前のバントとヒットはピッチャー前の当たりで、中崎が処理をしたんですよね。それで慣れないマウンドから降りる時に足でも痛めたのか、内野安打を自分のフィールディングのミスと捉えたために動揺でもしたのでしょうか?更に続く左バッター岡にデッドボールとなりました。岡が怒ったのはそれまでも執拗に危ないところに行っていたからですね、ぶつかってはいませんでしたけど。避けられるところなともかく絶対に避けられないところに行きましたからね、思わず怒鳴ってしまったんでしょう。で、さらに制球のつかない左打者が出てきた時点で勝負は既についていたというところでしょうね。
 また、バントの後で一度投手コーチがマウンドに行っていたので、そこで間を取ることが出来なかった。両軍ベンチ騒然という緊張の場面で、中崎を落ち着けるために間を開けることが出来なかった。あそこで石原が一度マウンドに行ってほしかったですね。もしくはファーストかサードがマウンドに行って肩を抱いてアドバイス・声掛けで間を開ける。一呼吸間をとってほしかった。ファーストがエルドレッドサードが小窪。どちらかにベテラン新井がいて、そういう事が出来れば…。歳を考えれば守備はもうキツイから無理でしょうけどね。
 
 で、10・27のプロ野球ニュース解説。大矢いわく、レアードはちょっとスピードの落ちるアウトコースよりにツボがある。そして高く浮く甘い球。大野とは違って市川はインサイドの速い球を上手く使う。高木いわくファイターズは大谷・中田・レアードがしっかりしている。が、カープエルドレッドしかいない。そしてエルドレッドの攻め方、インハイにきっちりいくようになった。ファイターズは本当に攻め方を知らなかったのか?インハイを付けきれなかったのか気になる所。4番にエルドレッドだが、穴が大きいエルドレッドを4番に置くか?という高木の疑問に、大矢は「僕は置かない」とのこと。まあ、そういう意味では4番の差なんでしょうね。4番を打てる中田にレアードが控えているファイターズと1~3番はタナキクマルと揃っていても4・5番がいないカープの差と言えるでしょうね。
 ジョンソンのインサイドの使い方、石原のリードが上手かった。高木曰く、7回の犠牲フライで賢介の生還。肩の強いライト・鈴木誠也が取ったほうが良かった。ライトに任せてほしかった。ホークス柳田のように強引に奪い取っても良かったのでは?と。
 エルドレッドがそれたボールを倒れ込みながら捕球しましたが、守備上手いんですね。ファーストの捕球能力は内野の守備力に直結するといいますが、こんなところも広島がリーグ制覇できた要因なのかもしれませんね。

■第六戦 inマツダスタジアム 野村VS増井 4-10
 まあ、もう言うこともないのでラストの締めに入るのですが、間違いなくこの試合でファイターズが勝って終わるだろうなという展開になりました。広島サイドは、内弁慶シリーズになることを願って闘うしかなかったでしょう。言うまでもなくそんな都合のいいことは起こらないし、甘い考えが通じるはずもないわけで。
 カープはこのシリーズ一貫して優位な展開で進めていた。広島ペースの試合運びをしていました。殆どすべてカープ先制で、第三戦で先制を許してもすぐに点を取り返してカープリードの展開にもっていった。このシリーズを見ていない人に全ての試合の6・7回までを見せて、どっちが勝ったと思うか尋ねれば、どう答えるか?そしてカープは7・8・9の三枚が機能していて、ファイターズの三枚が機能していないことを付け加えれば、カープ日本シリーズを制したと10人中10人がそう答えるでしょう。
 とにかくカープは7・8・9回というの大事な終盤に失点する(三戦目は延長10回ですが同じこと)。終盤になればなるほど重要な一点を取ること、一点を守ることという野球のセオリーが出来ない。となると、カープが勝つ試合展開は初戦・二戦目のように4点差以上の大差をつけるしかない。3点でもいけるかも知れませんがまあ何れにせよクロスゲームではまず追いつかれて逆転負けする。打線が序盤に大爆発するしかない。そういう前提で最終戦に突入しました。

■考えられない8回での大量失点
 今回は珍しくファイターズがリードしてゲームを進める。これまでの勢い・流れを引きずった展開となりました。劣勢から5・6回で1点ずつ追加して追いつくというこれまでにないゲーム展開。これならばひょっとして同点のまま9回サヨナラもあるか?とかすかな希望を抱かせながらの件の8回の満塁弾。
 2アウトからあれよあれよと3連打で中田で押し出し。そしてピッチャーバースにタイムリーを打たれてしまい、限界だろうというとこでも投手を代えずジャクソン続投。挙げ句にレアードに満塁弾という???な展開に。伊集院さんがラジオで「勝つにせよ負けるにせよ、今日だけは勝って明日黒田の最後の登板だけは見たい。そういう一種異様な空気に包まれて相当なプレッシャーがあった」。レアードのところも「あれよあれよという間にヒットで繋がれて混乱している所でまさかのバースのタイムリーで何が起こったか分からなかった。そこで更に満塁弾。あっという間の出来事だった」と。観客席・広島ファンからすると本当に衝撃な展開過ぎて血の気が引く思いをしたところではないでしょうか?
 ファンがそうなったとしても何の問題もない話ですが、指揮官・ベンチの人間がこれでは困る。もちろんベンチに居るコーチや監督がどう思っていたかはわかりえませんが、彼らも同じくパニックになっていたんでしょうね。でなければレアードに打たれた後での大瀬良交代というのは説明が付きませんからね。もう今日負けたら終わりという場面でなんで?としか言えない。
 大事な1点を争う場面でこのシリーズ調子を落としていたジャクソンを登板させたことも疑問ですし、使うのならばこのような不出来、ピンチを作ることを想定して、すぐ降ろすことも計算して使うはず。北海道で3連投させてあげくこれですから、もうなんと言って良いかわかりませんね…。
 まあ何度もいいますけど選手を信頼する・任せる・心中すると言えば聞こえはいいですが、要するに何にも考えていないということですからね。心中するというのは、あらゆる手段を尽くして他に打つ手がない。ここでもうこの選手が打たれたらどうしようもない。他に彼以上の選手はいないという状況・場面ならばわかりますけども、そうではないですからね。
 人事を尽くして天命を待つではなく、初めからこの回で使うとただ決めて状態・試合状況を無視して使っているだけですから、最低な采配としか言いようがありません。
 8回という大事な終盤で、しかも今日負けたら終わりというゲームで、2アウトからファーボール挟んでの5連打で6失点という展開はなかなか見れないゲームでしょうね。

■危機管理・継投・投手コーチの差
 吉井コーチはいつものようにあらゆる投手を試して、あらゆる状況・展開に備えるようにしていました。ベンチ全ての投手を使って、先発がろくに機能しないという最悪に近い状況でも勝ちを拾う展開に繋げていきました。対照的に緒方監督・畝コーチは何も考えない投手起用・継投。こういう時にどうするか、危険球・故障などのアクシデント、先発・勝利パターンに投げる投手の不調に予め備えて、投手陣を整備する・試すという発想がなかった。勝ちパターン以外はヘーゲンスと大瀬良くらいでしょう、確か投げたのは。バースの活躍が際立ったシリーズになりはしましたが、他に石井・井口・鍵谷なども使って勝ちを拾いました。ベンチ入り投手で使わなかったのは万一の際のロングリ&右打者対策の左投手&既に構想から外れていた吉川以外では白村くらい。ベンチ入り全員で戦ったファイターズに対し、勝ちパターンに拘ったカープの差ですね。
 一岡や九里や福井を上手く使いこなせなかったカープの投手起用・継投には大きな問題があると言えるでしょうね。この記事(※参照―【日本シリーズ】広島の「DH解除」にネット裏から異論噴出)なんかにあるようにDH解除をするなど戦い方に大きな問題があります。都合の良いこと・都合の良い展開になるということしか考えていなくて、それ以外のパターンに入った時に、予想外の事が起こった場合に極めて脆いという拙さがそこにはあるでしょうね。危機管理の思想がそこにはない。危機管理思想を徹底してペナントを戦い、短期決戦を見据えたチーム作りをしなければならないでしょう。
 まあ、アニマル浜口氏が五輪で娘の敗戦について、引き分けでポイント先取という極めて有利な場面で逆転負けして、「あの場面では足を取られてから投げられながら返す以外にない。そうされないように徹底してそうされない練習をしてきたのに、それをくらうなんてなんていう負け方をしたんだ…。なんて言う負け方をしたんだ…。」とぼやいて呆然としていたのを思い出しましたね。
 松山という大谷キラー、大谷からプロ初HRを打った選手がいて、このシリーズでもまた大谷からHRを打つという最高の展開になった。絶対的な投手から勝利をとる。まず厳しいと思われていた大事な初戦を取れて、しかも二戦目も続けて取れた。これ以上ない最高の結果となった。ファイターズは残り5試合で4勝しないといけない。もう殆ど不可能。これだけ幸運が舞い込んできても活かせないというのは相当な実力差・問題がそこに内包されているということ指揮官の決断欠如・投手継投の拙さ・短期決戦に必要な戦力整備欠如などの問題を解決しない限りこの広島カープの短期決戦での弱さというのは依然変わらず続くでしょうね。

■バランスの悪いカープの戦力・左欠乏症
 で、最後なんですけど、何かの記事でどうして清宮を指名しなかったのか?みたいな話で、カープは年齢別にどのポジションの選手がどれくらいいて、チームに求められる選手が一目瞭然でわかる。清宮はそこにハマらなかったから早々とカープは撤退した。長期的なビジョンがあってそれに沿って動いているカープは素晴らしい―的な記事がありました*1
 で、「え?」っていう話になるんですけど、今年散々話題になりましたが、広島は左投手・左のリリーフがいない。左のワンポイントリリーフがいないから勝負所で筒香に打たれて負けたというような場面がありました。先発左腕に左のワンポイントに、ロングリリーフ。7・8・9回も必ずというわけではないですけど、やはり左投手を1枚挟みたいもの。森福がやっていたように7回でもいいですけどね。9回岩瀬はちょっとというかかなりレアなケースですけど、右が三枚続くというのはなるべくなら避けたい。こういう事を考えても明らかに&絶対的に左投手が足りない。これでどこにビジョンがあるといえるの…?そもそも広島は右のロングリリーフもよくわからない。右のロングリリーフは誰なんでしょうかね?
 また、このシリーズでも加藤→メンドーサで目立ちましたがとにかく左バッターが弱かった。松山が活躍したのは初戦の大谷のみで優秀な左バッターは田中と丸くらいでしょう。これはいくらなんでも問題がある。この広島東洋カープ部には問題がある。左投手どころか左打者も足りていない。左欠乏症というのを何とかする必要性があるでしょうね。広島カープは。

 まあ、そういう問題は2016年の時点でわかっていたはずで、そういうチームの課題・欠点に手を付けないからこそ、今年(もう去年ですが)風物詩を爆発させたわけで*2。まさに負けに不思議の負け無しというやつですね。しばらくリーグで優勝を狙えるチームなだけに、今年・来年いつまた風物詩となるかわからない。こういうリスクを抱えているのに放置していていいのでしょうか…。
 金村さんが采配を痛烈に批判して、試合後鈴木誠也が泣きながらバッティング練習をしていたという話をしていましたが、選手たちが可愛そうですね。丸・菊池の存在は前から知っていましたが、田中・鈴木といい選手が揃って、凄い良いチームになった。それがこんな大逆転負け・惨敗をするのですから心情察するに余りあります。まあ問題の本質に手がつけられることはないでしょうね…。オーナーが代わらない限りは。

アイキャッチ用画像

*1:ちょっと話は違いますが、これにも書かれていますね。広島は、なぜ清宮争奪戦から撤退したのか? 再び脚光浴びるドラフト戦略3カ条 | VICTORY

*2:大砲と先発投手・クローザーなど、戦力を集めればそれで勝てると考えるかつてのダイエーホークスに似てきているとみなしても良いかも知れません。大砲ではなくて俊足巧打者という点では決定的に違いはあるんですけどね。これで強打の捕手が揃えば…

2016日本シリーズ広島カープVS北海道日本ハムファイターズ 不思議な日本シリーズ<後編>何故広島東洋カープは短期決戦に弱いのか

※2018の日本シリーズのために、アクセスが増えたので要点を追記します。広島カープがなぜ短期決戦に弱いのか。
 ①セ・リーグパ・リーグの実力・地力の違い。
 ②DH制の有無によるパ本拠地、ビジター・アウェイでの弱さ。
 ③短期決戦の戦い方・セオリーを知らないor無視した戦い方をする。
 ④短期決戦を勝ち抜くための選手・脇役的な選手がいない
 ⑤監督が戦術を考えて選択をしない。戦略・戦術を決める頭脳であるはずの監督がその役割を果たしていない
 ―とまあ大体そんなことを書いているということを念頭にお読みになっていただければ宜しいかと思います*1。①は当たり前のことなので別に触れてはいませんけどね。この文は個人的に思った感想文、書きたいことをただ書き連ねただけの文でまとまり・一貫性に少し書けるものなので、本質・要点を絞って伝える文になってない。なので、今一度ポイントだけ絞ってまとめておきました。

 ※※今、読んだらあんまり上手いまとめになっていなかった、というかこの文章のまとめになっていなかったので、文章の<前書き>・<導入>を兼ねて再度追記します。
 前回書いたとおり、日本ハムファイターズというのはいくつかの点から短期決戦が苦手、弱いチームであるということがわかる。その短期決戦を不得意にしているチームに対し、広島カープはなんと球界を代表する絶対的な投手大谷を打ち崩しホームで連勝するという幸運・最高の結果を引き出したにもかかわらず、日本シリーズで敗退することになってしまった。短期決戦で連勝しながら4連敗で敗退するということは正直近代野球以後の現代ではありえない。33-4で4連敗するより難しい負け方、考えうる限り最低最悪の出来事であると言える。
 では、どうして4連敗という惨憺たる事態を招いたのか?その理由は一体何なのか?それは広島カープがファイターズのさらに下を行く短期決戦下手だから。そもそも短期決戦というもの・戦いゲームの構造を理解していないからということに尽きる。短期決戦というのは言うまでもなく彼我の戦力差によって決まるものだが、その当たり前の要素の次の要点となるのは、まず守備・守りの計算。そして相手に対する戦略・戦術プラン。つまり指揮官の事前の戦略と当日の現場・結果に対して臨機応変に戦術を繰り出す采配によって決まるもの。それが拙いというだけならばまだしも、最後の指揮官の采配という点では拙いレベルを通り越して存在していないのだから、組織が機能するわけがない。組織が機能不全に陥って機構を停止すれば惨敗をするのは火を見るより明らか。
 守備の軽視、対ファイターズ戦略・戦術プランという采配の欠如、指揮官の采配の放棄、それらがカープがファイターズの下を行った。下回った要因と言えるでしょう。(追記ここまで、以下本文)

 前回(2016日本シリーズ広島カープVS北海道日本ハムファイターズ 不思議な日本シリーズ<前編>何故日本ハムファイターズは短期決戦に弱いのか)の続きです。前回書いたように何故、菊池のバスターと丸の意表を突くバントで広島がシリーズで勝てないと言えるのか?どうしてこの素晴らしいプレーがカープの敗因になるのか?それはこれが指揮官・緒方監督の判断によるものではないからですね。
 日本ハムファイターズの敗因は、日本シリーズという短期決戦用の策がないこと。短期決戦では相手の特徴を理解し、相手の長所を殺しストロングポイントが発揮できないようにして、短所をついていくことが基本です。また、打線の処理で誰を殺すか、どのバッターに焦点を当てて集中的にアウトを重ねるのかというのがポイントになるように、打線を線にしないで分断して処理をする(=アウトを取る)、失点を最小限に抑える工夫が大事になります。そういう工夫がまるで見られないシリーズだったので残念でしたね。お互い戦術と戦術をぶつけて知恵を巡らせるという駆け引きがあまり見られませんでしたから。
 最近の野球の特徴と言っていいかも知れませんが、一試合一試合、途切れてしまっている。バラバラになっている感が強いんですよね。前の試合を活かした判断、プレー。そして次の試合につなげるための工夫・配慮というものが見られない。ある程度のスパン、特定の期間でトータルに考えて長期的視点から戦術・戦略を構築するということをしない傾向があるように思えます。その試合が終わったら、それまでの流れ・経過はポイ捨てして、また違う試合にゼロから取り組む。1カード=3試合で捕手を固定しない、捕手軽視なんかもそうですよね。明日は明日の風が吹く的な傾向が非常に強くなっていて興ざめしてしまいます。

■ファイターズ同じく短期決戦の基本・セオリーを知らないカープ。そのカープ日本シリーズで惨敗するのは当然
 話をもとに戻して、日本ハムファイターズがその基本をやっていないというのと同じく、広島東洋カープも同じ。その基本を抑えていない。日本シリーズという短期決戦用の策がない。指揮官が戦略・戦術を練って、その基本プランに応じて、状況を判断し決断する。指揮官の指示を明確にコーチ・選手に伝えて、実行するという意志決定過程がそこに存在していないのですね。組織としての明確な指揮系統が存在していない、これではチームとは呼べない。そういうチームが短期決戦で弱いのは至極当然、当たり前すぎるほど当たり前ですね。
 広島のリーグ優勝は25年ぶりだった―ということは、日本シリーズの経験が25年ないということ。ベテランも黒田や新井くらいで経験豊富で支柱となる存在がいない。新井が阪神日本シリーズで何回も活躍してチームを日本一に導いているとかでもあれば、また少し話は違ったのでしょうけど、もちろんそういうわけでもない。圧倒的に経験値が足りない。以前書いたように、広島カープが日本一になるには数回は日本シリーズに出続けて経験を積む必要がある。短期決戦の豊富な経験を積んで初めて日本シリーズに勝てるようになる。クライマックスは同じリーグ同士の対決なので違うリーグの短期決戦の経験とは別ですからね。どう見ても日本シリーズの経験値が足りない。まあ、そんな当たり前のことも理解せずに拙記事に難癖つけてきた輩がいましたが(笑)。
 ①日本シリーズ用の特別な戦術・戦略の欠如、②経験値不足、③頼りになるベテランの欠如。この三点が広島の弱点であり、ままファイターズと共通するんですね、実は。それでも両チームを比べてみると、②でも③でもファイターズの方がまだ上回っている(③は互角にしてもいいですけども)。そういう点でファイターズが上を行った・シリーズを制することが可能だったと見ることも出来るでしょう。より正確に言うと、ファイターズが上回ったと言うより、カープが下回った。勝手に自滅していったというべきですね。

■シリーズ前の懸念と二連敗後の緒方監督への評価
 チーム力というかパ・リーグで普段から揉まれているファイターズが普通に勝つだろう。しかし、シーズン終盤怪我が多発して、万全とは程遠い状態。そこで経験値不足な大谷が乱調となり、初戦を落してしまうと…。短期決戦に強いチームではないだけにファイターズがコケる可能性がある。それがちょっと怖いなぁと戦前は見ていました。ファイターズが勝ってもらわないと球界改革が進まない、セ・リーグの停滞・腐敗状態が改まらない。球界全体の構造・流れが変わらない。ですから、ここでファイターズが負けると、下手すればまた10年は球界改革が遅れる。だから、そうならないようにちゃんと取りこぼさないで上手くやってくれよ…と思って見ていたのですが、連敗で「ああやっぱりやっちゃったか…。何やってんだよファイターズ…。そしてこんなに短期決戦に弱いチームに負けやがってバカ工藤&佐藤義ィイ!」とイライラしていました。
 それとは別として、戦前から緒方評はあまり良くなかった。そんな大した監督だとは思っていなかったので、件のバスターとバントで「こんな思い切ったことをやる監督なのか…。ちゃんと作戦を実行できる監督じゃないか。こういうことをやってくる監督ならば、戦術面で広島にやられてしまう、日ハムは負けるだろうな…」と思い、半ば諦めていました。中村晃めて三戦目を見ました。

■二連敗でファイターズの敗北・カープの日本一は決まったも同然
 第三戦は、ファイターズのホームに帰る。ここで流れを変えるしかない。ココで流れを変えれば少し分からなくなる。というかもうホームで三連勝するしかファイターズに勝ち目はない。大谷はもう投げられないし、増井も頼りにならない。広島・マツダのマウンドで実力を発揮できる先発が考えにくい。クローザーだったマーティンも故障でいないため、後ろにつないでいく投手継投でも四苦八苦。将棋で言うと金2枚・銀1枚落ちくらいの感じでしょうか?状況は絶望的。これでここから日本ハムがホームで3つ取ることが出来るか?広島は789に投げる三枚が機能しているのに対し、こちらは誰が789投げるのかわからない状況。これでファイターズが勝つと見なすほうが不自然でしょう。
 さまぁ~ず三村さんがツイートして炎上していましたが、「ファイターズってこんなに弱いのか」というのはプロ野球ファンなら当然の感想でしょう。短期決戦で大事な初戦・二戦をいくら敵地だとは言え、連続して落とすことはありえない。それだけは絶対しないように闘うのが普通。負けたとしても打線を丸裸にした、これでここから1点も取られない。すべてわかった!とでも言うなら別ですが、いくら本来のチーム状態でなかったとは言え、この結果を見れば栗山監督は短期決戦に向かない監督と言えるでしょう。
 結果的にはその後、四連勝で栗山監督の想定内だったのでは?という人もいるかも知れませんが、三戦目は辛勝。9割5分負けていて、ぎりぎりなんとかひっくり返した形。いつ負けてシリーズ敗退となってもおかしくないゲーム運びでした。終始相手ペースで戦ったゲームで計算内・想定内とは到底見做すことは出来ないでしょう。

■2016のファイターズはリーグ制覇・CS突破は素晴らしくとも日本シリーズの戦い方は稚拙
 それだけ投手陣の不調が大きかった。むしろこの状態でよくパ・リーグで勝ち上がってこれたと見ることも可能ですね。その点の評価は決して落ちないですし、称賛されるべきでしょう。しかし、本来の7割位のチーム状況で万全な戦い方ができない。不利な状態で最終決戦に望むという状況にある以上、本来取らない作戦・奇策で立ち向かうべきなんですね。普通にやったら、ファイターズの7割はカープの10割を上回るわけが無いのですから*2 
 何度も言うように、ペナントのような長期の戦いと違う、短期の戦いではいつもと違う戦い方が必要になる。その短期決戦においていつものファイターズの野球をしてしまった。これが大問題なんですね。チームには基本の形があり、それを基準に闘う。しかし、いつもと違う短期決戦ではそれをベースに奇策を盛り込む・特別な戦術をその上に重ねなければいけない。割合はどうなるかは状況次第で変化するためにわかりませんけども、大体いつもの戦い方=基本・基盤が7で奇策・特別な戦い方が3という7:3位の割合ですかね。まあチームスタイルやその時のチームコンディションにその年の対戦相手などに応じて割合は可変するものでしょうけどね。
 いずれにせよ何割かはいつもと違う奇策・対策を盛り込むものなのにもかかわらず、いつもどおりのファイターズの野球をした。これは短期決戦に弱いチームだなぁとしみじみ思いましたね。あまり走らず、犠打で繋いでいく。これは手堅い王道野球です。が、しかしこの王道野球というのはこちらの戦力が確実に相手の戦力を上回っており、かつペナントレースのような単位で戦った時の話です。そういう条件を満たしてのみ効果を発揮すること。巨大戦力を保有するかつてのジャイアンツのような思想ですよね。ジャイアンツのように細かい作戦を実行できる選手が少ない・野球脳が足らない選手が多いとでも言うのならばともかく、どうしてファイターズのような球団がこういう方針を採用してしまっているのか不思議でなりませんねぇ…。

 そしてそのような稚拙な戦い方をしたファイターズに敗れてしまった広島カープはもっと大きな問題を抱えていると言えるわけですね。次はその点にスポットを当ててみたいと思います。

■シリーズ全体を決めることになった第三戦の決断欠如の緒方采配
 で、本題の緒方監督の話ですが、三戦目の古田氏のテレビ解説で元広島の前田氏に話を振って、こんなことを言っていました。古田曰く

 「カープは守備・攻撃が自由・各個人の裁量に任されていますよね。」

 一回裏のランナーがいる場面で、長打が出る場面ではないから、外野がもう少し前に出ていい。なのに外野は殆ど定位置だった。これを見て古田氏がこういう解説をしていたんですね。ハッキリ言ってこれはありえないこと。選手の自主性を重んじるという領域ではない。外野の守備位置をその選手に任せるなんてありえない。その打者の調子・投手の調子を把握して配球を考えているキャッチャーが指示を出すというのならまだしも、大事な短期決戦で外野手各個人がそれぞれ位置を自分自身で決めるなんてありえない。指揮官の判断もしくはコーチが指示を出して決めるべきことでしょう。
 そしてこの試合・第三戦目は延長でファイターズが制しましたが、そのサヨナラの場面は次のようなものでした。延長10回裏、西川が走って2塁へ。西川が還ればサヨナラ、外野は前進するはず。丸がコーチの指示を確認して定位置よりも少し前に来たくらいであまり位置を変えなかった。それを見て、古田は―ということは歩かせるんでしょうねと、語る。しかしバッテリーはゾーンで勝負して、石原がマウンドへ確認しに行く。大瀬良は勝負するんですか(もしくは勝負しないんですか)?という顔付きで石原やベンチを見ていた。そういうどっちなんだ?と誰もが思う中で、「ベンチの指示がバッテリーに任せるというのならバッテリーが考えることだが…」と古田氏が解説していた所で結局、勝負を選んで大谷がヒットを打ちサヨナラとなりました。勝負に至る過程で明らかにベンチと選手の意思疎通が取れていない・上手く図れていない。これではピンチにおいて、危機管理が出来る・臨機応変の対処ができると考える事はできないでしょう。いくつかのケースを想定しておいて、すぐ指示が出せるようになっていなければ選手が目先の勝負に集中することは出来ませんからね。
 そして、この決断の根拠が結局よくわからない。個人的に理解が出来ないんですよね。大谷>中田と決めていたなら最後まで中田勝負で敬遠すべき。投手ジャクソンと大瀬良の違いなのか?ジャクソンならともかく、大瀬良ならば大谷のほうが抑えやすいという判断・根拠があったというのか?また中田の次の岡を見れば岡勝負というのも十分にある。ジャクソンが岡を簡単に打ち取っていたのだし、岡勝負でいい。最悪大谷・中田二人敬遠して、岡と勝負ではないのか?打線単位で考えて処理をすることを考えれば後者でしょう。大谷・中田二人からアウトを取ることと、岡とどちらが怖いのか、どちらがアウトを取れる可能性が高いのか言うまでもないでしょう。1点でゲームが決まる場面でなぜ警戒していた大谷と勝負なのか理解できません。大谷・中田にはくさい所を突き続けて駄目なら駄目でいい。結果的に歩かせて満塁にしてしまってもいい。1点勝負でどのバッターからアウトを取るのがベストなのかを考えると大谷・中田はカウント次第で勝負すべき。1アウト満塁でもう歩かせられない場面になったとしても、岡で2つアウトを取る(無論、三振でアウト1つ止まりならその次のバッターとさらに勝負)という選択でよかったでしょう。トータル3人でアウトを取るという視点が何故なかったのか?今日負けるとしても、主軸・クリーンナップの大谷・中田に打たれて負けるのと、伏兵岡どちらに打たれて負けるのがシリーズ的にいいのか、本当にちゃんとした計算があったのでしょうか?それがあって、大谷・中田勝負のほうが抑える確率が高いというのだったなら良いのですが…。どうもそういう物があったように思えないんですよね。ベンチのドタバタを見る限り、思い切っていけ!位の感覚しかなかったように見えました。

■シリーズ敗退を決定づけた外野守備軽視
 10/25の第三戦は本当に不思議な日本シリーズを象徴する試合でしたね。また、その前の8回の勝負所。カープが1点リードで8回を迎えた所、大谷敬遠で中田勝負、レフトの松山がボールを後ろにそらしてしまって同点どころか逆転を招いてしまったのも言うまでもなく疑問。何故そこで外野を松山から赤松に変えておかなかったのか?守りきる・逃げ切る展開で次の回松山に打順が回るなどと欲張るべきではない。初めから中田に打たれる前提でいたのか?守備固めをしなかったというのは、同点のリスクが高いということ。もしくは同点延長で十分こちらに勝算があるということ。最悪同点でもOKだと判断したということ。であるならば、外野に飛ぶ際どい打球は無理するなという指示を出しておかなくてはいけない。後ろに逸らすということだけはするなよという指示を出さなくてはいけない。それを怠った。指揮官が判断・決断を放棄した。これで広島カープのシリーズ敗北が決まったと言っていい場面でしたね。
 どういう考えを持ってああいう形にしたのかはともかく、いずれにせよカープの弱点外野守備がここで出たわけですね。どこで書いたか忘れましたが、カープがホークスにむちゃくちゃ弱い・天敵状態になっているのは、走られ放題であることに加えて、外野守備が拙い。広島カープというかセ・リーグ全体の傾向ですが、外野が狭い分、ヤフオクドームや札幌ドームの広い外野で致命的なミスをしたり、守備範囲が狭い外野手をおいて捕れそうな当たりもヒットにしてしまうという傾向がありました*3。一点を競ったクロスゲームで終盤エルドレッドだったか忘れましたが、外野の何でも無い当たりを捕れずに大事な一点をホークスに取られて敗戦という試合があったのを覚えていますからね。外野守備のレベルの差というのも交流戦パ・リーグが圧倒する理由の一つになってるわけですね。長年自チームの課題を克服できずにいる、対策を打ってないことも広島カープの問題点でしょう。

■短期決戦用のチーム作りを怠ったまま日本シリーズに挑んだカープが敗北するのは必定
 1点が大事な終盤で外野の守備固めを怠る。外野の守備固めをすると、得点力が落ちるのが怖くて代えられない。そういうチーム作りをしていたことが本質とは言えないまでも、カープの敗戦の要因の一つと言えるでしょう。レギュラーに素晴らしい選手が揃った、主力がリーグを代表する選手だらけになったとは言え、選手層が厚いとは決して言えない。であるならば、脇役でそれぞれ役割をこなせる選手を育てる・トレードなどで獲得しておくべきだった。
 たとえば守備固め代走要員に左右の代打の切り札。選手を交代した時の控えもしくはアクシデントのときのためのユーティリティープレーヤーなどですね。そういう役割をこなせる選手を普段から求めて試合で使うようにしておくべきだった。こういう選手がいない以上、短期決戦を考えたチーム作りがなされていないとしか思えない。短期決戦・日本シリーズを戦うつもりがなかった・勝つつもりがなかったとしか思えない。各戦局で重要になる役割に応じた選手がいない。これでどうやって日本シリーズを闘うつもりだったのか逆に聞いてみたいくらいですね。「いったいどういうつもりなのですか?これで短期決戦どうやって勝つつもりなのですか」と。現代野球のセオリー無視という要素は決して見過ごすことができないでしょうね。

■指揮系統・意志決定が存在しない広島カープ
 後でわかったことですが、広島カープはこのように選手が判断する領域が多すぎる。菊池のバスターも丸のバントも、実は緒方監督の判断・策ではなく選手自身のアイデア・思いつきだったとか。短期決戦の重要な場面での判断を選手に任せるということは、自分自身は何も考えていないと言うのに等しい。監督が選手の意見を聞きいれないとかそういう類の話ではなく、基本的にプレー・作戦の判断は監督・コーチの仕事。いくつか状況に応じて選択権を与える。この場合はこうして、違う場合はああするという指示を出して、最終的にどれを選ぶか選手が決めるということももちろんあります。しかしそういう場面ではない。大事な場面では絶対監督・コーチが明確な指示を出さなくてはいけない。流石「行けたら行け」というあやふやな指示を出す監督を輩出したチームだと思いました。
 戦略プラン上、ここは少しおかしな指示でも長期的判断に基づいてセオリーから外れる選択をするというのは監督にしかできない仕事。選手は指示がおかしいと思っても長期的な判断・作戦立案をすることはできないし、わからない。ですから言われたことをただ実行するしかない*4。目先のプレー・仕事に専念することが選手の役割だからです。選手が各自勝手に判断して行動していたら、組織は機能しない。チームは破綻します。
 監督が作戦立案・采配を放棄している。これでは監督が存在していないのと一緒。ベンチにFAXが送られて来て、その指示どおりに采配が決まるのと一緒ですね。これで勝てという方がおかしい。いったいどういうつもりで采配しているのか。またどういうつもりでフロントは彼を監督にしたのか。地元メディアは荒れに荒れてフロントを叩くレベルでしょう。ちょっと近代組織の常識からは考えられない人事ですね。

 要点は語り尽くしたので、もう殆ど重要なことで語り残したことはないのですけど、プロ野球ニュースメモや古田さん解説でメモったことがあるので、それにチラホラ触れて終わりたいと思います。中途半端な長さになるのでおまけとして別枠で日本シリーズの感想を残しておきます。おまけも意外に長くなりそうなので、ちょっとバランスがおかしくなったら、またこちらにいくつか追記します。おまけ編→2016日本シリーズ広島カープVS北海道日本ハムファイターズ 不思議な日本シリーズのおまけ

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*1:守備軽視とか入れても良いんですけどね、それはまあいずれ書く2018の日本シリーズのところで書きましょうかね?いつ書くのか知らんけど

*2:セ・リーグ見ていないので、その時のカープの状態が10割か9割か断定できないんですけどね、実は7割だった!!ということもあり得るかもしれませんけど、まあ多分9割以上の状態だったと思います。

*3:ヤフオクドームはテラスができてからは狭くなりましたけどね

*4:無論、事前に監督・トップがこれこれこういうことでプランを立てているから、おかしいと感じるかもしれないが実行してくれと事前に説明することはありますけどね

2016日本シリーズ広島カープVS北海道日本ハムファイターズ 不思議な日本シリーズ<前編>何故日本ハムファイターズは短期決戦に弱いのか


 今頃書いていなかった2016年不思議な日本シリーズの話*1。もうめんどくさいから書くのやめようかなと思いましたが、広島カープのCS敗退という事件があったのでそのことについていずれ書くだろうから、どうせ書くなら、まあやっぱりこの話も書こうかなと今更ながら書くことにしました。
 とにかく不可思議な日本シリーズでした。というのもお互い短期決戦が下手なチーム、弱いチームなので、「???」と思うことが目立ったシリーズでした。ファイターズは言うまでもなく日本シリーズで唯一セリーグに分が悪い球団。
 90年~92年に西武ライオンズが3連覇して以降、93年から02年までライオンズは5回日本シリーズで敗れるという出負け状態が続いていましたが、04年・08年には見事日本一になっています。そして言うまでもなく03年からはパ・リーグ絶対時代に突入します。この03~17年まで実に15回中12回パ・リーグ側が勝って日本一になっており、セ・リーグ側の球団はたったの3回しか優勝できていない。最近10年間では日本一になったセ・リーグ球団は巨人しかないという有様です(巨人が日本一になったのは09年と12年です。ちなみに残りの一回は中日の07年です)。
 このセ・リーグの弱さとパ・リーグの強さというのは面白い話ですが、以前から折々語っていますし、本論ではないのでいずれまた。いずれ書く2017日本シリーズで触れると思いますのでね。本論は、日本ハムファイターズが異常に日本シリーズに弱いということ。日本シリーズパ・リーグ側が負けた三回、07年・09年・12年のシリーズで負けた球団は全てファイターズなのですね。ファイターズだけが唯一日本シリーズに弱い*2
 なぜなのか?スモールベースボールを、いやらしい野球をしっかりやっている北海道日本ハムファイターズは、むしろ短期決戦に強いはず。大砲・長距離砲と先発・抑えをかき集めて圧倒的戦力でペナントを制する。その反動で日本シリーズのような短期決戦で嘘のように空回りして実力を発揮できずに負けるという事例は過去の日本シリーズでいくらでも見られたのですが、言うまでもなくファイターズはそういうタイプのチームではない。

日本ハムファイターズは短期決戦のセオリーを無視する
 真剣にプロ野球を分析しだしたのが11年の日本シリーズからなので、それ以前は自分の目で実際に見ていないので、どうして弱いのか想像も付きませんでした。そういう背景があったので、前から疑問に思っていた謎が解き明かされて、実に個人的に勉強になった日本シリーズでした。もったいぶって答えを引っ張ろうかと思いましたが、流石に読み手に迷惑なので、先に答えを言ってしまうと、日本ハムファイターズは短期決戦というもの、日本シリーズというものを重視していない。勝てば儲けものくらいにしか考えていないのですね。日本ハムファイターズは、短期決戦のセオリーを根本から無視しています。
 なぜなのか?おそらくアメリカ・メジャー流の経営方針、いかに少ない金で強いチームを作るか―というマネーボールセイバーメトリクス思考に囚われすぎているからではないかと見ています。まあ、①FA選手流出の多さから頼りになるベテラン・チームリーダーの不在、②総額年俸の安さに基づく選手たちのコンプレックス。ドライな経営のために選手のモチベーションがどうしても頭打ちになること。日本一ボーナス査定などの不在(あるいは他球団と比較した相対的な安さ)など過去にすでに触れていますが、今回初めてファイターズの日本シリーズを観戦して「ああだから弱いのか」と納得したのでそんな話をしてみたいと思います。①・②は誰でも思いつきますし、どこでも指摘されている話だと思いますので、あまり目にすることのない大事な要因③短期決戦のセオリー無視という点を今回指摘したいと思います。*3

■10/22、初戦in広島 ジョンソンVS大谷 5-1
 初戦の一回にして既に違和感のあるプレイ・選択が見られたシリーズでした。ファイターズの問題として、ピッチャーの立ち上がりに初回にバントを選択するという消極性という点を指摘したいと思います。もちろん、大谷という絶対的な投手がいる以上、初回にバントで確実に一点を取りに行く選択・戦術は間違いではありません。というか殆どの監督がこの選択をするでしょう。一点あればまず勝てる確率が高いわけですから。どちらかというと強硬策に出るほうが間違いと言えるでしょうね。

 では、どうしてここでバントを消極策と指摘したのか?それはファイターズというのは常に手堅い戦術しか採用しない。実に消極的な戦いをするからなんですね。短期決戦には「~すべからず」という、してはいけないことがいくつかあります。そのしてはいけないこと=ミスを恐れるが余り、ガチガチな安全策しか選択しないという傾向があることがこのシリーズを見てわかりました。
 中島はこのあとジョンソンに対して3打数2安打。西川は4打数2安打。1・2番がジョンソンに対して相性がいい、もしくは状態がいい。それは所詮結果論だと言われることかもしれませんが(実際中島に打たせていたら同じ結果だったかわかりませんからね)。投手の立ち上がりというのは相手投手を攻略する際、狙い所の一つ。どんな投手だって立ち上がりは難しい。その立ち上がりで先頭打者が幸先よくヒットでノーアウトランナー1塁という状況で簡単に1アウト与えるのは好ましくないこと。1アウト与えるということは相手投手に「大量失点はもうないな」と落ち着かせてしまうことになる。
 積極的に打ちに行くべき、強硬策に出るべきというのはリスクも有るわけで、大事な初戦の一回表に取るのをためらうのも当然。堅実にバントで繋ごうというのは妥当。しかし、ここでやりたいのは西川の盗塁、及びエンドランなんですね。

■バッテリーの盗塁阻止率が低いのだから積極的に走るべき
 というのは、広島カープというのはキャッチャーに穴がある。これまで交流戦でホークスが与しやすしと楽観できたのは、ほぼ100%に近い確率で盗塁が成功するからです。過去書いたことがあると思いますが、1試合で6盗塁したゲームもあったはずです。キャッチャーの肩が異常に弱い、もしくは投手のセットポジションからのクイックに難があるために余裕で次の塁がもらえる*4
 こういう傾向がある以上、西川サイドの問題・足・腰などに何らかの問題がない限り、積極的に走らせて実際どうなのが試してみたい所。ジョンソンという左腕がセ・リーグで数字を残した優秀な左腕で、682回打者に投げて11本しか本塁打を打たれていない投手(与四球を引いた数字です)。62回打者と対戦しないと本塁打が出ない確率です。無論、調子や相性などが加味されるものでそのまま使えるデータではありませんが、初見・一回目の対戦で簡単にHRが出るとは考えにくい投手であるというのは間違いないわけです。まして左腕に苦手な傾向があるこの年のファイターズならなおさら。
 何故走らなかったと言えば、この年の交流戦で西川は盗塁死しているのですね。そういう背景もあったかも知れません。また左腕だから走りにくいという要素もあったでしょうか*5。この初回でジョンソンは3回牽制を入れた。鈴木尚広いわく、ジョンソンは敢えて最初に牽制で情報を与えることでランナーが走りにくいように誘導したと。そこには色んな駆け引きがあったと考えられますが、いずれにせよ最低でもエンドランを試す、積極的に攻めていくべきなのには違いない。1番バッター、今年は長打を捨てた西川が大事な先頭バッターで塁に出たんですから、そこでチャレンジしないのはありえない。一回のリスクある盗塁・エンドラン失敗でダメになるようなチームではない。そんなチームが日本一になれるわけがない。手堅い策を取れば取るほどベンチは萎縮する・固まるといいますし、そういう役割の一番なんですから思い切って勝負しないのは短期決戦ではありえないと思いましたね。

 初回の西川の当たりはファール性の当たりで無理に取りに行く必要がなかった。それを安部が判断を誤って内野安打にしてしまった。相手がミスした以上、そこにつけ込みたい。仮に走って失敗したとしても、2番の中島が1番の役割をこなせないわけではない。もう一度ゼロからスタートでいい。
 先発大谷が絶対的な存在であるから経験が浅いのにもかかわらず初戦に抜擢したわけですから、思い切って勝負をかけていい。指揮官が余裕・遊びを持つと言ったら変ですが、そういう思い切った策を取る余裕があることを示すべきという点でもやるべきだったと考えます。若い選手が多い以上、硬くなっているのをほぐすために、積極的に攻めてオッケーだぞという意味で、勢い・ムードにのせてしまうという意味でも、思い切ったプレーをさせるべき場面だったのではないでしょうか。

■短期決戦は思い切り・積極性が重要
 無論、ここはあくまで個人的にしてみたい程度の話であり、本論はそこではありません。ファイターズはこのシリーズ通じてすべてにおいて異常に消極的だった。短期決戦は好球必打下剋上のロッテがそれを徹底していて短期決戦になると必ず「失敗なんか気にするな!」と初球からガンガン振り切っていく。打てる球を絞ってそれが来たなら迷わず振り切ることがポイントの一つになる。短期決戦は方針を決めて積極的に行かなければいけないのに、ところどころガチガチで緊張していた。とにかくミスをしないようにという意識が強くて、堅実に・大事にという意識が強くて相手を楽にさせてしまっていた。
 実際にはいろんな条件・事情、判断要素がそこに絡んできますから、それでいろいろ勘案した結果走れなかったということがあるでしょうから、その結果走らなかったという選択でも別にいいのです。問題はそれ以後も「大事な場面で走るなり、バスターなり、ここ一番でこんな策を打ってくるのか!」というリスクある戦術を一つも選択しなかったことですね。まるでそういう手を打たなかった。それでは相手側がこちらの策・作戦に頭を悩ませる必要がない。非常に楽でやりやすいシリーズになってしまう。相手の指揮官が何をするかわからない、常に相手の意図を読んで対策を打たなければならないというのと、何もしてこないのでは戦いやすさがまるで違う。戦いやすいことこの上ない。戦いやすい・難いという点で天と地ほどの違いが生まれてしまう。こういうスタイルを取るからこそファイターズは短期決戦に弱いのだなとつくづく認識したシリーズでした。
 ホークスが盗塁をしなくなって、走られることを警戒しなくてよくなったために、ファイターズバッテリーが攻めやすくなった。打線を料理することに頭を悩ませなくてよくなったのと同じで、ファイターズはこのシリーズで足を封印することで自分達の持ち味を殺してしまったように見えました。
 ファイターズが走ったのは計4回で、大野の重盗警戒での2盗を除けば、3回。西川の1つと岡の2つしかありませんでした。ファイターズの選手の足を考えると非常に消極的だったと言えるでしょう。

■積極的な広島と消極的な日本ハム
 逆にカープはあれだけのピッチャーはそう簡単には撃てないから積極的に足でかき回していこう。アウトになってもしょうがないという割り切り・積極策に打って出た*6。これが功を奏したように見えました。
 リンク先にあるように、Wスチールで勢いに乗った。広島ムードになりましたからね。続く第二試合でも暴走で走るべきではないと思いましたが、それでも積極的な走塁で点を取ることで広島はノッた。イケイケドンドン・ノリノリムードになりましたからね。ハマればデカイは逆も真なりですが、積極的に行った広島と消極性が目立った日ハムは見事に対照的な存在でしたね。

 1回から3回までスコアリングポジションにランナーを置きながら得点ならず。4回の松山・エルドレッドのHRで流れは一気に広島に。7回レアードのHRで1-3。大谷が続いて代打矢野の失敗でチャンスは消え、西川・中島の連打で今村にスイッチ。今村が岡をきっちり打ち取ってファイターズが厳しくなった所。裏、大谷が降板して出てきた石井が打ち込まれ、1-5で勝負が完全に決してしまったという試合でした。
 ここでポイントというか気になったのは、岡の存在。ヒット二本にしっかり選んでつないだこと。矢野のゲッツーのあとに凡退でシリーズ男にはなれませんでしたが、個人的にちょっと面白い存在だなと思いました。そして次にポイントになってくるのですが、HRを打ったレアードにジャクソンがぶつけてしまったこと。これが後に伏線になりますね。また、大谷が投げる方ではダメでもバッティングの方でヒット二本を打ったこと。これで「大谷はやはりすごいんだな…」と広島ベンチは幻惑されてしまったように見えましたね。

■短期決戦はベテラン重視。若手は危険、日本シリーズは「カーブ」が重要
 短期決戦ですから一番いい投手から使っていくというのはわかりますが、本当は経験豊富なベテランを使わなくてはいけない。先発で投げたのは大谷・増井・有原・高梨・加藤そして大谷の故障でまた増井。本来なら経験豊富な増井―といいたい所ですが、増井も本職はリリーフ・セットアッパーで先発経験は殆ど今年のみで信用できるかと言えば未知数。
 今年の交流戦はファイターズホームで広島・マツダスタジアムではやっていない。事前に大谷が不慣れな広島のマウンドで大丈夫か?という思いはありましたが、まさかここまで不安要素が現実化してしまうとは…。雨という不運も加わって大谷はバランスを崩しながら投げて以後投げられなくなるという事態まで引き起こしました。こういう事がありうるから経験豊富なベテラン。色んな引き出しを持っていて、アクシデントに対処しやすいベテランが必要なのですが、そもそも先発ベテラン投手がいないというわけですね。先発経験が結構あるメンドーサなんかいましたけど、今年の出来で大事な初戦に使えるかと言えばまず無理でしょうからね。
 それはおいといても日本シリーズといえば「カーブ」広島カープならぬ広島(での)カーブが勝負を決めることになる。カーブを持っている有原や高梨を先に持ってきたほうがいいのでは?万一負けるにしてもカーブを広島打線に植え付けることが出来るし、慣れ親しんだマウンドで確実に大谷で1勝。というか1-1で札幌に帰ってきてそこで3連勝で決めるというプランのほうがセオリーに沿っているのでは?
 投手の運用においても、おそらくこの二人のカーブが軸になってくる。直近では2013の美馬のような形で、どちらかコンディション・カーブのキレがいいほうを中心に組み立てていく感じになると思っていました。「カーブ」を有効に使うというのが日本シリーズのセオリーであるのに、そのカーブの有効性という認識がない非常に不思議な日本シリーズに見えました(まあ、この投手の運用においてはまたしても吉井コーチの思うがまま・手のひらの上とでも言うような見事な起用法が見られたので、いつもの方針を貫いて十分に勝てるということなのでしょうけどね)。

■日ハムは広島のデータを持っていない・研究していない?
 また、鷹ファンなら知っていると思うのですが、エルドレッドというバッターはインハイに穴がある。達川さんなんかも言っていましたけど、「145km以上のまっすぐならまず打てない。ただし145出ない人はあそこに投げないでください。それ以下の真っ直ぐならインハイでも打ちます」と言っていたように、そこに来ると分かっていても絶対打てないので鶴岡が全部インハイに構えてそこに投げさせるという試合があったくらいです。いくら一発があるとはいえ、エルドレッドに対してはインハイ攻めが基本になるのは間違いない。しかし大野等ファイターズキャッチャー陣にはエルドレッドに対してインハイを主体に攻める姿勢は見られなかった。手が届く・打ちやすい外主体で攻めてしまっていて挙句の果てに好き放題打たれてしまった。広島のデータを持っていないのかな?スコアラーも派遣していないのでは???と非常に不思議に映りましたね。

カープの二連勝の影にシリーズ敗退の兆しあり(引き)
 2戦目も1-5というスコアで広島カープの勝ちでした。2回、小窪のタイムリーで先制。打撃コーチが小窪がいいと推薦があってそれがハマったとのこと。
 デーブの菊池のバスター解説。バスターで狙ってショートには打てない。バスター失敗で野手の真正面に言ってしまえばゲッツーとなり、お前は一体何をやってるんだということになる。確かにバントの場面で来るのは、まっすぐ・スライダーでカーブはないと読みやすかったかもしれないが大したものだと。
 で、丸のバントにより意表を突かれ増井がエラーをしてしまい、ココで勝負が決まった。増井も先発経験が豊富でないから経験不足という点が少し怖い。そして普段投げない球場でのマウンドに大舞台での初先発という不安がハマってしまった。地味に大谷の次というの不利になったんでしょうね。増井も先発で150キロを出せるすごい投手ですが、大谷の速い真っ直ぐの後だとそこまで速く感じない。2013の日本シリーズ楽天が田中ではなく則本を初戦に持ってきたのも、田中を初戦にした後だと則本に対応しやすくなるという要素を考慮した結果なんでしょうね。
 ワンサイドではないにせよ6・7回という段階で広島がゲームを決めてしまった。圧勝・楽勝とは言わないまでもそれに近いゲーム運びに見えました。ホームとは言え簡単にカープが連勝をしたことで、事前にファイターズが勝つという予想を立てていたのですが、拙予想がこれで外れてしまった!と思いました。この連勝でほぼカープの勝ちは決まったようなものでしたからね。

 ところがところがシリーズは思わぬ方向へ進みました。まさかの四連敗で広島カープの逆転負け。何故広島は短期決戦で優位な先手必勝・初戦と二戦を取りながら敗北したのか?それはこの試合での菊池のバスターと丸のバントにありました。このプレーで広島の敗北は既に決まっていたと言っていいでしょうね。それくらいこのプレーは疑問に残るおかしなもの。それについてはまた次回(絶妙な引き)。*7
アイキャッチ用画像

*1:あ、忘れてた。2016セパ親善試合でした。

*2:その間、楽天は一度しか日本シリーズに進出していない&オリックスは一度も日本シリーズに進出していないことには触れてはいけない、いいね?

*3:忘れてました大事な要素としてキャッチャー軽視がありましたね。前々から語っていたのでまあ今更ですが、日本ハムは鶴岡という選手を使っていたことからもわかるように捕手のリードを重視しない。④短期決戦における捕手の重要性の欠如という要素もまた大きいでしょう

*4:気になったので数字を見てきました 石原は阻止率.333で巨人小林についでセ2位で、會澤は.250でした。セ・リーグでは決して悪くないのですね。全然刺せない捕手だと思っていましたが、たしかその時の投手・組んでいた投手はバリントンだと思いますが、彼のクイックに難があったのか?ホークスベンチが昔から癖を見抜いていた・情報収集で知っていたのか。あとは、ホームの札幌ならともかくアウェイのマツダスタジアムでは走りにくいorグラウンドコンディションがよくわからないから、走りやすいかどうかがわからないという要素があったのでしょうか?千葉と宮城以外あまり屋外球場でやりませんからね、パ・リーグは。まあ、それでも最悪第七戦までもつれることを考えても、今実際に盗塁することで走りやすいのか・難いのか、確かめておく・知っておく必要性があるのでやっておくべきだったかと思います。相手にファイターズはガンガン走ってきてプレッシャーを掛けてくるなというイメージを植え付ける意味でも行くべきだったと思いますね。

*5:本当に左投手から“盗む”のは難しいのか | プロ野球 | Baseball Gate こんなサイトの左右投手別盗塁成功率というデータがありました。惜しむらくは12-16でその年毎の数値がわからないことですかね。それでも参考になる数字でしょう。こちらにあるように西川は左右で左のほうが成功率が落ちるとは言え、悪いわけではない。対右腕.862で対左腕が.750。8割以上の成功率が欲しいものとは言え、この成功率でチャレンジしないのは消極的でしょうね。

*6:第1戦 走る勇気 大谷攻略|日本シリーズ2016 - スポーツ:朝日新聞デジタル

*7:また疑惑のプレー、田中広輔がレフト西川の好返球でタッチアウトが覆ってセーフという場面がありました。覆ったものの、ヘルメットに先にミットが触れていたのでは?と話題になったシーンですね。ノムさんもコメントしていましたが、ノーアウトの場面で次は3番丸。無理する場面ではない。3塁コーチャーは罰金。何故無理してランナーを回したのか?これも含めて次回語りたいと思います

【雑誌】 月刊秘伝 2015年3月号

秘伝 2015年 03 月号/BABジャパン


韓氏意拳特集です。
 韓氏意拳は個人的にかなり気になっているのですが、読んでいても多分、さっぱりわからないかと思います。拳理拳論というよりも実践を見ないと、一触を感じないとどうにもならないかと思います。禅の話みたいになんのこっちゃいなになる人がほとんどでしょう。大事なことは語ることが出来ない―の世界ですからね。韓競辰師の動きを実際に見たいですよね、やはり。写真だけですが、やはり野生動物というか、熊みたいなバランスをしていて、ああ凄いなぁと思いましたね。

 光岡英稔師の文が載っています。「上がらない腕」という話なのですけど、そう言えば著作を呼んだときも、そういう話をしていたことを思い出しましたね。普通の人間は生きていく上で何らかの疑問や違和感を抱えながら生きていく。家庭や地域の外部環境だったり、自身の容姿や能力だったり、個人的な興味関心事(勉学、スポーツ、ボードゲーム、蒐集、舞踊、音楽、芸術…)。そんな中で、腕を上げるということに違和感を抱き続ける、光岡英稔という人物のセンスはどうなっているんだと驚嘆せざるを得ないですね。普通の武道家、身体研究に携わる人間ならば、大体立つことに注目するわけですよね。どうやって立つか、どうやったらきちんと立てるかというのがテーマになるわけです。氏を凄いと思うのは、そこから一歩進んで「腕が上がらない」*1というテーマを抱えているわけですよね。肘抜き・肩抜きというような、腕の動きを阻害するという単なる技術論じゃないはずなんですよね。それなら脚がどうとか腰がどうとか全てに拘るはずですから。その一点に集約されるのが底知れぬセンスを感じさせますよね。さっき検索したらPVみたいなのがありましたけど、やはり動きの練度というか滑らかさが凄いですよね。

ゆる体操には"裏"の存在があった!高岡英夫の漢語由流体操「肩肋後回法4」
 後は上から下、前は下から上とつぶやきながら行う。キーワードはもっとゆるめるように、肋骨と肋骨の間が開いていくようにする。肩は自然に回して、肩を手伝うよう回すのがポイント。(―って書いてあるのに、ただ肩を回すことに意識が行っていた。肋骨を動かすのがポイントなのに何やってるんでしょうね)肋骨の上部に息が入るようになると、上丹田が刺激され頭が冴えて落ち着いた状態になる。
 肋骨の上部が回らない限り、ずれ回転運動が成立しない限り、本当に肩はきれいに回ることはない。自由脊椎=腰椎の三番から胸椎の十一番が下部、胸椎の十番から六番が中部、そして残りの胸椎の五番から一番までが上部。下部から少しづつ山の麓から頂上を目指す形でステップアップしていく。
 初心者のうちは「稲穂振り」という現象が起こる。肋骨の上部は疲労が最も激しい部分であり、その拘縮を取ることを目的とするならば正しい全身運動(文中では「するのでなければ」となっていますが、これは多分誤字ですね「であれば」の間違いでしょう。あ、違うか上部は動かない・動かせないから、上部を動かす目的でなければ「稲穂振り」現象は可とするだから「なければ」でいいのか)。習熟していく内に、体の曲線・たわみが直線に近づいていく。起点も高くなっていく。軸をキープしたまま、ずらし回転運動を行うことができるようになる。肋骨の上部が動くということは、その支えとなっている中部・下部を必要なだけ格定されなくてはならない。つまり肋骨を動かすトレーニングでありながらも軸を通す訓練でもあると。回転運動を行う以上、体軸を動かすわけで、垂軸と体軸の分離と一致を行う必要があるので。
 腹式呼吸は肺の下部、胸式呼吸は肺の上部を使えるようにするもの。どちらも重要であるので出来るようにならないといけない。

■甲冑戦の真実 Part1 西洋甲冑戦「STEEL! 」激戦必至! 現代に蘇る"騎士バトル"を観る!&Part2 「大阪の陣」再現! ガチ甲冑合戦レポート"合戦"で検証する、武の実戦性
 甲冑戦の再現という面白い取り組みですね。しかし実戦で再現というのは面白くはあっても、陣形でのそれが伴わないといけませんし、なにより弓矢がないとどうなんでしょう?長槍の用意や騎馬の用意とか、まあそこはひとまず省いてということなんでしょうけどね。個人的にはそれを含めてさらに糧食の準備、兵站とかやってほしいですね~(出来るわけない)。

■短期集中連載 沖縄拳法大平道場 西原治沖縄拳法に伝わる"手"の極意 第三回「"重み""ムチミ"の技法」
 縦回転の動き、パッサイの諸手突きの動きを「波返し」とする。波が返っていくように相手に重みを伝える。個人的に重みを伝える、流し込むというテーマがあって、写真の「波返し」の突き・蹴りが自分の考えていたものと同じで興奮しました。そうか、諸手突きのときの遣い方でつくと下半身の力をうまく伝えられるのか、なるほど。前蹴りも腰の小さな縦回転だけで重みを乗せられると。五十四歩の型にある両手受けに応用すると、相手の蹴りを吹っ飛ばせると。
 接触反応、触っただけで相手を崩していく、皮膚感覚の話なのかな?「ムチミ」という話があります。これはちょっとよく理解できないですね。受けてみないとわからなさそう。一定の圧を与えることで相手が下がれずに崩れ落ちると。ムチミの受けによって相手からは遠く、自分からは近くという間合いのコントロールが出来る。

■平上信行が"現代"日本武道を斬る時代考証の裏表「秘剣の数々からみる超絶的秘傳法世界」
 前半は膨大な流派が存在し、それが失伝・消滅していったという話。後半は前回の続きで、秘剣の話です。剛刀を自由自在に操る「不有劍」、空中殺法「天狗劍」、背後からの的に対する「後眼劍」、多人数に対する「宿露劍」などが紹介されています。神代秘伝剣法「国譲逆鉾劍」とか、道教由来の「三星劍」とか厨二心をくすぐるものが多いですね。
 「魔傳血脈鬼盃劍」(盃は旧字)「晦日新月目光劍」相手の秘傳・極意を奪う魔剣。対鉄砲の秘剣「飛鳥劍」「玉龍劍」。そして居合が生まれると当然それに応じて居合の秘剣が誕生したと。

■大宮司朗霊術講座「心理学的な原理に基づく霊術の技」
 観念運動、心理的効果・思い込みが効果をもたらすという話。自己暗示が自分の力になる方法として、正座凝念法・宇宙大霊同化法・精気吐納法などが紹介されていますね。

■安田洋介太極遊戯「兵器(武器)修練が養う功夫
 強い筋力の重要性、日本の太極拳でその重要性が認識されないのは武器を使ってないからでは?とのこと。普通は800~1000グラム、重いものだと1500グラムにもなる。中国でも演舞用の400~500グラムの軽いものが主流になりつつある。勁を鍛えるのには重い武器を扱うのが良い。昔は30キロ以上ある大刀を使う人もいたと。

*1:だと間違いになるのかな?「上がらない腕」と「腕が上がらない」を使い分けている可能性もありますからね

中畑清は筒香嘉智を育てていない、むしろ干している。育てたのは大村巌コーチ

タイトル通り、中畑清DeNA監督は筒香嘉智を育てていない。育てたのは大村巌コーチ(現ロッテコーチ)という話をしたいと思います。

 この話を絶対にしておかなくてはならないと思うのは、何故か、中畑清が筒香嘉智を育てたという意見を唱える人があまりにも多いからです。また、中畑ファンなのか何なのかよくわかりませんが、あまりにも中畑を称えて、ラミレスを落とすような手合がいて、うんざりしたからです。

 またいつものことなのですが、「中畑の遺産」という地雷ワードを平気で主張していた手合もいました。あまりにバカっぽいので、試しに「どうして中畑が筒香を育てたって言うことになるの?中畑は関係ないでしょ」とツッコミを入れたら、急にキレだして「中畑が育てたぞ、そういう記事もある」とのこと。そして「具体的には、どういう貢献があったの?」と尋ねると、「てめえで調べろ」とのこと。

 まあ、もう相手にするのも馬鹿らしいので放っといたのですが、もしかしたら中畑がなんらかの指導によって、筒香覚醒の一助を担ったのかもしれないと検索をかけてみました。するとこんな記事が出てきました(他には見当たりませんでした)。

■キャンプ追放で選手を育てたという謎論理
 中畑監督 秋季キャンプに筒香連れていかない「荒療治」― スポニチ―もうね…。バカでしょというしかない。これを読んで、中畑が筒香を育てたなんて主張する頭の悪い人間がかくも多いと思うとうんざりします。どうして、キレて選手をキャンプから追放したら、監督がその選手を育てたなんてことになるんでしょうか?そんなのはこの記事を書いている記者の主観に過ぎないではないですか。具体的根拠のかけらもない。そんなことを言うのなら、今年(去年かな?)キャンプで体ができていないという理由で、イーグルスの梨田監督はオコエをキャンプから追放しましたが、オコエが一流プレーヤーになった時、梨田がオコエを育てたという論理が成立してしまうではないですか。

 もう、バカでしょ(二回目)。リテラシーのかけらもないのか。こんなロジックが大手を振ってまかり通る現状を見ると本当にうんざりします。

■筒香嘉智育成に貢献があったのは名伯楽大村巌
 安心と信頼の日本ハムファイターズブランド産の大村巌コーチが筒香の指導を手がけましたが、始まりは2年前。DeNA筒香嘉智はいかにして覚醒したのか?―こちらの記事を読んでも分かる通り、どうみても彼が筒香を指導したからこそ、飛躍を遂げたとするのが自然でしょう。
 要約すると、二年連続でファームでHR王と、下では打っているが一軍では駄目という典型的な若手の伸び悩み枠。そこで大村巌コーチが、筒香本人はどういう打者になりたいか、どういうバッティングをしたいのか整理して、方針を決めてあげた。これまでは他の人のアドバイスを聞いて、色々フォームを変えていた。それが却ってマイナスになったので、何でもかんでも手を出して失敗するより、一つのことを貫く方針に決めた。筒香本人はHRよりも犠牲フライなど、勝利に貢献出来るような確実性・打点を上げること、結果逆方向に打つことを重視していた。確率の低いHRよりも確実性を求める筒香は大村コーチがアドバイスする、確実に打つ技術をみるみる吸収していった。これを読めば大村コーチこそ、筒香嘉智を育てたと言って問題ないでしょう。

 そして大村コーチが主張するように、「私ではなく何より本人の努力が大きかった、筒香嘉智の自助努力が何よりも素晴らしかった」とみなすべきでしょう(ビジョントレーニングなど自分からプレーの質を上げる取り組みをしているようですしね)。*1

■根拠なき中畑の選手育成論は詭弁
 ここで言いたいのは、中畑清の貢献度合いが0だとか、むしろ邪魔してマイナスだった、-100だったとかということではありません。そりゃ、いくつか中畑氏がいい影響を与えたことがあっても不思議ではありませんからね。しかし、彼が育てたと彼の影響力が大きかったといえるほどの材料はない。大村コーチ程の成長に貢献したと言える具体的なものがない。個人的に知る限りでは、筒香が番組の対談で「中畑さんからは素振りの大切さを教わった」と言っているくらいで、中畑の貢献度が大きかったと裏付ける要素はない。日頃から今ある自分は中畑さんの指導のおかげということを言っているわけでもない。そういう根拠のない状態で、中畑が育てたと主張するのは限りなく嘘に近い。そういう言説を認めるべきではない。

■監督の起用が時に育成したと言えることもある。が、中畑前監督は筒香を辛抱強く起用してはいない
 また、打てない時期にも彼を辛抱強く、我慢して使い続けたのは中畑であり、一軍で貴重な実戦経験を与えた起用面での貢献がある。だからこそ中畑が筒香を育てたといえるという論理も成り立つかと思います。*2

 この「中畑監督が辛抱強く筒香を起用した結果」論を見て、確かに筒香を使うことは使ってはいたけども、弱小チームを再建する時、将来の大砲候補を使うのはむしろ当然のことで*3、フロントからある程度選手起用の方針は示されている以上、中畑の手柄といえることだろうか?と疑問に思っていました。

 そこで実際にどれくらい起用していたかチェックしてみると、むしろ全然起用していないというデータが出てきました。

筒香嘉智 打撃成績
 2012 108試合 446打席 386打数 84安打 10本塁打 51四球 打率.218 長打率.352 出塁率.309
 2013 23試合 56打席 51打数 11安打 1本塁打 3四球 打率.216 長打率.294 出塁率.286
 2014 114試合 461打席 410打数 123安打 22本塁打 47四球 打率.300 長打率.529 出塁率.373


―この数字を見た時に、監督一年目は筒香を辛抱強く使い続けたと言っていいかと思います。しかし二年目は全く使っていない。むしろ筒香を早めに見切って干していると言えるでしょう。

 筒香嘉智が飛躍した2014年のシーズンというのは、前述通り秋季キャンプから追放され、大村コーチと二人三脚でイチからフォームを作り始めてからの話です。そこから手応えを掴んで成長路線に乗った筒香の状況を考えると、12年に辛抱強く起用し続けたから筒香が成長したという説はあまり関係ないということが出来るでしょう(無論、試合に出続けたからこそ、相手に研究・対策されて壁にあたり試行錯誤するきっかけになったと言えるのでしょうが)。

 むしろ、12年・13年と起用に問題がある。将来性のある大砲とは言え、使い続ければいいというものではない。インコースの速い球が打てないとか、課題をハッキリさせたら、一度下に落としてその課題を克服する練習をさせて、課題をある程度克服して対応できるようになったり、状態が上がったりしてから上でもう一度使うなど、チームとしての取り組みを行わなくてはならない。選手を育てるなら一軍起用→課題発見→二軍で練習&克服→また一軍へ…―と言ったプロセスを踏まなくてはならない。

 数字が出ていない・結果が伴っていないのにもかかわらず、この2012年は明らかに筒香を起用しすぎです。結果が伴っていればともかく、結果の伴っていない高卒3年目・4年目の選手を適切なラインを超えて、起用し続ける意味がわかりません。むしろ、まだまだ体ができていない段階なのだから、怪我予防の観点から言っても、下に落としてトレーニングに当てるべきでしょう。また他にめぼしい選手がいないにせよ、他にも若手を起用しなければ、チームに実力競争原理が上手く働かない。 
 (これは中畑監督の起用の問題というより、適切な出場試合数・打席数を設定して、適切な指示を監督に与えなかったフロントのミスと言えるでしょう。もちろん新規参入したばかりで、自分たちで明確なビジョンの下、この選手を何年かけて使う。5年かけてこちらが見越した成長を遂げなかったら見切る―などといった戦略のもと採った選手がいなかったという状況なので、その点も考慮する必要があると思いますので、これを以ってフロントを叩くことはしたくないのですが。)

 そして2013年は逆に使わなさすぎです。怪我をした、不振だということがあっても、この出場数の少なさは異常です。わずか23試合で60打席にも到達していないというのは、将来の大砲候補として路線から外したと言われても仕方がない数字。他に大物スター候補が何人か入ってきたから、育成の優先順位が落ちたとしか思えない数字です。

 しかし、実際はトニ・ブランコ中村紀洋といった実績ある選手が結果を出していたから彼らを優先したという有様。これは目先の勝利を選んだ采配であり、どう見ても育成を行っていたとはいえない数字でしょう。この点を考えても筒香に目をかけ続けて辛抱強く起用していたとするのは無理があります(前述通り、2012年は自分たちが採った選手がいなかったという状況でしたが、僅か1年とはいえ、自分たち自身でドラフトで選手を採り、ファームにいる若手の状況も把握できた。それで、期待大砲候補の筒香にチャンスをここまで与えなかったのは、フロント・監督の手腕を疑われる起用方針でしょう)。

 ―このように選手起用の面から、「使い続けて」筒香嘉智を育てたとするのもまた無理があるといえます。

■監督の仕事は育成ではない、采配によって試合で勝利に導くこと&ペナントレースを制すること
 そしてそもそもなのですが、選手を育てるのは監督の仕事ではない。監督の仕事は起用や采配でチームを勝たせることであり、選手を育てることではありません。育てるのはコーチやトレーナーと言った役割の人・スタッフであって、監督に育成手腕を期待するなど木に縁りて魚を求むようなものです。

 選手育成には、優秀なコーチが必要不可欠ですが、優秀なコーチがいれば選手が育つというものでもありません。相性の問題、指導法がハマるかどうかという問題もありますし、何より本人の理解度・練習態度・才能・運と言った要素に左右されるものです。ですからこそ、優秀で実績あるコーチほど、私が育てたのではなく、本人の努力・取り組み方が素晴らしかったというようなことを言うのです。そして私は彼が成長をする手助け、サポートをしたのだよと手柄を誇ったりしないものなのです。

 大村巌コーチがリンクの記事で語っていた内容・態度がまさにそれであり、名伯楽と言うにふさわしい態度・姿勢だと思います。聞くところによるとファイターズ時代糸井の指導も手がけて、彼も大村巌コーチの手腕を称えていたといいます。記事を読んでもわかるように、大村巌コーチとの出会いが最大の転機となったのは言うまでもないでしょう。

 以前から、監督が選手を育てるというような謎論理を目にして不思議に思っていたのですが、どうも昔のタイプの全権監督の延長からくる発想のようです。監督が全権を握っているからこそ、指導も監督に一任され、選手育成まで監督の手柄になるという発想をする人がいるようです。もしくは高校野球などアマチュア野球の発想の延長で監督が選手を育てるものだと思いこんでいるかもしれません。

 いずれにせよ、現代的な野球では、現代的な組織では明確に機能で役割分担がなされます選手を育てるのはコーチであって、それをやろうとする監督というのは間違いなく失敗すると考えていいでしょう。工藤公康監督などは、投手育成手腕に自信があって自分で投手育成をやろうとしていますが、一定の結果を出してはいるものの、間違いなく古いタイプの監督であり、組織の役割というものを理解していないということが言えます(拙ブログでその問題をこれまでさんざん指摘してきました)。ですからこそ、現在のように自分の腹心・イエスマンで組閣を固めるという自体になっているわけですね。組織として問題があることは言うまでもありません。

■中畑監督は報道・メディア対策に優れた監督だった
 中畑清監督は、山崎康晃のストッパー抜擢だったり、梶谷隆幸の外野コンバートだったり、ちゃんと他にチームに貢献した内容が一応ある監督です。評価するならばそちらで評価をすればいいのに、なぜ明らかな偽りを提示して中畑監督の功績のようにするのか理解できません。*4

 以前指摘したように、野球界というのは記者・報道界が腐っている*5。故に、巨人時代・現役時代からスター選手だった中畑氏は記者たちとコネがある。そのコネを最大限利用して、中畑氏は良い記事を書いてもらっている。そういうことなのでしょう。野球報道界の腐敗はおいといて、監督というのはこのように、記者と良い関係を築いて良い記事を書いてもらうというのも手腕の一つ。時にマスコミ対策というものが出来るか出来ないかで組織が崩壊してしまうこともあるというのは以前指摘したとおりです*6

 そういう意味で、中畑氏は優秀な監督だったといえるでしょう。新規参入球団DeNAにとって観客動員を上げるのは至上命題でしたから、強い発信力を持っていた中畑監督というのはベストかどうかはさておいて、好ましい人選であったということが出来るでしょうからね。

■思うどおりに進まないと中心選手と衝突する。選手の状態に合わせたコミュニケーションではなく、自分本位のコミュニケーション
 ただ、強いチーム・勝てるチームを作るという点で好ましい選択であったかは疑問があります。彼は古くは巨人時代に、主力打者と衝突する我の強いタイプのコーチでした。巨人時代は駒田、そしてDeNAになって中村・多村とやはり主力選手というか実績のある打者と衝突する傾向があるタイプです。そして筒香のキャンプ追放もこの延長であると考えるのが自然でしょう。

 打っているときはともかく、打てないとなると非常に強くダメ出しをする。負けが込んでいたり、チームが上手く回ってない時に八つ当たりに近い形で選手に当たる。そういう傾向があるように思えます。「筒香は、今年一本しかHRを打っていないのに、満足している。だから怒鳴りつけた」などと語っていましたが、このような方針はかなり疑問です。中畑監督一年目で出場機会を与えられながら、二年目は殆ど与えられなかった高卒4年目の選手がどういう心境にあるか?一年目でそこそこいい打率・出塁率をマークして、HR20本くらい打ったとかならともかく、結果を残せていない。そんな選手が満足していることなどあり得るでしょうか?

 筒香の心情を察すれば、一年目と違いまるで出場機会が与えられず、しかも一軍の球をろくに打てない=課題が克服できていない状況。悩んでも悩んでも答えが見つからずどうしていいかわからないという段階。それを整理して、やるべきことを絞ってあげたのが大村コーチなわけで、それで結果を残したわけですが、中畑氏の言うように「自覚が足りない」という要素は見られませんし、特にその自覚云々は彼の成長には関係がないことでしょう。大村コーチが悩んで、その潜在能力の高さにもかかわらず、才能に蓋をしてしまっている状態と分析したくらいですし。

 もし中畑氏が「何をどうしたら良いのかわからない」筒香に、外部の雑音を遮断してやるために&名伯楽大村の手腕を高く評価して、二人で一からやり直すようにと大村コーチに全権委任した、失敗した場合はすべて渡しが責任を取るという態度だったのならば、中畑氏の功績と言って良いでしょう。しかし彼は打てない事実とナメた態度(を取っているとあくまで中畑氏の分析で)に怒って、キャンプから追放したのですから、全く関係ありませんね。

 そして、キャンプ地ではなく、二人で一からフォームを作り直して、光明が見えてオープン戦で結果が出ると見るや、「筒香と心中する発言」。こういう過程を見ると駄目なら見放して、結果が出た途端調子良く持ち上げるというタイプということが出来ると思います。野村流に言うと、一流は叱る・二流は褒める・三流は無視する―の逆で、一流は褒める・三流は叱るという感じでしょうか。こういう手のひらを返して急に態度を変える、両極端な態度をとるタイプを筒香がどう思うか?心情察するに余りあると思います。

 そしてラミレス監督は意味のない練習はやらない。自分たちとよくコミュニケーションを取ってくれる―という筒香の発言を聞いて分かる通り、あまりうまくコミュニケーションが取れていなかったと思えます。あの世代というのは上下関係が厳しく。上意下達のやり取りが当たり前ですから、選手とコミュニケーションで衝突しやすいのでしょうね。    というか、野村監督がメディアを通じて、選手にダメ出しをして発奮を促すというスタイルを好んでいましたが、開きはありますが中畑前監督も人を褒めるということが出来ない世代なんでしょう。ですから、怒って発奮を促すというやり方しか知らないと思えます。それがうまくいくかどうか…。特に現代ではかなり厳しい選手操縦法だと個人的に思います。

 以上、中畑前監督は筒香嘉智を育てていない。育てたのは大村コーチ―でした。正確な事実認識が広まることを願って今回は終わります。<2017/12 了>

アイキャッチ用画像

*1:大村巌コーチ自身がどこかで、中田や糸井、そして筒香を育てたことについて尋ねられて、それを否定して彼らの才能・努力が素晴らしかったんですよと言ったことをコメントしていたと記憶しているのですが、ちょっと検索かけても見つかりませんでした。ソース無しで書くのは気がひけるのですが、一度書いてしまったので、そのままにします。週刊ベースボールか、Numberとかで呼んだのかもしれません。ご存じの方いたら教えてください

*2:なぜか、清宮関係の記事で、清宮が筒香選手がどうやって育ったかということを熱心に球団に尋ねて、中畑監督が辛抱強く使い続けた実績が光るみたいなことを書いていた記事が目につきました。一社とかならまだしもいろんな媒体で見かけたのでかなり???になりました。後述するように中畑の発信能力の強さ故のそういう記者評なのですが…

*3:身売り直前の2011年に、後半昇格してHR8本打ちました。これはすごい良い大砲候補がいるなぁと当時思いました

*4:また松井秀喜を筒香に引き合わせたなど中畑氏の功績とすることも可能でしょう「3割40本100打点」も現実味 筒香覚醒の裏にあった松井秀喜の言葉 Full-count|

*5:野球界以外全てそうだと言われればそうなのでしょうけど。どこかの業界で一つくらい健全な報道空間が存在していることを期待してこう書いておきましょう

*6:【2016「工藤批判」批判】 王会長・工藤監督は秋山時代の「森脇追放」のように、反工藤派(藤井・大道・鳥越?)を粛清すべし の「工藤監督はメディア対策というものを一から考えよ」というところに昔書きました

【雑誌】 月刊秘伝 2015年2月号


月刊 秘伝 2015年 02月号 [雑誌]/BABジャパン


 塩田剛三特集ですね。大東流の堀川幸道が養神館に訪れたことがあったんですね。へぇ、知りませんでした。スパッと切れる塩田氏の技が後年力を抜いたものになったのは、堀川氏の影響では?なんて話もあるんですか、へぇ(霊術の解説をしている大宮さんはそれを否定していますが)。晩年は悟りの境地、呼吸力を出すと喜びを覚え、無我となり自他一体となって自分が動くように相手を動かせるようになったとか。
 技をかけている塩田氏の写真を見るとつま先立ちになっているのが多いとか。合気がかかるとつま先立ちになるという話は聞きますがかけるほうがつま先立ちになるというのは余り聞かないですよね。自重を伝える、あるいは重心移動の関係なのかな?
 相手の突き、腕が伸び切った一瞬に合わせると吹っ飛ぶという技を多用したと。この技見たことあったかな?ちょっと記憶に無いな。

■江東友の会、斎藤豊氏の話
 親和体道の鍛錬法、お辞儀をした状態から伸びをする、踵から腰・背筋を伸ばすというものがある。氏曰く、養神館の構えはこれに一歩踏み出したものだと。
 二ヶ条をかけるのに前膝を開くのがポイント。つま先が外を向いているソの字立ちで、自然と膝が開く真正面に向けると膝に力が入って効かなくなる。背筋を伸ばすだけで相手によく掛かる。手首を取られて上げる臂力の養成法。後ろ足の膝を伸ばし踵を強く踏むことで受けを崩す。
 上腕骨頭と肩甲骨棘が一直線に揃った時肩がゼロポジションとなる。ゼロポジションになると体幹部の力をダイレクトに伝えられると。
 ハの字立ちについても書いてあって、ギリギリのバランスで立つことを求めているのでは?とのこと。ソの字立ちなんかは普通の軸を立てるオーソドックスの立ち方と違い、体傾斜度がある異質な構えですよね。こうすることで前につんのめる=重心移動しやすい、そういう技をかけるための構えということなのでは?と個人的に思いましたが、どうなのでしょうか。
 足指の操作の話も面白いですね。床を空振りするように親指を握り込むことで、拇指球に重心がありながらも踵から足の外側に力が入る。こうすると相手に多少送れて反応しても後から軽く触れても崩せると。

■システマ創始者ミカエル・リャブコ来日セミナーレポート「シャシュカの用法」
 シャシュカ・ロシア剣の用法、剣を持っていると自然とその重みが消える所がある。そこを探していくワーク。見つかったら左右20分づつ持ち続ける。そうすると体の歪みが矯正されるという。甲野善紀氏も飛び入り参加で日本刀との攻防もあったとか。
 引いて斬るものだから、当然相手に引くことをさせない技術がある。刃に当てられた瞬間抜くことで角度をなくして切れないようにする。剣を武器でなく防御するものと考える。相手の剣を撃ち落として跳ねて思わぬことを招かないように(自分に向かってきたり、第三者に飛んでいかないように)、相手の身体に剣撃が伝わるようにする。首・胸・腰など狙った箇所に威力が向かうように撃つと。不用意に相手の剣を叩き落とすとつながりが切れて、その隙を突かれかねない。持っている武器を敢えて捨てる、武器に意識を持っていかせてその隙に打突という展開も想定済みなんですね。


■日野晃師範が解く達人技の秘密!求道者・成田新十郎“意識の領域"
 どういうことをおっしゃっているかよくわかりませんが、受けをとった日野さんが手首を握ってバランスを仕掛けようとした瞬間手が消えたと書いていますね。気がついたらその場に落ちていた意識・気配が消えてなくなったとのこと。どんな動きをする方なのか一度見てみたいですね。

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“円”の合気 修得のキーワード! 稽古日誌に記された短く深いことば


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■心水会・中野由哲師範剣術~空手~中国武術を貫く共通根理
 心形刀流の永野順一氏に教わったことを3つのポイントにしている。①胸をゆるめる②股関節に体重を乗せる③肘を抜く。胸をゆるめるという意識を持つと自然と含胸抜背の姿勢になる。正座をして立ち上がろうとする時、自然と前傾して立ち上がろうとする、その時体重が股関節に乗る。きちんと出来ると全身が統一されて有効な技となる。
 肘を下に向ける意識を持つと、「脇を締める」ということができるようになる。肘を下に向けることで腕の螺旋が生まれ、その解放が威力を作る。肘を抜くのには、肘の力感を溶かす。そもそも人は肘に力を入れないから、意識を溶かしてやればいいと。そういえば甲野先生も昔肩の溶かし込みとか言ってた気がします。永野氏が共同研究者ですし、その延長の発想でしょうかね。
 肘の抜きが出来ているかのチェックで肘を下ろすことで受けを崩すというのがありますが、この動きを一人でトレースしていて、肋骨を動かすのに肘からおろしていくというのも有効なのかなとふと思いました。

ゆる体操には“裏"の存在があった!高岡英夫の漢語由流体操「肩肋後回法3」
 岩合光昭氏が引退作品で述べた言葉、野生動物はなんて柔らかいんだろう。写っていた白くまの肋骨がぐにゃぐにゃであっただけでなく、野生動物は皆柔らかい。そして人間の肋骨もそこまで到達することが可能である。
 やり方は、胸の下部・中部・上部と順番に盛り上がらせていく。行ききったら、次は背中の上部・中部・下部と移動する。肩と肋骨の関係は180度反対の位置に来るようにする。(文字で説明しても伝わらないと思うのでモデルなどの図を直に見ることをおすすめします)。実際には一本一本ではなく数本まとめて動いていく。ちょうどスタジアムの観客のウェーブのような感じ。または窓にあるブラインドを指で弾いていく時、数枚まとまって弾き続けている時、最初の方がもとに戻っていくような感じ。
 前回、球としてモデル化して説明したわけだが、実はこれは不完全なモデル。というのも肋骨は球状ではないし、そういう動きをするわけでもないから。実際の肋骨は1~12番、12枚のプレートで成り立っていても、上・中・下で構造が大きく異る。上部は水平でも、中・下部は背中から脇に向かって下がり気味になって、軟骨は胸骨に向かって上がっていく。下部になればなるほど軟骨が大きくなり、胸骨に向かって上がっていく角度も大きくなる。最下部の11・12番は胸骨にくっついてすらなく浮いている状態。これを「自由肋骨」とする。フロートしているこの二本は可動性が高い。肩との相対運動しやすい。が、胸の下部・腹の全面には肋骨が殆ど無い、自由肋骨も中部・上部に比べて小さいもので、動きはするものの回転運動にならない。下部が動いても効果が小さい。ブラインドで言うと歯抜けになっていて弾けない状態。下部は回転ではなく開放する動きになって、開閉運動になってしまう。
 実際に効果があるのは1~6番まで。ここの部位が動くと肋骨の回転運動になる。昔の指導では、下部を動かすな&上部を動かせ!と硬直的な指導をしていたが、いきなり上部を動かすのは難しく、余りリターンがない指導法だと気がついた。あくまで開閉運動と理解しながらも、疑似回転運動として、下部から動かして少しづつ動かせる範囲を丈夫にスライドしていくほうが効果がある。
 
■忍術・武術・修験道・俳句──青い目の忍者「月影」の世界ハロルド・スチュワート「妙風庵の忍武術」
 武神館の流れをくむ忍者・忍術ですね。アメリカからやってきた方の話です。キレを出す技は危険。強さを隠さなければいけない。キレにこだわるな、キレが出ない強さの見えない技を磨けと。他の武道の高段者で時に上達してもイライラしている人を見ることがある。それは日常に使える技ではないから、日常と直結されていない強さだから。なるほど。小指薬指を使うと、手首が固まらずに自由になるから普段から底を使って荷物を持ちなさいとのこと。そうすることで日常から整えられていく。「堀炬燵 母立つたびに 炭香る」とか俳句良いですね、感性が磨かれているのがよくわかりますね。

■大宮司朗霊術講座「梃子の原理を用いた技」
 昔流行ったスプーン曲げにはトリックがあったという話。霊術でもテコの原理を用いたトリックがある。テコの原理の話。

■元・極真空手チャンピオンが辿り着いた“武の理"志田清之師範「衰えない“武の力"とは! ?」
 体重を威力へと転換するためにはどうしたら良いか?骨盤の垂直落下によって生まれる力を歩みで前方の力に変える。つま先・膝がブレーキとなって力が伝わらない、そこを柔らかく使うこと。関節を順番に使うドミノ倒し、各骨の力の線を養成する。


■藤本靖―意識のホームポジション「知覚の反転」
 直接視と間接視、ものを見る時に直接焦点をあわせるのを直接視。焦点を手前や奥に置くことで間接視になる。間接視だと見る人に圧迫感を与えない。(視線が痛いという言葉がありますが、見られる事自体が圧力になるということですね。ですから焦点をずらしてみることでそれが外せると)。
 間接視にすると、直接視の一部にスポットを当てる・注目する感じではなく、全体の輪郭・対象が浮かび上がって見える(これも言葉ではわかりにくいと思うので実際に載っている図をみたほうがいいでしょう)。これを「知覚の反転」という。遠位点だと身体の外側に、近位点だと身体の内側に意識を当てやすくなる。目が見やすいものを見るの延長で、水平に目を動かして呼吸、筋肉の緊張が一番リラックスできる所を探すのが良い。
 内田樹氏が14/01月号で言っていたように、肉体という物体に触っているのではなく、存在そのものに触るようにする。肉体に触るという感じだとどうしても部分的になるので、存在=スペース全体に触るようにする。そのイメージが難しいのなら相手の奥にスペースが有ると思ってやると良い。
 瞑想で肉体・身体の感覚を掘り下げるアプローチ以外に、あえて自分の肉体にアプローチせずに掘り下げる方法がある。全体にアプローチしやすくなるかわりに自分の存在と乖離しやすくなるデメリットが有る。
 耳だと、人の話が頭に入りづらい場合、雑音・空調などに耳を傾けて、間接的に入ってくるようにする。集中して聞こうとすると緊張して却って話が入ってこない場合はこうすると良い。
 楽に相手を見る、緊張しないように向かい合うために、視線を合わせながら間接視が出来るようにする。遠位点なら緊張しないとはいえ、ずっと壁を見て話されたら相手は嫌だからそうするわけにもいかない。目を合わせながらも呼吸・緊張を観察し続ける。全体と対象どちらにも焦点があっている感じになる。対人恐怖症だったり、あがり症だったり、そういうものを克服するトレーニングにいいのではないでしょうか?

中島章夫「技アリの動作術」
 趾尖球(指と裏の付け根のところですね)に体重を乗せる訓練、足裏全体で立つために「どこでもない処で立つ」ために趾尖球の感覚を鍛える。趾尖球フラット接地と3Kルートのテストの話。

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高橋監督に采配を求める記事への違和感 問題は監督ではなくフロントにあり


高橋由伸監督の話をしたいと思います。これを書こうと思ったのは2016年で、その翌年球団史上初13連敗という出来事があったので今更ながらそれについてもまとめて記しておきたいと思います。

 高橋監督について書こうと思ったのは、スポナビブログを始めた時、交流戦セ・リーグ各球団ウォッチャーがどのような危機意識を持っているのか気になって、いろいろな意見をチェックしていた時、ジャイアンツのカテゴリで書かれていた記事がひっかかったからです。

 やれ、~番に誰を入れろだ、~より~を起用しろだ。監督がもっと積極的に動いて采配を揮って欲しいという・監督の采配を批判する意見が結構ありました。それについて非常に強い違和感を覚えましたので、それについて話をしてみたいと思います。

■巨人球団史上初13連敗の本質は腐朽組織 
 巨人が13連敗した事自体についてはいろんな方がいろんなことを指摘しています。貧打、投壊の要因は黄金期の反動。FA選手補強頼りで育成の放棄。長期ビジョンの欠如で原時代のツケが露呈した。人気にあぐらをかいて巨人へ来たいという一流選手がメジャーを目指すようになったなど、時代の変化についていけなかった。逆指名制度の廃止で、ドラフト一位で有望な即戦力選手を確実に取れなくなった、etc…。

 概ねそれで間違いないでしょう。しかしそんなことは所詮枝葉末節の問題。本質は別にあります。本質は巨人という球団の組織そのものが腐って機能不全に陥ったこと。腐朽組織化です。まともな論理で組織運営が行われていないから、問題が表面化したに過ぎません。

 今に始まったことではなく、元々巨人という球団は組織が腐っていたのですが、それを糊塗するだけの人気と人材とお金があったために、その問題の本質が露呈することがなかったんですね。巨人という組織には問題がある、恥部がある。こんなこといちいち今更指摘するまでもなくNPBに興味がある人であれば誰でも知っていると思いますが、一応改めて指摘しておきます。

■監督は生え抜きでなければならない純粋生え抜き主義
 巨人という組織は監督人事に純粋生え抜き主義を採用してきました。星野・落合といったトップクラスの監督を外部招聘する動きもあったので、また最近ではイチロー監督という声もあるくらいで、その純粋生え抜き主義も変化しつつあるのは確かです。

 その代償というのも変ですが、コーチ人事については他球団の硬直化した人事に比べて柔軟で外様リクルート主義とでもいうべき人事方針を採用している柔軟さもあります。常に他球団出身者をコーチとして招聘し、新しい風・思想を導入しようという優れた点がある所を触れておかないと片手落ちになるので、これについても触れておきます。

 多くの球団がコーチを元選手・在籍経歴のある選手で固めるのに対して、実力重視のシステムを採用しているので優れた方針というべきでしょう。が、しかしそれも監督=チームの顔を過去の名選手で何が何でも固めたいからという歪な思想の裏返しと考えるべきでしょう。生涯一巨人選手のキャリアで、一流の数字を残した選手となると、監督候補者は自ずと制限されてしまう。その監督候補が優秀な監督になる確率はどれくらいか?限りなく低いのは言うまでもないでしょう。原監督のような優秀とされる監督が輩出されることは滅多になく、可能性が大きいとは考えにくいわけですから。

 今回の高橋監督、また過去の長嶋監督などを見ると、この純粋生え抜き人事がいかにまずいか言うまでもないでしょう。その無能(あるいは監督としての素養がない)監督を少しでもサポートしたいという裏返しがこの巨人のコーチ人事の実力主義*1ということなのでしょう。

■高橋監督就任は歪んだ人事制度によるもの
 当たり前のことですが、歪んだ人事制度からは歪んだ人事が生まれます。原監督から高橋監督となったのも、この腐朽制度から生まれたものでした。高橋由伸は選手兼任コーチとして将来の監督候補のルートに入ったものの、まだ現役を続行するものと見られていました。それがいきなりの現役引退と監督就任。当時、高橋は左の代打として立派に機能していたにもかかわらず、それを組織の都合によって引退させるなどファンであればまず納得できない異常な処置でしょう。単なる一選手ではなく、チームの功労者・スター選手を本人が望むように全うさせてやれない組織など一体誰が支持するのでしょうか?

 これについては、「引退は残念だけれども、本人が選手よりも監督の座を望んだ。残り短い選手としての地位に未練はなく、指導者・首脳陣としての監督ポストに魅力を感じた。監督>選手という考えを持つ人は珍しくない。本人がそちらの選択に、代償があっても魅力を感じて決めたことなのだから、本人の意志を無視したわけではない。特にかまわないのでは?」という意見を持つ人もいるでしょう。

 この意見が間違っているとは思いませんが、巨人という球団は選手という地位、意見を無視する傾向が非常に強い球団。選手を使い捨てとする感覚を持っている球団です。外様の前田が大量点差がついて自分が投げる必要のない場面でも投げさせられた、野口が手術をして再起をかけたいという声を無視して手術を許さなかったーという事例を見るまでもなく、球団の意向が絶対であり、選手の立場や状況に配慮することが少ない球団です*2。生え抜き第一、外人・外様第二など色んな序列があるのでしょうけど、選手に配慮する度合いは他球団と比べて著しく小さいといえます。

 高橋由伸を監督にしたいのならば、もう一年コーチ経験を積ませつつ、選手として花道・有終の美を飾る。来年もいい数字を残したらもう一年延長して、そしてつなぎの監督からバトンタッチというのが普通のルートでしょう。ところが、野球賭博事件などもあって、負のイメージを払拭するために新しいスター監督に看板をすげ替える必要があった。そのために否が応でも高橋に監督をやってもらわなくてはならなくなった。

 何の準備もないまま監督になった高橋が、というかそもそも原監督のように、確固たる戦術・戦略プランを持っていないタイプの彼を、球団の不祥事払拭のためという理由で監督の地位につけたらどうなるか?言うまでもないでしょう。

 今のNPBを見渡して、この選手は監督向きだ。監督になったら面白そうだというタイプの選手・OBは滅多にいない。個人的にこの人の監督やるところが見てみたいと思っていた小宮山氏でさえ、ホークスのV逸はファイターズがすごすぎただけという珍な意見を述べていて不安になっているところです。監督になりたい!そのために采配とは何か?ペナントレースとは何か?短期決戦とはどう戦うべきか?などと現役時代から頭を使ったプレー、考え方、勉強をしている選手は殆どいない。そういう環境で名選手を準備不足のまま監督にしてしまったらどうなるか?言うまでもありませんよね?

高橋由伸は官僚的なタイプ、定例昇進人事で監督就任
 最大のポイントなのですが、そもそも高橋由伸という人は巨人入りを望んではいなかったということ。もともとヤクルトに入りたかったが家の事情で巨人に入らざるを得なくなったという選手でした。先に入団して活躍していた松井秀喜と同じ位の活躍をして、もしかして高橋もメジャーへ行くのでは?と言われていたこともありました。当時は一流選手であればメジャーへ行くのが一つの自然な流れ。しかしそのメジャー行きも早々に封印しました(実際にメジャーで活躍できたかは別の問題で、そもそも高橋のコンディションの問題、怪我の多さを考えるとまず難しかっただろうと思われます。なので本人としては初めから考慮の外にあったかもしれませんが、何人か無思慮で何の準備もないまま渡米する例もありましたからね。夢を選んで!難しいとわかっていても行きます!という選択もあり得たという意味で)。

 こういう経歴を見て高橋由伸という人物像を見るに、自分の意志でこれだ!という決断・選択をしないタイプだということだと思います。
監督になりたい!巨人というチームの監督をやりたい!というよりも、定例昇進人事に乗っかって自分のキャリアを一歩進めたということなのでしょう。順調なキャリアアップを望むのは人として至極当然のこと。彼としては当たり前の道、当たり前のルートを選んだということでしょうね。

 六大学のスター→巨人入り→巨人のスター→監督→(フロント入り?)…。困難で茨の道に進んで自分の追い求めたいものを追求するよりも、こういうわかりやすい華やかなキャリアを選択するタイプ。同じスター選手でも巨人の監督を務めた人かそうでないかでは雲泥の差。将来の仕事・収入に大きく関わってくる。もし今監督要請を断ったら次はないかもしれない…。そのリスクを彼は取れなかった。そして選手としての花道よりも、自身のキャリアを選択した。こういう選択肢を選んだことをみてわかるように、非常に官僚的なタイプ。模範優等生タイプだということがわかると思います(勘違いする人がいるかもしれないので、こういう高橋監督の選択を否定しているわけではありません。むしろ普通の人の普通の考え、当たり前の選択でしょう)。

■高橋監督に監督としての手腕を望むこと自体がナンセンス
 危機においては人事は抜擢をしないといけない。これが組織において一つの絶対的なセオリー。本来、若い優秀な人物・傑物を定例昇進のルートからハズして、いきなりトップに持ってくるということをするものなのですが、これをしていない。これをみるだけで巨人というチームに改革の意識がゼロ、かけらもないことがわかります

 さらに高橋由伸という官僚的な考え≒決断をするタイプの監督を選ぶということは、もう監督独自の采配を揮う、戦術をとるということを初めから期待していないということになります。監督の手腕・采配を問わないそういう選択・人事をしたのは球団首脳陣・フロントです。問題の所在はフロントにあって、高橋本人にはない。高橋監督に采配を望むこと、柔軟or奇抜な選手起用・戦術を望むことは木に縁りて魚を求むようなもの。筋違いも甚だしいと言えるでしょう。

 2011の後半、マネーボールの発想・考え方を知って、「なるほど野球・ペナントレースとはそうやって見るもの、考えるものなのか」と感心して野球を久しぶりに見始めました。過去に応援していたジャイアンツくらいしか知らなかったので、そのままジャイアンツ戦を注目して観ていたのですが、まるで理にかなわないことをやっている。こりゃダメだと呆れて、翌年からスパッとパ・リーグに切り替えた経緯がありました。そもそも巨人という組織を考えれば、理想的な野球・戦い方を求めても無駄なわけです。

 高橋監督を選んだこと一つとっても、勝つ意識・チームを強くする意識、組織改革・改善をする意識がないことがわかります。そんなチームに自分が望む理想的な采配・戦術を求めること自体がナンセンス。サッカー選手に上手い野球をやれ!と言っているようなものであり、八百屋に行って魚を買いに行くようなものだと思われます。ファンやウォッチャーであるならば、高橋監督云々よりも球団の人事制度・フロント改革を強く要求してしかるべきところでしょう。

 ファン・ウォッチャーの意識改革がなされない限り、球団も目覚めることはないのではないか。そんなことを思いましたので時期を逸しながら、強く疑問に思ったことを今更ながら書いておきました*3
<2017/11 了>

アイキャッチ用画像

*1:≒正確にはOBで固めないということで、必ずしも実力主義人事と言えないのですけどね。人事方針として広く門戸を開いているということであえて、わかりやすさを重視して「実力主義」としました

*2:※参照ープロ野球特別読み物 小笠原道大よ、谷佳知よ、最初から分かっていたはず

*3:※おまけとして、13連敗してヘッドコーチは据え置き、人事の目玉として吉村コーチの復帰というものがありました。これが何を意味するか?言うまでもありませんね。信賞必罰は組織の基本。失敗の責任を誰も取らないで既存の野球をやろうというのですから何をか言わんや。フロントは鹿取新GMにスイッチしましたが、そもそもGMと高橋監督は同じ慶応閥。その後ろ盾を解任して人事を下手に弄らなかったということは、来年結果を出せなければGMが監督を斬るという意思表示でしょうね