別館、身体論・武術・スポーツのお部屋

身体論・武術・スポーツ関係を分割してこちらで独立して書いてます 野球評論は辛辣に書いてますので苦手な方はご注意下さい。また基本長いので長文が無理な方はお気をつけ下さい

【雑誌】 月刊秘伝 2014年11月号

月刊 秘伝 2014年 11月号 [雑誌]/BABジャパン

歩法特集ですね。
太気拳 岩間統正「“神技"へ至る太気拳歩法」
 蹴りに対する差手の受けを教わった時、怖くて使えない。これは名人にしか使えない技だと思った。しかしトンボの複眼のように全体のスクリーンの中で動きを捉えることで恐怖心を克服することが出来るようになったとか。


中村尚人「エボリューション・ウォーキングと身体覚醒」
 回旋筋腱板・ローテーターカフの機能が崩れることで五十肩が起こる。これにかぎらず様々な不調は歩きに原因がある。胸椎を使って歩いていないから、ここが固まる。猿でも直立を続けると腰椎が前弯する。股関節と膝関節が伸びて人間と同じようになると。振り子=リズム運動、腕を振る事によるリズム運動が行われ、脊椎にはリズム運動を司る機能セントラルパターンジェネレータというものがあると。
 胸椎・胸郭から腕をしっかりと振る必要があるが、上下を反対方向にねじってはいけない。ひねるエネルギーは同じ方向に伝わって、上下半身は相対的に捻られるもの。胸椎は側屈と回旋が同方向に起こる、腰椎はそれが逆方向に起こる。それぞれが逆の動きをして背骨がS字になることでバランスが保たれる。


ヨーガ行者 成瀬雅春「ヒマラヤと雑踏の歩き方」
 瞑想の度に発見があるように、歩く度に発見がある。転落の危険があるヒマラヤでは指の感度を上げて歩く。足が触れた瞬間に危険かどうかわからないといけない。
 基本は親指意識だが、他の指を意識して歩くことも出来る。理想はその時どきの身体の向き、進行方向、スピードなどによって変わる。一円玉ひとつ分のズレが出ないように歩くこと。
 方向転換の際の移動足、誘導足による九十度での進行方向の転換。大きく回ってカーブするのは良くないのだとか。親指の付け根で着地し、親指の先で地面をつかむ。目の前に十人歩いている人がいたら、その人の動線を読みきって、自分が歩くラインを設定してその通りに歩けるようにすること。
 ヨーガの歩法、ルンゴム。1日160キロ歩けたとか。脱力して陸上の三段跳びのように、ゴムマリがポーンポーンと弾むように歩く。意識を先行させること。先行させた意識に身体が吸い寄せられるようになる。マラソンできつくなってから呼吸を思い出すのではなく、先に呼吸を意識して対処しておくと苦しむことがなくなる。潜在意識の対処が働くのだと。左右の鼻で均等に呼吸しているわけではない、それに気づくために片鼻ずつ呼吸をすることで実感しておく。それが潜在意識に効いてくると。


小用茂夫「『力の通り路』に乗って歩く刀禅“一線行"」
 身体の基盤・密度を上げていくというのは面白そうですね。まあでも読んだだけではいまいちわからない。単著で
刀禅の本出てないかな~とググったんですけど、出てきませんでしたね。あらゆるものは循環がポイントなんですかね、やはり。意識を飛ばすこと、そしてそれが還ってくることというのをテーマになにかやってみようかなぁ~。
 

松田隆智師範一周忌特別企画 武田鉄矢インタビュー “我が師、松田先生"を偲んで
 武田鉄矢さんが松田さん及びカンフーの話をされています。武田鉄矢さんという人は歌手でありながら、役者として大成された方ですけど、本当に素晴らしい人だなぁということが伝わりますよね、このインタビュー読んでも。


短期集中連載開始! 沖縄拳法大平道場 西原治 沖縄拳法に伝わる “手(ティ)" の極意 第1回 “後手の先"
 同調して相手が動く!という意を読んで、意識と行動の間を抑える話ですね。いわゆる枕を抑えることですね。0.2秒じゃなくて、0.3秒になってますね。なんででしょうね?これ自体はまあ柳川先生など諸先生がやってらっしゃるので、珍しい話ではないかもしれませんが、ではどうやってそれが出来る様になるか?練習・訓練方法が書いてあるのがいいですね。
 相手の意識を感じること、力まないのが入った後倒すコツ。必ずしも対人稽古である必要ない。意識を感じるイメージトレーニングで1日1000回くらいやって身につけたと。門下生も2~5年くらいこれをやって身につけたとのこと。面白そうだなぁ。すごい勉強になりそう。


龍村修(沖ヨガ)×藤本靖(ロルフィング) 東洋と西洋の身体技法と哲学 丹田の 「役割」 とその“在処"
 首がこる人は頭・脳に力が入っている。肛門を締めることで力を腹・丹田に落とす。こうすることで首が楽になる。また肛門を締める時に表情まで固くなってはダメ。笑顔・リラックスでないといけない。大声で笑うことで丹田に力が入る。東洋では身体・呼吸・心の三つをあわせて行う「三密」が基本。ヨガのスクワット天突きは三密で行う、スクワットとは疲れ方がまるで違う。


平上信行 時代考証の裏表「日本武道の学術研究書における歴史認識の誤謬を糾す」
 剣術が一般的で、剣道はあまり普及していなかったという話が誤りであるという指摘。道場は各種道場の略語ではなく、仏教道場の略・転用。
 心の一方の話があって、不動明王やゴルゴーン一族の女(メデューサの元ネタでしたっけ?)など、この金縛りの術を用いていたと解釈していますね。みんな同じ技術だろうと。


ゆる体操には“裏"の存在があった! 高岡英夫の漢語由流体操「下腿膝擦法講座受講生座談会〈後編〉」
 一般の人がやっている
由流体操は上達すれば30倍の効果・リターンが生まれるものに出来る。天才・準天才以外がセンター・地芯を理解するのに必要なのが、下腿膝擦法。同じような補助が肋骨使い・肘抜き・肩抜きに必要とありますが、どれなんでしょうね。個人的に肩をグルグル回すやつで肋骨全然動くようにならないですし、使えるようになる気がまるでしないんですけどね。


注目連載第三回! 大宮司古神道や武術に通じる“霊術"の世界を明かす! 霊術講座 「百人力法と大東流合気の投げ技のコツ 」
 
百人力法、緩みをなくして引っ張るのがコツになるのは前回と同じ。5人しっかり持っているのを確認する。一番後ろの人に円をかいて自分の気を向けて、順番に人に伝わって自分に還ってくるような感覚でやるとうまくいく。前回と同じ舟漕ぎ運動で、前方下へ急激に引っ張ること。
 下方に向けるのは「の」之字手刀投げと同じ、下方に崩されたのを戻そうとするのを利用して投げる。擦過後方投げもこの応用。別の人の補助を利用して、左右の指二本で人を持ち上げたり(体重は自分ではなく補助の人の掌にかかる)、自分の背中を触らせることで、片手で他人を持ち上げる(体重・重みが分散する)などというものがある。武田惣角が紙縒りを使って撞木という技の変形を大男にかけたことがあるが、これも緩みをなくして引っ張って相手を浮かせれば難しいことではないとか。


安田洋介 太極遊戯 「姿勢を規矩とした太極拳の動作」
 男女の骨格・筋肉の違いによって教え方・遣り方を変えないといけないというのは個人的に気になっていたところなので、こういうの良いと思いました。男女では開脚とかで差が出ますからね。たまに凄いX脚の人もいますし、男女で身体の差は馬鹿にできないと個人的には深く思うところ。女性が男と同じことやっていたら不利になるに決まってますからね、自ずと女性独自の方法を考え出さないといけませんし。女性は関節が柔らかく伸びやすいので痛めることがあると。


最古参 アレクサンダー・アンドレイチェンコフ セミナーレポート ハード・デイズ・システマ!
 これまでのシステマの人と違い、ハードなセミナーを行うという話。スティックを両手で掴んで上にあげて歩く。足裏の感覚を鍛える。全員肩を組んでの集団スクワット、バランスが崩れる&集団になると大変ということがわかる。打つのに行動を止めてはならない。打つと動くを同時にこなせるようになること。国に認められるまではミカエルのシステマも、最初は10人くらいしかいなかったとか。


日野晃 武道者徒歩記
 医療関係者が人と向き合うのが苦手だという話。ものすごい不思議なこと&発想。じゃあ、それでどうやって治療をするのか、人と向き合うということと無関係に職業が存在していると思っているのか?という話。


松原秀樹 100%動ききるための調整術「神経のはなし」
 腰仙関節を開くと腰痛が治る・坐骨神経痛がなくなる。そうか座るから坐骨神経痛になって、繋がっている膝が固まるのか。今更知りました。坐骨神経は直径1センチにもなる大きい物。しびれは神経の酸欠。椎間板が狭まることで神経が圧迫される。それをゆるめてやらないといけない。脊椎・胸椎・腰椎のゆるめ方が書いてありますね。脊椎の穴・仙骨の穴に神経が通っているというのはそういえば知りませんでした。へぇ、そういう構造になっているのか、なるほどなるほど。

身体の話(2016/05〜07?)

 もはやいつ書いたか思い出せない身体の気づきメモ集。多分秘伝6月くらいに読んで思いついたことだと思います。

 ●口と鼻・耳が繋がっている話。秘伝で松原さんの読んで気になった、気づいた話だったか忘れましたが、口をリラックスさせることで鼻・耳がリラックスするという話。口というかかみ合わせですね。歯がきれいな噛み合わせになっていないと、顔の下半分を中心にリラックスできない≒固まるということなのかもしれません。噛み合わせもそうですし、生まれつき鼻炎で鼻が悪いので、そんなことが気になりました。

 で、実際にどうやるのかという話。口をリラックスさせるには実際に噛むのが一番いい。歌うトレーニング、ボイストレーニングですかね。あれで割り箸をくわえることで口を開く(喉を開くんだっけか?)というのがありますがあれをやって、口をリラックスさせる。アゴから鼻・耳にかけてリラックスさせる。割り箸のような硬い素材はあんまりよくないですね。かみやすくて柔らかいもののほうが良いですね。


 ●稲葉スイングプロ野球知らないとわかりにくいのですが、元日ハムファイターズの稲葉選手のスイングは振ったあとの「返し」があります。バットを振るより戻すほうが早いように見えるんですね。で、その稲葉スイングを真似する。腕を振ることよりも戻すことを意識するわけです。強く振るよりも強く戻すことを意識したほうがスイングがシャープになるという感覚が稲葉さんにあるのでしょうか? 

 まあそんなことは知る由もありませんが、バットのように上に構えるのではなく腹辺りから、またはだらんと下にあるがままおいといてもいいでしょう。そこから上に向けて振り切る。そして自然に「返し」を起こす。腕を振り切ると自分の意志にかかわらず素早く腕が返ってくる。勝手に腕が動くところがあるわけですね。そういう自動操作モードは自己の意志が介在しないので、読まれない動きにつながると思います。落下以外にも自動的に動くところがあるという気づきですね。 

 
 ●胸と背中の互い違いのリンク。右で突く時、左の胸と右の背中・肩甲骨がリンクする。左はそれぞれ左右逆で繋がる。左右の部位が互い違いに繋がっている、技を使うときに大事だという話は日野さんがそういえば本に書いていた気がします。脇・横肚・腰でも繋がっていくのかも。日野さんがそういうふうに繋げると力を入れずとも相手が勝手に倒れるという話をしていた記憶があるので。


 ●脚を内側に折る動き・意識。昔、書いた記憶がありますが、どうだったかな。脚、大腿骨頭から大転子へと外へ斜めに向かって、今度は膝に内側に向かって斜めに骨はある。脚をただの棒のような意識では骨をうまく使えない。足首・膝・大転子、それらの関節を外から内に波のような力がかかっているような意識を持つことでうまく力が抜ける。 

 ちょっと言葉にするのが難しいんだけども、「折り」たいんですよね。折ると言われるとベキッとか、ボキッというイメージになるかもしれないんですけど、ある程度折り曲がるという感覚があって、そうすることでベストな姿勢になるという感覚がありますね。ただ、これはちょっとまだまだ発展段階になりそうな話で結論に至らない。言葉にしにくい気づきですね。
 

 ●側臥で体の中心・内部をゆるめる。寝転がって身体をゆるめるということを結構やるのだが、リラックス・ほぐす方法として個人的に結構気に入っている。うつ伏せでよくやるが、何気なく側臥の状態のとき、半身が良いフリーじょうたいになることがあって、やってみた。普段体の中心内部を緩めることが出来ない分、こういうアプローチもなかなかいいのではないか?と思ったので、メモ。 

 しかしうつ伏せでもそうなのだが、ゆるめる方法・やり方として書かかれていないということは、身体意識としての軸・センターをうまく形成する方法としては勧められないやり方なのだろう。実際横向きになれば自然と頭部と下半身は垂れて軸・体感は歪まざるを得ないし。

【2016工藤采配批判⑤】 指揮官としての人格、自身とチームの認識のズレの問題

工藤批判は今回が最終回です。長々5回もよく書いたもんですな(笑)。

【2016工藤采配批判①】 元エース投手故のリード・守備軽視≒攻撃重視

【2016工藤采配批判②】 李大浩の穴は存在しない。李大浩がいる前提の野球をしているだけ

【2016工藤采配批判1.5】 見当外れな打順批判、固定的起用は好ましくない

【2016工藤采配批判③】 歴史的V逸の最大の原因は「継投」にあり

【2016工藤采配批判④】 「継投」概念の欠如が生んだメイ工藤ラマ

 

【目次】

 

 

対鷹包囲網に序盤から全力でぶつかるビジョンのなさ

 そもそも話になりますが、今年はリーグそして日本一でも三連覇がかかっていました。戦前から断トツの優勝候補でド本命でした。それ故に、各チームはホークスを徹底マークする体制・対鷹包囲網を引くシーズンになりました。そのような集中マークを受けるシーズンで、序盤に勝ちを積み重ねてはいけない。

 序盤は借金せずに3位あたりをうろうろしていればいい。そうしておけばロッテ・日ハム、今年の日ハムもやはり終盤勝負なので西武あたりでもいいです。ロッテ・西武が序盤首位争いをしていれば、去年のように、鷹よりも1・2位のチームに目をつけざるを得なくなる。

 いくら鷹が本命とは言え、現状首位を走っているチームを無視してローテを組むのはどうなのだろうか?ということに必ずなってくる。どのチームも自分たちが優勝したいのですから、何処かで欲が出て必ず包囲網に隙が出来る。そこをついて一気に7月あたりに勝ちを積み重ねてぶっちぎりで優勝する。本来そういう方針を取るべきでした。

 去年はまさにそうで、それと同じ方針・ペースでよかった。というか現代野球の制度、CSが終盤にある以上、それ以外ありえない。今年のように序盤で下手したら6月にマジックが点灯してしまうぞ!というペースで戦えば、Bクラスのチームは3位狙いに切り替えるどころか、「今年も鷹か…。来年のために少しでも鷹を苦しめて嫌な印象を与えよう」となって、来年のチーム作りと対鷹だけに絞って戦うようになってしまう。

 前半ぶっちぎっていたとき、サファテ5連投もあって、不安が3割くらいあって「これ一年持つのか…?」と心配していました。それでも優秀な監督・コーチだと信じ切っていたので残り7割で、「まあ工藤・ヨシのやることだし、計算の目処が立っているんだろう」と楽観していました。ところが実際は言うまでもなく、そういう一年の戦い方を知らない監督だったという結果になりました。

エース級からはヒットを打つのが難しくなる

 包囲網の結果として、エース級をぶつけてくる。ホークスは真っ直ぐの早い投手が得意。故にエースをぶつけられてもそこまで困ることはない。しかし西・金子、則本、岸、涌井・石川、大谷・有原といったエース級の投手相手からはヒットを打つのが難しくなる。打線が去年より打てなくなるわけですね。*1また、エースのいい球にタイミングを合わせれば、次の日の投手とのタイミングの取り方が変わるなど微妙な影響もあったのではないでしょうか?

 バッターというのは一流からはなかなか打てない。二流・三流から数字を稼ぐもの。一流バッターでもこれは同じですね。一流の中でも良いバッターや超一流と言われる特別な打者は何が違うかと言われれば、そういう一流のいい球を大事なところで打つこと。大事なところで打てるからそう呼ばれるわけですね。

 デホの穴論でおかしいと思うのは、そら大砲ですし打率も残しますけど、良いところでそんなに打つわけではない。得点圏打率0.255のバッターですしね。今年の包囲網でエース級と50試合ぶつかっている。3分の1以上エースとの対決が続いていますので、松田のように年齢上数字を落とすものとみなすのが自然でしょう。まあいたらもうちょっと打線が切れずに繋がって、勝てたというのはあるでしょうけど、どう見ても今年の継投のまずさと比較すれば決定的な要因ではないでしょうね。

大きかった柳田の穴

 デホの穴じゃなくて、今年一番打線で痛かったのは柳田の穴なんですよ。レギュラーでほぼメインと言える5人のスタメンの前年度の成績と今年度の成績を比較してみると次のようになります。順に打順・出塁率得点圏打率です。*2

 柳田363、469、419→306、466、314
 中村晃300、386、375→287、416、278
 松田287、357、303→259、325、271
 内川284、340、299→304、345、302
 今宮228、279、255→245、312、227

 この五人で文句なしに数字を前年度よりも伸ばしたのは唯一内川だけと言っていいでしょう。HRも11から18本に伸ばしていますしね。今シーズンはチャンスをゲッツーで潰した印象が強いですが、去年の併殺24と今年の27とあまり変わっていないんですね。それだけ併殺を打っているイメージが強いということは、今年は内川に相当負担がかかったシーズンであったとも言えるでしょう。

 内川は去年苦したんだ、あまり良くなかった。前年よくなかった選手というのは相手チームがこれ以上マークしようがないですから、数字を上げやすいですね。どうしてやられたのか?対策を練って新しい能力を身に着けて挑む、また発想・スタイルを変えるなどした場合、相手はどう対処したら良いか予想がつきませんからね。

 同じく今宮もそれまで打っていないだけに相手は対策をあまり練らなかったために去年よりも数字を残すことができた。ただ、得点圏打率が落ちてしまった…。柳田・晃が一割近く数字を落としてしまったことを見てもわかるように、今年は得点圏で打てなかった。デホのプレッシャーが減った分という理由も然る事ながら、なによりエース級のピッチャーから点をもぎ取るあと一打は難しくなるからでしょうね。エースはそういうところで打たれない球を投げられるからこそエースなわけですからね。

 柳田が打率を6分落としていることからわかるように、300打ってるバッターが240のバッターになってしまうわけですから、打線が繋がらなくなるのは当たり前ですね。しかも去年は前半380台を打っていて、4割打つんじゃないか?というくらいの数字を残していました。その柳田が今年は序盤柳田シフトに苦しんで3割行ってなかったのですからね。ファーボールで繋いでいたとは言え、柳田の穴は相当大きかったと見るべきでしょう。

対鷹包囲網の効果アリ

 去年よりも数字が残せないということは必ずしも打てていない・状態が落ちているということではないわけです。相手が良いという理由に基づくわけですから。しかし、打線としては簡単にヒットが出ない分、去年以上に打てなくなっているという印象が強くなって、確実にプレッシャーになった。鷹包囲網の効果が見事成功したわけですね。

 これで二線級の投手が鷹と対戦することになっても、今年の鷹打線は打っていないというイメージで去年よりも楽に挑めたことに繋がったでしょうね。先発はスコアボードの名前と打率でどうやって対処しようかを計算する。数字が去年より低ければ、挑む前の心境はまるで違ったでしょうから。

 連敗した7月か8月ころには確実に打線が後ろ向きになってしまった。一年のうち、必ずどこかで不振に陥るスランプなときが来る。去年の序盤でも同じように全く打てずに困った時期がありました。しかし、そういう辛い時期でも、負け越さないようにしのぐことこそ重要。それが出来る守備力のあるチームこそがペナントを制することが出来るわけですから。打てないからあーだこーだというのは去年の4月の大スランプ期を見ればわかるように大した問題ではない。悪い時をいかに凌ぐかという問題でしかないわけですから。

 次回書きたいと思いますが、そういう背景があったにすぎない。打てない理由が明確にあったのにもかかわらず、工藤が打順をいじるからという采配の問題にすり替えたのは相当問題があると言えるでしょう。

工藤監督はコミュニケーション能力に問題あり

 で、次は、去年工藤名将論で彼を持ち上げたその反省をしたいと思います。彼を持ち上げた理由のひとつに選手とのコミュニケーションを取るのがうまい、対話を重視する人だから、彼は素晴らしいともち上げたのですが、最近それと反する記事が出てきました。どうもそのコミュニケーション能力も高くないようです。少なくともチームでうまくやれていない。コーチ・選手と溝がある様子。

 己が彼は対話を重視してうまくコミュニケーションを取る人だろうと思ったのは、Getsportsで日ハムの組織論を取り上げる企画で、ハムのフロントの誰かのインタビューのような対談形式で司会の南原さんとチーム運営・選手育成方針を聞いていた。そこで選手との対話を重視して、方針を決める、コーチの意思疎通を徹底するというような話に感銘を受けていたんですね。

 日ハムが素晴らしい組織でファイターズを運営しているのは周知の事実、そのファイターズのシステムを知って学んで同じやり方を取り入れるに決まっていると思っていたんですね。ところが、2・3軍の選手に監督が勝手にアドバイスして、コーチとの言うことが違って選手が混乱するという話が出てきていました…。選手が混乱しないように首脳陣が話し合って意思を統一するという話を聞いていて感心していたのは一体何だったのか…。

 またダルビッシュ田中将大との報ステでの対談で、年下の選手にも拘らず、非常に敬意を払って丁寧な口調で接していた。なので、そういう丁寧な態度を取る気遣いをする性格だと思っていました。

 ところが、おそらく東浜だと思いますが、選手に対して椅子を蹴っ飛ばして「野球舐めてんじゃねーぞ」と叱り飛ばす。ときに厳しい態度は必要になると思いますが、こういう逸話を聞くと、おそらく彼は一定の成績を残した選手・自分が認める技術を持った内川・松田のような選手以外は態度を変える、相対的な話になるのでしょうけど、一流以外は軽く扱うのでしょう。野球界ではむしろ当たり前の態度かもしれませんけどね。

自己主張ばかりでは選手は反発する、特に実績あるベテランは

 また摂津など自分の方針に従わない選手を使わないなど、自分の持論に非常にこだわる。自己主張が非常に強い。摂津はエースとしての自負がある。そういう選手を頭ごなしにアレしろ、コレしろと言っても自分の調整方法があると言って聞かないことも当然ある。そういうときにうまくコミュニケーションを取れない。なんだと!となってしまう。細川然り持論のある選手とうまくやれない性格。

 ダイエー時代、缶コーヒーを飲みながら食事管理を語って呆れられたと言われています。いろんなことを研究して知識が豊富なだけに自己主張が強い、持論を一方的に語りたがる俺様タイプなんでしょう。

 受け入れる人・共鳴する人は興味を持って聞いてくれるでしょうが、話を聞くタイプでなかったり、自分とは思想・スタイルが違うと反発する人には、一方的に持論を語るうっとおしくい先輩として嫌われていたと思われます*3。本人もあれこれやかましく言ったから嫌われていただろうと書いているくらいですしね。

組織論・役割の理解の欠如

 ダイエー時代は「兄貴分」「先輩」としていろいろ選手にレクチャーしていたのでしょうけど、それは王監督という後ろだてがあってのこと。実際のコーチよりも、現役でやっている先輩選手のほうがアドバイスが参考になると言われる。最高の生きた手本となって有り難られるというので、そのときはそれでよかったのでしょう。

 しかし今は監督という立場。その監督が「師匠」や「ティーチャー」となって選手にあれこれ口出しするというのは本来の役目ではない。選手に指導をするのはコーチだったり、年上の選手。監督は指揮を取る役割であって、選手を育てるのが仕事ではない。役割を無視した越権行為をすれば組織が崩壊する、機能しなくなるのは当たり前でしょう。*4


工藤は立場の強い監督だがチームはそれを受け入れない

 敗戦処理の投手がエースとして振る舞ったらどうなるか?当然チーム内からあいつは何様のつもりだ!となるでしょう。工藤は立場の弱い「中継ぎ監督」ではありません。工藤監督続投へ 球団社長明言 長期政権も示唆 - ホークスニュース - 西日本新聞にあるように、ホークスという球団は、長期政権を基本とした球団で、ちょっと結果が出ないからといって監督をコロコロ変えることはしないチームです。

 工藤は立場の弱い雇われ経営者というわけではなく、立場が安定している監督です。今後も監督して長期政権を築く可能性が高い。「つなぎの監督」で2〜3年したら消えていなくなってしまう監督ではない。であるならば、強権を揮っても良さそうなものですが、大事なのはホークスが弱小球団ではないこと。

 個人的には足らないところが目につくのですが、相対的な評価ではパ・リーグNPB屈指の球団。ファイターズとホークスがNPBナンバーワンツーを争っているのが昨今の球界情勢図ですからね。チーム関係者も選手も自分たちは「強いチーム」「優れた組織」だと思いこんでいる。

 宮本さんが新刊で、経営破綻寸前のダメな組織は生き残りをかけて変化をためらわない。指導されればそれを素直に聞き入れる。しかし、そういう危機感のないチームはそういう意見をなかなか聞き入れないということを書いていました。

 それと似たようなことで、ホークスは変革のために優秀な指導者工藤を招聘してチームを一から作り直す!というような危機感を持っているわけではない。工藤の手腕というものを多少は期待しているくらいの意識でいる人が殆ど。

 そういう意識で工藤監督を受け止めているのに、「俺様」となってあれこれ指図をしたらどうなるか?いくら言ってることが正しくても、言われた方はカチンとくるし、「何だ、アイツ!いきなりやってきて!」ということになる。

工藤改革をすすめる・強権を発揮するには2年では早すぎる

 一年目の去年はかって知ったるどころか何も知らないので気を使っていたが、今年は去年優勝したしもうトップとして振る舞っていいだろうと思っているかもしれません。しかし組織というのは旧組織から新組織に移行するまでに十分に時間をかけて、自派閥がためをする。そしてその後に改革を始めるというのがセオリー。自派閥もろくに固まっていな時期・二年目からやりたい放題やろうというのは無理がある。

 本人の意識としては優勝・日本一になって監督としての適性を示したから、これで十分だろう。もう遠慮せずに好き放題やるぞ!選手にも厳しく接して、しごくぞ!と思っているのかもしれませんけど、一年結果を残したくらいで好き放題やるのは早すぎる。最低でも三年やって数字・結果を残さないで改革をやるのは反発を招くに決まっている。*5

問題はコーチ未経験ではなく、社会人経験の欠如

 コーチ経験がないよりはあったほうが良かったんでしょうが、その経験云々よりも組織を動かすトップとしてのノウハウがなかったということのほうが問題でしょう。トップの資質、性格の問題も然る事ながら、組織人として組織を動かしたことがないという方がよほど問題だったんでしょうね。

 落合さんは社会人経験があって、会社の仕事を一応は目にしていた。ルールを知っていた。ところが工藤は高校生即プロでそういうキャリアがない。監督を目指してそういう要素が必要だと現地に行って組織に入って勉強をしたとかも聞きませんからね。今工藤公康が直面しているのはそういう問題と言えるでしょう。

何でもかんでもやりたがる・口出しする監督・トップは組織を機能不全に追いやる

 工藤監督は自分の野球論に自負を持っている。故に何でもかんでも口を出したがる、やりたがるわけですね。落合氏が著書で「何でもかんでも口出しする監督ほど失敗した」と書いているように、すべてを自分の意志で組織を動かそうとすれば失敗するのは必然ですね。非上場企業の規模の小さいワンマン社長ならそれでいいでしょうけど、組織が大きくなればなるほど、ルール・法で組織運営しなければ失敗するのは必然。そのような当たり前のことが一般常識となっていないのが今のNPBの現状なのでしょうね。

工藤監督はやるべきではないことをやってしまう監督

 秋山監督は「やるべきことをやらない監督」というのが拙評価でしたが、工藤監督は「やるべきことをやる。ただしやるべきことではない余計なこともやる監督」という評価になりましたね、今年を見る限り。才子才に倒れる、溺れるという言葉がよく当てはまるタイプの監督だと言えましょう。

 今年の逆転負けで評価が急激に落ちていますけど、前年の圧倒的な優勝を導いた吉井コーチ、優秀なコーチに声かけて連れてきたのは彼ですからね。そこを無視してはいけないでしょう。

 ポイントはその優秀なコーチを一年で本人が望まない人事をすることで、チームから離れてしまう原因を作ってしまったこと。決定的な根拠はありませんが、おそらく今年の継投を見ると工藤監督は次のように考えたと思います。

 工藤「7回から森使いたいんだけど、いける?」
 吉井「今日は無理です、今日行けるのは仁保と飯田だけです」
 工藤「え?だめなの、いけないの?ヨシさん、継投はコレが普通なの?もっと五十嵐とか投げさせられないものなの?」
 佐藤「もっと行けると思いますよ。でも吉井はウンと言わないでしょうね…」
 工藤「(リリーフ陣に)もっと投げられない?もっと投げたくないの?」
 サファテなどリリーフ陣「まだ投げられますよ、もうちょっと投げたいですね」
 工藤「なんだ、いけるじゃん。もっとリリーフ使えたら楽に勝てるし、もっと勝てたじゃん。来年から俺が継投きーめよっと」

 まあ、こんな感じで吉井さんの三軍行きを決めたと思われます。ヨシコーチ自身、継投の概念がない人なので、吉井は一軍に必要ですよ!まずいですよ!と言うどころか、配置転換に賛同したでしょうね。そもそも配置転換について意見を聞かれなかったかもしれませんけどね。いずれにせよ、ヨシコーチが吉井さんを引き留めるよう動いたということは考えられないでしょう。吉井さんが言ってもわからない人がいることはヨシコーチから学んだというくらいなので関係が良好とは思えませんしね。*6

 今年の敗戦を考えれば、継投というものが、ペナントをいかに左右するか骨身にしみてわかったはずです。秋山監督はまるで方針を変えることなく、「学習」しなかった監督でしたが、工藤監督はまだ2年目。3年目から失敗を糧に「学習」する余地があります。彼が名将として再生することを願うのみですね。*7

 工藤監督は「悪くなった調子や雰囲気をどうするかを考えたつもりだったけど、それを取り戻すことができなかった」と振り返ったといいますが、投手の状態を取り戻すために目先の敗戦覚悟で休ませるという指揮官としては怖いが、先を見据えた決断が出来なかった。そういう計算を出来るかどうか、選手の怪我についても怪我しないように管理を口酸っぱくして説いたといいますが、そんなことは誰でもどこの球団でもやっているわけで、当たり前のことでしょう。怪我防止のためにいかに休ませてコンディションの維持を図るかが指揮官の腕の見せ所。それをやらなかったなら、いかにコンディションのことに詳しくてもなんの意味もありません。

 ①「継投」コンディション管理、来シーズンはこの二つのテーマが彼の課題になるでしょう。

 おまけとして、大谷が今年の逆転優勝のポイントを、7月3日のソフトバンク戦、1番投手で先頭打者弾の試合。3連勝したことで「よし、いける」という雰囲気になったということを言っていました。大事なカードで三連敗しないという最低限の計算もしっかり出来るようにすること。まあ特定のチームにとらわれずに2勝1敗すれば大丈夫と言いながら、全然出来なかったので、同じことをするとは思えませんが。ロッテと日ハム対策を徹底すること、特に吉井の優秀性がわかったなら吉井対策ですね。そのことをしっかりやるべきでしょう。

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*1:ちなみに先発回数:西・金子7則本7、岸5、涌井8・石川4、大谷4・有原8ここでは特筆しませんでしたが後で使うので、高梨4。金子・岸など今年はよくありませんでしたけど、それでもエース級と当たるというのは嫌なもの。なかなかヒット打てませんからね。ホークスは計50試合もエース級とあたってたわけですね

*2:打点やHR、OPSなど入れてもいいですがそこまで踏み込む必要もないので。要するに前年比マークにあっていかに数字を落としたかということが伝わればいいので

*3:また何より野球選手の中には頭が悪くて簡単なことでも理解できないというタイプがいる。そういう選手に対する扱い方の引き出しがない気がします

*4:打線をいじる云々の批判がありますけど、監督は選手起用の権限がある。打線・打順を決める権限があるのですから、コロコロいじるタイプの監督が就任した以上、それに文句をいうのは筋違い・越権行為です。そんなこともわからないコーチがいるというのは、何でもかんでも口出しする工藤監督と同じく、組織の問題として注意すべきことでしょう。王代表は呼びつけて叱り飛ばす、最悪クビにするべき事案ですね、これは。

*5:ホークス工藤監督「僕の力不足」 今季象徴する大逆転負け (西日本スポーツ)  嫌われてもいいから若手に厳しく接する。「情」は挟まない…。という方針だったと書いてありますが、一年目から若手にそういう態度だったんですね…。結果を残し続ければ、人間としてどれだけ嫌われても選手はついてくるでしょう、それこそヤクルトでの野村監督のように。が、結果を出さなければ「なんだ、あいつ!普段あれだけ言ってるくせに、自分は下手な采配で負けているじゃないか。あんたのいうとおりやってるのにチームは勝ててないじゃないか!」と、口だけ無能上司扱いされる。「嫌われ役」と「嫌われる事」は違う。ましてや監督・コーチ、先輩選手と立場が変わればなおさら。その違いがわかってない。自著で西武の渡辺監督や秋山前監督は、二軍から積み上げた結果が一軍の成績に反映されていると書いていましたが、自分はその若手選手の下積み時代に一緒に練習・指導をして積み上げた時間がないこと=選手との信頼がないことを忘れているのでしょうか?

*6:大谷の完成度は最大「10」なら「1」 吉井コーチが明かす日本ハムの舞台裏 (1/2ページ) - スポーツ - ZAKZAK 規定投球回到達は156回で11勝の有原だけ。規定回到達が1人で優勝したのは、01年の近鉄以来だとか。それでも今年のファイターズの投手陣はホークスを苦しめた高梨に、バース・加藤、増井の先発転向の大成功に、序盤ボーク云々でキレていたマーティンが抑えとして見事に機能した。マーティンの故障後も吉川・谷元らでやりくりして宮西も29試合連続無失点でリーグ最多の42HP。吉井コーチの手腕はすごすぎですね。リンクには書いてありませんでしたが、週刊現代の記事で、元々増井は先発をやらせるつもりだったようですね。ところがスタミナ云々の事情で長いイニングを投げさせられなかったから、リリーフでいずれ先発で使うつもりだったようですね。監督に言われたときがちょうど渡りに船だったとか。前からハムにいたからこそなんでしょうが、コマが揃っていないチームでどうなるのか、ぜひ他のチームで吉井さんが投手陣を整備できるのか見てみたいなぁ。

*7:この東スポの記事【ソフトB】工藤監督 屈辱V逸の原因はどこにあったのかもデホの穴や打線の組み換えや焦りという指摘で「?」がありますが、最後にきちんと失敗の本質を書いていますね。
 「終盤に救援陣が崩壊した。リリーフだけで前年比の2倍となる21敗を喫する事態に陥った。予兆はあった。打線が爆発力を欠く中で序盤は接戦の勝ちが多く、救援陣がフル回転。加えて起用する投手に関してベンチとブルペンの連携がうまくいかず、登板数だけでなくブルペンで肩をつくるための球数が前年より大幅に増えた」これにつきますね。
 ※追記、またフルカウント「Full-count」にこんな指摘もありましたこれに付きますね。V3を逃したソフトバンクの誤算…盤石なはずの救援陣で抱えた借金「9」 に、指摘されているように、分業制が成立した現代野球においては強いチームはリリーフで貯金を作るもの。リリーフが崩壊するチームがペナントを制することは相当難しい。秋山政権時代には使い過ぎで終盤毎回調子を落としていましたが、今年は八月の時点、中盤くらいに崩壊が始まっていましたからね。そんな早い時期にリリーフ崩壊したらボロボロに負けるに決まってますよ。むしろ終盤よく五分に近い状態で乗り切れたなと思いましたからね。
 まあフルカウントも、こういう記事→V3を逃したホークスの誤算…埋められなかった李大浩の穴こういうことを書いているわけですがね。どうしてどこの媒体もこう「打てない」ことに原因を求めたがるのでしょうかね?そりゃ李大浩が抜けて得点力は落ちたでしょうけど、リリーフのほうがガクッと数字が落ちているわけですからリリーフのほうが要因としては大きいでしょうに…。現代野球の終盤のリリーフの重要性を考えればなおさら。
 敗戦処理兼延長・ロングリリーフ要員の二保に、便利屋要員寺原がシーズン序盤の時点でいない。バリオスは日本記録を作ったが、去年オールスター以後怪しかったように今年も前半までかもしれない。それに加えてシーズン始まったら五十嵐が故障もあっていない。結局今年はセットアッパーとして機能しなかった。バリオス・五十嵐と七回・八回任せられるピッチャーがいなくなり、他に経験の浅いスアレスしかいなかった。唯一状態の上がった森福はワンポイントでしか機能しない。
 そういうチーム事情にもかかわらず、なるべく先発に試合を任せて序盤を乗り切り、終盤にリリーフの足を残しておく。序盤のうちに芽の出そうな若手リリーフ要員にチャンスを与えて育てるということもやらなかったのですからね。そこを無視したら工藤采配の問題は理解できないはずなのですが…。工藤采配もそうですが、それを批判しているスポーツ新聞社も同じく問題を抱えていると言わざるを得ないでしょうね。

【2016工藤采配批判④】 「継投」概念の欠如が生んだメイ工藤ラマ 

【2016工藤采配批判③】 歴史的V逸の最大の原因は「継投」にあり

➖の続きです。今回も「継投」の話ですね。今年の大逆転劇はメイクドラマとかけてメイ工藤ラマと言われているようで。まあ今後ずっと言われ続けるでしょうね。ダライ・ラマ、パンツェン・ラマ、ソンツェン・ガンポ、工藤ラマですね。

 

栗山も工藤も吉井コーチを放出することで組織を崩壊させた

 吉井理人コーチが中継ぎ陣の酷使を防いでいたというのは単なる推測ではなく、彼が日本ハムを退団した際の理由が、栗山監督との継投を巡っての衝突だったからですね。その年ダルビッシュが抜けても優勝したものの、一年目の新人監督だった栗山は中継ぎをドンドン使っていくマシンガン継投をするタイプの監督でした。そんなことをしていれば投手がどうなるか?両者の思想・方針が根本的に異なるので、自分が身を引くしかないと吉井コーチが退団した過去があるからですね。

 アメブロの彼の過去のブログには、当時の事情が記されています。いわく、中継ぎを準備していなかった・肩を作らせていなかったから怒られたとか。徹底してコンディション重視でリリーフを守ろうとしていたんでしょうね。彼が抜けた翌年、日本ハムが最下位に沈んだことも何ら不思議ではないといえるでしょう。優秀な投手コ
ーチ(現場のNo2・No3に値する)が抜ければ組織は崩壊するに決まってますね。この栗山と全く同じ過ちを工藤は犯したわけですね*1

 

投手ローテ・継投の計算の一例、今年はその計算があったのか?

 去年三連敗をしない、特に同一カードで三連敗をしないという大事なテーマがあり、優勝が決まるまで三連敗は3~4回ほど。同一カードでの3連敗はありませんでした。*2

 ちゃんとした投手起用・継投によって、中継ぎの足を終盤に残しておくという戦略ならば、序盤に連敗が続いてしまうということもありえるはずですが、そこは戦力・打てる選手&守れる選手が揃っているだけあって、回避することに成功していました。

 ところが今年はファイターズとの直接対決で3タテをくらうと、続くオリックスとの対戦で連敗して、4連敗することがありました。またハムに初戦勝って連敗、次のオリのカードで三連敗・3タテされて、続くロッテとの初戦にも破れ6連敗ということもありました。

 一つのカードで3タテされる・3連敗をすると、次のカードで負け越した場合、このように5連敗・6連敗という大型連敗をする危険性が出てくる。そのためにまずは一つのカード・3連戦で絶対に三連敗をしない計算を立てる。最悪の展開でも「1勝2敗」で済むような投手起用の中継ぎの配分を考えるのがひとつのセオリーです。

 そうすると一週間二つのカードで最低「2勝4敗」ということになります。その最低ラインから、どうやってもう1つ2つ勝ちを拾うか計算していく。確か中日の新監督森さんなんかそういう考えだったと思います。要するに大型連敗をするという最悪の前提から逆算をして投手起用を考えていくわけですね。

 まあ基本はこういう形でしょう。勿論こういう方式ではなく、各投手コーチの計算方式があるでしょうから、これが必ず当てはまるとは限りません。最近のペナントは前半は一週間に5試合が普通というパターンですしね。エースや10勝を計算できる先発が出遅れているから、前半は多少の負け覚悟で2勝4敗で計算して、借金を作らないことがメインで3勝3敗を狙っていくなんていうこともあるでしょうしね。チーム状態がマズイから初めからCS狙い、今年は無理をしない・させない。2年目・3年目で勝負をかけて優勝する!なんていう計算から無理をさせない育成中心の起用もあり得るでしょう(滅多にそういうビジョンを持った投手起用をする監督を見かけませんけどね…)。

 三連敗しないという考えで計算するとカードの初戦が非常に重要になる。勝てば3連勝が見えて、負ければ3連敗の可能性が出てくるわけですからね。だからこそ去年はカードの頭を~ということが言われていたわけで。どこのチームもそれは自明なのでカードの頭にいい投手をおいてくる。だから無理せずにカードの真ん中に優秀な投手を置いて、6連戦を最悪●○●●○●で乗り切ろうと考えて先発ローテを組む投手コーチもいるでしょうね。まあこれは、いつものごとくどうでもいい話でしたかね。

 

今年も吉井コーチの計算通りの継投でシーズンが動いた。

 吉井コーチはまず3連敗を避けるという思想に基づいて配分するコーチと見て間違いないでしょう。今年のファイターズは同一カードで三連敗がなかったのを見ても明らかですね。去年・今年と所属するチームが変わって、いきなりタクトをとっても、彼の計算通りにペナントレースを動かせたことになります。

 この2チームはNPB・日本プロ野球界を代表する2チームで元から自力があるチームだということを差し引いても、ここまで完璧に計算どおりにことを進められるのは見事としか言いようがないでしょう。個人的には今日本で一番優秀な投手コーチの称号を与えるべきだと思っています(セリーグを見ていないので、そこら辺少し不安要素がありますが…)。

ファイターズの戦績をチェックしてみると次のようなものでした※引き分け除外
 3月 2勝3敗
 4月 11勝12敗 3・4月計13勝15敗
 5月 13勝9敗
 6月 15勝7敗
 7月 17勝4敗
 8月 14勝12敗
 9月 15勝6敗

 月間で負け越したのは3・4月のみ。ペナントレースでは終盤に強いことが大事だと何度も力説していますが、6~7月の15連勝&5連勝という大型連勝のあとで8月にはちょっと失速していますね。それでも負け越していませんし、まあ9月でちゃんと巻き返しているので誤差として考えてください。

 そして肝心の3連敗は、4月の5~8日、5月の24~27日、8月の28~31日にかけてカードをまたいでの3連敗が3度あるだけですね。同一カードでの3連敗が一度もありませんでした。そのためファイターズは大型連敗をして負けが混んで沈む。チームが「ウチ最近、負けが混んでいるけど大丈夫か…」と不安になることがなかった。歯車が狂ってチーム全体が浮足立つことがなかった。それがウチとファイターズを分けた差ですね。

一方、今年のホークスの戦績を見てみると、
 3月2勝2敗
 4月12勝6敗
 5月18勝5敗
 6月16勝6敗
 7月11勝11敗
 8月11勝14敗
 9・10月13勝10敗

序盤~中盤に突入する6月までの貯金がほとんどであることがわかりますね。6+13+10、6月まで築いた29の貯金を維持しただけのペナントレースでした。まあ、普通のシーズンならば29も貯金を作れば優勝するものですが、そうは問屋がおろさないということになりましたね。

リリーフ崩壊こそ大逆転負けの要因

 そら当たり前ですよね。リリーフ崩壊させてるんですもの。負けないほうが不思議ですよ。むしろアレでどうやって勝てというのか?去年の完璧に近い継投からド素人のようなひどい継投になって我が耳目を疑わざるを得ませんでしたからね、今年は。

 ホークスは救援防御率7年連続一位というDHCランキングのような栄誉を独占していましたが、今年は日2.67 、ソ2.98 、ロ3.35 、西3.42、楽4.46、オ3.98➖となって、とうとう日ハムにその座を奪われてしまいました。前半戦は確か1点台で相当抑えていただけに、いかに後半打ち込まれたかわかる数字ですね。

 

 こちらの記事を参照していただきたいのですが、今年は救援陣で借金9を作ったと。ハムは対照的に貯金13、「こんなところにもV逸の要因が」なんて書かれていますが、むしろそれ以外に何があるというのでしょうか?前半馬鹿みたいにリリーフ使って、その上、リリーフを毎試合のようにブルペンで肩作らせていたって、そんなんでコンディション保てるわけ無いでしょうに。一年本来のパフォーマンスを発揮できるわけないでしょうに…。

 吉村のエラーでサヨナラ負けをした試合がありました。あれでなぜ工藤は守備固めをしなかったのか!という批判もありました。それも最もですが、本質的にはサファテを使いすぎなんですよね。バカみたいに投げさせる・準備させるから、パフォーマンスを落とすんです。秋山時代にも投げたがりのサファテを投げさせまくって同じようなことになっていました。去年のようにサファテの登板をセーブしながらでないと、パフォーマンスが落ちて失敗する確率が上がるというのは当たり前のこと。なぜそれがわからないのか…。

 クローザーは出ればまず間違いなく試合が終わるという絶対感・安心感がなくてはならない。途中から今年のサファテはその絶対感が消えていました。そしてこのように他のリリーフも不安定になって、8月頃に勝利の方程式が機能しなくなった頃、野手陣が浮足立ち始めました。これまでは7回までにリードしていれば、流れ作業のようにゲームを決められたのが、リードしていても勝てるかどうかわからないという状況になってしまった。

 となると守備でもそわそわするもの、勝てるかどうかわからない不安定な状況では流れが来るわけがない、流れが作れない。終盤はチームが勢いに乗るサヨナラ勝ちというものがまったくなかった。リズムが本当におかしくなりました。攻撃面にも影響を与えるからこそ、勝ちパターン継投は絶対的でなければいけない。およそ常勝チームの野球とは思えないペナントでしたね。今年の後半は。その日その日の目先の1試合を勝つのがやっとという展開でしたからね、終盤でも継投陣がしっかりしていて、1点リードしていればウチが有利だ!と着々とゲームを運んでいたハムとはチーム状況がまるで違いましたね。

なぜ、過去の大逆転負けの事例から学ばなかったのか?

 1996年、広島が11.5ゲーム差を巨人にひっくり返されています。このメイクドラマが有名ですが、戦力の乏しいチームや投手陣に不安があるチームはひっくり返されやすいわけですね。カープの主砲、江藤智が打球を顔面に受け骨折で離脱したのが理由としてよく挙げられますが、継投ですよね。当時の広島といえばいつも夏まで強くて、夏になるとピッチャーがバテて負けまくるというチームでしたからね。

 1998年、日本ハムが西武に10ゲーム差をひっくり返されたそうです。この頃見ていないのでわかりませんが、西武はリリーフにデニー橋本武広らが活躍したとのこと。リリーフがいてこその逆転優勝と見ていいでしょう。まだ日ハムが弱い頃というか、パ・リーグ全体を見ても、いてまえ打線やら、ビッグバン打線やら、ダイハード打線やら打撃中心で守備や投手の視点があまりなかった時代のようですね。ですからどのチームも非常に崩れやすかった時代と見ていいでしょう。

 2008年には有名な「Vやねん!」で阪神が巨人に13ゲーム差をひっくり返されました。この一件で岡田監督はどんでん(どんでん返しから)という不名誉なあだ名になるほど見事な大逆転劇でした。巨人は、山口・越智・クルーンの方程式で猛追を図った結果、つまりリリーフの差が命運を分けたわけですね。

 大逆転されたことで迷将のイメージがある岡田監督ですが、彼は04年・07年と二度リーグ制覇をしている。優秀な監督であることは間違いないわけです。その原動力となったのが、JFKと言われる勝利の方程式を確立したことにありました。絶対的なリリーフ3枚で789回を制す。6回を終えて勝っていれば、間違いなく勝てるという必勝パターンを作り出すことで、リーグを二度制覇。球界の常識となる必勝リレーという戦術を生み出したのですから間違いなく優秀でしょう。

 ところが、前述通り大逆転をされてしまった?何故か。それはリリーフ管理・継投の概念がなかったからですね。同じく主砲新井が離脱したから、などと言われますが、問題は一年を通じてリリーフをもたせられなかったこと、JFKのような優秀なリリーフをむちゃくちゃ投げさせまくって数年で方程式を壊してしまったことですね。

 2011年、ヤクルトが中日に10ゲーム差をひっくり返されました。結構新しいので記憶に残っている人も多いかと思います。己もこの頃中日がひっくり返すだろうみたいな話を書いた覚えがあります。そして前年には前半首位を独走していた巨人を8ゲーム差ひっくり返して優勝したこともあって、落合野球・守備重視野球の信奉者になりました。そしてまたしても巨人・ヤクルトは最後迄リリーフをもたせられなかった、「継投」に失敗したからですね。

 96年・98年は古い時代の話なのでまあいいとして、08・10・11年と直近にどれだけゲーム差をつけてもリリーフが崩壊してしまうと、大逆転されてしまう可能性があるということをプロ野球ウォッチャーは学んだわけです。なぜこんな常識を知らないのか?頭が悪い監督ならともかく、頭の良い工藤監督が?中日とは縁が無いとはいえ、愛工大名電・愛知県出身であり、もしかしたら地元つながりでコーチの声がかかる可能性がある中日・落合野球を何故研究していなかったのか?理解に苦しむ所ですね。

 こういうところを見ると、昔見当違いのコメントを秋山ホークス時代にしていて「ペナント、シーズンちゃんと見てるのかな?」と思ったことがありましたが、あまりペナントは見ていなかったのでしょう(監督就任してからは全試合チェックしているようですけどね)。

 話を岡田監督に戻して、リリーフ整備・育成に優秀な監督であれ、起用によって壊してしまう・一年もたせられない。そうなると、大逆転される可能性がある。もし大逆転負けをすれば、監督の評価は急落・失墜する。この危険性を外から勉強して監督の座を狙っている監督候補生達ならば肝に銘じているはずなのですが…。

 この倍以上の文量になったのでとりあえずここまで。また編集し直すかもしれません。続き→【2016工藤采配批判⑤】 指揮官としての人格、自身とチームの認識のズレの問題

アイキャッチ用画像、吉井信奉者になったので吉井さんの画像で

BBM2006 レコードメーカーズ アクティブスターズ No.AS5 吉井理人

*1:言うまでもなく、組織の方針はそのままで、同等でないにせよ抜けた人材に匹敵する新しい人材を連れて来て穴埋した場合はまた別ですけどね。今年の投手コーチは出戻りの田之上氏でしたからね…。

*2:優勝したあとは戦力整備・休養などがあって6連敗などをしましたが、ペナントというゲームの性質上あとの勝敗はどうでもいいので考慮に入れる必要性はありません

二刀流使えなかった?とか、広まらなかったわけとか、片手剣&両手持ちのミックスとか

 二刀流は昔からあったという話 を昔書いたことがありました、それに関係するかどうかはともかく、昔そんなことを書いたこともあったので、興味深い武蔵の二刀流の話をなんとなく書き残しておこうかなと言う気になりました。ツイッターで面白そうなツイを目にして、それで思ったことなんかをメモしただけですが。

 武蔵は実戦で二刀を使わなかったという説があるようですね。巌流島の戦いで、櫂を削った長大な木刀を作ったという話がありますね。吉岡一門くらいですかね?二刀流で戦ったというのは、まあ、その吉岡一門との戦いも殆ど創作だろうという感じのようですが。

 武蔵が二刀で実戦・試合で有名な誰々を破ったという公式記録がないのがそういう説に繋がったのでしょうかね。

 ただ二刀流って真剣で相手が武装した多数という条件で生まれたものなら、通常の一対一の試合形式なら二刀流を用いなくても普通のような気がしますけどね。相手の体格や流派・得意技などで二刀流やったりやらなかったりしただけなのではないですかね?相手も同じ一本同士で試し合いをしてくださいというケースもあったでしょうし。

 秘伝で甲冑バトルをやっていた気がしますけど、鎧兜一式を武装した相手に挑むというのと、何もつけずに木刀や竹刀で勝負するというのはまた違いますよね。完全武装した相手に対して武蔵は二刀流で斬りかかったわけですよね。多分、鎧の隙間を一瞬でスパっとやって仕留める達人技だったと思うのですけど、武装して真剣以外の武器で二刀流ってどうなのかしら?有効な戦法を構築できるのかしら?

 どういう思想の上で形成された武術(剣法?)なのでしょうね?鈍器で鎧を着込んだ相手だろうとも、叩きのめす/ねじ伏せるということなのかしら?うーん、でも日本刀だとそれはないか。すぐ使えなくなっちゃいますしね。

 機動隊的な発想の元の上に構築されているのかな?機動隊員が武装して鈍器を持って、相手をねじ伏せるタイプの実戦に有効なのかな?と思いましたが、違うかしら?

 でも、機動隊なら盾を持つから違うかな?盾って消極的な守備のための道具と思わせて、実は相手をグリグリやって押しつぶすのに良いんですよね。地味な攻撃道具で個人的に大好きなんですけどね。盾武術(剣法?)はもっと流行ってほしいなァ。普段持ち歩くのが大変だけど(笑)。

 二刀流は使えない、武蔵は二刀流使ってない説が意外と根強くあるとのこと。なんでしょね。剣道関係者なのかな―?剣道では二刀流が通じない・ありえない戦術だとはよく言われますからね。自分たちが出来ないことだから、二刀流なんて!!というロジックになるんでしょうかね?

 宮本武蔵だけが突出して有名で他にいろいろな名人・達人の記録がないのが反二刀流論の原因になっているとのこと。二刀流流派は普通に存在するし、日中戦争時代に戦った記録もあるとか。普通に武蔵の二天一流意外にも二刀流が存在することを考えれば、「使えない説」は成立しないのではなかろうか。むしろ武蔵以外の二刀流を研究することにこそ、武蔵の二刀流の凄さがわかりそうで面白そうですよね。

 ※こちら(「二刀流は難しい、普通の人にはできない」という疑問に対する宮本武蔵の回答 - Togetterまとめ)を読んで思ったこと。そういや室町時代は片手剣が主流で、そのあとに両手持ちに変わっていったんだっけか。無二斎も武蔵も、その昔の片手剣スタイルを今に活かした。古流武芸の復興者だったのかもですな。

 二刀流のいい所=片手剣のいい所は、戦場で怪我をおって、片手が使えなくなった場合、応用が効くところでしょうね。武蔵の剣法・兵法って応用範囲というか、念頭に入れてあるもの・視野が広いのでそういうことも考えていそうですよね。

 新しい剣術が登場し、その実力の前に駆逐され衰退し消えかかっていた昔の主流の剣法を復活&革新的に改良させた。考えたことなかったですが、そんな武蔵像も非常に面白いですよね。そういう創作あったらウケそうだな~と思いました。

 片手剣時代の人が両手持ちの新スタイルに勝てなくて、試行錯誤で挑んでもうまく行かなかった。その後に登場した武蔵の二刀流というのは片手剣&両手持ちのいいとこ取りとも考えられますわな。両手持ちならぬ、二本持ちですが。 ただ二刀主体は後発の新しいスタイルなので広まるのが遅れたという話もあるとか。戦乱の世がもっと続いていたら二刀流の広がり方もまた変わったのかもしれませんね。

 平和になって剣術は教養みたいなものになった所ありますしね。幕末に需要が高まって盛り上がったからみんな学んでいたみたいに考えがちですが。また、そもそも江戸からじゃないと全国的に広まらない。武蔵がどんだけ凄かろうが、九州を超えるはずもなかった。まあ中興の祖、武蔵級の達人が更に出てきて、布教しないと無理だったというパターンでしょうね。パウロがいないと広まらないキリスト教的な。

 九州で終わる可能性があったことを考えると、絵とか優れた芸術だったり、五輪の書のようなもので自分の思想を残しておく必要性があったとも考えることが出来るわけですね。五輪の書は藩主に要請されて書いたんだったかどうだったか忘れたけど、まあそういう背景もあったんでしょうね。

 おまけ:両手持ち剣、片手持ち剣の話。日本は両手持ちが普通で世界的には片手持ち剣ばかり。そういわれれば、世界的には武器って大体片手持ちか。日本刀の技術向上で両手持ちが良くなった。逆に他はそうではないとか?槍とか他の武器に片手持ちのほうが応用が効くからなのかな?まあ集団戦術・運用が基本だし、個の破壊力上げてもしょうがないとかそういう感じかしら?それとも防御重視で正中線を相手に晒さないとかかな?

【雑誌】 月刊秘伝 2014年10月号

月刊 秘伝 2014年 10月号 [雑誌]/BABジャパン

「忍術学とは何か?」「リアル忍術修行譚」川上仁一
 忍者特集ですが、興味ないので殆どパスです。忍者修行の話だけ面白かったのでメモ。
 末端、指・足を鍛える。金的を打たれても効かないように睾丸をしまう。肩を外す訓練。手首は細かいことが出来ないリスクがあるので余りやらない。肘は外すメリットがないので外す訓練はやらない。こういう関節外しが縄抜けなどに有効だと。
 忍びこむ時に便がしたくなって、バレたらいけないので、我慢する訓練。土やガラスなどなんでも食べる訓練などをした。
 印に、蝋燭の火を見つめる精神鍛錬法。何メートルにも見えるようになって、火の中に自分がいるように見えるようになる。こうなると「外界」、眼に見えない範囲のものが見えるようになったり、聞こえないものが聞こえるようになると。忍び込んでものを取ってくる訓練もあった。返す時の方が、任務をやり遂げたとなって、緊張が切れているので難しいとか面白い話ですね。


大東流 蒔田修大 心技清榮館に伝わる居合心剣流柔術の理合を解く!“抜かぬ居合"が生む合気とは?
 抜かない居合。柄の角度を上下どちらでも変えるだけで抜けなくなってしまう。柄を取りに来た相手の肘を下から持ち上げるだけで腕が決まるのでそれを防ぐことが出来る。以前取り上げたことがあるので、かぶるのでもう書きませんけど、剣を持ったまま四方投げなど出来る。剣を持って出来るように考えられている。そして氏の考える柔術と合気の違いの話。合気は棒で柄を抑えられていてもかけられる。


増田俊也氏が語る、高専柔道・七帝柔道が生んだ“分け役"と“カメ"の意義とは?高専・七帝柔道百年。
 国際ルールと違うオリジナルルールで生まれる技術、活かされるワザがあるのでこういうの良いですよね。しかしチーム戦のためにカメが必要というのはどうなんですかね?それが社会に出ても役に立つ的な見方には個人的には疑問ですね。まあ、そういう要請が社会にあって、そのための人材育成という物もあっていいと思いますが。武術・武道は本来チーム戦ではないですからね。戦場・戦争だとまた話は違うのでしょうけど。カメという技法を禁止するルールってないんですかね?そういう消極的な戦術・戦法のは本来ルールで禁止するか、ポイント取られるとかにすべきだと思いますけどね。競技の根本思想と反するので禁止した方がいいと思うのですが、競技が成立しなくなっちゃうレベルではないということなのかしら…?まあ全部が全部そうしなくても、そういう思想のもとでやる大会があってしかるべきかと。


ゆる体操には“裏"の存在があった!高岡英夫の漢語由流体操「腰仙揉溶法 8」
 第三法、骨横面滑切法、尾骨と仙骨の間から腰椎まで
滑切面を作る。計七で、第二法の5塊と同じで、七×5で35パターンになる。滑切面は胴体より大きくイメージすること。かつ、骨と骨の間が動くように意識する必要があるので、リアルな骨と骨の間の滑切面を意識すること。
 第四法、骨縦面開割法。寝ながら仙腸関節をさすって開いていく。次は柱や壁の角を使って仙腸関節をこすって開いていく。基本は上下動だが、左右の動きを微妙に入れるのも効果的。次は平面の壁を使い落下の力を利用して仙腸関節を開く。最後はなにもないところで自然落下の力を利用して仙腸関節を開く。もちろん急激にやって痛めることに注意して。膝を曲げるときに腸骨がより落ちるようになるようにすると。
 座談会があり、その中の話で骨に意識を及ぼす話があって、そういえば立つ・歩くに脛骨の意識をもっと効かせられるなということにいまさら思い至りました。コゾコゾふくらはぎをもみほぐして終わってたらアカンがなと…今さら気づきました。


注目連載第2回! 大宮司古神道や武術に通じる“霊術"の世界を明かす!霊術講座「断縄法と武術の技に見る共通法則 」
 
断縄法、手の中に輪を図にあるように作って一気に引く。一箇所に力が急激にかかるようになれば、引っ張るだけでビニール紐はちぎれる。一気に急激な力がかかればちぎれるに決まっていますね、あとはそのやり方・コツ次第だと。ただし失敗のリスクがあるので、やる場合は半分にして脆くしてコツを掴んでからやったほうがいいと。
 コツは緩みをなくすこと。両手取り呼吸投げなどもそう。緩みをなくしてかけるのがコツ。舟漕ぎ運動で腰を後ろに引き、両手の緩みがなくなった時に両手を腰の方に引けば受けの身体は自然と前方についてくる。藤平氏は帯の例えで説明して緩みがあると伸ばした瞬間に相手に察知されるとしている。せっかく技に入っているのに緩みがあるから相手が体勢を立てなおしてしまう。自分、そして相手の腕の緩みを消して片手を引くと相手は勝手に倒れる。手首を引くという意識ではなく、相手の背後にいる霊魂でも引き寄せるつもりでやるといいとのこと。
 意念・意識をどうするかが非常に重要なファクターだというのは言うまでもないですけど、実際に丹田・軸を自分の体内外に延長させて何かをするというのはあまり意識してやっていないなぁ、そういえば。竹田二男氏の想いの力という話がこの後にありますが、相手に届かせるということも意識しないとダメですわな。対人稽古やってないからどうしようもないんですけどね。自分の軸、丹田ということに意識はあっても相手のそれというのはもっと意識してもいいかもしれない。そりゃ殆どの人にはないのでしょうけど、あると仮定して相手を見る・捉えるというのは日頃できることなのでは?とふと思いました。


南半球に伝えられた日本柔術の技と精神豪州紀行 赤道を越えた日本柔術 扱心流柔術
 という流派があるという紹介ですね。肥後三大道場と言われた流派で、木村政彦氏の師匠牛島辰熊さんの流派だとか。
扱心流江口吉太夫が熊本に入った時に、領主(藩主じゃないのかな?)細川公に不意打ちを仕掛けられ、投げられた後に、どうして投げられてしまったのか?と尋ねられて、「躰術とは敵の死命を制することであり投げられることを防ぐにあらず。あいての襟首をご覧あれ」と返す。そして相手の襟首には脇差しの笄が刺さっていたというエピソードがいいですね。彼は久留米の名家蒲池氏で、松田聖子がその子孫なんだとか。日本では絶えてしまっている流派が豪で稽古が行われているというのが面白いですね。


えっ、観てない? TV放映後話題騒然、あの戦いを! 研心会館 横山和正異種武器術トーナメントから見えたもの
 水曜日のダウンタウンに横山氏が出演してたんですね。知りませんでした。バラエティだから武道をバカにする造りにならないか心配だったが、そうにならなかったと。鎖鎌が相手の武器に引っ掛けたのを上手く有効出来なかったのが残念だと。当然武器術は歩法・位置取り、有利な位置をいかに確保するかに尽きる。安全性確保のために、柔らかい・軽い素材でぶっつけ本番のような形になってしまったのは残念。まあ武道修行の場であるが故の一テストにすぎない、勝敗に拘るべきものでもないので構わない。試合・競技の弊害にきっちり触れてあるのがいいですね。


藤本靖動きのホームポジション
 均等なビニール意識を持ち続けるのは難しいという話。Airという感覚のコード、360度全方向の風の流れを意識すると良い。このAirをより意識しやすくするために自分が今いる部屋の6面を意識すると良い。6面体の中にいるということでニュートラルな皮膚感覚が保てる。丹田・軸また大腰筋など特定の部位を意識すると、動くたびに意識しているものが変わってしまうので感覚をつかみにくい。6面体の中でホームの意識が作られる。自分が受け入れられている、皮膚感覚も空間認識も良くなる。逆の感覚がアウェイ。アウェイという本来のパフォーマンスが発揮できない環境をホームに出来る人が本番に強い人。馴染み深い自分の部屋で6面体を意識しやすいが、新鮮さに欠ける。そのためAirの感覚を加えるといい。6面体が静で、Airが動。
 OIのアプローチによって、大腰筋がどう動くかなどを知っておくのは必要。ただそうすると部位認識だけに終わる。筋膜、全体のつながりのためにIOが必要。呼吸が基本だが、緊張が強い人などは随意的にコントロールできない血流を意識するのがいい。自発的な反応だから。横隔膜・心臓から深層の筋膜、そして表層の筋膜という流れ。
 他者・外の世界との距離感のために竹ひごを使うというのがあります、以前も藤本さんはこの竹ひごの話を紹介していたと思います。これってヒモトレだったり、刀禅と同じ発想なんじゃないでしょうかね?推手なんかも、全部同じ発想ぽいですね。

竜王戦 将棋の不正疑惑、不正の証拠なし

 <将棋>三浦九段のソフト使用疑惑「不正の証拠ない」
 <将棋>三浦九段の承諾なく出演取りやめ 新春イベント
 疑惑が晴れた「将棋のソフト不正問題」と将棋連盟に対して望むこと

 将棋の不正疑惑問題について、結局確たる証拠はなく、疑いのまま終わったようですね。しかし、気になるのは三浦氏がPC・スマホを提出したというのなら、解析されたら一発で不正をしたかどうかわかると思うのですが、それでも疑問が残るのでしょうか?どんなソフトを使っても解析できないという特殊なソフトを使ったとか、データ消去が行われていたとかそういうわけでもないでしょうに。

 疑惑で対戦を休みますという経緯でなんでやらなかったの?やましい所があるんじゃないか?という指摘もあると思いますが、大事な一戦で変な疑いをかけられてしかも世間の注目を集めたら、コンディションを保つのは大変だと思いますね。スポーツと違うとは言え、一瞬で何万通りの手を考えて判断しないといけない。相当神経使うと思いますから、ゴタゴタがあって精神的に動揺してしまったら、真剣勝負の場には望めないでしょう。

 渡辺竜王がソフトと指し手が一致していると指摘したことが問題の発端ですが、他の棋士いわく普通の手。だとしたらそんなに神経質になってタイトル戦中止!とすべきことだったのでしょうか?

 シロクロはっきりさせたいのなら、それこそこっそり竜王戦タイトル戦をやっているさなかに離席する三浦氏を監視していれば疑惑が真実かどうかはっきりわかったと思いますが。

 将棋界・棋士という者は選ばれた特別な者達、その神聖な棋士から不祥事で追放など醜聞があってはならないということなのでしょうか?最悪の事態を想定して、三浦氏が不正をしていたとしても大丈夫なように事を済ませたということなのでしょうか?

 まあどちらかというとリンク中にあるように第三者が関与していない身内による組織運営であるために、保身第一の事勿れ主義でなあなあ判決で終わったという感じですかね。

 メディア対応も未だにこういうやり方なのか…というもの。それならば変な天下りは論外として、運営・管理は違う組織に任せて自動的に行われるような形にしたほうが良いのでは?という気がしますが。そういえば将棋界も徒弟制でしたっけか。やはり変化を嫌う性質が強いのでしょうか?

 しかし会長が「疑いが晴れた」という形でしっかり謝罪したのは良かったと思います。高架下に飛び降りた社員を責めるようなトップと違い、こういうときに守るという姿勢を見せることは大事かと思います。

 そういえば、文春に疑惑追求みたいのが書かれていたのでしたっけ?それより先行して処分をしたかったという話がありましたが、それは理由としてどうなのでしょうか?疑われたからタイトル戦中止なんてことやっていたら、その都度中止しなくてはならなくなってしまうのでは?

 本人の同意なしにイベント参加が中止になっていたなど、色々おかしなことになっているみたいですが、正常化というプロセスでも問題がありそうですね。

 そもそもスマホを対局中に持ち込まなければいいだけだと思いますが、棋士の反対があって実現していないとか。対局中でもスマホで録画の確認とか株価のチェックとか色々やる人が多いということなのでしょうか?

 まあ使用や退出自由にして、その代わり監視カメラのようなものでも設置して録画・検証可能にするという取調可視化の導入を将棋界が先んじて行うという手もありますね。棋士達の妙手で無言のプレッシャーをかけるのも一興かと。

 シロクロはっきりではないですが、シロクロといえば囲碁囲碁界でもネットで凄い打ち手=ソフトが出てきたとか。セオリーを度外視した指し手で囲碁にまだ未知なる可能性が!何ていう話を聞きましたけど、ソフトによってまるで異なった新しいセオリーが出てくるとすると凄い話ですね。コンピューターが人の手を超えて新セオリーを作る初めての例になるかもしれないですね。