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【2016/12 内山VSコラレス】 内山高志は何故敗れたのか


 さて、サボってたブログを再開しますか。あーこれ書くのに3日もかかってしまった。長い長い。毎週日曜更新予定が元日に書いてないから、あとでもう一本書いて日時ずらして埋めましょうか。スポーツ関係ではやはり、内山高志の大晦日の試合について触れない訳にはいかないでしょう。ボクシング関係を熱心に見ていたときには、彼を中心にボクシングを観ていた時期がありましたし、一つの時代の終焉を意味する出来事ですからね、内山の敗戦というのは。個人的にも彼のファンであり、彼の試合の話を多分一番多く書いたと思うので。

検索してみると


 こんなところですかね。三浦戦以前の映像も見たんですが、それについては特に記事にして書いたわけでもなかったようですね。

  一番最初に書いたのはこれで、2011年の対三浦戦。6年近くも前になるんですねぇ。感慨深いですね。まあそんなことは置いといて内山高志は何故敗れたのかという話を云々したいと思います。

 

【目次】

 

ショックだった内山の敗戦

 彼がコラレスに敗れた16年の4月の試合、最初の試合ですね。それについて特にコメントはしませんでした。試合自体も負けたと人づてに聞いて、結果を知っていたので観ませんでした。それくらいショックでしたね、彼の敗戦は。

 内山というスーパーチャンピオン、日本人で山中慎介と並んでPFP(数多いボクサーの中で一体誰が一番強いのか?と語られるランキングですね、トップ10が発表されるんですけど、それに日本人がランキング入りすること、ランク内に入ることは異例中の異例です。ちなみに今だと井上も入るようになっていますね)内にカウントされる絶対的な存在である彼が敗れるということはショック以外の何物でもなく、身内の死くらいの衝撃がありました。

 戦艦大和(おもちゃ)が沈んで「敗戦とはこういうことなのか…」とそのショックの度合をこち亀両さんが説明するようなネタみたいな話がありましたが、当時の日本人としては戦艦大和が沈むということは、国が沈む・破壊されるくらいの衝撃を受けたでしょうし、天地を揺るがす出来事だったでしょう。そういう衝撃が個人的にありました。

 また、金閣寺で例えましょうかね。三島由紀夫が絶対崇高なる存在、汚されてはいけない神聖な存在を「金閣寺」で表現したという話がありますが*1、その自分の中の神聖な存在が崩れ落ちるという感覚がありました。

 そんな話をすれば内山の敗戦がどれくらいインパクトがある出来事だったか伝わるでしょうか?それぐらいセンセーショナルな出来事とはいえ、個人的に意外な出来事ではありませんでした。「ああ、やはりとうとうこの時が来てしまったか…。」という感じでしたね。

内山の敗因は年齢の壁・「衰え」によるもの

 何故か「内山高志」「コラレス」「敗戦」などのキーワードで試合の感想をググってみてみると、語られていないのですけど、今回の内山高志の敗戦の本質は「衰え」ですからね*2。そりゃ、今年37歳(2017年には38歳ですかね)のボクサーが戦って勝つのは無理がある。格下ならともかく、前回敗れた相手=ギリギリの勝負をしなくてはいけない相手。そんな相手に勝つことはかなり難しい。

 年齢の壁に勝てる選手はどこにもいないのがボクシングの常識ですからね(ヘビー級などのパワーが規格外なクラスだと例外的なボクサーが存在しますけども)。16年の最初のコラレスとの試合の時点で36歳、それで敗れたということは、もう「衰え」以外の何物でもない。全盛期のピークを過ぎて限界が来たということ。日本人ボクサーがリマッチで勝った事例もここ最近では川嶋に勝った徳山の事例くらいで殆ど勝つ可能性はゼロに近い(徳山は格下川嶋に一撃をもらってしまってのKO負けという背景を考えるとなおさらですね。後どうでもいいことですが徳山は帰化していたっけか?まあどうでもいいでしょう日本ジム所属=日本人ボクサーということで)。

再戦は内山が勝つ可能性が高いと思っていた

 ただ、事前にコラレスとの試合・りマッチでは内山が勝つ可能性も高いと思っていました。試合内容を観ていない段階で、「ホーリー・ボクシング」さんの内山 vs コラレス というブログ記事を見て、内山の右に下がる癖を突かれたという文章を読んで、こう思いました。

 普通のスタイルで戦う中間距離のボクサーが、身長の低さを活かしてラフなインファイトにもちこむという戦略・戦術に出た。まともに戦って内山に勝てるはずがないから、自分の本来のスタイルを捨てて相手が苦手なことを徹底的につく作戦に出た。自分の長所を活かすよりも相手の短所につけいることに勝機を見出した。普段自分がやらないことを会えてやる大胆な作戦・賭けに出た。そのため本来のファイトスタイルとはガラッと変えて、全く違うボクサーと戦うことになった。それに面食らって戦前に構築したプランが崩壊して、事前予想とは違う戦略を立てないといけなくなって「どうしようかな?」と内山が戸惑っていたところ、不用意な一撃をもらって負けてしまったのだろう。ーとまあそんなことを実際に映像見るまでは思っていました*3

 であるから、所詮付け焼き刃のインファイト。再戦が決まったのなら、相手のファイトスタイル・手口を研究して対策さえきちんと済ませれば、格下相手に本来の戦い方をすれば負けることはない。内山が衰えているとしても、偶然の要素が強い敗戦ならば、リマッチで勝つ可能性も十分あるだろうと考えていました。

 衰えの段階・程度がどのくらいか、それによって勝負は見えないが、まあ6・4か7・3で内山が判定勝利するのではないかなと思っていました。が、結果はご承知の通り敗戦。いずれにせよこれが内山の最後の試合になる可能性が高い。ならば書く気の無くなったボクシング記事を書かない訳にはいかないと実際の試合を第一戦からチェックすることにしました。

コラレスの実際の動きを見てイケるという予断は全く消え去った

 「コラレスというのは、小さくて本来中間距離の選手。スーパーチャンピオンと戦うために強引にインファイトに持ち込んだ。そこまで巧い・強い選手ではない。格下の選手だ。」ー誰だそんな適当なことを言ったやつは!と言いたくなるくらい素晴らしい動きをしていました。第1Rの最初の動きを見ただけで、「あ、これヤバイ。強いぞ」とすぐわかりました。

 リゴンドーやドネア、ガンボア(だったかな?)というような天才型・万能型の系列に数えられるボクサー。まあ人によってはドネアはちょっと違うだろという方もいるとは思いますが、個人的には天才型・万能型と一括りにしています。

 とにかく(スピードが)速いし、(行動するまでの起動時間が)早い。バランスがいいからどんな態勢・姿勢からでもパンチを打てる。万能型はガチャガチャ動きながらもいきなりパッて飛び込んでパンチを放り込んでくる。出入りがうまいんですね。そして回転力がある。コンビネーションが豊富。あれだけパンチを次から次へとバランス良く繰り出されると対処するのは相当難しい。

 内山のようなハードパンチャーの一撃をもらうのは爆弾処理をするのと同じことだと書いたことがあると思いますが、手数&スピード&回転力というのも似たような性質があるといえます。破壊力がないとしても、速いパンチをもらってしまうと一瞬効いて意識を失ったところに2・3発まとめられてもらってしまう。それがダメージとなってのちのちのKOにつながってしまうということになるので簡単には踏み込めない・攻められない。


問題は1Rではなく、2R目の左のクロスを合わされたこと。

 実際に最初の試合を見たときに、最初の1Rのダウンはあまり大したことのないものに見えました。ガードを下げるスタイルの内山は、右にスウェーでかわす癖がある。癖があるというよりも、そもそも内山相手にパンチを放り込めるボクサーがこれまで存在しなかった。一撃・二撃を右にスウェーするだけで、もうその次の追撃を貰う可能性はゼロなのでそれでなんの問題もなかったんですね。

 個人的に「いけない」と思ったのは、2R目の右にカウンターを合わされた時、左のクロスを被されたときでした。見ていて「あっ!」と声が出るくらい完璧にタイミングを合わされた一撃でした。KOタイムが2:59で、あと1秒あれば…と言われていましたが、あそこまで完璧にご自慢の右ストレートに被せられたらあそこで試合が終わっていなくても相当厳しかったと思いました。

 カウンターを合わせられる。タイミングが完璧だったというのは、実力の差がはっきりないと相当難しいこと。たまたまや偶然の出来事で片付ける訳にはいかない現象。個人的にはこちらのほうが問題だと思いました。

 最初の1Rのダウン・追撃の話にもつながるのですが、これまで内山はそんなパンチを貰うことはなかった。右にスウェーする癖があるから、研究されてその対策がハマった結果と言われていますが、それが原因で負けたのでしょうか?個人的には違うと思います。これまでコラレスというタイプの選手と当たっていないにせよ、世界の強豪をことごとく屠ってきた内山相手に似たような対策・作戦で挑まれることがなかったとは考えにくい。

なぜ内山はコラレスのパンチを貰ってダウンしたのか?

 ではなぜ内山はその一撃をもらってしまったのか。戦後「パンチが見えなかった」というコメントをしたとおり、視力の衰えがまず考えられると思います。それもあるのでしょうけど、やはりパンチ力・体の圧力の衰えなんでしょうね(人によってはこの2つパンチと体の力を分けて捉える人もいると思いますが)。

 ハードパンチャーとやるときというのは、どうしてもディフェンスに比重を置かないといけない。西岡がドネアと対戦したときに右のガードを上げて挑みましたよね?ああしないとドネアと戦えないというプランで挑んだ。その時点で西岡の勝つ確率というのはかなり乏しかったんですね(もちろん、それが間違っている。そうすべきではないという話ではありません。もう一つ一応書いておくと、ドネアは今の階級よりも低いときはハードパンチャーと言ってよかったのですが、上げてからはどちらかと言うとスピード&タイミング系ですね。一応補足)。

 ハードパンチャーの考えられない重い一撃を食らってしまえば、それで試合が終わってしまう。ものすごいリスクがある。それ故にどうしてもいつもよりもディフェンスに比重を置かないといけない。普段の比重が、オフェンスとディフェンス5:5だとしましょう。それを4:6や3:7にしないといけなくなる。

パンチ力・体の圧力=防御力

 そうなるとディフェンスに力を入れている分、攻撃力が落ちるんですね。言うまでもなくボクシングというのは攻防一体型の競技、攻撃と防御・守備が明確に分割されている野球のような競技とは違うわけです。ターン制でもないので、攻撃・自分が攻めているという局面でも常に守備や防御に意識を割いておく必要性があるわけですね。

 モハメド・アリがかつて来日したとき、当時目新しいパンチングマシーン測定機械を前にして、アリのパンチ力を試す!!という実験?イベントが行われたところ、アリは軽く打ってライト級くらいのパンチ力だったという話がありました。アリは実戦・試合で防御を無視して全力でパンチを打てる機会なんてないよ、こんなパンチ力測る機械なんて意味がないということを知っていたわけですね。機会ゼロだけに機械もゼロ=無意味(激ウマ)だと。

 最近だと、八重樫が稀代のハードパンチャーロマゴンと戦った試合がありました。八重樫もハードパンチャーではないにせよ、それまでの試合で絶妙なテクニック・試合運びを見せただけに、彼のテクニックが一体どう発揮されるのか?というポイントが有りました。が、実際にはそのテクニックをほとんど発揮することなくやられてしまいました。これも相手のパンチ力を警戒する必要から、攻撃に割くことができる比重が落ちてしまったからですね。

ハードパンチャー相手に防御の比率を下げることは本能が許さない

 となると、「そもそも相手は天下に謳われる名ボクサーなんだから、そんな防御なんかに意識をおいてないで、いちがばちか攻撃に意識10とか9とか8とかおいて、玉砕覚悟でドーンとぶつかっていかんかい!消極的で見ていてつまらんわい!初めから勝ち目が殆どない戦いなんだから、男ならやってやらんかい!」と思う人がいるでしょう(と言うか、昔そんな馬鹿なことを書いた気がする(^ ^;) )。

 そういうふうにできれば簡単なんですけども、6とか7とかくらいに比重を上げることはひょっとしたら人によっては可能かもしれませんけど、人間には防衛本能というものがある。そしてボクサーは当てる練習と同じように避ける練習・躱す練習をするわけですね。そういう長年の練習の上でパターン的な反応をするのが刻み込まれていますから、強打を前にして玉砕覚悟で!とやったとしても自然と体が反応してしまうわけですね。

 先に肌・皮膚や身体で感じて、頭で判断するよりも前に行動を起こしてしまうのがスポーツ・武術の妙。その自然な反応を抑制して危険な行動を出来るかと言われるとかなり難しいでしょう。むしろ身体と脳のバランスが崩れてイップスみたいな変な状態になりかねない。まあ言うは易し行うは難しってことでしょうね。

圧力が落ちた結果、内山の間合いコントロールも落ちた

 まあ、長々書きましたけど、要するにこれまで内山はその強打の威力で相手を自然と下がらせていた。ディフェンスに意識を向けざるを得ない状態に追い込んでいっていた。内山の圧力を前に踏み込めるボクサーなどいないということですね。相手が内山の強打を意識するあまり防御重視で攻撃力が落ちる、結果内山はディフェンス面に気を取られずに攻撃に専念できる(あくまで比率の話で、もちろん本人の意識の上では当然ディフェンスも重視していたと思いますけどね)。相手が防御重視→攻撃専念が可能→なおさら相手は防御意識→∞…のまあ好循環サイクルですね。だからこそ内山は圧倒的な強さ・KO率を誇ることができたわけです。

 「攻撃は最大の防御」といいますけど、優れたディフェンス技術の一番の基礎は実はパンチ力という矛盾した前提があるわけですね。内山のパンチ力の衰えというのは=ディフェンス・防御力の低下とイコールだったわけです。

 コラレスの真価は今後明らかになるとして、良いボクサーであるのは間違いないものの、かといって内山相手にあそこまで簡単に踏み込んでパンチを振れるというのは全盛期の内山なら考えられなかったでしょうね。全盛期でないにせよ、三年前の内山だったら判定に持ち込めても、もっと動きを制限されて、手数が出せずにコラレスは判定負けしていたと思いますね。

 内山のほうがリーチで7センチ長い。内山のほうがその分有利にも関わらず、間合いをコントロールしていた時間が長かったのはコラレスだった。これもいかに内山の圧力が失われたのかという裏付けのひとつになるでしょうね。

 1Rのダウンも2Rのダウンも、要するに内山の圧力が減ってこれまでなら踏み込めるはずのない間合いに踏み込まれたから。圧力の低下=間合いコントロール能力が衰えた・内山の支配エリアが縮まった結果、内山は本来想定する必要のないスウェーした状態から追撃のパンチを貰ってしまった。コラレスのディフェンスの比重を上げることができなかったが故に右にカウンターを合わされてしまったということでしょうね。


30歳の壁・35歳の壁

 内藤も長谷川も30歳を超えたあたりで少し「おや?」というところが出てきた。そして35歳ともなればもう限界、まず無理ですね。むしろ内山は35歳でそれほどの相手ではなかったと言っても3RKOという健在ぶりを見せつけたことを賞賛すべきでしょうね。西岡も「もうキャリアを終える、最後にやるとしたらドネアしかいない」ということになったのが35歳だったことを考えると当然すぎる結果ですね。

 不沈艦・難攻不落の要塞内山が陥落した今、山中慎介が日本の現役最高ボクサーと考えられるわけですが、彼もその35歳という壁に迫りつつあるわけで、モレノというスーパースターを下して、最後の試合は一体誰とやるのか!という段階に入っているといえるでしょう。

不利な再戦で今回の戦略・戦術は最適だったか?

 内山は前回の対戦よりも衰えることはあっても成長することはない。対照的にコラレスはこれからのボクサーで成長する可能性が高い。コラレスの調整失敗などがなければ、前回よりもさらに悪い条件でぶつかることになる。リマッチ・再戦の難しさというよりも年齢の時点で既に不利。基本的に「相手は更に強くなり、こちらはさらに弱くなる」という前提の上で戦略・戦術を構築しなくてはならない。果たして今回の対戦はその工夫があったのか?とセコンドの姿勢に疑問を覚えました。

 内山の戦略というのは世界トップクラスのパンチ力の圧力で相手を下がらせて、序盤は相手を覚えることとボディで相手のスタミナ・戦闘力を削る作業に集中する。そして頃合いを見計らって仕留めるという基本的なものです。内山の強打を嫌がって誘導して、ガードを下げさせて上を打ったり、頭を下げさせてこちらに近づいたところにボディ・下に打ったりとKO前には相手をコントロールして、今の自分から打たれに行っただろという状態に追い込む、追い込み漁が内山のハンティングのパターンの一つですね。今回はその追い込みがろくにできなかった。

 というか、ああいうスピード型を捕まえる・仕留めることは衰えた今相当難しい。その相手を追い詰めるために何をするのか?足を使うのか、これまで持っていなかった新しいパンチ*4を身につけるのか、スイッチか、遠くなる間合いを潰すために体・肩をぶつけていって距離を潰すのか、サウスポーの得意なノーモーション(空手で言う追い突きですね)の左ストレートは自然と頭が流れる位置が一定になるのでそれにカウンターの左を合わせるのか…。

 まあ色々考えられると思うのですけど、そのような目新しい対策がなかった。既存の強打からのプレッシャーで終盤仕留めるという戦略を採用してしまった。これでは再戦で勝つのは難しかったでしょうね。

 特にまずかったのは内山が右を振れなかったこと。本来、ガードを下げて圧力をかけるスタイルだったのに、ガードを上げて相手の左を警戒しながら戦った。結果、右の手数が減ってしまった。一番警戒すべき大砲がない以上、コラレスは非常にやりやすかったでしょうね。

 KOされたきっかけの左のクロスが見えなかったとは言え、ガードを終盤まで上げ続けたのはどうなのか?序盤右のボディで削って相手のスピードを落とせた、危険性はもうないという段階でガードを下げて本来の内山スタイルに戻すべきではなかったか?あのスピード&回転力のあるコラレス相手に右のストレートを振らずに勝とうというのはいくら内山でも無理がある戦略に見えました。

 まあ、それを言うなら前回の最初の試合で想像以上にスピードがある。1Rでダウンを喫した時点で、「ちょっとスピードあるからガードを上げて、ボディ叩きに集中して削って、パンチをもらうリスクを下げようか」という指示を2Rはいる前になぜ出せなかったのかという話になるのですが。

 6Rくらいから行こうと思っていたという話だったようですが、実際内山優位に持ち込めたのは終盤の9Rから。消化不良で余力を残して終わってしまったというように、ペース配分に問題があった(もちろんこちらのペースに持ち込む戦術が欠けていた結果ともいえますが、右を振れず終始コラレスペースでしたからね。勝負をかけるポイントになる局面が殆どなかった結果ともいえます)。

大晦日の再戦というスケジューリングへの疑問

 どこかでガッと勝負をかける瞬間・詰める瞬間がなかったのでスタミナが落ちているのか?と心配をしたのですが、試合後のコメントを聞くとどうもそうではなかった様子。事前に復帰戦をやって前回2Rで終わっているので試合感の調整、また今のコンディションで12Rといわなくても長いRを消化できるかどうかの確認をやっておくべきではなかったでしょうか?

 長谷川が三階級制覇に失敗した時の事前の試合で調整・次戦の世界戦を無視した試合内容だったのを見てこれはまずいのではないかという話を書いたことがありましたが、特に負けた後新しいことをやらなくてはいけないという段階で復帰戦をパスしての再戦というのは非常に疑問の残る陣営のスケジューリングだったといえるでしょう。

 TV局の都合、大晦日に必ず試合をやるという変な縛りを考慮しなければ…と思わざるを得ませんね。8・9月頃に復帰戦を挟んで、そこから半年を目処に再戦というスケジュールは組めなかったのでしょうか?年齢との戦いになるので間を開けるのも良くないのでしょうけど、間に一試合挟んで短い期間になってしまうけども、すぐ再戦というスケジューリングの方がまだ良かったという気がします。コラレスの都合が優先される、再戦の機会を実現するのにはその日程しかなかったというのなら話は別ですが…。

 セコンドへの疑問は盛んにジャブを突いてという指示を出していたこと。それはセコンドがあえて言うほどのことか?ということと、ガードを上げた状態でこれまでの位置からのジャブと軌道が異なるのにそのジャブをある段階までならともかく、始終やらせるべきかという疑問があるからですね。

 そりゃジャブは基本ですけど、普段の下げた位置からではないジャブは内山は慣れていないはず。上から打ち下ろし気味、かぶせるようなジャブになってしまう。それでは内山本来のジャブ・真っ直ぐ系のパンチの威力が出ないのではないか?

 たまに上から相手のガードを下げさせるようなジャブをすることはありましたが、今回はそのようなキレのない上からのジャブが目立った。内山のまっすぐ系のパンチは目を見張る物がありますが、今回はそのまっすぐ系が右のストレート以外にジャブもキレが悪かった。もちろん良いジャブもありましたけどね。相手が下がって、回って距離が空いていたとはいえ、かなりキレの悪いジャブがありました。

 どこかの段階でいつものように右ボディをぶち込んで、相手の動きが衰えた所でガードを下げていつも通りのスタイルで行けという指示をだすべきだったでしょうね。ガードを高く挙げた分、これまでの内山のパンチの軌道ではなくなった。その微妙な違いが与えた影響は軽視できないでしょう。内山はグローブで鼻あたりをこするという癖がありますが、その癖がいつも以上に目立っていたと思います。普段の自分の思うプラン、相手をコントロール出来ないという苛立ちが彼の癖となって現れたと思います。思い通りに行かない時に人はいつもの癖で心を整えよう・落ち着けようとするものですからね。

負けた後の再戦は基本戦略と方針を変えなくてはいけない

 輪島氏が再戦で勝った経験から、再戦の心持ちとして同じようにやったら前回と同じ展開になる。初めの3Rで6R分の力を使って戦うくらいのペースで挑まないといけないという話をしていました。相手のスピードという性質を考えると、輪島氏のアドバイスをそのまま応用できないのは確かですが、同じようにやってはいけないというのは当てはまったはずです。何かいつもとは違う切り札を用意しておいてほしかったですね。

 右のガードもそうですが、左のガードを上げることで、ソリスをKOしたようなショートフックも出しにくくなる。相手がスタンスを広くして頭の位置を自由自在に変えてくるタイプでその動きを制限するためには、低い位置からの左のショートなど、動きを制限するパンチが重要になる。相手の体を起こすためにもどこかで左を低い位置において見せてほしかったですね。

 再戦というと最近では山中に敗れたモレノマクドネルに敗れた亀田和毅を連想しますが、勝った相手もそのままではいない。再戦する上で前回やった相手との経験を活かしてさらに作戦を練ってくるもの。前回は自分がこういうのがまずかった、その不味かった点・短所すら克服すれば、気をつければ次回は勝てるという安易な想定があったように見えました。当然その考えは相手にもわかると言うか、想定の範囲内。負けた方はさらにもう一つ二つ相手の予想外のことをしないといけない。

 亀田興毅が判定に疑問符が付いた結果、ランダエタと再戦して今度は前回と全く違うスタイルで足を使って完封したように、再戦というものには前回とまるで違う何か別の引き出しが必要であるというふうに個人的には思えました。

コラレスの終盤の「逃げ」よりも問題は審判のジャッジ

 試合を見て、9R以降逃げ回っていて汚い・卑怯だ!という意見を持った方が多かったようです。が、内山のようなハードパンチャー・名チャンピオン相手に真っ向から打ち合えというのがそもそも無茶な注文。ポイントで勝っていれば、まず普通は逃げ回るでしょう。ボディが効いたのなら尚更ですね。

 内山本人も言っていましたが、ああいう逃げ回る相手でも仕留めないといけない。ボクシングというのはそういう競技ですからね。しかし疑問に思ったのはレフリング、レフリーの判断ですね。いつも言うように相手がクリンチを多用したらしっかりホールディングの反則を取らないといけない。一回目はよくあることなのでいいとして、二回目で注意して、三回目は絶対に減点しないといけない。次のRにまたいだとは言え、ボディが効いて嫌がって四回目のクリンチに入ったとき確実に減点すべきでした。あれをやらなかった以上、もうボクシングとしての競技は成立していない、競技になってないですね。

 ホールディングを取って、-1点にしても総合的な判定には影響がなかったと結果から逆算できますが、あの時点でしっかりレフリーがホールディングを取っていれば、これ以上はクリンチができないとコラレスも陣営もクリンチをためらうし、クリンチでしのげという指示も出しにくくなる。そこに内山がパンチを当てる機会が生まれる。反則一つとる・とらないで展開がガラッと変わる。そういう重要な所でしっかり反則を取れないボクシングの試合ほど見ていてイラッとするものはないですね。

 今回の試合はコラレスが上回っていた、これに異議はない。しかしそういうアヤがついてしまうからスッキリしない、イライラするのです。仮にレフリングに問題があった、レフリーが反則をしっかり取るべきだったとあとからWBA協会がジャッジして無効試合にしても同じでしょう。だからもう一回再戦せよと司令が下ることになったとしても、内山のコンディションはこれから更に落ちるわけですからね。

コラレスの反則について

 また内山の足をコラレスが何度も踏んだという報道がありました*5。写真からすると、計4回ですかね?コラレスが内山の足を踏んでいました。記事では偶然ではないと思うがと書いてありますが、わざとに決まってるでしょう。反則をしようがなんだろうが勝つというのがボクシングのプロの世界の常識。もちろん意図的に踏みに行ったというよりも、間を詰める・前に踏み込む過程で足を踏めたらラッキーとか、仮に踏んでしまってもアクシデントの一貫、踏んでしまっても構わない。絶対踏まないようにしようとケアする必要はない。クリーンファイトに徹する必要性はない。注意されたらその時初めて踏まないように気をつけようくらいの感覚なんでしょうけどね。

 ああいうのはその場ですぐ抗議をしないといけない。ホールディングもそうですが、ラウンド終わりに反則をすぐ審判になんで減点をしないんだと問いたださないといけない。クリンチも足踏みも一回はただの偶然でも二回目からは故意であれ、偶然であれなんであれ、すぐ反則にしないと競技として成立しない。すぐにやられた側は自己申告すること、現代は映像チェックなんか簡単なんだから、ビデオ判定員がすぐチェックして、事実だと認定出来たらすぐ審判に伝える。そして次回からはR合間に反則が確認されたの減点しますと観客に周知してすぐ減点する。もちろん審判が自分の目で確かめて即減点のジャッジをするのが一番いいのだけど。いつまでたっても反則は通ったもの勝ちという伝統で興行をやっていれば、競技としての完成度・透明度が向上することはないでしょうね。

 内山は自身ではアマのエリートではないということを言いますが、反則に対して対処の引き出しがないというのは他のアマのエリートと変わらないのでは?という思いを一瞬抱きました。というか通常の内山ならそもそもそれすらさせなかったので対処とかいちいち考える必要もなかったでしょうからね。

 1Rでコラレスの前足に内山の前に出した足が引っかかってよろめいたシーンが有りましたが、ああいうのはこれまでなら絶対になかったシーンでしたからね。ああいうバランスを崩すというシーンはやはり今の内山の状態を象徴しているのだと思いました。

海外に出る日本ボクサーは反則技を練習すべし

 個人的には現在のボクシングルールが反則を積極的に減点しない以上、反則を練習に組み込んで練習しておくべきだと思います。肘打ち・頭突き・足踏み(後はローブローですか?)、日本のボクサーはこれらを練習としてある程度組み込んでおくべきでしょう。

 無論、実際の試合でそれを使えと言いたいわけではありません。かつて新コータローまかりとおる 柔道編 という漫画の中で相手を意図的に破壊して勝つケンカ柔道・ぶっ壊し柔道というものがありました。そのイカれた流儀はなぜ生まれたかといえば、より実践性を高めて護身をする上で、相手があらゆる手段を講じてくるという前提で柔道を構築しなければ、実戦では機能しない・使えないという発想から生まれたという設定がありました。

 作中で鮫島春樹が「ぶっ壊し柔道はぶっ壊されないための柔道だ」と言っていたように、反則ボクシングは、こちらが反則をするためではなく、相手が反則をしてくるとなったときに、それにやられないようにするためのボクシングになるわけですね。反則への対処をするには、反則を意図的に行う場合、どういう意識で繰り出すものなのかを知っておく必要がある。事前にどういう意識で反則をするものなのかということを十分に理解しておかないと、とっさのときに有効な対処ができないと思います。

 相手が反則をしてくる!その対処もしなくては!となると、あれもこれもケアしなくてはならなくなる。が、実際は反則をする分、他の行動が制限されるわけですから、そこまで対処は難しくない。まあ、なんの世界でも同じですが、知ると知らないでは大きな差がつくということですね。事前にしっかり知っておくべきことだということですね。予防注射みたいなものと考えましょう。

 また修羅の門なんかで、傭兵で戦場上がりの相手が反則を仕掛けた結果、主人公の陸奥が本気になって同じようにルール無視の反則を仕掛けてねじ伏せたという話がありましたね。同じように、基本的に反則をすることはないが、相手が反則を仕掛けたら、ただじゃ済まさない。こちらも反則を解禁して徹底的に相手を叩き潰すというスタンスで行かないと相手に反則の使用をためらわせることができない。抑止効果によりクリーンファイトをせざるをえないという段階に持ち込めないでしょうね。

 今回のように中南米の才能あるボクサーが勝つためにはなりふり構わない、反則しても勝てばそれでいいという考えが存在する以上は対策としてしっかりやっておくべきでしょうね。アマ上がりのボクサーが多い今、日本人ボクサーはキレイすぎる傾向があると思います。前々から気になっていましたが、そういうボクシングは変則や不意の事態に脆いんですよね。今回のように強い相手ならまだしもつまらない相手につまらない敗戦をするリスクがある以上、ジムはしっかり対策をしてほしいと思います。

判定への疑問、7ポイント差はありえない

 またやはり触れておかなくてはいけないのは判定について。ダウンさせたRと9R以降内山が取って、それ以外はコントロールしたコラレスが取ったとして、2ポイント差でコラレスの勝利とするのがまあ妥当なライン。そこから人によってジャッジが変わって、内山につけてもおかしくないし、4ポイント差でコラレスの勝ちにしても、ん~と個人的におかしいと思っても、まあ想定の範囲内。しかし7ポイント差はどう考えてもありえない。一体どこに目をつけているのかという話。

 WBAが手数を重視する傾向があるとはいっても、7ポイント差ということは一つドローで9Rコラレスがとって、内山が取ったのはダウンを与えたラウンドと他に1つだけということになる。いくらなんでもそれはない。アグレッシブに左右をまんべんなく振ったコラレスに対し、右を殆ど振れなかった内山が前半ポイントを取れなかったのは妥当。が、後半9R以降ボディが効いて逃げ回ったコラレスの手数を評価するというのはおかしい。それならとりあえず手数を出して後は逃げ回れば良いことになる。試合をコントロールしているアウトボクシングと逃げ回っていることも見極められないなら判定員なんか辞めたほうが良い。というか辞めさせるべきでしょう。

 審判・判定ともにケチがつく嫌な試合になってしまいましたね…。

反則対策の他にドーピング対策も導入すべき

 また、これは書くかどうか迷いましたが一応書いておきたいと思います。セコンドの対策に疑問と書いたのですが、コラレスが内山に挑戦する前の暫定王座決定戦の対ロドリゲス戦の映像をチェックしたのですが、正直大したボクサーには見えなかった。スピードとスイッチをすることと、コンパクトな連打があるものの、基本的にディフェンス重視でそこまでの選手ではない。内山の圧力を前にジリ貧かもしくは仕留めきれずに判定に持ち込まれるくらいの予断をセコンドが持ってもまるでおかしくないという試合でした。

 そういうボクサーが若くて成長の余地があるとは言え、内山との試合では一段階成長して別人のようなキレとスピードを持っていた。井上のように階級を一つ上げて減量から解放されて本来のパワーを発揮したとか、そういう事情があるわけでもないのに、こんなことがありうるのか…?と疑問に思いました。

 が、2013年のアービング・ベリー戦の映像があって、それを見る限り、まあ今回のような出来でもおかしくはないと感じさせる動きをしていました。

 15年5月に、同じくスーパーフェザーで現ライト級の粟生隆寛WBOの王座決定戦でベルトランというボクサーにKO負けするものの相手は禁止薬物を使用しており無効試合になったという例がつい最近ありました。

 これだけ別人のように動きが良くなるということと、内山戦以後試合をやってないことを考えると、ひょっとしてコラレスは薬かなにかやってるのではないか?と粟生の事例から疑ったのですが、過去の映像を見る限り、まあ、ああいう優れた動きをしても別におかしくないでしょうね。

 ただコラレスにも薬物反応マリファナ無効試合にされた過去があるんですね。こういう話を聞くと日本ボクシング協会は積極的にドーピング検査を試合の事前と事後に徹底化する必要があるのではないかと思いますね。海外の試合でもドーピング検査を奨励する・試合条件に組み込む必要があると感じました。

 コラレスが優れたボクサーで、今回の勝利にも異論はないにせよ、変な疑いが入る余地は事前にしっかり潰しておいてほしいと感じました。ゴタゴタでまるで機能していないJBCに望むのは厳しいのでボクサーOBやジム会長連は積極的に働きかけてほしいかと思います(というかJBCの再生が先か…)。

最後に

 とにかく、内山というボクサーは強かった。素晴らしい完成度だった。自分が見た限り間違いなく日本史上最高のボクサーでした。たまたまCSで見たファイティング原田みたいな存在もすごいと思いましたが、やはりスーパーフェザー級という軽量級が主体の日本人ボクサーの中で中量級でその実力・強さを発揮し続けた点で、やはり内山を日本史上最高にあげたいと思います。長谷川・徳山・山中と言ったスターも彼らはバンタム以下でその真価を発揮したという点で個人的にやはり内山を推しますね。

 その優れた最高のボクサーがマカオやベガスという最高の舞台で最強の相手、ウォータースやガンボアやガルシアやロマチェンコといった望む相手とやれなかったこと。せめて海外の舞台で顔を売りにいくという意味合いがあるフォルトナと試合ができなかったのかと悔やまれてなりません。

 年齢の壁に当たったとは言え、自分が戦いたいと思う強い相手と最高の場所で戦って敗れるなら納得もするもの。しかし、これからの若手のホープと戦いたくもない試合を組まされて、そこで現役のキャリアを終えるという展開を見ると、悔しくして悲しくて本当に辛いですね。

 戦って、やるべきことをすべてやった上で負けて死ぬならともかく、戦うことすらできずに退出を求められるなんて、その背景を考えるとこんなに心が痛むことはない。

 もし内山さんの友人でリングサイドにいたとしたら、号泣してしまったでしょうね。それくらい可哀想で残念でならない。負けた後も本人はやることをやった上の結果・これも天命ということでサバサバしているでしょうけど、周りはもうどん底に沈むのではないでしょうか?お通夜状態になってもおかしくないと思いますね。

 かの吉田沙保里が負けたことで取り返しのつかないことをしてしまった。日本国民すべての皆さんに謝りたいというセリフを発して話題になりましたが、亡き父への思いなど色んな思いがあったにせよ、応援してくれる人たちが自分が負けることでショックを受けてしまう・傷ついてしまうという事実を知っていたからこそ、ああいう表現・涙になったのではないかと今更ながら気づきましたね。

 いづれにせよ、内山高志さんは個人的に今まで見てきた中で素晴らしい最高のボクサーでした。ボクシングを辞めたとしても、これからもずっとファンで有り続けるでしょう。最高の試合に感謝の言葉を添えて今回は終わりたいと思います。素晴らしい試合の数々ほんとうに最高でした、ありがとうございました。

アイキャッチ用画像

内山高志写真集 漸進 (日刊スポーツグラフ)

*1:金閣寺 (新潮文庫)

*2:無論、衰えについては一応は触れてはいるものの、技術上の問題やビッグマッチを逃してモチベーションの欠如という方をより重要という見方が殆どでした。モチベーションの低下、気力の問題を軽視はしませんけども、それよりも何よりも一番大きいのは衰えだと個人的には思います。ここの文章はそういう意味ですね

*3:もちろん、本当は違ったのですが、コラレスが肘を振り回して当てたというコメをどっかでみたこともあって、己の内山がまともに力負けするはずがないという偏見・予断があって、そういう解釈をしていました。三浦・金子戦などのように、たまに内山は不用意にもらうこともあるので、その延長だろうと勝手に解釈していました。実際にコラレス戦を見て、もう一度ホーリー・ボクシングさんのブログ記事を読み直すとブログの主が書いていることと、当時思った拙感想と全然違う受け取り方をしているんですけどね(^ ^;)。思い込みというものは恐ろしいですね

*4:たとえば、出入りの激しいボクサーなのでそうさせないように、入る瞬間にアッパーを合わせるとか、当てなくてもアッパーを見せれば相手は簡単に踏み込めなくなるでしょうからね

*5:狙われた左足 コラレス・内山戦で繰り返されたあるシーン

身体の話(2016/08〜10)

だいたいその辺りに感じたことです。腕とか上半身の話が多いですね。

 腕を上げる、そして天から吊られる意識を感じて腕を降ろす。からだがより伸びる。腕と足の側軸の感覚がより通るのか、それとも肋骨が伸びる・身体の側面が伸びるという効果があるのかよくわからないが、まあそんな効果があるということに気づいた。

 掌・パームと脇のリンク。てのひらと脇を同時に意識する。両方いっぺんにやるとあまり感じない。片方の手のひらと脇に意識を集中すると、より深く脇を使える。手を前に出して行う。腕をだらりと下げた状態だとリンクをあまり感じない。反対の手を脇の下に突っ込んで腕を支えると多少は感じるけどまあリンクの意味はないかな。アイーンみたいな形で、そのアイーンを体の外側へ少し開く。座った姿勢で立てた膝の上アイーンの腕を置いても感じる。

 うまく腕と脇が繋ると脇から浮く感覚が発生する。このリンクを感じたまま、アイーンのかたちを保持したまま腕を動かす・回すと、システマの人が相手を崩すときの腕の使い方になる(上腕二頭筋の力こぶを見せつけるような腕の形から、手を握らない形でなんなく振り解いていくというのがシステマの動きで強い印象に残っているが、そういうことを意味していると伝わるといいな、伝わるかな?)。

 そういう姿勢・腕の形を好んで取っているということは、胸や肩甲骨のより深い所が非常にうまく動いているのだろう。だからこそ、相手を簡単に崩せる、何気なく倒すことが出来るのだろうとか、そんなことを感じた。

 ちなみに前述の吊るすポーズのときにも脇から開いていくという意識が伸ばす上でのポイント。腕をただ上げる、バレリーナのように上げるのではなくて、まず脇を開く=肘を突き上げる。そこから体力測定の垂直跳びをやる時のように腕を伸ばす。バタフライやシュートボールを投げるように腕を使うことで肩甲骨の可動域が広がるという話があったが、やはり手のひらを外に向けることがポイントなのだろう。脇と繋るというよりも肩甲骨の可動域を広げられるということかもしれない。

 肘抜き・肩抜き、関節の力は強い。故にその局所部位に頼りたがる。そこを支点としてヒンジ的な使い方をしてしまいがち。当然その動きは一般的な誰もが行う動きで単純かつ読まれやすい。身体のエネルギー・力の発生ポイントである中継地点の関節の力を抜いて、全身を繋げないといけない。肘抜き・肩抜きをやろうとすると、ベスト辺りに腕の操作ポイント、意識の置き所が変わる。ベストというのはこういう肘抜き・肩抜きをするための身体意識ということなのかもしれない。

  腕を浮かす、肩包体・面からの意識を持たせる胸の締め。くまのようなポーズで肩が前と上につき出て腕が浮く。大胸筋をつき出すことで、肩甲骨がつき出てくるから肩甲骨がより使われるということなのかな?ーと書いてあるけど、今見るとナンノコッチャわからん。腕を浮かせる胸の締めってなんだろう?

 腰・内転筋を直下に切る・落とす。ズルっと使いたい。股に何か挟むような意識をもちながら、仙骨と腸骨・仙腸関節を外へ開く意識。腰や足を固めないで使うのに良いかもしれない。

師弟 野村 克也/宮本 慎也

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先月くらいに読んで公開していなかったので。読んだメモです。

 ヤクルトはアリゾナでキャンプをやった。遊ぶ場所がないから選手が集中できた。阪神は高知で、呑兵衛が多い土地柄。選手が練習後の飲み会のことでミーティングも上の空だった。ホテルに残っている選手はだれもいなかったと。

 バレンティンがピッチャーゴロで走りもしなかった時ベンチを蹴りあげた。負けている時こそ当たり前の一塁への全力疾走、カバーリング、サインミスをしない、リードをしっかり取るなど小さなことを大事にする。プロセスを重視する。五輪やWBCなどは別、結果が何より求められる。緊張して体重が3~4キロ落ちた。

 古田始めヤクルトの選手はみんなここで負けたら意味が無いと日本シリーズに入れ込んでいた。あんなチームは他になかった(今のホークスはどうなんでしょうね?)。

 例の開幕戦の小早川の話、スライダーを狙い打った。スライダーは便利なボール。特にまっすぐを待っているときは効果的。しかし便利は弱い、狙われれば格好のカモになる。(鶴岡が日ハムにボコボコ打たれるのもスライダー&アウトロー狙いだからということなのかな)

 9回裏、5点負けてて巨人村田は初球を打った。塁に出る、つなぐ、走者を還すという3つの打者の目的の中で先頭なんだから塁に出るしかない。その確率を高めるには初球は絶対打ってはならない。あの初球をHRにしてもダメ。そういうケースだと。へぇ。見逃せば相手投手は何故初球を見逃したか考えざるを得ない。そういうプレッシャーとなって、四球なども狙えるようになると。1点差ならいい。2点差ならやはり待たせる。待たれたなら嫌だなという場面で待つのも積極性であり勇気

 根拠のある見逃し三振ならいい。2割7分の打者が3割打てるようになる。ヒットを打たれたら、そのボールから入る。凡打ならそのボールを意識しているから、違う球から入る。インコースの速球を詰まらされたら、それが気になるからゆるい球から入る。ストレートを二塁打したから、ストレートを待っていたら変化球が来て凡退した。ノム氏いわく、ヘボバッターに打たれて後悔してるんだから考えろと。ムッとしたが、人間のやることにセオリー・絶対はありえない。二重三重に状況を考えないと意味が無い。一塁ランナーが居る時は、右打ちがセオリーだが、三遊間次第では引っ張ってヒットにしてもいい。内川もそういえばそうやなぁ。基本右打ちですが、たまに引っ張って三遊間破りますからね、個人的にはもっとそれをやってもいいと思いますが。内川の場合は右打ち意識が強すぎる気が。

 長打のない自分は絶対初球を打たなかった。対照的に真中は三球連続初球凡退したとのこと。相手も打ってこないと思ってるでしょ?と返事が帰ってきた。じゃあせめて打てよと(笑)。自分のことだけを考えるなら初球から打ったほうがいい。しかしそれではチームの為にならない。古田いわく1ストライクを取れる方法さえわかればなんとかなる。それくらい大事。キクマルコンビは100球超えた先発に対して簡単に初球凡退で相手を助けてしまったことがある。それではダメ。いくら打てないクローザーだからといって30本以上打つわけではない選手が初球を打ってはいけない。

 ヒットなら同じ球を待つ。凡打なら違う球を待つというのがヤクルトのセオリーだったが、今はそれが逆に球界の定石になっている。小林は梶谷に外ボールの次にインコース二球続けて要求し追い込んだ。しかし3球目にまたインコースで打たれてしまった。2球続けて追い込んだことで自分の配球に酔ったのでは?内角は量ではなく質谷繁はその意識のさせ方が絶妙にうまかった。ここでというところでインコースにボールが来て、殆ど打った記憶が無い。その次に筒香に菅野の勝負球でもない制球の難しい・長打になりやすいカーブを要求してHR。いわく緩い球は捕手にとって快感球。まっすぐを見せたわけでもない意表をついただけの球。

 日本シリーズでタイミングを図らずに初球から走ってしまった上田には自分を客観視するメタ認知が足りなかった。ショートを守っている時、打者が遅かったら確実に、早かったらリスクを承知で早く送球するというプレーしていたので、意外と打者が早くて間に合わなくてセーフになるというのが理解できなかった。宮本氏はこれを誰もが当たり前にやっていることだと考えていたようですね、さすが名手。

 牽制球の目的は3つ。アウトにする、スタートを遅らせる、心理を図る。いつもより早い牽制をさせると大体わかった。吉田義男のとき1試合3回盗塁を刺したことがあったが、それで一年間盗塁・エンドランのサインが出せなくなった。

 スライダーを投げさせてやや反応が早ければまっすぐ待ち。遅ければ緩い球待ち。追い込んだ後、打者はそれまでまっすぐを待っていてもウイニングショットがちらつくもの。また変化球に全く合わない空振りをした時も注意。続けたくなるが裏をかいてまっすぐを投げさせたくなるもの。追い込んだ時と無様な空振り、捕手はまずこの二つに注意を払うことから始めると良い。

 宮本は古田の雑談からヒントを得るために出来るだけ話を盗み聞きしていた。開幕戦の第一打席はいつも足が震えた。

 プレミアで疑問を感じたのは継投よりも守備位置。ノーアウト1・2塁で三塁線を締めずに抜かれてしまったこと。長打なら同点を覚悟しなければいけなくなる。則本の球威なら引っ張っても三塁線を破られることはないという判断でも、当然変化球を投げる。それを打たれれば最悪は起こりうる。最悪を想定して、マイナス思考からセオリー通りに締めること。外野も前進か左中間・右中間を狭めるべきだった。もしそうしていたら普通にゲッツー(打者の意図も変わっただろうが)。セオリーに反したプラス思考=よくばりがもたらしたあやまち。選手のプラス思考・欲張りはベンチが制御できる。しかしベンチがそうなればもう止められない。こういうときに勝ち試合を落としてしまう。強いチームは勝ち試合を絶対に落さないもの。

 工藤いわく一番走るかどうかわからないのが宮本。全部行く振りをしてサイン以外戻った。顔でピッチャーを見ながら、視線でキャッチャーの牽制のサインを覗いた。見ている時隙をつかれるとまずいから、そのときはコーチャーに大声を出してもらい、声が出たら反射で戻ったと。そうやってリスクの高いリードを取ったと。今はキャッチャーの牽制サインもわからないようになっている。サインが出ていなくてもわざと引っかかったふりをして、戻ったりした。刺される危険性があるのでその時はリードを小さくしていた。演技を見破る投手もいたが、そうでなければ何度も牽制をしてきたと。観客席を見ていると雰囲気でだいたい走るかどうか分かる。古田は仁志は走る時エクボができると言っていたとか。一流故の観察眼。ピッチャーのグラブなど、癖を見るコツを覚えていけばだんだんわかってくる。金森栄治氏は癖を見破るのがうまかったと。広島の山内という新人投手は確認する必要のないまっすぐの時にボールを見る癖があった。おそらく変化球で確認する癖を治すためにやっていたのが習慣化してしまった。山本昌は口をきゅっと結んでいたらまっすぐで、緩んだら変化球。セットポジションの時はどっちかわからなかった。国際大会の時は味方になるので癖を教えない訳にはいかないから大変だと。

 ボールを投げる時、微妙に中心を握れないと変化する。その変化を計算に入れて投げていた。誰でもやっていると思っていたら古田くらいだった。川崎(ムネリン)はベンチに居る時も裏方の仕事をきっちりやって試合に出ても役割をこなした。常にグラブを付けて準備をしていたと。

 三塁が新外国人選手なら守備力を見てやろうとセーフティするくらいの犠牲心がないのかと怒られた。

 日本の言葉やコミュニケーションを取ろうとしようとする、研究を怠らない選手は成功しやすい。メジャーに固執するタイプは逆。

 再生の成功は「底付き体験」をしているかどうか、最悪だから生まれ変わろうと必死になる。果たして西武では…?

 山田はビビリでその日4タコだとベンチで落ち込んでいる。松井曰く、タイトル争いは一打席でも疎かにしないこと。青木がそうだった。自分は勝っていてチームの役割が見えなくなったら、集中できなくなった。守備は逆でどんな時でも疎かにしなかった。

 インコースに投げるとバッターは肩を開く。外の変化球は逆に身体を抑えようとフォームが良くなってしまう。基本は守備・守ること。人間は楽をしたいからつい攻撃に神経が行ってしまう。聞いてるか工藤。

 メーカーハタケヤマはコストの高いキャッチャーミットにこだわって成功した。選択と集中の好例。評判から他の製品も売れるようになる。できるところから日本一になりなさいという花巻東の教えも同じ。

 97年の西武との日本シリーズでは、勝ち頭田端・吉井ではなく、左の石井一久。松井・大友といった機動力を封じるため。二戦目に牽制の巧い田端で機動力を上手く封じ込んだ。結果走れなくなった。伊東のリードにはここぞという時にインコースが多くなるという傾向があった。日本一を決めた第五戦ノーアウト2・3塁で池山がそれを読んでタイムリー。準備をしっかりしていれば、打てなかったらどうしようという心配がなくなる。確認でそんなことを考えている余地が無いから。

 野村野球は邪道に見せかけた王道。劣勢にあるときに奇策で挽回しようとはしない心理的負荷がかかる場面では失敗する確率のほうが高い。奇襲は失敗した時には致命傷、だから失敗しそうなときにはやらない。キャンプではわざと複雑なサインプレーをやって、相手を惑わそうとした。心理的に上に立つため。

 古田は若手がファールを取るのをためらって落としたら、ぶつかってでも取りに行けと一喝した。吉井も味方のミスで点を取られたらベンチで大暴れしていた。

 試合開始直後四球で二番に初球バントはありえない。立ち上がり不安定なら初球は見るべき。知識を与えれば選手は勝手に動く。自主性こそ重視する。よって、自身の判断で三遊間をしめろという指示に従わずに、こっそり二遊間を狭めてアウトにしたこともあったと。こういう事例は監督の指揮に逆らうことには変わらないわけですが、どうなんでしょうね?上がポンコツならそれでもいいんでしょうけどね…。

 優勝したら翌年はマークされて弱くなる。1.2~1.3倍の戦力にして初めて戦える。戦力補強は当然の危機管理。ソフトバンクに敗れたのはエース不在故。

 ファームで編成が来年どうしたい?の言葉で腹立って辞めますと言った。一年伸ばしたが、小川監督に気を使わせていることに許せなくて、やはり辞めることを決めた。脇役がそれでは失格。

 田中のようなこれからという選手にキャプテンを担わせたら、レギュラー落ちした場合に機能しなくなる。明確に中心選手にすべき。チームが先か、個が先か。前者だと思っていたが、青木を1番で出塁に専念させたら、結果チームも良くなったという事例から、後者ということもあるのだと気づいた。

 金本に三盗をされた時、投手への声掛けを怠ってしまった。セカンドの辻も同罪なのに何故自分だけ…と思ったが、そういう考えを持っているうちは成長しない。何かのせいにするような選手は決して大成しない。村中がいいと思うといった時、ある記者はマウンド・手などをしきりに気にして、何かのせいにしている。大成しないと言っていた。北京五輪である選手(GGか?)がミスをしてから消極的になり上手くいかなくなった。逃げ道を作らせないようにしていたが、今思えば逆に逃げ道を作らせてやるべきだった。

 野村監督は厳しいようで優しい。原監督はその逆。中日に敗れたシーズンは落合監督の影に負けた。相手の監督を意識した時、不利になる。

 コーチ兼任の時に、若手を叱ると萎縮するからやめてくれと言われた。だが、いち早く注意しないと人は成長しないと。こういうメンタリティで外様新監督やったとして、大丈夫なのかな?外様監督はチームから嫌われる傾向がありますからね。しかも監督・コーチ経験なしでは、なおさら衝突して不和で…ということになりそうな。

 古田いわく「お前真面目やなぁ。投手が投げないとわかったら、投げる前にスタート切っていいんやで」その一言で自由になれた。稲葉も新庄がスタンドに手を振っている姿を見て衝撃を受けたと。立浪に憧れて立浪のマネをした。相川曰く立浪そっくりだと。

 菊池は前に行って弾くタイプ。バッターの足など状況判断がちゃんとできていないことがある。今宮はバウンドを考えずに全速力で取りに行くから大きく弾くエラーをする。

 村中、ある若手捕手はバント失敗でランナーをみた。自分のせいではないと言いたげな表情でダメだと。広島の黒田は打たれたら必ずすいませんと謝る。

 2年目レギュラー定着しかけた時に、デットボールで手首を骨折しても試合に出続けた。オマリーは異変に気づいてボール回しをしなかったが、ショートの池山はお構いなしだった(笑)。09年骨折した時も自分の指じゃないと思って出場した。相川にも自分の指じゃないと思えば大丈夫だと。

 石川は投げてと言われれば嫌な顔をすることは絶対無い。だから10年に6連敗しても11連勝して巻き返した。

 上原はスッポ抜けて頭に行った球をフォークが抜けたので大丈夫としれっとしていた。松坂も同じ。石井一久もプロは速球だけではダメ、変化球が大事だと言っていた。バカそうに見えたので4年で寮から出られるはずなのに、野村監督はそれを許されなかったが、彼の考えを話したら、バカを演じているのか騙されたなとのこと。

【2016「工藤批判」批判】 王会長・工藤監督は秋山時代の「森脇追放」のように、反工藤派(藤井・大道・鳥越?)を粛清すべし

 さて、前回書いたように今回は「工藤批判」批判をやりたいと思います。というかやらなくてはならないでしょう。長々工藤批判を書いてきて、まだCSでの意味不明な継投とか、シーズン中いかに我慢できない継投をしていたかとか、そういう指摘をしたかったのですが、それ以上にホークスというチームの組織上の大問題があるので、こちらを先に書きたいと思います。

 おそらく、工藤叩きを諫める意見としては、「去年あれだけやったのに、今年2位になったくらいで叩きすぎだ。それで監督辞めていたらどんな監督もすぐ辞めざるを得ない、アホか」くらいしかない気がします。まあ、いちいちチェックしたわけではないのですけど。あまりまともな「工藤批判」及び、「工藤批判」批判(工藤批判への反論でいいですね、今更ですが(^ ^;) )はなされていない気がしますので、こういった話をしておかないといけないと思いました。まあ一連の工藤批判のところで、ちょいちょい「工藤批判」批判を書いてはいたんですけどね。今回は工藤采配以上にチーム・組織として問題があることを改めて書いておきたいと思います。
 ※追記、連日の采配ミスというか「継投」失敗で拙ブログを訪れる方が増えたようです。アクセス数1.5~倍になってますから。まあもともとそんなにアクセス数多くないですが。一番人気のあるこの記事にアクセスされてるみたいなのですが、こちらはあまり継投の話には踏み込んでいません。フロント批判・組織の問題の指摘が殆なので、工藤采配の拙さ、「継投」の問題などを知りたい方が多いと思うので、そちら希望の方はこちらをどうぞ。今思うとよくもまあ、こんなに書いたものだと思うくらい書いてます(笑)*1

目次

ホークスの組織としての大問題:情報管理意識の欠如

 秋山監督が辞める時、かなり早い段階(確か8月最後か9月の最初くらい)で「腹心の高山さんもいないし、去年のBクラスの件と家族のこともあって、今年でもう秋山監督は辞めると思いますよ。」―というふうに直前に監督退任情報が漏れたことがありました。夕刊フジだったと記憶しているのですが、ちょっとググっても見つからなかったので断定は避けておきます。

 で、その報道を後追いする形で秋山監督は日本シリーズ前に今年で辞めると発表する事態になりました。更にスポニチから事前に辞めるのでは?という報道がされた結果、会見をしてシリーズ終了後に発表するはずの人事が事前に発表される。チームにとって重要な監督の進退について、シリーズ直前に急遽説明する。というかせざるを得なくなったという事件がありました。

 以前から何回か指摘してきたのですが、このチームは情報漏洩が多すぎるんですね。情報管理がガバガバになっている。かの落合博満が中日監督となって、OBを排除した理由の1つはこの情報漏洩問題があったからですね。とにかく、OBやコーチが勝手にペラペラ内情を話してしまう。これでは組織は機能しなくなる。

 で、落合の鎖国政策で情報が取れなくなった新聞社(中日スポーツかな?)は怒る。そこに評論家や事情通として食い込んでいるOBも落合政権に反対する。かくして反落合派が形成され、批判的な記事が書かれるようになる―という流れがあったわけですね。いつの世も政権交代で中央政治からパージされた旧主流派が反対勢力となって政権批判をするもので、典型的な事例ですね。

 

工藤公康落合博満に学んで情報管理を徹底すべし

 同じく、工藤公康も情報管理に乗り出さないといけない。組織としての問題ですから、本来は王会長がやらなくてはいけないことなんですけどね。それでも落合は監督としてやったわけですから、仮にそういう権限が工藤になくとも、進言・お願いくらいはできるはず。OB及び現コーチが内情をペラペラ喋る、喋っていけないことまでウケ狙いで盛って大袈裟に話す。それが思いもよらぬ監督叩きや選手叩きへと転化して、それを見た選手・チーム内が動揺するということがあるわけです。

 少なくとも王会長は、自身が情報をチェックして「これを外部に漏らしたのは誰だ!!」と作ったあらいに激怒する海原雄山のごとく叱り付けないといけないでしょう。そうしないとこういうバカなことをする組織の腐った空気は変えられない。「こういうことを外部に喋るようなOBは小久保・松中だろうと出禁にする!」と言わなければ、平気で馬鹿なことやるわけですから、わからないと思います。*2

 

野村克也を干した王会長は情報管理の重要性を知っているはず

 かつてWBCの監督選考で王会長は監督の中で一番優秀と思われる≒短期決戦に最も強いと思われる野村克也(以下ノムさん)をその日本代表監督から意図的に外す、干すことをしました。この選択は優秀なものをポストから遠ざけるおかしな人事だと憤ったことがありましたが、後に事情を知って納得しました。それはノムさんがマスコミに勝手に選考過程を喋ってしまったから。

 代表監督選定のトップ達の会談・寄合で、王さんはノムさんに「やりませんか?」とひと声かけた。それをノムさんは否定して「あんたやりなさいよ」と応えた。その後つめかけたマスコミの面前で「どうも星野に決まっている気がする。出来レースなんじゃないの?」とその会議の内容を喋ってしまった。会議の席で、自分の意見をきちんと述べて、「この決定には納得できない。王よ、これはおかしいぞ。こんなおかしな意志決定には納得できないぞ。俺はこれからマスコミに全部喋るからな」とちゃんと直前に抗議していたならともかく、そんな相談もせずに会議中異義も挟まず、いきなり外に向かって暴露した。結果、世論の後押しもあって星野監督案は頓挫して、原監督に決定したという流れがありました。そんなようなことをやる人間は組織においておけない。当たり前の話ですね。トップ会談、意志決定の過程を不用意に外部に喋るのは組織の論理から言ってありえない蛮行ですから(いきなり会議をやる前に王会長は根回しとしてノムさんとサシで話を通しておいたほうが良かったですね。まさかこんなことをするとは思っていなかったのでしょうけどね)。

 組織には役職があり、役職に応じた権限というものがある。組織において上に行けば行くほど大きな権限=責任と、組織内において限られた人物しか知り得ない情報・機密を知る・保有することになる。それにともなって、組織内の重要な意志決定に参画することになる。まあ言うまでもない当たり前のことですね。

 トップに大きな権限・責任・機密があって、下の方にはないといえばたしかにそうなのですが、それでも時と場合によって内部事情を知りうることがある。そしてその内部事情を外に漏らして良いのかどうか?という論理がある。今我々が問題としている情報漏洩問題は、当然漏らしてはいけないたぐいのものなのですね。確かな情報でも不確かな情報でも、不用意に喋ってはいけないことがある。下手をしたらすぐにクビをきられて引退することになる立場の選手に対するマイナスの評価・査定を漏らしてはいけないし、選手・コーチが監督に不満を持っているなんてことも論外。絶対漏らしてはいけない話でしょう、本来。

 自分の部下に対して忠告の類ならともかく、評価査定に直結する内部事情を漏らす組織はありえない。まして部下が上司に対して無能だと思っていることを漏らすなんて普通ありえない。普通の一般的な企業ならそれで特に問題が発生することはありませんが、プロ野球チームというのは特別な組織。一挙手一投足がマスコミを通じて公になる世界。話して良いことのラインが一般世界とは大きく異る。普通の会社員が飲み会の場で不平不満を言って問題になることはまずないでしょう。しかしプロ野球選手・コーチはそういう世界に住んでいるわけではない、違う世界・違う論理の社会に籍をおいているわけです。活字・媒体を通して公になってしまう世界なのですから、喋る内容は決められた手順を守る・筋を通さないといけない。そういう内情話は慎重に外にもれないようにするのが当たり前。

 何より、選手がコーチ・監督に不満を持っているという類の話が漏れたら、それを聞いたコーチ・監督がどう思うか?その選手を探して干すに決まっているでしょう。コーチ・監督というのは起用する側であって、選手にあれこれ言われる立場ではない。将棋で言えば棋士、選手は駒に過ぎない。駒が棋士に文句を言うのはありえない。そんな馬鹿なことをする選手・言うことを聞かない駒は捨てる。新しい駒に入れ替えるに決まっている*3

 選手と首脳陣に溝を作るようなこと、チーム内に不和を作ることをわざわざやるなんて正気の沙汰ではない。要するにそういうことをペラペラ外の人間、特にマスコミに喋ってしまうということは、そんなことも理解できない大バカ者だということですね。

 

納得できないなら楽天・田代打撃コーチのように筋を通すべし

 かつてデーブ大久保監督が楽天監督に就任した時、チーム内に不和をもたらすだろうと言われていました。が、実際は現場を知りもしない本社の人間がFAXでアレコレ指示を入れてくる。それに従わないといけないという異常な体制となり、その体制でチーム内に問題が発生しました。そのことに怒った田代打撃コーチが辞任をするという事件がありました。

 常識的に考えて現場の裁量を逸脱する行為をフロントが行っているわけですから、現場の人間が怒るのは当たり前。これではコーチとしてやっている意味がない!と怒って現場の人間が辞めるのは当たり前の話だと思われます。明らかに楽天フロントがおかしい。監督・コーチはフロントの意向に従わなければいけないものとはいえ、フロントの介入が甚だしすぎる。現場の人間の裁量権を著しく侵害している。それなら別にプロのコーチでなくても、平社員をコーチにしても変わりませんからね。いつか楽天はサラリーマンコーチとしてフロントの指示を実行するだけのプロ経験のないコーチを導入したりして…。

 まあそんなことはともかくとして、その田代コーチが「そんなふざけたことをする球団にはいられない。ふざけるな!」と言ったかどうかはさておき、辞表を叩きつけて辞めるのは非常に理にかなっているわけです。彼はフロントの指図が行き過ぎているという球団の内情を暴露したわけですが、今回のフロントの指図は球界の慣行というか組織の常識に反することですから、それを暴露しても問題にはならない。楽天が絶対喋るなよ!といったかどうかは知りませんが、守秘義務があるとはいえない。というか、守秘義務の要件が成立しないと言うべきか。

 まあなんであるにせよ、田代コーチは自分のコーチ生命、一身を賭して抗議したわけです。「こんな方針には納得できない・我慢ならない。自分は辞める」としっかり筋を通したわけですね。

 抗議の辞任とはかくあるべきもの。男の生き様として見事と言うべきでしょう(なんか田代コーチを褒める流れになってるな(^ ^;) )。まあ要するにチームの、球団の方針を否定したいならば、間違っているぞ!と声を上げたいのならばきちんと筋を通すべきなんですね。

 

辞表を出さず組織のトップに逆らうのはありえない。不満を暴露するならコーチは辞表を提出すべし

 同じように、今回工藤批判をしているコーチ、不満をペラペラ喋っているコーチ陣は辞めなくてはいけない。「工藤、てめえふざけんなよ」と思っているのならば、そしてそれをメディアの前で喋ったのならば、辞表を突きつけなければいけない。まあ「自分は正しいから自分は辞めない。辞めるのは工藤の方だ!」なんて馬鹿なことを思っているとしたら、最低でも実名を公表して堂々とやらなくてはいけない。

 それなのにおかしなことに、今回コーチ人事で辞表を出した2016年の一軍コーチは一人もいないんですねぇ…。関川コーチがチームスタッフとしてフロント入りしたくらいでしょう。二軍・三軍コーチに配置転換されずにチームを去ったコーチはいない…。

 

人民日報の如き御用新聞と化したスポーツ紙はOBの意見を垂れ流す。そこに評論は存在しない

 球団OBいわくという形式で、工藤批判をする記事は枚挙に暇がないわけですが、特に夕刊フジ・ゲンダイに目立ちますね。何故か東スポはあまり偏った記事を書かないですね。前回も紹介しましたが、【ソフトB】工藤監督への不満呼んだヘッド不在…大激戦で表面化ーこの記事なんかかなりまともな分析だと思います。多分媒体というよりも、スポーツ競技の種類など担当ごとにどういう情報源で書いているかで差があるのでこうなっているんでしょうね。また東スポは違う媒体で九州あたりにスポーツ新聞出しているorそこと同じ記事がそのまま載っているみたいな話を聞いたので、地元の優秀な記者が書いたものが、そのまま本社に送られているということかもしれません。他の球団やセ・リーグについてはともかく、ホークス関係はかなり信用して良いのではないでしょうか?*4

 夕刊フジやゲンダイなどはOBの声をそのまま引用して批判記事を書く=自分の頭で考えて書いていないということですね。隙あらば「求心力の低下」*5というフレーズが出ていましたが、 要するに自分の意見が採用されないからコーチが反発しているわけですね。「求心力の低下」ではなくて、正確には「方針・思想の違う上司と部下の衝突」ですね。

 それを「工藤叩き」でごまかしているバカメディアが存在するということですね。もちろん工藤が正しいこともあれば、コーチが正しいこともあるでしょう。ケースバイケースでどちらか一方ばかりに理があるとは考えづらい。にもかかわらず、自分の頭で考えられないバカメディアは球団OBのインサイド情報に依存しているから、OBの意見垂れ流しになっているわけですね。要するにこういう新聞は人民日報なわけです。工藤VSコーチ・OBの政争に報道機関として積極的に関与しているんですね*6

 

なぜ秋山政権・采配の批判はしなかったのか?自分に都合が悪い時だけ批判の声を上げるから

 現に同じように「無能として叩かれることがあった」秋山監督のときにはこのような記事など出なかったでしょう。秋山采配では打者を固定して起用して(それはそれで理があったわけですが)、そのような硬直的な起用が批判されるのは当然。長所もあれば短所もあるのですから、負けたときには「いい加減少しは監督が動け、自分の決断でエンドランかけて勝負にでろ」と言う声が上がるのが普通。しかしそういう声は記憶する限り一切出なかった。何故か?バカOBにはどういうときに誰を起用して、いつエンドランをかけるべきかなど戦術面がわからないからです。何をすべきか、また何をすべきではないか―戦術や戦略を自分で考えられないから、そういう指摘をしたくても出来ない。というかそもそもわかってすらいないのではないでしょうか。

 また何よりも散々継投面がまずいと指摘してきましたが、その継投面のまずさという声が紙上に一度も上がらなかったではないか!批判すべきポイント・まずい采配はいくらでもあったのに、それを指摘する声はまるでない。継投の重要性がわかっていないこともさながら、コーチの裁量侵害=自己の既得権侵害ということしか念頭にないからでしょう。

 去年、あれだけ戦力があれば誰が監督をやっていても勝てるというような「?」な声がいくつかあって、なんで工藤の凄さがわからないのだろうと訝しんでいましたが、工藤嫌いがマスコミの殆どを締めていたからですね。政敵工藤の手腕を認めたくないから去年ああいうことが盛んに言われていたわけですね。

 言うまでもなく、その「工藤の手腕」は実際には「吉井の手腕」だったわけです。今年のペナントを見てそのことがはっきりした。にもかかわらず、「工藤は馬鹿だよ、あれほど優秀なコーチをせっかく自分が声かけて連れてきたのに、自分のやりたいようにやるために一年でクビきっちゃった。その揚げ句日ハムに情報を持ってかれて、リリーフ管理のノウハウもないから、リリーフ陣を崩壊させて大逆転された。吉井を大事に扱って、吉井コーチのいうことを聞いていれば今年も間違いなく優勝できたよ。現に今年コーチの言うことをちゃんと聞き入れないから終盤チームがごたついたんだし。来年はコーチのいうことをちゃんと聞くことから始めるべきだね。」という意見・指摘はまるでないわけです。何故ないのか?

 それは外様の活躍を認めたくないからですね。外様コーチが優秀という意見を言ってしまえば、自分がコーチ・役職につくチャンス・ポストが減るわけですから、外様コーチが優秀だとは死んでも認めたくない。エゴ丸出しの歪んだ批評なわけです。*7

 というかまあ、人民日報・機関誌に掲載される意見というのはそういうものですから、そういうふうに割り切って読まないといけませんね。彼らは認識能力が低いというよりも(まあでもやっぱり低いんでしょうけど)、自分たちの派閥の権利の主張第一で、強いホークスを作るというのは二の次・三の次なわけです。あるいは「今強いんだから、うまく行っているんだから、これでいいじゃないか」というバブル期の日本経済のような価値観でいるわけですね。*8

 まあどこの球団でもOBとはそういうものなのでしょう。OBのその後をしっかり面倒見て、そういう腐った派閥化を防ぐ、腐乱させないように手を打つという意識・ノウハウを持っている球団というのはありませんから。かくあるのもむべなるかな。そういうことに取り組んでも良いと思うのですけどね。球団は黒字ですし、OBの余生を保証してやればこういうバカなことも減らせると思いますし、セカンドキャリア的にも重要かと思いますね。余談ですが、日ハムなんかはドライにやって、切り捨てまくっているのであれは成功しているとは言えませんね。

 

中畑監督待望論という謎の声

 また、巨人監督に中畑監督待望論というふざけた記事がありました。どうして中畑監督が持ち上げられるのか?と言うと、高橋監督はしゃべらない・PRしないから。しゃべってくれない=情報がない、記事が書きにくいわけですね。どんなバカみたいなことでもリップサービスで相手チームを煽ったり、選手褒めたりとにかく何か言ってくれれば記事を書きやすいわけですね。

 高橋監督は無口で派手なことを何もしないから記事にしにくい。今年確かに高橋監督は目立ったことをせずに、采配で優秀なところもあまり見られなかった。それ故にまあ中畑のほうが良いんじゃないのと言われるとしても、監督がメディア対策という面で失敗しているという要素の方が大きいでしょうね、こういう記事が出るのは。

 あまり優秀なところが見られなかったとはいっても、一年目から監督を代えたほうが良いのではと言われるほどではない。メディアが自分たちの仕事に都合のいい監督・やりやすい監督が良いから、こういう記事が出るという要素を重視すべきでしょう。球団・球界にとって良い野球をする強いチームを作ることよりも、自分たちにとってやりやすい監督を好むというふざけた論理を優先させている。その上で好きな監督・嫌いな監督とジャッジして贔屓して報道する傾向があることを、我々は野球報道を見聞きする上で念頭に置いておかねばなりません。

 はっきり言って中畑監督というのは無能な監督。DeNAの場合は親会社も変わって集客能力を高めることが第一目標だったので、その目的にかなっていたので良かったでしょうけど、長期政権を任せるにふさわしい監督ではなかった。ちょっとやってもらって球団経営が軌道に乗ったらそれで役目はおしまいという監督だった。

 にもかかわらず、去年DeNAが躍進すると、中畑が育てた!みたいなわけのわからないヨイショ記事が出てくる(選手を育てるのは監督ではなくてコーチの仕事なのに)。それは中畑を好きな記者がいるから、そういうふうな話がでてくる。評論ではなく好き嫌い、あるいは仕事のコネで貸し借りみたいなものを作ってやっている結果でしょう。野球報道の世界は相当歪んでいるとみなすべきでしょうね。*9

 

工藤監督はメディア対策というものを一から考えよ

 また工藤批判のために栗山監督と比較して論じるものがありましたが、栗山監督は記者の対応の仕方が上手くてまるで信者のような気分にさせられるから批判的なことが書きにくいと書いていました。采配の善し悪し、上手い下手ではなく、人物が好きか嫌いかで記事を書くという自分たちの痛さを自覚していないからそういうことを平気でかけるのでしょうね。

 腐っているから、スポーツ新聞社ふざけるな!いい加減にしろ!という話で済むことではなくて、そういう業界であることは工藤監督自身昔からそういうものだと知っているはず。だったら、記者対策・マスコミ対策をするべき。落合のように鎖国政策を取るのか、それとも栗山監督のようにたらし込むのかどちらかやらなければいけない。ノムさんのようにリップサービス・書きやすい記事を提供して、記者を味方に付けるでも何でも良いですけどメディア対応を怠ったから、「工藤叩き」が活字となってチームを混乱させた、選手が監督・コーチが揉めているのではないか?と不信感を抱いたという側面は間違いなくあるわけです。その点、しっかり肝に銘じて対策を行うべきでしょう。

 どうも工藤監督は野球(選手育成≒投手育成)だけやってればいいという近視眼的な発想が見えますね。監督業というものは実際の試合の采配以外に色んな仕事・役割があるという多角的側面を見落としている・認識能力に問題があったかもしれませんね。まあ殆どの監督がそういう高い認識をあまり持ち合わせていないといえばそうなんでしょうけどね。「吉井いらね、俺が継投自分で決〜めよっと」みたいに、「監督?試合で勝てば良いんだろ?」くらいの感覚だったのかも…。監督就任前は知性的なので、もっと深いところでいろんなことを多角的に考えている人だと期待していたんですけどね。

 

監督の意見に逆らうコーチがいる以上、ホークスコーチ陣の「粛清」は避けられない

 コーチの意見が正しいこともある。この投手にはこの打者は合わない。過去3〜5年現場で見てきたから知っている。過去の経験から進言して、そしてそのとおりになった。だから言ったじゃないかほらみたことか!―となったケースはいくらでもあったでしょう。工藤監督よりもコーチ歴長い人が多いわけですからね。

 しかし、だからといってそのコーチが正しいことにはならない。どんな馬鹿な上司でも上司は上司。決定権・意志決定の権利は上司・指揮官が持つ。その指揮官に逆らうなら組織を去るしかない。そうでないなら軍隊ならクーデターをするのか、上官反逆罪で打ち首。対立をすれば待っているのはどちらかの破滅しかない。そういうこともわからないのは常識の面で問題がある。

 今回そういう対立をしたのにもかかわらず、辞表を提出しなかった。何回も書きますけど、はっきり言って何を考えているのかわからない。吉井コーチは「監督とコーチが意見が合わない・対立した以上、自分がチームを去るしかない」と出処進退を明らかにした。言うまでもなく吉井は日本一の超優秀な投手コーチですから、吉井がなんで辞めなくちゃいけないのか、栗山ふざけるな!辞めるならお前が辞めろ!となる事案なわけです。でも組織というのはそういうもの、上司と意見が対立したら意見を引っ込めるのは部下、これは当たり前。その方針で成功するも失敗するも責任を負うのは上の立場の人間なんですから、これが当たり前。吉井が辞めるのが正しい。

 仮にその主張が正しくて、工藤が間違っていたとしても辞めるのはコーチ。にもかかわらず二軍・三軍オチという配置転換で今回の人事は終わってしまった。組織としてはあるべきでない異常な人事ですね。ゲンダイのこの記事(2年目の壁” パ大逆転劇の裏に監督の手綱さばき)では、コーチは「選手のためにも、オレがサインを出してやりたいよ。でも、ヘッドコーチでもないから、その権限がない」と嘆いていた―と書かれていました。現役一軍コーチでないとこういうふうには言えないでしょうから、間違いなく一軍コーチ。しかもサインを出す立場ということは打撃コーチでしょうね。藤井・大道のどちらかが、このようなバカなことをマスコミに口外しているということでしょう。

 藤井・藤本コーチは長いことホークスに在籍していて優秀なコーチですけども、こういうことがわからない、わきまえられないコーチであるのならば、残念ですがチームを去ってもらうしかないでしょうね。来年粛清するしかないでしょうね。本当に藤井コーチがこういうことを言ったんでしょうかねぇ…。ホークスOBではなく、その手腕を買われてオリックス・阪急から来た外様コーチなので、同じ外様(工藤監督はOBですけど、ホークスのキャリアは短くて、殆ど外様みたいなものですからね)の工藤監督と対立することは考えにくいのですが、まあ「工藤派」の色はないですからね、藤井さんは。藤井・大道とキャリアを考えるとそういうことを言える強い立場なのは藤井さんっぽいですが、どうなのか…。

 大道コーチはホークスのキャリアが長いとは言えコーチは13年から、さほどコーチ歴があるわけではないので、工藤わかってない!ダメだ!ということはないと思いますけどね…*10。もしそんな状態で監督批判するとしたら相当なものですね。まあ、OBコーチ陣に工藤監督への反発が高まっていて、その結果不満を言いやすい空気になっているということも考えられますけどね。

 

藤井・大道の二軍降格は粛清の一歩手前の人事、鳥越コーチも粛清されるか!?

 もう一人可能性としては鳥越コーチが考えられますね。何故かずーっと一軍コーチとしてホークスにいる鳥越コーチも粛清の対象になるでしょうね。松田や今宮の守備指導に功績があったと言われますけども、ホークスでの選手時代からのキャリアが一番長くて一軍コーチにいるのは彼。工藤政権一年目で影のヘッドコーチ*11と書かれていたように、チーム内での信頼が厚い。ということは裏を返せばOB派の中心人物である可能性がある。

 ただ記事で書いてあるように欲のない、日和見的な人でどちらにもつかず調整役をする人であるという可能性もあります。今回一軍在籍のまま、二軍に落とされなかったということはそういうことの裏返しかもしれません。逆に反発が強いため、鳥越というボスを外すことだけは出来なかったということであれば、来年優勝で工藤政権の地盤固め完成で晴れてようやく粛清が出来るという流れになるでしょう。

 

秋山政権の「森脇粛清」のように工藤政権でもパージ・粛清が必要

 で、まあ今回書きたかった最大のことですが、秋山監督誕生で、ホークスの中心人物・参謀役だったNo2森脇さんが「粛清」されたことがありました。07・08年に総合コーチという役職で秋山政権をスタートさせる下地作りが始まり、09年に秋山政権がスタートした途端、急遽森脇さんはクビになりました。何故か?

 それはチーム・組織に二人のボスは存在し得ないからですね。別に秋山氏が森脇は邪魔だから消してくれと言ったわけでもないと思いますけど、秋山監督もしくはフロントが森脇排除、「森脇外し」を実行するのは当然のことなんですね。森脇さんは優秀なコーチとして知られていて、06年にはWBC王監督がいない際の代行監督を。さらに王さんが手術でチームを離れたときも代行を務めました。代理の肩書であれど、ホークス現場のトップについたことがある森脇さんはチーム内で非常に強い立場にあったわけです。

 なおかつ、森脇さんは選手として1987〜1996年まで在籍し、そのままコーチとして20年以上もチームに在籍している。調べてはいないですけど、おそらくチーム最年長の在籍キャリアだったでしょう。チーム在籍期間も過去のポストもチーム内で突出している。時期後継者の秋山氏と並ぶ存在になっていた。

 作戦面で勉強熱心でノムさんに意見を伺ったり、その手腕を認められて巨人コーチに誘われたり、オリックス・そして中日と渡り歩いているわけですが、優秀なコーチであることは論を待たない。であれば、秋山政権がスタートして、新人監督秋山が作戦面で失敗したらどうなるか?また作戦について森脇さんの意見のほうが悉く的を得ていて、秋山さんはベンチで寝ていて欲しいということになればどうなるか?コーチも選手も秋山監督より森脇さんを頼るようになる。組織上のトップ秋山をこれまでの実績によって実力者森脇が上回ってしまうことになり、組織内に二人のボスが生まれてしまう。秋山の部下であるはずの森脇に実権が集まることになる。秋山は自分のやりたいことをする前に森脇の影を常に感じながらやらなくてはならなくなる。そうなると組織はうまく機能しなくなる。

 いきなりクビにしたことは問題ですが、仮にそうでなかったとしてもいずれ森脇さんが排除されたのは間違いなかったでしょうね。ホークス内で優秀で突出しているからこそ粛清されなければならなかったわけです。個人的に秋山監督よりも森脇さんの方を評価しているのですけども、秋山監督を新監督・トップとしてフロントが選んだ以上、森脇追放は当然の出来事だと思います。

 

フロントは今、工藤のために粛清をするか、工藤を見切るかの選択を迫られている

 かのように、工藤政権を長期政権として位置づけるならば、最低でも秋山監督くらい監督をさせるのならば、工藤政権を機能させるために粛清は不可欠でしょうね。工藤監督は外様のコーチを率いて「工藤派」で組織固めをしていますので、あとはホークス時代の同僚・後輩で周りを固めるなど子飼いで人事を掌握する必要があるでしょうね。

 逆に今年の結果次第で工藤政権をテストする。優勝かAクラスか条件はわかりませんが、成績でダメとなったら次の監督のために今の反工藤派も併用し続ける、更に進んで工藤監督が連れてきたコーチをクビにするということもあるでしょうね。来年の新監督の繋としてやりたければどうぞおやりなさいくらいに冷遇することもありえるでしょう。ホークスのフロントはあまり監督をクビにしたがらないので連続Bクラスや、三年連続優勝を逃すとかでもなければまず切らない気がしますがどうなるでしょうか?

 

※おまけ:既得権のOB権益が存在する以上、王会長が外様の監督を新監督候補に選出しないのは当然だった

 秋山監督の辞任の時、「外様の優秀な監督を連れて来るべきだ。監督を選ぶのにOB、チーム在籍があったことを条件にすべきではない。捕手育成が最大の急務なのだから、古田を選択肢に入れないのはおかしい」と憤っていましたが、このようなOBが顔を聞かせる歪んだ環境・土壌ならば外様の監督を選定するのは土台無理な話ですね。仮に古田監督ということにでもなっていたら、間違いなく外様の古田のやる事になんだかんだ反発したでしょうからね。王さんがチーム在籍経験の有無にこだわったのも今なら理解できますね。

 あともう一つ忘れていたので追記。注意としてコーチがバカなことを考えていてメディアに放言していると指摘してきましたが、本当はもっと穏やかに言葉を選んで言っていた可能性も十分あります。それを面白おかしく煽るようにマスコミが脚色したというパターンも当然ありえます。しかし、そういう場合だったら、途中でマスコミにこれ以上喋ると好き勝手に脚色されるからまずい!と情報が途中で絶えるもの。変わらずそういう声が流れ続けるということは、やはり確信犯or組織の原則を知らないアホとみなして良いでしょう。

アイキャッチ用画像

微差は大差 オリックス・バファローズはなぜ変わったのか

*1:

*2:松坂がタニマチとの付き合いを避けることが出来なくて、飲み歩いて太っているという話がありましたが、タニマチとの関係・付き合いから選手や元選手はココだけの話をサービスでポロッと話す・内情を暴露するという流れがあるんでしょうね。おそらくホークスに限らずどこでもそうでしょう。スポーツ新聞社にも同じ。記者やかつての先輩選手、つまりOBに内情をポロッと話す。タニマチとの付き合いは避けられないでしょうから、口頭注意くらいでいいでしょうけど、少なくともマスコミ関係者への情報漏洩だけは徹底して防がないといけないでしょうね。もちろんマスコミと付き合うな、口を聞くなというのは不可能ですから。喋ってはいけないこと、ココまでは許されるがこれ以上喋ったらアウト。懲罰対象になるということをきっちり選手に説明・教育する。情報管理について方針・基準を明確化しないといけないということですね

*3:本論ではないのでおまけとして中畑・中村ノリ事件について一言コメントとして、書いておきます。中畑監督に批判的な己ですが、これは中畑清が自身の選手起用についてコーチに相談した中村紀洋を追放した論理と同じです。組織の論理を見る限り中畑が正しい。が、これは一面的な話に過ぎず、そもそも選手とのコミュニケーションをきっちり図っておけば問題にならなかった類のレベル。現場のトップとして監督の権限を揮って一選手を追放すべき規律違反とは到底思えない些細なレベル。もう一度話し合うというワンクッションを置けばそれで是非がハッキリした取るに足らない下らないレベルの話。現場のトップである監督としても、駒としての一選手としてもそんなことでいちいち衝突・トラブルレベルに発展するの…?と外部に聞かれたら恥ずかしいレベル。組織としての未熟さ、規律・ルールの未成熟さを感じさせる、新興球団らしいといえばらしい事件。現場トップの監督がおかしいという事件はいくらでもある。駒である選手サイドが正しいということはいくらでもある。問題となるのは、そういうケースにおいて適切に現場が異議を唱えられる機能・回路が存在しているかどうか。現場が無能上司によって限界に来ています。パニックです―そのような異常事態は当然ありうるわけですから、そういう危機を未然に防ぐために下のものの報告をキャッチアップする手段・ルートが必要。そういう組織としてあるべき回路・機能が存在していないという点でDeNAは問題がある組織と言えましょう

*4:ちなみに上の東スポの記事ではヘッド不在で意志調整がうまく図られなかったということが指摘されています。それはそのとおりなのですが、他の媒体フジやゲンダイなどのOB派の意見というのは要するにヘッドをおいてコーチの言うことを聞けということですね。そして何よりもヘッドという役職をおくことで少しでもポストを増やしたいわけです。またそこにつくコーチは当然No2待遇ですから出世にもつながります。待遇良くしろ&出世させろということですね。またゲンダイで秋山監督待望論が出ているなんていうのがありました。これも同じようなことで、工藤新体制を破棄して旧態依然の組織に戻せということですね。投手&捕手が育たず、今将来のための投手育成の時期に入っているのに、吉井がいるならともかく、吉井もいない&ヨシコーチは育てられないのに、どうやって旧来の秋山政権に戻して戦っていく&投手陣を育てていくつもりなのでしょうか?自分たちの意見が通るなら、やりたいように出来るのなら組織が崩壊して弱いチームになっても構わないというのでしょうか?まあ、要するにいま不満を言っているコーチというのはそういうことですね。まあ、ゲンダイさんは「ホークスは金満球団で控えだけで戦っても優勝できる」なんていう球界OBの声を平気で垂れ流す痛さがあるのでそんなこと言ってもしょうがないとは思いますが(^ ^;)

*5:ソフトバンク・工藤監督悩ます一発病 注意喚起も求心力低下? こんなのとかですね。まあミーティングでこういうふうな攻め方・意識・考え方を持てば一発は食らわないからなんて言われても、言われてすぐに出来る選手というのはなかなかいないわけで。説明して何でもかんでもすぐに出来るようになると思い過ぎかもしれませんね。なんでもかんでもやりたがる=何でもかんでも理論・理屈を説明して、そのとおりに実行したら思い通りに結果が出ると思い込んでいるのかも…。人知・人為に頼りすぎている。老荘思想を知らないのかな?

*6:とにかく監督を叩いておけばそれでいいというバカみたいな考えで書いているところが多いので、監督叩きの一種とみなせることも出来ますが、今回の件はそれだけではないと考えるべきだと思います

*7:ですから、ソフトバンク、球史に残るV逸 工藤監督「選手に油断なかった」 (西日本スポーツ) この記事のように、「選手が油断していた」とかいうわけのわからない理由で批判するわけですね。この記事はその批判に対するカウンターで、監督が選手をかばうために選手に油断がなかったと説明しているものですけど、いくつかバカみたいに油断しているから、とか舐めているからとかみたいな精神論でチームの不調を説明する記事が出ていましたからね。サファテ5連投のときは一体何をしていたのですかね?警鐘を鳴らすのは序盤に若手を積極的に使わなかったこととか、もっと前からいくらでもあったと思いますけどね。

*8:SB工藤公康監督 まともに会話するのは飯田哲也コーチぐらいこれは実名ですので無責任なOB曰くの垂れ流し記事とは一線を画すと思うのですけど、意見を述べているのはデス杉本とのあだ名を持つ杉本氏…。しかも投手コーチなのに、なぜ打撃の問題を指摘するのか意味が解らない…。本業の投手コーチとしての継投のまずさを指摘すべきなのに、コーチとの不和を言っている場合じゃないと思うのですが…。まあマシンガン継投で中継ぎ崩壊&破壊させまくる手合いの人のようなので言ってもしょうがないとは思いますが(笑)

*9:参照― 

*10:ホークス→ジャイアンツで同僚としての期間が長いかなと思ったら工藤さんがベイスターズに移ったときにちょうど入れ替わりで巨人だったんですね。それだと大道さんはそこまで工藤さんとコネがあるわけでもなさそうですね。

*11:工藤ホークス “陰のヘッド”は鳥越コーチ

【雑誌】 月刊秘伝 2014年11月号

月刊 秘伝 2014年 11月号 [雑誌]/BABジャパン

歩法特集ですね。
太気拳 岩間統正「“神技"へ至る太気拳歩法」
 蹴りに対する差手の受けを教わった時、怖くて使えない。これは名人にしか使えない技だと思った。しかしトンボの複眼のように全体のスクリーンの中で動きを捉えることで恐怖心を克服することが出来るようになったとか。


中村尚人「エボリューション・ウォーキングと身体覚醒」
 回旋筋腱板・ローテーターカフの機能が崩れることで五十肩が起こる。これにかぎらず様々な不調は歩きに原因がある。胸椎を使って歩いていないから、ここが固まる。猿でも直立を続けると腰椎が前弯する。股関節と膝関節が伸びて人間と同じようになると。振り子=リズム運動、腕を振る事によるリズム運動が行われ、脊椎にはリズム運動を司る機能セントラルパターンジェネレータというものがあると。
 胸椎・胸郭から腕をしっかりと振る必要があるが、上下を反対方向にねじってはいけない。ひねるエネルギーは同じ方向に伝わって、上下半身は相対的に捻られるもの。胸椎は側屈と回旋が同方向に起こる、腰椎はそれが逆方向に起こる。それぞれが逆の動きをして背骨がS字になることでバランスが保たれる。


ヨーガ行者 成瀬雅春「ヒマラヤと雑踏の歩き方」
 瞑想の度に発見があるように、歩く度に発見がある。転落の危険があるヒマラヤでは指の感度を上げて歩く。足が触れた瞬間に危険かどうかわからないといけない。
 基本は親指意識だが、他の指を意識して歩くことも出来る。理想はその時どきの身体の向き、進行方向、スピードなどによって変わる。一円玉ひとつ分のズレが出ないように歩くこと。
 方向転換の際の移動足、誘導足による九十度での進行方向の転換。大きく回ってカーブするのは良くないのだとか。親指の付け根で着地し、親指の先で地面をつかむ。目の前に十人歩いている人がいたら、その人の動線を読みきって、自分が歩くラインを設定してその通りに歩けるようにすること。
 ヨーガの歩法、ルンゴム。1日160キロ歩けたとか。脱力して陸上の三段跳びのように、ゴムマリがポーンポーンと弾むように歩く。意識を先行させること。先行させた意識に身体が吸い寄せられるようになる。マラソンできつくなってから呼吸を思い出すのではなく、先に呼吸を意識して対処しておくと苦しむことがなくなる。潜在意識の対処が働くのだと。左右の鼻で均等に呼吸しているわけではない、それに気づくために片鼻ずつ呼吸をすることで実感しておく。それが潜在意識に効いてくると。


小用茂夫「『力の通り路』に乗って歩く刀禅“一線行"」
 身体の基盤・密度を上げていくというのは面白そうですね。まあでも読んだだけではいまいちわからない。単著で
刀禅の本出てないかな~とググったんですけど、出てきませんでしたね。あらゆるものは循環がポイントなんですかね、やはり。意識を飛ばすこと、そしてそれが還ってくることというのをテーマになにかやってみようかなぁ~。
 

松田隆智師範一周忌特別企画 武田鉄矢インタビュー “我が師、松田先生"を偲んで
 武田鉄矢さんが松田さん及びカンフーの話をされています。武田鉄矢さんという人は歌手でありながら、役者として大成された方ですけど、本当に素晴らしい人だなぁということが伝わりますよね、このインタビュー読んでも。


短期集中連載開始! 沖縄拳法大平道場 西原治 沖縄拳法に伝わる “手(ティ)" の極意 第1回 “後手の先"
 同調して相手が動く!という意を読んで、意識と行動の間を抑える話ですね。いわゆる枕を抑えることですね。0.2秒じゃなくて、0.3秒になってますね。なんででしょうね?これ自体はまあ柳川先生など諸先生がやってらっしゃるので、珍しい話ではないかもしれませんが、ではどうやってそれが出来る様になるか?練習・訓練方法が書いてあるのがいいですね。
 相手の意識を感じること、力まないのが入った後倒すコツ。必ずしも対人稽古である必要ない。意識を感じるイメージトレーニングで1日1000回くらいやって身につけたと。門下生も2~5年くらいこれをやって身につけたとのこと。面白そうだなぁ。すごい勉強になりそう。


龍村修(沖ヨガ)×藤本靖(ロルフィング) 東洋と西洋の身体技法と哲学 丹田の 「役割」 とその“在処"
 首がこる人は頭・脳に力が入っている。肛門を締めることで力を腹・丹田に落とす。こうすることで首が楽になる。また肛門を締める時に表情まで固くなってはダメ。笑顔・リラックスでないといけない。大声で笑うことで丹田に力が入る。東洋では身体・呼吸・心の三つをあわせて行う「三密」が基本。ヨガのスクワット天突きは三密で行う、スクワットとは疲れ方がまるで違う。


平上信行 時代考証の裏表「日本武道の学術研究書における歴史認識の誤謬を糾す」
 剣術が一般的で、剣道はあまり普及していなかったという話が誤りであるという指摘。道場は各種道場の略語ではなく、仏教道場の略・転用。
 心の一方の話があって、不動明王やゴルゴーン一族の女(メデューサの元ネタでしたっけ?)など、この金縛りの術を用いていたと解釈していますね。みんな同じ技術だろうと。


ゆる体操には“裏"の存在があった! 高岡英夫の漢語由流体操「下腿膝擦法講座受講生座談会〈後編〉」
 一般の人がやっている
由流体操は上達すれば30倍の効果・リターンが生まれるものに出来る。天才・準天才以外がセンター・地芯を理解するのに必要なのが、下腿膝擦法。同じような補助が肋骨使い・肘抜き・肩抜きに必要とありますが、どれなんでしょうね。個人的に肩をグルグル回すやつで肋骨全然動くようにならないですし、使えるようになる気がまるでしないんですけどね。


注目連載第三回! 大宮司古神道や武術に通じる“霊術"の世界を明かす! 霊術講座 「百人力法と大東流合気の投げ技のコツ 」
 
百人力法、緩みをなくして引っ張るのがコツになるのは前回と同じ。5人しっかり持っているのを確認する。一番後ろの人に円をかいて自分の気を向けて、順番に人に伝わって自分に還ってくるような感覚でやるとうまくいく。前回と同じ舟漕ぎ運動で、前方下へ急激に引っ張ること。
 下方に向けるのは「の」之字手刀投げと同じ、下方に崩されたのを戻そうとするのを利用して投げる。擦過後方投げもこの応用。別の人の補助を利用して、左右の指二本で人を持ち上げたり(体重は自分ではなく補助の人の掌にかかる)、自分の背中を触らせることで、片手で他人を持ち上げる(体重・重みが分散する)などというものがある。武田惣角が紙縒りを使って撞木という技の変形を大男にかけたことがあるが、これも緩みをなくして引っ張って相手を浮かせれば難しいことではないとか。


安田洋介 太極遊戯 「姿勢を規矩とした太極拳の動作」
 男女の骨格・筋肉の違いによって教え方・遣り方を変えないといけないというのは個人的に気になっていたところなので、こういうの良いと思いました。男女では開脚とかで差が出ますからね。たまに凄いX脚の人もいますし、男女で身体の差は馬鹿にできないと個人的には深く思うところ。女性が男と同じことやっていたら不利になるに決まってますからね、自ずと女性独自の方法を考え出さないといけませんし。女性は関節が柔らかく伸びやすいので痛めることがあると。


最古参 アレクサンダー・アンドレイチェンコフ セミナーレポート ハード・デイズ・システマ!
 これまでのシステマの人と違い、ハードなセミナーを行うという話。スティックを両手で掴んで上にあげて歩く。足裏の感覚を鍛える。全員肩を組んでの集団スクワット、バランスが崩れる&集団になると大変ということがわかる。打つのに行動を止めてはならない。打つと動くを同時にこなせるようになること。国に認められるまではミカエルのシステマも、最初は10人くらいしかいなかったとか。


日野晃 武道者徒歩記
 医療関係者が人と向き合うのが苦手だという話。ものすごい不思議なこと&発想。じゃあ、それでどうやって治療をするのか、人と向き合うということと無関係に職業が存在していると思っているのか?という話。


松原秀樹 100%動ききるための調整術「神経のはなし」
 腰仙関節を開くと腰痛が治る・坐骨神経痛がなくなる。そうか座るから坐骨神経痛になって、繋がっている膝が固まるのか。今更知りました。坐骨神経は直径1センチにもなる大きい物。しびれは神経の酸欠。椎間板が狭まることで神経が圧迫される。それをゆるめてやらないといけない。脊椎・胸椎・腰椎のゆるめ方が書いてありますね。脊椎の穴・仙骨の穴に神経が通っているというのはそういえば知りませんでした。へぇ、そういう構造になっているのか、なるほどなるほど。

身体の話(2016/05〜07?)

 もはやいつ書いたか思い出せない身体の気づきメモ集。多分秘伝6月くらいに読んで思いついたことだと思います。

 ●口と鼻・耳が繋がっている話。秘伝で松原さんの読んで気になった、気づいた話だったか忘れましたが、口をリラックスさせることで鼻・耳がリラックスするという話。口というかかみ合わせですね。歯がきれいな噛み合わせになっていないと、顔の下半分を中心にリラックスできない≒固まるということなのかもしれません。噛み合わせもそうですし、生まれつき鼻炎で鼻が悪いので、そんなことが気になりました。

 で、実際にどうやるのかという話。口をリラックスさせるには実際に噛むのが一番いい。歌うトレーニング、ボイストレーニングですかね。あれで割り箸をくわえることで口を開く(喉を開くんだっけか?)というのがありますがあれをやって、口をリラックスさせる。アゴから鼻・耳にかけてリラックスさせる。割り箸のような硬い素材はあんまりよくないですね。かみやすくて柔らかいもののほうが良いですね。


 ●稲葉スイングプロ野球知らないとわかりにくいのですが、元日ハムファイターズの稲葉選手のスイングは振ったあとの「返し」があります。バットを振るより戻すほうが早いように見えるんですね。で、その稲葉スイングを真似する。腕を振ることよりも戻すことを意識するわけです。強く振るよりも強く戻すことを意識したほうがスイングがシャープになるという感覚が稲葉さんにあるのでしょうか? 

 まあそんなことは知る由もありませんが、バットのように上に構えるのではなく腹辺りから、またはだらんと下にあるがままおいといてもいいでしょう。そこから上に向けて振り切る。そして自然に「返し」を起こす。腕を振り切ると自分の意志にかかわらず素早く腕が返ってくる。勝手に腕が動くところがあるわけですね。そういう自動操作モードは自己の意志が介在しないので、読まれない動きにつながると思います。落下以外にも自動的に動くところがあるという気づきですね。 

 
 ●胸と背中の互い違いのリンク。右で突く時、左の胸と右の背中・肩甲骨がリンクする。左はそれぞれ左右逆で繋がる。左右の部位が互い違いに繋がっている、技を使うときに大事だという話は日野さんがそういえば本に書いていた気がします。脇・横肚・腰でも繋がっていくのかも。日野さんがそういうふうに繋げると力を入れずとも相手が勝手に倒れるという話をしていた記憶があるので。


 ●脚を内側に折る動き・意識。昔、書いた記憶がありますが、どうだったかな。脚、大腿骨頭から大転子へと外へ斜めに向かって、今度は膝に内側に向かって斜めに骨はある。脚をただの棒のような意識では骨をうまく使えない。足首・膝・大転子、それらの関節を外から内に波のような力がかかっているような意識を持つことでうまく力が抜ける。 

 ちょっと言葉にするのが難しいんだけども、「折り」たいんですよね。折ると言われるとベキッとか、ボキッというイメージになるかもしれないんですけど、ある程度折り曲がるという感覚があって、そうすることでベストな姿勢になるという感覚がありますね。ただ、これはちょっとまだまだ発展段階になりそうな話で結論に至らない。言葉にしにくい気づきですね。
 

 ●側臥で体の中心・内部をゆるめる。寝転がって身体をゆるめるということを結構やるのだが、リラックス・ほぐす方法として個人的に結構気に入っている。うつ伏せでよくやるが、何気なく側臥の状態のとき、半身が良いフリーじょうたいになることがあって、やってみた。普段体の中心内部を緩めることが出来ない分、こういうアプローチもなかなかいいのではないか?と思ったので、メモ。 

 しかしうつ伏せでもそうなのだが、ゆるめる方法・やり方として書かかれていないということは、身体意識としての軸・センターをうまく形成する方法としては勧められないやり方なのだろう。実際横向きになれば自然と頭部と下半身は垂れて軸・体感は歪まざるを得ないし。

【2016工藤采配批判⑤】 指揮官としての人格、自身とチームの認識のズレの問題

工藤批判は今回が最終回です。長々5回もよく書いたもんですな(笑)。

【2016工藤采配批判①】 元エース投手故のリード・守備軽視≒攻撃重視

【2016工藤采配批判②】 李大浩の穴は存在しない。李大浩がいる前提の野球をしているだけ

【2016工藤采配批判1.5】 見当外れな打順批判、固定的起用は好ましくない

【2016工藤采配批判③】 歴史的V逸の最大の原因は「継投」にあり

【2016工藤采配批判④】 「継投」概念の欠如が生んだメイ工藤ラマ

 

【目次】

 

 

対鷹包囲網に序盤から全力でぶつかるビジョンのなさ

 そもそも話になりますが、今年はリーグそして日本一でも三連覇がかかっていました。戦前から断トツの優勝候補でド本命でした。それ故に、各チームはホークスを徹底マークする体制・対鷹包囲網を引くシーズンになりました。そのような集中マークを受けるシーズンで、序盤に勝ちを積み重ねてはいけない。

 序盤は借金せずに3位あたりをうろうろしていればいい。そうしておけばロッテ・日ハム、今年の日ハムもやはり終盤勝負なので西武あたりでもいいです。ロッテ・西武が序盤首位争いをしていれば、去年のように、鷹よりも1・2位のチームに目をつけざるを得なくなる。

 いくら鷹が本命とは言え、現状首位を走っているチームを無視してローテを組むのはどうなのだろうか?ということに必ずなってくる。どのチームも自分たちが優勝したいのですから、何処かで欲が出て必ず包囲網に隙が出来る。そこをついて一気に7月あたりに勝ちを積み重ねてぶっちぎりで優勝する。本来そういう方針を取るべきでした。

 去年はまさにそうで、それと同じ方針・ペースでよかった。というか現代野球の制度、CSが終盤にある以上、それ以外ありえない。今年のように序盤で下手したら6月にマジックが点灯してしまうぞ!というペースで戦えば、Bクラスのチームは3位狙いに切り替えるどころか、「今年も鷹か…。来年のために少しでも鷹を苦しめて嫌な印象を与えよう」となって、来年のチーム作りと対鷹だけに絞って戦うようになってしまう。

 前半ぶっちぎっていたとき、サファテ5連投もあって、不安が3割くらいあって「これ一年持つのか…?」と心配していました。それでも優秀な監督・コーチだと信じ切っていたので残り7割で、「まあ工藤・ヨシのやることだし、計算の目処が立っているんだろう」と楽観していました。ところが実際は言うまでもなく、そういう一年の戦い方を知らない監督だったという結果になりました。

エース級からはヒットを打つのが難しくなる

 包囲網の結果として、エース級をぶつけてくる。ホークスは真っ直ぐの早い投手が得意。故にエースをぶつけられてもそこまで困ることはない。しかし西・金子、則本、岸、涌井・石川、大谷・有原といったエース級の投手相手からはヒットを打つのが難しくなる。打線が去年より打てなくなるわけですね。*1また、エースのいい球にタイミングを合わせれば、次の日の投手とのタイミングの取り方が変わるなど微妙な影響もあったのではないでしょうか?

 バッターというのは一流からはなかなか打てない。二流・三流から数字を稼ぐもの。一流バッターでもこれは同じですね。一流の中でも良いバッターや超一流と言われる特別な打者は何が違うかと言われれば、そういう一流のいい球を大事なところで打つこと。大事なところで打てるからそう呼ばれるわけですね。

 デホの穴論でおかしいと思うのは、そら大砲ですし打率も残しますけど、良いところでそんなに打つわけではない。得点圏打率0.255のバッターですしね。今年の包囲網でエース級と50試合ぶつかっている。3分の1以上エースとの対決が続いていますので、松田のように年齢上数字を落とすものとみなすのが自然でしょう。まあいたらもうちょっと打線が切れずに繋がって、勝てたというのはあるでしょうけど、どう見ても今年の継投のまずさと比較すれば決定的な要因ではないでしょうね。

大きかった柳田の穴

 デホの穴じゃなくて、今年一番打線で痛かったのは柳田の穴なんですよ。レギュラーでほぼメインと言える5人のスタメンの前年度の成績と今年度の成績を比較してみると次のようになります。順に打順・出塁率得点圏打率です。*2

 柳田363、469、419→306、466、314
 中村晃300、386、375→287、416、278
 松田287、357、303→259、325、271
 内川284、340、299→304、345、302
 今宮228、279、255→245、312、227

 この五人で文句なしに数字を前年度よりも伸ばしたのは唯一内川だけと言っていいでしょう。HRも11から18本に伸ばしていますしね。今シーズンはチャンスをゲッツーで潰した印象が強いですが、去年の併殺24と今年の27とあまり変わっていないんですね。それだけ併殺を打っているイメージが強いということは、今年は内川に相当負担がかかったシーズンであったとも言えるでしょう。

 内川は去年苦したんだ、あまり良くなかった。前年よくなかった選手というのは相手チームがこれ以上マークしようがないですから、数字を上げやすいですね。どうしてやられたのか?対策を練って新しい能力を身に着けて挑む、また発想・スタイルを変えるなどした場合、相手はどう対処したら良いか予想がつきませんからね。

 同じく今宮もそれまで打っていないだけに相手は対策をあまり練らなかったために去年よりも数字を残すことができた。ただ、得点圏打率が落ちてしまった…。柳田・晃が一割近く数字を落としてしまったことを見てもわかるように、今年は得点圏で打てなかった。デホのプレッシャーが減った分という理由も然る事ながら、なによりエース級のピッチャーから点をもぎ取るあと一打は難しくなるからでしょうね。エースはそういうところで打たれない球を投げられるからこそエースなわけですからね。

 柳田が打率を6分落としていることからわかるように、300打ってるバッターが240のバッターになってしまうわけですから、打線が繋がらなくなるのは当たり前ですね。しかも去年は前半380台を打っていて、4割打つんじゃないか?というくらいの数字を残していました。その柳田が今年は序盤柳田シフトに苦しんで3割行ってなかったのですからね。ファーボールで繋いでいたとは言え、柳田の穴は相当大きかったと見るべきでしょう。

対鷹包囲網の効果アリ

 去年よりも数字が残せないということは必ずしも打てていない・状態が落ちているということではないわけです。相手が良いという理由に基づくわけですから。しかし、打線としては簡単にヒットが出ない分、去年以上に打てなくなっているという印象が強くなって、確実にプレッシャーになった。鷹包囲網の効果が見事成功したわけですね。

 これで二線級の投手が鷹と対戦することになっても、今年の鷹打線は打っていないというイメージで去年よりも楽に挑めたことに繋がったでしょうね。先発はスコアボードの名前と打率でどうやって対処しようかを計算する。数字が去年より低ければ、挑む前の心境はまるで違ったでしょうから。

 連敗した7月か8月ころには確実に打線が後ろ向きになってしまった。一年のうち、必ずどこかで不振に陥るスランプなときが来る。去年の序盤でも同じように全く打てずに困った時期がありました。しかし、そういう辛い時期でも、負け越さないようにしのぐことこそ重要。それが出来る守備力のあるチームこそがペナントを制することが出来るわけですから。打てないからあーだこーだというのは去年の4月の大スランプ期を見ればわかるように大した問題ではない。悪い時をいかに凌ぐかという問題でしかないわけですから。

 次回書きたいと思いますが、そういう背景があったにすぎない。打てない理由が明確にあったのにもかかわらず、工藤が打順をいじるからという采配の問題にすり替えたのは相当問題があると言えるでしょう。

工藤監督はコミュニケーション能力に問題あり

 で、次は、去年工藤名将論で彼を持ち上げたその反省をしたいと思います。彼を持ち上げた理由のひとつに選手とのコミュニケーションを取るのがうまい、対話を重視する人だから、彼は素晴らしいともち上げたのですが、最近それと反する記事が出てきました。どうもそのコミュニケーション能力も高くないようです。少なくともチームでうまくやれていない。コーチ・選手と溝がある様子。

 己が彼は対話を重視してうまくコミュニケーションを取る人だろうと思ったのは、Getsportsで日ハムの組織論を取り上げる企画で、ハムのフロントの誰かのインタビューのような対談形式で司会の南原さんとチーム運営・選手育成方針を聞いていた。そこで選手との対話を重視して、方針を決める、コーチの意思疎通を徹底するというような話に感銘を受けていたんですね。

 日ハムが素晴らしい組織でファイターズを運営しているのは周知の事実、そのファイターズのシステムを知って学んで同じやり方を取り入れるに決まっていると思っていたんですね。ところが、2・3軍の選手に監督が勝手にアドバイスして、コーチとの言うことが違って選手が混乱するという話が出てきていました…。選手が混乱しないように首脳陣が話し合って意思を統一するという話を聞いていて感心していたのは一体何だったのか…。

 またダルビッシュ田中将大との報ステでの対談で、年下の選手にも拘らず、非常に敬意を払って丁寧な口調で接していた。なので、そういう丁寧な態度を取る気遣いをする性格だと思っていました。

 ところが、おそらく東浜だと思いますが、選手に対して椅子を蹴っ飛ばして「野球舐めてんじゃねーぞ」と叱り飛ばす。ときに厳しい態度は必要になると思いますが、こういう逸話を聞くと、おそらく彼は一定の成績を残した選手・自分が認める技術を持った内川・松田のような選手以外は態度を変える、相対的な話になるのでしょうけど、一流以外は軽く扱うのでしょう。野球界ではむしろ当たり前の態度かもしれませんけどね。

自己主張ばかりでは選手は反発する、特に実績あるベテランは

 また摂津など自分の方針に従わない選手を使わないなど、自分の持論に非常にこだわる。自己主張が非常に強い。摂津はエースとしての自負がある。そういう選手を頭ごなしにアレしろ、コレしろと言っても自分の調整方法があると言って聞かないことも当然ある。そういうときにうまくコミュニケーションを取れない。なんだと!となってしまう。細川然り持論のある選手とうまくやれない性格。

 ダイエー時代、缶コーヒーを飲みながら食事管理を語って呆れられたと言われています。いろんなことを研究して知識が豊富なだけに自己主張が強い、持論を一方的に語りたがる俺様タイプなんでしょう。

 受け入れる人・共鳴する人は興味を持って聞いてくれるでしょうが、話を聞くタイプでなかったり、自分とは思想・スタイルが違うと反発する人には、一方的に持論を語るうっとおしくい先輩として嫌われていたと思われます*3。本人もあれこれやかましく言ったから嫌われていただろうと書いているくらいですしね。

組織論・役割の理解の欠如

 ダイエー時代は「兄貴分」「先輩」としていろいろ選手にレクチャーしていたのでしょうけど、それは王監督という後ろだてがあってのこと。実際のコーチよりも、現役でやっている先輩選手のほうがアドバイスが参考になると言われる。最高の生きた手本となって有り難られるというので、そのときはそれでよかったのでしょう。

 しかし今は監督という立場。その監督が「師匠」や「ティーチャー」となって選手にあれこれ口出しするというのは本来の役目ではない。選手に指導をするのはコーチだったり、年上の選手。監督は指揮を取る役割であって、選手を育てるのが仕事ではない。役割を無視した越権行為をすれば組織が崩壊する、機能しなくなるのは当たり前でしょう。*4


工藤は立場の強い監督だがチームはそれを受け入れない

 敗戦処理の投手がエースとして振る舞ったらどうなるか?当然チーム内からあいつは何様のつもりだ!となるでしょう。工藤は立場の弱い「中継ぎ監督」ではありません。工藤監督続投へ 球団社長明言 長期政権も示唆 - ホークスニュース - 西日本新聞にあるように、ホークスという球団は、長期政権を基本とした球団で、ちょっと結果が出ないからといって監督をコロコロ変えることはしないチームです。

 工藤は立場の弱い雇われ経営者というわけではなく、立場が安定している監督です。今後も監督して長期政権を築く可能性が高い。「つなぎの監督」で2〜3年したら消えていなくなってしまう監督ではない。であるならば、強権を揮っても良さそうなものですが、大事なのはホークスが弱小球団ではないこと。

 個人的には足らないところが目につくのですが、相対的な評価ではパ・リーグNPB屈指の球団。ファイターズとホークスがNPBナンバーワンツーを争っているのが昨今の球界情勢図ですからね。チーム関係者も選手も自分たちは「強いチーム」「優れた組織」だと思いこんでいる。

 宮本さんが新刊で、経営破綻寸前のダメな組織は生き残りをかけて変化をためらわない。指導されればそれを素直に聞き入れる。しかし、そういう危機感のないチームはそういう意見をなかなか聞き入れないということを書いていました。

 それと似たようなことで、ホークスは変革のために優秀な指導者工藤を招聘してチームを一から作り直す!というような危機感を持っているわけではない。工藤の手腕というものを多少は期待しているくらいの意識でいる人が殆ど。

 そういう意識で工藤監督を受け止めているのに、「俺様」となってあれこれ指図をしたらどうなるか?いくら言ってることが正しくても、言われた方はカチンとくるし、「何だ、アイツ!いきなりやってきて!」ということになる。

工藤改革をすすめる・強権を発揮するには2年では早すぎる

 一年目の去年はかって知ったるどころか何も知らないので気を使っていたが、今年は去年優勝したしもうトップとして振る舞っていいだろうと思っているかもしれません。しかし組織というのは旧組織から新組織に移行するまでに十分に時間をかけて、自派閥がためをする。そしてその後に改革を始めるというのがセオリー。自派閥もろくに固まっていな時期・二年目からやりたい放題やろうというのは無理がある。

 本人の意識としては優勝・日本一になって監督としての適性を示したから、これで十分だろう。もう遠慮せずに好き放題やるぞ!選手にも厳しく接して、しごくぞ!と思っているのかもしれませんけど、一年結果を残したくらいで好き放題やるのは早すぎる。最低でも三年やって数字・結果を残さないで改革をやるのは反発を招くに決まっている。*5

問題はコーチ未経験ではなく、社会人経験の欠如

 コーチ経験がないよりはあったほうが良かったんでしょうが、その経験云々よりも組織を動かすトップとしてのノウハウがなかったということのほうが問題でしょう。トップの資質、性格の問題も然る事ながら、組織人として組織を動かしたことがないという方がよほど問題だったんでしょうね。

 落合さんは社会人経験があって、会社の仕事を一応は目にしていた。ルールを知っていた。ところが工藤は高校生即プロでそういうキャリアがない。監督を目指してそういう要素が必要だと現地に行って組織に入って勉強をしたとかも聞きませんからね。今工藤公康が直面しているのはそういう問題と言えるでしょう。

何でもかんでもやりたがる・口出しする監督・トップは組織を機能不全に追いやる

 工藤監督は自分の野球論に自負を持っている。故に何でもかんでも口を出したがる、やりたがるわけですね。落合氏が著書で「何でもかんでも口出しする監督ほど失敗した」と書いているように、すべてを自分の意志で組織を動かそうとすれば失敗するのは必然ですね。非上場企業の規模の小さいワンマン社長ならそれでいいでしょうけど、組織が大きくなればなるほど、ルール・法で組織運営しなければ失敗するのは必然。そのような当たり前のことが一般常識となっていないのが今のNPBの現状なのでしょうね。

工藤監督はやるべきではないことをやってしまう監督

 秋山監督は「やるべきことをやらない監督」というのが拙評価でしたが、工藤監督は「やるべきことをやる。ただしやるべきことではない余計なこともやる監督」という評価になりましたね、今年を見る限り。才子才に倒れる、溺れるという言葉がよく当てはまるタイプの監督だと言えましょう。

 今年の逆転負けで評価が急激に落ちていますけど、前年の圧倒的な優勝を導いた吉井コーチ、優秀なコーチに声かけて連れてきたのは彼ですからね。そこを無視してはいけないでしょう。

 ポイントはその優秀なコーチを一年で本人が望まない人事をすることで、チームから離れてしまう原因を作ってしまったこと。決定的な根拠はありませんが、おそらく今年の継投を見ると工藤監督は次のように考えたと思います。

 工藤「7回から森使いたいんだけど、いける?」
 吉井「今日は無理です、今日行けるのは仁保と飯田だけです」
 工藤「え?だめなの、いけないの?ヨシさん、継投はコレが普通なの?もっと五十嵐とか投げさせられないものなの?」
 佐藤「もっと行けると思いますよ。でも吉井はウンと言わないでしょうね…」
 工藤「(リリーフ陣に)もっと投げられない?もっと投げたくないの?」
 サファテなどリリーフ陣「まだ投げられますよ、もうちょっと投げたいですね」
 工藤「なんだ、いけるじゃん。もっとリリーフ使えたら楽に勝てるし、もっと勝てたじゃん。来年から俺が継投きーめよっと」

 まあ、こんな感じで吉井さんの三軍行きを決めたと思われます。ヨシコーチ自身、継投の概念がない人なので、吉井は一軍に必要ですよ!まずいですよ!と言うどころか、配置転換に賛同したでしょうね。そもそも配置転換について意見を聞かれなかったかもしれませんけどね。いずれにせよ、ヨシコーチが吉井さんを引き留めるよう動いたということは考えられないでしょう。吉井さんが言ってもわからない人がいることはヨシコーチから学んだというくらいなので関係が良好とは思えませんしね。*6

 今年の敗戦を考えれば、継投というものが、ペナントをいかに左右するか骨身にしみてわかったはずです。秋山監督はまるで方針を変えることなく、「学習」しなかった監督でしたが、工藤監督はまだ2年目。3年目から失敗を糧に「学習」する余地があります。彼が名将として再生することを願うのみですね。*7

 工藤監督は「悪くなった調子や雰囲気をどうするかを考えたつもりだったけど、それを取り戻すことができなかった」と振り返ったといいますが、投手の状態を取り戻すために目先の敗戦覚悟で休ませるという指揮官としては怖いが、先を見据えた決断が出来なかった。そういう計算を出来るかどうか、選手の怪我についても怪我しないように管理を口酸っぱくして説いたといいますが、そんなことは誰でもどこの球団でもやっているわけで、当たり前のことでしょう。怪我防止のためにいかに休ませてコンディションの維持を図るかが指揮官の腕の見せ所。それをやらなかったなら、いかにコンディションのことに詳しくてもなんの意味もありません。

 ①「継投」コンディション管理、来シーズンはこの二つのテーマが彼の課題になるでしょう。

 おまけとして、大谷が今年の逆転優勝のポイントを、7月3日のソフトバンク戦、1番投手で先頭打者弾の試合。3連勝したことで「よし、いける」という雰囲気になったということを言っていました。大事なカードで三連敗しないという最低限の計算もしっかり出来るようにすること。まあ特定のチームにとらわれずに2勝1敗すれば大丈夫と言いながら、全然出来なかったので、同じことをするとは思えませんが。ロッテと日ハム対策を徹底すること、特に吉井の優秀性がわかったなら吉井対策ですね。そのことをしっかりやるべきでしょう。

アイキャッチ用画像

GET SPORTS アルバム

 

*1:ちなみに先発回数:西・金子7則本7、岸5、涌井8・石川4、大谷4・有原8ここでは特筆しませんでしたが後で使うので、高梨4。金子・岸など今年はよくありませんでしたけど、それでもエース級と当たるというのは嫌なもの。なかなかヒット打てませんからね。ホークスは計50試合もエース級とあたってたわけですね

*2:打点やHR、OPSなど入れてもいいですがそこまで踏み込む必要もないので。要するに前年比マークにあっていかに数字を落としたかということが伝わればいいので

*3:また何より野球選手の中には頭が悪くて簡単なことでも理解できないというタイプがいる。そういう選手に対する扱い方の引き出しがない気がします

*4:打線をいじる云々の批判がありますけど、監督は選手起用の権限がある。打線・打順を決める権限があるのですから、コロコロいじるタイプの監督が就任した以上、それに文句をいうのは筋違い・越権行為です。そんなこともわからないコーチがいるというのは、何でもかんでも口出しする工藤監督と同じく、組織の問題として注意すべきことでしょう。王代表は呼びつけて叱り飛ばす、最悪クビにするべき事案ですね、これは。

*5:ホークス工藤監督「僕の力不足」 今季象徴する大逆転負け (西日本スポーツ)  嫌われてもいいから若手に厳しく接する。「情」は挟まない…。という方針だったと書いてありますが、一年目から若手にそういう態度だったんですね…。結果を残し続ければ、人間としてどれだけ嫌われても選手はついてくるでしょう、それこそヤクルトでの野村監督のように。が、結果を出さなければ「なんだ、あいつ!普段あれだけ言ってるくせに、自分は下手な采配で負けているじゃないか。あんたのいうとおりやってるのにチームは勝ててないじゃないか!」と、口だけ無能上司扱いされる。「嫌われ役」と「嫌われる事」は違う。ましてや監督・コーチ、先輩選手と立場が変わればなおさら。その違いがわかってない。自著で西武の渡辺監督や秋山前監督は、二軍から積み上げた結果が一軍の成績に反映されていると書いていましたが、自分はその若手選手の下積み時代に一緒に練習・指導をして積み上げた時間がないこと=選手との信頼がないことを忘れているのでしょうか?

*6:大谷の完成度は最大「10」なら「1」 吉井コーチが明かす日本ハムの舞台裏 (1/2ページ) - スポーツ - ZAKZAK 規定投球回到達は156回で11勝の有原だけ。規定回到達が1人で優勝したのは、01年の近鉄以来だとか。それでも今年のファイターズの投手陣はホークスを苦しめた高梨に、バース・加藤、増井の先発転向の大成功に、序盤ボーク云々でキレていたマーティンが抑えとして見事に機能した。マーティンの故障後も吉川・谷元らでやりくりして宮西も29試合連続無失点でリーグ最多の42HP。吉井コーチの手腕はすごすぎですね。リンクには書いてありませんでしたが、週刊現代の記事で、元々増井は先発をやらせるつもりだったようですね。ところがスタミナ云々の事情で長いイニングを投げさせられなかったから、リリーフでいずれ先発で使うつもりだったようですね。監督に言われたときがちょうど渡りに船だったとか。前からハムにいたからこそなんでしょうが、コマが揃っていないチームでどうなるのか、ぜひ他のチームで吉井さんが投手陣を整備できるのか見てみたいなぁ。

*7:この東スポの記事【ソフトB】工藤監督 屈辱V逸の原因はどこにあったのかもデホの穴や打線の組み換えや焦りという指摘で「?」がありますが、最後にきちんと失敗の本質を書いていますね。
 「終盤に救援陣が崩壊した。リリーフだけで前年比の2倍となる21敗を喫する事態に陥った。予兆はあった。打線が爆発力を欠く中で序盤は接戦の勝ちが多く、救援陣がフル回転。加えて起用する投手に関してベンチとブルペンの連携がうまくいかず、登板数だけでなくブルペンで肩をつくるための球数が前年より大幅に増えた」これにつきますね。
 ※追記、またフルカウント「Full-count」にこんな指摘もありましたこれに付きますね。V3を逃したソフトバンクの誤算…盤石なはずの救援陣で抱えた借金「9」 に、指摘されているように、分業制が成立した現代野球においては強いチームはリリーフで貯金を作るもの。リリーフが崩壊するチームがペナントを制することは相当難しい。秋山政権時代には使い過ぎで終盤毎回調子を落としていましたが、今年は八月の時点、中盤くらいに崩壊が始まっていましたからね。そんな早い時期にリリーフ崩壊したらボロボロに負けるに決まってますよ。むしろ終盤よく五分に近い状態で乗り切れたなと思いましたからね。
 まあフルカウントも、こういう記事→V3を逃したホークスの誤算…埋められなかった李大浩の穴こういうことを書いているわけですがね。どうしてどこの媒体もこう「打てない」ことに原因を求めたがるのでしょうかね?そりゃ李大浩が抜けて得点力は落ちたでしょうけど、リリーフのほうがガクッと数字が落ちているわけですからリリーフのほうが要因としては大きいでしょうに…。現代野球の終盤のリリーフの重要性を考えればなおさら。
 敗戦処理兼延長・ロングリリーフ要員の二保に、便利屋要員寺原がシーズン序盤の時点でいない。バリオスは日本記録を作ったが、去年オールスター以後怪しかったように今年も前半までかもしれない。それに加えてシーズン始まったら五十嵐が故障もあっていない。結局今年はセットアッパーとして機能しなかった。バリオス・五十嵐と七回・八回任せられるピッチャーがいなくなり、他に経験の浅いスアレスしかいなかった。唯一状態の上がった森福はワンポイントでしか機能しない。
 そういうチーム事情にもかかわらず、なるべく先発に試合を任せて序盤を乗り切り、終盤にリリーフの足を残しておく。序盤のうちに芽の出そうな若手リリーフ要員にチャンスを与えて育てるということもやらなかったのですからね。そこを無視したら工藤采配の問題は理解できないはずなのですが…。工藤采配もそうですが、それを批判しているスポーツ新聞社も同じく問題を抱えていると言わざるを得ないでしょうね。